【聖龍伝説:第二章】英雄達の日々   作:セイントドラゴン・レジェンド

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 アニメタウンの美術館に展示される50カラットも有る巨大サファイア・希望の瞳を盗むとある怪盗一味から予告状が届けられてきます。
 そして市長である修司の自宅にICPOから、あの警部がやって来ます。
 更にあのスイーパーが純粋な少女からの依頼で事件に関与します。



共演する二次元人 ~怪盗一味とスイーパー~

[送られて来た手紙]

 

 もうすぐ夏休みになろうかというある日。

 修司の家には、いつもの如く仲間達が集まっていた。

 

「ふひぃ~、しかし暑っちいなぁ、日本の夏は……」

 変身怪獣が猛暑で参りながら、褐色の肌から出てくる汗を拭っていた。

「し、修司さん。もう少しエアコンの温度下げましょうよ」

 トシが服の胸元を靡かせながら修司に言った。だが修司は

「何を言ってるんだ。扇風機も多めに出してやっているんだから、これぐらいの暑さ我慢しろ。我が家はこれが平常通りの温度なんだよ」

 修司は漫画を読みながら扇風機の横で断言する。

「……それにしても、きっちりドライで28℃なんて以外にも環境の事考えているんだな」

 衛も二枚目な面をムスッとさせながら修司に云う。

「俺が考えてちゃ可笑しいか衛」

 衛の発言に修司は言い返す。

「いや……タダ、本当に蒸し暑いなと思ってな」

 ぼやく衛に修司は更に言い返した。

「我慢我慢。ほら良く言うだろ。【心頭滅却すれば火もまた涼し】ってな」

「出たよ、修司お得意のことわざ発言」

 目を細めながら青児が言った。

 

 そんな時、まことにハニーそしてアッコが氷の入ったコップと麦茶入りのボトルを持って来た。

「みんな、こんな時こそ麦茶飲んでしっかりしないと……」

「そうね。こんなグッタリしている時に事件が起きたら一溜りも無いわよ」

 まこととハニーは互いに茶髪のポニーテール、そして金髪のロングヘアーを扇風機の送風で靡かせながら一人一人にコップを手渡して行った。

「はい修司」「おぅ、サンキュ」

 修司はアッコからコップを手渡されると彼女は修司のコップに麦茶を注いであげた。

「しかしねぇ~、何も起こらないってのも、結構退屈な気分だぜ」

 この変身怪獣の発言に亜美が反論した。

「何言っているのよ変身怪獣。そんな事言うなんて心外だわ。私達は何かが起こるのを待ち望んでいるんじゃなく何も起こらない平和を望んで戦っているんじゃないの」

 亜美に続き、さくらと知世も変身怪獣に告げた。

「そうですよ。私だって何も起こらない、平和な日常を心行くまで堪能したいですよ」

「そうですわ。普段は平和な日常を楽しんでいざとなったらみんなで頑張って行くというのが理想的なんじゃないですか」

「ま、まぁ……」

 のほほんと語る知世の言葉に、変身怪獣は小さく頷いた。

 

 その時。

「何かテレビで面白いのやって無いのかな?」

 徐にテレビのリモコンを手に取り、電源を入れたイサミ。するとテレビ画面にアニメタウンで最も巨大な美術館が映し出された。

 更にキャスターがマイクを持って実況をしていた。

「……美術館前は既に大行列を作っております。アニメタウンの新市長に就任された小田原修司氏が高値で買い取ったとされる50カラットもある巨大サファイア通称【希望の瞳】を見ようと連日多くの人が美術館に傾れ込んでいます。この希望の瞳は文字通り見ているだけで希望にみち溢れる様な幸せな気持ちになれるという伝承が有り……」

 

 これを見た面々はすかさず修司に訊ねた。

「……お前。随分大層なモンを買っちまったんだなぁ」

 変身怪獣が言うと修司が平然と言い返す。

「これがホントの大人買いってやつよ」

「イヤッ、大人買いの意味が違うからなッッ」

「勘違いする人が出るかもしれないから言うんじゃないッッ」

 いつもながら鋭いツッコミをする衛と青児。

 そんな二人のツッコミをスルーしながら修司は更に言った。

「いや何。少しでも町の話題になる様な事を作っていくのも市長としての大事な役目なんだよ。ヒーローばっかじゃ物足りないしな」

「悪かったな、物足りなくて」

「ああ、君はそもそもグッズじだい作られてないよ。恋人だけだ」

「ガァーッン」

 指摘を受けてショックを受ける青児に、衛が言った。

「はは、残念だが青児。やはり俺みたいな華麗な男を世間は認めるんだぜ。お前みたいにタダ銃をドンパチ撃ってばかり居る男は喧しいって思われるぞ」

 自慢げに話す衛に再度修司が言った。

「ああ、言っちゃなんだけどよ衛。タキシード仮面のグッズも作られているとはいえ、ほとんど売れてないからな」

「ええェーー!!」

 思わず目玉を飛び出させながら驚く衛に、更に修司が追い打ちを掛ける。

「そもそも、お前のあんな怪しげな黒コスじゃ誰もほとんど見向きもしねえよ。セーラー戦士達のグッズの方が売上高いんだよ。常識的に考えなよ」

 修司の真顔での発言を聞き、開いた口が締まらない衛。

「正直、ほとんど女キャラもんしか売れてないのが現実だよ。……男で売れているのは小狼だけだし」

「ブーーーーッッ」

 修司の一言で思わず飲んでいた麦茶を噴き出す小狼。

「ちょ、ちょっと! う、売れているって……そもそも俺のグッズなんて有ったんですか!?」

「うん。一応素顔は隠しているとはいえテレビで放映されている美少年って事で人気に火が付いたんだよ」

「そりゃあ小狼なら人気が出る筈よ。ねっ」

「い、いや、でも」

 苺鈴(メイリン)に指摘され困惑する小狼。彼を見て修司は「チッ、イケメンはこれだからよ……」と、目を細めて小狼を睨みつける。

 そんな修司にアッコが訊ねた。

「アレ? そういえば修司の……あ、いや聖龍使いのグッズはどうな訳なの?」

「ああ、聖龍使いのも有るんだけどよ、あんまり製産はしてないんだよな」

「どうして?」

「いや、別に俺のグッズは売らなくても良いかなと思ってよ」

 するとアッコは笑顔で言い返した。

「あら、もし聖龍使いのグッズが出たら私は絶対に買うのにな」

「!」

 

 そんな修司とアッコ、そして小狼を挟み込むように座り込むさくらと苺鈴(メイリン)更には前回命の花だけを自身の命から解放できた為生きていられるりりかと直後に自分の気持ちを打ち明けて彼女と更に仲良くなっている星夜等を見て変身怪獣が右手の中指を立てながら一言。

「……リア充滅せよ!」

 

 そんな最中、ウッズが部屋に入って来た。手には多くの郵便物を抱えていた。

「お、ウッズ。今日は結構郵便物が有るんだな」

 抱え込むウッズを見て修司が声を掛ける。

「はぁ、はい。あ、これ、どうも修司様宛みたいですよ」

 そう言ってウッズは一つの便箋を修司に手渡した。

「ん? 何だ、この手紙は……」

 その手紙は薄い茶色で、赤いロウで封蝋(ふうろう)されており印璽(いんじ)にはローマ字の【L】が施されていた。

「何だろうか……」

 修司は封を切り、中の手紙を読んでみた。

 すると読んでいた修司の顔が次第に驚きに満ちた顔付きに変化して行った。

 そして修司は「……あっと驚くタメゴロウ~~♪」

「って何歌っとるんじゃっ。てゆーかそのネタ今の時代の子達に解るかよ!」

 変身怪獣がツッコム中、修司はウッズを呼んだ。

 

「おい、ウッズ。ちょっと良いか」

「あ、はい。何でしょうか」

 修司はウッズに言った。

「もうすぐアニメタウンに客人等がやって来るから今から準備すっぞ」

「へ? き、客人って誰が来るんですか?」

「まぁ四人だけど、彼らを招くにはあの人を呼ばなきゃいけないからな。計五人だろうな」

「へ? へ??」

 困惑するウッズに修司は更に告げた。

「今すぐICPO(国際刑事警察機構)と連絡を取れ」

 

 

 その場の皆が何事だと言う顔をしながら、修司は手元に有った手紙をテーブルに置いた。

 真赤な蝋で印璽されているLの紋章だけが怪しく目立つ中。

 

 

 

[ICPOから来た男]

 

 手紙が来てから三日後。修司の家に一人の男が訪ねて来た。

「失礼します」

 男は右手を頭に構え、敬礼のポーズで入宅した。

「はいはい、貴方ですね。良く来てくれました。ささ、修司様は三階の自室に居ますので、どうぞ中へ」

「はい、ありがとうございます! ではお言葉に甘えて失礼します」

 男はウッズに招かれ玄関でウッズが用意してくれたず立派に履き替えてから家の中に上がった。

 

 一方、聖龍隊の面々は地下のメインフロアにて室内カメラを通して男の様子を窺っていた。

「……アレが例の人か」

 男を見てジュニアが呟く。

「何だか随分寂びれた恰好してやがるなぁ」

 変身怪獣が男の風貌を見て口を零す。

 その男はヨレヨレのコートを着込み、頭にはコートと同色のかなり使いこんでいると思われる帽子を被っていた。

 

 そして男はウッズの案内の元、家の内壁に設置されている螺旋階段を上っていった。

「いや~、それにしても広い家ですなぁ。見た目はシンプルですが内装は広く、そして居心地が良いですわ」

 修司の家の内装を見て男が発言する。

「いえいえ。御褒めに成られるほど素晴らしいものじゃありませんよ」

 男の発言にウッズは微笑みながら返した。

 

 そして二人は修司の部屋の前に着くと、ウッズがドアをノックした。

「修司様、お客様が此方に着きました」「良し通せ」

 修司の容認の元、二人は修司の部屋に入室した。

「どうぞ、良く来てくれましたね」

 修司は快く訪ねて来た男を出迎えた。

「はっ、ありがとうございます」

 男は再度、修司に向かっても敬礼のポーズで挨拶を交わした。

「ようこそアニメタウンへ。俺がこの町の市長である小田原修司だ」

 修司が自己紹介をすると、男は胸ポケットから一枚の名刺を取り出し修司に名乗ると同時に名刺を手渡した。

「お初にお目にかかります。私、インターポールから出向してきました【銭形幸一】であります」

「話は聞いていますよ銭形さん。かつて江戸時代に活躍していた捕り者の名人【銭形平次】の七代目であり現在はICPOで総務局国際協力部第一課に所属。例のあの怪盗の専任捜査官として世界中で色々と活躍してらっしゃるそうで」

「いえいえ、私なんか……何時も逃げられてばかりで。それなのに市長さんも、まだこんなにお若いのに頑張っていらっしゃいますなぁ」

 互いに謙遜しながら相手を褒め交わす二人。

 

 そして修司は銭形氏にあの手紙を手渡し見せた。

「銭形警部。これが三日前、家に届けられた手紙、いや予告状です」

「はい、どれどれ……」

 

 手紙にはこう記されていた。

『アニメタウン新市長 小田原修司殿へ

 只今アニメタウン中央美術館に展示されている希望の瞳を近いうちに頂きに参ります。

 何事も御用心の程、宜しくお願い致します。

 鮮傑参上 ルパン三世 』

 

 これを呼んだ銭形氏は神妙な顔で告げた。

「……間違いありませんな。これは確かにルパンの出した予告状ですよ、市長」

 そして修司も神妙な面持ちで銭形に言った。

「そうですか、やはり」

「でも安心してください。この銭形、死力を尽くしてルパンの手から巨大サファイアを護って見せましょう!」

 堂々と言い放つ銭形の発言に対し、修司は言い返した。

「はい、頼りにしてますよ銭形警部。それに、貴方ももう御耳にしているとは思いますが我がアニメタウンには治安を護る自警集団・聖龍隊が居ります。今回は彼等にも協力させますので、どうぞ宜しくお願いします」

 だが銭形氏は切り返した。

「ありがとうございます。しかし、それはご遠慮いたします」

「何故ですか?」

 修司が訊くと銭形氏は言った。

「人出が多いと余計に隙と云うものが生じてしまいます。返ってルパン達に好機を与えてしまう危険も有りますし何より……失礼だが聖龍隊のほとんどは女子供ばかりでは無いですか。正直そんな者達に危険な事はやらせたくないのです」

 これに対し修司は太い眉を吊り上げながら銭形に告げた。

「フッ、それなら大丈夫ですよ銭形警部。彼等は今までにも様々な危機的状況を打破して来ましたからね。今回の様なタダの窃盗ぐらい訳無いですよ。無論、ルパンを一番知りつくしている貴方の協力は必需ではありますが」

 修司が発言している最中、銭形は修司の仕事机を拳で叩き、そして豪語した。

「窃盗ぐらいとは何ですか! そんな考えだからダメなんですよ!」

「……」

 いきなり叫ぶように豪語し始めた銭形の言動に思わず修司は怯み言葉を失くした。

 

 更に銭形は続けた。

「奴にとっての窃盗は最早常識を超えているんです! 我々常人には考えもつかない事を平然と遣って退け、そして狙った獲物を必ず奪う! それがルパンと云う男なのです! 例え特殊な能力が有る英雄集団で有っても、例え武装警官が100人居ても、ルパンに対しては皆同じ扱い何です! そもそも奴に常識と云うもの通用しないのです! 最早ルパンは……」

「ルパンは非常識な存在と云う事ですね」

 話を割る様に修司が銭形に言う。

「そ、そうですが……」

 動揺する銭形に、修司は不敵な笑みを見せつけながら言い放った。

「……それなら安心してくださいよ警部。聖龍隊の者も皆、最早非常識な存在ですから。非常識な怪盗には、非常識な英雄が立ち向かう……。目には目を。非常識には、非常識……をね」

 不敵な態度をとる修司を見て、銭形は険しい面持ちで修司に訊ねた。

「……市長。まさかとは思いますが貴方、この状況を楽しんでいませんか? ルパンが盗みに来る、この事態を……」

 銭形の言葉に、修司は微かな笑みを浮かべ鋭い眼光を放ちながら銭形に言った。

「ええ、まさしくその通りですよ。こんな面白い事、楽しめなければ意味が無いでしょう」

 この修司の発言に銭形は顔色を変えて発した。

「な、何を言っているのです! 面白がっている場合ではないでしょうが、市長! あのルパンが巨大サファイアを狙っているんですよ!」

 すると修司は不敵な笑みを浮かべながら銭形に放った。

「いやいや、これは失礼。ただ自分はこう云った状況に危機的感覚を感じられないんですよ。……そう、その逆。実に爽快かつ豪快な盗みをルパンは我々に見せ付けてくれるか。それとも銭形警部の指揮の元、我々聖龍隊がルパンから希望の瞳を護りきれるのか……その結果がどうなるのかという好奇心で心が躍ってしまっているんですよ」

 修司の発言に銭形は言葉を失くした。

 

 更に修司は怪しく微笑みながら言い放った。

「……人生ってのは、楽しまなければ意味が無いんですよ」

 

 

 

 

[怪盗一味の詳細]

 

 修司宅 地下三階に有る極秘施設の一部であるメインフロア。

 聖龍隊の面々はそれぞれ同じ会議用机に座り、修司の方を向いていた。

 其処で修司は聖龍隊の面々を集め、今回の作戦について皆に説明した。

「みんな、今回はICPOから来て下さった銭形警部の指揮を中心とした任務だ。正直、今まで俺たちが相手にしてきた連中とは一味も二味も違うぜ」

 険しい顔付きで皆に云う修司に対して、聖羅が一言言った。

「でも修司。相手は普通の人間なんでしょ。別に普通通り相手にすれば良いだけじゃ……」

 聖羅の発言に修司が異議を唱えた。

「聖羅! それが大きな間違いなんだ。ルパンと云う男は並大抵の泥棒じゃないんだよ」

 修司の発言に続き、小狼(シャオラン)と苺鈴(メイリン)が二人続けて述べた。

「そう云えば、ルパンって怪盗は香港に居た時にも度々耳にした事が有るぜ」

「そう云えば……結構新聞やニュースでも話題になる事が多いわよ」

 香港出身の二人の発言を聞き、続いて冥王せつなが口を開いた。

「私、てっきりルパンって小説の中の人物だと思っていたんですが……まさか実在しているなんて」

 学校の教師をしているせつなに続き今度は彼女や海王みちる、そして土萠ほたると同居している天王はるかが言った。

「うん。僕も良く小説でルパンが活躍している話は何度も読んでいるよ。確か小説のルパンって怪盗と探偵、二つの顔を持っている人物で、舞台であるフランスでは犯罪を犯す怪盗と云うよりも犯罪を追う探偵のイメージが強いって言うけど……」

 はるかの発言に対し、変身怪獣が顔をニヤケさせながら問うた。

「おや? 現代史の苦手なはるかが小説の方だけは読んでいるんだな。ニヒッ」

「ウッ……ま、まぁね」

 現代史が苦手な事を指摘され軽く動揺するはるか。

「私も外国に居た時にルパンのニュースは良くテレビで見ていたわ。かなり派手に報道されていたわよ」

 帰国子女のイサミもルパンに関する報道について語った。

 

「まぁ、これから皆に詳しくルパン一味についての詳細を教えてやるよ。ウッズ」

「はい」

 するとウッズはフロアの照明を暗くし皆に見える立ち位置に設置したスクリーンに投影し始めた。

 

 

 まず最初にスクリーンに映し出されたのは

 赤いジャケットに青いシャツ。そして紫のネクタイをしたサル顔の男だった。

 男に対し、ウッズが説明し始めた。

「皆さん、この人物こそがルパン三世です。ルパン三世・身長179cm体重63kg。年齢及び出身国、そして誕生日に関しては全て不明。情報によりますとルパン自身も自分が何処の国で生まれいつ生まれたのかすら知らない様です。恐らく一族からの情操教育の一環なのかもしれません。知能知数は300とかなりの天才的頭脳の持ち主。彼はあのアルセーヌ・ルパンそう先ほどせつなさんやはるかさんが仰っていた小説に出てくるルパンなのですが彼はそのルパンの孫、三代目にあたる怪盗なのです。祖父の一世同様、卓越した技量を持っており高価な宝石や財宝をコレクトすると云うよりも鮮やかな手口で盗み出す事に生き甲斐を感じている傾向が有り。特技は変装で、成人男性ならほぼ誰にでも変装する事が可能。姿形はもちろん、声やその人物の癖や仕草そして筆跡までも真似る事ができる為、見破る事が非常に困難です。電子機器やインターネットにも精通しておりオーバーテクノロジー的な機械を自作で作る事も可。使用する武器に関しましては彼が愛用している拳銃で〔ワルサーP38〕が最も使用されていますがそれだけでなく様々な武器、そして更に戦車やヘリなども扱っています。その他、高度なドライブテクニックや素手に寄る格闘スキルも持ち合わせております」

 

 ウッズのルパンに対する説明を、皆は黙って聞き入れていた。

「……何か可哀そう。ルパンって」「え?」

 思わず呟くちびうさの言葉に、うさぎは反応した。

「だって自分の誕生日も知らないなんて……」

 幼少の頃(未来の話)、余り両親に構ってもらえなかったちびうさは自分の生まれた日すら知らないルパンに対して、少しばかりの憐みを抱いた。

「宝石や金銭を収集するよりも、盗む行為そのものに快感を感じているとは……何て野郎だ」

 聖龍隊隊士兼私立探偵の早見青児はスクリーンに映し出された笑顔のルパンの顔を睨みながら呟いた。

 

 そしてスクリーンの写真が切り替わり、ルパンに続いて写し出されたのは

 顎鬚(あごひげ)を生やし紺色に近いダークスーツとソフト帽を着用している男の姿であった。

 ルパンに続き、この男についてもウッズは皆に説明した。

「次元大介(じげんだいすけ)。ルパンが最も信頼している相棒です。スミス&ウエッソン、通称S&Wコンバットマグナムを愛用。早撃ち0,3秒のプロフェッショナル。その腕前から傭兵や用心棒としても過して来たらしく次元大介を宿敵として狙ってくる人間も多数確認されています。ルパン同様、卓越した変装技術も持っています」

 

 

 

 次元の顔を見て、恋焦がれる愛野美奈子が本音を口に出した。

「アラ、良い男じゃない♡何なら色仕掛けで落としちゃおっかな♪」

「止めなさいよ美奈子」「そうだよ。相手は所詮、犯罪者なんだよ」

 美奈子の発言に口を出したのは、同じセーラー戦士の火野レイと木野まこと。

 そんな目がハートになっている美奈子に修司が過言した。

「止めとけ美奈子。確か次元大介の資料によれば、次元は女が大の苦手らしい」

「え、そうなの?」

 後頭部の赤いリボンを揺らしながら修司に返事をする美奈子に、修司も返した。

「ああ。次元大介の考えでは〔女は裏切る生き物だから相手にしたくない〕との事だ。それゆえ次元は〔俺は女よりも酒を愛する人生を選ぶ〕と豪語している」

「オッ、次元大介も酒好きなのか?」

 修司の言葉に反応する、同じ酒好きであるウッズの双子の弟ウェルズ。

 彼に対しても修司は返答した。

「まぁ、酒も好きらしいが主に次元は大の愛煙家だそうだ。常に口にはタバコを咥えていて愛飲の銘柄はマールポロやペルメルとの事。正直側には居て欲しくないな」

 タバコの煙を嫌う修司は目を細めて呟いた。

 そして修司は更に説く。

「そう云った思考についてはルパンと次元は対照的な考えの持ち主だ。ルパンの方は逆に〔嘘をついて相手を騙し裏切る部分も、女の魅力〕と考え丸ごと女を愛している男らしいぜ」

 

 美奈子達と修司が会話している最中、ウッズは再び映像を切り替え今度は和服姿で黒い長髪の眼光鋭い男性が映し出された。

 

「彼の名は石川五エ門(いしかわごえもん)。戦国の世で、時の権力者・豊臣秀吉に釜茹での刑に処せられた石川五右衛門の末裔で十三代目。彼が所持している白鞘の日本刀・通称〔斬鉄剣〕はどんな鋼鉄をも斬る事ができる名刀で常人離れした居合いの技による斬撃が主な戦闘手段であります。写真の様な和服を常に身にまとい、時代錯誤な口調や思考が主な特徴」

 

 石川五エ門の説明を聞き終わった変身怪獣が思わず呟く。

「はは、まるで修司みたいな奴だな」

「何だと」

 ウッズの説明を聞き、微笑しながら呟く変身怪獣を睨みつける修司。

「うん……これこそ、真の日本の武芸者って感じね」

 実家が神社で有るレイは、和服姿の五エ門に興味を示した。

「そうですよね。犯罪者とは云え、こんな人がまだ居てくれたんですね」

 かつて幕末の英雄と称された一団の末裔であるイサミは目を輝かせながら発言した。

「剣戟が得意って事か……まぁ、僕でも相手できそうだな」

「そうね。私も加われば更に……」

 主に剣を主流武器にしているはるかと聖羅は互いに口を揃えて告げた。

 

 そして最後にスクリーンに映し出されたのは肌の露出が目立つ美形の女性だった。

「ウホ~~ッ、こりゃまた偉くベッピンなお姉さまだこと♡♡」

 美女に目が無い変身怪獣はメロメロになった。

「なるほど。これは確かに御美しい女性だ」

「はるか……何目の色変えているのかしら」

 女性を遂口説いてしまう傾向のあるはるかに対し表情を一変させて睨むように彼女に告げる恋人のみちる。

「ふむふむ。こんな可憐な女性と相手にできるとは、実に光栄です」

 美人を見ると見境なく言い寄るソウシに、イサミが喝を入れた。

「こらソウシ! また色目使って……」

 イサミの人睨みに思わず躊躇うソウシは内心……

(お~~コワコワ。イサミちゃんは相変わらず怖いなぁ。でも、其処がまた魅力的なんだけどね)

 そんな天王はるかと雪見ソウシ、そして変身怪獣に向かって修司が一言。

「お前等、この女だけは絶対に止めとけ。命がいくつあっても全然足りねえぞ」

「へ?」「ど、どう云うことだい?」「な、何でですか?」

 修司に訊ねる変身怪獣にはるか、ソウシに修司は返した。

「この女はトテツもない悪(ワル)だ。ある意味、ルパンよりも一段と凶悪で手のかかる女だよ」

 

 修司の発言に困惑する面々であったが、其処にウッズが女性について解説した。

「彼女の名前は峰不二子(みねふじこ)。身長は167センチ、そ、それで……」

 急にウッズが顔を赤くさせた。

「? どうしたウッズ?」

 修司が訊ねると、ウッズは恥ずかしそうに訳を話した。

「は、はい。な、何故かこの方の、そ、その……何故なのか峰不二子のスリーサイズまで記述されているんですよ、この資料」

 すると修司は目を細めさせながら、呆れ顔でウッズに言った。

「ウッズ、多分この資料作った奴が相当な不二子ファンだからだろうよ。この女は悪女な癖に結構ファン層が多いらしいからな。まぁ良い続けろ」

 修司に言われ、ウッズは説明を再開した。

「は、はい……え、え~~とバスト99.9、ウェスト55.5、ヒップ88.8。それ以外の詳細は全くの不明です。彼女につきましては〔女盗賊〕や〔女スパイ〕との説も有りますが何れも不明。金銭や宝石を好み、目的のためならルパン達ですら平然と裏切る傾向。それ故に次元大介や石川五エ門からの信頼は限りなく低いのですがルパン本人からは幾度となく許されているみたいです」

「う、裏切っているのに、許しちゃう訳なの。ルパンは……」

 アッコが目を丸くしていると修司が皆に説いた。

「ルパンの思考ではな〔裏切りは女のアクセサリー〕と称している為ほとんど不二子の行為を許しちまっているみたいなんだよ。実に理解しがたい」

 腕を組みながら不満気に話す修司。

 ウッズは更に続けて不二子の解説を話した。

「また峰不二子は金持ちの財産目当てで結婚や婚約までも今まで幾度となく行っており財産を所有していれば容姿にはあまり拘らない様です」

「……典型的な悪女だな」

 

 

 不満そうに眼つきを鋭くさせた修司が呟くと、彼は更に続けて皆に言い放った。

「みんな良く聞け。おそらく今回の予告も、ルパンが不二子の頼みを聞いたことによる犯行声明だろう。ルパンの盗みの大半は不二子に頼まれた事による宝石や現金の強奪が主流だ。ルパン本人は自らの盗みによる欲求を解消し更には惚れこんでいる不二子の御機嫌取りとしても窃盗を行って行き不二子の方は自分にゾッコンのルパンの性格を利用して自分が欲しいと思った宝石や現金を盗らせているんだろう。今回の巨大サファイア・希望の瞳も不二子がルパンに頼んで盗らせようっていう魂胆なのは見え見えだ!こんな下衆な女など、さっさと独房にブチ込んでやれ!!」

