【聖龍伝説:第二章】英雄達の日々 作:セイントドラゴン・レジェンド
■今回の話は、主人公とヒロインの見る夢の内容を執筆しています。最初は主人公で次はヒロインの見る夢です。
■更に次回から新シリーズが始まるので、ヒロインの夢にはこの先に仲間になるキャラを登場させます(敢えてキャラの名前は出していませんが、特徴だけは記載していますので解る人には解ります)
■そして最後の方には新シリーズに出てくるキャラに因んだフレーズも出て来るので見逃さず。ちなみに次回から、色んな展開で他キャラに関係有るフレーズを出して行きます。
(映画のアベンジャーズの様に、話が繋がるアイアンマンやハルクに他のヒーローに関する物やニュースが登場する感じです)
過去と未来と悪夢
[過去の記憶]
ふと修司が目を開くと、其処はアニメタウンの自室では無かった。
布団から起き上がり周りを見回してみると、其処は修司の実家。
修司は未だ、頭が冴えない状態で布団から起き上がった。
そして階段を下り、下のリビングに足を運んだ。
「……おはよう」
修司が呟くように言うと、母親が素気なく言葉を返した。
「……其処にパンが有るでしょ。勝手に食べてなさい」
母親は自分の分の朝食を食べながら、修司と目を合わせず答えた。
そして修司はテーブルに用意された朝食を無言で食した。
隣の席には父親が座り、新聞を読みながら無言で朝食を頬張っていた。
目の前の席では母親が座って食事をしている。修司と目を合わせようとはせずに。
更に母親の隣では妹が不機嫌そうな顔をしながら牛乳を飲んでいた。
修司の一日の始まりは決まって、こんな感じ。
家族の誰とも自分とは会話どころか目も合わせようともせず重苦しい空気の中で朝食を済ませる。
そして朝食を済ませると洗面所に行き、其処で顔を洗い、歯を磨いた。
すると、其処に妹がやって来て修司を睨みつけながら、言葉を発した。
「早くしてくんない? 友達が待ってるんだけど」
そう言い放ちながら、妹は修司を押しのけ、無理やり洗面台を横取った。
その後、自室で着替えようとすると、また妹がやって来て修司に言い寄る。
「出てってくんない? 私も着替えるんだから」
そう言いながら、無理やり修司を部屋から追い出した。
修司は仕方なく、廊下で着替え始める。
着替え終わり、玄関に向かおうとリビングを出ようとする修司は両親に軽く挨拶をした。
「……いってきます」
しかし両親は何も言わず、修司に返事をする事は無かった。
そして修司は玄関で靴を履き、家を出た。
その修司に続き、妹も家から出て来て、前を歩く修司を押しのけた。
「邪魔だよ、バカ修司」
そう吐き捨てながら、妹は先に走って行き去り少し先に居た自分の友達と顔を合わすと、そのまま一緒に登校。
そして修司の方は再び歩き始めた。
登校中、誰も修司と顔を合わす事は無く、挨拶も、言葉すら交わす事は無かった。
しかし、そんな状況でも唯一、修司には感じられる事が有った。
それは、周りからの【白い目】。
話す事も、笑う事も無い修司を、まるで異形の者の様に見る眼つき。
そんな目は、学校でも感じられた。
クラスで授業中、修司は無言で、無愛想な顔付きで机に向かい教科書を見つめていた。
そんな時も、周りからの【白い目】を修司は気にしていた。
休み時間、教室の中で男子生徒達がバカ騒ぎをしているのを女子生徒が注意していた。
「ちょっと男子! いい加減にしなさいよ」
「ウッセエ、女には関係ないだろぅ」
茶化しながら女子を小馬鹿にする男子を見て、周りの生徒達は少し笑い有っていた。
「……プッ、くく」
席に座ってた修司も、思わず小さく笑ってしまった。
その時、そんな修司を見た女子が歩み寄って来て、修司に言い放った。
「ちょっと修司。アンタの笑い顔、不気味なんだから笑わないでくれる? 見ててキモイんだけど」
女子は修司を見下しながら言い切った。
「……」
それに対し、修司は何も言わなかった。
