Angel Beats!*Another World*   作:桐花優羽

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No.0 始まりの音色

__いつからだったか、いつも同じ夢を見ていた。

 

 はたから聞けば、なんの変哲もないただの夢だろう。

夢なんて、いつも支離滅裂で、不可思議で。

しかし、私からすればそうは思えない。すごく、すごく現実的な夢。

 

その夢は、あの頃に何度も何度も繰り返し見続けていた。

全く同じ内容で、いつも変わらない風景の中、私と…「誰か」がいる。

どこかで知り合ったのか、なぜか既視感がある。

その「誰か」は、必ず最後に、私にこう語り掛ける。

 

『…本当の自分を、どうか…。』

 

「どうか」、の続きは、いつもノイズがかかったように聞こえなくなる

幾度となく同じ夢を見続けていたが、「本当の自分」という言葉の意味が理解できないままだった。

 

私は私、樋野 瞑(ひの めい)。それに間違いはない。

自分自身、その自覚があって、生きてきている。

その夢に、何か意味があるのか?

はたまた、それが自分の何を表しているのか。

 

生前はそんなことを気にもしなかった。

それよりも、するべきことがあまりも大きすぎた。

自分が唯一抱いた大きな夢をかなえるには、そこまで時間をさけなかった。

 

でも、今ではすっかりやることがなくなった。

だからこそ、始めて見ようと思った。

かつての自分が見ていた、夢の真相と、かつての自分が抱いていた夢をかなえる事を。

 

今になって知るのかもしれない、

そんなふたつの夢の終焉(フィナーレ)を思い浮かべて、私は今日も息をする。

 

私の中の時が永遠に止まった、この世界で。

 

 

***

 

 

「…あいたっ」

 

 ゴンッという鈍い音が響き渡る。

なかなかに大きい音だっただろうが、誰もこちらを見ない。

それどころか、人の姿がなかった。

 

それは当然のことで、時刻はもうじき午後の授業開始のチャイムが鳴る頃。

しかも、学習棟からは離れた管理棟にあるこの図書室には、生徒一人といなかった。

 

遅刻せずに教室に戻るには、あまりも遅すぎる時間だった。

 

もとは趣味の読書に耽っていたのに、いつの間にかうつらうつらしていたらしく、

結果としてもたれかかっていた本棚の角に頭をぶつけたわけだ。

 

どうしたものかと思っていると、ひとりの女性がこちらに向かってきていた。

 

「…ねぇ、樋野(ひの)さん。もうすぐ授業だけど…戻らなくて大丈夫?」

 

声をかけてきたのは、見知った顔。

なんともうらやましいことに、すらりとしたスタイルのいい女性である。

今ではもう、すっかり顔なじみになってしまっている、図書室の司書さんだった。

 

彼女は心配そうに私を見下ろす。

きっと今の時間のことを言いたいのだろうと思った。

『このままだと遅刻判定になるんじゃないか』、という、司書さんの気遣いだろう。

 

「あはは、ダイジョーブです。走っていけばすぐなんで。」

 

「本当?」

 

「もちろんです!私、足には自信がありますから。」

 

腕を大きく振り上げてアピールすように、司書さんに元気に答えた。

それを見た司書さんは、やれやれとした表情を浮かべ、

 

「ま、あんまり走りすぎないで、気を付けてね。」

 

「当然です。ここでけがをしては本末転倒、ここに遊びに来れなくなっちゃいます。」

 

「確かにねぇ…」

 

「はい!ですから、また授業が終わったらここまで来ます。もちろん今度はちゃんと歩いて、ですが。」

 

「そう、待ってるわ。行ってらっしゃい。」

 

「はい!行ってきます!」

 

そんな感じで会話をして、私はがばっと立ち上がる。

 

出入り口のドアに向かってかけていこうとする私に対し、

司書さんは小さく私に手を振り、走り去っていく私を見送ってくれる。

 

これで、今日も一日の半分が終わる。

そしてまた、日々の疑問の中で生きていく。

 

…それが私の日常。

 

いつの間にかやってきていたこの世界で、

疑問を抱きながら、そしてその疑問を見て見ぬふりをしながら。

今日も私はいつも通りの生活を送る。

 

それが私のすべてだった。

 

