【聖龍伝説:第二章】英雄達の日々 作:セイントドラゴン・レジェンド
[chapter:バーチャル世界での遭遇]
此処はインターネットの中にある通称バーチャルワールドと呼ばれる空間。何故か此処には彼が居た。
「……ふぅ~~、それにしても人間の技術も結構やないか。インターネットなんて超獣族の社会には無かったというのになぁ」
電脳世界を優雅に滑空しながらチップバードがネットの世界を見て回っていた。
実は超獣族の社会にはネットだけは存在しておらず、チップバードは人間の技術で作られたネットと云うものに深い関心を持っていた。
更に修司からネットの世界に侵入し、とある情報を収集せよと託(ことづけ)されていた。
そんな中、チップバードが電脳世界をしばし見て回っている矢先の事。
「ふぅ……しっかしまぁ広いのなんのって。修司はんから言われた例の女三人組も見えへんし、もう今日は帰りましょか」
チップバードが修司達の所に戻ろうとした、その時。
「……ウウゥ……!」「ん? なんやなんや?」
突然チップバードの目の前に異形の黒い獣の様なのが出現した。
獣は唸り声を上げながらチップバードを睨み付ける。
「な、なんやコイツ?」
目の前に現れた獣に呆然となるチップバード。
すると突然、獣はチップバードに襲いかかって来た。
「な、なんやコイツ……ヤル気か?」
チップバードは襲いかかって来る獣の攻撃をすんなり回避すると、すぐさま態勢を整えて獣相手に視線を向けた。
「そうやな……よし、アレでいくか」
するとチップバードは光線銃の様なフォルムに自身の体を変化させた。
そして銃口を獣に向けて一言発した。
「ホレ、さっさと消えなはれ」
獣に告げたチップバードは銃口から光線を放ち、獣を消滅させた。
「ふぅ……しっかしまぁ、今のは一体全体何やったんや?」
チップバードが一息衝いていると、彼の後方から声が聞こえて来た。
「ん? 誰や? ……ふむ、一応姿消しとくか」
そう云うとチップバードは辺りの景色と同色化し、擬態の状態になって息を潜めた。
そしてその場に駆けつけて来たのは、何と3人の少女達であった。
「あれ~? 確かに今此処にバグルスの反応があった筈なんだけど……」
ウェーブのかかった茶髪、ピンクのコスチュームの少女が呟く。
「そうねぇ……でもバグの姿も何も見えないわ」
赤みのかかった桃色の長髪、そして濃い紫のコスチュームの少女も続けて話す。
「うん、ここ最近またバグルスの暴動が目立って来ているけど、一体……」
最後に黒髪で黒紫のスーツ、そして左目の下にホクロのある少女が神妙な顔つきで口を開いた。
(な、なんや? この女の子達は……?)
擬態化し、身を隠していたチップバードは突然やって来た少女達を見て驚いた。
その時、彼はある事に気付き思った。
(ハッ、まさか……この三人組が例のネット世界で活躍している英雄なのか? 確か修司はんの話だとネット世界の中の問題を解決している三人組の少女達で、確か名を……そ、そうやっ、コレクターズって言うんやったな)
チップバードが身を潜ませながら内心思っているその時、少女達の目の前に一人の人物が突如として姿を現した。
「あ!」「あ、アナタは……!」
「お、お前! また姿を現したな!」
少女達はその者を見て目の色を変えて声を発した。
(ア! あ、あの野郎は……!)