 修司は険しい顔付きで皆に向かって熱弁を揮った。

「良いか! 俺たち聖龍隊は今まで人で無い者との戦いを幾度となく潜り抜けて来た! 今回の相手は大怪盗の末裔に狙撃手、そして剣術使いと汚れた悪女の4名だけだ! 俺達の特殊能力、そしてチームワークを駆使しながら同時に銭形警部の助言や指示が有れば必ずルパン一味を捕えられる筈だ! 心して懸かれ!!」

 

 豪語する修司に参謀のジュニアが訊ねた。

「ねぇ義兄さん。何か義兄さんはやたらと銭形警部を推しているけど、何か理由が有るの?」

 すると修司は胸を張って答えた。

「なに、銭形警部は長年ルパンを追って来たベテランだ。正直ルパンに関しては誰よりも理解している男だ。俺達の知らない、いや解りきれないルパンの言動や心理までも把握しきっている。彼のルパンに対する知識と俺達の組織力この二つが重なればルパン一味を完全に抑え込む事が可能な筈だ!」

 

 修司の熱い思想にみなぎる瞳を見てジュニアはもちろん他の聖龍隊士もそれ以上は何も言わなかった。

 

 

 

[美術館での攻防]

 

 その日の夜。

 聖龍隊は銭形警部の部下である警官隊と共に美術館にてルパン達を待ち伏せしていた。

「しかしなぁ、まさか夜遅くまで聖龍隊を務める事になるとは。ふわぁ……」

 思わず欠伸をしてしまうタキシード仮面に青児が告げる。

「我慢しろ。俺たち聖龍隊がたかが怪盗一味すら防ぐ事ができないなんて良い笑い物になるよりマシだろ?」

 そんな中、あの銭形警部が青児たち聖龍隊に近づいてきた。

「おお、君達か。このアニメタウンで治安を護っている聖龍隊とやらは」

 銭形の質問にミラーガールが答えた。

「はい、私達は自分達に有る特殊能力を町の人々の為に使おうと組織されたんです。銭形警部、今日は宜しくお願いしますね」

 ミラーガールの言葉に銭形は顔を渋くさせながら返答した。

「うむ……しかし、こんな女の子達にまで自警団をやらせるとは。いったい市長は何を考えているんだか」

 銭形の発言にすかさずミラーガールが言い返した。

「ぜ、銭形さん。市長は私達の能力を有効利用すると同時に私達はもちろん町のみんなが平和に暮らせるようにとチームを組ませてもらっているんです。其処は理解してください」

 慈愛に満ちた口調で話すミラーガールの言葉に銭形は言った。

「う、うむ。しかし、ぐれぐれも危ない真似だけはしないでほしい。未来有る子供達に何か有ったとなれば、この銭形一生の不覚である。ま、まぁ。子供相手ならルパンも手荒な真似はしないとは思うが……。ど、どちらにしろ、宜しくお願いする所存であります」

 そう言って銭形は皆の所から去っていった。

 この時、銭形は内心思っていた。

(ま、まぁ。女子供ならルパンも変装できないから、返って好都合かもしれんなぁ。正直、警官隊の中にルパン達が紛れ込んでいても可笑しくないからな)

 

 その頃、希望の瞳が展示されている特別フロアでは修司とメタルバードがガラスケースの中で飾られている希望の瞳を見つめていた。

「……これが希望の瞳か、相棒」

「ああそうだ。50カラットも有る巨大サファイア、通称希望の瞳だ」

 目を丸くさせたメタルバードが修司に訊ねると、修司は険しい顔付きで言い返した。

「いったい、ルパン達はどうやって盗み出すんだろうな。正直、防犯装置でガラスケースに無理な力が掛かった瞬間に

アラームが鳴り響くシステムなのによ」

 メタルバードの言葉に修司は平然と言いのけた。

「あのルパンに防犯装置は余り意味をなさない。恐らく何らかの手法を用いて、そう手品の如く盗み出すだろう。まぁ、逃げようとする際に俺達で取り押えれば大丈夫だろう」

「あ、ああ」

 二人が会話している、その時。一人の少女が二人の元に駆け寄って来た。

「ん? お嬢ちゃん、君は誰だい?」

 メタルバードが彼女に訊ねようとすると、修司が彼女に向かって言葉を発した。

「あっ、瑠璃じゃねえか」「し、修司くん。ど、どうも今晩は」

 修司に挨拶をしたのは、修司やアッコと同じクラスメイトで有る碧井瑠璃(あおいるり)。

「瑠璃どうした? こんな夜分に」

 修司が訊ねると瑠璃は不安げな表情で修司に言った。

「う、うん。希望の瞳は大丈夫かなって、し、心配になって。そ、それで遂、此処に……」

「ん? 何でお嬢ちゃんがそんな事を?」

 メタルバードが疑問に思っていると修司が言った。

「ああ、実はな。瑠璃の父親は此処の美術館の館長なんだよ。父親の美術館で窃盗が起こるなんて気の弱い瑠璃にとってはそれだけでも落ち着いていられないんだろうぜ」

「え、ええ。折角修司くんがパパの美術館の為に買ってくれた宝石だし……何事も無ければ良いんだけど……」

「へっ? か、買ってくれた?」

 瑠璃の発言に驚くメタルバードに、修司が耳打ちをした。

「ああ。実は瑠璃の父親の経営しているこの美術館。かなりの財政危機でな。それを打破するために俺が購入した宝石を敢えてこの美術館に展示させたんだよ」

 訳を聞いたメタルバードは思わず笑顔になって修司に言った。

「オオっ、何だよ。それじゃ宝石買ったのはこの子の親父の為だったって事なのかい。早く言ってくれよオイ」

「べ、別に話す必要なんて無いだろう……」

 神妙な面持ちでメタルバードと話す修司を見て、瑠璃が修司に告げた。

「し、修司くん。何だかいつもと様子違うね」

「へ、そうか?」

 修司が瑠璃に訊ねると、彼女は穏やかな笑みを浮かべながら続けて話した。

「うん。いつも学校では笑う事も無いし楽しそうに会話する事も無い修司くんがこんなにも活き活きと人と会話しているなんて。少し珍しいなって……」

「…………」

 瑠璃の言葉に黙り込んでしまう修司であったが、すぐさま彼女に告げた。

「ま、まぁ瑠璃。此処は俺達が警備しているからお前は帰れ。こんな遅くまで出歩いていたんじゃ親が心配すっぞ」

「う、うん。分かったわ……そ、それじゃ修司くんも気を付けて」「ああ」

 修司の発言に小さく頷いた瑠璃は、修司に言葉を掛けると同時にその場から歩き去っていった。

 

 そしてそれから3分も経たない時だった。

 突如美術館内の全ての照明が消えてしまったのであった。

「な、何事だ!」「な、何で照明がいきなり?」

 隊員の一人でもあるウエルズにマーキュリーが驚き発言する中銭形警部がその場の皆に命じた。

「落ち付け! こんな時こそ落ち着いて対処するんだ! 慌ててしまえばそれこそルパンの思う壺だ!」

 皆が慌てる中、一つの人影が颯爽と皆の目の前を駆け抜けて行った。

「ん! 今のは」「ま、まさかルパン!?」

 タキシード仮面とジュピターが言葉を発すると、皆も一目散に人影を追おうとした。

 だが銭形警部が皆の目の前に立ち塞がり、言い放った。

「ダメだ、全員が一度に同時に動いてしまっては! 一部の者だけが影を追い、後はその場にて待機せよ!」

 修司から全面的に銭形の指示で動けと言われていた聖龍隊は指示通り一部の人間だけで人影を追わせ残った面々は変わらずその場に留まった。

 

 そして人影を追っている隊士の一人、早見青児が真っ暗な美術館を歩き回って人影を探索している時だった。

「だ、誰か助けて」

 女性の者と思われる声を聞き、青児は急いで声の主の所に駆けて行った。

「どうしました?」

 青児が駆けつけると、其処には赤毛の長髪で眼鏡を掛けている一人の女性が倒れ込んでいた。

「た、助けてください。先ほど何者かに突き飛ばされて足を挫いてしまって……」

 女性の悲痛な表情を見て青児は躊躇うことなく女性に肩を貸してあげた。

「さっ、もう大丈夫ですよ。このまま医務室まで連れて行きましょう」

「あ、ありがとうございますね…………それっ」

 女は徐に肩に掛けていたポーチから小型のガスボンベを取り出し、それを青児に吸わせた。

「ウッ! ……」

 青児はそのまま気絶してしまった。

「ウヒヒッ、後はこの顔の型を取って……」

 女は急に男口調で喋ると青児の顔を弄り出した。

 

 

 それから数分後、皆の所に修司とメタルバードが駆けつけて来た。

「オイみんな。状況はどうなっている!」

 修司の質問にマーズが答えた。

「そ、それが急に灯りが消えたと思ったら目の前に人影が現れて……!」

「そ、それで、その影はどうした?」

「え、ええ。銭形さんの指示で一部の仲間達が影を追い掛けて行って私達は此処に残っているのよ」

「そ、そうか。良しメタルバード、俺達はさっきまで居た展示フロアまで戻るぞ! ミラーガールとジュピターキッドも一緒について来い!」

『はいっ』

 修司に言われキッドとミラーガールは二人に同行。宝石が展示されているフロアに向かった。

 すると其処には早見青児がいた。

「あっ、青児!」「せ、青児さん。何故此処に?」

 先ほどまで人影を追って姿を消していた青児を見て修司とミラーガールが言葉を発すると、青児が4人に顔を向けて告げた。

「た、大変だ! ほ、宝石が……!」

 青児に言われガラスケースを見てみると、其処には希望の瞳は既に無くなっていた。

「そ、そんなっ」「くっ、もう盗まれていたのか……!」

 驚くミラーガールに悔しがるキッドであったが修司が徐に青児に質問した。

「そういえば青児。お前は何で此処に?」

「そ、それが人影を追っていたら此処に辿りついて……やはり、さっき目の前に現れた人影がルパンだったんだろう」

「クソっ、急いでルパンの後を追うぞ!」

 修司の一声の元、皆がその場から駆け去ろうとしたその時。

「待ってください!」

 修司達に向かって制止したのは銭形警部で有った。

「ぜ、銭形氏……」「ぜ、銭形さん?」

 修司とミラーガールが驚いていると、銭形は青児に近づいて一言。

「まったく。いつもいつも同じような事ばっかやりおって」

 そう云うと銭形は咄嗟に青児の顔を鷲掴みした。

「えっ?」「な、何する気?」

 修司とミラーガールが動揺する中、銭形は青児の顔を引っ張った。

 すると青児の顔の皮は取れてしまい、別の顔が現れた。

「うヒヒ。さっすがとっつぁん。もうこんな芸当はとっつぁんには通じないみたいだなぁ」

『!!』「る、ルパン!」

 素顔が現れ、その顔を見た4人は驚愕し、修司は男の名を思わず叫んだ。

 そんな中、銭形はルパンに向かって豪語した。

「ルパン! 毎度毎度バカの一つ覚えみたいに同じ事しおって! ワシはもう飽き飽きしているんじゃぞ! 今日こそはそんな人生ともおさらばじゃ。神妙に縛に付けぇい!!」

 そんな銭形に対し、ルパンは顔をニヤケさせながら銭形に言う。

「フヒヒ。そんな事言わないでくれよとっつぁん。俺様を死に物狂いで追ってくれるのはとっつぁんとカワイイ女の子だけなんだからねぇ」

「ば、バッカモ~ン! おフザケも此処までだ! 今日こそはお前をとっ捕まえてやる……!」

 そう言いながら銭形はロープ付きの手錠を投げ縄の様に振り回してルパンに向かって投げつけた。

 しかしルパンは颯爽と交わしながらその場から逃げて行った。

「追えーっ、聖龍隊、全員ルパンを追えーー!」

 修司もミラーガール、メタルバード、ジュピターキッドに指示しながら彼等と共にルパンを追った。

 

 

 

 

[出現! マグナム使い]

 

 そして無線を通じて美術館内の警備員及び聖龍隊は全てルパンの所に向かって行った。

 この時、修司は一人物陰で懐から鬼の面を取り出していた。

「良し……武装!」

 誰も見ていない事を確認した修司は聖龍使いに変身した。

「良し、早くルパンを追わねば」

 聖龍使いは颯爽と走っていきルパンを追撃した。

 

 その頃ルパンは美術館内で駆け付けた警備員達と聖龍隊の隊士たちに取り囲まれて身動きができない状況で有った。

「おんやぁ、これはこれは♡目の保養ですなぁ、グシシシ」

 ルパンは聖龍隊の女性陣を見て鼻の下を伸ばしきっていた。

「貴方がルパンね。大人しく観念しなさい」

 キューティーハニーが剣をルパンに向けながら言い放った。

「オオゥ、これはこれは。ボィ~ンなお姉ちゃんだ事。グッフゥ」

 露出の激しいハニーのコスを見て鼻息を荒くするルパン。

「な、何よ、コイツ」「は、話に聞いていたのとは偉い違い……」

 スケベ心丸出しのルパンを見て動揺するマーズとマーキュリー。

「ルパン三世! お前の悪事も此処までだ! 大人しく観念しろッ!」

 タキシード仮面が右手に赤いバラを持ち、そのバラをルパンに向けながら豪語する。

 だがルパンは微笑みながら聖龍隊に向かって言った。

「うふふ、これが噂に聞いた聖龍隊かぁ。確かに、カワイコちゃんばっかで見ているだけでボクちゃんもう幸せだなぁ♡」

 ルパンがお茶等けた態度で語っている最中、聖龍使いがその場に着いた。

「皆の集! 遅れて済まぬぅ!」

「聖龍使い」「る、ルパンが……!」

 聖龍使いを見て困惑しながらも声を掛けるナースエンジェルとさくら。

「やぁ~いやいやい! あ、ルパン三世。主の悪行も、あっ、此処までよぉ。あっ、尋常に、縛に付けえぇい!」

 歌舞伎口調で自分に言う聖龍使いの言動を聞きルパンは笑いながら返した。

「ほっほう。お前さんがカワイコちゃん達を引っ張っている聖龍隊のリーダー、聖龍使いか。噂通りの口調だな。五エ門を思い出すぜ」

 微笑するルパンに対し、聖龍使いは皆に命じた。

「皆の集! こうなったら殺さない程度で構わん! 必殺技でこのサル顔を叩きのめしてしまえ!」

「って、オイオイ。猿顔って、いくらホントの事とは云え酷くない? それに殺さない程度って……」

 ルパンが苦笑しながら呟いていると、銭形も聖龍使いに続き隊士たちに言い放った。

「殺さない程度で有るなら、この銭形も容認いたします! 何よりこのルパン、ゴキブリ並に生命力が強いので多少の事では死にはしません! どうぞ心行くまで痛めつけてやってください」

 銭形の発言を聞いたルパンは顔色を変えて告げた。

「う、うわっ。何を言っちゃっているんだいとっつぁん。多少の事じゃ死なないって、お、俺だってごく普通の人間なんだよっっ」

「ウルサイッ。お前がちょっとやそっとの事じゃ死なない事など、この銭形知り尽くしておるわい! そお~れっ者共、ルパンを取り押えろ!」

『ハハッ!』

 銭形が命じた瞬間、警官隊は一斉にルパンに向かって飛び掛かった。

「うおっと、良いしょっと」

 ルパンは自分に飛び掛かろうとする警官達を振り切りながら、その場から逃げ去ろうとした。

 この時聖龍隊はいくらなんでも普通の人間であるルパンに攻撃をして良いのか解らず、困惑していた。

(ど、どうしよう……いくら何でも、普通の人に向かって技何か使ったら大変な事になりそうだし……こ、こうなったら、アレでも使おうかな)

 困惑していたセーラームーンは咄嗟に頭に装着しているティアラを右手に持ち、構えながら唱えた。

「ムーンティアラ・アクション!」

 セーラームーンがティアラを投げるとティアラは光り輝きながらルパン目掛けて飛んで行った。

「よっしゃっ。これでルパンの奴も……!」

 様子を見ていたウエルズがルパンにティアラがぶつかり彼が目を回して気絶するのを予測していた

 ……その時だった。

 

 一発の銃声が鳴り響き、セーラームーンが投げたティアラが弾かれてしまった。

「な、何っ?」

 セーラームーンは弾かれてしまい自分の手元に戻って来たティアラをキャッチした。

 そして銃声のした方に皆が目を向けると、其処には銃を構えた警備員の男が一人立っていた。

「あ、貴方! いったい何の真似なの!」

 ミスティーハニーが警備員に向かって叫び訪ねた時だった。

 聖龍使いが有る事に気付いて皆にその事実を告げた。

「み、皆の者! あ、あの警備員が持っている拳銃。本来警察官に支給されている拳銃とは全く違うでござる!」

 聖龍使いに指摘され、警備員の構えている拳銃を見てみるとそれは強力な破壊力を持っているS&Wマグナムだった。

「おやおや。銃で分かっちまったようだな」

 警備員はそう言うと、自分の顔を掴み人工マスクを剥ぎ取った。

 マスクから現れたのは昨日修司の地下メインフロアで見せられた顎髭の男、次元大介の顔。

「お、お前は!」「次元……大介……!」

 次元の顔を見て驚愕するトシとヴィーナス。

「おいルパン。お前いつまで遊んでいる積りだ。この町で活躍する聖龍隊とちょっくら遊んでから美術館出ようなんて抜かしやがって。さっさとズラかろうぜ」

「ああ、分かったよ次元ちゃん」

 次元に言われルパンはそそくさとその場から逃げ去っていった。

「あっ、追え追えーー!」

「聖龍隊、出入り口までの通路は全て封鎖せよ! ルパンと次元を追い詰めるのじゃ!」

 銭形と聖龍使いが言い放つ中、ルパンと次元は脇目も反らず美術館の中を走り抜けた。

 

 

 

 

[瑠璃と怪盗と恋心?]

 

 そんな状況下の中、修司のクラスメイトで有る瑠璃は突然照明が落ち、暗くなった美術館内を彷徨っていた。

「ど、どうしよう。普段歩きなれている筈なのに、こう暗いと何処が出口なのか……」

 暗闇に脅えながらも瑠璃が歩き続けていると、曲がり角でいきなり男性と衝突してしまった。

「あっ、イタぁ……」

 思わず転倒してしまた瑠璃に、ぶつかってしまった男は手を差し伸べて瑠璃に告げた。

「大丈夫かい、お嬢ちゃん」

「あ、ありがとうございます。すいません、其方は大丈夫ですか?」

「いやいや、俺様は大丈夫。それよりもお嬢ちゃんは怪我は無かったかい?」

「あ、はい。私は大丈夫です」

 瑠璃は暗闇で顔が分からなかったが、男の他のもう一人、別の男の姿も確認できていた。

「いやゴメンな。小父ちゃんも真っ暗だから解らなかったんだ」

「いえ、それはお互い様です。それにしても小父さん達はいったい……」

 とその時。瑠璃と話していた男と同行していたもう一人の男が口を開いた。

「おいルパン。早く行かねえと、とっつぁんだけでなく聖龍隊の連中まで来ちまうぜ」

「おう、そうだったな次元。それじゃお嬢ちゃん気を付けて」

 男はそう瑠璃に言い残すと、もう一人と共に美術館の奥に走っていった。

「え? い、今ルパンって……」

 瑠璃が驚いていると男二人を追う様に警官隊と聖龍隊そして先頭には銭形警部と聖龍使いが走って来た。

「追え追えーー! ルパンを逃がすなぁ!」

「必ず捕まえるのじゃ! 聖龍隊の名に掛けて!」

 瑠璃はようやく状況を呑めた。

「い、今私とぶつかったのは……る、ルパン!? そ、それじゃ、修司が買ってくれた希望の瞳はもう……!」

 瑠璃は驚愕し、そしてすぐに走り去っていった集団を追う様に後を付けて行った。

 

 そしてルパンと次元は美術館の奥。

 行き止まりである通路に逃げ込んでしまい警官隊と聖龍隊が二人を包囲した。

「ぐわははっ、もう逃げ道は無いぞルパン!」

 高笑いしながらルパンに言う銭形。その横で聖龍使いもルパン達に言う。

「ルパン三世、そして次元大介。主等はもう後が無い! 神妙にお縄を頂戴せよっ」

 この聖龍使いの発言を聞き、次元は微笑しながらルパンに告げた。

「ほほう。こりゃ確かに五エ門と良い勝負の古臭い口調だなルパン」

「なっ、そうだろ次元。だから面白くする為に態々市長の家に予告状を送った訳よ」

 ルパンも笑いながら次元と語る。

 そして聖龍隊に警官隊がジワジワと二人に近づいてくる最中ルパンは皆に向かって言い放った。

「うふふ。とっつぁん、それに聖龍隊の皆様方。この俺が考えも無く美術館の中を走り回っていたと思う? 俺様は既にこの美術館の中の通路や中の構造は熟知しているんだぜ」

「な、何を言うんだ。それなら何で態々行き止まりで有るこの通路に逃げ込んだんだ!」

 小狼(シャオラン)がルパンに向かって訊ねると、ルパンは不敵な笑みを浮かべながら自分の腕時計を見た。

「……うむ、ちょうど時間だな。言って置きますけど聖龍隊の皆さん。一流の怪盗ってのは、予め逃げ道は用意しておくもんなんだぜ」

 聖龍隊がルパンの言動に困惑している、その時であった。

 突如二人の後方の壁が切り崩され、ポッカリ巨大な穴が開いてしまった。

『ええええぇぇぇぇ!!』

 聖龍隊は全員、目を丸くして仰天してしまっている最中ルパンは次元と共に崩れた壁の穴から外に逃げ出した。

「いやサンキューー、五エ門」

「……またつまらぬ物を斬ってしまった」

 ルパンが礼を述べたのは仲間である石川五エ門。

 

 実は指定された時刻にルパンに美術館の壁を切り崩して大穴を開けろと五エ門は指示を受けていた。

 ルパンは最初から美術館で行き止まりの通路に逃げ込んで五エ門の助力で脱出しようと計画していたのだ。

 そしてルパンに次元は五エ門と合流し、そのまま美術館の広い庭に駆けこんで行った。

「追えーー! 絶対ルパンを逃がしてはならんぞ!」

 

 ルパン一味を追い、聖龍隊は美術館の庭園で彼等と激闘を繰り広げた。

「おりゃーーっ」

 トシはイサミ・ソウシ更にはちびムーンとサターンの5人で次元大介を追い詰めようと試みていた。

 そしてトシは龍の珠をサッカーボール状の大きさに変化させて次元に向かって蹴り飛ばした。

 サッカー野球等、球技の得意なトシは自分の十八番で有る脚力で次元に龍の珠を当て付けようと思い立ったのである。

「……フッ」

 しかし次元はすかさずマグナムで飛んで来た龍の珠を弾き返した。

 弾き返されてしまい動揺してしまうトシ。

 一方ちびムーンとサターンは次元の背後から襲いかかろうと、次元に飛び掛かった瞬間次元はヒョイと二人の攻撃を避け二人の背後に回ってサターンの後頭部にマグナムの銃口を押し当てた。

「あっ!」「さ、サターン!」

 咄嗟の行動で驚くちびムーンとイサミ。

 サターンは一瞬、自分は撃たれると思い絶望した。

 だが次元は数秒サターンの頭に銃口を押し当てただけでスグに銃を離した。

 そしてタバコを咥えながらサターンに吐き捨てた。

「……ふぅ。お嬢ちゃん、良い子はお寝んねする時間だぜ。早く帰ってママに甘えてな」

 次元はそう告げると、速急に駆けだし去っていった。

 サターンは体の緊張が解けて、その場に膝を付いてしまった。

 

 そして此方は石川五エ門とハニー姉妹更にはウラヌスと聖龍使いが総出で激しい剣劇を繰り広げていた。

「はぁぁ!」「てやぁっ」

 キューティーハニー・ミスティーハニーはそれぞれのブレスレットから取り出したフルーレと呼ばれるフェンシングで使用される武器で五エ門と戦い続けていた。

「はっ、はっ!」

 五エ門は二人の攻撃を斬鉄剣で受け止めながら、攻撃を回避し続けた。

「はぁっ!」

 更に其処へウラヌスも自身の剣で五エ門に斬りかかって行ったが五エ門は攻撃を受ける間際、咄嗟に後方に跳ねるように移動してウラヌスの攻撃を避けた。

「貰ったぞい!」

 ウラヌスの攻撃を避けた五エ門に尽かさず聖龍使いが攻撃を仕掛けた。

 そして双方は互いに刀を押し合いながら取っ組みあった。

 二人は数十秒押し問答をしていたが、咄嗟に双方後退し互いに睨み合った。

「お主、中々やりおるのう石川五エ門」

 聖龍使いが五エ門を称賛する中、五エ門は聖龍使いの剣戟について疑問視する。

「お主、余り剣術を習い始めてまだ日が浅いな。年配者の口調になってはいるが、恐らくはまだ若い男……いや、もしくは少年なのでは」

「!!」五エ門に指摘され内心驚愕する聖龍使い。

 

 少し離れた場所ではミラーガールにメタルバード、そしてジュピターキッドが銭形と共にルパンを追い詰めていた。

「おいルパン! いくらお前でも特殊能力のある聖龍隊には勝てんだろう! 大人しくしろ!」

 しかしルパンは不敵に微笑みながら皆に言った。

「うふふ。とっつぁん、能力が有る無いで物事は決めちゃいけないぜ。世の中、能力や才能以上にスンごいパワーを持っちゃってる人間だって居るんだぜ。例えば……」

「た、例えば?」銭形が訊くとルパンは微笑しながら答えた。

「例えば……ルパンダ~イブとか♡」

 そう言いながらルパンはミラーガールに飛び付いた。

「きゃああっ!」驚いて悲鳴を上げてしまうミラーガール。

「って何してるのアイツ!」

「オイっっ、下手すりゃロリコンだぞありゃ!」

 仰天するキッドにメタルバードであったがすぐにルパンはミラーガールから離れて彼女の耳元で囁いた。

「お嬢ちゃん、後もう少し年食えば胸も大きくなるんじゃないかな」

 この一言に、胸の事を気にしている加賀美あつこことミラーガールはカチンと来てしまい咄嗟にルパンの腕を掴み、そのままハンマー投げを喰らわせてしまった。

「うわわわわわーー!」

 ルパンは仰天しながらミラーガールに投げ飛ばされた。

「ってオイ、アンタ! 確かミラーガールは聖女って話を聞いたけど、何あの変わり様!」

「い、いやな……」

 驚きメタルバードに訊ねる銭形に対し、メタルバードはなんて答えれば分からず何も言い返せなかった。

 

