【聖龍伝説:第二章】英雄達の日々 作:セイントドラゴン・レジェンド
[勤めを終えて]
この日もミラーガールは何時もと変わらず魔鏡聖女に変身して町に出現した魔獣を倒してた。
そして戦闘を終えた彼女は人目を避けて変身を解除しようと、辺りを見回していた。
「……ふぅ、何とか今日も無事にすんだわ。早く変身解こうっと」
辺りを見回したミラーガールの目に人気のない石橋が目に入った。
「あ、あそこでなら……」
ミラーガールは石橋の真下で変身を解こうと駆け足で向かった。
だがその光景を見ていた者が居た。
「……ん? アレは……み、ミラーガールだわ! なんで橋の下に向かっているんだろう」
気になったその少女はミラーガールを追う様に橋の下に向かった。
「さてと、早く元に戻ろう」
ミラーガールは左手首に装着しているリストバンドに変化しているコンパクトを開いて、コンパクトの鏡面を見つめて呪文を唱えた。
「ラミパス」
リストバンドのコンパクト鏡面から光の筋が溢れ出る様に抄出されミラーガールの体を包み込んで行った。
そして光が次第に消えていくと同時に彼女の姿はいつもの加賀美あつこの姿へと戻って行った。
「さぁってと、家に帰ろうっと」
元の姿に戻ったアッコは家に帰ろうと足を運ぶ。すると振り返ってみて彼女は驚き唖然とした。
アッコは振り返ってみると、其処には一人の少女が唖然とした表情で立ち尽くした。
少女は呆然としたままアッコの顔を見つめていた、そしてアッコも少女の顔を見て呟いた。
「……も……モコ」
ミラーガールの姿を目撃して気付かれない様に付いて来た少女は浪花(なにわ)モコ、ミラーガールこと加賀美あつこのクラスメイトにして親友だった。
「あ……アッコ? い、今のって……」
モコは完全に動揺している様子だった。
そんなモコは震える口調で立ち尽くす眼前のアッコに話しかけた。
「あ、アッコ……い、今此処にミラーガールが……い、いいえ……み、ミラーガールがアッコに……ど、どうゆう事……?」
動揺するモコに対しアッコは何も話し出す事が出来なかった。
ヒロインを追って橋の下まで付いて行くと其処でヒロインが自分の親友に姿を変えていた光景に、モコは完全に動揺し愕然となった。
だがモコはそんな心境でありながらアッコに訊き続ける。
「あ、アッコ……! 何とか言ってよ!」
「……も、モコ」
アッコもモコ同様に深く動揺してしまい、上手く話し出す事が出来ずにいた。
そんなアッコにモコが強めの口調で語り出した。
「あ、アッコ……! あ、あなたが、アッコが……アッコ、あなたがミラーガールだったの!?」
「……モコ」
モコの言動に困惑してしまうアッコ、そんな彼女にモコは続けてアッコに言い寄った。
「そう言えば、ミラーガールが町に現れる以前から私達の周りでは変な事ばかり起っていた。そしてそんな時に限ってアッコだけ何処かに居なくなっていた……それも全部アッコ、あなたが仕組んだ事だったの!!?」
「! も、モコ……!」
モコからの指摘にアッコは深く動揺してしまう。そんなアッコにモコは半ば興奮しながら言い放った。
「アッコは……アッコはミラーガールに変身する前から私達を騙していた訳!? 私達をからかって、面白がっていた訳!?」
「も、モコ! ち、違うわ! 私、そんな積りじゃ……!」
何とかモコに理解してもらおうとアッコが話しかけようとすると、モコはアッコに向かって目の色を変えて話し出した。
「そうよ……アッコ、あなたがミラーガールに変身する前からあの修司と親しくなっていたし、ミラーガールが聖龍隊に加わったのも修司が町に来てからだった! まさかアッコ、あなたも修司や町の英雄達の様な得体の知れない存在だったの!?」