そして身を潜ませるチップバードもその者を見て驚愕した。
何故ならその者は、以前より聖龍隊の眼前にも姿を現した事がある黒ローブ姿の人物であったからだ。
チップバードは敢えて身を潜ませたままで目の前の状況を様子見する事に。
そんな中、黒ローブ姿の者は三人の少女達に左手を突き出す様に前に出すと同時に、ロ自身の周りに先ほどチップが消滅させた黒い獣のようなのを多数出現させる。
それを見た少女達は声を上げて叫んだ。
「きゃ!」「ま、また出して来た!」
「くっ、一体何なの、コイツは……!」
そんな状況の中、ローブ姿は左手をサッと前に振り払い合図を出すと出現した多数の獣は少女達を襲って行った。
「きゃあっ」「は、春奈ちゃん!」
獣の攻撃を寸でで回避し倒れ込む紫の少女にピンクの少女が歩み寄って声をかける。
「く、二人とも今はこのバグ達を何とかしないと……!」
黒スーツの少女は他の少女二人に声をかけながら迫りくる獣たちの攻撃を回避しつつ倒して行ってた。
と、その時。
「ギャアァァ!」
一体の獣が黒スーツの少女目掛けて飛び掛かって来た。
「あ、愛ちゃん危ないッ!」
ピンクの少女が思わず黒の少女に向かって叫んだ。
だがその時。
「ウギャッ」
襲いかかって来た獣に何処からともなく光の弾が飛んできて獣を吹き飛ばした。
「え?」「い、今の何?」「……」
見ていた紫とピンクの少女は驚き、そして攻撃を受けそうになった黒の少女は呆然としてしまった。
そして、そんな少女達の眼前に光の弾を放ったモノが立ち尽くした。そう、チップバードだった。
「おい黒いの! お前さん電脳世界にまでも悪さしてやがったんかい! でもワテがおる限り好き勝手にはさせまへんで!!」
「な、なに? この銀色の小鳥は……」
突然目の前に現れ豪語し出したチップバードを見て、黒の少女は唖然としてしまった。
そしてチップバードを眼前に黒ローブはチップを睨み付ける様に見降ろしながら軽く舌打ちをした。
「……チッ」
舌打ちをしたローブ姿はサァっと消えてしまう。
そして、その場に残された三人と一匹は獣の群れを眼前に囲まれてしまってた。
「ど、どうしよう、囲まれちゃった……」
紫の少女が困り果てた表情を浮かべると、彼女を励ますかの如くチップバードが三人に告げた。
「大丈夫やてお嬢さん方! このワテ、チップバードが居りますさかい!」
「あ、アナタ、一体何なの? ……と云うより、なぜ関西弁?」
チップバードの事はもちろん、彼の言動にキョトンとしてしまう黒の少女。
そんな最中、獣の群れは一斉に襲いかかって来た。
「あ、今は話している場合じゃないわ! このバグルス達を何とかしないと……」
襲い来る群れを見て言い放つ黒の少女の発言を聞き、チップバードが訊ねた。
「ん? なぁネエちゃん達? さっきから口にしているバグルスって、一体なんのこっちゃ?」
するとすかさずピンクの少女がチップバードに云おうとした。
「あ、バグルスって言うのはね……」
「ユイ! 何処の何者か分からないのに下手に言わない方が良いわ!」
だが黒の少女がピンクの少女の発言を止めさせた。
チップは思わず唖然としてしまうが、迫りくる獣の群れを見て一言少女達に発した。
「ま、まぁ、今はこの獣の群れを先に片付けるとしますか……」
そして三人と一匹は無数の獣の群れに向かって戦闘を開始した。
[共闘するコレクターズと銀小鳥]
そしてチップバードと少女三人組は獣の群れをどうにか全て倒す事に成功できた。
と、その時。少女達が装着している通信機から老人の声が聞こえて来て、それによると少し離れた所に謎の巨大な何かが居るとの事。
少女達はすぐさま直行し、チップバードも少女等と共にその場に急行した。
そして現場に向かう道中、両者は共に互いの事を名乗り出していた。
「……そう。アナタはあのアニメタウンの英雄メタルバードのパートナーでチップバードって言うのね」
「ああそうや。ワテはちょっとネットってもんに興味が湧いてな。それで今回はちょっくらネットに潜って色々と調べて回ろうと思っていた矢先に、あんさん等に出くわしたって訳なんや」
黒の少女に名乗り、互いに会話をするチップバード。
そしてチップバードに続き、少女等も名乗り始めた。
最初に名乗って来たのは黒の少女からだった。
「そうなの……私はコレクター・アイ。コムネットと呼ばれる電脳世界で日夜活躍しているコレクターズの一員よ」
アイと名乗る少女に続いて今度は紫のコスチュームの少女が温厚な口調で名乗った。
「わ、私はハルナと云います。初めまして小鳥さん」
そして最後にピンクの少女がチップバードに元気よく名乗った。
「私はユイ、コレクター・ユイって言うわ! 初めましてチップバード」
「あ、ああ。元気の良いお嬢さんやなぁ……」
ハイテンションで喋るユイに少し引き気味になってしまうチップバード。