「まったく、修司が笑っていると気分が悪くなるわ」
「ホントだなぁ」
「気味悪いったら、ありゃしねえ」
周りの生徒達も、挙って修司に言い捨てた。
修司が笑わないのは、笑えないからではない。
笑った顔を『気味が悪い』、『キモイ』。そう言われた為に、心から笑う事、心から他人に笑顔を見せる事ができなくなってしまったのだ。
そして給食の時間。
六人で机をくっ付け、一組となり食事をする形式。
しかし修司だけは皆とは離れて食事をしていた。
修司が机を、相手の机にくっ付けようとしてもすぐに相手は自分の机を修司の机から引き離すので、修司も相手の事を考えての配慮だった。
昼休み。修司は独りで図書室で本を読んでいた。
読んでいた本は漫画で有り、タイトルは【最終兵器彼女】
(……何でこの子は不幸になってしまうんだろう。愛してくれる人が居るのに、笑う事ができるのに……)
無表情で本を読む修司は、何故素敵な笑顔を見せられる者が。優しさを持ち合わせ、自分を愛してくれる者が居る存在がなぜ不幸になるのか。修司は複雑な心境で熟読していた。
そして、その日の授業が全て終了し修司は複数の男子生徒達と共に職員室に呼ばれていた。
呼ばれた理由は、修司と男子生徒達の些細な事で起きた喧嘩で有った。
喧嘩の原因は、男子生徒による修司への彼を小馬鹿にした発言からだ。
事情を聴き、教師はマニュアル通りの在り来りの対応をし、男子達を修司に謝らせた。
しかし、修司は彼等の顔色を見て相手の男子達が心の底から謝罪していない事に感付いていた。
上辺だけで頭を下げ平然と偽りの謝罪をする周りの人間達を見て修司の心は不信の感情に満たされていった。
その後、教師が電話をし、修司の母親が修司を迎えに来た。
母親は教師に頭を下げ、修司を車に乗せると逃げるようにその場を去って行った。
そして修司は母親の顔色を見て感じ取っていた。
母親は、もう自分の様な存在を子供としても、家族としても共に過ごす事に疲れ切っていた事に。
家に着くと修司は自分の部屋に籠り、独り布団の上に座り込んだ。
そして徐に机の引き出しを開けると修司は其処から一本のカッターを取りだした。
修司はカッターを見つめると、刃を少しずつ出していき自然と自分の左手首に刃を押しあてようとした。
「…………!」
しかし咄嗟に修司は腕からカッターを離してしまった。
修司の心には、少しばかりの死への恐怖が有ったからだ。
そして夕方。リビングで妹がテレビを付けて、見入っていた。
この時、妹が見ていた番組は【ナースエンジェル りりかSOS】その最終回で有った。
テレビでは、りりかが自らの命を捨て、命の花を解放するシーンが流れていた。
それを見た修司は心の中で思っていた。
(優しいのに、愛されているのに、自ら命を捨てるなんて……。失くなるなら、俺の命が消えれば良いのに……)
そして夜になった。
修司は夜中、両親が一階のリビングで会話しているのを気付き気付かれない様両親の会話を聞いた。
「……もう、私疲れた。またあの子学校で問題起こして……何を考えているのか、全く分からないし、もう無理よ! あの子と一緒に居るのは……!」
「だ、だけど、どうしろって言うんだ? 施設に預けても、其処でまた問題起こされても厄介なだけだし」
「もうイヤ! あの子と一緒に居るだけで気が滅入る……! あの子が……あの子の事が分からないの!!」
母親の悲痛な叫びを聞き、修司は布団の中に潜り込んだ。
そして思った。
もう、こんな生活、人生は嫌だ。
偽りばかり付き続ける周りの人間達。
重たく、苦しい空気の中過さなければいけない家での暮らし。
頭が狂いそうになるほど、胸が苦しくなり苛立ちばかりが心に満ちていく。
最早、修司の精神は限界で有った。
そんな修司の頭の中を過る言葉は、一つだけだった。
【死にたい】だが、修司は同時に臆病である為、死ぬ事が恐ろしく感じた。
自分が死んだら、その後どうなるのだろうか。
死んだあと、誰かが自分を覚えてくれるのだろうか。