《得体の知れない存在》このモコの一言に、流石のアッコも敏感に反応してしまい思わずモコの左頬に平手打ちをしてしまった。
「アッコ……!」
突然アッコに平手打ちをされたモコは目を丸くして呆然としてしまう。
そしてアッコは半ば興奮した状態でモコを睨みつけながら彼女に言い放った。
「なんでそんな事言うのよ! 町の、聖龍隊の英雄達はもちろん修司だって立派に町を護ってくれているのに! なんでそんな酷い事が言える訳!?」
「…………」「…………ハッ」
目の前のアッコに平手打ちを喰らわせられ放心してしまうモコ、そしてモコに思わず平手打ちをした事にハッと気付いたアッコ。
放心状態のモコもハッと気付いて自分に平手打ちを喰らわしたアッコに暗い面立ちで睨み返した。そして何も言わずにその場を立ち去ろうとした。
「あ、ま、待ってモコ」「触らないでよッ!」
アッコは立ち去ろうとするモコを止めようと彼女の手を咄嗟に掴んだがモコは掴まれたアッコの手を払い除けた。
「! モコ……!」
親友のモコに生まれて初めて拒まれ手を振り払われたアッコはショックで呆然としてしまった。
そしてモコはアッコの手を払い除けると逃げる様にその場から立ち去ってしまった。
「…………モコ」
アッコは今まで経験した事の無い悲痛な心情に、心を凄く痛めていた。
どんな時も笑顔で話し、そして理解しあえていた親友のモコに初めて拒絶された。それだけでなくモコに初めて手を上げてしまった自分の行為に、アッコは驚きそして深く後悔を感じていた。
一人橋の下で立ち尽くすアッコはモコを叩いてしまった自身の右手を静かに見詰めながら、しばらく落ち込んでいたという。
[心痛む聖女]
それから数十分後の事。
「ふんふん……さあってと、早く帰って茶飲みながら銀牙を読みますか」
鼻歌交じりで帰路に着いていた修司。彼が気ままに道を歩いていると修司の目にアッコの姿が入った。
「ん? アッコ……?」
修司の目に入ったアッコは、一人悲愴な面持ちで公園のブランコに腰を下ろしていた。
いつもとは完全に様子が違うアッコを気にして修司は公園内に入り、ブランコに腰を下ろしているアッコに歩み寄り声を掛けた。
「アッコ、どうしたんだ」「……修司」
修司に声を掛けられたアッコは、いつもの明るく陽気な口調で無く、如何にも悲痛な声質で返事をした。
更に修司に向けたアッコの瞳には、薄らと涙が浮かび上がっていた。
「あ、アッコ……どうしたんだ?」
悲痛な面立ちで涙目のアッコの顔を見て動揺しながらも彼女に訊いた修司。
するとアッコは重い口を開いて悲痛な口調で修司に話し出した。
「修司……実は……」
アッコは先ほどのモコとの出来事を修司に話した。
話を聞いた修司は驚愕した表情を浮かべ、呆然とした。
「……あ……アッコ、そんな」
呆然としながらアッコに声を掛ける修司、そしてアッコは再び悲痛な口調で修司に話し出した。
「……私……私、どうしたら……モコに変身を見られただけじゃなく、モコに思わず手を上げちゃった」
「…………」
アッコの悲しげな話に修司はアッコの隣側のブランコに座りながら無言で聞いていた。
アッコは続けて修司に自分の悲痛な思いを語った。
「私、モコに嫌われちゃったわよね……。今までモコを騙していたんですもの……。そ、それに……モコに手を上げちゃった……親友のモコを叩いちゃった、私……ウウゥ」
遂には涙をポロリと流してしまうアッコに対し、修司はどうしようもなかった。
こんな時どんな言葉を掛けてやればいいのか、修司には見当も付かなかったのだ。ただただ悲感するアッコを見ているしかできずにいた修司。
咄嗟に修司はアッコの背後に周り背中から彼女を包み込むように抱き締めた。
「……え」「……」
少し驚いてしまうアッコ、そして無言で彼女を抱擁する修司。