 そんな時だった。一人の少女がルパンに駆けよって来たのだ。

 少女はあの碧井瑠璃であった。

「る、ルパンさん!」「おや? 君は確かさっきの……」

「あっ、瑠璃……」

 ミラーガールは普段教室で見ている大人しく、何処か暗い雰囲気の瑠璃とは違う何か切羽詰まった雰囲気を彼女の顔から感じていた。

「き、君は、いったい……」

 瑠璃の顔をジッと見つめるルパン。彼女はルパンに突拍子に告げた。

「お、お願いですルパンさん! どうか希望の瞳を返してください!」

「な、何だ何だ?」

 瑠璃の切実な願いに戸惑うルパンに、瑠璃は衝撃的な発言をした。

「そ、その宝石は私のパパの為に……パパの経営する美術館を立て直す為に私の好きな人が買ってくれた大事な物なんです! お願いします、どうか返して下さい!」

 瑠璃の言葉を聞き驚愕するミラーガール。

 宝石を買った人物、それは誰でも無い修司本人だったからだ。

『…………』

 ミラーガールの本心を知っているメタルバードとキッドは驚きのあまり言葉を失くす。

「ほほう、青春ですなぁ。本官も若い頃を思い出しますよ」

 事情を全く知らない銭形は瑠璃の言葉を聞いて和んでしまっていた。

 そんな銭形はルパンに向かって叫んた。

「こらルパン! その子はこの美術館の館長兼経営者の一人娘の瑠璃って子だ! その子の恋心の為にも宝石を返せ!」

 しかしルパンは微笑みながら銭形に言い返した。

「ゴメンねとっつぁん、それに瑠璃ちゃん。実は俺様も不二子ちゃんから希望の瞳が欲しいってせがまれちゃってね。返す訳にもいかないんだよ。何より泥棒が一度手に入れた物を簡単に返す訳はないでしょう♪」

 そう言い終わるとルパンは颯爽と走り去り茂みの中に隠していたメルセデス・ベンツSSKに乗り込んだ。

 ルパンは華麗なドライブテクニックで次元と五エ門の所まで走って行き二人もベンツが近づいてくると同時に駆けより飛び乗った。

 

「クソっ、追え追え!」

 メタルバードが指揮を煽ぐ中、他の聖龍隊士たちもルパン達を追った。

 だがミラーガールだけは先ほどの瑠璃の発言に動揺してしまっていた為駆け出すのが遅れてしまっていた。

「良しっ、これに乗って追うぞお前等!」

 美術館の出入り口付近に駐在していたジープに乗っていたウェルズが皆に声を掛ける。

「良しウェルズ。運転は任せるぞ」「良し来た!」

 ウェルズはジープのハンドルを取った。

「ウラヌスお願い」「任せておきなよ」

 別のジープでは副業でプロのレーサーをしている天王はるかことセーラーウラヌスがハンドルを握り締めていた。

 そして二台のジープを含め、計5台のジープが走り出そうとした。

 が、走り出した瞬間。ジープのタイヤが外れたり、いきなりエンストを起こしたりして全てのジープが停車してしまう。

「な、何事じゃ……?」

 急停車した衝撃で頭を打った聖龍使いはふら付きながらジープから降りて壊れた拍子に開いてしまったエンジン部分に目を向けて初めて気づいた。

 エンジン部分に一枚の紙が貼られておりその紙にはルパンの似顔絵が描かれており更には平仮名で『ごくろうさん』とまで記載されていた。

「お、おのれ……る、ルパン……」

 そうルパンは予め、聖龍隊が所有しているジープ全てに手を加え走行不能にしていた。

「逃がしはしないわよルパン!」

 咄嗟にキューティーハニーはブレスレットを弄りバイクテクニックが上がる『ライダーハニー』に姿を変えて近くに停めていたバイクに跨りルパンを追撃しようと走り出した。

 

 だがその時だった。

 何処からともなく一発の銃弾がハニーの乗車していたバイクの前輪に狙撃されパンクさせられた。

「わっ、うわっ」

 パンクさせられ思う様に走行できなくされたハニーはスピードを出したままふら付いてしまう。

「危ない!」

 聖龍使いはバランスを崩し今にも倒れそうなハニーをバイクごと正面から受け止め、ハニーを急停止させた。

「うむ……」「ぐっ……だ、大丈夫? 聖龍使い」

「だ、大事無いでござる」

 ハニーは自分を受け止めて助けてくれた聖龍使いに言葉を掛けてあげた。

 そして、そんな様子を美術館から少し離れた高層ビルの屋上から双眼鏡を通して覗いていた人物が居た。

 その人物こそハニーの乗車していたバイクを狙撃し、パンクさせた張本人。

「うふふ。今回は危うかったわね。聖龍隊って意外と手強いみたいだわ。さぁってと、早くアジトに帰ってルパンから希望の瞳をも~らおっと♡」

 

 狙撃した人物、それはルパンが最も愛してやまない女であり今回ルパンに希望の瞳を盗み出す様に唆(そそのか)した女性。あの峰不二子だった。

 

 

 

 

[敵を騙すには……]

 

 そして皆、ルパンから宝石を護れなかった事で落ち込んでいる最中。

 美術館の中から本物の早見青児が出て来た。

「せ、青児!」「青児さん、今まで何処に居たんですか!」

 タキシード仮面と小狼に指摘され、青児は苦虫を噛んだような表情で渋々答えた。

「す、済まねえ。実を言うと助けを求めていた女性に歩み寄った瞬間、変なガスを吸わされちまって……その後は全く記憶がねえんだよ」

 すると青児にメタルバードが歩み寄って彼に告げた。

「青児、その女は多分ルパンだったんだろう」「え? マジかよ?!」

 驚く青児に今度はキッドも歩み寄り続けて述べた。

「ああ。僕等の目の前に青児に変装したルパンが現れたんだよ」

「ほ、本当かよっ」

「ああ。話に聞いていた通り身形はもちろん声までも完璧に成り済ませていたよ」

 事実を知らされ驚く青児。

 と其処へ今度は銭形が近寄って来た。

「あ、銭形さん」「こ、今回は、どうもスイマセンでした」

「ま、まさか此処までルパンが上手だったなんて……力になれず申し訳ありませんでした」

 ルパンから護りきれなかった事に深く悔いていたマーキュリーにマーズ。

 そして謝罪の言葉を口に出すキューティーハニー達に対し銭形は帽子を押さえながら皆に言った。

「い、いや。私も結局は何もできませんでした。謝罪しなければならないのはワシの方です。誠に申し訳ありません」

「ぜ、銭形さん……」

 深々と頭を下げて謝罪する銭形を目の当りにしてマーズは居た堪れない心境に。

 と其処へ、人目を避けて一足先に変身を解除した修司が市長として銭形に声を掛けて来た。

「銭形さん」

「ハッ、し、市長! 今まで何処に……い、いや。今回は誠に申し訳ありませんでした! この銭形、聖龍隊の皆さまの力になる事ができず……!」

 頭を深く下げて謝罪する銭形に、修司は穏やかな口調で告げた。

「頭を上げてくださいよ、銭形警部」「し、しかし……」

「まだ勝負は付いていませんよ。ほら、良く見てください」

 すると修司はすかさず左手の手のひらに白い布を被せ

 右手の人差指と親指で白い布を摘まみながら呟いた。

「ほれほれ。ワン、ツー、スリー、っと」

 すると布の中から盗まれた筈の希望の瞳が出現したのであった。

「な、何ですと!?」「何ィっ?」

 銭形警部にメタルバード、そして聖龍隊の面々も突然現れた希望の瞳を見て仰天した。

「し、市長。これは、いったい……」

 銭形が震えた口調で修司に訊ねると、修司は平然と言いのけた。

「ふふ、なに。念のため、予め此処の館長と密談して希望の瞳を本物と偽物をすり替えさせてもらったんですよ」

「そ、それじゃ! ルパンが盗んだのは……」

 口を大きく開けながら銭形は修司に訊く。

「ええ。彼が盗んだのは精巧にできた偽物ですよ。まぁ、あのルパンの事ですから逃亡している最中に盗んだ宝石が偽物だってことに今頃気づいているでしょうがね」

 この修司の発言を聞き、メタルバードが修司に物申した。

「おい修司! お前、何勝手に断りも無くそんな真似をするんだよ」

 すると修司はメタルバードに言い放った。

「いやいや済まない。しかし良く言うだろ? 敵を欺くにはまず味方から……ってな」

 ウィンクしながら発言する修司に少しイラッとするメタルバードだった。

 その時、メタルバードと会話していた修司に突然あの瑠璃が修司に抱き付いて来た。

「修司!」「う、うわっ。な、なんだ瑠璃か。どうしたんだよ一体」

「し、修司。今日はホントにありがとう。パパの美術館を護ってくれて……」

 目を輝かせて修司に礼を言う瑠璃。そんな彼女に向かって修司は真顔で言った。

「別に大した事じゃないだろ。俺はただ自分が市長を務める町の一部である美術館を護っただけだ。何よりお前の親父が経営している美術館に展示されているとはいえ宝石は俺が購入した物なんだしな。護って当たり前だろ」

「そ、そうだけど……で、でもありがとう。何より修司も現場に居たのに怪我が無くってホントに良かった」

 瑠璃は満面の笑みで修司に安堵の言葉を告げた。

 そんな瑠璃の様子を少し離れた場所からミラーガールは複雑な心境で見ていた。

 

「あっ、そ、それじゃ。ルパンも行っちゃったみたいだし、私も家に帰るわね。それじゃ修司、また明日学校で」

「あ、ああ……」

 瑠璃は笑顔を修司に見せつけながら走り去って行った。

 修司は普段見ない瑠璃の笑顔に呆然となりながら立ち尽くしてしまっていた。

 

 そんな修司を見てメタルバードとキッドは小声で密談していた。

「なぁ、あの瑠璃って子。確実に修司にホの字だよな」

「うんうん。間違いないね」

「で、でもな。アッコはどう思うんだろうか。この事実」

「う、うん。アッコさんだって鈍い訳じゃないし何よりさっき瑠璃さんの台詞を聞いている訳だから完全に気付いちゃっているだろうし」

 二人はそぉっとアッコことミラーガールの方に目を向けた。

 彼女の表情は何処か居た堪れなさが感じられる空気を感じさせていた。

 

 

 

 

[悔しがる怪盗と依頼されたXYZ]

 

 美術館での事件の翌日。

 修司とアッコが通学しているツバメ小学校では二人は普段通りの生活を送っていた。

 だがアッコは昨晩の瑠璃の発言が気になり、常に彼女の方を気にしてしまってた。

 瑠璃は普段通り、自分の席に座り図書室で借りた本を黙読していた。

 そんな通常は大人しく、余り人と会話する事も無い瑠璃の昨晩の大胆な言動にアッコは驚きつつも複雑な思いだった。

 自分が本気で愛してやまない小田原修司を、余り学校では好かれる事の無い修司を異性として愛している少女が自分以外にも居たんだと初めて知った。

 

 

 一方、此方はルパンの隠れアジト。

 昨晩盗み出した宝石・希望の瞳は真赤な偽物で有ると分かりルパンは不二子から制裁のビンタを一発喰らっていた。

「ま、待ってくれよ、不二子ちゃん」

「ふんっ、折角私もお膳立てしてあげたっていうのに、まんまと偽物を掴まされるなんて。天下の大泥棒ルパン三世も地に落ちたわね」

「だ、大丈夫だよ不二子ちゃん。次こそは必ず盗み出してあげるからよぉ」

 土下座しながら不二子に詫びを入れるルパンを、不二子は見下しながら発した。

「……ホントに?」

「ホントホント。もう神にも仏にも、何なら悪魔にだって誓っても良い」

 両手の掌を合わせながら不二子に謝罪するルパンを見て毎度の事ながら呆れかえっている次元と五エ門も同室していた。

「ふぅ~、毎度の事とはいえ、この光景は見飽きたぜ」「修行が足らんな」

 呟きながら次元は自らの愛銃であるリボルバーを解体・清掃した。

「しっかしよぉ。あの聖龍隊には参ったなぁ。全員ガキじゃねえかよ。やりにくいったらありゃしねえ」

 ボヤキながら次元は清掃し終わったリボルバーのパーツを組み立て始める。

「正直俺はガキ相手に銃はブッ放したくねえぜ。ガキを撃ち殺すのは戦場だけでゴメンだ」

 次元大介はかつて傭兵として戦場で戦い抜いた際、同じ戦場で生きる為に戦い続ける幼い子供を自身を護るために射殺した過去が有った。

「タク、何で市長小田原修司はあんなガキどもに自警をやらせているんだろうかねぇ」

 愚痴を零しながら次元はマグナムを構えて、銃の調子を見る。

「まぁ、彼らには特殊な能力が有るうえそんな存在を護るためにも自警団をやらせておるのではないか。あのような異形の力は見方一つで危険な存在として見られてしまう事も珍しくは無いからな。それ故に町の者達からの信頼を得る為にも自警団を組織しているのではないか」

 神妙な面持ちで眼つきを鋭くさせながら石川五エ門が呟く。

「それよりも次元。拙者はこの町で聖龍隊の指揮を直接執っている武人・聖龍使いが少し気になるのだが」

「ん? 何だ気になるって。まさか腕の立つ武人だからって再度手合わせしたいって言うんじゃないだろうな。勘弁してくれ。お前の『修行の為の手合わせ病』にはルパンの女好きに続いてウンザリしているんだからよ」

 石川五エ門は断る毎に『修行が足りない』といってはルパン達から離れ一人修行の為に世界各地を出向いている。

 時には修行と云ってルパンや次元等と衝突し合う事も有ればルパンや自身の命を狙う存在に逆に利用され仲間等と殺し合いをさせられる事も珍しくはない。

「いや、そうではないのだよ次元。実を言うとあの聖龍使いと太刀合った時どうも年配者ではなく、もっと若い男の様な気がしたのだよ」

「すると何だい? 聖龍使いの正体は爺さんじゃなく若い男だって言うのかい? だ、だけどよ。あの身長じゃ低過ぎるんじゃねえか」

「うむ。男は男でも更に若い男、そう少年ではないかと、そう思うのだが」

 この五エ門の発言に次元は驚いた。

「なにっ? それじゃ聖龍使いも他の聖龍隊と同じガキだって言うのかい? どうなっているんだ、まったく」

 すると話を聞いていたルパンが二人の会話に入って来た。

「ああ、それなら俺も気になっていたんだよ。自作の携帯に聖龍使いの声を録音していたんだけどよ声紋照合では何と10代の少年だって結果が出たんだよ」

「オイオイ、マジかよ」

 思わず顔を渋らせて苦悶する次元。

 そんな会話をしている3人に不二子が声を掛けた。

「ねぇアンタ達。そんな事よりも、今度こそ希望の瞳をキッチリ盗み出してちょーーだいよ。分かった?」

「はいはい、分かっていますよ不二子ちゃん」

 ムスッとした表情の不二子にルパンは投げキッスを飛ばしながら返事した。

 

 

 

 

 その日の午後。

 碧井瑠璃(あおいるり)は学校が終わると一人で新宿駅までやって来ていた。

 

 彼女は前々から新宿駅の中に有る伝言板前に出向いていた。

 瑠璃は以前より、ある都市伝説を耳にしていた。

 新宿駅東口の伝言板に三つのローマ字『XYZ』を書き込むとどんな依頼でも引き受けてくれる人物が現れると言うのだ。

 瑠璃はルパンの予告状が来た事を知ってから此処に来て伝言板に三つのローマ字を記入していた。

 そして依頼を引き受けてくれる人物が現れる事を信じて学校が終わると此処でその人物を待っている様になった。

 

「……今日も来ないのかな。やっぱり、どんな依頼も引き受けてくれる人なんて只の都市伝説、噂だったのかな」

 半ば諦めかけていたその時。一人の女性が瑠璃に声を掛けた。

「お嬢ちゃん。どうしたの」「え? あ、わ、私は……」

 急に声を掛けられ戸惑う瑠璃に女性は言った。

「もしかして、貴女が伝言板にXYZの文字を書いていたの?」

「え? そ、そうです。あ、貴女は……」

 瑠璃は驚きながらも女性に訊ねた。すると女性は笑顔で瑠璃に話した。

「良かった。まだ大丈夫だったみたいね。ゴメンなさい、今まで別の依頼で忙しくて新宿には戻って来られなかったの。でももう大丈夫。私達が力になってあげるわよ。あっ、まだ名前言ってなかったわね。私は槇村香(まきむらかおり)って言うわ。貴女は」

「わ、私は碧井瑠璃って言います」

「瑠璃ちゃんね、宜しく。此処で話すのもアレだしお姉さんと一緒に行きましょう。さっき獠に連絡とって喫茶店で待っているように話ししておいたから」

「は、はい」

 瑠璃はそのまま槇村香に連れられて新宿区内に有る〔キャッツアイ〕という喫茶店に入った。

「どうもーー、海坊主さん、獠来ている?」

「ああ香か。いや、今日はまだ来ていないが」

 店に入った瑠璃は仰天した。

 店に居たマスターらしき人物が褐色で丸坊主。そしてサングラスを掛けている強面の大男で有ったからだ。

「……」

「ん? ああ、大丈夫よ瑠璃ちゃん。この人はこの店のマスターで海坊主さん。見た目は怖いけど、とっても優しい人だから安心して」

「は、はい」

 香は海坊主を見て怯えてしまう瑠璃を宥めてあげながら店の席に二人とも着席した。

「ところで香。今回の依頼者は、もしかしてそのお嬢さんなのかい?」

 洗い終わったガラスのコップを磨きながら海坊主が香に訊ねた。

「ええそうよ。だから獠に連絡入れて此処に来るように言って置いたのに。タクッ、何処ほっつき回っているんだか」

 顔をムスッとさせて愚痴る香に瑠璃が訊ねた。

「あ、あの……」「ん? なに瑠璃ちゃん」

「あの……も、もしかして依頼を受けてくれる人って、か、香さんと海坊主さん何ですか?」

「ああ、違うわ。海坊主さんはたまに協力してくれる心強い味方で私はその依頼を引き受ける人間の助手をしているのよ。今その人を待っているんだけど……獠の奴、いったい何処に居るのかしら」

 香が愚痴っている、まさにその時であった。

「いやぁ~、参った参った」

「あっ、獠。一体何処ほっつき回っていたのよ……ってなに? そのホッペのもみじマーク」

 店に入って来た一人の体格の良い高身長の男。だが男の両側の頬には真赤な紅葉マークがくっきりと残っていた。

「い、いやぁ。街でカワイコちゃんを見かけたもんだからちょっと声掛けてみたらしつこいって思いっきりビンタされちゃって」

「まったく、アンタって奴は……」

 呆れ果てる香の横に座っていた瑠璃に、男は気が付いた。

「おや香。その子はいったい……」

 男が訊ねると海坊主が男に答えた。

「獠、その子が今回の依頼主だ」

「えっ、ホント? 君かい、俺に依頼をしてきた子は」

「は、はい。あ、貴方は……」

 瑠璃は両頬を真赤に腫れさせた男の顔を見つめながら男に訊ねた。

 すると男は瑠璃に微笑みかけながら名乗った。

 

「俺の名前は冴羽獠(さえばりょう)。人は俺の事をシティーハンターと呼ぶ」

「し、シティーハンター……冴羽、りょう……」

 いきなりハードボイルドな風貌に変わった冴羽獠を見て驚愕する瑠璃。

 

 なぜ碧井瑠璃は新宿駅の伝言板にXYZを書き込んだのか。

 そして瑠璃の前に姿を現した冴羽獠。 

 彼女は何を彼に依頼するのであろうか。

 

 

 

[市長宅に出向いたスイーパー]

 

 そしてその日の夕暮れ時。

 修司の自宅、そう市長宅では聖龍隊が再度集結していた。

 彼等はリビングにてジッと待機していた。

「全く、二日続きでルパンの件(くだり)に関わる事になるとは……」

 愚痴を言いながら早見青児は自前の拳銃を手入れしていた。

「しっかしなぁ。今度はどうしたらルパンの手から宝石を護れますかね」

 額にしわを寄せながらソウシが呟いた。

「う~ん、そうね。あのルパンって女性に弱いって話だからハニートラップでも仕掛けてみる?」

 成績優秀で実戦的な戦略を思い付くのが得意なウラヌスが思い詰めた表情で話してみた。

「え? ハニートラップって何? 何か甘そう」

 呑気に呟くセーラームーンにマーズが強い口調で説明した。

「あのねうさぎ! ハニートラップって言うのは男が女を女が男を色仕掛けで惑わして隙を見せさせる戦略の事! 常識的な知識でしょーがッ」

「ひぃ~~」

 マーズに指摘され、彼女の強面な顔を見たセーラームーンは思わず涙目になった。

 

 と其処に。

 タオルで頭を拭きながらバスローブを着こんだ銭形警部が入室して来た。

「プは~ッ、いやぁ生き返りましたわ」

「湯加減はどうでしたか銭形様」

 部屋に入って来た銭形にウッズが声を掛ける。

「いやいや。実に快適な大浴場でしたよ。まさか地下にあんな大浴場まで設備されているとは。お陰で一カ月ぶりに良い汗を掻けましたわ」

「い、一か月!」

 銭形の一カ月振りのフレーズに仰天し、体に衝撃を走らせるヴィーナス。

「いやいや。ルパンを追って世界中駆け巡っていますと中々風呂にも入れる事は有りませんからなぁ。いや~まさか風呂まで浸からせてくれるとは感謝してもしきれませんなぁ」

 頭から湯気を出しながらウッズに礼を言う銭形。

「いえいえ。スグに夕食の準備も致しますので座っていて下さいな」

「おおう、益々申し訳ありませんなぁ」

 

 そして銭形警部は聖龍隊や小田原修司と会話しながら楽しく夕食を食べた。

「いやいや。それにしても市長。良くもまぁ一人でこんな大勢の少年少女等を掻き集められましたなぁ」

 口いっぱいに食べ物を詰め込みながら銭形は修司に言った。

「いやいや。彼等は正直町では目立ち過ぎていましたから集めるのは実に簡単でしたよ」

 修司も笑いながら銭形と会話をした。

「いやしかし。こんな大勢で食事をするのも久々ですわ。いつもはルパンを追いながら一人でカップ麺を頬張っていましたからなぁ」

「それは大変でしたねぇ。世界中駆け巡りながらルパンを追っていると、なかなかゆっくりできないでしょう」

「まぁ、しかし其処は警察官としての私の宿命でもありますからね。弱音を吐いている暇は有りませんよ」

 互いに食事をしながら楽しそうに会話をする二人を見て聖龍隊は二人の会話に入れずに居た。

「な、なぁ。修司ってよ、相手にもよるけど、結構喋るキャラだったんだな」

「う、うん。そうだよね」

 食事をしながらメタルバードとキッドは呟いた。

 

 とそんな時。玄関の呼び鈴が鳴り響き、ウッズが玄関電話に出た。

「あ、はい。どちら様でしょうか」

「夜分遅く済みません。私達、碧井瑠璃ちゃんの事で話が有るのですけど宜しいでしょうか」

 受話器に出たのは若い女性の声で有った。

「あ、はい。今出ますね。(誰だろうか。私達って言うからには複数なのでしょうかね)」

 そしてウッズが玄関を開けると、其処には碧井瑠璃と若い男女の三人が立っていた。

「アレ? あ、碧井瑠璃ちゃん? そ、それに。隣のお二人はどちら様で……」

 動揺するウッズに瑠璃の隣に立っていた男が話しかけた。

「アンタが市長小田原修司の秘書であるウッズだな。少し市長と話がしたいんだが」

「あ、貴方は……いったい……」

 驚き少し警戒するウッズに瑠璃が話した。

「う、ウッズさん。この人達は大丈夫です、悪い人では無いですから。し、修司と話をさせてあげてください。お願いします」

 瑠璃の発言を聞き、ウッズは二人の男女を家に上げた。

 

 そしてリビングにて修司と男女二人は、銭形警部や聖龍隊の目の前で談話を始めた。

「初めまして市長さん。お目にかかれて光栄だよ。俺の名は冴羽獠。前々からアンタが組織した聖龍隊には目を向けていたよ」

「冴羽獠……」

 修司は名乗り出す冴羽獠の顔を見つめながら険しい顔付きになった。

「ど、どうも夜分遅く済みませんでした。私はパートナーの槇村香です。本日は貴重な時間、しかも食事の真っ最中だと言うのに押しかけて来てすいません」

 丁寧な言葉遣いで語る香に関しては修司は穏やかな顔付きで見つめた。

「それで、お二人は何の用で此方に? しかもクラスメイトの瑠璃までも引き連れてよ」

 修司は席に座りながら二人に訊ねた。

 すると獠は修司に険しい顔付きで告げた。

「実はこの瑠璃ちゃんから、俺の所に依頼が有ってな。自分の父親が経営及び館長を務めている美術館に展示されている希望の瞳を護って欲しいっていうんだよ。まぁそれで俺様がまず宝石の購入者で聖龍隊の実質的な支援者である君の所に顔を見せに来たって訳だよ」

「ん? 依頼?」

 獠の依頼と云うフレーズに反応したメタルバード。

「ああ、俺は冴羽商事って会社を営んでいてね。依頼が有ればどんな内容でも引き受けてあげるって云わば便利屋みたいなモンさ」

 獠の説明を聞き其処に修司が付け加えた。

「ああ、俺もアンタの事は耳にしているよ。別名シティーハンター、射撃の腕は一流で簡単に言えば殺し屋も引き受けている男だったよな」

 殺し屋のフレーズにその場に居た皆が衝撃を感じた。

「な、何だと殺し屋だとっ? 良くも犯罪者が抜け抜けと本官の目の前に現れおったな!」

「ん? 誰だいアンタは?」

 訊ねる獠に修司が答えた。

「この人は銭形警部。ICPOに就任しているルパン専属の警部さんだよ」

「ああ、ルパンって瑠璃ちゃんから聞く前からも度々ニュースや報道で大々的に取り上げられている泥棒でしょ。その泥棒の専属警部さん何ですね」

 香が銭形に向かって訊ねた。

「いかにも。ワシこそがルパン逮捕に全人生を捧げている名警部銭形じゃ! お嬢ちゃん、何で君はこんな危険な男に依頼なんかするんだ! ルパン逮捕と希望の瞳の死守はワシ等に任せてもらいたい!」

 瑠璃に熱弁を語る銭形に修司が反論した。

「いやいや銭形さん。この冴羽獠は確かに殺し屋を名乗っていますが、ほとんど人を殺めた事は無い男ですよ。主に依頼主のボディーガードや依頼者を危ない目に遭わせる人間に対して威嚇行為をしているだけでほとんど犯罪紛いな事はしてはいない。……今はな」

 思わせ振りな修司の発言に皆が耳を澄ましている中、瑠璃が銭形警部に言った。

「ぜ、銭形警部。わ、私どうしても希望の瞳を盗まれたくないんです。だ、だから前々から冴羽さんと接触を試みていて、今日やっとお会いできたんです。お願いします、ルパン逮捕は銭形さんにお任せしますので宝石のガードはこの冴羽さんに任せてもらえないでしょうか!」

 瑠璃の力弁に続き、獠も銭形に言った。

「まぁ、アレだ。この瑠璃ちゃんにとってはあの宝石は凄く思い入れのある代物(しろもの)だから警部さんや聖龍隊の皆様方だけじゃ心細いんだよ。それで少しでも力になれば良いと俺の所に依頼して来た訳だ」

