悪役貴族転生【女装】悪役令嬢ルート~99通りで断罪される悪役に転生して女装したら死亡フラグが無くなる代わりに周囲の目が怖くなってくんだけど?~   作:あずももも

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81話 やけくそな女王様プレイ

げしっ。

 

僕は、足元でぶるぶる震えている豚を――用意されたハイヒールのかかとで踏んづける。

 

「話しなさい」

 

「ぐふぅ! ぶひぃ!」

 

「鳴き声ではなく、人の言葉を話しなさい」

「ぐふっ!!!!」

 

細い先端がぶるぶるしたお腹の肉に食い込んで痛そうだ。

 

けれど、これくらいでも「足りないけど遠慮がちだからこその初々しさで気持ちが良い」そうだからこのままで良いらしい。

 

むしろ、ちょっとでも力を緩めると下からぐりんと首を回して僕を見上げてきて、きらきらとした眼差しで――おぇぇぇ――だから気を抜けないんだ。

 

「――つまり?」

 

「はいぃ! 幼きセレスティーヌ姫に調教いただいたおかげで、儂は目覚めたので――ぶひぃ!」

 

ぐっ。

 

僕は少しだけ足先へ体重を込める。

 

「声がうるさい。さっき聞きました、しつこい」

 

「はひぃ……!」

 

「……ユリア様に、こんな才能が……! やはりさすユリです……! 豚――げふんげふん、子爵とはいえお貴族相手に、踏むだけで自白を!」

 

デイジーさんが壊れてる。

ああ、そういやこの子、よく分かんないこといつも呟いてたもんね。

 

「ああ、セレスティーヌ様……貴女のご息――女は、確かに貴女の血を……!」

「形見として王都から強引に奪い取――譲ってもらい寝室に保管していました靴が、まさかこんなところで役に立つだなんて……!」

 

使用人さんたちが――本物のメイド服を着た人たちが、きゃっきゃうふふしてる。

 

ジュリオン様だったころの記憶では、僕の前でこんなに笑顔でハイテンションだったことなんてないはずなのにね。

 

ぐりっ。

 

「はふんっ!」

 

「………………………………」

 

――ハイヒール。

 

その形状が発生した経緯的に、中世なのに汚物が空を飛び交わない奇跡できちゃなくないこの世界では、存在しえない靴。

 

でもやっぱり女の人の美に対する欲求で結局は生み出されたらしいそれを、僕は足に――しかも、なぜかぴったり、なぜか母親のお下がり(二十数年越し)のそれを薄い靴下越しに身に付け、悪徳貴族だった存在へぐりぐりとさせられてる僕。

 

これ、なんでも社交界デビューのときに履いたハイヒールだそうな。

 

そしてこれが、僕にぴったり。

そして僕の社交界デビューは、数ヶ月先らしい。

 

「………………………………」

 

たくさん食べて大きくなろう。

 

そしてこれが履けないように……そうすればきっと、

 

「ご安心くださいジュ――リア様! セレスティーヌ様が嫁ぐまでの毎年分、サイズ違いがございます!」

「セレスティーヌ様が愛用されていたので、きっとお似合いかと!」

 

だめだ、逃げ道は最初から塞がれていた。

僕の産まれる前から。

 

なんてことだ。

 

ジュリオン様の人生は最初からデッドエンドだったんだ。

 

「女王様……とは、場合によっては口にするだけで不敬で処罰される言葉ですが」

「ジュ――リア様は、血筋としては万が一でそうなっても……」

 

「実際、セレスティーヌ様が身罷られるまではその声が根強かったと」

「はい、貴族にも平民にも大人気でしたので」

 

「セレスティーヌ様だって、旦那様に一目惚れをなさってぱくりんちょしなければ女王様になれる可能性が」

 

「あのお方はイケメンに弱かったので仕方がありませんね」

「細マッチョのイケメンが大好物だったので仕方がありません」

 

おお、母さん。

 

いろいろと聞こえてくるいろいろに反してイケメンに弱い母さんよ。

 

「やっぱり……! 初めての受付をしたときから気品があったんです! たったの数日で何人も直接に堕として、間接的には何十人も……」

「ふむ……デイジー様。今後は屋敷からの直通の……」

 

はぁ……いいなぁ。

 

家から来てくれたメイドさんたちとデイジーさんが、きゃっきゃうふふしてる。

豚さんの鳴き声で全然聞こえないけども、とにかく楽しそうで。

 

「……背中の……あっ、も、もうちょっと下を……」

 

「ここか?」

「ぶひぃ!」

 

「話しなさい」

「ぶひぶひぃ!」

 

豚さん相手には蔑んだような話し方。

 

――「そうしてくれないと自白しない」って言われた以上、続けるしかないんだ。

 

「汚物を眺めるような視線と顔つきと声音じゃないと言わない」とか言われたら。

 

しかも、ここに居る当事者の衆人環視でっていうリクエスト付き。

もういやだ、変態の相手なんて。

 

僕は極めてノーマルなんだ。

少なくとも前世の僕もジュリオン様(故・幼)もその点では同じなんだ。

 

「ぶひぃ! ……そのようなわけで、儂は幼きセレスティーヌ姫に直接乗り込んでもらう名誉を賜り、小さな子供に足蹴にされるという新しい境地を――」

 

「そこはいいから続きを」

 

「ぶひぃ! ――そうして改心した儂は、一生あのお方の奴隷として」

 

――ぐりっ。

 

かなり思いっ切りお肉をえぐる感覚。

 

「不要な枝葉末節を省き簡潔に」

「ぶっひぃぃぃ!!」

 

……これでもダメらしい。

 

正確には、この刺激でもこいつにとってはご褒美になっちゃうらしい。

ほら、僕の足元でぴくぴくと蠢いてるし。

 

もうやだよ、こんなの。

 

何が悲しくて太ったおじさんを踏みつけて情報を聞き出すとかいう仕事をしなきゃならないんだ。

 

「……なぁ兄貴。あたいもお仕置きされるようなことしたら、ああやって姉御に踏んでもらえるかな……?」

「馬鹿、戻ってこいリラ。そういうのは俺が引き受ける」

 

ああ。

 

こんな女王様プレイをさせられたせいで、見てよ。

常識人枠だったはずのテオくんが、もう手遅れだ。

 

いや、目を逸らしてただけでおでこちゃんもおでこを真っ赤にしながら息が荒い。

 

たったの7歳で何かに目覚めている。

癖のないサブヒロインが癖でしかないメインヒロインみたいになってきている。

 

癒やしが無くなってきた。

 

もういやだ。

 

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