二人の間に会話も無ければ言葉も無い。しかし少女は少年の自分を包んでくれる手や腕から伝わる心地よい温もりから少年の思いをしっかりと感じ取った。
《だいじょうぶ》そんな気持ちを少女は少年の温もりから感じた。
口下手な少年は少女がいつもしてくれる抱擁と云う手段でしか少女にしてあげられる事ができなかった。しかし少女もまた、そんな少年の優しい思いを汲み取り心なしか少しばかりの安堵感を感じられたのだ。
励ましの言葉も、問題解決の会話も、二人の間には必要ない。ただ絶対的な信頼と相手から伝わる安堵感に少年と少女は浸っていた。
その時である。二人の耳にサイレンの音が高々と入って来た、それも無数の消防車のサイレン音だった。
「……?」「……な、なんだ?」
アッコと修司がサイレンの音にキョトンとし、修司はアッコを抱き締めていた両腕を放して直立すると其処へクラスメイトの赤塚大作こと大将が走って来た。
「あ! アッコ、修司!」「た、大将……」
「ど、どうしたんだ? そんなに慌てて……」
修司が訊ねてみると、大将は息を切らしながら二人に告げた。
「じ、実は、○×デパートで火事があってよ! 今ギョロやゴマも向かってるところなんだ!」
大将の発言を聞き、アッコは目の色を変えた。そして何を思ったかスッと立ち上がり、一人駆け出した。
「あ、アッコ!」
駆け足になるアッコに、慌てて修司も後を追おうとした。
そして修司は駆けて行くアッコに訊ねる。
「あ、アッコ。一体どうしたんだよッ?」
するとアッコは驚き困惑しているかのような悲愴な表情と眼差しで後方の修司に言い放った。
「い、今デパートでスリーライツのサイン会が行われているの! そしてそのサイン会にはモコも行くって言っていたのよ!」
「な、何っ!」
アッコの発言に修司は目を丸くして驚いた。
そしてアッコは親友のモコの身を心配し、一人修司より先に走って行ってしまった。
「あ、アッコ……ま、待ってくれ……ハァ…………」
何とかアッコに付いていこうと必死に走る修司であったが、息が切れ更には九月と云う次第に冷えてきて空気も乾燥して来た時期も重なって持病の喘息(ぜんそく)の発作が出てしまい軽い呼吸困難に陥ってしまった。
そして思わず壁に手を掛け、膝を付いてしまう修司は心の中でふと思った。
加賀美あつこが親友のモコに自身の秘密を見られてしまうのは、真の物語の筋書き。しかしアッコは決してモコに対して手を挙げる事は無かった筈。だからアッコが親友に手を出してしまったのは、三次元から来た自分が影響してしまっているのでは無いかと。そして手を上げてしまったのは、自分の様な人との付き合い方が分からない人間が、暴力的な人間とアッコが関わってしまっているからなのではと、修司は自分自身を責めてしまう。
一方、アッコは一足先に火事の現場であるデパートに着いていた。
デパートの周りには既に人だかりが出来ており、デパートの上方からは真っ黒い煙と所々淡く赤い炎がちらほらと垣間見えていた。
アッコは辺りを見回して必死にモコの姿を探した。するとアッコの目に先に来ていたギョロとゴマ、更にはモコの弟であるカン吉の姿が入った。アッコは三人の所に急ぎ駆け寄り訊ねた。
「ぎょ、ギョロ、ゴマ、それにカン吉君」
「あ、アッコ」「加賀美」「あ、アッコおねえちゃん……」
困り顔でアッコに言葉を返すギョロとゴマに反して、カン吉の方は如何にも悲愴な表情を浮かべていた。
アッコは慌て口調で三人にモコの事を訊ねた・
「み、みんな! モコは……モコは何処に居るの!?」
アッコの発言に三人は困惑した表情で返した。
「そ、それが……」
「あっしらも探してはいるんですがモコの奴、何処にも見当たらなくて……」
「そ、そんな……!」
「ウゥ、姉ちゃん……」
