悪役貴族転生【女装】悪役令嬢ルート~99通りで断罪される悪役に転生して女装したら死亡フラグが無くなる代わりに周囲の目が怖くなってくんだけど?~ 作:あずももも
町中でのおつかい依頼を終えて。
「はい、こちらで依頼は完了ですね」
「え、ええ……でも、まさか、お貴族のお嬢様たちがこんな依頼を……」
3人娘は――一時的だけど、なぜか僕たち2人と一緒のパーティーになった。
ということで、ルーシーちゃんにモブ子ズ3人を含めて5人になっちゃった状態で受けた依頼。
ひたすらですわですのしゃべり倒すあの子たちとルーシーちゃんを一緒にして大丈夫かなと思いきや、意外とすぐに打ち解けているらしい。
3人組が4人組になってるおかげで相対的に僕が話しかけられる頻度が減って、僕は楽になってるけど……今夜あたりにルーシーちゃんに大丈夫か聞かないとね。
ほら、あの子ってば幸薄で……いや、モブ子ズたちも似た感じか。
なら意外と平気なのかもね。
ほら、モブ子ズはかなり平民寄りの思考回路だし、何より女の子同士だし。
僕?
僕は疲れるよ?
だって男だもん。
男はね、必要な会話ならいくらでもできるけども必要がないと途端に苦痛に感じる生物なんだ。
そんな5人組の子供(内訳・女装男1に女子4)、しかもリーダーの僕は灰をかぶってもやっぱ顔が目立つし、モブ子ズはですのですわ連呼してる。
そりゃあお嬢様5人組と思われるよね。
あれだ、社会見学してる貴族令嬢って感じで。
ちなみに、ルーシーちゃんは目立たないからこそ気づかれないらしい。
なんか隠蔽のスキルとかありそうだね。
そんなわけで30分くらいのおつかいのお代が……5人で割ると現代換算数十円とかブラックも良いところに。
心苦しそうな依頼者のおばさん。
そりゃそうだ、ただの手間賃を渡そうとしたら相手が5人。
しかも明らかに貴族っぽい感じ。
そりゃ心苦しくもあるだろう。
「依頼は、依頼です。ぼ……私たちは納得して受けていますから問題ありません。正当な報酬ですよ」
「本当に……? 夜にお家の人とかが闇討ちしてきたりとか……」
「しませんしません。といいますか、具体的な被害に遭った話は……」
悪い貴族がこの町に巣くっているという。
一体誰なんだ。
よりにもよって悪役貴族たるジュリオン様のお膝元もいいとこの町で、堂々と市民たちから恐れられる悪行三昧をしている輩は。
依頼で僕が貴族って分かるたびにこういう対応されてたら、さすがに腹も立つよ。
しかも将来的に僕の断罪に――ジュリオン様がゲームに登場しないパターンでの扇動役かもしれないんだしな、反乱とか革命の。
で、おばさんに聞けば――知り合いの娘さんが、かわいい見た目だったせいか貴族の付き人みたいな人に連れてかれたのを知ってるとかなんとか。
しかも、貴族ってことを振りかざしてるもんだから、衛兵たちもおいそれと深追いできないんだと。
肝心の、頼れるはずの貴族なデュクロワ家の当主と長男は遠征中っていうか、1年中居ないからどうしても後回しだと。
パパン……そういうとこだぞ。
「……民の方あっての貴族だと言いますのに……存じなかったとは言え、近い血を引く者として、謝罪致します」
全く権限も何もないけども、家の責任は僕の責任でもあるからね。
「い、良いですから顔を上げてくださいお嬢さん! そもそもこの領のデュクロワ様も非常に寛大な統治をしてくださっていますし、お貴族様すべてがとは……」
ふむ、今のところ革命の兆しはまだない様子。
けど、手癖の悪い輩が居るせいで確実に貴族へのヘイトは溜まっていくはずだ。
「いつか必ず、貴族からの狼藉のない世界を目指します。ですからどうか……」
「……貴女みたいな方が居るのなら……ええ。いつか、あのお姫様のように……」
お姫様?