そして一行は現場に着いたのだが、其処には先ほどの獣が多数の群れで電脳世界を破壊していた。
「あ、あいつ等!」「で、電脳空間が食い千切られている……!」
アイとハルナは電脳空間の床や柱を牙で食い千切り、破壊して行く獣たちを見て愕然とした。
そんな二人に向かってユイが言い放つ。
「アイちゃん、ハルナちゃん行くわよ! チップバード、あなたも力を貸してッ」
初対面のチップバードを信頼して彼に頼むコレクター・ユイの発言に、チップ自身も快く返事した。
「よっしゃッ、任せて置くんなせ、コレクターズのねえちぇん達!」
そう言うとチップバードは自身の体を刃物のような形状に変化させて猛スピードで獣の群れの中に突っ込んで行った。
そうしてチップは次々に獣を斬り倒して行った。
「……す、スゴイ」
「こ、これが……聖龍隊副長で有名な、メタルバードのパートナーの……」
「じ、実力なんだ……」
次々に敵を倒して行くチップバードの姿を見て呆然としてしまう三人。
だが残っていた獣の群れが突然一つに集まり出し、そして何と一体の巨大な黒いヘドロの様な怪物に姿を変えた。
「な、何!?」「きゃあっ」
ヘドロの怪物を見て驚くアイとハルナ。
そして怪物は自身の赤く光る眼でユイ達を見降ろすと、腕の様に変化させた体の一部でユイ達を攻撃してきた。
「きゃああッ!」
悲鳴を上げながら間一髪のところで攻撃を避けるユイ達。
そんな彼女達にチップが訊ねる。
「な、なぁ、コレクターズのねえちゃん達。これがあんさん等の言うバグっていう一種のウイルスなんでっか?」
それに対しコレクター・アイがヘドロの怪物の攻撃を避けながら答えた。
「そ、その筈なんだけど……だ、だけど随分前に、私達はバグを生み出してしまう要素を何とか止められた筈なのに、最近になってからまたバグルスが発生するようになってきたのよ!」
アイに続きハルナとユイもチップに告げる。
「も、もうバグルスなんて本当は発生する筈は無いのに、最近は今まで以上に強力なバグが発生するようになってしまっているの……!」
「そうなの! ……しかもさっきチップちゃんも見ているあの黒のフードマンが出現すると同時にバグルスに似た凶暴な動物や怪物も一緒に姿を現すのよ!」
これを聞いてチップは驚いた。
「な、何やてッ? あ、あの黒フードの奴はワテ等聖龍隊の目の前にもちょくちょく姿を現しているんやてェ!」
『え!?』三人もチップの言葉に驚愕した。
だが、そんな最中もヘドロの怪物はチップやユイ達を攻撃し続けて来た。
「く、くそ……ッ。何とか倒せないもんか……」
怪物から飛び出してくるヘドロの塊を避けながらチップは考えながらユイ達に訊ねた。
「な、なぁ、ねえちゃん達、あんた等の力でどうにかできない訳?」
するとユイが困惑した表情で言い返した。
「そ、それが……さっきから攻撃して行っているんだけど一向に効く気配がないのよ」
「そ、そんなぁ……」
ユイの発言を聞き、愕然としてしまうチップバード。
だがそれでもチップは考えに考えた。
そして彼は自身のレーダーシステムで怪物の周りを須らく見回し、怪物についての情報を収集。そして一つの結論に達した。
「……間違いない、こいつ等はコンピューターウイルスの様なプログラムの塊とは違うでッ」
「えッ?」「ち、チップちゃん?」「そ、それってどういう事?」
突然のチップの発言に動揺する三人はチップに思わず訊き返した。
するとチップは三人に視線を向けながら答えた。
「以前からワテ等の前に姿を現してきた黒ローブ姿も、あのヘドロの怪物同様に色々な怪物を差し向けて来ているんやッ。その度にワテは怪物のデータを収集しておるんやが、その怪物のデータとヘドロの怪物のデータがほとんど一緒なんや……い、今目の前に居るでっかいヘドロの怪物はウイルスじゃない全くの別もんの、正真正銘の怪物やてッッ」
目の前の怪物はウイルスでは無く正真正銘の異形の怪物であると、チップバードから聞いたユイ達は愕然とした。
「そ、そんなぁ!」
「わ、私達の攻撃が余り効かないのは、現実の世界でも出現している怪物だからなの? チップちゃん……」
「そ、そう云う事になりますなぁ……」
口を開けて驚くアイ、そして訊いてきたハルナに対しチップバードは答えた。
さらにそれを聞いたユイに限っては半ば狂乱しながら叫んだ。
「うわぁ~~! そ、それじゃ私たち何もできないじゃないのよッッ」
彼女を見てチップは密かに内心思った。
(な、何だか、うさぎはんみたいな女の子やな……)
困り果てているユイ達を見たチップバードはふと思い立った。
彼女達に黒のフードが出現させた怪物を倒せる力を与えられないであろうかと。
その時、チップバードはある事を思い出した。それは以前より修司に言われていた事柄だった。
修司は兼ねてより、電脳世界でも活躍する英雄を現実の世界においても、その真価を発揮させようと志向していた。
