悪役貴族転生【女装】悪役令嬢ルート~99通りで断罪される悪役に転生して女装したら死亡フラグが無くなる代わりに周囲の目が怖くなってくんだけど?~   作:あずももも

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149話 男装して町へ繰り出させられた

――ざわっ。

 

「あれが、ユリア様の弟様のジュリオン様……」

「なんと、お美しい……」

「俺、男への趣味はなかったはずなのに……」

 

「お顔はそっくり――そしてまた、亡き姫様とも……」

「兄上様のユーゴ様が次期当主ではあるけど、やっぱり……」

「ユリア様とジュリオン様――双子であられるからこその……」

 

別の日。

再びに町の新装開店なお店でのランチ。

 

でも今日の僕はひと味違う。

 

ひと言で言うのなら――うん、制服に着られた私立の小学生男子。

 

うん。

 

男って服のバリエーションがないから本当にいいよね。

実に気が楽だ。

 

……けども。

 

「しかし、あの方が……」

「婚約者の……」

「あの子も綺麗……」

「美男子に美少女……流石はお貴族様ですわぁ……」

 

「――ふふっ。酷いですわ、ジュリオン様? こんなに良いお店をわたくしへ黙っていただなんて」

 

「……申し訳ない。『先日アメリアたちに連れ出されたユリア姉様』から話は聞いていたんだが」

 

目の前には、この前の僕みたいにこれでもかとおめかしをしているマルテルさん――いや、今は貴族令嬢としてのマルセラさん。

 

金髪に似合う色合いの服装――うん、語彙とファッションの知識が皆無な男としてはそう表現するしかないんだ――で、けれどもこの前の僕たちよりはぎりぎり派手すぎない格好。

 

伯爵令嬢として、そして将来は嫁入りしてくる貴族子女として許される格好――とのことだ。

 

しかし、目立つ。

とんでもなく目立つ。

 

……なにしろ、これまた前回と同じようにテラス席――町の人たちから囲まれてのぞかれる場所だから。

 

ていうか耳を澄まされると、普通に会話も聞かれるくらい。

だからこそ、外行きの話し方をしてくれてはいるんだけども。

 

「………………………………」

 

けども、やっぱり……普段は女装しているからか、男の格好でこんなに堂々と市民のすぐ近くで食べるとか、正直気持ちが――

 

「――町ではいつも冒険者として会っているのに、教えてくれなかった罰よ。婚約者なのに。ねぇ――『ゆりあ』?」

 

「!?」

 

また、一瞬で距離を詰めてきていて首にまとわりつき――耳元へ唇を寄せてこられ、ふーっと声を脳みそへ吹きかけられて、体がびくっとなる。

 

……やっぱりこの子、怖いんだけど……?

 

「「きゃーっ!!」」

 

「お仲が大変によろしいと……ふむ」

「マルシュ様が押せ押せなのか……」

「総受けジュリオン様……ほぅ……」

 

ウケは良いらしいけど……待って、最後のは待って。

それはメス堕ちエンドを引き寄せる呪文だからやめて。

 

「そういえば、ジュリオン様のご趣味……あまりございませんわよね?」

 

ひと言申し上げたい市民たちから視線を戻すと、いつの間にやら席に戻っていたマルテルさん。

 

……今の、幻聴と幻触じゃないよね?

 

「あ、ああ……そうだな。勉学と鍛錬……くらいしかしていないな」

 

「『お姉様のユリア様』も、普段からダンジョン攻略や遠征の他には領地改革のために書斎に籠もるくらいしかしていることがないと……姉弟そっくり。なにしろ『双子』ですものね?」

 

「……ああ」

 

会話が始まると静まり返るギャラリー。

 

……これも見越しての、それらしい会話なのだろう。

 

でも、ことあるごとに女装先を強調するのはやめて……僕の胃がきりきりしてくるから……。

 

「ジュリオン様は普段、屋敷から出ないのですわよね?」

「そう……だな。外は姉上に任せ、僕は内を任されている」

 

「やはり、かのセレスティーヌ様の血なのでしょうか? 武も政も、両方を尋常ではない量をこなしておられたという――あ、けれどジュリオン様?」

 

……わざとらしく、今気づいたように。

 

マルテルさん、あなた、普段から頭も口も速く回るんだから絶対考えてた流れでしょ。

 

「少し前にお屋敷で模擬試合をなされたと聞きましたが、そのときは『あの』ユリア様――数々のダンジョンを踏破し、ついこの前にも大規模ダンジョンを踏破されたあのお方との1対1で、引き分けと伺いましたわ? 『やろうと思えば、ユリア様と同じように戦える』のですわよね?」

 

そりゃあ同一人物だからね、どんなコンディションでも引き分けになるよね。

 

「!?」

「マジか……」

「ジュリオン様、強いお方なのか……?」

「当たり前だろう、あのアクヤクレイジョウ様の血を引いたご子息だぞ!?」

「待てよ? 多少の手加減はされただろうが、外征をされない状態でユリア様と近い実力……なら、ジュリオン様も外へ出られたら、もしやユリア様をも凌ぐ力を……!」

 

ざわざわ。

 

僕たちへの関心から僕の強さへの議論と大衆の注意は移る。

 

……そういえば僕、前世の価値観のままだったからこうやって自分をひけらかすようなことはしてこなかったっけ。

「でも冷静に考えたら必要だったよな」、そんなことを言われてから思いつき……改めてマルテルさんの10歳児ならぬ賢さに敬服する。

 

「わたくしの婚約者が、多少でも舐められるのは嫌ですので」

 

「……ありがとう、マルセラ」

「いえ? ジュリオン様を支えるお手伝いができてなによりですわ? だって――――」

 

本来はかなり気が強くてツンデレという言葉がぴったりなヒロインに成長するはずの彼女は、その金髪の前髪の下で、目を細める。

 

「――わたくしは、貴方/貴女の婚約者ですもの。貴方/貴女を支える努力は――――――何十年後、2人揃ってベッドで息を引き取るまで欠かしませんわ」

 

………………………………。

 

……5年後から、遅くても7年後。

 

主人公くんになびいて、僕との婚約破棄を受け入れてくれる……よね……?

 

ま、まあ、まだ10歳だし……思春期の女の子は恋に恋するって言うし、大丈夫でしょ、きっと……うん……。

 

 

 

 

「――どんな未来になろうとも、絶対に逃がさないから。ええ――たとえ何があろうと、絶対に。たとえ女神様に楯突くことになろうとも、必ず」

 

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