悪役貴族転生【女装】悪役令嬢ルート~99通りで断罪される悪役に転生して女装したら死亡フラグが無くなる代わりに周囲の目が怖くなってくんだけど?~   作:あずももも

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10話 騎士団長との訓練は初日で卒業(未受講)2

「エミリー様は……その……」

「なんと申しますか……」

 

そんな彼女の周りを――たぶん仲が良いんだろう使用人さんたちが囲んでいるけども、肝心の言葉を言い出せないでいる。

 

「? 私はジュリオンさまのお付きですよ?」

 

うん、職務に忠実なのは本当に偉いよエミリーちゃん。

 

でもね、君が来ると100%大惨事になるのは実証済みなんだよ……。

 

「……エミリーには、僕の帰る場所を守っていてほしい」

 

「……ジュリオンさまの、帰る場所……」

「そうだ。妹のアメリアのこともある」

 

ごめんね……君が居たら確実にトラブルだらけでなんにもできないどころか大騒ぎで僕の正体とかバレると思う……下手したら魔族とか来ちゃう……まさかの魔王ジュリオン様が最速RTAな爆誕しちゃう……。

 

「アメリアは……そうだ、話し相手が必要だ。外へ出られない妹をかわいそうと思うなら、頼む」

 

「ああ、ジュリオン様……!」

「アメリア様のことを、そこまで……!」

「なんとお優しい……今まで凡愚を装う故の無関心が、どれだけ辛かったことか……!」

 

あの子、たぶん同年代の友達とかエミリーちゃんしか居ないだろうし。

 

それに、この子のドジっ子スキル攻撃のひとつで、下半身への攻撃――つまりはズボン脱がせがあるし……女装バレでいろいろとやばくなりそうだし。

 

「お前にしか、頼めない」

 

「……分かりました! ジュリオンさまに代わってアメリアさまをお守りします!」

 

良かった、ちょろくって。

君はこれからもこのままで居てね?

 

「おお……! ジュリオン様が、たったの一言であのエミリーを……!」

「やはり、これまでの癇癪はすべて演技……本来ならこうして人心掌握も、いともたやすく……!」

 

はいはい、もうそういう発言は全部セレスティーヌ母さんアゲだって解釈するから好きにやって。

 

かっぼかっぼと、古い映画でしか聞いたことのない音が聞こえる。

 

「……ふむ、来たな。では、留守を頼む」

 

「はっ! このベルトラン、命に代えましても……!」

 

あ、それはダメ。

 

万が一の魔王様ルート入っちゃったら止めてもらわないと。

 

「いや、お前には生きていてもらわねば困る。この家の者と――お前の命を、守れ。これは主命である」

 

「………………………………!!」

 

主命とか気軽に言って良いんだっけ?

 

まぁ大丈夫でしょ、いざとなれば「ぼけたおじいちゃんの言うこと真面目に取らないでください」とか言い訳すれば。

 

「……10年後、僕は学園のために屋敷を離れる。そのときにも、役に立ってもらわねば困るからな」

 

よし、こうそれっぽく言っとけばさすがに大丈夫でしょ。

 

まぁこのじいさんが完全に耄碌もしないし死にもしないのはストーリー的にほぼ確定してるから心配はないけども。

 

「ズビッ……ジュリオン様……!」

 

「あー、私のハンカチさんがぁ……」

 

うわ、ばっちい。

 

なにあれ、ハンカチがべっとべと。

 

………………………………。

 

……さすがにエミリーちゃんがかわいそすぎるから、帰りに似たデザインの買ってってあげないとなぁ……。

 

「……他の者も、僕に代わり、頼む。まぁ、これまでの僕が何もしてこなくてもなんともなかったから問題ないとは思うが」

 

「ああ、ジュリオン様が……!」

「私たち1人1人に目を……!」

「なんと、なんとお優しい……!」

「まさにセレスティーヌ様の再来……これこそが神童の……」

 

「……行ってくる」

 

僕は駆け足で馬車へ向かう。

 

……うーん。

 

嫌悪と過保護……どっちが良いんだろうか。

 

まぁ嫌悪感の方をやり過ぎてヘイトを買っちゃって、父さんたちへの告げ口とか僕の暗殺とかは起きなさそうだから良いけどさぁ……。

 

 

 

 

「――ルシヨンの町は、人口10万を誇る大都市でございます」

 

「ゆえに冒険者も数が多く、ギルドの支部も数カ所ございます。問題が起これば、異動することも考慮すべきかと」

 

「――銀の髪、殊に紫の髪は、軟弱――失礼、デュクロワ様のお膝元であるルシヨンの町では余りに有名すぎます。可能であれば、こちらのフードでそのセレスティーヌ様譲りのお顔を……畏れ多く、かつ勿体ないこと極まりないのですが、秘するべきかと」

 

「冒険者ギルドは、初級ならば登録料・身請け人・住所・身分証など一切が不要でございます。もし請求された場合には一報を。……処分ですか? ……ふふっ……セレスティーヌ様と同じく、ご冗談が大変にお好きであらせられますね? では、ジュリオン様のお優しさを信じ、ひとつ私も冗談を。――セレスティーヌ様の忘れ形見を侮辱するような輩は、生を受けたことを後悔するような結末を、メイド総出で手ずから……うふっ、冗談です♥」

 

「既に『初級ダンジョンを単独で踏破可能な実力と知識を備えられている』ことはベルトラン様からお墨付きでございます。……ですが、今後も冒険者として内定をされるご予定であれば、伝手は構築されるべきかと。ええ、私めどもにされましたように、凡愚を擬装なされて……はい、一先ずは同じ初級者、可能であれば初めて、乃至数度目にダンジョンへ挑む同年代の御方をです」

 

「なお、最近の情報では魔王軍の活動が活発化の兆しがあると。セレスティーヌ様の奮闘のお陰で大人しくなっていましたあの蛆虫共が――失礼、つい……とかく前情報では想定できない強さのモンスター、魔族が出没する危険があります。その場合はご自身のお命を……どうか。そうでなくば――我ら、歯止めが効きませんので♥」

 

 

 

 

「では、10日後にこちらで。愛しのジュリオン様? ご武運を~」

「それ以外も毎日このあたりまで夕刻に遣いをやりますジュリオン様ぁ♥」

「緊急時には紋章をギルドにお見せくだされば1発ですジュリオン様……!」

 

「………………………………」

 

「………………………………」

 

「………………………………」

 

さて、馬車で町の城壁が見える距離まで送ってもらい、荷物を詰めた鞄ひとつで街道に乗りだしたわけだけど。

 

……あれ?

 

なんかうちの使用人さんたち……いろいろとやばくない?

 

【END/No.05: 使用人一同「大変残念ですが、我らが主君は覚醒されませんでした。――お命、頂戴します。大丈夫です、我らもお供します」――回避】

 

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