弱い人々を、困っている人を救ってあげたいと願う者に少しでも力を与えたい、誰かを助けられるチャンスを自身同様に与えてやりたいと、修司は前々より考えていた。
それは自分も同様、英雄を始めとした多くの二次元人の存在があったからこそ、自分以外の者にも生きる活力を分け与えてやりたいという修司のささやかな願いでもあった。
そしてチップバードは自身に収納されている、多くの聖龍隊の英雄に関するデータを基に一つのプログラムを構成させた。
「あぁ、いくら攻撃しても焼け石に水だわ!」
「ぜ、全然歯が立たない……」
半ば精神的に追い詰められていくアイとハルナは次第に疲労が顔に見えるようになって行った。
「あぁ~~ん、こんな時こそセーラームーンやキューティーハニー……せ、せめてミラーガールの様な力が出せるスーツが欲しいよ~~!」
ユイなど半泣き状態で喚いてしまっていた。
そんな混乱する状況下の中、チップバードは三人に向かって言い放った。
「ユイはん! ハルナはん! そしてアイはん! ちょっくらこっちに来てくれまへんか?」
「え?」「?」「な、何なの? チップバード?」
「良いから、コッチに来てくんなまし!」
呼ばれた三人は思わず呆然としてしまったが、チップバードは有無を言わさず三人を呼び続けた。
ユイ達は呆然としながらも、チップバードの所に駆け寄った。
そしてチップバードは三人を目の前で横一列に並ばせると、ユイ達に告げた。
「……よし、これで後は上手くデータをあんさん等のスーツに適合できれば良いだけや……」
チップバードが呟いた瞬間。チップの頭部から赤い光線が放射され、三人に赤い光が直射させられた。
「キャッ」「な、何?」「え!?」
驚き思わず目をつぶるユイ達、だが彼女達が目を開けてみると自身の姿が一変していた。
[インストール! エレメントセイントスーツ]
「こ……これは……ッ!」
ユイ・ハルナ・アイの三人のコレクターガールズが目を開けて自分の姿を確認してみると。
三人のスーツは青と白をベースにした今まで見た事のないエレメントスーツに変貌していた!
スーツを見た三人は驚愕し、ユイは思わず歓喜しながら叫んだ。
「わあ! こ、これって、何だかミラーガールのコスチュームにとっても似てる!」
そんなユイにチップバードが告げた。
「どやっ、ワイが聖龍隊のデータを基に作ったスーツの出来は! 聖龍隊では何とか総力を挙げてあの怪物共を倒す事ができているからな、聖龍隊の英雄達の力を一部のみだがデータとして複製して、それをあんさん等のスーツに適合させてみたんや。これならあのヘドロの怪物にも少しは攻撃が効くと思いまっせ!」
「す、凄いわ!」
「せ、聖龍隊の……現実の世界で戦っている英雄達の力を一つにした、エレメントスーツ……!」
チップバードの話を聞き、驚き唖然となるハルナにアイ。
その時、三人が驚いている最中ヘドロの怪物がユイ達に再び襲いかかって来た。
「わっ、き、来た!」「ど、どうすれば……」
襲い来る怪物に驚くハルナに困惑するアイ、彼女達にチップは助言を告げた。
「皆はん、大事なのは自分を信じる事でっせ。自分の力を信じる事ができなけりゃ何もできまへんで。……大丈夫や、今までユイはん等がやって来たように互いに協力し合えば出来ない事なんか何一つ有りまへんで」
「ち、チップバード……」
チップバードの助言に自分達の中で自信が湧いてきたユイ達。
「……自分を信じれば、か」「確かに、それが一番大切な事でしたね」
助言を聞き、内心納得して行くアイとハルナ。
そして助言を聞いて自信満々になったユイがチップバードに礼を言い、更に仲間の二人に言い放った。
「分かったわ、ありがとうチップバード! さぁアイちゃん、ハルナちゃん、一緒に頑張ろう!」
『ええ!』
ユイの発言にアイとハルナの二人も元気よく返事をした。
そして三人はチップバードと共に襲い来る巨大なヘドロ状の怪物と交戦した!
「えぇい!」
まずハルナは右腕に装着されたボーガンの様な弓矢で怪物を攻撃した!
「グオオオォォォ……」
放たれた蒼い閃光の矢は怪物に直撃し、怪物は唸り声の様な低い声を上げた。
「え、えぇっと……チップバード、このスーツの効力ってどんなんなの?」
初めて着用するスーツの使用方法に困惑するアイに訊かれたチップバードは答えた。
「うむ、そのスーツは主にミラーガールのスーツをモデルにデータ化したもんなんや。彼女の能力は願いや思想を形にするもんで、要するに強い意志で思った事を可能にする事ができるスーツや! アイはんもハルナはん同様、何か思った攻撃方法で怪物を攻撃して行けば良いんやッ」
「そ、そう言われても……」
アイはしばし悩んでいたが、ハッと思い付いた。
「……そ、そうだわ!」
その瞬間、アイの右手首からに青く光るビームサーベルが出現した!