「むむ……」

 獠の発言を聞きながらも銭形は顔を険しくさせていた。

「まぁ、俺が依頼を受けたのはあくまで宝石のガードいわゆるジュエルガードって奴だな。俺はルパン三世とやらには興味の欠片も無いから、そいつだけは警部さんに任せるよ。アンタはルパンを、俺は宝石のガードを受け持てばそれぞれ役割が減って仕事も捗(はかど)るんじゃないのかい?」

 調子の良さそうな態度で銭形に言い放つ獠の言葉を聞き銭形は渋々答えた。

「うむむ……正直、犯罪紛いな輩とは付き合いたくは無いがあの美術館の館長の身内であるお嬢ちゃんからの依頼で有るのなら認めるしかない。だが! ルパン逮捕の妨害だけは絶対にしないでもらいたい! もしそんな真似をしてみろ、速急に公務執行妨害で逮捕するからな!」

「はいはい、分かっていますよ警部さん。市長さん、アンタも承諾してくれるでしょうね」

 獠が修司に訊ねてみる。

「ああ、俺も了解だ。何より、一度凄腕のバウンディハンターとアメリカで名を轟かせた男、冴羽獠の実力をこの目で見てみたいと前々から思っていたからな。是非、拝見させてもらうよ」

 修司は椅子に座りながら腕を組み、不敵な面構えで承諾を了解した。

「おお、市長さんも俺の事知ってくれていたのかい? それは光栄だなぁ」

「ああ、アンタが幼少の頃の経歴も耳にしているよ。正直、俺達常人には考えられないほどの壮絶な過去を持っているんだな」

「……」

 修司の台詞を聞き、獠は眼つきを鋭くさせた。

 そんな獠に修司は訊ねてみた。

「……ところで冴羽獠さん。アンタは今日はどうする気だい? ルパンから宝石を護るんだったら此処で他の聖龍隊士や銭形警部から色々と話を聞いてみたらどうだい?」

「いや、俺はこのままスグ新宿区に戻るよ。途中で瑠璃ちゃんを家まで送ってあげなきゃいけないしな」

「そうかい。折角アンタと同じ釜の飯を食べられると思ったんだがな」

 そう言うと修司はテーブルに置かれた麦茶入りのコップを手に持ち一気に飲み干した。

「フッ、俺が本当に同じ釜の飯を食べたいのは……聖龍隊の女の子達の様なカワイコちゃんだけだよっっ♡」

 獠はいきなりダラシのない面構えに一変し側に居たヴィーナスとネプチューンに飛び掛かった。

『キャアアッ!』

 思わず悲鳴を上げる二人。

「何しとんじゃワレえぇ!」

 そのとき獠や瑠璃と一緒に付いて来た香が100tハンマーを振り上げ、獠目掛けて振り下ろした。

「ぐワシっ……」

 獠はハンマーで思いっきり殴り付けられ、床にハンマーごと顔が減り込んでしまった。

「ご、ゴメンなさいっ。コイツいっつも綺麗な女性見るとスケベ心剥き出しで飛びかかっちゃうんです」

 香は獠に飛び掛かられたヴィーナスとネプチューンに頭を下げて謝罪した。

『は、ハァ……』

 突然豹変した獠の風貌とそんな彼に対して100tハンマーを余裕で振り下ろせる香に目を丸くして驚いてしまうヴィーナスとネプチューン。

 

(は、ははは……お、恐るべし。槇村香……)

 そしてそれを見て苦笑しながら内心思うソウシと仰天する面々だった。

 

 

 

 

[複雑な乙女心と出逢った二人]

 

 そして獠と香は瑠璃を家に送る為、修司の家を出た。

「そ、それじゃ。私は二人と一緒に今日は帰りますね」

 玄関先で見送る修司とウッズに小さくお辞儀をする瑠璃。

「お気を付けて。冴羽さん、槇村さん、瑠璃ちゃんの事お任せしますね」

 ウッズは瑠璃を家まで送ってくれる獠と香に言った。

「はい、任せてください」「それじゃ、俺たちはこれで」

 二人はそう言うと瑠璃を車に乗せて去って行った。

 

 三人を見送り修司とウッズが家の中に戻ろうとすると食事を済ませたばかりの銭形警部が入れ代わる様に家から出て来た。

「おや、銭形さん」「どうしました警部。何か」

 ウッズと修司が銭形に訊ねると銭形はコートのポッケに手を突っ込みながら言った。

「いえ。もしやルパンは前もって逃走経路を見出す為にこの付近を出歩いているんじゃないかと思いまして。パトロールがてら警視庁に寄って色々と資料を閲覧してこようと思いまして」

「そうですか。それでは御気を付けて行ってらっしゃいませ。お戻りになる際は遠慮なくインターホンを鳴らしてくれれば私が出ますので」

 穏やかな表情で言うウッズに対し、銭形は返事した。

「いや、恐らくは今夜は帰れないかもしれません。なので明朝過ぎには帰ってこようと思っております。では」

 そう言い残し、銭形は夜に町に姿を消して行った。

 

「おい修司。俺達もそろそろ引き上げるよ」

 更に他の聖龍隊士でタキシード仮面も修司に告げた。

「ああ分かったよ。今日はご苦労だったな。ただ、いつルパンが現れるか解らんし通信機のスイッチだけは常に入れて置いてくれよな」

「分かったよ、それじゃ……」

 修司に告げ家を出ようとする面々、だが修司は皆の前に立ちふさがった。

「ま、待て待てお前等っ」「な、何だよ急に……」

 戸惑うデューイや他の仲間達に修司は言い放った。

「お前等、いつもいつも言っているけどよ。せめて変身解いてから家を出て行ってくれねえか! いくら聖龍隊を結成させたのが市長で有る俺の意思だって公表しているとはいえ堂々と家から出入りするのだけは控えて欲しいんだよ」

 動揺しまくりながら皆に言う修司の言葉を聞きウラヌスが発した。

「まぁ、そりゃ確かにな」

 続いてミスティーハニーも発する。

「そうね。この恰好じゃ目立ち過ぎるし、変身解いた方が良いわね」

「分かったなら全員変身を解除してから家を出ろよ……」

 

 そして皆、変身を解いてから修司の家を出た。

「修司さん、ご馳走様でした」「ウッズさんの手料理、ホント美味しいわぁ」

「いえいえ。喜んでくれて私も嬉しいですよ」

 満面の笑顔でウッズに挨拶をするさくらとうさぎ。

「そうそうお前等。いつもの如く家の方にはウッズが電話しておいたから大丈夫だぜ」

「はい、ありがとう修司さん」

「家に帰ったら母ちゃんから拳骨なんてゴメンだからな」

 母と祖父、そして両親や弟と暮らしているイサミとトシは修司に礼を述べた。

「うふ、そうね。返って親を心配掛けちゃいけないわ。……少し羨ましいわよ」

 木野まことは何処か寂しげな表情を浮かべた。

 彼女は幼少の頃、両親を飛行機事故で亡くしてしまっており現在は一人暮らしで有ったが為に家族と同居できている仲間達を少し羨ましく思っていた。

 そんな寂しげな表情を見せたまことに修司が告げた。

「まぁ、まこと。そんな顔済んな。世の中にはな、両親を失っただけでなく生きる為に壮絶な人生を歩まなければいけなかった人間も居るんだぜ」

「え?」修司の言葉を聞き驚くまこと。

 

 

 この時、修司はあの冴羽獠の事を思って言ったのだった。

 冴羽獠、実は彼の冴羽と云う名前は本名では無く人から貰った物で有った。彼は幼少期に両親を飛行機事故で失くし、その事故で奇跡的にも助かったのだが飛行機が落下したジャングルで出逢ったのがあるゲリラ部隊。

 獠は生きる為に仕方なく、そのゲリラ部隊に加入し其処で父親のように慕う人物のもとで戦い抜いていたがその人物に通称エンジェル・ダストと呼ばれる麻薬を打たれ暴走そして禁断症状をなんとか献身的な医師の元で回復そしてアメリカでバウンティハンターとして名を轟かせた過去を冴羽獠は持っていた。

 最終的には日本に密入国をした為、戸籍すら存在していないのだ。

 

 

 そんな様子を見ていた変身怪獣がまことに言った。

「おーーいまこと。寂しいんだったら今日はオレと一緒に寝ない?」

 変身怪獣が発言し終わった瞬間修司は懐からナイフを取り出し変身怪獣目掛けて投げた。

 ナイフは変身怪獣の頭に直撃し、彼はそのまま倒れてしまった。

「……いつもいつも、破廉恥(はれんち)極まる野郎だ」

 修司は険しく異様な顔つきで呟いた。

「し、修司くん。毎度の事だけど、それ、止めなよ。人間だったら死んじゃっているよ」

 目を点にしながら修司に言うまことに修司が返した。

「何を言う。コイツは死なねえから別に良いだろう。この野郎、チェーンソーで切り裂いても死なねえんだもんな」

 そんな恐ろしい発言を調子良く言う修司は何処か思い詰めているアッコに気付いた。

「ど、どうしたアッコ? 何か美術館の一件が終わってから様子が変だぜ」

「あ、ああ修司。大丈夫、気にしないで……」

 アッコは修司の一言をかわしつつ、そのまま早歩きで一人で先に自宅に帰って行った。

「ど、どうしたんだアイツ?」

 アッコの様子が変わってしまった事に修司は状況を呑みこめず困惑した。

 だが、ジュニアだけは瑠璃の本音を直接聞いていたので理由を知っていた。

(アッコさん、あの瑠璃って子の言動が気になっちゃっているんだなぁ。まぁ、まさか義兄さんを異性として好いてくれる女性がアッコさん以外にも居たなんて僕も驚きだけど……)

 

 

 一方、瑠璃を家まで送った後獠と香は新宿区に戻っていたのだが獠だけは自分が愛する新宿の夜景や夜風を満喫したいと言って一人夜の新宿を散歩していた。

 

 そして獠が散歩をしている最中、彼は一人の男と肩をぶつけ合ってしまった。

「あっ、どうもすいません」

「あっ、いえいえ。此方こそ」

 獠とぶつかってしまった男は赤いジャケットに青いシャツそして紫のネクタイを締めていた何処かひょうきんなサル顔の男であった。

「おやっ……お兄さん、アンタかなり銃を扱っているみたいだね」

「! 分かるのかい、アンタ」

 獠は男から漂ってくる硝煙の微かな臭いで男がかなり銃を使用している人間であると感付いた。

「……アンタ、いったい何モンだい?」

 赤ジャケットの男が獠に訊ねる。すると獠は不敵に笑いながら男に答える。

「俺かい? 俺は云わばナイスガイ。この新宿でカワイコちゃん達を護って行く事を生き甲斐にしているナイト(騎士)さ」

 獠の発言に男が爆笑しながら返事をする。

「ぶははっ、ナイトですか。そりゃまたおんもしれえな」

 更に男は獠に言った。

「でもよ旦那。男が完全に女を護りきるのなんて難しいぜ。逆に女に裏切られちまったり、逆に女を襲っちまうのが男っていう狼なんだからよ」

 男の台詞を聞き、獠はダラシナイ表情で男に言い放った。

「ワオッ、君、なかなか分かっているじゃないの♪そうそう、男って美女を見ると野獣に変身しちまうからねぇ」

「オオゥ、お兄さん分かってるぅ。なんか俺達話し合うなぁ」

 赤ジャケットの男は獠の台詞を聞くとニヤケながら話し合う。

「ああそうだ。お兄ちゃん、此処いらでカワイイ女の子が居るお店とか知らな~い?」

 男は鼻の下を伸ばしながら獠に訊ねると、獠も同じような顔付きになって答えた。

「ああそれなら良い店知ってるよ。この辺は俺の庭みたいなもんだからね。それはそれはカワイイ女の子が居る店なんて手に取る様に熟知しているよ」

「オオっ、それは好都合♡そんじゃあ一緒にハシゴしちゃいましょうか」

「良いね良いね♪まさか俺と趣味の合う人に出逢えるなんて、今日は運が良いなぁ」

「じゃあ行きますかっ」「ほんじゃ、行きましょうっ」

 男と獠はそのまま夜の新宿のバーと云うバーを転々とハシゴして行った。

 

 二人はバーに出向くと、其処で働いている女性にちょっかいを掛けたり其処に居る女性の尻や胸を触ったりした。

 更には更衣室に忍び込み、女性の下着を漁ったりもすれば女性の下着を頭に被ったり身に付けながら仲良くカラオケなんかも堪能した。

 

「ウハハハハハハハハ……ッ」「ワハハハハハハハハ……ッ」

 最終的には二人とも公園のベンチで座りながら高笑いをしてた。

 獠と男は浴びる様に酒を飲み続け、二人とも完全に出来上がっていた。

「イヤァ~~。こんなに楽しい夜は久々だぜ」

 獠はアルコールで顔を真赤にさせながら男に言った。

「いやいや。俺だって同じだよ兄ちゃん。この町にアンタみたいな気の良い野郎が居たとはよぉ」

 男も獠と楽しい夜を過ごせたと笑いながら答えた。

 そして獠は男に向かって提案した。

「そうだ。あんたこの後ヒマかい? 良かったら家に特産のボジョレーが有るんだけど一緒に飲まない? 他にも色んな銘酒(めいしゅ)も揃っているぜ」

「おお、良いのかい。俺なんか誘ってくれて」

「ああ構わねえよ。ささっ、行きましょ行きましょ♪」

 男はベロベロに酔っ払いながらも獠の誘いを大いに喜び二人はそのまま獠の営む冴羽商事のオフィスまで足を運んで行った。

 

 

 

 

[衝突する英雄と武士に飲兵衛二人]

 

 修司の家を出て真直ぐ聖チャペル学園に帰ろうとしていたハニーと聖羅。そして二人を学園まで送っていた早見青児。

 

 だが三人は学園に向かう途中道脇に編み笠を被り歩いている和服姿の男の姿を目視した為その男に声を掛けようとしていた。

 

「……ちょっと良いかしら?」「何用でござるか」

 ハニーは背後から男に声を掛けると男は編み笠を少し持ち上げハニーの顔を見ながら答えた。

 更にハニーは男の身形に付いて語り始めた。

「貴方、身形(みなり)は何も言わないけど腰に日本刀を下げているのは感心できないわよ。銃刀法違反に当たるわ」

「……お主、警察の者か」

 男はハニーに鋭い眼光を向けながら呟く様に訊ねた。

「いいえ、私は……」

 ハニーが男に告げようとした、その時。

「ハニー! もう充分だ、コイツは間違いなく、あの男に違いない!!」

 曲がり角から拳銃を構えたまま姿を現した早見青児。

 青児に向かい男が呟く。

「……お主、あの美術館に居た」

「そうだ! 俺も聖龍隊の一員だ。また会ったな、石川五エ門(いしかわごえもん)!!」

 青児は五エ門に銃口を向けながら言い放った。

 更に、青児に続いて聖羅もミスティーハニーに変身して3人の前に姿を現した。

「石川五エ門! 今日は逃がさないわよ! 大人しくルパンや次元の居所を白状しなさい!!」

 するとミスティーハニーを見て五エ門が一言。

「ふぅ、今の時世(じせい)の女子(おなご)はこの様な淫(みだ)らな身形を平然としているとは。実に嘆(なげ)かわしい」

「う、煩い! 良いからルパン達の居場所を吐きなさいッ」

 五エ門に言われ思わず動揺しながらも五エ門を問い詰めるミスティ。

 しかし五エ門は彼女の言葉に見向きもせず、そのまま場を去ろうとした。

「ま、待ちやがれ!」

 思わず青児が銃口を五エ門に向けた、その瞬間。

 一筋の閃光が垣間見えたと思えば、青児の持っていた拳銃が一刀両断されてしまった。

「ヒぃッ」

 思わず驚いてしまう早見青児に五エ門が言い捨てた。

「遅いな。拙者、この世で最も早い射撃を常に傍らで見ておる。それに比べれば造作も無い事」

 目にも止まらぬ居合抜きに驚愕し、腰を抜かしてしまう青児に驚きの余り目を丸くして固まってしまうハニーにミスティ。

 そして五エ門はそのまま夜の闇の中に姿を消した。

「ま、待ちなさい!」

 ハニーが咄嗟に気付き五エ門を追い掛けたが曲がり角を曲がった所で彼の姿は既に消えていた。

 

 

 

 その頃、獠と意気投合した男は彼の招きで獠が営む冴羽商事の内部で獠と酒を煽っていた。

「わはははは……」「うははは……」

 二人は相も変わらず飲んだくれていた。

「いやぁ、アンタ実に良い飲みっぷりなんだねぇ」

「うははは、いやぁお前さんも中々良い飲みっぷりだぜ」

 獠は飲んだくれる男を褒めちぎり、相手の男も獠を褒め合った。

 

 その時、二人が飲んでいる所に香がやって来た。

「獠帰ってたの? いったい誰と……!! り、獠! そ、その人!!」

 香は獠と一緒に居る男の顔を見て仰天した。

「オッ、何だいアンちゃん。お前さん所帯持ちだったのかい?」

 男は部屋に入って来た香を見て獠の妻だと勘違いした。

「え? ち、違いますよ。わ、私は……」

 香は頬を赤くさせ照れながら返答した。

 すると男の発言に獠が笑いながら否定する。

「ハッ、おいおい旦那。違うよ、香はそんなんじゃないよぉ。そもそもボクちゃんそんなにシュミ悪くないよ」

 この獠の発言に香はキレた。

「って何ですって、このノンベエ!!」

 香は怒りながら獠の耳を引っ張り、そのまま部屋の外まで獠を連れ出した。

「ってオイオイ香、そんなに引っ張るなって……」

 二人を見て男がボツリと小さく零した。

「……あのネエちゃん。何だか不二子みたいに気が強えなぁ」

 そう呟きながら男は缶ビールを口に運んだ。

 

 そして香は獠を部屋の外に連れ出し、獠の耳元で囁く様に告げた。

「ちょ、ちょっと獠! あ、アイツが誰か分かってる? あの男、間違いなくルパンよ!」

 そう獠と意気投合した赤ジャケットの男。それは誰でも無いルパン三世だった。

 だが獠は頬を赤くさせながら平然と香に言い放った。

「フッ、そんなの最初に会った時から分かってたよ。ただ良く言うだろ? 敵を知りたければ敵の懐に入れって。まぁ、今回は敢えて敵を俺の懐に入れてやってんだけどな。色々と飲み合いながら奴の性格等を観察していてよ、どんな手を使えば奴の行動を先読みできるか検討しているんだよ。香も少しは協力してくれよ」

「り、獠。アンタ其処まで……」

 冴羽獠の考えに香は唖然としながらも驚いた。

 と、その時。

「オーーイ兄ちゃん。酒切れちまったぞ、他に酒は無いのかー?」

 部屋の中に居るルパンが外の獠に呼び掛ける。

「ああ、今新しいの香に持って来させるよ。……と云う訳だ香。済まねえけど新しい酒買って来てくれねえか。これもあの瑠璃ちゃんからの依頼を成功させる為の策何だよ。な、頼む」

「わ、分かったわよ」

 獠に言われ香は渋々酒を買いに外出した。

 

 そして獠は香に酒を買いに行かせると部屋に戻り、再びルパンの前に居座った。

「オッ、にいちゃん。あのネエちゃんはどうしたんだ? 結構良い女だから酌してほしかったんだけどなぁ」

 ルパンが獠に云うと、獠は悠々と話し出した。

「止めなよ旦那、あんな不粋な女。まぁその不粋な女に新しい酒買ってきてもらっているからそれまで色々とビデオ見ない? 良い子が映っているAVが有るんだよ♡」

「ウホっ♡そりゃ良いですなぁ♡」

 こうして獠とルパンはビデオ観賞をしながら香が帰って来るのを待ち続けた。

 

 

 

 

[警視庁での交話]

 

 その頃、修司宅を出た銭形警部は資料閲覧の為警視庁にやって来ていた。

 そして資料を見終わり帰ろうとしたその時、一人の人物が銭形に声を掛けた。

 

「銭形君ではないか、久しぶりだね」

 その人物は肥満体で太い口髭を生やしている茶色のスーツに帽子を被った一人の男だった。

「あっ、目暮(めぐれ)警部。これはこれは、お久しぶりです」

 銭形に声を掛けて来た男は警視庁捜査一課に属している目暮十三(めぐれじゅうぞう)警部。

 目暮警部は銭形に向かい合いながら話し出した。

「どうかね調子は?」「はぁはい。相変わらずで」

 訊ねられた銭形は頭を押さえながら低腰で会話した。

「君も大変だな。あのルパンにいつも煙に巻かれてしまっているとは。後もう一歩と云う所で取り逃がしてしまう事も有るし」

 目暮警部の発言に銭形も苦笑しながら返した。

「い、いや。もう慣れましたよ。それよりも目暮警部聞きましたよ。また手柄を上げられたそうで」

 すると目暮警部は少し照れながらも言い返した。

「いやいや、ほとんどある青年の手助けを借りているからこそ上げられる手柄ですよ」

 照れる目暮に銭形が云う。

「あっ、もしかしてその青年って高校生探偵で有名なあの工藤新一(くどうしんいち)の事ですか?」

「おおぅ、君も知っていたのか。そうだ、いつも彼の推理の御蔭で犯罪者を捕まえられるんだよ。罪を犯しながら平然と一般人に紛れて生活しようとしている犯罪者など許せないからね」

 目暮警部の言葉に銭形も頷いた。

「その通りです。罪を犯してしまったのならまずはその罪を罰し犯罪者に己の罪を悔い改めさせるのが警察官の本分ですからな」

 胸を張り堂々と言い放つ銭形の発言に目暮警部も頷く。

「そうだな。そうやって何時かは誰も犯罪に手を染めなくなる素晴らしい世界になれば我々警察官も腰を据えて市民と穏やかに生活できるというのに」

「ええ、そうですな。それでは、私これから市長の家に戻り再びルパン逮捕に関して再度市長と打ち合わせをしたいと思いますので、これで」

 そう目暮警部に言い残して銭形は颯爽と立ち去った。

「ふぅ、銭形君も大変だな。せめて工藤君の推理を貸してあげたいけど、彼は現役の高校生。世界中駆け巡れないからなぁ」

 立ち去る銭形の背中を見ながら目暮警部は呟いた。

 

 

 目暮警部と別れ、警視庁内を歩いている時だった。

 今度は一人の女性が銭形に声を掛けた。

「あ、もしかして、銭形さんでは無いですか?」

「ん? その声は……」

 銭形が声のする方を向くと、其処には一人の女性が立っていた。

 女性の顔を見て銭形は彼女の名前を叫んだ。

「おおっ、野上君ではないか。久しぶりだなぁ」

「はい、銭形さんも相変わらずお忙しそうで」

 銭形に声を掛けて来たのは警視庁特捜部に所属している女性警察官野上冴子(のがみさえこ)であった。

「ホントに何年振りなんでしょうかね。こうやって顔を合わせられるのも」

「ああ、君も忙しい上にワシも世界中駆け巡っているから中々顔を合わす事も出来んしなぁ」

 二人は庁内に設置されている自販機でそれぞれ缶コーヒーを購入しスグ側のベンチに腰を据えて談話した。

「聞きましたわよルパンの事。今度はこの町の美術館に展示されている宝石が目当てみたいですね」

 隣で缶コーヒー片手に野上が銭形に話しかける。

「ええ。毎度毎度ルパンには手が掛かりますわい」

 野上の発言に銭形は缶コーヒーを一口ほど飲みながら返事した。

「……ところで、銭形さん」「ん? 何だい野上君」

 唐突に野上が銭形に訊ねた。

「前々から気になっていたんですが、何で貴方は其処までルパンに拘っているんですか?」

 野上の質問に銭形は真顔で言った。

「アレ? 前にも言わなかったかね? ワシがルパンを追い詰めるのは犯罪に対する恨み辛み等では無くワシ自身がそれが正しい事だと信じているからじゃよ。確かにこの世には絶対的な正義が無い様に、同時に絶対悪も無い事は解っている。ただワシの信じた信念に沿ってワシはルパンを死ぬまで追い続けようと心に決めているんじゃよ」

「それだけですか?」「え?」

 再度訊ねてきた野上に銭形は多少の動揺を感じた。

「それだけでしょうか? 私にはどうしても、それ以外に理由(わけ)が有ると思えてしまうのですが」

 野上の言葉に銭形は思わず黙り込んでしまい

 しばらく下を向いた後、再び彼女に対し重い口を開いた。

「……ルパンは、ワシにとっては、鏡みたいなモンなんですよ」

「え? か、鏡……」

 銭形の発言に少し驚いた野上に、銭形は語り続けた。

「……ルパンは、鏡に映ったワシみたいに、ワシとそっくりなんですよ。君も知っての通り、ワシはかの捕り者の名人であった銭形平次の七代目と云う事で警察官になる宿命を持たされていた。小さい頃は憧れに感じられていたが思春期になるとその宿命が重く辛い物に感じてしまった時期も有る。そして現在(いま)はこうして警察官として過せてはいるが……。もちろん今は昔と違って警察官である事を誇りに思っている。……そしてルパン。奴もまた、アルセーヌ・ルパンの孫と云う過去の繋がりだけで犯罪者に成らざる宿命を持ってしまってた。ワシは、ワシはルパンの様な才能溢れる男を犯罪の世界に留めたくないのだよ」

「……銭形さん」

 野上は力説する銭形の発言に衝撃を感じた。

「正直ワシはルパンのような天才と違って凡人だ。そんなワシとは正反対のルパンが祖父や親同様に犯罪だけにその才を活用して欲しくは無いんじゃよ。ワシは非凡故に警察官だけにしかなる事ができなかったがルパンの方はその溢れんばかりの才能やカリスマで犯罪以外の道を歩んで欲しいと願ってるんだ。ワシみたいに、血筋に捉われず奴にはもっと輝かしい道を進んで欲しいんじゃよ、野上君」

「……」

「ワシはルパンを、才能のある若者(ルパン)を日陰者(泥棒)で終わらせたくないだけなんだ……」

 銭形は何処か暗い、そして思い詰めた表情で語った。

 そして野上は、そんな銭形の横顔を見つめながら彼の話に耳を傾けていた。

 

 と、そんな最中であった。突然銭形の携帯が鳴った。

「ん? 何じゃ? はいもしもし、此方銭形じゃが…………何っ? ルパンが美術館に押し入った!? ま、まさか新しい予告状も出してないと言うのに?」

「え! 何ですって」

 銭形の言葉に驚愕する野上。

「ふむ……ふむ……。分かった、今スグそちらに向かう」

 そう言うと銭形は携帯を切りポケットにしまった。

「失礼、またしてもルパンが現れたらしいので現場に行かねば。また改めて会話しよう野上君」

 そう言いながら銭形は野上に敬礼した。

「はい銭形さん。今度会える時こそ、ゆっくり会話したいですね。では御気を付けて」

 野上は銭形に軽くお辞儀をした。

「ふむ。それでは」

 銭形は颯爽と走り去り現場に向かって行った。

 