ギョロとゴマの発言に動揺を隠しきれないアッコ、そして姉の安否を気にして思わず泣き出してしまうカン吉。
アッコは動揺し困惑した。親友は何処に行ってしまったのか、無事に脱出できているのか、と。
デパートの中は既に煙で充満しており、何より消防団員によってデパートの正面玄関は封鎖され通行する事が出来なかった。
困り果てたアッコは咄嗟に近くの建物の陰に駆け込み、其処でコンパクトを開いて話しかけた。
「お願いっ、モコが今何処に居るのか映し出して! お願い、鏡さん」
その時鏡の向こう側、そう鏡の国では涙目に成りながら必死に鏡に話しかけるアッコの顔を、鏡の国の女王が神妙な顔つきで見ていた。
女王は何も言わずに、アッコの見つめるコンパクトの鏡面にモコの今の姿を映し出した。
アッコはコンパクトに映し出されたモコの姿を見て愕然とした。
「も、モコ……!」
燃え盛るデパート、その階段にモコが倒れ込んでいるのが映し出されていた。
「も、モコ! 何処なの? 何処の階なの……?」
アッコはモコが倒れているのが何処の階なのか、鏡に映し出された場所をくまなく見回した。
すると其処が5階と6階の間で有る事が分かった。
「こ、此処ね……! は、早く行かないと……」
モコの居場所を確認したアッコはコンパクトの青い星の部分に指を擦らせ、コンパクトの魔力を起動させた。
「テクマクマヤコン 消防士になれッ」
そしてコンパクトから光が放出されアッコの体を光が包み込むと、彼女は女性消防士に変身を完了させた。
変身し終わったアッコは急いでデパートの正面玄関に向かった。
「すいませんッ、通ります!」
消防士の身形のアッコが玄関前の本物の消防士に声を掛けると、消防士たちは何の疑いも無く変身したアッコを燃え盛るデパートに突入させた。
一方、再び場所は変わり鏡の国では……。
「……母上! 良いんですか、加賀美あつこをこのまま向かわせて……!」
一人、大きな鏡の前に立つ鏡の国の女王の後ろで、女王に言い放つ一人の少年。それは女王の息子である姿桐男ことキーオだった。
キーオは続けて母親である女王に強めの口調で言い放った。
「母上! 宜しいんですかッ。運命と云う流れが狂った状態でアッコを……加賀美あつこに危険な真似をさせて!」
息子のキーオの発言に対し、女王は何も言い返そうとはしない。
そんな母親にキーオは更に訴え続ける。
「……母上、貴女も分かっているでしょう。もし加賀美あつこに……アッコに何か有ったら、母上も俺も……いや、それどころか今のこの状況では多くの変身キャラやヒロイン達にどんな影響が出てくるか! それなのにアッコを一人でデパートに行かせるなんて……ストーリーと云う運命が狂っている以上、下手をすればモコはもちろんアッコまでもが……」
切羽詰まった様に必死で母に言うキーオ。しかし母である女王は口を開かず、ただ鏡を見つめて向こうの世界の様子を覗いていた。
「…………くっ」
思い余ったキーオは、その場から走り去ってしまう。
[異変]
その頃、修司は遅れて現場であるデパート付近にまで辿りついていた。
続々と野次馬により人混みが膨れている状況の中、修司はアッコと彼女の親友であるモコの安否が気に成っていた。
そんな息が切れかかっている修司に、何処からともなくキーオが修司の後方から姿を現し彼に声を掛けた。
「オイっ、修司」「! き、キーオ……!」
半ば興奮した状態で声を掛けて来たキーオの発言に軽く動揺する修司に、キーオは歩み寄り修司に言い寄った。
「お……おい修司。お前、アッコは……」
キーオが修司に話しかけようとしたその時、修司は咄嗟にキーオの両肩を掴んで目を丸くして彼に訊ねた。
「き、キーオ! アッコは……ッ、アッコとモコは今何処に居るんだ!?」
