悪役貴族転生【女装】悪役令嬢ルート~99通りで断罪される悪役に転生して女装したら死亡フラグが無くなる代わりに周囲の目が怖くなってくんだけど?~   作:あずももも

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150話 路地裏からの光景

「……すごい。あたいたちの根城だったスラム街が……ただの裏道になってやがる」

「うん、すごいね。ゴミも落ちていないし、変な臭いもしない。孤児どころか浮浪者すら……」

 

「す、すごいですユリアさまっ!」

 

「ええ。皆様のおかげですね」

 

かつては孤児だったリラちゃんとテオくんが、3年ぶりに古巣を見にきて目が点になっている。

 

危うく同じ環境に落ちるところだったルーシーちゃんも思うところがあるのか、普段から元孤児の子たちと一緒なだけに、きっといろいろと聞いてきたんだろう。

 

「こーきょーじぎょー?ってのは姉御がしてんだよな? あ、してんだよなです!」

 

「……リラ、帰ったら言葉の勉強だよ」

「え、やだ」

 

そういう正直なところが好きだよ、リラちゃん。

 

「公共事業――そうですね」

 

僕は、かつてはドブ臭かった裏道――今や治安も改善されて、ただの住民用の抜け道にしかならなくなった通路を見て回る。

 

……本当に臭かったドブは、今や大雨の前後くらいにしか臭わないほどになっているんだ。

 

「お父様にも許可をいただいた上での遠征にダンジョン攻略。そこで得た魔石やドロップ品は、一部を除きデュクロワ家の金庫へ入ります。……ですが、金とは、使わなければ腐ります」

 

「金が腐るのか? パンみたいに?」

 

「リラはちょっと黙っていようね」

「ぐぇっ」

 

「え、ええと、前にユリアさまがいって……おっしゃっていた、市場へお金を流してじゅんかんさせる……でしたか?」

「そうです。ルーシーはよく覚えていますね」

 

一生懸命に話すルーシーちゃんを撫でると、その薄い色で覆われた目元がくすぐったそうに閉じられる。

 

「ですから公共事業――領民の方々へ、皆さんができる範囲の仕事をギルドを中心に割り振ってもらいました。多くの人は、自分が無理なくできる仕事とそれに見合う報酬が定期的に存在することで、仕事を放棄して浮浪者となる生活や犯罪へと手を染めることからは自然と足が遠のきますから」

 

ドブさらい。

 

かつての僕が駆け出し冒険者としてしていたような仕事でも、それをきつくない範囲でやってそこそこのお給料をもらえるんなら、喜んでやる人はたくさん居る。

 

そういう小さいところから――町の路地裏から地道に施策を進めさせた結果、領内の治安はこのとおりに……女子供が路地裏を徘徊しても、犯罪者どころかネズミ1匹にすら出くわすこともなくなっている。

 

こういう善行を積んでいけば、将来運命の収束で僕が路頭に迷うことになっても……もしかしたら誰かに救ってもらえるんじゃないか。

そういう目論見からの、僕自身のためにやっていること。

 

他の人への影響は、そのついででしかないのに……かつて路地裏に居た子たちは、目を輝かせている。

 

「姉御! 昔のスラム街の連中、今じゃみんな仕事と家があるんだってよ! 姉御に感謝してるって!」

「リラ、だから――はぁ。その通りです、ユリア様。俺たちも……あのときユリア様に救い上げられなかったとしても、たぶん、今は普通の暮らしができていた。それくらいには素晴らしいことだと」

 

「……ありがとうございます、ふたりとも」

 

ぽんぽん。

 

この3年で背が伸びた――特にテオ君はね――ふたりの頭を、腕を結構上げてぽふぽふと撫でる。

 

心が、ずきずきとしている。

 

でも、僕は……小心者な小市民な前世の僕は、死にたくもないし屈辱的な未来も嫌なんだ。

 

「あのときのことを知ってるのは俺たちだけです。……だからこそ、いつまでもついていきます、ユリア様」

「あ、兄貴ずるいっ! あたいもあたいも!」

 

「ぼ、ぼくもですっ!」

 

「………………………………」

 

――僕が。

 

僕が、我が身可愛さに死に物狂いで死に物を回避しようとご機嫌取りのためにやっていたあれこれが……結果として、あくまでこの街をはじめとする領内だけだけど、確実にこの世界を良くしていっている。

 

女装してみたらそっくりだった生みの母親の面影と影響力を、最大限に使い倒して。

 

……これは、ただの罪滅ぼしでもあるんだ。

 

こういう気持ちを誰一人にも話すことができないということまでを含めてが、僕の、罪。

 

――99のルートであらゆる悪行を繰り返した、ジュリオン様。

 

そんな彼が、せめて。

 

せめて、この世界では――後世へ悪名が残らないように。

地味でもいい、悪人でさえなければ、それでいい。

 

でも、この世界だけでは……せめて「僕自身」として、成人すらできずに悲惨な最期を遂げる未来を回避させたいんだ。

 

………………………………。

 

……あとはメス堕ちしたっていう記録が残らなければ……いや、でも、僕の女装はいつかはバレる。

 

だから結局、残るのでは?

 

だって、この歳から好き好んで女装してきてるし……アメリアちゃんやエミリーちゃんへは、「過去のジュリオン様は女装をしたくてしょうがなかったからアメリアちゃんをいじめてた」って言い訳しちゃった。

 

「………………………………」

 

……ごめんね、ジュリオン様。

 

どうあがいても、君が女装大好きな変態って事実は残りそうだ。

 

せめて――追放先でもなんでもいい、独り身、あるいは奥さんをもらって「性癖は案外普通だったらしい」って残るよう、務めるよ。

 

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