悪役貴族転生【女装】悪役令嬢ルート~99通りで断罪される悪役に転生して女装したら死亡フラグが無くなる代わりに周囲の目が怖くなってくんだけど?~   作:あずももも

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152話 地下室から6年後を見た

「ユリアさま、ときどき屋敷の地下で誰かとお話してるんですぅ」

 

「きっとセレスティーヌおかあさまとおはなししてるんですよね!」

「ぼくたちも見たことはないですけど、きっとユリアさまならできるんです」

 

僕が地下室でこっそりしている、とあること。

 

それは母さん譲りすぎているおかげで、いい方に勘違いされている。

なら、それを使わせてもらうしかない。

 

だって、相手は――――――

 

「――――――女との浮気ではないわよね?」

 

「違います」

 

「違わなかったら浮気が不可能なくらいに搾り取るわよ」

「……ええ、分かっています」

 

そう冷たい瞳に熱い何かを込めながら言ってくるマルテルさん。

 

でも、この年齢でそんなこと……いや、できそうだから考えないでおこっと……なにしろこの世界には魔法があって、そういう方面にもいろいろ使われてるって聞くし……。

 

「そう、なら良いわ。むしろ浮気をしてくれた方が主導権を握れるから楽しみにしているの。楽しみにしているわ? ユリア」

 

どこからそんな知識を獲得したのかは分からないけど、少なくともマルテルさんが婚約者なうちには浮気なんて、できるわけがない。

 

……というか最近アメリアちゃんたち女子だけを集めてのパジャマパーティーなるものをしている理由って、まさか……いや、よそう、これはあまり深く考えたらいけない話題だ。

 

 

 

 

かつん、かつん。

 

「………………………………」

 

ピクニックから帰った夜。

 

子供はうとうととし出す時間。

マルテルさんたちが今日もパジャマパーティーで盛り上がっているはずの時間。

 

僕は1人、地下への階段を降りている。

 

――デュクロワ辺境伯、その最前線の城ではなく比較的安全圏にある屋敷といえど、王国内では最も危険な地域であることには変わらない。

 

だからこそ、この屋敷からは無数の迷路が張り巡らされ、各方面へと脱出できる地下道が整備されている。

 

その入り口である、屋敷直下の広い地下室。

無駄に広い石造りでじめじめしているこの空間は、埃っぽい。

 

かつん。

 

降り立った石畳で松明をかざしても隅が見えない広さの長方形の部屋――空間。

 

ここの存在は知られているどころか使用人の人たちがよく出入りしているから、その壁ぎわにはいろんな木箱や壺に冷蔵保管されている食材や普段は使わない調度品、あとは捨てられないけどなんだかすごそうなものからどう見てもガラクタなものまでが積み上げられている。

 

階段の上り下りこそあるけども気温での劣化が少ない倉庫代わりって扱い。

 

それが、この地下室。

 

存在自体は秘密どころか普通に出入りする、物置。

 

「……死んだ母さんと夜な夜な交信して天啓を授かっている。それを本気で信じるのがこの世界の人たちだ」

 

そもそもとして超常現象の魔法が実在し、人を食べようとしてくるモンスターが居るし、今は封印されてるけど数年後に復活する魔王は過去にも実在したって記録に残ってるし――それを勇者に倒させる女神様も実在し、教会のえらい人へ電波もとい交信をしてくる世界なんだ、平民はともかく貴族階級ならまず絶対に信じる。

 

だからこそ、ここへは絶対に――僕が入っているあいだは、誰も入ってこない。

 

「死んだ母さんが電波を飛ばしてくる」とかいう妄言も、真に受けられるから。

 

超常の存在を恐れているから、のぞき見も聞き耳を立てることもしない。

何度か入り口にトラップを仕掛けてみたけど、かかったのは帰りにしかけてたことを忘れてた僕だけだったし。

 