「!? な、なに?」
困惑すると同時に慌てた口調で問い掛ける修司にキーオは驚き、修司は更にキーオに訊き続ける。
「アッコは……アッコはどうしたんだ? アッコとモコは無事なのかよッ? 答えてくれキーオ、アッコは……アッコはまた、大切な人の為に……」
キーオは驚きを隠せなかった。何故なら今自分にしがみ付いて訊ねてくる修司の目には涙が溜まっていたからだ。
修司はキーオの体を揺さ振りながらキーオに涙ながらに訊ねる。
「……お願いだよ、キーオ……お前が俺の事気嫌いしているのは知っている……ッ。俺がこの世界でも邪魔者なのは、重々知っているよ……ッ! それでも俺は……ッ、アッコやみんなを助けて行きたいんだよ!! ……誰かの力に成ってあげたいんだよ……ッ!!」
「…………」
「俺は……俺は……俺は、アッコ何が有ったら怖いんだよッ! アッコに何か有ったら、俺……」
身を震わせて問い詰めてくる修司の言動に唖然としながらも、キーオはジッと修司の苦悶に染まる顔を見つめていた。
そして封を切るかの如くキーオは暗い悲愴な顔立ちで、修司に先ほど鏡の国で見たモコの居場所とアッコの行動を伝えた。
「……アッコは、デパートの中で倒れてしまっているモコを助けようと、さっきコンパクトで消防士に変身してデパートの中に入って行ったよ」
「! ど、何処だ……アッコは、いいやッ、モコは今デパートの何処で倒れているんだよッ! 教えてくれキーオ!!」
涙ながらに訊き迫る修司の言動に、キーオは暗い表情で答えた。
「…………デパートの……5階と6階の間の所だ」
「! ご、5階と6階の間だな! ありがとキーオ!」
キーオから二人の場所を聞いた修司は駆け足でその場から走り去って行ってしまった。
「……………………」
キーオはその無言で、その場に立ち尽くしてしまっていた。
修司の口から出た、この世界での自分の立場で出てしまう影響。そして自身のアッコへの思い。
キーオは鏡越しでは決して見られない、修司の本心の一部を垣間見たのだった。
そして修司はデパート前に辿りついていたが、出来ていた人だかりの前で立ち往生していた。
「……ど、どうしよう。これじゃ中には……」
ふと修司がその場を見回してみると、人だかりの間に僅かな隙間が出来ているのが確認できた。
修司は意を決してその隙間に駆け込み、人混みを押しのけて前へと進んで行った。
そしてデパート前には消防員が当然の如く入り口を封鎖しており、中に誰も入れない様にしていた。
だが修司は消防団員の一瞬の隙を見逃さなかった。
「……良し、今だッ」
修司は消防員の隙を見計らい、消防員が目を逸らした一瞬の好きに駆け出し、燃え盛るデパートに突っ込んで行った。
「あ、君!」
消防団員が気付くも、修司は素早くデパートに侵入し煙が充満しているフロアに消えて行った。
その頃、消防士に変身したアッコは急ぎ親友のモコの所に向かう為階段を駆け上がっていた。
(ハァ、ハァ……も、モコ……お願い、無事でいて……っ)
親友のモコの身を案じながら胸中不安でいっぱいのアッコは息を切らしながらも階段を駆け上る。
そして5階に辿り付き次の階段を上ろうとすると倒れているモコの姿がアッコの目に入った。
「も、モコ!」
アッコは倒れているモコに駆け寄り彼女の体を少し持ち上げて揺さぶる。
「も、モコ! お願い、目を覚まして! モコ返事して!」
「……う、う~ん」
(はっ、良かった、気絶しているだけみたい)
アッコが強く呼び掛けるとモコは小さく唸り、それを確認したアッコは思わず安堵の表情を浮かべた。
そしてアッコは自分が装着していた消防士用の酸素ボンベをすかさずモコの顔に装着させてから彼女の肩を担いで移動させようとした。
(ど、何処か外に……あ、アレは……!)