そうして私は、午後の授業に出席するべく、全速力で管理棟の廊下を駆けだした。

 

 

***

 

 

「…で?なんであんた達は『人間を見つけてきなさい』っていうと、

いつも気絶してるか負傷してるか、はたまた死んでるかの人間をつかまえてくるわけ?」

 

 ここは、学園の中のとある一室。

並べられたソファーと机、そしていかにも堅苦しい回転椅子。

それから察するに、どうやらここは校長室のようだった。

 

しかし、校長室であるにもかかわらず、肝心の校長や教頭などといった教師の姿はない。

そこにいたのは、数名の男女。彼らは制服と思われる服を着用していた。

 

そんな本部の中央、本来は校長が使用する椅子と机の前に、あきれ顔の少女がひとり。

机に足を乗せて、行儀悪くどかりと座っていた。

 

そして聞こえてくるのは、彼らの話声。

 

「…すまない、ゆりっぺ。今回は…その…事故だ。」

 

「事故ぉ?」

 

「…。」

 

「野田君、それはいくら何でも苦しい言い訳よ。あの子、全身ざっくりなのよ?」

 

「うっ…」

 

少女の辛辣な口調に、生徒の一人が黙り込んでしまう。

話の内容から考えてみても、とてもいい話ではない。

あきらかに説教を受けている様子だった。

 

そしてまた、少女は一つため息をつき、

 

「それで?なんでこの子はここまで刻まれるはめになったのか、誰でもいいから説明してごらんなさいよ」

 

あきれた、とでも言わんばかりの表情で、周りの生徒たちに問いかけた。

 

「んじゃ、それは俺から。」

 

答えたのは、入り口近くにいた青髪の少年。

彼もまた、やれやれと言わんばかりの表情で少女に返答していた。

 

「へぇ?じゃあどうぞ?日向くん。」

 

試すような口ぶりで、少女は少年に尋ねる。

どうやらほとんど信頼していないらしい。よほど信用にかけているのだろうか…。

 

「まず初めに、野田が管理棟のすぐ横にある非常階段の入り口前でいつものアレ(ハルバード)を振り回してたんだ。」

 

「ふぅん。それで?」

 

「それでだな、急に前からその女子が走ってきたわけだ。ただ走ってくるだけじゃない。

それも全速力だったもんだから、勢い余ってというかなんというか、そのまま野田がこう…ざっくり。」

 

青髪の少年は、少女に向かって精一杯熱弁していた。

しかし、それは少女には大して響かなかったらしい。

 

「もはや話にならないわ。ったく…ほんっと、頭を使わせてないのにひどい有様ね。」

 

彼女は無言になり、真顔になった。

そして、その場に静寂が訪れた。

聞こえるのは、外で部活の練習でもしているのであろう生徒たちの声と、吹奏楽部の練習音。

いかにも学校の日常らしい雑音が響いていた。

 

誰も話さず、無言の間が過ぎる。

しかしその静寂は、どうやら私の目覚めによって打ち砕かれたらしい。

 

「…あ、その人、起きたんじゃない?」

 

数人の生徒たちのうちの一人が、私のほうを見てそう言った。

それに続き、部屋にいたほぼ全員が私のほうを振り向く。

 

「あら、目が覚めた?」

 

先ほどの少女が、こちらを見て告げた。

先ほどの不機嫌そうな様子とは打って変わり、こちらに対し友好的な表情をしていた。

 

「えと…あの…」

 

何か話すべきだっただろう。しかし、知らないところで目覚めた今の状況に、何を発すればよいのかわからなかった。

 

だが、このままにしているわけにはいかない。

まずはさっきの状況を思い出してみよう…。そう思い、ここに来るまでの情景を思い返した。

 

始業のチャイムが近づき、急いで図書室のある管理棟から学習棟に向かおうと、まずは廊下を全力ダッシュ。

そしてこの間見つけたショートカットルート(非常階段を渡ってそのまま中庭に出る→目の前が学習棟入り口!)を通ろうとして…

 

「っ!?」

 

そこまで思い出し、身の毛がよだった。

理由は明確で、ここで目覚める前、最後に見た風景があまりにもグロテスクだったからである。

なんせ、一面に飛び散る真紅の花が、自身の咲かせたものだったのだ。

 