だから――屋敷の中ではおはようかはおやすみまで常に誰かに面倒を見られる貴族令息から解き放たれて秘密の活動をするには、都合が良い空間なんだ。

 

かつん。

 

「……起動せよ」

 

その部屋の、奥のほう。

 

広すぎるからか、このへんまでは使用人の人たちも入り込まず、従ってガラクタすらない、ただの石造りの「ダンジョンの部屋のような空間」。

 

――「魔王ルートで逃げ込んできた魔王ジュリオン様が、勇者パーティーとの最終決戦を行う玉座の間」となる場所。

 

ぶんっ。

 

その床に、巨大な魔法陣が展開される。

 

「………………………………」

 

――ここへ何の気なしに去年あたりに訪れたとき、僕は驚いた。

 

それはもう驚いた――と同時に、絶望した。

その魔法陣は人が行使する魔法のものではなく、魔族が行使するそれだから。

 

つまり、これは魔族のマーキング――遠隔でなにかしらをするために「屋敷の誰かが気がつかないように入り込まれて描かれた」侵入済みの証だから。

 

そして、「これ」があるということは……魔王ルートの可能性は確実にあるんだから。

 

「原作開始の前――下手をすると母さんが嫁に来る前から、この家は目をつけられていた。……当然か。なにしろ防衛の要であるデュクロワ家を落とせば王国への侵入は楽になるからな」

 

実際に魔王ルートで王都まで魔王軍が侵入してきたきっかけは、ジュリオン様率いるジュリオン家が魔王軍の魔王そのものの指揮下に入ってしまったから。

そのデュクロワ家へどれだけ時間を掛けてでも侵入して侵食できれば、量ではるかに勝る魔王軍は――王都まで、あと1歩まで人類を征服できるから。

 

しかしその魔法陣には、先日から「とある存在」が内包され、座り込んでいる。

 

……それは、

 

「エロディー。……魔王軍幹部にして、魔王ルートに入ったジュリオン――僕を誘惑し、魔王として目覚めさせる張本人」

 

まるでかしずくように座り込んだ姿勢のまま――けれども、つい先日に吹っ飛ばしたからか、手足の先は薄い魔力でホログラムのように半透明で実体は3割といった程度の、倒すべき存在。

 

うずくまっているおかげで、あのとき結構やばいことをされた気がしなくもないときのサキュバスは、そのあられもない紐な服装を両腕と両脚で隠す形になっていて。

 

けれども僕は、

 

「……魔力供給」

 

毎日、少しずつ。

 

慎重に、あげすぎないように――しかし確実に、まるで根を張りすぎないよう管理している小さな鉢の中の苗木へ水をやるように、注ぎ込んでいる。

 

――もちろん僕は、人類を滅ぼすことになんて加担するはずはない。

 

そんなことをしようものなら、さすがに死んだ母さんも墓から起き上がってゾンビとして殴りかかってくるだろうし。

 

けれども――僕は、ゲームのシナリオ/世界の意思によって運命が定められている可能性が、極めて高い存在だ。

 

だからこそ……それに対しての切り札は、持っておきたい。

 

だから。

 

「――――――魔王様」

 

すっ――と、彼女の、サキュバスとして人を誘惑するために創造された美しすぎる目元が開かれる。

 

魔力量が一定水準に達し、魔王軍幹部は目覚める。

ただし実体化して思考するのが精いっぱいな、そんな状態で。

 

「ああ……やはり貴方様が、魔王様。……しかし何故に、あの忌まわしくも美しい王国の姫の姿を……? いえ、お美しいですが……」

 

僕は、何度もしつこいからどうせまた復活するだろうと思っていた彼女を――僕がコントロールした上で味方へ引き入れることにしたんだ。

 

 

◆◆◆

 

 

ジュリオン様の子供時代はこれでおしまい。

できる限りの支度を調えた彼は……次章から学園へと向かいます。

 

8章まで、今しばらくお待ちくださいませ。

 

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