自分が生きてきた証を、何も残さない間々死ぬ事を、修司は恐ろしく、残念に感じた。
もしも、自分に力が有ったら。自分に、二次元界の英雄達の様な力が有れば。
自分を馬鹿にする者に恐れられ、その相手を威圧する事ができる。
自分と違い、愛される者を護り抜き、その者を未来に残していける
そうして自分自身の生きた証を残す。
修司がそう布団の中で思想している時、突然自分の居た場所が変わった。
薄暗い空間の中、修司は立ち尽くしていると、前方に光があった。
修司がその光に近づいてみると、その光を放っていたのは、一つの鏡で有った。
修司はその鏡に映る自分の姿を見た。
誰にも理解されず、誰からも構ってもらえず、孤独しか感じる事のできない自分の姿。
修司は鏡に映る自分の姿を見ているだけで胸が苦しくなり、心に何とも言えない鬱憤が溜まっていった。
修司は鏡に映る自分を、そして苦しむ自分を映す鏡を、心の底から忌み嫌った。
だが次の瞬間、目の前の鏡が突如アッコ本人の姿に変化したのだった。
「……あ、アッコ…………!!」
目の前に現れたアッコの表情は、何処か寂しげで、空虚な面立ちで修司を見つめていた。
そんな彼女の瞳を見つめていると、その瞳は本来の鏡と同様、苦しみ続ける修司の顔を映し出していた。
修司は本心では、アッコの瞳に映る自分を見ているのが耐えられず何とか彼女の視線から目を逸らそうと思ったのだが、どうしても目を逸らす事ができなかった。
まるで金縛りにでも遭ったのかの如く、顔が、首が、そして体が動かなかったのだ。
更にその時、修司の耳に仲間達の声が入って来た。
まず耳に入ってきたのは早見青児の声だった。
「……俺の親父を、家族を死なす結末にしたのは、お前だったのか修司!」
青児の声は完全に怒りに満ちていた。
更に次は如月ハニーと葉月聖羅。二人の声が聞こえた。
「……私達を生みだしたのは、私達を人でない存在で生まれさせ苦しめ続けたのは、貴方だったの? 修司くん……!!」
「私がパンサーゾラに利用され、そしてお父様が死ぬ結末を考えたのは、修司くんだったのね……」
震える口調で語るハニー、悲しみに満ちた声で話す聖羅。
次に聞こえたのは、イサミ達とりりか達の声だった。
「パパと……パパやママ、お祖父ちゃんと普通の生活が送れなかったのは全部決められていた事だった訳!?」
「なんとか言って下さいよ! 修司さん!!」
「俺達を騙していたのかよ!」
「修司兄ちゃん何とか言いなよっ」
「ダークジョーカーでみんなが苦しんでいたのも、私が加納先輩と戦わなければいけなかったのも、全部が勝手に決められていた事だったの!?」
「俺等が苦しむのを見て楽しんでいたのかよ!」
「……やっぱり、君は僕等とは違う存在だった訳だね。しかも僕達が苦しみ、戦うのを娯楽として楽しんでいた訳か」
悲しみに満ちた口調で、さくらの声も耳に入った。
「……嘘だよね? 私達が架空の存在だなんて……今までのみんなとの思い出も……知世ちゃんや苺鈴ちゃん、そして小狼君への想いも……全て作られたモノだったの?」
そして涙声で聞こえて来たのは、まことの声だった。
「私の両親が死んだのは……パパとママが死んじゃうのは、決まっていた事なの? 私が一人ぼっちになるのは決まっちゃっていたの? そうなの? 修司くん……」
次に聞こえて来たのは、変身怪獣だった。
「オレの両親が殺された事も、オレの王国が滅んだのも、全ては決められた事。想定されていた事だったのか? ……何とか言えよ! 修司!!」
変身怪獣の怒鳴り声が響き渡ると、眼前のアッコが修司に語り始めた。
「……修司は、私達を騙していた訳なのね。私達が嘆き、苦しむのを楽しんでいたのね。……失望したわ」
そう修司に言い放つと、アッコは修司に背を向け、暗闇の中に姿を消して行った。
「ま、待ってくれ……待ってくれ、みんなぁぁぁ!!!」
修司は激しく絶望した。
「…………修司様、修司様!」
「ハッ」