そこら中に飛び散ったであろう真紅の花は、まるで彼岸花のように広がっていた。

そんな光景を思い出し、とうとう混乱の渦に巻き込まれる。

 

「…私…死んでない?…いやでも…ん?」

 

そんな感じで何かをぶつぶつとつぶやきながら、頭を抱え込んでいた。

そんななか、生徒たちは会話を続けていく。

 

「ねぇ…野田君、あなたのせいでこの子おかしくなっちゃってるんだけど。」

 

「まぁそう責めてやるなよ、ゆりっぺ。」

 

そこまでならよかったのだろう。

しかし少年はこう続けた。

 

「…ほら、野田も普段のかませ犬ぶりを封印して反省してるようだぜ?」

 

「あぁ…すまない、俺は反省している。ゆりっぺ。」

 

…。

 

「………ってなんだと日向ァ!?てめぇ喧嘩を売っているのか!?」

 

そして紫髪の少年は青髪の少年に武器を向ける。

 

「はぁぁ!?俺なにか悪いこと言ったか!?ホワーイ!?」

 

「…日向さん。それ、流行らせたいんですか?」

 

全く気が付かなかったが、金髪の小柄な少女が、その部屋にはいた。

彼女が部屋の隅にいたからだろうか、非常に影が薄いうえに、存在すらも気づかせないほどだった。

 

「ちげぇよ!つか遊佐!キャラコメのネタをここまで持ってくるな!そしてよくしゃべったな!?」

 

「…あさはかなり。」

 

また一人、別の少女の声がした。

 

「うぉお!って、なにすんだよ!?」

 

「…ぐぬぬぬぬぬっ…」

 

「おい野田ァ!ここで切り刻んだら絞られるぞ!?」

 

紫髪の少年は、青髪の少年に武器の柄の部分で殴ろうとしていた。

彼はそれを寸前で抑えているらしかった。

 

「そんなこと知るかぁ!俺はゆりっぺの指示以外はきかん!」

 

「聞けよ!」

 

とまらない部屋での喧騒。それはどんどんとヒートアップをしていく。

 

「松下五段何とか…って、なんでいないんだよ!」

 

「さっき食堂に行ってくるとか言って出ていったぞ。」

 

「はぁぁぁ!?くそっ…おい音無っ!返答だけじゃなくて早く野田を止めてくれよ!」

 

「なんで俺が…」

 

そう言い終わった途端、

 

「…うっっっるっさぁぁぁぁいっっ!!!!」

 

緑のリボンを付けた、あの強気な少女が声を荒げる。

それを最後に、部屋は一瞬の静寂に包まれる。

 

「ひぃぃぃ!ゆりっぺがキレたぁ!」

 

「誰のせいでだと思ってんだぁぁぁ!!?」

 

「…悪魔のような人だッ!」

 

気付けば、部屋には大勢の生徒たちがいた。

みんな同じ服装で、私とは違う服装で。

 

そういえば、学園の中で見たことがある。

何千人を超える生徒を収容するこの学園では、度々違う制服を着用した生徒を見かけていた気がする。

もっとも、平和で一般的な生活を送りたい私からすれば、彼らは不良同然であり、

近づかないほうがいいだろうと勝手に思い込んでいた。

 

いざ近づいてみれば、これだ。

 

再びぎゃーぎゃーと騒ぎ出す一行達。

 

そんな中、まとまりのない彼らの中から一人の男があらわれた。

 

「よぉ、新入り。」

 

彼は、まっすぐに私に向かい、そう言ってきた。

しかし、彼は着ている服装が周りと違う。

それはよく見た学園指定の詰襟だった。

不思議に思うも、彼の目をじっと見つめた。

 

「あの…」

 

「…あ、俺は稗田(ひえだ)。あんたと同じ、死人だ。」

 

 

***

 

 




皆さまこんにちは(´ω`*)
活動報告のほうで軽ーくあいさつした程度ですが、今回は本物の投稿です!

一度は書いてみたかった展開をこれでもかと詰め込んだ作品にしたいと考えております。

ありえないほど小説家には向いていない文章の書き方で申し訳ないですが、今後ともよろしくお願いします。

by桐花優羽
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