悪役貴族転生【女装】悪役令嬢ルート~99通りで断罪される悪役に転生して女装したら死亡フラグが無くなる代わりに周囲の目が怖くなってくんだけど?~   作:あずももも

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51話 お強くてお優しい、ちぐはぐな「お姫さま」なユリア様(by 3人娘)2

「『竹馬の友』という言葉がありますわね」

「原典は不明ですが、いわゆる慣用表現というものと聞きましたわ」

 

「わたくしたちの場合、どちらかと申しますと生き別れの三つ子とでも……いえ、それぞれ確実にお母様方から産まれたのは間違いないのですけれども」

 

わたくしたちはまったく同じタイミングで首をかしげます。

 

ただし、かしげる向きが違ったりすることもあるので、完全に同じわけではございませんの。

 

「不思議ですわねぇ」

「不思議ですわよねぇ」

 

「初めて家族同士で対面したとき、お母様達の不義を疑われたくらいにそっくりなのが不思議ですわねぇ」

 

あのときは大層な修羅場――にはなりませんでしたわ。

 

なぜって?

 

……お互いに、そんな離れた領地へ頻繁に行き来するお金どころか畑と村、もといの面倒を見るのでそんな暇はないのですわ……!

 

貧乏暇無しなのですわ!

 

暇があったら貧乏ではないのですわ!

 

トートロジーですわ!

 

「こんなに気の合う、しかも同い年の同性で身分までほとんど変わらないなんて、これはもう『運命』ですもの!」

 

「家にお金がないし、女だから大きくなってもあまり畑仕事に貢献できないのを嘆いていたのも同じで」

「運良く魔力がそこそこあったから、いずれ家を飛び出して冒険者になろうと目論んでいたのまで同じ……運命以外のなにものでもありませんわ!」

 

そのようなわけで、偶然にも社交界デビューをした直後、わたくしたちは食いぶちを稼ぐためにわたくしたちから家を出たのですわ。

 

「まぁぶっちゃけ、伯爵様以上の貴族のどなたに運良く見初められましても、そこから先の人生がクッソめんどくさいですし……」

 

「わたくしたち、ほとんど平民なのですわ! 一生を屋敷の中で過ごすなんて耐えられないのですわ!」

「それに、個人の稼ぎだけでいえば圧倒的に冒険者ですし……良い殿方を見つけましたら、こう、くわえ込むのですわ!」

 

「ところで『くわえ込む』と言うのは何をなのですの?」

「さぁ?」

「お母様が『落としたい殿方を見つけたら教える』と……今から楽しみですわね!」

 

どうせ家に居ても、庭で家族の食べる食料を作る農作業以外にすることはございませんわ。

 

お金がないので、幸運にも魔力がそこそこはあるわたくしたちを指南してくださる家庭教師も雇えませんし、魔法書を買うのはもっとお高いですし。

 

お金がないので。

 

お金がございませんので!

 

「……でも、あのときのユリア様はお美しかったですわぁ……」

「それに、とても格好良くて……」

 

そうですの。

 

――わたくしたちは、これでも懸命に努力してきましたわ。

 

家から出て、いくつかの町を渡り歩き。

 

冒険者になり――まぁまだ子供ですので大した活躍もできず、ほそぼそと町中の依頼や、安全な範囲で町を出ての薬草摘みなどをこなしましたの。

 

「才能はなくても真面目だし、なにより3人セットだから扱いやすい」というような理由で――あとは本物のお貴族様からのご依頼などにも対応できたので、わりとおいしい思いをできますの。

 

「けれど、まさかあのダンジョンで……」

「普段通りに安全マージンを確保しての探索でしたのに……」

 

「あれはもう不運でしかございませんの。いくら召喚の罠でも、下位とはいえマジモンの魔族を召喚するなど、聞いたことがございませんもの」

 

わたくしたち、あのときはこっそりと自決用の薬を手にしていたのですの。

 

――「死より苦しい地獄」を味わうくらいなら――と、親切なギルドの方にお譲り頂いたもの。

 

ほんの爪ほどの大きさのそれは、たちまちに命を刈り取るとのこと。

 

ええ……町でも、わたくしたちいわゆる「幼女」をつけ回してくる輩も居るくらいですし、もう数年すればわたくしたちもお年頃。

 

女という生き物は、男から狙われるもの――万が一はそこら中に転がっているのですわ。

 

「まぁそうなったらなったで、その男性を捕まえるしかありませんけど」

「貞操のお代は一生かけて償わせるのですわ?」

「でも魔族や苗床にしてくる系モンスターにはそんなのは通用しませんので……ですからこその、この薬」

 

わたくしたちは、胸元に下げているそれを握りしめます。

 

「これを、使うところでしたわね」

「ええ……魔族という存在は、どんな人間が考えるよりも非道いことをするとは有名ですものね」

「ですので遭遇する可能性のあるような難易度のダンジョンへは元より行かないつもりだったのに……不運ですわぁ」

 

けれど。

 

けれども。

 

――わたくしたちが絶望し、絶望より大きな絶望を回避するために、それを飲もうとしたときに――あのお方は、現れましたの。

 

「素敵でしたわ」

「ローブ姿でも泣きそうになりましたわ」

「お顔を拝見して、お声を聞いて――なんだか、こう……」

 

わたくしたちは、もう消化しきって普段通りになったおなかを――おへそよりも心持ち下の方をさすりましたわ。

 

「なぜかおなかがきゅんとなりましたわね。なぜ胸ではなくおなかなのかは分かりませんでしたけど」

 

「不思議ですわねぇ」

「不思議ですわよねぇ」

「お母様が『運命の殿方と出会ったらそうなるから』と……でもユリア様は正真正銘の淑女ですし……」

 

「「「不思議ですわねぇ?」」」

 

わたくしたち3人は皆、同じような知識と経験しか持っていません。

 

おかげで物を考えるとき3人だとスムーズなのですけれど……知らないものは誰1人として知らないのですわ。

 

文殊の知恵――これまた出所不明の古語ですわ――も、実質的に1人の知識ではどうあがいても広がりませんの。

 

「はぁ……ユリア様……」

「明日に備えるのですわ……明日に!」

 

「まさかユリア様におごっていただいて食べ過ぎたせいで、貴重な1日を別行動になどとは……淑女としての一生の恥ですわぁ……!」

 

わたくしたちは、昨晩に膨れきって樽のようになっていたおなかをぺろんとめくり――すっかり消化しきって元の通りになった、おへその形までまったく同じなお互いを見て、思わずに笑ってしまいましたわ。

 

ああ、ユリア様。

 

貴女なら、この妙な感覚の正体すらご存じかもしれないのですわ……。

 

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