煙が充満する中、辺りを見回すアッコの目に非常階段へ出る為の非常口が入って来た。
(あ、あそこから外に……! 待っててねモコ、もう少しで外に出られるわ……)
アッコはモコを連れ出し何とか非常階段に出ようとした。だが突然、アッコの視界がぼやけて来た。
(あ……め、目まいが……せ、せめて、モコだけは……)
次第に意識が遠のくなって行く中、アッコは必死で非常口のドアへと足を進ませる。
(……も、もう少し……ッ)
そんな切羽詰まった状況下の中、アッコは遂に意識を失くしてしまった。
同時刻。燃え盛るデパートの近くのビルの上に一人、ミラーナイトに変身したキーオが佇んでいた。
黒い煙を延々と出し続けるデパートを見つめながら彼は何処か思い更けた顔付きだった。
と、その時。
「オッ、ミラーナイト。お前先に来ていたのかッ」
「ん! ああ、メタルバード、それに他のみんなも」
ナイトが振り向いてみると其処にはメタルバードを始めとした聖龍隊が変身した状態でデパートの火災に駆けつけて来た。
「おいミラーナイト! お前、修司やアッコが今何処に居るか知らねえか? 通信機にも応答しなくてよ」
メタルバードの質問に対し、ナイトは重い顔立ちで答えた。
「……二人とも、今はあのデパートの中だ」
「! な、何だって!?」『えぇ!?』
キーオの発言を聞き驚愕する面々。
そしてメタルバードは顔色を変えて聖龍隊の皆に指示を促そうとした。
「お、おいお前等! 急いで修司とアッコのところ……に…………」
その時だった。メタルバードの意識が弱まり、まるで糸が切れたかのごとくその場に倒れ込んでしまう。
「! め、メタルバード!」
慌ててナイトやキッド達聖龍隊が駆け寄ったが、次の瞬間。
「う……ッ、ウウゥ……」「あ……ああぁ……」
メタルバードに続きタキシード仮面、そしてセーラームーンまでもが意識を失った。
「せ、セーラームーン!」「うさぎ! まもちゃん!」
倒れる二人を見て声を上げるマーズにちびムーン。
だが二人だけでは無かった。他の英雄であるキューティーハニーやミスティーハニー、ナースエンジェルにカードキャプター、そしてイサミ達しんせん組、遂にはセーラームーンとタキシード仮面に駆け寄ったマーズにちびムーンも次々に倒れて行った。
「み、みんな!」
目の前で倒れて行く英雄達を見て愕然となるナイト。
困惑してしまう心情の中、突如ナイト自身も体の力が抜け、頭を押さえてふら付き片膝を付いてしまう。
「く……ッ、こ、これは……」
ふとナイトは自分の右手に視線を移した。すると視界に入った自分の右手にナイトはショックを受けた。
「!! て……手が…………ッ!」
目を向けた自身の右手、その右手が薄らと透けて来ていた。
更にナイトが周りに倒れている英雄達に目を向けると、彼等もナイトの右腕同様に体が消える様に薄らと透けていた。
「こ……これは……!!」
体が透けて行く英雄隊を見て、ナイトは目を丸くして困惑・愕然とした。
一方、修司は一人急ぎアッコが向かったであろうモコの居場所まで足を進ませていた。
煙が充満し、視界が悪いだけでなく呼吸すら満足にできない中、修司は必死に足を進ませて階段を上っていた。
「……あ、アッコ、モコ」
悲痛な心情の中修司はどうにか5階まで辿りついていた。
そして辿り付いた彼の目に非常口前で倒れているモコと消防士の姿が入った。
(! も、モコ! それにこの消防士は、アッコ?)
修司は急ぎ二人の所に駆け寄って二人の顔を覗いた。
するとモコはアッコから装着させられた酸素ボンベでかろうじて顔色が良好ではあったが、アッコの方は大分煙を吸い込んでいるのか意識が無くなっていた。
「あ、アッコ……!」
女性消防士に変身しているとはいえアッコの顔を見続けている修司にとっては、意識の無い表情を見て内心居ても立っても居られずにいた。
「ぐっ」
修司は咄嗟に非常階段に出る非常口のドアを開けようとドアノブに手を掛けた。
「アツっ」
ドアノブは火災による熱によって非常に熱くなっていた。
「く、クソっ」