「……ふぅ。大変ね銭形さんも」

 野上は小さく溜息を付くと缶に残ったコーヒーを一気に飲み干し

 空き缶を自販機横のゴミ箱に入れて歩き出した。

 そして彼女は歩きながらふと思っていた。

(……銭形さんがルパンの事をあんな風に考えていたなんて。確かに宿命に縛られ続けて生きる人生なんて悲しいだけだわ。銭形さんは才能あふれる人間であるルパンだけは、もっと別の人生を進んで欲しいのね。……そう云えば彼も同じね。この町が大好きだからって、ずっと町に居座り続けて命を掛けて……。男ってそんな生き方が好きなのかしら)

 と、その時。今度は野上の携帯が鳴った。

「あら? 何かしら……はいもしもし。あっ、香ちゃん久しぶり。どうしたの一体? ……え? り、獠があのルパンと一緒ですって!?」

 電話の相手は槇村香で有った。

 彼女は獠に言われ、缶ビールいっぱいのビニール袋を片手に電話越しで野上に話した。

「……そうなのよ野上さん。獠ったら、今回の依頼者はルパンが狙う美術館の館長の娘だからって敵を懐に入れて、それで情報を入手しようって考えているのよ。まったく何を考え付くんだが……な、何ですって!? それ本当なの? ルパンが美術館に押し入ったって? で、でもさっきまでルパンはウチの事務所で獠と飲んだくれてましたよ」

「ええ。もしかしたらルパン以外の一味だけで美術館に押し入った可能性も有るけど……。どちらにしろ、私も獠同様ルパンから事情を聞きたいから香ちゃん。ルパンが逃げ出さない様に見張っててくれる?」

「は、はい、もちろん。今すぐ事務所に戻ってルパンを見張っていますね」

「ええお願い。あ、それともう一つ」

「な、何ですか?」

「ええ。貴女、今日その依頼者である碧井瑠璃って子と一緒に市長の家に行ったのよね」

「え、ええ」

「市長ってどんな人、と云うよりも、どんな子だったの?」

「え、ええっとですね。私達が行ったときは食事中で、余り会話はしなかったのですが結構気さくで面白い子でしたよ。正直子供とは思えない様な素振りでしたし、なんか獠の事も結構知っていて、シティーハンターが殺し屋まで引き受けているって彼が言ったら一緒に居た銭形って警部さんに怒鳴られちゃったし」

「ふふ、確かにシティーハンターは殺し屋も引き受けているって業務内容だけど獠が人を殺したなんて話、余り耳には入らないわ。銭形さんは結構堅物だから遂言っちゃったんだろうけど」

「え? の、野上さん。銭形警部を知っているの?」

「ええ。彼は昔、警視庁に勤めていた時、私に色々と指導してくれた先輩の一人よ。確かに、あの人からも聞いているけど小田原って少年は結構気さくでしかも11の少年とは思えないほど古めかしい言動するから驚きながらも意外に話が合うって銭形さん言っていたわ」

「は、はぁ。で、でも野上さん。何で市長の小田原って子の事を?」

「あ、ああ。別に。ただ、市長に就任した少年ってどんな子なのかなって気になっちゃっただけよ。そ、それじゃ、ルパンの事お願いね」

 野上はそう言うと通話を切った。

「あ……何だろう。まさか野上さんショタコンの気が有る訳じゃ……あっ、そうだ。早く帰ってルパンが逃げない様に……いや待て。逃げ出さない様に私のハンマーで一発入れて置くのもアリね。良し」

 香はすぐさま獠とルパンが居る冴羽商事に帰って行った。

 

 一方野上冴子は携帯を切ると一人思い更けていた。

(……あの小田原修司。一体何者なのかしら? 彼に関する資料は警視庁にも無いし……何よりいくら魔物などの類が出没していたからって現役の小学生に市長なんて務めさせるなんて。でも、どんな経緯で彼が市長に就任したのか……いいえ、それ以前に、彼が何処の町から引っ越して来たのか。その辺が全く情報が無い。いったい彼は、小田原修司は……)

 

 

 

 

 

[出逢い続ける者たち]

 

 その頃、野上冴子から話を聞いた槇村香は早歩きで冴羽商事に足を運んでいた。

「さぁ、早く帰って獠に伝えないと。ルパンの仲間が一足先に美術館襲っちゃったって。へ、下手したら瑠璃ちゃんの依頼を……も、もしかしてもうサファイアを盗まれちゃっている可能性も有るわ! い、急げ急げ……」

 香が急ぎ冴羽商事に足を進ませていた、その頃。

「あ~あルパンったら。一体何処ほっつき回っちゃっているのかしら。まだ希望の瞳も手に入れてないって言うのに!さっさと手に入れてパリで買い物もしなきゃいけないのよ私はっ」

 香とは別方向から、ルパンを探していた峰不二子が歩んできた。

 そして二人はちょうど、冴羽商事の前でばったり出くわした。

「あ! あ、貴女は……!」

「ん? 貴女、誰?」

 香は目の前に現れた不二子に仰天した。

「貴女! ルパンの仲間の峰不二子ね! ルパンに宝石強奪の成功でも伝えに来たの!?」

「え? な、何の事よ……」

「問答無用、ルパンの前にアンタを叩きのめしてやるわぁ!」

 香は自前の巨大ハンマーを振り上げ、不二子目掛けて振り下ろした。

「う、うわっ! 何? 何なのよ一体ッ? や、止めてよっ!」

 不二子は驚愕しながら香のハンマー攻撃を回避し続けた。

 

 更に別の場所では。

「……ふぅ。買い出しも一苦労だなぁ」

 夜の街の中を両手いっぱいに紙袋に入った食料を抱えながら海坊主が一人歩いていた。

「ふぅ~、しかし。相変わらず目が不自由な人間には行動しづらい造りだねぇ」

 海坊主は夜の町中を歩きながら思った。

 彼は目が不自由な人間であり彼からしてみれば盲人にとって夜の歩行が配慮されてない町造りに少々不満であったのだろう。

 と、そんな夜の街を海坊主が歩いている時であった。

 買い物袋を担いでいた海坊主が一人の男とぶつかってしまった。

「おおっと、済まない」

「い、いや。此方こそ忝(かたじけな)い」

 海坊主とぶつかった男は古風な口調で衝突してしまった海坊主に謝罪した。

「もしや……そなた、目が見えぬでは?」

 男は海坊主が目の不自由な人物であると気づいた。

「あ、ああ。実を言うと、余り視力が良くなくてな」

 海坊主も重い口調で男に返す。

 すると男はぶつかった反動で足元に落ちてしまった林檎等の海坊主の買い出しした食料を拾い始めた。更に男は海坊主の抱えていた紙袋を、有無も言わさず一つだけ自身の手に持ちその紙袋に落ちてしまった食料を拾い入れた。

「あ、アンタ……」

 海坊主が唖然としていると、男は平然と述べた。

「なに。ただ拙者がぶつかってしまったが為に落ちてしまった物を拙者が拾い集めているだけでござる」

「……」

 更に男は落ちた食料を全て拾い集めると、持っていた紙袋を片手に担いだ。

「お主、住いはこの辺か」

「え? あ、アンタいったい」

 海坊主が動揺していると、男は変わらず平然と言い退けた。

「こんな夜中に目が、身体が不自由な者が出歩いていては何かと不便じゃろう。其が家まで荷を運んでしんぜよう」

 こうして男と海坊主は歩き始めた。

 歩きながら海坊主は男に話しかけた。

「す、済まねえなにいさん。態々荷物は込んで貰っちまってよ」

「いや。拙者も用が有ってこの辺りまで来ていたので序(ついで)でござる」

 男は微塵の不満も無い顔で海坊主に答えた。そんな男に海坊主は快く感じ、男に言った。

「なぁにいさん。良かったらウチの店で一杯飲まないかい?」

「ん? お主、飲食店を営んでいるのか?」

「ああ。喫茶店何だが、おにいさん、アンタコーヒーは口にできるかい?」

「い、いや……拙者、その様なハイカラな物は少し」

「そうかい。それじゃ、丁度良い茶葉が家に有るんだが飲まないかい?」

「……宜しいのか」

「構わねえさ。もう店は閉めちまっているけど荷物を持ってくれたせめてもの礼だ。飲んで行ってくれ」

「……ふむ。礼を断るのも何かと失礼。良かろう」

 こうして男は海坊主に誘われ、彼が営む喫茶店キャッツ・アイに足を運んだ。

 

 

 

 それから数十分後の事。

 今度はあの次元大介が新宿にやって来ていた。

「……まったく。ルパンや不二子は何処か行っちまうし、五エ門も二人を探しに行ったまま姿消しちまうし。急いで知らせねえと」

 次元はかなり焦った様子であった。

 そんな次元が、ある喫茶店の前を通り過ぎようとした時だった。

「う? こんな時間に開いている喫茶店なんて有るんだなぁ。もう深夜に成っているって言うのによォ」

 次元は喫茶店の前に設置されている電灯の看板に目を向けた。

「なになに? 喫茶キャッツ・アイ……猫の目ねぇ。こんな時間に飲みに来る客なんて居るのかね……あ、アレ? 何だ、一人いるじゃねえかよ……って、アレは!」

 

 次元の視界に入ったのは、先ほど海坊主に誘われ彼の入れた茶を口にしている男と、彼を招き入れた海坊主の姿だった。

「どうだいにいさん。正直あまり茶なんて淹れた事は無いから味には自信無いんだが」

 海坊主は余り淹れない茶の味を気にしながら男に訊ねた。

 すると男は茶を一口含み、そして飲むと一言発した。

「うむ。悪くない」「おお、そうかい。それは良かった」

 男の発言に海坊主は安堵した。

「中々良い茶葉で有るな。味よし風味よし、そして香りも申し分ない」

「そ、其処まで言われると照れちまうなぁ」

 男に褒められ照れる海坊主に、男は訊ねた。

「……ところでお主。聖龍隊なるモノを知っておるか?」

「ん? 聖龍隊……そりゃアンタ。この町に居る人間なら誰だって知ってるよ。今じゃ、誰もが憧れる英雄集団なんだからよ」

「……お主は思わぬか? 聖龍隊の女子(おなご)のほとんどが淫らな形(なり)をしておる。実に嘆かわしい……」

「ま、まあな。確かに肌の露出が目立つ恰好をしている女性が目立つよなぁ。若い女の子があんな恰好で戦わなくてはいけないとは……」

「今の世の女子があんな身形を平然とするとは……実に嘆かわしい。かつての大和撫子(やまとなでしこ)は何処に行ってしまったのか……」

「ふむ、大和撫子か。俺もこう見えて日本人だからな。優雅で温厚な大和撫子が望ましいぜ」

 海坊主と男が話し合っている、まさにその時であった。

 

「おい五エ門! 此処に居たのかよ。大変な事が……!」

「うむ、次元。何か有ったのか」

 キャッツ・アイの扉を勢いよく開けて次元が入って来た。

(うん? 五エ門? それに次元って……)

 次元の声と、その声に反応するように言い返した男の声を聞き海坊主は驚いた。

「ん? ……五エ門、バーに居るその男」

「うむ? 実はちょっとした成り行きでな。この者が拙者に美味なる緑茶を淹れてくれたのでござるよ」

 次元が訊ねていると、今度は海坊主が口を開いた。

「……おい兄さん。アンタ、まさかルパンの一味の、石川五エ門なのかい?」

 海坊主はサングラス越しではあるが、目を鈍く光らせながら問うた。

「……いかにも。其は石川五エ門十三代目である。お主、拙者等を知っておるのか?」

「知ってるも何も、アンタ等は今町中で話題に成っているぜ。美術館からデッケエ宝石盗もうって予告状出したんだろ?」

 この時、海坊主から感じられる殺気に五エ門は徐に腰に下げていた斬鉄剣に手を伸ばした。だがその時

「止めろ、五エ門」「次元……」

 斬鉄剣に手を伸ばし、鞘から刀を抜こうとした五エ門を次元が制止した。

「止めとけ五エ門。ファルコンには無暗(むやみ)に手を出さねえほうが良いぜ」

「なぬ? ……ファルコン?」

 制止した次元が口にしたファルコンと云うフレーズに反応する五エ門。

 すると小さく口元に笑みを浮かべながら海坊主が次元に言った。

「ほほう。俺のかつての異名を知っているのか、次元大介」

 すると次元も微笑しながら海坊主に答える。

「フッ、知らない方が可笑しいぜ。かつてはその名を聞いた者は誰もが恐れたと云う伝説の傭兵。伊集院隼人(いじゅういんはやと)ことファルコンは同じく傭兵をしていた俺の耳にも入っている。まぁ、風の伝えで聞いたが、その昔目を負傷して今じゃ視力が低いって話だが……。まさか新宿で喫茶店を営んでいやがるとは。ハッ、笑えるな」

 そんな不敵な面構えの次元を睨みながら、海坊主は告げた。

「……フン、それなら次元大介。俺もお前の事は知っているよ。傭兵や用心棒をして来たお前が、今じゃタダのコソ泥か。地に落ちたな」

「ケッ、ほっとけ。俺だって好きでやっている訳じゃねえよ」

 海坊主の発言に不機嫌そうに返す次元で有った。

 そして再び次元は五エ門に話し出した。

「あっ、そうだ。こんな事している場合じゃない。おい五エ門大変だ。俺達が狙ってたブツが何処かの誰かさん達に横取りされちまったぞ」

「なぬっ? それは本当か次元」

 驚く五エ門に続き海坊主も発言した。

「な、何だと? お、おい次元大介。ブツってまさか、希望の瞳の事かっ?」

「ああそうだよ。だから俺はわざわざ此処まで五エ門やルパン達を探しに来たんだ! 五エ門早く行こうぜ。その前にルパンや不二子達を探さねえとイケねえが」

「うむ承知。……海坊、いや隼人殿。そなたの淹れてくれた緑茶は誠に美味であった。だが拙者等は所詮、相見えぬ者同士。だがそなたの優しき心遣い、拙者は忘れぬぞ」

「い、石川五エ門……」

 海坊主は律儀すぎる五エ門の言動に驚いた。

 その時、喫茶店に飛び込むように今度は野上冴子が入って来た。

「海坊主さん大変……え? な、何で此処に次元大介と石川五エ門が居るの!?」

「冴子か。こんな時に、間の悪い……」

 海坊主に続き次元と五エ門も冴子を見て口を開く。

「な、何だ? この女は……」「隼人殿。そなたの知り合いか?」

 五エ門に訊かれ海坊主は答えた。

「ああ。彼女は警視庁の敏腕女刑事・野上冴子だ」

「け、警官!?」「……成程、警察の者で有らせたか」

 海坊主の台詞に驚く次元と、依然と平穏に振る舞う五エ門。

 そんな二人に野上が銃を構えながら言い寄った。

「あ、貴方達! 私は警視庁の野上冴子! 大人しくルパンの居所を吐きなさい! そして盗んだ宝石・希望の瞳を返すのよ」

「ま、待ってくれ。俺達はまだ盗んじゃいねえよ。と言うよりも、俺達より先に盗んだ連中が居るんだよ」

 言い迫られた次元は野上に言うが、彼女は聞く耳を持たない。

「な、何を言うの! 貴方達で無いなら誰が盗んだっていうのよ! さっき警視庁で貴方達が宝石を盗んだって電話で聴いて銭形さんが現場に向かったのよ!」

「なに、銭形のとっつぁんまで? ち、違う。俺達が盗もうと思って、俺が絶えず美術館をビルの屋上から覗いていたらコート姿の男共が美術館に押し入って。俺はそれをルパンや五エ門に伝えようと此処まで」

「黙りなさい! 良くも抜け抜けと……」

 野上が銃を構えていると、彼女に海坊主が言い放った。

「止めろ野上!」「! う、海坊主さん……」

「止めろ野上。言っちゃなんだが、この次元大介に銃はやたらと向けちゃいけねえぜ。冗談抜きでお前がコイツに撃ち殺される……。何より、次元はともかく五エ門はさっき俺と会ってからずっとこの店で茶を飲んでいたんだ。犯行は無理だぜ」

「だ、だけど! それなら五エ門以外のメンバーで盗み出したんじゃ……」

 この発言に海坊主は、顔を険しくさせながら答えた。

「それは考えられねえ。俺は傭兵上がりで正直、泥棒の犯罪心理なんて解らねえが、あんな大層なブツをそれも何十人もの警備員でガードされている美術館に一人や二人で襲いかかれる訳がねえ。次元の言っている事はホントだろうぜ」

 海坊主に続き次元が再度野上に説明し出した。

「そ、そうだぜ。俺達は美術館に再度押し入る算段を練っていたんだが遂さっき何十人もの輩が押し入っていったんだ」

「そ、それじゃ、いったい誰が宝石を……」

 野上が目を丸くして唖然としている最中、五エ門が次元に告げた。

「次元、今はこの事をルパンに。あ奴が今何処に居るか解るか」

「い、いや。俺も見当もつかねえんだよ。アイツこんな時に何処行っちまっているんだか」

 とその時。会話している次元と五エ門に野上が話しかけた。

「る、ルパンなら今、獠の所に居るって、さっき香ちゃんから連絡が有ったわ」

「何だと獠のっ? 何でアイツとルパンが一緒に……!?」

 野上の台詞に驚く海坊主を尻目に五エ門が再度次元に告げた。

「ともかく次元。急ぎルパンに知らせねば」

「あ、ああ。だが、その獠って云う男は何処に……」

 すると二人に海坊主が話しかけた。

「何ならお二人さん。良ければ俺がその獠って男の所まで送ってってやろうか」

「なにっ?」「!」「え、えぇ! う、海坊主さん!?」

 いきなりの海坊主からの発言に驚く次元に五エ門、そして野上。

 そんな三人の眼前で平然と海坊主が続けて発した。

「ルパンや次元はともかく、俺はこの五エ門の律儀な姿勢が気に入った。今の時代に、こんな律儀な武人は珍しいからな」

『……』

 思わず無言になる三人。

「それに、その獠って男は俺とはちょっとした知人でね。何でルパンと一緒に居るのか気になるし、一緒に付いていくだけさ」

 この海坊主の発言に、五エ門は小さく頷きながら返した。

「隼人殿、感謝致す」

 そんな五エ門に続き、次元と野上も発した。

「タクしょうがねえな。それじゃファルコン、その獠って野郎の所に案内しろい」

「も、もう。しょうが無いわね。それなら私も付いていくわ。何がどうなっているのか訳が分からないわよ」

「フン、決まりだな。それじゃ行くか!」

 そして次元に五エ門、野上は海坊主の運転するジープで急ぎ冴羽商事に向かって行った。

 

 

 

 

[男二人に女二人]

 

 一方、冴羽商事の前で出くわした不二子と香。

 不二子は香のハンマー攻撃を回避し続け、香もかわされながら多種多様なハンマーや鈍器で不二子を攻撃しようとしアスファルトの道路は半壊して行った。

「ハッ……はぁ、はぁ」「はぁ、はぁ……」

 不二子と香、両人はどちらも息を切らしかけていた。

「い、いい加減諦めなさいよ。この悪女……!」

「ハッ、誰がですって? 怪力女さん……」

 互いに睨み合いながら一歩も退かない二人。

 

 そんな時、冴羽商事の出入り口から外の騒ぎを聞き付け獠とルパンが姿を現した。

「何だい何だい。さっきから喧しいなぁ」

「ほ~んとほんと。折角あんちゃんと良い所を見ていたって言うのに」

 ルパンは獠に見せてもらっていたAVの良い場面の最中に外で騒がれていたのに不満の様子。

 そして男二人に女二人はそれぞれ顔を合わせた。

「あっ、ルパン」「おやっ、不二子ちゃんじゃねえか」

「か、香。いったい何をしているんだ?」

「り、獠! 大変よ、もうルパン一味に、コイツ等に希望の瞳が盗られちゃたわ!」

『な、何だって「ですって!?』

 香の発言に三人とも驚いた。

 獠は驚きながら香に訊ねた。

「か、香。それはどういう……」

 すると香は動揺する獠に話した。

「さ、さっき野上さんに電話したら、ルパンの連中が美術館に押し入ったって。銭形警部は一足先に美術館に行っているみたいで野上さんももうすぐ此処に来るって言っているからルパンの仲間の峰不二子を足止めしている最中だったのよ」

 香の発言を聞いていたルパンに不二子は揃って反論した。

「ちょ、ちょっと待ってよ! 私達はまだ宝石には手を出してないわ! る、ルパン! そうでしょ」

「あ、ああ。俺達はまだ盗んじゃいねえし……アッ」

 ルパンは思わず本音を、しかも獠の隣で口にしてしまった事に動揺した。

 が、獠はそんなルパンに微笑みながら語った。

「……フッ、アンタが怪盗ルパンだって事は最初会った時から解ってたよ。それよりも。本当にアンタ等じゃないのかい? 宝石を盗み出した連中って」

 獠の質問にルパンはハッキリ答えた。

「あ、ああ! それは本当だぜにいちゃん。俺らまだ美術館に忍び込む算段を練り直してないんだよっ。で、でも誰が俺等の獲物を横取りしやがったんだ?」

 動揺するルパンに不二子が言い寄る。

「そんな事よりルパン! いったいどうするのよ! 寄りにも寄って私達が盗みそこなった宝石を他の誰かに横取りされちゃうなんて!」

 そんな怒鳴り散らす不二子(の揺れる胸)を見て、獠が目の色を変えた。

「う、ウホっ♡こ、こりゃまた良いチチだ事♡♡」

「え? な、なに? 何なの、コイツ?」

 目の色を変えた獠に只ならぬ気配を感じた不二子は動揺した。

 そして目の色を変えた獠を見て香は日常的な100tハンマーを炸裂させた。

「うギャあっ」

 毎度の事ながら獠はアスファルトの地面に減り込んでしまう。

「な、なに? この二人……」二人を見て唖然としてしまう不二子。

 そんな獠を見てルパンが一言発した。

「ハハ、やっぱおもしれえな、このにいちゃん♪」

 

 とそんなドタバタ劇の最中、海坊主の運転するジープに乗って次元・五エ門・野上が4人の前に現れた。

「おいルパン大変だ! 俺達が狙ってた宝石が他の連中に盗られちまったぞ」

「じ、次元。オイそれはどう言う事だい?」

「あら。五エ門も一緒なのね」

「か、香ちゃん。どうも盗んだのはルパン達じゃ……なに? また獠の奴なんかやったの?」

 地面に減り込む獠を見て野上は呆れてた。

「は、はは。ちょっとね……そ、それよりも野上さん。盗んだのがルパンじゃないってどういう事なんですか? そ、それに何で野上さんや海坊主さんが次元大介や石川五エ門と一緒に居るんですか?」

 驚愕する香に海坊主が告げる。

「まぁ香。今は美術館に行って誰か宝石を盗み出したのか。それを確認する為にも一緒に来い。話は乗りながらする」

「は、はぁ……」

 更に海坊主はルパンと不二子にも話しかけた。

「おい其処の二人。ルパン三世に峰不二子。お前等も一緒に来い」

「へ?」「な、何で私達も」

 戸惑う二人に海坊主は答えた。

「俺は泥棒の家業とかシティーハンターの本分とか気にしねえが今日は真の武芸者、石川五エ門に色々と借りが有るんでな。ほら、グズグズしねえでさっさと乗りな!」

 海坊主に続き次元も二人に告げた。

「早く来いよお二人さん。ファルコンがこんなにも人に対して親切になるざ滅多に無いぜ。正直俺も何がどうなっているのか解らねえし、行って確かめに行こうぜ」

『う、うん……』

 次元に言われ、言われたままルパンと不二子は海坊主のジープに乗車した。

「ほ、ほれ獠。何時までも寝てるんじゃないわよ。私達も早く行きましょう」

「ふ、ふにゃ……」

 香はハンマーで殴られ、ややこん睡状態の獠を引き摺りながら車に乗せ、自信も乗車した。

 

 

 こうしてルパンと不二子、更に獠と香を加えて8人は急ぎ美術館へと向かって行った。

 

 

 

 

[命は盗らない怪盗]

 

 海坊主たちとルパン達が合流したその頃。

 美術館では多くの鑑識、そして市長で有る修司が誰よりも先に着いていた。

「ふぅ~……」

 修司が美術館で立ち尽くしている、その時。

「お、おい、修司」「ん? ああ、お前達。来てくれたか」

 修司にメタルバードが声を掛け更に彼の後ろから付いてくるように他のメンバーも現場に駆けつけて来た。

「修司どうだ? 何が起こったんだ」「うむ、それがな……」

 メタルバードに訊ねられ、修司が視線を向けた先をメタルバード達も向けてみると其処には夥(おびただ)しい程の警備員の死体の山があった。

「きゃあっ」「こ、これはいったい……」

 死体の山を見てミラーガールとマーキュリーが思わず蒼褪める。

 そして修司にタキシード仮面が話しかけた。

「お、おい修司。これ……」

 更に続いてキッドも修司に訊ねた。

「る、ルパンが、ルパン達が殺ったのかい?」

「ま、まさか……さっき、俺と聖羅、そしてハニーは五エ門と会ったばかりだぞ」

 五エ門と遭遇した青児も目を丸くして驚いた。

 皆が眼前の惨状に驚愕している、まさにその時。

「それは違うぞ!!」「え? ぜ、銭形警部?」

 突然怒鳴って来た銭形警部にミラーガールを始め、聖龍隊は皆驚いた。

 そして銭形は聖龍隊に向かって述べた。

「奴は! ルパン三世は金塊100万tはもちろん、女性の下着まで盗み出しても人の命までは奪ったりしません!!」

「ぜ、銭形さん……」

 熱弁する銭形に驚きながらも、必死さを感じるナースエンジェル。

 更に銭形は続けて話した。

「アイツが人の命まで奪うような真似など絶対にせん! そりゃ、アイツは長い犯罪者人生の中で人を殺めた事は多々ある。ただし! それ等は全て相手がルパンを殺そうとした際にとったルパンの自己防衛だ! アイツは、ルパンは人殺しはせん!!」

 銭形の必死の答弁に、聖龍隊員達は衝撃を感じ取っていた。

 

 その時、皆に修司が告げた。

「みんな、実はさっき、此処の館長である碧井館長から聞いたんだが犯人は数十人のグループで構成されていてしかも宝石を入れていたトランクケースごと盗み出したらしいんだよ」

「ね、ねぇ修司。いったいルパンじゃないとすれば、誰が宝石を……」

 ミラーガールが訊くと、修司は無線でメインフロアに待機しているウッズと通話した。

「おいウッズ。其方はどうだ? 発信器のシグナルはキャッチできたか?」

「はい。先ほどキャッチできたところです。今はまだ移動中なのですが、シグナルが止まり次第ご報告させてもらいます」

「分かった、御苦労」

「お、おい修司。発信器って……」

 メタルバードが訊ねると、修司は不敵な面構えで言った。

「ああ。実はトランクの方に発信器を付けておいたんだよ。これで犯人グループの居所が分かる」

「ワオッ、さすが修司ねッ」

 ミラーガールが笑顔になっている、その時であった。

「修司様、修司様!」再度無線からウッズの声が流れた。

「ん? どうしたウッズ。もう奴等の居所が掴めたのか?」

 するとウッズは慌てた口調で話し出した。

「ち、違うんです! 実はさっき、美術館前の警備カメラをチェックしていたら犯人グループの使用している車の後部トランクに瑠璃ちゃんが潜り込んでいるのが確認できたんです!」

「な、何だって瑠璃が!」『ええぇ!』

 ウッズの話を聞き驚く修司と面々。

「わ、分かった。それじゃスグにでも犯人達の居所を突き止めてくれ!」

 そう言い修司は無線を切った。

「お、おい修司。何で瑠璃は犯人達の車なんかに……」

「わ、分からねえよ! それより、俺達もこの辺を捜索して一刻も早く瑠璃の所に」

 思わず訊ねるメタルバードであったが修司は強めの返事で皆に言い、そして美術館の周りを捜索し始めた。

 

 この時、修司同様に瑠璃と同じクラスのミラーガールことアッコも心苦しい心境だった。

(る、瑠璃ちゃん。無事でいて……!)

