悪役貴族転生【女装】悪役令嬢ルート~99通りで断罪される悪役に転生して女装したら死亡フラグが無くなる代わりに周囲の目が怖くなってくんだけど?~   作:あずももも

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2話 「女装メス堕ち悪役貴族」になった僕とドジっ子メアリーちゃん3

「じゅ、ジュリオンさまはいつも良い匂いを――う゛っ、くしゃい!」

 

けなげにも僕に近づいて「臭くないから大丈夫」ってやろうとして二度連続で撃沈して逆効果のエミリーちゃん。

 

ああ、君もまたストーリーで中盤までのエミリーちゃんだね……。

 

「エミリーや……」

「お前はどうしてそう全部裏目に……」

 

「ジュリオン様、どうぞお情けを……」

「あの子は……可哀想な子です故……」

「貴方様の将来の妾ですゆえ、せめて顔に残らないよう……」

 

――――――――さて。

 

ゲーム開始時点では長い髪も今は肩までくらいで短いし、胸もないし、なにより顔も幼い彼女。

 

あと、多分だけどゲーム内のいろいろなトラブルを引き起こすドジと天然も「アレでも相当苦労して痛い目を見て、高校生相当の年齢まで育つ過程でどうにか抑えてきたんだろう」と推測のつくレベル。

 

……うん。

 

ジュリオンとしての記憶を辿っても、結構やばいドジで――何回かジュリオンっていう主君の、命の危険まであるのをやらかしてたっぽいし。

 

あ、そういやいくつかのギャグルートではエミリーちゃんによってギャグ的な死に方してましたねぇジュリオン様……エミリーちゃんこぇぇ……。

 

え、なに?

 

僕、この子から敵意を持たれなかったとしてもドジで殺されるの?

しかもギャグで?

 

……だからユーザーからは「幸薄ジュリオン様」「確率で爆発四散するジュリオン様」「ガラスのジュリオン様」とか言われてたっけ。

 

なんならたった今、心臓が止まって生命の危機を覚えた僕の魂が前世の記憶を引きずり出したまであるだろうし。

 

あー、うん。

 

キャラクターだと「かわいい」で済まされる属性も、リアルだと途端に殺意湧くとかあったりするよね……むしろ原作ジュリオン様のぶち切れやすさ、この子による長年のやらかしのせいも1枚どころか10枚くらい噛んでない?

 

大丈夫?

 

君が「魔王ジュリオン様」爆誕の起爆剤になったりしてない?

 

この子のせいで、怒鳴りつけるのが条件反射になっていたとしたら……うん、ジュリオン様がかわいそうに思えてきた……まぁ今は僕の未来のことなんだけどなぁ……。

 

「――エミリー」

 

「ひゃいっ!? ど、どうか、ぶつならおしりで……今、出しますからぁ……」

 

もそもそと、エミリーちゃんが後ろを向いておしりを突き出す。

 

いや、そんなの要らない……僕、ロリコンどころかペドでもない……嬉しくないからしまって……?

 

さて。

 

死を脱したけども依然死の危機っていう本能的な恐怖により、脳内の思考回路が――たったの十数秒を。

 

まるで小説に換算すると、大切な出だしの1話と2話を使ってまで、およそ6000字ほどを必要とする時間に引き延ばされるほど高速で回転していた結論が、これだ。

 

僕は、なぜか前世で死んで、今世でジュリオン様になっている。

いろいろ考えるべきことはあるけども、今はそれが確からしい事実。

 

そして、ここはジュリオン様の世界。

 

そうだ、貴族のぼんくら息子――しかも男子としては末っ子として甘やかされ続け――っていうか産みの母親は2年前だかに魔王軍との戦闘で死んで。

 

父親は、仕事とはいえ実の息子を――ネグレクトで、完全放置。

 

たぶん「ジュリオン? ああ、あの暗愚は適当にあしらっておけ」とでも命令していたんだろう。

 

おかげでなにをしても使用人たちに叱られることはなく、そのせいで「ザ・ぼんくら貴族子弟」になるしかない環境で。

 

実母の死に間を置かずに再婚――じゃなく、継室とか言うんだっけ?