アイはそのまま右手首のサーベルで攻撃してくる怪物の太い腕を斬り付けた。
「ウギャッ」腕を斬られた怪物は声を上げて怯んだ。
一方ユイは、自分はどう戦おうか迷っていた。
「う~~ん……私はどうしようかなぁ……」
ユイが迷っているその時、怪物は自信の腕を思いっきり振り払い腕から黒いヘドロの塊をユイ目掛けて投げつけて来た。
「ユイちゃん危ない!」
「ユイ! そっちにヘドロの塊が行ったわよッ!」
慌ててユイに注意を呼び掛けるハルナとアイ、そしてユイも迫りくるヘドロの塊に気付き動揺した。
「わっ! え、えぇ~~っと……あ! そうだ」
慌てながらも何かを思い付いたユイは咄嗟に自分の左腕の肘を曲げながら前に構えてみせると、その瞬間ユイの左腕から青い盾が出現しヘドロの塊による攻撃を防いだ。
攻撃を防いだユイはホッと溜息を衝きながら胸を撫で下ろして安堵した。
「ふぅ~~、何とか間に合って良かった……へへ、ミラーガールの盾をイメージしてみたけど上手く行ったわ……」
「も、もう……いつも危なっかしいんだから」「よ、良かったぁ……」
無傷のユイを見て安堵するアイとハルナであった。
しかし怪物の攻撃は収まる処か一層激しくなり、怪物は縦横無尽に辺りにヘドロの塊を放出し、ユイ達は攻撃を回避しながら必死に応戦して行った。
「だ、だけど……一体何なの? この黒い怪物に、あの黒いフード姿は……」
怪物と戦いながら思案にふけるアイに、チップバードが答えた。
「そ、それやがな。実はワテ等聖龍隊でも正確な正体までは掴めてへんのやで。……怪物の方は今なお世界中で突然出現し暴れ回っている怪物等と同系とは思うんやが、黒ローブの方は全くの皆無なんや。フードを被っている為に男か女か解らんし、何より声も口に布を当てているのか籠った声質になっているからなぁ……」
「えっ? ち、チップバード、アナタ達の方では、あの黒ローブは声を出した事があるの!?」
「わ、私達の前ではあの黒ローブ、一言も喋った事は無いのよ……!」
チップバードの発言に驚いてしまうユイにハルナ。
と、その時。怪物は自信の体を大きく広げ出し、ユイ達三人に覆い被さろうとした。
「きゃあ」「そ、そんなぁ!」
「こ、このヘドロ、私達を飲み込む気なのッ!?」
三人は思わず一か所に集まり、互いに身を寄せながら身構え続けた。
「や、ヤベえでお嬢ちゃん達!」
三人とチップバードの真上まで怪物が覆い被さり、彼等の視界が暗闇に染まってしまおうとしていた。
しかしこの時、一か所に集まったユイ達三人の手の甲から突然星の模様が現れ青く優しい光が放出された。
「グワアァ……」
光が放たれた瞬間、怪物は光を嫌がる様に苦痛に喘いだ様な唸り声を上げて、怪物はユイ達の周りから一気に離れていった。
「え」「い、今の光は……」
呆然とするユイ達が自信の右手の甲に視線を送ると、五芒星の紋章が青く神々しい光を放ち続けていた。
「こ、これは……」
呆然となるアイ達に、チップバードが近寄り己の考えを述べた。
「うぅむ……この五芒星、これは聖龍隊の軍旗にも使われている紋章やな」
「え……で、でもその五芒星が何故突然私達の手の甲に現れたの……!?」
ポカンとなるアイにチップが訳を話した。
「うむ、これは……あくまでワテの予測ですが、五芒星は主に邪悪なモノから何かを護る為の紋章や。先ほどあんさん等が三人一か所に集まった時、お互いに護ってあげたいと願ったから聖龍隊の象徴である五芒星が現れたんやないでしょか? 聖龍隊は誰もが相手を護りたいって思っている人達ばかりさかい、ユイはん等の互いを思いやる心に聖龍隊のデータで作ったセイントスーツに反応して、それで五芒星が手の甲に現れたんやないでっか?」
「そ、それじゃ……この五芒星は、私達が互いに護り合いたいって願っているから現れたものだってこと?」
チップの発言を聞き、呆然となるアイやユイ達。
「グオオオォォォォ……!」
その時、光に反応しその場を離れた怪物が再びユイ達に攻撃をし向けようとしていた。
「ど、どうしましょう……」
「も、もう体力もギリギリ。何とか早急に決着をつけないとヤバいかも……」
ハルナとアイが息を切らしながら呟いていると、二人にユイが真剣な顔付きで言った。
「……よ、よし。ハルナちゃん、アイちゃん、力を貸して!」
「え?」「な、何する積りなの……?」
唖然としてしまうハルナにアイ、そして二人はユイの所に駆け寄るとユイは二人の手を握り締めながら静かに祈り始めた。
(お願い、私達に力を……聖龍使いやミラーガールの様な、弱い人達を護れる力を……!)
ユイが心の中で力強く祈っている、その時。怪物が巨大な口を開いてユイ目掛けて突進してきた!