気が付いてみると、修司は自室の仕事机に向かいながら眠ってしまってた。
そしてすぐ傍らで、ウッズが修司の体を揺すり、修司の目を覚まさせた。
「……修司様、大丈夫ですか? 酷く魘(うな)されていたようですが」
荒い呼吸をしながら、修司はウッズの顔を見た。
そして徐に自身の顔に触れてみると、大量の冷や汗が滲み出ていた。
「凄い汗ですね。はい、タオルが此処に有りますのでどうぞ」
そう言ってウッズは修司にタオルを手渡した。
修司は手渡されたタオルで顔を拭きながら部屋の壁に取り付けられている時計に目をやった。
時刻は夜中の11時を過ぎようとしていた。
「修司様、顔色が蒼いですよ。もうお仕事はこれぐらいにして、本日はもうお休みになった方が……」
修司の顔を見て、ウッズが彼に告げた。
「……あ、ああ。大丈夫だよウッズ。せ、せめて、この書類の改ざんだけ済ませてから寝るよ」
そう言って修司は、机上に有った土萠(ともえ)ほたるの書類を手に取った。
修司は蒼白な面立ちで書類と向き合った。
「……ま、まぁ……何とか生年月日を改ざんしておけば、大丈夫、かな……あ、後は此処をこうして……………」
そうして修司は、土萠ほたるの書類の改ざんを済ませ、床に就いた。
[未来の虚像]
「……此処は、何処なの」
気が付くと、アッコは不思議な空間にいた。
そして、その空間が一瞬の内に消え去ると、辺りの景色は瓦礫の山に変わっていった。
「こ、これは……何なの?」
目を凝らして見回すと、其処は見覚えのある場所だった。
そう、アッコの居る瓦礫の山、廃墟の町並みは。いつも修司や皆と生活しているアニメタウンだった。
アッコは驚愕した。
日常の生活を送っている町が、愛してやまない友や家族と過ごしていた町が廃墟と化していたからだ。
更に瓦礫の山と化した町の中を進んで行くと鼻をツーンとするような刺激臭が臭って来た。
(こ、この臭い……鉄の臭い……こ、この臭いって……まさか、血!?)
更にアッコが進んで行くと、眼前には目を覆いたくなるほどの死体の山が築かれていた。
(こ、これは……!! )
アッコは恐怖で背筋が震えた。
アッコが死体の山に目をやっていると、視界に映る景色が別の死体の山に切り替わった。
(こ、この人達は……い、いったい……!?)
まずアッコの目に入った死体は、5人ほどの少女達の死体。
ピンクの髪にピンクの服を着た子の傍らには、色違いで同じような服装をしている女の子達。
しかも彼女達の頭には、猫の様な犬の様な耳が有り、尻尾で付いていた。
更にそのスグ近くには金髪のツインテール、ウェーブを掛けた青い髪、緑のロングヘアーの三人の女の子の死体が横たわっていた。
彼女たちは全員、鋭い刃物の様な武器で体を斬られ血に塗れ、目が見開いた状態で事切れていた。
更に進むと、目に入って来たのは再び三人組の女性達。
しかもそれが二つ、計六人の死体が先ほどの死体と同じく血塗れで絶命していた。
六人のうち三人は甲冑の様な鎧を、騎士の様な身形で、甲冑の色は三人別々で赤・青・緑。
赤の甲冑の女性は赤い髪で細い一本のポニーテール。
青い甲冑の女性は長いストレートヘアーの水色に近い青髪。
そして緑の甲冑の女性は茶髪でメガネを掛けていた。
彼女達は剣を握りしめたまま、絶命していた。
そして後の三人は見た事も無い不思議なスーツを着用していた。
その内の一人、茶髪でウェーブをかけている女性の目には、涙の痕が有った。
(な、何よ……! 何なの、これは……!!?)
アッコは恐ろしくなり、来た道を戻ろうと後ろを振り返ったが振り向いた先に有った光景は、さっきまで進んでいた光景とは別の場所であった。
(こ、これは……ん? この人……)
目に入ったのは、ショートカットの可愛らしい女の子の死体であった。
女の子は既に息は無かったのだが彼女の目は悲しみに満ちている事が、アッコにも感じ取れた。
更にその子の背中には翼の形状をしている、機械の部分が垣間見えた。
(こ、この子は……誰なの?)