 

とにかく前世の感覚からすれば再婚だよな――で正室になったらしい継母、継母の連れ子の妹が、実母の死から抜け出す前に家族の屋敷に招かれ、広い屋敷とはいえ同居することに。

 

さらには10歳上の、優秀だし歳も離れてる実の兄もまた父同様、不干渉の上にジュリオンとは没交渉。

 

そんで付き人のくせに、1時間未満おきになにかしらをやらかして爆発させてくるこのエミリーちゃん(数分前に主君暗殺未遂)。

 

うん。

 

若干5歳で実母を失った男子としてはストレスしか溜まらない世界が、今世の僕が知覚してきた範囲のはず。

 

普通に平民として生まれていたとしても、家族には疎まれるわ隣に住む幼なじみの女の子が毎時被害を与えてくるともなれば、どんだけかわいかったとしてもさすがに憎悪を向ける対象にはなるね。

 

精神年齢が一気に上がったおかげで、今やこの全身を包み込む冷たさと臭さ以外は平気だけども……それにしたってひどい、あんまりだ。

 

臭い、臭すぎる。

 

こんなのはひどい。

人に対する仕打ちじゃない。

 

しかも僕は主君じゃないか。

あんまりだ、あんまりすぎる。

 

まぁ貴族の次男以降の扱いなんてこんなもんだろうけども……エミリーちゃんのドジっ子スキルを除いて。

 

それにしても、実母――今世の産みの母さんさえ生きてりゃ、ここまではならなかったろうに。

 

ジュリオン様ソウルはどっか行っちゃった(昇天した疑惑だ)けども、彼の記憶を辿る限り――うん、少なくともまともな母親ではあったはずだし。

 

貴族としての生きる環境以外は、ほんとに最悪だな。

 

こりゃあグレる。

 

グレてノリで世界征服っていう名の魔王にもなる……んで主人公に討伐される。

 

……貴族としての教育も受けはしてきた記憶はあるけども、現状は、たかが7歳児。

 

しかも学校などというものはゲーム的に存在する学園――貴族同士のつながりを強固にするための場である高校に相当するものしか存在せず、基本は家庭教師。

 

つまりは屋敷と庭から出ることはできず、できても同じ貴族同士のパーティーやらなにやらしかない狭い世界で、15年を生きる。

 

なまじ兄が優秀なもんだから「こんな僕」に対して父親は期待もしていないらしく、家庭教師の先生もそんなに頻繁には授業もせず、僕自身に対しては「面倒は起こすな」としか言われていない模様。

 

歳の離れた優秀な兄貴が実質的に家督を継ぐのは確定で、僕はただの万が一のスペアだからなぁ……まぁゲームの流れなら原作開始前ですでに2人とも死んで、その万が一が起きてるんだけどさ。

 

なにがあったんだっけ?

いやまぁ今はそれどころじゃないけどさ。

 

んで、まぁそんな僕だけども、味方が皆無なわけではない。

 

使用人たちは傍若無人な僕に怯えながらも、実母である亡き母さんへの同情もあるっぽいのはジュリオン様(数分前まで存命・現在昇天済み疑惑)も理解していたらしい。

 

半分くらいが母さんの小さいころからの使用人さん――確か王族の出、いわゆる姫だったはずだから、たぶん王都からはるばる来たはずだ――だったりするらしいしな。

 

だけどやっぱり平民にはそんなに使えない「魔法」を使っての折檻とかしてくるんだ、そりゃあ距離も取るしイエスマン・イエスウーマンにもなる。

 

……その生贄が、確か分家のどっかから奉公に来たエミリーちゃんだ。

 

まぁでも生贄になるだけのことはしている。

 

問題は、それが現時点ではデメリットしかないスキルのせいなんだけどね。

だから僕は、この状況をうまく使って生き延びなきゃいけない。

 

……とりあえず。

 

まずはほっとくと状況を悪化させるしかないエミリーちゃんを制御し、かつこれまでの僕と矛盾のない、けれども使用人たちが納得する収め方にしなきゃなぁ……。

 

うん、大体死ぬジュリオン様だからね……生き延びること自体がデスモードなんだ。

 

次の手次第で――エミリーちゃんは良いとしても、使用人の誰かに殺意を持たれてぐさりとか普通にあり得る。

 

そんな僕は、

 

「ジュリオンさまぁー……」

 

……あとエミリーちゃん(幼)。

 

お願いだからおしりしまって……?

 

僕が変な性癖に目覚めちゃう前に、早く……お願い……。

 

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