……あ、亡きママンね。
あの人はちょっと……ほら、過激すぎるっていうか、もはや何がどこまで真実なのか分からないから……。
今の僕は「ユリア」っていう正体不明のお嬢様。
ゆえにいくらでも頭をぺこぺこできるし適当な約束もできる。
まぁ守るつもりではあるけども、ジュリオン様ってバレてたらこんな接し方はできないし。
「はぁ……ユリアさま……やっぱり優しい……」
「あの姿こそが貴族令嬢とは何か、ですわぁ……」
「『さすユリ』……受付の方の……いい言葉ですわぁ……」
「『ユリア様は民の1人1人を愛され、心配事がないかと尋ねて回られ』……と……」
ちらりと振り返ると――こっちを見る3人と、なにやら手帳に熱心な1人が居た。
◇
「ということで本日はお疲れ様でしたわ!」
「ユリア様はさすがでしたわね!」
「ルーシー様も、とてもがんばっておられましたわ!」
ああ、この子たちは良い子たちだ……ぴーちくぱーちくうるさいけども。
「ひ、広い部屋……」
「子供とはいえ5人ですもの! でも、こちらの宿のお方がとてもお優しくて……」
かばん1つの僕に、昨日あげた袋が1つのルーシーちゃん。
――そして、デコってる旅行鞄が3つ、昨日までの部屋の倍くらいのサイズの室内に置かれる。
「あの……何も、同じパーティーだからといって同じ部屋でなくとも……」
「ダメですの」
「ダメですわ」
「ひどいですわ」
3人がまったく同じタイミングで「よよよよ」と崩れ、泣く真似をする。
「いえ、あの」
「……あの、ユリアさまは……その。体を、人に見られたくなくって……」
!!
ルーシーちゃん!
「ルーシー様とは洗いっこしましたのに……?」
ぐっ……敵は強い!
「ぼくは……あんまりにも、汚かったので……その、産まれてからずっと、月に何回か川で流す程度だったので……」
「ぶわっ」
「ごめんなさいですの……!」
「良いんですのよ、怒っていませんの……!」
だがルーシーちゃんの方が強かった!
ていうか普通に重い話だった……そこまで汚くなかったと思うんだけどなぁ。
全身隅々まで見ちゃった仲だし、僕が証人だ。
特別に汚くも臭くもなかったってね。
「とにかく、そういうことでしたら仕方ありませんわ」
「そ、そうですか、なら――」
「――でしたら。わたくしたちも汚いので洗ってくれますわね?」
「そうですわ、土臭い貴族令嬢ですもの」
「家を出てからは野宿もたくさんしていますの」
「えっ」
3人の目が――怖い。
自分たちを汚いって言い放ちながら、近づいてくる女の子たち。
「だって、わたくしたち、タオルで拭うだけだったんですもの」
「この宿みたいにお値頃な価格でお湯をいただけなかったんですもの」
「きっと汚いですわ、このままではユリア様のお側には不適格ですわ」
「いえ、でも」
なぜか僕を見てくる子たち。
……ルーシーちゃん!
「……ユリアさまをぼくだけでひとりじめは……よくないかも……」
ルーシーちゃん!?
「ということでお湯を頼んできますわ!」
「お風呂ですわ!」
「ユリア様? ――逃げないでくださいまし?」
「ひゅっ」
そうして僕は……洗わされた。
なんとか勘弁してもらって、背中だけを。
ひたすらに途切れなく話しかけられて、男だってバラす暇もなく、背中だけとはいえ――や、仕切りも何もない部屋で、彼女たちのほぼ裸を見せつけられたわけで。
………………………………。
あれ?
貴族令嬢たち――特に貞淑と評判を気にする存在たち。
そんな子たちの裸を見て、洗うためとはいえ触ってごしごしした。
……これ、もう男ってバラせなくなったのでは……?
いや、最終手段としてだけど、(愛人として)娶るって方法はあるんだけどさ……ほら、末娘たちらしいし……。
精神年齢現代一般男性ロリコン趣味無だったらしいからこそ、特に反応はしなかったけども……いや、だからこそ、すさまじい罪悪感が……。