アッコがその女の子に歩み寄ろうとした時何かを踏んだ様な感覚がアッコの足に走った。
アッコが足元に目をやると赤い服を身に付けた人形の残骸を踏みつけてしまっていた。
徐に、その人形を手に取ろうとすると赤い人形以外にも周りには複数の人形の残骸があった。
ピンクの可愛らしい服にピンクのリボン、そして瞳の色が緑の金髪の人形。
茶髪でショートカットのシルクハットを被った左の瞳が緑、右の瞳が赤色の人形。
同じく左が緑で右が赤の瞳で茶髪のロングヘアの緑の人形。
頭に黄色いハート型の髪飾りを付けている人形。
計五体の人形が転がっていた。
五体全て斬り付けられ、大きな斬り口が有ったり中には完全に切断されてしまった人形まで有った。
(に、人形……)
アッコは不思議と、その人形達の瞳から、命の様な温もりを感じ取っていた。
そしてアッコが足元の人形らを見回している最中、次に目に入ったのは神秘的な雰囲気を醸し出している少女の亡骸であった。
髪の色は鮮やかな水色で、ふわふわな毛並であった。
目には蝶の形を模した水色のアイマスクを付けており
水色の服を纏い、頭にはティアラを装着していた。
その少女の傍らには、全身緑色の、野性的な感じの服装をしている青年の姿が有った。
青年は緑色の棘だらけの鞭を右手に握ったまま亡くなっており、水色の髪の少女の傍らに、まるで恋人の様に寄り添いながら死んでいた。
(こ、この二人……恋人だったのかしら……? だ、誰か! 誰か居ないの!?)
アッコは心の中で叫んだ。それは声を出そうにも、何故か喉から声が出なかったから。
生きている人の姿を確認したいアッコは辺りを見回しながら駆けまわった。
そんな最中、アッコの眼前に信じられない光景が映った。
(……え? そんな……!)
アッコは自分の目を疑った。
彼女の目に入ったのは、何と自分と仲良くしてくれている聖龍隊の面々。
彼等の亡骸が山のように積まれていた。
(せ、セーラームーン、タキシード仮面……マーズにマーキュリー、それにジュピターにヴィーナス……! さ、最近仲間になってくれたウラヌスにネプチューンも……! え? ぷ、プルートや、サターン!? み、みんな死んじゃっている……!!)
更にセーラー戦士達以外の仲間の亡骸までも目視してしまうアッコ。
(な、ナースエンジェル! さくらちゃん!)
この時、二人の容姿は何故か少し大人びていたが二人を見慣れていたアッコにはスグに二人だと気づいた。
(き、キューティーハニー! そ、それに変身怪獣まで……!!)
アッコが目の前の光景に衝撃を感じている、その時。
仲間達の死体の山、その頂に一人の影を見た。
その者の顔は影で表情が見えなかったがアッコはシルエットだけで、その者の正体を悟った。
(し……修司……!?)
すると影の者はアッコに血で染まった刀を向け言い放った。
「……排除、セヨ……ヒールを、二次元人を……ウミダスものを…………全て、排除、セヨ……」
(し、修司? 何が有ったの? ねぇ修司? 答えてよ、修司……!)
しかし影の者は呟き終わると同時に、アッコに向かって駆け寄った。
そしてアッコの目に、赤く光り、そして狂気に満ちた瞳が映り込むと同時に、彼女の視界が斬撃の様な白い一筋の光で覆われていった。
「……ハッ! こ、此処は……!」
自分の視界が白い光に包まれた瞬間、アッコは自室のベットから飛び起きた。
「はぁ、はぁ……ぜ、全部夢?」
ふと、アッコが自分の寝巻を見てみると。服は襟元から腹の部分までびっしょり汗でずぶ濡れになっており枕にも目をやると寝巻同様、汗でぐっしょりと濡れていた。
「……はぁ……はぁ」
アッコが徐に目ざまし時計に目をやってみると、時刻は夜中の12時を回っていた。
アッコは布団から起き上がり、汗で濡れたシャツや寝巻を脱ぎ捨て新しい下着と寝巻を箪笥から取り出すとスグに着替えた。
そしてクローゼットから新しい枕を取りだすと彼女は脱ぎ捨てたシャツと寝巻、それに枕カバーを抱え込み寝静まっている親を起こさない様、ゆっくりと階段を下りて行った。
そしてアッコは寝汗で濡れた服やカバーを洗濯機に放り込むと洗面台の蛇口をひねり、コップに水を注ぐと、それを一気に飲み干した。