 

 

 

 一方その頃。

 海坊主の運転するジープに乗って移動しているルパン達と獠たち。

 ルパンと不二子、そして獠に香は次元や野上の話を聞き、粗方の状況を把握した。

 更に獠が新宿ではどの様に呼ばれ、どんな職なのかも耳に出来ていた。

 そして、その獠がルパン達から宝石・希望の瞳を護って欲しいとあの瑠璃から依頼を受けていた事もルパン達は知った。

「……そう云う事だったのかい。あん時のお嬢ちゃんがお前さんに依頼したのかい。俺達から宝石を護って欲しいって。……そして俺がルパンだって知っておきながら一緒に居たって訳かい?」

 ルパンに訊かれ、獠は平然と答えた。

「まぁ、確かにアンタがルパンだって事は最初っから知っていたよ。でもアンタと話が合ったってのも事実だ」

 そんな獠の態度と台詞に、ルパンは口元をニヤケさせた。

「……そうかい♪まっ、俺と一緒に居たって対策何か解りっこないけどねッ」

 そんなルパンに続き、次元と五エ門も口を開く。

「その通り。ルパンの心理や考え何か、誰にだって理解できねえよ。現にこの中では一番付き合いの長い俺ですらコイツの頭ん中は分からねえ事だらけなんだからよ」

「その通りでござる。ルパンの思想ほど、理解できない物はこの世に無い」

「……そうなのかい」獠が呟いている、その時だった。

 ジープの前方に武装した男達が乗り込んでいる数台の車が通り過ぎて行った。

「ん? あいつ等、いったい何なんだ?」

 次元が発言すると、獠がすかさず海坊主に言った。

「……おい海坊主。あの男共」

「うむ。何か有るな……行ってみよう」

 

 一行は武装した男達が運転する車を気づかれない様に尾行した。

 

 

 

 

[囚われの少女]

 

 男達が車を止めたのは古びた無人の洋館。その洋館の中では、一人の女が男達に命令していた。

「お前達。良く希望の瞳を盗み出してくれたな、御苦労」

『はいっ、ローザ様!』

 男達は女に跪き、女の名前を発した。

 

 その女はまるでバラの姿に酷似している姿形の怪人だった。

 女は男共に更に言った。

「くくく。全ての罪はルパン一味に着せれば後は万事済む。こんな巨大サファイアを手に入れられたのであれば私の組織での地位も向上するだろう……」

 女はトランクケースに収納されているサファイアを見つめ怪しく微笑んだ。

 

 とその時、一人の男が女に駆け寄って来た。

「ローザ様。ちょっと」「何だ?」

 男は女に耳打ちで話し、女は驚愕した。

「な、なに? 車のトランクから女が出て来た!?」

 そして女の目の前に一人の少女が、そうあの瑠璃が連れて来られた。

「お、お前は誰だ! 何故私等の車に潜り込んでいた」

 訊かれた瑠璃は女に向かって叫んだ。

「か、返して下さい! あの宝石は、希望の瞳は美術館にとっても私にとっても大事なものなんです!」

 すると女は不敵に微笑みながら瑠璃に言った。

「ウン? お前は、あの美術館の者共の身内か?生憎(あいにく)、私達豹の爪(パンサークロー)は手に入れた物を返す程お人好しでは無いのだよ」

「! ぱ、豹の爪……!」

 瑠璃は驚愕した。最初はこの者達もルパンの仲間だと思っていたのだがそれがあの悪名高い犯罪結社・豹の爪であった事に驚愕した。

「クククク、さてと。お前は別に必要のない者。必要無き者は要らぬ。邪魔だ、お前達ヤッテおしまい……!」

 ローザが言うと、一人の男が瑠璃の頭に拳銃を向き付けた。

「ひっ」

 瑠璃は自分の頭に銃口が向けられ、怯えきってしまう。

「愚かじゃな。我等豹の爪に自ら潜り込んでくるとは。己の愚行を恨みながら死ぬが良い……」

 そして瑠璃に銃を向けてた男は、ゆっくりと引き金を引き始めた。

 瑠璃は恐怖の余り、目をつぶり一人の人物を思う。

(こ、殺される! ……だ、誰か助けて……! ……助けて、修司!!)

 

 その時。

 激しい爆音と共に、洋館の正面玄関が吹っ飛んだ。

「な、何事!?」

 ローザが驚いていると部下が報告しにきた。

「た、大変ですローザ様! 得体の知れぬ連中が館に押し入って来ました」

「な、何じゃとっ?」これを聞いた瑠璃は思った。

(も、もしかして修司が聖龍隊を引き連れて、わ、私を……)

 そして爆破した玄関から5人の男達と3人の女達が屋敷内に入って来た。

「ふぅ~、まさかバズーカで豪快に正面から突入しちゃうなんてな」

「フッ、これがファルコン流の挨拶何だよ、ルパン」

「フン、こんな礼儀知らずな連中には、これぐらいのお仕置きが必要だぜ」

 見事バズーカで玄関を破壊した海坊主に微笑みながら話しかけるルパンと次元。

「あ、あら……中にもまだこんなに……」

「アラ? 貴女、まさか怖いの?」

「ばば、バカ言ってるんじゃないわよッ。こ、こんな展開、今までだっていくらでも経験しているのよ。へ、平気よ……」

 屋敷内に居る大勢の男達を見て尻ごみする香に挑発するかのように言う不二子。香は思わず強気な言葉で返事してしまう。

「大丈夫香ちゃん。まぁ、海坊主さんや獠、それに他にも頼りになる男が三人も居るんですもの。何か有ったら護ってくださらない? サムライさん」

「…………」

 野上冴子に言い寄られ、頬を赤くしながら黙り込んでしまう五エ門。

 

 そしてルパンと獠は男達の眼前に立ち尽くし言い放った。

「ふふふ、おんもしろくなって来ましたねぇ。そう思うだろう? シティーハンターのにいちゃん♪」

「はは♪アンタやっぱ面白いなぁ。怪盗にして置くのは勿体無いよぉ。まっ、今は取りあえず目の前のコイツ等を掃除してやんなきゃな」

 

『そんじゃっ、行きますか!』

 

 ルパンたち次元大介・石川五エ門・峰不二子の4名。

 そして冴羽獠たち槇村香・海坊主こと伊集院隼人・野上冴子の4名。

 8人は女怪人・ローザ率いる豹の爪(パンサークロー)の集団に突っ込んで行った。

 

 

 果たしてルパン達と獠達はどうなるのか。

 聖龍使いとミラーガールは現場に駆け付けるのか。

 宝石・巨大サファイア希望の瞳は誰の手に。

 そして少女・瑠璃の想いは。

 

 

 

 

[爆音を聞き付けて]

 

 同じ頃、聖龍使いを筆頭に聖龍隊は犯人グループの捜索を行っていた。

 何より、犯人の車に碧井瑠璃(あおいるり)が同乗している以上、彼女の人命を最優先に捜索していた。

 

 そして聖龍使いとミラーガールは奇遇にも二人で一緒に捜索行動をとっていた。

「…………」「何処じゃ? あ奴等は何処に行ってしまったのじゃ?」

 必死に探し続ける聖龍使いに対し、ミラーガールは無言で何処か後ろ暗い顔付きであった。

「……ど、どうしたのじゃミラーガール。さっきから何も発してないが……」

 聖龍使いはミラーガールの暗い雰囲気を気にして、彼女に声を掛けた。

 すると彼女は突然、聖龍使いに訊いた。

「ね、ねぇ、修司……。貴方は、その……」

「ん?」

 躊躇いながらも、何かを言おうとしているミラーガール。彼女は思い切って聖龍使いに言ってみた。

「あ、貴方は……修司は瑠璃ちゃんの事どう思ってるの?」

「! な、何じゃ突然……ど、どう思っているって……何が?」

「だ、だからその……修司は鈍くない筈よ。だからもう気付いているんでしょ、瑠璃ちゃんの気持ち」

「! ……」

 ミラーガールの言葉に驚愕し黙り込んでしまう聖龍使い。

「修司はさ、言っちゃなんだけど昔いろいろと遭って来たから人一倍周りの人の態度や発言を気にしちゃうでしょ? だ、だから、瑠璃ちゃんの本心だって、薄々は気付いているんじゃないの?」

 彼女の発言に聖龍使いは黙り込んでしまい、そして徐に口を開いた。

「……あ、ああ。……確かに。ちゃんと気付いているよ、瑠璃の思いは」

「!! ……そ、そう」

 聖龍使いの言葉を聞き、顔を俯くかせてしまうミラーガール。

 更に聖龍使いは続けて彼女に言った。

「だ、だけどな。正直、俺はどうしたら良いか解らないんだよ」

「え?」

「お、俺さ……お前もそうだけど、こんな顔で、こんな性質の悪い性分だっていうのに人に好かれるなんて経験、今まで無かったからよ。瑠璃に対しても、どう接して良いのか解らねえし……」

 彼の言葉を聞き、ミラーガールは困惑してしまう彼に告げた。

「し、修司は、どうしたいの?」「……え?」

「修司は、瑠璃とどうなりたいの? 瑠璃の気持ちに対して何て答える積りなの?」

「……」

「……わ、私は、修司のありのままを修司の本心を瑠璃ちゃんに伝えてあげれば、良いと思うわ」

「……」

「修司が瑠璃ちゃんとどんな関係を望んでいるかは解らないけど、私は修司の本心を尊重したいわ。だ、だからさ。無事に瑠璃ちゃんを助け出せたら、彼女にちゃんと伝えて欲しい。修司の気持ちを」

「あ、アッコ……」

「私は修司の気持ちを、本心を大切にしたい。だから修司も、自分の気持ちに正直になって瑠璃ちゃんの気持ちに応えて欲しいの……例えどんな結果になろうとも、私はそれを受け入れるわ。それが……修司の願いで有れば……」

 ミラーガールの、加賀美あつこの台詞に、聖龍使いこと小田原修司は言葉を失った。

 

 此処まで他人を思いやれるのか。

 此処まで自分よりも相手の気持ちを尊重する人間が居たのか。

 此処まで、自分の気持ちや願望を押し殺してまでも相手の幸せを一番に願っている少女の存在に、修司は愕然とした。

 

 そんな切羽詰まった空気の中で二人が会話している、まさにその時。

 スグ近場から激しい爆音が鳴り響いた。

「ん!」「な、なにっ?」

 二人が音のした方向に目を向けてみると、爆煙らしき煙が上がってた。

「な、何なのかしら?」「行ってみるぞ、ミラーガール!」

 二人は煙が上がっている所まで駆けて行く。

 

 

 

 その頃、怪人ローザ率いる豹の爪(パンサークロー)の集団とルパン・冴羽組の戦いは更にヒートアップしていた。

「まさかな。世界的にも有名な豹の爪と一戦交えじまうとは……オマケにあのファルコンとも共闘しちまうとは……今日はなんて日だ」

「フン、それはお互い様だよ。次元大介」

 次元・海坊主はそれぞれマグナムとバズーカで迫りくる輩を次々に撃破してた。

 

「おんどりゃあぁ!」「ギャアア」

「な、何なんだこの女は? あんな重量のハンマーを軽々と……」

 100tハンマーを軽々と振り回す香を見て、怯え始めてしまう男達。

「さぁ坊や達♡お姉さんが遊んであげるわ!」

「ギャアァっ」「ヒイっ」

 不二子の方は男共に向かって腰に備え付けていた鞭を思いっきり打ちつけて行った。

「こ、このアマぁ!」

 一人の男が香にマシンガンの銃口を向けた。

「き、きゃあっ」

 それを見た香は思わず悲鳴を上げてしまう。

「はい其処っ、レディーに銃を向けるんじゃない!」

 不二子は咄嗟に香に向けられたマシンガンを鞭で奪い取り逆にそのマシンガンで男を撃った。

「ギャあっ」

 男は撃たれ、断末魔を上げながら倒れた。

「あ、ありがとう……」

 咄嗟の事とは云え自分を助けてくれた不二子に礼を言う香。

 だが不二子は香を見つめながら告げた。

「ふっ、貴女と違って、私は度胸が有る女なの。乱闘も、見た目もね」

 そう言いながら不二子は自身の胸を揺らして見せた。

「ウッ……(こ、この女、やっぱ気に入らない……!)」

 そんな二人に拳銃を連射しながら野上が言った。

「貴女達、ケンカしてないで早くコイツ等片付けなさいッ」

「ホッホウ、こりゃまた何とも気の強いねえちゃんだ事♡こんな美人もアンタの周りに居るんだねえ」

「へっ、欲しがったってヤラネエぜルパン」

「いーーもんいーーもん、俺様には不二子ちゃんが居るから良いんだもん」

 ワルサーP38にコルトパイソン357マグナムを容赦なくブッ放しながら語り合うルパンに獠。

「このヤロー!!」

 突如、複数の男達が女達に向かって傾れ込むように襲って来た。

『!』

 女達は驚いていると、咄嗟に五エ門が間に入り込んできて一気に男達に直進して行った。

「てぃやっ」

 一筋の閃光が見えたと思いきや男達が構えていたマシンガンはバラバラに斬られ、男達もその場に倒れ込んだ。

「わ、わぁ。す、凄い……」

 一瞬で男達を斬り倒した五エ門に、香は目を丸くして驚愕した。

「ふふ。どう? ウチの男共は」「ええ、かなり使えるじゃないの」

 微笑みながら野上に訊ねる不二子に、彼女も微笑みながら言い返す。

 と、その時。

「お、お前達! このガキがどうなっても良いのか!」

 一人の男が何と両手を後ろに縛られ自由の利かなくなった瑠璃に銃を突きつけながらルパンや獠達に見せつけた。

「あ! る、瑠璃ちゃん!」「か、香さん……」

 瑠璃は怯えた目で香を見つめた。

「ククク。お前達、これ以上何かしてみろ。この少女の命がどうなっても良いのか?」

 男と瑠璃の後ろからローザが姿を現した。

「あ、貴女は?」

 驚きながら香が訊ねると、ローザは不敵な笑みを浮かべながら答えた。

「クク、妾(わらわ)は偉大なる豹の爪の幹部の一人ローザ。ルパン三世が狙っている巨大サファイア・希望の瞳を、愚かなルパンに代わって頂いたのよ」

「な、なにっ?」

 ローザの発言に目を睨ませながら反応するルパン。

 

 彼に続いて不二子もローザに言い放った。

「ちょ、ちょっと! それは私達が目を付けていた宝石よ。誰がアンタ達なんかに」

「黙れ! どちらにしろ、それ以上暴れてみろ。この子供の命は無いぞ」

「りょ、獠……」「……」

 銃を付き付けられている瑠璃を見せられ、動揺する香と獠。

「ど、どうする、次元……」「い、いや……」

 五エ門も次元も身動き一つできなかった。

「うむ。これじゃ、手が出せねえぜ」「な、何とか手立ては……」

 海坊主・野上も顔を引き攣らせながら困惑した。

 

(こ、怖い……怖いよ……)

 自分の頭に銃を突き付けられている瑠璃は恐怖で失神寸前であった。

 

 

 

 

[乱入! 武人と聖女]

 

「水流拳!」「う、うわぁっ」「な、何じゃ!」

 突如、何処からともなく高水圧の水流が、瑠璃に銃を突き付けていた男に直撃した。

 

 更にその隣に居たローザも男同様吹っ飛んでしまった。

「な、何なの! 今の水は!?」

 目を丸くして香が驚いていると、屋敷の窓から一つの影が飛び込んできた。

 

「お、お前は何者だ!」

 目の前に現れた人物に、男の一人が訊ねた。

 すると、その者は男共を睨みつけながら豪語した。

「己の罪を赤の他人に擦り付け、更には痛いげな少女を盾にするとは言語道断。あっ、聖龍使いが、成敗してくれようぞぉ」

『せ、聖龍使い!!』

 目の前に現れた聖龍使いに仰天する男達にルパン・獠達。

 

 更にミラーガールも聖龍使いに続いて窓から屋敷に入って来た。

 そして彼女は人質になっていた瑠璃の傍らに飛び降り、彼女をローザの元から引き離した。

「だ、大丈夫? 瑠璃ちゃん……」「は、はい。大丈夫です」

 息を切らしながら瑠璃に訊ねるミラーガールに瑠璃は唖然としながらも返事した。

 

 そんなミラーガールに向かって聖龍使いは叫んだ。

「ミラーガール! その碧井瑠璃(あおいるり)はそちに任せる! この輩共は拙者が片付けてみせようぞ!!」

「わ、分かったわ! 聖龍使い、無茶だけはしないで!」

「……心得た」

 ミラーガールの問い掛けに、低い声で返答した聖龍使いは敵勢の中に突っ込んで行った。

「ていやぁっ! そりゃあっ!」「ぐわっ」「ぐっ……」

 男達の間を駆けながら、聖龍使いは次々に敵を斬り倒して行った。

 

「お、おおぉ。聖龍使いって結構やるんだねえ」

「え、えぇ。初めて生で見るけど、凄い太刀振る舞い……」

 聖龍使いの剣戟を見て感心する獠と唖然としてしまう香。

「なるほどね。噂通りの剣術士の様だわ。五エ門みたいな輩が、まさか他にもいたとは」

「ふふ。私は嫌いじゃないわよ。剣の道に生きる男って」

「! ……」

 不二子の発言に言い返す野上の台詞を聞き顔を赤くさせる五エ門。

 

「ほほぅ、あのサムライもやるなぁ」

 流れる様な太刀筋に思わず見惚れる海坊主。

「へぇ、ファルコンがサムライに興味を抱くとは」

 思わず海坊主に話しかける次元大介。

 

「ええっと。アイツの声を再度登録して、更に声紋照合プログラムを起動させて……」

 聖龍使いが戦っている最中、ルパンは自作した携帯を弄っていた。

 

「す、凄い……」

 目の前で次々に敵を倒して行く聖龍使いを目の当りにして、目を丸くさせて呆然となる瑠璃。

 そんな彼女にミラーガールは笑みを浮かべて告げた。

「どう、凄いでしょ。彼に任せておけば、もう大丈夫だから安心して」

 この時、瑠璃はマスク越しではあったがミラーガールの慈愛に満ちた瞳を見つめていて思った。

(あ、アレ? み、ミラーガール。前にどっかで見た事有る様な……)

 慈愛と云う輝きを放ちながら、鏡の様な汚れなき瞳から感じられる雰囲気に瑠璃は妙な親近感を感じ取る。

 

「こ、小癪(こしゃく)なッ!」

 聖龍使いが男達を斬り倒しているその時、先ほど彼にフッ飛ばされたローザが聖龍使いに向けて自身の体の一部である蔓(つる)を伸ばして来た。

 伸びて来た蔓は聖龍使いの腕を捕え、そのまま彼を引き倒してしまった。

「!」「あっ」「せ、聖龍使い!」

 倒れてしまった聖龍使いを見て驚く瑠璃にミラーガール。

 しかし聖龍使いは倒れながらもローザに向かって炎の斬撃を放った。

「! グッ、ギャアアっ」

 炎の斬撃はローザに直撃し、更に衝動でローザは屋敷の壁まで飛ばされ壁を突き抜けながら屋敷の奥まで飛んで行ってしまった。

「ふ、ふぅ……危なかったわ」

 倒れていた聖龍使いは溜息をつきながら立ち上がった。

 そして聖龍使いはルパン達に顔を向けながら彼等に告げた。

「ルパン一派よ。そして冴羽獠とその知人等よ。主等が何故一緒に居るかは、また後で訊ねるうえ、今はこの輩に専念し合おうではないか。宜しいか」

『あ、はい……』

 鋭い眼光の聖龍使いに皆思わず返事をしてしまう。

 

 と、その時。

「く、クソっ」

 男の一人がドサクサに紛れてミラーガールと瑠璃目掛けて手榴弾を投げつけた。

「あ、危ない!」それを見て思わず叫ぶ香。

 だが手榴弾は一直線に二人に飛んで行った。

「き、キャアっ」瑠璃は頭を押さえながら俯いてしまった。

 しかしこの時、ミラーガールはミラー・シールドを構えて唱えた。

「ミラー・バリアー!」

 すると鏡の盾から光の壁が二人を覆う様に現れ、手榴弾の爆発から身を護った。

「よ、良かった……」

 二人が傷一つ負う事無く済んで胸を撫で下ろす香。

「あ、アレが英雄の特殊能力って奴か……」

「は、初めて見たが、す、凄い……」

 ミラーガールの能力に驚愕する獠と海坊主。

「へぇ。あの子、胸は小さいけど能力はピカイチだね」

「胸の大きさで何もかも判別済んじゃねえよ」

 ルパンの言動に反論する次元。

 

 そして瑠璃は自分を護ってくれたミラーガールに向かって呟いた。

「あ、ありがとう。ミラーガール……」

 すると彼女は笑顔で瑠璃に返答した。

「別に良いわよ。何より、英雄が人を助けるのは当り前でしょ?」

 慈愛と思いやりに満ち溢れるミラーガールの微笑みに、瑠璃は思わずトキめいた。

 

 その様子を見た聖龍使いは一安心し、再度敵勢に斬り込んで行った。

 

 

 

 

[大乱闘! 洋館での大攻防]

 

 そして聖龍使い、ルパン一派に冴羽獠達は豹の爪(パンサークロー)と乱闘を繰り広げて行く内に遂には館外の庭内にまで戦闘区域を広げていた。

 

「はあぁぁぁ!」「てぇぇぇい!」

 聖龍使いに五エ門は共に男達に向かって果敢に斬りかかって行く。

「コイツ等!」「フン!」

 次元、海坊主は迫りくる豹の爪に対しマグナムとバズーカで応戦し合っていた。

「このヤローめ!」「もうっ、倒しても倒してもキリが無いわ」

「文句言っていても仕方が無いわ。一人でも多く倒して行かないと……」

 次から次に攻めてくる男達に疲れを見せながらもハンマーを振り下ろす香に対し愚痴を零してしまう不二子に話しかける野上。

 

 この時ルパンと獠は互いの背中を合わせながら、それぞれ迫る敵に対して銃を揮っていた。

「お、おい。シティーハンターのにいちゃん。こ、これちょっとヤバくねぇ?」

 ルパンはいくら倒して湧いてくる敵の数に怯み掛けていた。

「あ、ああ。俺の方も少しシンドクなってきた……」

 額に滲み出る汗からも獠が疲れを見せているのが分かり得た。

 

 そしてミラーガールは自分の後ろに瑠璃を居させ攻めてくる敵達に対してミラーソードで応戦していた。

 だが彼女は元々攻撃タイプの能力者では無いので、最早無我夢中で応戦していた。

「は、ハァ……」「だ、大丈夫? ミラーガール……」

 息を切らすミラーガールに瑠璃は心配そうに声をかける。

 すると彼女は瑠璃に返事しながら笑って見せた。

「だ、大丈夫よ。わ、私元々戦うのは苦手な方だけど、安心して。必ず貴女を護って見せるわ!」

 ミラーガールの言動に瑠璃は、彼女が強がっているだけだと自覚はしていたが同時に彼女が心から自分を護り抜きたいと思っているのを悟った。

 

 その時! 一人の男がライフルを構えミラーガールの頭に標準を合わせた。

「これで終わりだぜ……!」

 聖龍使いも敵を斬り倒して行く中、ミラーガールを狙っている男の存在に気付いた。

「! み、ミラーガール! 伏せろー―!」

 声を上げるものの、男はミラーガールに向けて引き金を引こうとした。

「あっ!」「た、大変!」

 香と野上も気付く者の周りを敵に囲まれて身動きができなかった。

「クッ、おい次元、お前のマグナムで何とかできねえか」

「す、済まねえ。弾切れだ……」

 海坊主は次元に問いかけるが、惜しくも次元のマグナムの残弾はゼロだった。

 

 誰もがミラーガールの危機に困惑している、まさにその時。

 

「ぐっ……!」

 一発の銃声が鳴り響き、ミラーガールを狙っていた男が銃弾に倒れた。

「えっ?」「い、今の銃声はいったい誰の?」

 不二子・野上が驚き、皆が驚愕していると目の前に一人の男が現れた。

「……成程な。今夜、美術館を襲ったのはルパンでは無くこ奴等か」

 その者の姿を見て、ルパンと野上が声を上げる。

「と、とっつぁん!」「ぜ、銭形さん!」

 目を向けると、其処には右手に硝煙を上げている拳銃を持っている銭形が立っていた。

「うふふ、銃声や爆音が鳴り響いているから何事かと思えば、まさかルパン等だったとは。しかもオマケにシティーハンターの二人組や、何故か野上君まで一緒に居るとは……」

 皆に微笑みながら平然と語る銭形警部。

 

「聖龍使いーー!」「ミラーガール、大丈夫ーー!?」

 更に銭形に続いて彼の後ろから聖龍隊の面々も駆けつけて来た。

「み、みんな!」「おおっ、同胞達よ!」

 仲間の姿を見て歓喜するミラーガールに聖龍使い。

「ま、まさか豹の爪が美術館を襲った真犯人だったのね!」

「なるほど。彼等なら残虐な行為なんて平気で出来るものね」

 キューティーハニーとミスティーハニーは揃って口を開く。

「さぁ! 豹の爪! アナタ達の横暴、この新撰組が止めてみせるわ!」

 刀の形状に変化させた龍の剣を構えながら言い放つイサミ。

 更に後ろには彼女同様新撰組の衣に身を纏うトシとソウシも豹の爪の連中を睨みつけながら身構えていた。

「ひ、ひぃ……恐そうな人達がいっぱい……」

「セーラームーン! 涙目になってちゃイケないわ!」

「大丈夫よ、いつもの様にみんなで立ち向かえばスグに終わるわ」

 男の集団に怯えるセーラームーンに怒鳴るマーズに、笑顔で宥めるマーキュリー。

「こ、怖い……で、でも、逃げちゃダメだ!」

「大丈夫よさくらちゃん。何か有ってもスグに私が治してあげるから」

 怯えながらも自分に言い聞かせるさくらに対し微笑みながら話すナースエンジェル。

「オオっ、もうおっ始めちゃっているらしいね。こりゃ久々に面白そうな乱闘になりそうだぜ」

「お、叔父さん……」

 口元を微笑ませながら楽しそうに話すウェルズに対し隣で呆れる甥のジュニアことジュピターキッド。

「よっしゃあぁ! 聖龍隊も加勢するぞぉ! 者共ヤッチまえ!!」

 そして皆に命令するメタルバードの発言を期に聖龍隊は一斉に眼前の豹の爪に向かって行った。

「わおっ♪こんなにヒーローが加勢してくれるなら鬼に金棒ね♪」

「俺から言わせれば香にハンマーだぜ」

「……ちょっと、それどういう意味」

 聖龍隊を見て興奮する香の発言に口をはさんで余計な事を言う獠を、香は睨みつけた。

 