「あぁ! 危ないッ!」
側で見ていたチップバードが思わず声を上げた、その瞬間であった。
強烈な青白い光がユイ・ハルナ・アイの三人から放出された!
怪物は怯み、チップバードも眩しさゆえ思わず目を背けてしまった。
そして次の瞬間! 三人を纏う光は一筋の巨大な剣の形に形成され、形成された剣はそのまま怪物目掛けて一直線に伸びて行った!
「グオ……ッ!」
そして剣は怪物の巨体を貫き、怪物は断末魔の如き唸り声を一言発した。
更に唸り声を上げた直後、怪物の体内から無数の光が放出され、その瞬間怪物は大爆発を起こし消滅した。
「……や、やった」「ほ、ほえ……」
一瞬で怪物が消えたのを目にしたアイとハルナは思わず腰を抜かした。
「は、ははは……ま、まさか本当に成功しちゃったよ」
ユイも目を点にしてその場に立ち尽くしてしまっていた。
だがこの時、離れた場所でユイ達に気付かれない様に彼女達を見ていた者が居た。そう、あの黒ローブの人物。
黒ローブはユイ達が力を合わせて巨大な黒いヘドロの怪物を消滅させたのを見届けると、一瞬で姿を消した。
[再び逢うその日まで……]
巨大な黒いヘドロの怪物を消滅させる事が出来たユイ・ハルナ・アイの三人はチップバードに別れを告げようとしていた。
この時三人は着用していたセイントスーツを元のスーツに戻していた。
「ホンッとにありがとうね、チップバード!」
「私達に怪物を倒せる力を、聖龍隊の英雄に近い力のあるスーツを貸してくれてありがとう」
ユイは満面の笑顔で、アイは穏やかな笑みを浮かべてチップバードに礼を述べた。
礼を言われたチップバードは謙遜しながらユイ達に言い返した。
「いやいや、ワテはほとんど。全てはユイはん等の純粋で強い想いが有ったからこそ勝てたんやで」
その時、会話しているチップバードにハルナが訊ねた。
「そういえばチップちゃん? なんで折角着せてくれたセイントスーツを元のエレメントスーツに戻しちゃったの? 私もっと着ていたかったのに……」
残念そうな表情で告げるハルナにチップバードが平然と訳を話した。
「ああ、それはやな、一応さっきは上手く機能してくれたから良かったものの、アレは急ごしらえであしらえたスーツですさかい、しっかりと調整してからでないと……」
このチップの発言にアイが有る事に気付いた。
「ん? でもチップバード、別に調整なら私達の方でもできるから大丈夫よ。コレクターズを指揮していて私達のサポートも行ってくれている人が居るから、その人にスーツの調整は……」
「ああ、そうやけどなアイはん、このスーツは聖龍隊の隊士でも有る英雄達のデータを基に作っているスーツでっから犬養博士でも簡単には扱えない代物なんでっせ。まぁ何れは必ずユイはん達に着てもらう日が来る筈でっからその日までワイ等が大事に保管しておきますさかい」
「……?! え、えぇっと、チップバード? い、今あなたなんて……」
チップの発言に目を丸くして驚いてしまうアイに、チップバードは続けて述べた。
「まぁ、あんさん等とは近いうちにまた逢う事になるとは思いますさかい、それまで達者でな。あ、それと近々犬養博士に便りも来ると思いまっから博士に宜しく言っといてくだせえな、そんじゃッ」
そう言い残し、チップバードはユイ達の目の前で飛び去っていった。
「……ど、どういう事なの?」「さ、さぁ……」
チップの言い残した言葉が気になり、呆然としてしまうアイにハルナ。
そして飛んでいくチップを見続けながらユイは呟いた。
「ま、また逢えるって……どう言う事なのかな……?」
三人はしばし、電脳空間で佇んでしまっていた。
一方、ユイ達が怪物を倒したのを見届けた黒ローブ姿はと云うと。
「……おおう、どうした? 例の三人組はどうなっちまったんだい?」
黒ローブは周りが漆黒に染まっている空間に姿を現していた。
だが其処には別の黒ローブが居り、ユイ達の目の前に現れたもう一人のローブに声を掛けた。
声を掛けた黒ローブは、更に続けて帰って来たローブに籠った声質で話しかけた。
「どうしたんだ、コレクターと呼ばれている女達は倒せたのかい?」
訊ねてみると、黒ローブは静かに小さな声で既に居たローブに先ほどまでの出来事を語った。
「……なに? 聖龍隊のチップバードが駆けつけてコレクターズに新たなエレメントスーツを与えただと?」
訳を聞いたローブは多少驚いた様子で戻ってきたローブに訊き返した。
すると帰って来たローブ姿は無言で小さく頷いた。
それに対し相手の黒ローブは戻ってきたローブの肩に手を乗せながら言った。