だが修司はそれでも再度ドアノブに手を掛け、力ずくでドアを抉じ開けた。
ドアを全開させると修司はすぐさま倒れているモコと消防士に変身しているアッコを引き摺る様にして階段まで移動させた。
そして修司は二人を移動させるとすぐさまアッコの体をチャックしてアッコのコンパクトを見つけ出した。
そして徐にコンパクトを開いて呪文を唱えた。二人の身を案じてすぐに助けを呼び叫びたいところだが、消防士に変身したアッコをそのままの状態で助けを呼ぶのはどうかと思ったのだ。
「た、頼む。何とか俺の言葉でも……ラミパス!」
藁にもすがる気持ちで呪文を唱えた修司。すると奇跡的に呪文は効力を示してアッコの姿は元に戻った。
「よ……良かったぁ。これで後は助けを……はぁ」
緊張の糸が少しほぐれてしまったのか、修司はその場に膝から崩れ落ちてしまった。
そしてその頃、体の力が抜けて倒れていたミラーナイトや聖龍隊の英雄達は。
「……ん、んん。こ、此処は……あっ、そうだ! アッコが……! お、おいみんな起きろ!」
先に意識の戻ったミラーナイトは倒れている他の英雄達に声を掛けた。
「う……ど、どうしたんだ?」
「き、急に体の力が抜けたような……」
ナイトに呼び起され、意識を戻すメタルバードにジュピターキッド。そして続々と他の英雄達も目を覚まして起き上がる。
その時。
「助けてくれーー、助けてくれーー」
「ん? この声は……」
突然皆の耳に入って来る助けを求める声。獅子形態のケルベロスは耳を磨ぎ澄ませて声の場所を特定させようと試みた。
「あ、あっちや!」
ケルベロスは自身の顔の先の鼻の頭で声のした方角を示した。
「あ、あっちなのね、ケロちゃん。よし……レリース(封印解除)!」
さくらはカードの封印を解除してさくらカードの一枚であるフライ(翔)のカードで背中に翼を生やして飛び上がった。
「よ、よし。オレも行くか……」
まだ意識が朦朧(もうろう)としながらもメタルバードもさくらに続き飛び上がって声のする方向に向かって行った。
二人が飛行しながらデパートの周りを見て回るとデパート横に設置されている非常階段に修司とアッコ、そして親友のモコの姿を確認できた。
「し、修司!」「アッコさん!」
メタルバードにさくらはすぐさま座り込んでアッコとモコの頭を支える様に持っている修司に接近した。
この時修司は今にも泣き出しそうな、実に弱弱しい表情でメタルバードとさくらに言い迫った。
「メタルバード! さくら! 頼む、早く来てくれ!!」
「し、修司……」「修司さん……」
いつもとは確実に様子の違う修司に唖然としてしまう二人。
そんな二人に修司は続け様に涙目で叫ぶ。
「た、頼む……! アッコが、アッコが大変なんだよォ!!」
[互いの想い]
(…………こ、此処は……)
意識がハッキリとしない中、アッコの視界は白い靄(もや)の様な空間を捉えていた。
すると、その空間の中に一人の男の子がしゃがみ込んでいた。
男の子はまだ修司や自分はもちろん、さくらやりりか達より幼い子供。
男の子は一人その場にしゃがみ込み、涙をボロボロと流し続けていた。
(……ど、どうしたのボク? 何か辛い事でも有ったの?)
アッコはその男の子に話しかけようとするが、聞こえていないのか男の子は延々と泣き続けてばかりであった。
(どうしたの? 誰か一緒じゃないの? お父さんお母さんは居ないの?)
再度アッコが男の子に話しかけると、男の子はアッコに顔を向けた。
涙でボロボロになってしまっている男の子の顔を見たアッコは驚いた。
(え……こ、この子……)
その子の顔は涙で崩れてしまっているが、何処となく修司に似ていた。
(…………)
アッコがしばしその子の顔を見つめていると彼女の耳に男の子の泣き声とは別の声が、しかもアッコの名を呼ぶ声が聞こえて来た。
(アッコ……アッコ……)
何処か悲痛な思いが感じられるその声に呼び寄せられるように、アッコの意識は次第にハッキリしていった。それと同時に、目の前の泣きじゃくる男の子の姿も次第に消えて行った。
(アッコ……アッコ…………アッコ!)