そしてアッコは洗面台の鏡に映る自分の顔を見つめながら思い更けていた。
(ふぅ、嫌な夢見ちゃったわ…………それにしても変な夢だった。見た事のない女の子達、それに聖龍隊のみんなが死んでしまっているなんて……それも、まさか修司がみんなを斬った訳じゃないわよね……!? ……それに、ヒールって何なのかしら? 二次元人って……。も、もう良いわ。所詮夢だもの。早く忘れちゃおっと)
そしてアッコは急ぎ二階の自分の部屋に戻り、再びベットに潜り込み就寝した。
[夢現(ゆめうつつ)]
朝、修司は疲れ切った面立ちで一階のリビングに足を運んだ。
「……おはよう」
リビングのドアを開くと既に部屋で朝食を食べていた変身怪獣にウェルズ、ジュニア。そして食事を運んでいるウッズに修司は挨拶を交わした。
「あっ、おはようございます。修司様」
テーブルに朝食を並べているウッズが返事をする。
「あっ、おはよう義兄さん」
ウッズに続き、今度は彼の息子で修司の弟分であるジュニアが声を掛けた。
「おっ修司。今日は随分下りてくるのが遅かったな」
「うわ、ヒデエな、お前の寝顔。起きたばっかなのに疲れ切っちまっているぞ」
ウェルズ、変身怪獣が修司の顔を見ながら述べた。
「あ、ああ。昨日は遅くまで書類作成をしていたからな。少し寝不足で……」
疲れ切り、蒼白な表情で修司は返答した。
そして変身怪獣やウエルズ。更にジュニア野食事が済み修司が一人で食事をしていると、修司の隣に立っていたウッズが話しかけてきた。
「……修司様、御気分が優れないのですか? 顔色が悪いですが……」
そんなウッズに、修司は憂鬱な面立ちで言った。
「……なぁウッズ。今の俺は……いや、今俺が感じている生活は、夢じゃないよな? 現実だよな」
「な、何を急に言いだすんですか?」
修司の発言に驚くウッズ。
更に修司は神妙な面持ちで話した。
「……ふぅ。ときどき思うんだ……俺がアニメタウンで過ごしている生活が全て夢で、元居た三次元界での生活が現実だった……てよ」
神妙かつ、沈鬱な面立ちで語る修司に対し、ウッズは言った。
「……修司様は……修司様にとって、どちらが夢でどちらが現実なら良いと思いますか?」
すると修司は重い口調で語った。
「……正直、ここでの生活の方が夢の様に感じるからよ。だからコッチでの生活の方が夢だと感じちまうんだよ……」
更に修司は話し続けた。
「でも、それなら夢であっても良い。悪夢のような現実よりも、夢の様な現実(いま)を、俺はずっと過して行きたい……」
暗欝な修司の気持ちを察して、ウッズは彼に何も言えずにいた。
一方、同じ日の朝。加賀美家では。
「……おはよう」「おはようアッコ。どうしたの? 顔色が悪いわよ」
「どうしたんだアッコ? 目の下にクマができているぞ」
「う、うん。ちょっとね……夜に目が覚めちゃって、それで少し寝られなかったのよ」
自分の顔を見て気に掛ける両親に対し、アッコは軽く笑いながら返答した。
そしてアッコは、台所で朝食を作っている母にそっと歩み寄った。
「うん? どうしたの、アッコ? 早く朝ごはん食べちゃいなさいよ。学校に遅刻しちゃうわよ」
するとアッコは、母親に向かって小声で呟くように話しかけた。
「あ、あのね、ママ……実は昨日の夜、洗濯機に洗い物を放り込んだの。悪いけど、それも洗濯してくれない?」
アッコは昨晩、汗でずぶ濡れになった寝巻や枕カバーの事を母に話した。
すると母は、アッコの顔を見ながら発言した。
「あら? アッコ、貴女もしや……」「ん?」
突然顔をにやけさせながら、アッコを見つめる母。
すると母は、アッコに囁く。
「貴女……もしかして昨日の夜……初潮が来たの♡?」「!!」
母親の発言に驚愕するアッコ。
アッコは顔を真っ赤にしながら小声で反論した。
「ち、違うわよ! き、昨日の夜、寝汗掻いちゃったからパジャマとシャツそれに枕カバーを洗濯機に入れて置いただけよ!」
顔を真っ赤にしながら母に言い寄るアッコ。
これを聞いた母は少し残念そうな面立ちで言い返した。
「あら残念。そうだったら今日の夜は御赤飯にしようと思ったのに」
「ま、ママったら……」
顔に手を当てながら発言する母を見て、アッコは顔を赤くしながら呆れていた。
