悪役貴族転生【女装】悪役令嬢ルート~99通りで断罪される悪役に転生して女装したら死亡フラグが無くなる代わりに周囲の目が怖くなってくんだけど?~   作:あずももも

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71話 僕の中の何かに任せた代償

「……ユリア様」

 

「はい、デイジー様」

 

「………………………………」

 

「?」

 

いつ見ても綺麗な受付嬢のデイジーさんが――なぜかいつも見てくるのをしばしやりすごし。

 

「拾ったら、ちゃんと面倒を見てくださいね?」

「え? ええ」

 

拾う?

何を?

 

「ぼろぼろの子を拾ってきてはお世話をして、なんとかなったらポイ捨ては……していることはさすユリでも、いずれ、こう……矢印がしっちゃかめっちゃかになって交差したり湾曲したり刺し合ったりと大惨事確定なので」

 

あ、そういうこと。

後半はさっぱりだけど。

 

「よく分かりませんが、別に捨ててなんか」

 

ちなみにこの人は、ときどきよく分からないことを言う。

 

変なユリが好きだからかな。

 

「だってあの4人とも、今朝にパーティーを解消していましたよね?」

「あれとは別件ですし、また会う約束はしていますよ?」

 

「でも、朝、ユリア様とお別れした後に入り口でみんな泣いていましたよ? 私たちで慰めたんですからね?」

 

「……次に会うときにはおみやげも用意しますね」

 

「あと」

「まだ何かあるでしょうか」

 

彼女は、ちらりと――緊張して固まっているテオくんと、あっちこっち見てはしゃいでいるリラちゃんを見て、言う。

 

「……女の子相手ならまだしも、男の子にそれをしてしまいますと」

「しまいますと?」

 

「……いえ、もう手遅れですから良いです」

 

「?」

 

ふと目が合うと――なぜか耳から真っ赤になった彼が、慌てて外を向く。

 

「?」

 

まだ怖がられてるのかな……さすがにあの条件で怒りとかはないはずなのに。

 

「……ユリも良いですけど、オードーも良いですか……!」

 

――聞くところによると、どうやらデイジーさんはこの美人さんなのにもかかわらず、ずっとフリーらしい。

 

……あれかな、メインヒロインたちみたいに変なところがあるからかな。

 

いや、それはあんまりか。

 

あの子たちに比べたら、きっとかわいい程度――ちょっと変わった程度で済むはずだもんね。

 

あと、ユリは分かるけどもオードー……どんな花なんだろう。

 

 

 

 

そんなわけで――残念美人さんが変なことばっか言ってたからほっといたけども、今回の件に関してはギルドごと即座に対応してくれるらしい。

 

僕の言うことを疑うこともなく――まぁ僕が貴族関係者ってバレてるし――すでに衛兵の巡回を重点的に、さらには上位の冒険者たちにも噂の調査を依頼してくれたとか。

 

ありがたいね。

 

「……姉御ってすげぇんだな……」

「驚きました、あんなにすぐに動くだなんて」

 

「それだけ有名だったのでしょう、かの貴族は」

 

「いえ、ユリア様の影響力が」

 

「私は初等ランクの新入りですよ?」

「????」

 

――聞けば、その「誘拐」は2年くらい前から始まったらしい。

 

それから何度も領主――パパンに知らせてあるんだとか。

 

だから衛兵へ巡回を頼みやすくはなっているらしいけども――それだけ。

つまり父さんたちは、この件については取るに足らないと見なしている。

 

……外の脅威。

 

割とガチで本格的に人間を滅ぼそうとしてきてる魔王軍(魔王様不在&ぽんこつ幹部討伐済みでもたぶん主人公くんの熟成を待たないと押し返すことすら不可能)と、毎年のようにかなり激しい戦闘を繰り返しているのが辺境伯であるデュクロワ家だ。

 

だから――子供を誘拐している「程度」の悪に手を割く余裕がないのは理解できる。

 

そもそもとして人類圏っていう国境なんかよりも大切なものを守る役目なんだ、領やそのものや町全体をどうこうするわけでもない。

 

「ただただ変態趣味で暴れている小悪党程度への対処のせいでうっかり最前線を落とされました」なんてのは本末転倒。

 

それは、僕だって分かる。

 

いや、むしろ前世で戦略ゲーとかやったりしていたらしい、おそらくはこの世界の大半の人たちよりも大局を意識できる僕だからこそ分かる。

 

だけど。

 

だからこそ、同時に思うんだ。

 

「――子供に手を出すような輩……これまでの罪を悔いるほどの罰を与えねば気が済まない……!」

 

「ぴぃっ!?」

「また目つきが……!」

 

ここが前世で住んでいたところみたいな、平和とはほど遠い場所っていうのは理解してる。

 

それでも――後方で安全な場所のはずが、人間の屑ごときのせいで私の大切な町が、――――――。

 

………………………………。

 

あれ?

 

なんで僕、こんなに怒ってるんだ?

 

「ひ、ひぃ……石が、浮いてるぅ……」

「ど、どうか、怒りを鎮めてください!」

 

「……失礼しました」

 

――からんからん。

 

僕の周囲で、地面に落ちてたはずの小石が浮き上がっていたのが落ちる。

 

「人前で、魔力の暴走など……し、淑女……として、はしたないですね」

 

淑女とか言っちゃったし……やっぱりなんか変になってる。

 

……さっき「体を任せる感覚」にしたから?

 

ジュリオン様の本性っていうか本能、その中でもすぐ怒り散らすあれのせい?

 

………………………………。

 

さっきのはしょうがなかったけども……うん、ジュリオン様の残り香っぽい何かに頼るのは、どうしようもないときにしておこう……なんだか怖いし。

 

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