 

 そして仲間達の眼前に立ち、聖龍使いは豹の爪の集団に正面を向けて言い放った。

「護るべき者は護り、滅ぼすべき者は死しても滅ぼす! 最強の英雄集団・聖龍隊とは、あっ、拙者等でござ~~るっ」

 お決まりの歌舞伎口調で言い放った聖龍使いは続けて仲間達に告げた。

「あっ皆の集~。この傍若無人(ぼうじゃくぶじん)共を、あっ、片付けてしまおうぞぉ!」

 

 聖龍使いの叫び声を皮切りに、聖龍隊はそれぞれ豹の爪に向かって行った。

 

 

 

 

 

[共闘する面々]

 

 聖龍隊も加わり、更に混戦する洋館の庭内。

 銃声・爆音・更に激しい剣戟による金属音が交わりながら場に響いていた。

「く、クソ。弾が無きゃ、どうしようもないなぁ……」

 次元は困り果てていた。マグナムの弾が所持していたのを全て切らしてしまっていたからだ。

「な、何とかファルコンの車に置いて来ちまったバッグを取りに行けねえもんかねぇ」

 次元が困惑している、その時。

「なぁ、君」

「ん? 何だ? 何だい、聖龍隊のお嬢ちゃん達かよ。オマケにあの夜会ったおチビちゃん達まで一緒かい」

 次元に声を掛けたのはセーラーウラヌスそして彼女の傍らにはネプチューンにプルート・サターンの外部系家族とサターンの親友であるちびムーンであった。

「何だいお嬢ちゃん達。こんな弾が飛び交う所に居るなんて似合わねえぜ」

 口元をニヤケさせながら次元が呟くと、ウラヌスが彼に言い寄った。

「お前、あの夜サターンに酷い言動をとったらしいな」

「ん? 何の事だい?」

「惚けるな。あの日、サターンの頭に銃を突き付け、更には暴言を吐いたそうだな」

 すると次元は平然とした態度で返した。

「何を言ってるんだ。俺は本当の事を言っただけだぜ。大体、またこんなに幼い子に戦わせるなんてどうかしてるぜ。天星の戦士が何だか知らねえが、子供は食って遊んで学んで寝る。それが本職だろう」

 顎をしゃくらせながら話す次元に睨みつけるウラヌス・ネプチューンそしてプルート。

 そんな彼女達に次元は続けて話した。

「今はそれは置いといて、俺は正直ヤバいんだよ。マグナムの弾が切れちまってブッ放そうともできないんだよ」

 この次元の発言にネプチューンは微笑しながら言った。

「ふ、貴方は銃が無ければ何もできないのね」

 すると次元は強めの口調で言い返した。

「ウッセぇ。お前達みたいに能力とか無いんだから仕方がねえだろう」

 その時、ちびムーンが次元を睨みながらも彼に告げた。

「ねぇ、顎髭(あごひげ)の小父さん」

「ん? 何だい、ピンクのロールヘアーのおチビちゃん」

「……もしかして、このリュックサック小父さんの?」

 ちびムーンは次元に緑色の小さなリュックサックを見せつけた。

「オオ! それは俺のリュックサック! お嬢ちゃん、これを何処で。ファルコンのジープに置きっ放しにしちまっていたんだが」

 訊かれたちびムーンは顔をムスッとさせながら答えた。

「サターンが見つけて持って来てくれたのよ。そう、貴方が言ったおチビちゃんがね」

「ん? 何だい、その事気にしていたのかい。分かったよ謝るよ。だからそのバッグ小父さんに渡してくれない」

 だがちびムーンは表情を変えず次元を睨みつけながら返事した。

「もっと誠意を込めて! それと私達はお嬢ちゃんでも無ければおチビちゃんでも有りません! 私はちびムーン、彼女はサターン! それにウラヌスにネプチューン、プルートって言うの!」

 強気な発言に次元は少し驚き、渋々彼女達に頭を下げて謝った。

「わ、分かったよ。……どうもスイマセンでした、ちびムーンにサターンのお嬢様方。どうかそのリュックサックを返してもらえないでしょうか。お願いします」

 多少棒読みな謝罪で有ったが、ちびムーンは引き攣らせていた顔を元に戻し笑顔で次元にリュックサックを差し出した。

「はいこれ。もうサターンはもちろん、みんなの事も悪く言わないでよ」

「あぁ、はい。解りました、どうもありがとう」

 ちびムーンにリュックサックを手渡されるのを見て、プルートが訊ねてみた。

「あ、あの……そのリュックにはいったい何が?」

 するとサターンがプルートに言った。

「私、最初見てみた時はホントに驚いたわ」『え?』

 サターンの言葉に驚くウラヌス・ネプチューン・プルート。

 そして次元は彼女達の目の前でリュックサックを開いてみると中には弾丸がギッシリ詰まっていた。

『!!』「あ、貴方! そ、それは!?」

 外部系の三人が驚き、プルートが訊ねてみると次元は平然と答えた。

「ん、見て分かるだろ。見たまんまのマグナムの弾だよ。いやぁ助かったよ。これさえあれば申し分ないぜ」

 そう云うと次元は空になったマグナムのシリンダーに弾を補充しすぐさま敵である豹の爪の輩に銃口を向けて射撃した。

「ギャっ!」「ぐゥッ」

 男達は一発の弾丸で倒れていった。

「ふふ、楽しくなって来やがったぜ」

 次元の笑みを見たネプチューンは少し顔を蒼褪めさせながら彼に言い寄った。

「あ、貴方……な、何て云うか、その……」

 と、その時。次元は食い入るように彼女の顔に近づいて顔を見つめた。

「……姉ちゃん、お前」「え? な、なに?」

 しかし食い入るようにネプチューンの顔を見る次元にウラヌスが間に入って物申した。

「おいお前! 何じろじろネプチューンの顔を見ているんだ」

「い、いや済まねえ。ちょっとネエちゃんの顔を前に見た事有る様なって……」

「ん?」すると次元はウラヌス達に言い放った。

 

「あ、ああ、そうだ。ねえちゃん、何だかお前さん、バイオリニストで有名な海王みちるにソックリだな! それで遂見入ちゃっていたんだよ」

『ウ゛ッ』5人は驚き怯んでしまった。

 何を隠そう天才バイオリニストで名を馳せている海王みちるは他の誰でも無いネプチューン本人で有ったからだ。

「お、お前は、海王みちるを、知っているのか?」

 驚き、目を点にしながら次元に訊ねるウラヌスに、次元は口元を微笑させて返答した。

「オウ、海王みちるって言えば有名じゃないか。俺様クラシックを始め、音楽とか良く聴くんだよ。まだ若いのに良い旋律奏でてくれるよねぇ。それにしてもネエちゃん、ホントに海王みちると瓜二つだぜ。まぁ、こんなところに居る訳無いけどな」

 そう呟くと、次元は豹の爪の連中に向かって銃撃を再開した。

 

 そして槇村香は再度、豹の爪の連中にハンマーを振り回して行った。

「おりゃーーッ……は、ハァハァ。さ、さすがに疲れたわ」

 勢いよく振り回していた香も、さすがに疲れが見えて来ていた。

「このアマ! 良くも散々ブッ叩いてくれやがったな!」

 男の一人が香に襲いかかって来た。

「危ない!」

 香に襲いかかろうとする男にソウシは弓の形状に変化させた龍の牙で光の矢を放ち男に直撃させた。

「ギャっ」

 男は香に触れる間もなく、その場に倒れた。

 そして驚いている香にソウシは歩み寄り、手を差し伸べた。

「大丈夫ですか、お姉さま」「あ、はい。ありがとう……! ん?」

 香がソウシの手を掴もうと伸ばしたその時、差しのべられた手から手品の如くパッと一輪のバラが現れた。

「今日あなたの様な美しい女性と出逢えた事に喜びを感じつつ、その思いを一輪のバラに込めて貴女に贈ります」

「は、はぁ……あ、ありがとう……」

 ソウシの言動に少し引きながらも礼を述べた香。

 

 そんな二人の眼前では、イサミが龍の剣で敵を斬り倒しトシは龍の目をサッカーボールほどの大きさに変化させて敵に向かって蹴り飛ばした。

「あっ、あの男の子の蹴ってる武器面白そう☆ねぇねぇ坊や、お姉さんにも蹴らせてよ」

「えっ、い、良いけど……」「うわぁ、ありがとボク」

 トシに頼んで龍の目を蹴らせてもらった香。

 彼女が蹴った龍の目は勢いよく豹の爪の男達に激突して行きまるでピンポールの様に立て続けに敵を倒して行った。

「うわぁ! 実に気持ち良いわぁ。最高ねこの道具」

「ね、ねえちゃんも凄いキックじゃないか! 俺憧れちまうぜ」

 香のキック力に目を輝かせて歓喜するトシ。

「むむ……」

 そしてそんなトシが楽しそうに香と会話しているのを恨めしそうに見るソウシ。

 

 一方、ルパンと獠は早見青児達と一緒に多勢の豹の爪と戦っていた。

「うふふふ、まさか可憐なキューティーハニーにはもう男が居たとは。まぁ、良い女には男が寄るのが当然だけどな」

「まったく。それにしても姉妹揃って美人とは。青児くん、君が羨ましいよ」

「ま、まあな。ど、どちらにしろ今はコイツ等を何とか片付けねえと」

 ルパンと獠にからかわれ、赤くなりながらも敵を対処していく青児。

 

 そしてハニー姉妹と不二子・野上は豹の爪に対してフルーレと拳銃・マシンガンで戦闘を繰り広げていた。

「だ、大丈夫貴女たち。相手はあの豹の爪だけど」

 ハニーが不二子や野上に訊ねると、二人は微笑みながら返した。

「ふふ、こんな連中、今まで戦ってきた連中に比べれば子供みたいな奴等よ」

「そうね。所詮、男なんて武器と言うオモチャを振り回す子供みたいな人種ですもの」

「! そ、そうなの……」

 二人の発言を聞き唖然となるミスティーハニー。

 

 海坊主は駆け付けたウェルズと共に迫りくる豹の爪にバズーカや機関銃をブッ放して行った。

「アンタ、中々やるじゃないか。銃器の取り扱いには詳しいのかい」

「ああ、一応聖龍隊では非能力者なんでね。それでも戦えるように火器の扱いは学んでいるんだよ」

「そうかい。それなら頼りになるな」

 

 更に銭形警部はメタルバードとジュピターキッド達と共戦してた。

「こいつ等!」

 銭形は迫る男達に向かっていき果敢にも男達を素手で投げ飛ばしたり男の両足を掴んではそのままジャイアントスイングで振り回し周りの男たちを巻き込みながら回転攻撃を繰り出して行った。

「あ、あの警部。能力者じゃないのにスゲエな」「う、うん。まったくだ」

 メタルバードは鋼の体で敵を斬りつけたり殴り倒したりしキッドは地面から植物を生やして敵の動きを封じたりしながら銭形の行動に驚愕していた。

 

 

「スリープ(眠)!」

 さくらはスリープのカードで一気に大勢の敵達の睡眠を誘う事に成功できていた。

「ぐっ……」「た、タキシード仮面!」

 膝を押さえながら腰を下ろすタキシード仮面にセーラームーンが駆け寄る。見てみると、彼の膝からは出血が確認できていた。

「た、タキシード仮面……!」

 セーラームーンが愕然としていると、タキシードは痛々しい声で話した。

「だ、大丈夫だ。弾が運悪く膝に当ってしまっただけだよ」

 そんな最中、二人の元にナースエンジェルが駆け寄る。

「だ、大丈夫ですか!? タキシード仮面」

「な、ナースエンジェル。い、いや、少しばかり怪我しただけだ。何、命には別状はないよ」

「でも、こんな傷放ってはおけません。今治しますね」

 そう云うとナースエンジェルはナースバトンから光線を放出してタキシードの怪我を完治させた。

「あ、ありがとうナースエンジェル」「ありがとう」

 タキシードとセーラームーンに礼を言われナースエンジェルは笑顔になった。

 

 一方、人質にされていた碧井瑠璃(あおいるり)を庇いながら応戦して行くミラーガール。

「あ、貴女」「ん? なに?」

 瑠璃はミラーガールに小声で訊ねた。

「あの、その……こ、怖くないの?」「え」

「怖くないの? こ、こんなに大勢の悪者に囲まれているのに……」

 するとミラーガールは瑠璃の台詞に対し、微笑みながら答えた。

「確かに怖いわ。だけど大切な人が、弱い人が苦しんでいるのを見ているだけの方がもっと怖いし苦しいわ。何より一緒に戦ってくれる仲間が側に居てくれるから、私も立ち向かえるのよ」

「!!」

 慈愛だけでなく勇気までも感じられるミラーガールの発言に、瑠璃は完全に心を射られた。

 

 

 

 

 

[女怪人、再び!]

 

 そんな乱闘の最中、屋敷の中から聖龍使いに攻撃され吹っ飛んだ女怪人ローザが飛び出して来た。

「お、お前達! 良くも良くも私の計画を邪魔してくれたな!!」

「え?」「あ、貴女は?」「い、イヤあァ! な、何なの、あのバラの女!?」

 飛び出て来たローザを見て驚くマーズとマーキュリーに対しヴィーナスは涙目になって困惑・動揺した。

 

「うむ! あの者、まだ息が有ったか」

「どうも、生半可な攻撃では死なぬようじゃのう」

 ローザを見て顔を険しくさせる五エ門と聖龍使い。

 

 そしてローザは自分を攻撃して来た聖龍使いを睨みつけ、彼に言った。

「聖龍使い……まずは貴様から、いや、貴様は絶対に殺してやる!」

 ローザは再度、聖龍使いに自分の体の一部である蔓を伸ばし、聖龍使いの腕を捕えた。

「なぬっ? ぐぐ……」

 ローザは力いっぱい蔓を引き、聖龍使いはそれを堪えていた。だが聖龍使いは唐突に力を入れて、逆にローザを引き寄せる。

「ぐおっ!」

 ローザは引っ張られ、そのまま聖龍使いに突っ込んで行った。

「どりゃあぁ!!」

 飛んで来たローザに聖龍使いは刀を握ったままの右手で顔面を殴り付ける。

「うぎゃっ」

 顔面を殴られたローザは屋敷の壁に直撃し、そのまま館内に突っ込んだ。

「逃がしはせん!」

 屋敷の中まで吹っ飛んだローザを聖龍使いは追撃する。

「お、オレ達も行くぞ!」「ああ!」

 メタルバードとキッドも聖龍使いに続く。

 それを見ていたルパン達や獠等は。

「ねぇルパン。聖龍使いがあの怪人の相手をしてくれている今がチャンスよ」

「ん? ああ、そうだな。今の内に……」

 不二子に言われルパンは怪しく微笑みながら二人で屋敷の中に入ろうとした。

「聖龍使いだけでも大丈夫だろうが、何だかルパン達も屋敷に入って行ったな。よし、俺様も行くか」

「り、獠。私も行くわっ」

 聖龍使いの事を気につつ、屋敷に入ったルパンの動向をが気になり香と共に屋敷に入った。

「むっ、ルパンが屋敷の中に。それにあのバラみたいな女も放っておけん。ワシも行くか!」

 最後に銭形警部も屋敷の中に入って行った。

 

 

 

 そして屋敷内。

 聖龍使いと女怪人ローザは激しい戦闘を繰り広げていた。

「喰らえッ」「ふむっ」

 ローザの両腕から放たれる大粒の種子の様な弾を聖龍使いは刀で弾きながら回避し続けていた。

「ていやぁ!」

 聖龍使いもローザに向かって斬り続けるが、ローザは寸での所で回避して行った。

 

 一方、屋敷内に入ったルパンと不二子はもぬけの殻になった屋敷内を探索し豹の爪に盗られた巨大サファイア希望の瞳を探していた。

「もう、何処に有るのよ。希望の瞳~」

 顔をムスッとさせながら不二子は延々とサファイアを探索していた。

「ふむふむ。あいつ等何処に隠しちゃったんだろうなぁ」

 ルパンも辺りを見回しながら宝石を探していたが、その時であった。

 突然ルパンの自製の携帯が鳴り響きルパンはジャケットの内ポケットに収納していた携帯を取り画面を見た。

「おっ、もう照合終わったのか。どれどれ…………え、ええぇ! ま、マジかよ?」

「ん? ルパン、なに驚いているのよ」

 携帯を見て驚いているルパンを見て不二子も携帯を覗き込む。

 すると不二子もルパン同様に驚いてしまった。

「え? る、ルパン。これはいったい……」「ああ、俺様も驚きだぜ」

 二人は何を見て驚いているのだろうか。

 

 そして再び聖龍使いとローザの激闘の場。

 両者、互いに引けを取らぬ闘いで有った。

「ぐむむ。私の攻撃を回避し続けるとは」「それはそなたも同じじゃろう」

 双方睨み合いながら、動きはしなかった。

 そんな状況の最中、メタルバードとキッドが助太刀に来た。

「聖龍使い大丈夫か!」「ローザ! 僕等も相手になるぞ!」

 睨み合う二人に向かって言い放つメタルバードとキッド。

「メタルバード! キッド!」

「何じゃお前達は? お前等も痛めつけてやるワ!!」

 すると突然メタルバードとキッドの足元から奇怪な植物が生え二人を攻撃して来た。

「うわオッ、コイツも植物系の能力者か! 見たまんまだぜ」

「な、何だろう。心の内でデジャヴと言うフレーズが響く……」

 キッドは以前、今の仲間である聖龍隊に攻撃してた頃を思い出していた。

 

 そしてルパン等の方はと言うと……。

「……オッ、不二子ちゃ~ん。有ったよ有った。宝石みっけ」

「えっ、どれどれ……うわお♡テレビで見るよりもスッゴい輝き☆」

 ルパンの見つけたトランクから出て来た『希望の瞳』を見て不二子は目を輝かせて御満悦で有った。

 だが二人が喜んでいるその時、後から声が聞こえた。

「お二人さん。悪いけどその宝石には手を出して貰わないでくれる?」

「ん?」「え!」

 二人が驚き振り返ると、其処には冴羽獠と槇村香が立っていた。

「あ! アナタ達は!」

「これはこれは、シティーハンターのにいちゃんそれに隣にはベッピンのねえちゃんまで居るじゃねえかよ」

 二人を見て驚く不二子に反し、ルパンは不敵に微笑みながら二人に話す。

「あら。ベッピンなんて嬉しい事言ってくれるじゃないの。それならルパンさん。悪いけどその宝石を此方に渡してくれないかしら。それは返す所に返さなきゃいけないんだから」

 香がルパンに告げると、彼女に向かって不二子が吐き捨てる。

「な、なに言うのよ! これは私達の獲物よ! 誰が渡すもんですか! ねぇルパン、こいつ等何とかしてよぉ♡」

 ルパンに色声で話す不二子を見て、獠は目の色を変えた。

「ウホっ、こりゃあ色っぽいお姉ちゃんだ事♡」「え? ……うふ」

 自分を見て目の色を変えた獠を見て、不二子は思い付いた。

「ねぇお兄さん♡私どうしてもこの宝石が欲しいのよ♡お願い、見逃してくれないかな♡」

 色目使いで獠を見つめ、更には色っぽい声で獠を誘惑しようとする不二子。

 だがそれを見た香がすかさず不二子に言い寄る。

「こ、こらアンタ! 何色仕掛けで事を済ませようとしている訳?! その宝石は瑠璃ちゃんにとっては大切な物なのよ」

「アラ貴女。私に妬いてるの? そんな貧相な体じゃ男を誘惑するのもできやしないわよね」

「!! い、言ってくれるわね!」

 不二子の発言に逆上する香を、獠は宥めながらも不二子に告げる。

「ま、まぁまぁ香。そう怒るなって。まっ、お姉さまには悪いですけど、その宝石は俺が護るって既に依頼されちゃっている以上はキッチリ返してもらえないかな」

「……もし嫌だって言ったら、どうするつもり?」

 上目使いで獠に訊ねる不二子に、彼は告げた。

「そん時は仕方が無いけど、君の隣に居るナイトと一戦するしかないかもしれないねっ」

 そう言いながら獠はバイソンの銃口をルパンに向けて構えた。

「……おや。まさかこんな事になっちまうとはなぁ。アンタとは良い酒が飲めてたって云うのに」

 ルパンも懐からワルサーを取り出し、銃口を獠に向けた。

「俺だって望んじゃいなかったよ。できれば話し合いで宝石の強奪を止めて欲しかったさ。アンタとは話が合うし、充分に理解し合えると思ったからね」

「ふふふ。確かに俺様もアンタと過ごした時間は悪くなかったぜ。女の話も酒の善し悪しもウマが合っていたからね。だがよ、にいちゃん。泥棒が一度狙うって決めた獲物を簡単に諦める訳も無いんだぜ」

「……それは残念だ」

 ルパンと獠は互いに銃を向け合いながら、不敵な笑みを浮かべて会話した。

 そして。

 

 それぞれの銃が火を噴き、不二子と香が目を丸くして驚いた。

 二人が放った銃弾が直撃したのは。ルパンと獠、双方の背後から襲おうとしていた豹の爪の一員だった。

 二人は銃を身構えながら口を開いた。

「まぁ、今はこの場を切り抜けてから決着を付けようぜ」

「ああ、その様だな」

 二人は険しい顔付きで話すと、ルパンは不二子・獠は香の手を引いて走り出した。

「あっ、ちょっとルパン!」「り、獠! 宝石の方はどうするのよ!」

 香が訊ねると、獠は笑顔で香にい返した。

「まっ、それは此処を切り抜けてから考えようぜ香。正直この状況じゃルパンと話し合うのも無理だしな」

 既に屋敷の内部には豹の爪の団員が其処等中に居た。

 

 

 

 

 

[屋根の上の決闘]

 

 一方、屋敷前の庭内では。

 聖龍隊を始め、次元や五エ門・そして海坊主と野上らの協力も有って庭内の敵は片付け終わっていた。

「ふぅ~、やっと片付いたな」「ああ、数だけは多い連中だったな」

 戦い終わり、一息入れるウエルズと海坊主。

「あ、アナタ達。怪我は無い?」「え、えぇ。何とか……」

 野上は疲労しているハニー姉妹に声をかけた。

「おいお姉ちゃん達。アンタ等大丈夫かい? かなり疲れちまっているみたいだが」

「だ、大丈夫よ。もう……」

 次元は地面に座り込むセーラー戦士達に向かって告げるが問い掛けに対しマーズは次元を睨みながら言い返した。

「たく、気の強ぇねえちゃんだな。ホラ、摑(つか)まりな」

 次元は座り込むマーズに手を差し伸べた。

「……ん」

 マーズはしばし躊躇ったが、次元を睨みながら彼の手をとり立ち上がった。

 

 

 五エ門は剣戟をしていた花丘イサミに声をかけた。

「お主、女子ながら腕が立つな。将来は立派な武人になれようぞ」

「え。ほ、本当ですか?」

 思わずイサミは五エ門に訊き返す。

「うむ。更に腕を磨けば立派な大和撫子になれるかもしれん」

「ほ、ホントっ。やったぁ」

 帰国子女にしながら、将来は美形な大和撫子を夢見るイサミには嬉しい言葉で有った。

 だがトシはこれを聞き、顔を変えて言った。

「へっ、イサミが大和撫子? イサミが成れるんだったら、俺はアメリカの大統領になれちまうよ」

「あ゛ぁっ、なんか言ったかトシ!」

 目の色と顔付きを変えてイサミはトシを睨んだ。

 しかしそれを見た五エ門が注意する。

「ほれ、本当に大和撫子になりたければ、まずはその性格を治すのじゃ。何事も辛抱でござる」

「あ! ……は、はい」

 注意され思わず無言になるイサミだった。

 

 そして聖龍使いはメタルバートとジュピターキッド等と協力して怪人ローザを屋敷の屋根上まで追い詰めていた。

「観念せいローザ! 主の手下はほとんど倒された。大人しく観念せんか!!」

 しかしローザは嘲笑うかの如く、聖龍使いに吐き捨てた。

「ハハッ、簡単に諦めてしまっては豹の爪の一員とは云えぬ。お前達こそこの場で消し去ってくれようぞ!」

 するとローザは両腕を突き出して大粒の種子を弾丸の様に連射して来た。

「散らばれ!」

 聖龍使いは両脇に居た二人に発すると、自らも攻撃を回避した。

 

 その様子を屋敷下で眺めていたミラーガールは居ても経っても居られなかった。

「ど、どうしよう。何とかしてあげたいんだけど……ま、まずは屋根の上まで行かなくちゃいけないし……」

 と、その時。ミラーガールは有る事を思い付いた。

「ん~~……あ! そうだ! 上手くいきます様に……」

 ミラーガールは徐にリストバンド状態になっているコンパクトを開いた。

「み、ミラーガール。貴女、何する積りなの?」

 ミラーガールを見て、瑠璃が訊ねる。

 するとミラーガールはコンパクトの鏡を見ながら呪文を唱え始めた。

「テクマクマヤコン、背中に羽が生えます様に」

 彼女が呪文を云うと背中から白い羽が生えミラーガールはそのまま屋根上まで飛んで行った。

 

「ええぇ!」

 隣で見ていた瑠璃は驚いてしまった。

「ってウッソ!? か、彼女、背中に羽も生やす事できるのか!?」

「ま、マジかよ……!」

 目撃したデューイと小狼(しゃおらん)も驚愕した。

 

「ま、待ちなさいローザ」「あぁん? ってウワッ」

 ミラーガールはそのままローザ目掛けて突っ込んで行ってしまった。

「わっ、わわわわ……」

 慌てるミラーガールであったが時すでに遅くローザと激突してしまった。

「うぎゃっ」「いてっ」

 ローザは吹っ飛び、ミラーガールも頭を押さえながら蹲ってしまう。

「お、お前なぁ! 何してんだよ全く」

 彼女に問いながら聖龍使いが駆け寄った。

「ホント、何してんだが」「ああ、せっかく凄い能力見れたと思ったら」

 呆れてしまうメタルバートにキッド。

 だが彼女と激突し、吹っ飛んだローザは怒っていた。

「こ、このガキが!」

 ローザは腕の蔓を伸ばして、ミラーガールを屋根から突き落とした。

「あ! きゃあぁ!」「ミラーガール!」

 聖龍使いは咄嗟に自ら屋根から飛び降り、空中で彼女をキャッチした。

 そして二人はそのまま地面まで落下して行った。

「危ないっ」皆がそう思った、その時。

「どりゃあぁ! ふんっ」

 聖龍使いはミラーガールを両腕で抱え上げながら地面に両足を踏ん張る様に着地した。

「い、いたた……」「だ、大丈夫? 聖龍使い……」

 聖龍使いはミラーガールを下ろすと、腰を押さえながらスグ側の木に手を当てた。

 