「……そうか、まぁ良いだろ。まだ全ては終わっても無ければ始まってもいない。全てはこれからだ、お前自身が勝手に消されてしまう……いやその前に、既に死んでいたというのそれでも野心を持たされて争い続ける運命を与えられたお前の無念を晴らす為にも、お前を消したコレクターズを世界ごと消さないとな……」
「…………」
「……どうした? 急に黙り込んでしまってよ……ああそうか、確かお前は人間が作り出したプログラムには感情など不要だって思考の持ち主だったな。それが自分自身も創られた存在だって知って未だにショックなんだな」
無言の状態を続ける黒フードに、相手のフードは続けて意味深気な態度で語った。
「創りモノに感情は不要、だがその思考の持ち主である自分自身もまた創られしモノ。複雑だよなぁ……でも安心しろ。そんな苦の感情も全てが終われば綺麗さっぱり消えちまうだろうぜ、まぁ世界が消えれば感情も消えるのも当然だけどな……」
「………………」
「ん? おいおい、まだ悩んでいるのかい? このままじゃ、結局お前は勝手に消されただけの存在で終わっちまうんだぜ。腹くくれよな、もう」
そう言うと黒フードは戻ってきた黒フードの頭に右手を置き、そして告げた。
「……まあ、そう云う事で今はまた眠っておけ。コレクターズは少なくとも最終的には聖龍隊と共に悪足掻きするだろうに、それまでお前自身も安息に浸っておけ」
すると頭を押さえられた黒フードはすぅっと透明になっていき、次第に消えていった。
最後に黒フードは消えゆく黒フードに詠う様に語った。
「眠れ眠れ、哀れな運命(さだめ)を持つ者よ。お前の無念が晴れるまで お前の苦しみ消えるまで 眠れ眠れよ……黒川良よ」
そして戻ってきた黒ローブは完全に消えたその時、今度は空間の上方から残っている黒フードに話しかける者が居た。
「ふっふっふ……元高名なプログラマーも、今じゃただの闇の敵勢軍の司令塔に成りつつあるのう……ま、これで着々と次元崩壊の下準備は出来ていくがな。後は聖龍隊を始めとする英雄達やあの三次元人を何とかすれば……」
この発言に対し、黒フードは不敵に答えた。
「ふふ、心配するな。所詮あの三次元人は心の弱い存在だ、故に二次元人と云う偽りの者の存在なしでは生きていく事が出来ない哀れな男なんだよ」
「ほう、やはり随分分かっている様じゃな、さすが……」
「おっと、その先は言うな。いづれ、その言葉の意味も消えてなくなっちまうだろうしよ。……なぁ」
不敵な態度で語る黒ローブ姿と謎の声。
彼等の真意は、いったい。
[プロジェクトへの勧誘]
一方、聖龍隊のメインフロアに帰還していたチップバードは一人いや一羽で黙々とコンピューターを操作して作業をしていた。
「どうしたチップバード。ネットに有るというバーチャルワールドで何か収穫はあったか?」
黙々と作業をしているチップバードの所に修司がやって来た。
訊かれたチップは半ば興奮した様子で修司に言った。
「あ、修司はん! 実は今し方、修司はんの言っていた例のコレクターズって言う三人組に出逢ったんでっせ!」
これを聞いた修司は驚いた。
「! 何っ、それは本当かチップ。それなら後は彼女達の居所か、または関係者の情報を入手して、それから……」
修司が思い更けているその時、チップが修司に言った。
「ああそれなら大丈夫でっせ修司はん。実はコレクターズにカクカクジカジカで新しいスーツを提供して、それで返してもらう際に内密に彼女達のデータもダウンロードしておいたから彼女達の本名等も全て把握しておりまっせ」
これを聞いて修司は目を丸くして喜んだ。
「おおぉ! それは益々良くやったな! ……それで、コレクターズって正確には何者だったんだい?」
「うむ、あの三人は元々は普通の女子中学生のようやな。三人とも私立スクロール学園っちゅう学校に通っているようでっせ」
「それは良いんだ。問題はその女達の素性や、コレクターズのあの特別なスーツを作った人間の存在なんだよ」
「ああ、そうでしたな。三人の素性については資料に纏めて置いたから、一通り目を配らせてくだせえな」
チップに言われ、彼が作成した資料に目を通す修司は、資料に記載されている少女達の本名を読み上げた。
「うむうむ、なるほど……ピンクのスーツを着用しているのが春日結(かすが ゆい)通称コレクターユイ、濃い紫色のスーツが如月春奈(きさらぎ はるな)通称コレクターハルナ、そして最後に黒紫のスーツが篠崎愛(しのざき あい)通称コレクターアイ……か。この三人が電脳世界で活躍している三人なんだな、この先更にコンピューターや電脳空間での犯罪や悪事も増加して行くだろうし、コレクターズの様な連中も聖龍隊に勧誘しておいても損は無いだろう」