[夢で有ろうと]
そんな朝の情景を済ませ、アッコは身支度を整えて家を出た。
「行って来ます」「行ってらっしゃいアッコ」
アッコは少し疲れた様子で家の玄関を出た。
そして家の前には修司が待っていてくれてた。
「し……修司……」「お、おはようアッコ」
二人は互いに暗い面立ちで挨拶を交わし、そして一緒に登校していった。
道中、二人はそれぞれ昨日の夜の夢が頭から離れず普段通り向き合いながらの登校ができずにいた。
何より二人とも、昨晩の悪夢が原因で目を覚ました後も寝付けなかった為、疲れ果てていた。
アッコはいつも以上に暗い面立ちの修司を気にしていたが自分自身も昨日見た夢が気になってしまい、話しかける事ができなかった。
アッコは思い切って修司に話しかけようとした、その時。
「……な、なぁ。アッコ」「な、なに?」
珍しく修司の方からアッコに話しかけて来た。
「大丈夫か? 顔色が蒼いけど……」
これを聞いたアッコは、思わず笑ってしまった。
「プッ……」「な、何か変な事言ったか?」
修司が訊ねると、アッコは暗かった顔を明るくさせ、笑顔で喋った。
「だ、だって、修司だって顔色が蒼いのに、良くもまあ人の事言えるなぁって……」
「だ、だからって笑うんじゃねえよ」
笑顔で話すアッコの顔を見て、修司は腕を組み照れながら返事する。
二人が会話していると、後から二人を追う様にモコと大将がやって来た。
「おーーい修司、アッコ」「二人ともおはよう」
「あ、モコに大将、おはよう」
アッコは自然と笑顔に戻っていた。
「あらアッコ。目の下に薄らとクマが有るわよ」
「ああ、昨日夜中に目が覚めちゃって、それでちょっとだけ寝不足なんだ」
「大丈夫アッコ。ちゃんと睡眠摂らないと肌が荒れちゃうわよ」
「おいおいモコ。な~に大人ぶっちゃっているんだよ」
「何よ、女の子はね何時だって綺麗でいたいと、そう願っているものなのよ」
「………………」
笑い合いながら自分のすぐ傍らで楽しく過ごしてくれる友。
自分の側で嫌な顔をせず、自分に笑顔を見せてくれる人達。
修司はそんな三人を見ていると、自然と目頭が熱くなり、思わず涙が零れそうになった。
咄嗟に修司は涙が出そうになる両目を右手で押さえ込んだ。
「ん? ど、どうしたの、修司?」
突然目を押さえる修司を見て、アッコが心配した。
「な、何でもない。目にゴミが入っただけだ」
修司は目を押さえこむ理由を誤魔化した。
「大丈夫? ほら、ハンカチが有るから涙拭きなさい」
アッコは修司の目から出た一粒の涙に気付き、修司に自分の持っていたハンカチを手渡した。
「だ、大丈夫? 修司」「平気かオイ」
モコと大将も修司を気にしていた。
「だ、大丈夫だよ……もう平気だ」
修司は目から出た涙をハンカチで拭うと、それを自分のポケットに仕舞い込んだ。
「あ、アッコ。このハンカチはちゃんと家に持って帰って洗濯してから返すよ」
「え? べ、別に良いのに……ホント修司は律儀なのね」
アッコは修司に微笑みながら答えた。
そして四人はそのまま何事も無かったかのように再び歩き始める。
「そうそうアッコ。私遂に手に入れたのよ」「ん? 何を」
「へっへ♪今話題の音楽ユニット《スリーライツ》のコンサートチケット。手に入れるのに苦労したわよ」
「あら良かったじゃない。前からモコ、ライツのコンサートに行ってみたいって言ってたしね」
楽しそうに会話するアッコとモコ。
しかし修司は何も話そうとはしない。会話に入ろうとはしない。
だが自分の側で、傍らで、笑顔で過してくれる人が居るだけで、修司は喜び感極まっていた。
自分と一緒に居てくれる人達、その人達の笑顔を見ているだけで修司は何とも言えない幸福感を感じていた。
そして内心思った。
例え夢であっても良い。
この世界に居る事が夢であっても、現実で無いのなら、せめて覚めないで欲しい。
ずっと夢を見続けていたい、ずっと夢の中のみんなと過して行きたい。
そう心の底から願い続けた。
現実と言う名の悪夢を体験した三次元人。
未来で起こる虚像の戦いを垣間見た二次元人。
理想と現実の間で生き続けて行く二人の運命は、これから本当の意味で始まるのであった。