 そして屋根の上では、メタルバードが飛び上がり、ローザの真上から急降下し始めていた。

「こんにゃろーー!」「ウッ? ぐはぁっ」

 激突したローザは、そのまま屋敷の中に突っ込み落下して行った。

 だが彼女は腕の蔓を伸ばし、屋根の上に再び這い上がった。

「こ、こしゃくな……!」

 口元から血を出しながらローザはメタルバードを睨みつけた。

「な、何だよ。まだ立てるのかよアイツ」「その様だね」

 メタルバードにキッドは身構えたが、その時屋根の飛び乗って来た人物が居た。

「待て待て! これ以上貴様の好き勝手にはさせんぞ!」

「ん? 何じゃお前は?」

 現れたのは銭形警部。

「コイツめっ!」

 銭形はそのままローザに飛びつき、彼女を屋根の上から投げ飛ばした。

「うわおおぉぉ!」

 ローザは地面に激突した。

「よしっ! ああ、すいませんがワシを直接下まで降ろしてくれませんかね? 早くあの女をトッ捕まえなければ」

「あ……あ、はい。了解ッス」

 銭形に言われ、メタルバードは彼の両脇を持ち上げて地面に降りた。

 

 そんな最中、屋敷からルパンと不二子・獠と香が屋敷の中に居た敵を倒しながら出て来た。

「おお、おお。結構片付いているじゃねえか」

「へえぇ、聖龍隊も案外ヤルもんだねぇ」

 片が付いた場を見てルパンと獠が発言する。

「へぇ~、彼女達もヤルのね。タダの子供じゃないわね」

「そりゃあ、この町でも有名な英雄集団なのよ。当ったり前でしょ」

 ヒロイン達を見て目を丸くして驚く不二子に香が言う。

 

 かくして、洋館内及び庭内の敵は全て倒しきった面々だった。

 

 

 

 

 

[明かされた素顔]

 

 銭形に投げ飛ばされたローザはその場に気絶し皆が集まる中、聖龍使いもミラーガールに付き添われながら歩み寄って来た。

「み、皆の者。大事は無いか……」

 腰に手を当てながら聖龍使いが皆に言う。

「だ、大丈夫ですか? 聖龍使いさん」

「ミラーガールを庇うためとは言え、無茶をしますわ」

 落下するミラーガールを持ち上げながら落下した聖龍使いを心配しつつ声をかける香に野上。

 

 更にあの碧井瑠璃(あおいるり)も二人に声をかけた。

「だ、大丈夫ですかっ? 聖龍使いさんにミラーガール!」

「う、うむ。腰は痛めてしまったが大丈夫でござるよ瑠璃殿」

「私も大丈夫。聖龍使いが庇ってくれたから怪我は無かったし」

 そんな二人に小狼(しゃおらん)とデューイが声をかけて来た。

「そ、それよりもミラーガール。あ、貴女、さっきのあの翼……」

「き、君はあんな芸当もできたのかい?」

 するとミラーガールは驚く二人に答えた。

「あ、ああ。前にね女王様に言われたんだけど、私が願えば結構色んな技も使えるし色んな姿にもなれるから願いたい時に願いなさいって」

『そ、そう……』

 平然と答えるミラーガールに唖然となる小狼にデューイ。

 

 そんな皆を目の当りにしながら、ルパンが言った。

「まっ、宝石を盗んだ連中は皆倒せた訳だし、これで結果オーーライだな」

 だがそんな呑気な態度のルパンに銭形が言い放った。

「おい待てルパン! あの希望の宝石はどうしたんだ? どうせ屋敷に入ってから見つけ出して懐にでも仕舞い込んでいるんだろうがっっ」

「ぎ、ギクッ。や、ヤダなぁとっつぁん。そんな訳無いだろう……」

「いいや、確かにこのルパン。宝石をチョロまかして懐に仕舞い込んでいますぜ警部さん」

 獠が銭形に事実を言った。

「お、おいシティーハンターのアンちゃん。それを言うなよ……」

 その時、瑠璃がルパンに近寄って慌てながら話した。

「る、ルパンさん! お願いです、その宝石は本当に大切な物なんです。お願いします、返して下さい」

 瑠璃に続いて聖龍使いもルパンに告げた。

「その通りじゃルパン。大人しく手中に有る宝石をお返し願えぬか。さすれば拙者等、主等には何もせぬうえ、渡してくださらぬかのぅ」

 古風な口調でルパンに聖龍使いが話していると、ルパンは皆の前で驚愕の内容を話した。

 

「うふふふ。いやぁ、相変わらず五エ門に負けず劣らぬ話し方ですなぁ。良くもまぁ其処まで作り声に口調に出来るもんだよ、小田原修司さん」

「!」『え゛!』『えぇ!?』

 ルパンの発言に聖龍使い、次元・五エ門に獠と香更には海坊主と野上に銭形そして聖龍隊や瑠璃の面々が一同に驚いた。

 

 告げられた聖龍使いは片言の棒読みでルパンに言い返した。

「な、何を、言うて、お、おるの、か、そ、それがし、り、理解、出来、ぬ……」

「はっはぁ。スンげぇ片言になっちゃってるねぇ」

 ルパンは笑いながらも懐から自製の携帯を取り出してみせた。

「でも既に分かっちゃっているんだよ♪最初に美術館に入った時、携帯にアンタの声を録音したんだけどよ声紋照合じゃ10代の若い男の声って結果が出たし何より、さっき改めてアンタの声を録音して照合してみたらよこの町で結構メディアに顔出ししている小田原修司と声紋が一致しちまったって訳だよ」

 そう言いながらルパンは皆に携帯の画面を見せつけてみると画面には聖龍使いと小田原修司の声紋が一致していると表示されていた。

「はっは、どんなに作り声にしていても声紋までは簡単には変えられないんだぜ市長さん♪」

 高笑いしながら延々と語るルパン。

 そしてこれを聞いた面々は驚きの色を隠せなかった。

「ま、まさか……市長の小田原修司自身が聖龍使いなのかルパン?」

「お、おいルパン。それはマジなのかよ」「ま、誠でござるかルパン」

 銭形・次元・五エ門が唖然としながらもルパンに問う。

「う、ウソでしょ? あの市長さんが、せ、聖龍使い?」

「おいおい、まだ子供だろ小田原修司は? まぁ、此処に居る連中もほとんどが子供だが」

「あの小田原修司が聖龍使いですって?」

「……」

 突然のルパンの発言に驚愕する香に海坊主に野上、そして無言になる獠。

 聖龍使いは冷汗を大量に掻き始めていた。

 

 すると瑠璃が震える口調で話し始めた。

「う、ウソでしょ? し、修司が、聖龍使い……ね、ねぇ、聖龍使い、ルパンの言っている事は本当なの?」

「…………」

「せ、聖龍使い。貴方は修司なの? そうなの?」

 瑠璃に言い寄られると、聖龍使いは観念したのか徐に鬼の面を外して素顔を皆に見せた。

「! し、修司!」

 瑠璃を始め、聖龍使いの素顔を初めて見た者は皆仰天した。

「る、瑠璃……済まねえ。今まで、その、黙ってて……」

 申し訳無さそうに瑠璃に言う聖龍使いこと小田原修司。

 瑠璃は驚きながらも修司に訊ねた。

「な、何故、貴方が、修司が聖龍使いに……」

「は、話せば長くなるが……そ、その……」

 修司が話すのを躊躇っていると、香が皆に聞こえる様に言い放った。

「し、修司くん! 話してちょうだいよ。私達はともかく、瑠璃ちゃんは貴方の事、とっても」

「止めろ香! その先は個人的な話なんだ。何よりお前が言わなくとも、天下のアニメタウン市長小田原修司様ならちゃんと正直に話してくれるさ、なっ、市長さんよ」

 獠に言われ、修司は戸惑いながらも瑠璃や皆に話そうとした。

「お、俺はな瑠璃。そ、その……」

 しかし修司はいつもの口下手な口調に戻ってしまって上手く話す事ができなくなっていた。

 

 そんな彼を見兼ねて、ミラーガールが間に入り代わりに話し出した。

「き、聞いてください。彼は緊張すると口下手になってしまって……か、彼は、小田原修司は本心からこの町を、町の事が大好きなんです! そ、それで彼は自分自身も英雄達の様に弱い存在を護りたい人間になりたいって思って聖龍使いになっているんです。彼は本気で町のみんなを護りたいって思ってるの! それだけは分かってください!!」

 ミラーガールの熱弁を聞き、瑠璃は穏やかな表情で修司に言った。

「……そう、そうだったの。修司がまさか聖龍使いだったなんて」

「……」

 黙り込んでしまう修司。

「修司が……修司がまさか町の為人の為に此処まで頑張ってくれてたなんて、私、驚いちゃった」

 

 そんな二人の様子を見ていたルパンに、獠はルパンの耳元で囁いた。

「おいルパン。その宝石ーは瑠璃ちゃんにとっては意中の人からの贈り物みたいなものなんだよ。まさか、女の子には優しくするがモットーのお前さんがそんな意味深なブツを盗んじゃおうって思っちゃっている訳かい?」

「…………」

 獠に言われ思わず考え込んでしまうルパン。

 

 

 そんな会話を皆がしている、まさにその時。

「ぐ……ま、まさか小田原修司が聖龍使いで有ったとは……」

『え』

 皆が驚き目を向けてみると、あのローザが立ちあがっていた。

「ろ、ローザ!」

 キューティーハニーがローザを見て声を上げると、彼女は不敵な微笑みで言い放った。

「お、お前等。タダでは済まさぬぞ。妾(わらわ)を此処まで愚弄するとは。嬲殺してくれようぞ!」

「黙らんかい!!」「なぬっ? うわっ」

 ローザが言い放っていると銭形が彼女に飛び掛かり今度は一本背負いで彼女を投げ飛ばした。

「ぜ、銭形警部!」「か、怪人相手になんて無茶を」

 銭形の行動を見てマーキュリーとプルートが発した。

 そして銭形は倒れ込むローザに向かって大声で言い放った。

「黙れ悪人! 例え相手が大富豪で有っても、能力者で有ろうと、はたまた怪人であっても犯罪者ならば容赦なくトッ捕まえる! それが警察官の役目であり信念なんじゃ! 怪人ローザ、大人しく御用となれぃ!!」

 非能力者でありながら怪人を平然と投げ飛ばす銭形を目にし、一同は愕然とした。

「こ、こ奴め……ッ」

 ローザは自分を投げ飛ばした銭形を睨みつけながら立ち上がった。

 とその時。次元がズボンのポケットから弾丸を3つ取り出した。

「ほいルパン」

 取り出した弾丸を次元はルパンに手渡した。

「オオっ次元。あの弾だな、これならあの女を倒せるかもしんねえな」

 ルパンは微笑しながらワルサーの弾奏に手渡された弾を装填した。

「ほい、お前さんも使いな。俺と同じマグナムなら使える筈だぜ」

 そしてもう一つの弾を次元は獠に差し出した。

「こ、この弾は……」戸惑う獠に次元は言った。

「なに、俺ら特製の弾丸だよ。これならあのバラ女も参る筈だぜ」

「……ニッ、そうか」

 次元に言われ、獠は渡された弾を装填した。そして同じく弾を装填した次元共々、ローザに銃口を向けた。

「な、何じゃお前達? そんな道具で妾を倒せると思うのかえ?」

 威風堂々と立ち尽くし不敵に笑みを浮かべるローザに三人は言った。

「へっ、お前さんの様な棘棘しい女はゴメンなんでね」

「まっ、俺様は棘のある女も魅力的だと思うけど、棘どころか毒のある女はNGなんだよねっ」

「俺様も同感。毒のある植物は早いうちに駆除しておかないとね」

 次元・ルパン・獠はそう云うと、拳銃の引き金を引いた。

 

 3つの弾丸は一直線にローザに向かい、そして直撃した。

「ぐっ、ぐぎゃあああああああぁぁ!!」

 ローザは天にも轟く断末魔を上げながら炎上した!

「って炎上しやがったーーッ!!」

『えーーーーッ!!』

 燃え盛るローザを見てメタルバードもその他の面々も目を丸くして仰天した。

「お、おいアンタ等! こ、この弾いったい何?」

 撃ち込んだ獠が驚きながらルパンと次元に訊いた。すると二人は笑顔で答えた。

「ああ、これは俺等自製の水銀弾(すいぎんだん)だよ。ホラ、巨象も一発で撃ち殺せちまうってアレだよ」

「フヒヒ、まぁ水銀と火薬の量の調節に手古摺っちまったけど一応は撃った瞬間に爆発しなかっただけマシだろ?」

 ルパンの発言に獠はギョッとした。

「おっ、おい。まさか下手したら撃った瞬間に銃が暴発していたなんて……」

「ああ、もしかしたら、そうなっていたかもしんねえな」

 

 顔を蒼褪める獠に次元は平然と言い退けた。

 

 

 

 

[盗られない心]

 

 と、その時。燃え盛るローザが放った。

「お、己! お前等、こうなったらまとめて消しさてくれるわっ」

 するとローザは右手にスイッチの様な物を持ち、そのスイッチを押したのだった。

「ね、ねぇ。ま、まさか……」

 ナースエンジェル・さくらが蒼褪めてきた。

 そして聖龍使いこと小田原修司が叫んだ。

「や、ヤベえ! みんな離れろ! 屋敷が爆発すっぞーーっ!!」

「ヒぃッ」

 修司の叫び声と共に、皆全速力で走り出した。

「きゃ、きゃあぁ!」「何してんだ香、早く!」

 獠は驚きの余り、咄嗟に香を抱きかかえながら走った。

 

 そして皆が何とか屋敷の庭内から抜け出した、まさにその時。屋敷が大爆発、跡形も無く吹っ飛んだ。

「ヒィィィッ」「い、痛いッ、痛いわよ」「あああぁっっ」

 修司はいつの間にかミラーガールと瑠璃の手を掴み、そのまま駆けだしてしまったのでミラーガールの方は強い握力で痛がってしまった。

 

 最後に一同、跡形も無く消滅した屋敷跡を見て唖然としてしまってた。

「ま、まさか屋敷に爆弾仕掛けていたなんてね」

「あ、ああ。下手したらオレたち屋敷ごと吹っ飛んでいたな」

 呆然となってしまうキッドにメタルバード。

 

 そしてこの時、聖龍使いこと小田原修司は瑠璃に訊ねていた。

「な、なぁ瑠璃」「え。な、なに? 修司……」

「そ、その……な、何でお前は奴等の車にこっそり乗り込んでいたんだ? それが分からないんだが」

 修司の質問に、瑠璃は俯き考えだし、そして答えた。

「……わ、私。どうしても宝石を取り返したくて……何とか取り戻せないかなって、そう思って、それで遂、彼等の車に乗り込んじゃって……そ、それで……」

「……お前」

「わ、私っ。どうしても盗られたく無かったの! し、修司が私の、い、いいえ、パパの為に買ってくれたあの宝石を盗られたら……何だか、私の、修司への気持ちまで、盗られる気がしちゃって……」

 瑠璃の重苦しい発言に、修司は無表情で平然と聞き入っていた。

 

「……フッ、ヤレヤレだぜ」

 これを聞いていたルパンは徐に懐から希望の瞳を取り出し瑠璃に差し出した。

「え? る、ルパンさん、これは……」

 瑠璃が驚いていると、ルパンは調子よく答えた。

「なぁに、一流の泥棒は女心も盗んじまうが別の男に盗まれちまっている女心までは盗れねえだけさ」

 そう言ってルパンは瑠璃に宝石を手渡した。

「ホレお嬢さん。君の恋心、しっかり渡したぜ」「あ……」

 思わず呆然となる瑠璃、と其処へ不二子がルパンに言い寄って来た。

「ちょっとルパン! 何宝石返しちゃっている訳!? 私へのプレゼントはどーーしてくれんのよ!!」

「ふ、不二子ちゃ~ん、そう怒るなって……ま、また別の宝石盗んであげるからよぉ」

 言い寄る不二子に怯みながらも彼女を宥めるルパンで有った。

 

 ルパンと不二子が言い争っている、その時。

 香が修司の所に歩み寄り、彼に耳元で訊ねた。

「ところで修司くん。貴方はどう思っているの?」

「な、何を?」

「惚けないでよ。瑠璃ちゃんへの答えよ。彼女の事どう思っている訳? ちゃんと答えてあげてよ」

「……」

 だがその時、修司に囁き話していた香に瑠璃が言った。

「あっ、良いんです香さん。もう私、修司の気持ち、分かっていますから……」

「へっ?」「ん?」

 瑠璃は気欝な表情で話した。

「し、修司には、もう別の人が居ますし」「え?」「!」

 驚いてしまう香に修司。

 更に訳を分かっている聖龍隊の面々の中には顔をニヤケさせてしまう者までも居た。

「べ、別の人が居るって、な、なに? 修司君にはもう彼女が居た訳? ねぇ、どうなの? ねぇ修司君」

 修司に訊ねる香だが、修司は目を丸くして驚き何も話せなかった。

 

 そんな二人に瑠璃は告げた。

「あ、ああ香さん。別にそんなに言い寄らなくても良いんです。私自身、修司には献身的に付き添っている彼女には敵わないなって、薄々解っているんです」

「………………」

 瑠璃の言葉に口を紡ぐ修司。

「どんな子なの? その女の子って……」

 香が訊くと瑠璃は答えた。

「はい。修司がこの町に来る以前から周りからとても好かれている子で凄く友達思いで明るい女の子なんです。私みたいな地味な子とは本当に正反対で……」

 側で聞いていたミラーガールは人知れず頬を赤くさせていた。

「何よりその子、修司が学校に来た日に彼に助けられて以来もうずっと修司一途で、周りの声にも諸共せず修司に付きっ切りで」

「……そっかーー♪修司にはそんな女の子が居るんだねぇ♪」

 完全に内情を知っているメタルバードは小馬鹿にしたような口調で修司に言う。

 周りの聖龍隊の男共の同じようなニヤケタ面で修司を見つめていた。

 

 だが修司も顔を赤くさせながら男達を睨みつけた。

 

 

 

 そんな会話の中、瑠璃は修司に訊ねた。

「ね、ねぇ修司」「な、何だ?」

「……やっぱりさ、修司が聖龍使いだったなんて学校のみんなに言わない方が良いんだよね」

「あ、ああ。そうだな……」

 思い詰めた表情で訊ねる瑠璃に修司は答えたのだが、彼女は暗い面立ちで言い返した。

「なんか、辛いな……」「え?」

「だ、だってさ。修司、学校では暗くて笑う事も無いから何考えているか解らないって云う理由だけで皆から怖がられたり、不気味に思われたりして……本当は凄く他人思いで、町の事を凄く思っているからこそ聖龍使いになったり聖龍隊を結成したって事を、みんなにも解って欲しいなって……修司は本当は、誰よりも町の為に頑張っている人間だって、みんなに教えたいの」

「………………」

 瑠璃の悲痛な発言を聞き、暗鬱になりながらも内心感極まる修司であった。

 

「……な、なぁ。修司さんって普段、学校ではどんな生活送っているんだ?」

「あ、ああ。余り笑わないのは俺たちも分かるけど、不気味で怖がられているって……」

「どんな過し方しているんだ? 修司さんは自分の学校では……」

 瑠璃の話を聞き、ヒソヒソ話で会話をするトシに小狼(しゃおらん)に星夜。

 

 修司は思い詰める瑠璃に優しく話し出した。

「……瑠璃」「え」

「別に良いんだ。俺が裏で何をしているかなんて、みんなに知られてなくてもよ。俺の事を周りがどう思うと、俺は俺さ。気にはしねえよ」

「で、でも……」

 困惑する瑠璃に、修司は平然と清々しく言い放った。

「お前はもちろん、アッコや此処に居る仲間たちが俺の事を理解してくれているなら、俺はそれでもう充分だ。大勢に理解されるよりたった一人でも自分を理解してくれる存在が居てくれれば、俺はそれで満足なんだ」

「!」

 穏やかな笑みを浮かべて平然と言う修司の言葉に、瑠璃は衝撃を受けた。

 

 そんな修司の意味深な発言を聞いていた矢先、朝日が昇って来た。

「おっ、太陽が昇って来やがったぜ」

 ウェルズが朝日に気付いて、光り輝く朝日に目を向けた。

 彼に続いて周りの者達も新しい一日を告げる輝く朝日に目をやった。

「修司……」「ん? なんだ?」

 皆が清々しい気持ちでいる中、瑠璃が修司に話しかけた。

 彼女は穏やかながらも満面の笑みで修司に言った。

「修司……ありがとう」「……ああ」

 彼女の言葉に、修司も笑顔で返した。

 

 

 

 

 

 だがその時。ルパン達は誰にも気づかれない様に立ち去ろうとするのを銭形は感付いた。

「オイこらっルパン! お前達な~にコソコソ立ち去ろうとしてるんじゃ! ワシが逃がすと思うか! 待つんじゃ~!!」

「ウオッ、ヤベえ、とっつぁんに感づかれた! お前等急げ~っ」

 ルパンの一言を切っ掛けに一味は一斉に走り出した。

 

「そんじゃ色々とあんがとな、セーラー戦士のお嬢ちゃん達。まぁこれからは言葉遣いだけには気を付けるけどよ君等もまだ若えんだし無茶は程々にしろよな」

「じ、次元大介……」

 去り際にセーラー戦士達に向かって発言する次元大介。

 

「イサミ殿。剣の道は奥が深い。常時鍛錬に身を入れるのでござるよ。それとハニー姉妹よ、その様な淫らな身形、もう少し露出を控えるのが宜しいと思うぞ」

「余計なお世話!」「まったくよ」

「あ、ありがとうございます! 五エ門さん」

 五エ門の発言に言葉を返すキューティーハニーにミスティーハニー、そしてイサミ。

 

「ふふふ、それじゃサヨウナラ♡シティーハンターのお守さん。今度会う時まではもう少しバストアップしておいた方が宜しくってよ♡」

「ウルサイわッ、それにアンタとは二度と会いたくも無いわよッ!」

 香に吐き捨てながら去る不二子に怒鳴る香。

 

「そんじゃシティーハンターのにいちゃん。また何処かで会ったら、またカワイコちゃんの話で盛り上がろうぜ。それと修司の若旦那、もう少し女の子には素直に接しようぜ、そんじゃ」

「ああ! また飲み明かそうぜ、泥棒の旦那!」

「……余計な御世話だ」

 高笑いしながら獠と修司に告げるルパンに笑顔で別れを言う獠と顔をムスッとさせる修司であった。

 

「そ、それではワシはルパンを追う! の、野上君、悪いが後の処理は任せたぞ! こら待てルパ~ン!」

「分かりましたわ銭形警部。それでは御気を付けて!」

 銭形も野上に言い残すと、そのまま朝日に向かって逃げるルパン達を追って行った。

 

 

 そんな清々しい別れをし、爽快な気分で皆が居た時、メタルバードが気分をブチ壊す発言をした。

「……そう言えば、結局俺等、夜通し戦い続けちまったな」

『……ア゛』

 

 

 

 

[その後]

 

 洋館での激闘から数日後。

 新宿にある喫茶店キャッツアイには一人の少年がやって来ていた。

 

「……それで、結局あの宝石はどうなったんだい?」

 マスターの海坊主が少年に訊ねると、少年は口元を微笑させて返答した。

「なに。あの後すぐオークションに出したからな、手元には無い。瑠璃の親父の美術館も赤字から黒字になったし、これ以上持っていても意味はないからな」

「するってぇと最初っから希望の瞳を再度売る気だったのかい? 修司さんよ」

「ああ。俺は宝石には興味無いからな」

 そう云うと修司は目の前のコーヒーカップを手に取り、一口飲んだ。

「ところで、その後瑠璃ちゃんはどうしてるんだい?」

「ああ、瑠璃か。何だかあの日の出来事が切っ掛けがどうかは分からんが今では学校では良く笑う様になってよ、今じゃ一昔前の大人しく過している瑠璃とは正反対の明るい女になってるよ」

「そうかい。やはり女の子は明るく笑顔を周りに見せ付けるのが一番だよな」

 

 海坊主と修司が話している、その時。

 店の扉を開けて入店して来た二人が修司を見て声を発する。

「おっ、修司君じゃないか」「あら、君も海坊主さんところに飲みに来てたのね」

「んっ、冴羽獠に槇村香じゃないか。久々だな」

 二人は修司の横に座り、彼と話をした。

「聞いたぜ。あの宝石は別の人に譲ったんだってな」

「正確にはオークションに出しただけだ」

「でも、まさか聖龍使いが市長の修司君だったなんて驚きだわ」

「フン」

 二人に言われ、修司は更にコーヒーを口に含んだ。

「ところで瑠璃ちゃんとは、あの後どうしている?」

「別に。瑠璃は前と違って明るくなっただけで、俺は相変わらずだよ」

 香に訊ねられ、修司は無表情で答えた。

 

 しかし突然、海坊主が口を開いた。

「……ところで、小田原修司さんよ」

「ん? 何だい、海坊主さん」

 険しい顔つきで修司に訊ねる海坊主は彼に言い寄った。

「お前さん……俺の淹れたコーヒーが気にいらねえのかい」

「ん? なんでそうなるの?」

「だってな……シュガースティック5本にコーヒーフレッシュ5個も入れられたんじゃ、そう思うだろうがッ!」

「済まない、俺は元々甘党なんだよ」

 海坊主に言われた修司は表情を変えずに甘くしたコーヒーを再度口にした。

 

 その時、獠が外の向こう側の道端にいた人達に気付いた。

「おっ。香、修司君、アレ見てみろよ」

「ん? なに獠……あっ、彼等」

「なんだ? おっ、あいつ等……」

 獠達が見た者たちは。

 

 

 

「お、おいおい不二子ちゃん。少し買い過ぎじゃないの?」

「まったくだ。しかもルパンだけでなく俺や五エ門まで付き合わせるなんてよ」

「ふ、ふむ……」

「何言ってるの! 本当なら希望の瞳を盗んだ後はスグにパリで買い物しようと思っていたのに、すんなり宝石を返しちゃうんですもの。これ位で済ませているんだから逆に感謝して欲しいぐらいよ」

 車道を挟んだ向こう側の歩道に大量のラッピングされた品を両腕いっぱいに抱え込むルパンに次元に五エ門。そして先頭には微笑む不二子が歩行していた。

 

「あの男達も大変ね。あんなに買い物に付き合わせられちゃって」

 顔を歪ませるルパン達を見て香が呟く。

「まったくだ。でも、泥棒にしては気の良い連中だったな」

「ああ、あの次元大介をあそこまで従わせちまうとは……ルパンも、あの不二子って女もタダもんじゃねえぜ」

 小笑いしながらルパン達を見る獠と海坊主で有った。

 

 

 そして神妙な面持ちで修司が言った。

「だが、所詮は犯罪者。いつかは俺たち聖龍隊が捕まえてやるぜ。その時まで達者でな、ルパン三世」

 

 

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