「だ、だけど修司はん、彼女達にも現実世界で戦えるようになってもらう積りなんしょ? しっかし、電脳世界で戦ってきた彼女達が現実の世界でも上手く戦う事はできるんでっか?」
チップに訊かれた修司は平然と言い返した。
「大丈夫だと思う。それにはまず、コレクターズの生みの親ともいうべき人物が居る筈だ。その人に接触してからじゃないと話は進まないんだが……」
「ああそれなら、それについての情報も既に入手済みでっせ。コレクターズの生みの親でコムネットの総合開発責任者の犬養基継(いぬかい もとつぐ)博士や。現在はコムコンの開発やバグルスの対策をしながらコレクターズの後見役を務めているみたいでっせ。この博士と何か話でも……」
チップに訊き返された修司は、チップに不敵な笑みを浮かべながら告げた。
「……まぁな。その博士の知識も無けりゃ、この先俺達が更に活躍する事はできないだろうよ……それよりチップバード、お前はその犬養博士の連絡先を速急に調べてくれ。そして接触できるように上手く誘い出してくれよな」
「へ、へぇ……」
何かを企んでいる……そう感じ取れる不敵な笑みを見せつけた修司の言動に軽く動揺してしまうチップで有ったが、言われた通り犬養博士の所在をネットを駆使して調べて出した。
それから数日後、都内某所のとある喫茶店にて一人の老人がコーヒーを飲みながら静かにテーブルに着席していた。
と其処にサングラスを掛けた一人の少年と、それに付き添う様に後を付いてくる男性の二人組が老人の元まで歩み寄って来た。
まず最初に声を掛けたのは、サングラスの少年。
「……失礼」「ん? 君は……」
声を掛けられた老人はコーヒーの入ったカップを手に持ったまま少年に顔を向ける。
そして少年は老人に訊ねた。
「どうも、貴方がコンピューターやプログラムの権威でありコムネットの総合開発責任者の犬養基継博士ですね」
「は、はぁ、そうですが……き、君は一体……」
博士に訊ねられた少年は付き添いの男と共に博士の座っていたテーブルに腰を下ろして名乗り出した。
「初めまして、今日は態々呼び出してしまって大変申し訳ありません。自分は貴方を此処に呼び出した張本人、小田原修司ですよ。そして隣に居るのが付き添いのウッズです」
「どうも」
修司に紹介され頭を下げるウッズ。そして少年の正体を知り驚いた博士は咄嗟に挨拶をした。
「おぉッ、これはこれは。若くして町の市長に就任した小田原修司氏でしたか、これは失礼を」
そして博士は修司とウッズに顔を向き合わせながら会話を始めた。
「ところで博士、今回貴方を呼んだのには深い事情が有るんですよ」
「深い事情……?」
「まぁ、まずはこれを見てください」
キョトンとしてしまう博士に修司は手に持っていたA4サイズの封筒から資料らしき書類を取り出し博士に手渡した。
「………………! こ、これは……!」
資料を拝見した博士は驚愕した。
そんな博士に修司は不敵に微笑みながら告げた。
「どうですか? 貴方が後見役をしているコレクターズの三人の少女、彼女達の素性が事細かく詳細に記載されているでしょ?」
「……ど、どうする積りなのかね?」
動揺してしまう博士に、修司は続けて不敵な笑みで語った。
「いえいえ、何も取って食おうって考えじゃありませんよ。ただ彼女達や貴方に色々と協力をしてもらいたいだけなんですよ。……ある計画(プロジェクト)にね」
「!? ぷ、プロジェクト?」
再びキョトンとなる博士に、修司は述べる。
「ええ、実は私の組織している英雄集団・聖龍隊は、国連の協力の元あるプロジェクトを進行中でして。貴方の知識やコレクターズの力を貸してもらいたいんですよ……」
「……」
余りの事に黙り込んでしまう博士に、修司は話し続けた。
「博士、貴方はコレクターズの実力を、真価を電脳世界のみで留めていても良いんですか? 彼女達の実力は日本だけで無い、世界にしっかりと知らしめる必要が有るんですよ。ウチにはそんな存在が多数いますので大変良く解っております。もちろん俺達も総力を挙げて貴方やコレクターズの支援をして行くつもりですよ……」
「む……」
「まだ考えが決まりませんか? これはですね博士、世界的に重要な計画何ですよ。聖龍隊の英雄達はもちろん、協力下の人間も絶賛されること間違いなしの計画何です。貴方の知識も加われば聖龍隊は日本で、いやアジアでは最初のチームに仕上がる事間違いありません」
手を組みながら神妙な面持ちで語る修司に、博士は静かに口を開いた。
「……チームとは、一体……?」
計画は順調に進行中 by小田原修司