自分を呼ぶ声は次第にハッキリとアッコ自身の耳に届くように成って行く。
そして彼女は、アッコは静かに目蓋を開いた。
「あ……アッコ!」『アッコ!』『アッコちゃん!』
「み……みんな……」
アッコが目を開けると自分の体はベットの上に寝ていた。
更に其処には親友のモコ、大将を始めとしたギョロにゴマ、チカ子やカン吉・ガンモ。更に自分の両親が涙目の顔でアッコを心配そうに見つめていた。
そしてアッコの顔や腕などの体の個所にはガーゼやテーピングなどの怪我の処置が見られた。
「アッコ……良かった……!」
「良かった……良かったぁ……!!」
娘が意識を取り戻した事で一気に安堵した両親は涙ぐみ、母は口を塞いで歓喜し、父は思わず腕で自分の涙を拭った。
「あ……アッコ!」
親友のアッコが目を覚ましてくれた事でモコは感極まり、思わずアッコに抱き付いた。
「み、みんな……此処は?」
アッコが体を起き上がらせて訊ねると、アッコの母が答えた。
「病院よ。アッコ、あなた一人でモコちゃんを助けにデパートに忍び込んで、それで非常階段のドアの前で倒れているのを修司君が見つけてくれたのよ」
「え? し、修司が……」
唖然となるアッコに、母に続いて父がアッコに告げた。
「そうだ。お前がモコちゃんを心配して単身火災に遭っているデパートに侵入して二人で倒れている所を、お前を追って駆け付けた小田原君が見つけて彼が急いで非常口のドアを抉じ開けて二人を外の階段まで出してくれたんだよ。其処に救助に駆けつけた聖龍隊が来てくれてアッコ達を見つけてくれたんだ。それから三人とも病院まで搬送されて……お前の方はずっと目を覚まさなかったから父さん不安で……ウウゥ」
再び涙ぐんでしまう父を見てアッコは少しばかり居た堪れない心境に陥った。
とその時。涙を流しながらモコがアッコに話しかけて来た。
「あ、アッコごめんね。私の為に、アッコを危険な目に遭わせちゃって……わ、私……」
悲しみと後悔に満ちた瞳から涙をボロボロと流すモコに、アッコは優しく微笑みながら言い返した。
「……良いのよモコ。私たち、友達じゃない」
「あ……アッコ……!」
アッコの言葉に感動するモコ。そんな時、アッコの母が皆に優しく話しかけた。
「……さぁ、みんな。アッコも無事に目を覚ました事だし、まだ休ませてあげましょう。まだ安静にしてなきゃいけないし」
母に言われた皆はこぞって部屋を出ようとしたが、アッコは咄嗟に母やみんなに告げた。
「あ、ママ、みんな」「ん? なにアッコ?」
母親や皆が振り返ると、アッコは皆に言った。
「……ちょっと、モコと話したい事が有るから、しばらく二人っきりにしてくれる? モコ、少し良いかな?」
アッコは静かにモコを見つめた。
「アッコ……分かった。ごめん小母さん、少しアッコと話しても良いですか?」
モコに訊ねられた母親は笑顔で返事した。
「え……えぇ、構わないわ。それじゃ、私達は先に帰っているわね」
そう言い残し、母親を始め父や親友達はモコを残して部屋を出た。
二人きりになったアッコとモコは、互いに神妙な顔付きで見つめ合った。
そして封を切る様に、最初に口を開いたのはモコの方であった。
「……あ、アッコ。あの……」
しかし話そうとしても、何から話せばいいのか解らず口を躊躇させてしまうモコ。
そんなモコにアッコは優しく、そして微笑みを浮かべながら話しかけた。
「……ふ、良いのよモコ、何も言わなくて」
「あ、アッコ……」
「……ごめんねモコ」「!? な、なに急に……」
急に謝り出すアッコの言動にモコは驚き動揺した。
更にアッコはモコに対し微笑みながらも目に涙を浮かべて話し出す。
「ごめんね本当に……モコ、驚いちゃったでしょ? 私のもう一つの顔知って……それなのに私、モコの事叩いちゃったりして……友達のモコに手を上げるなんて……」
「あ、アッコ……」
「……モコの言うとおり。私はミラーガールに成る前からモコやみんなを騙していた。……モコに嫌われても仕方がないのに、それなのに手を上げてしまうなんて……サイテーーよね、私は」
「! そ、そんな事無いわ! そ、それに……それに、謝んなきゃいけないのは私よ……」
「……え?」
するとモコは涙を流しながらアッコに語り出した。
「……私ね、実は……前々からアッコと修司の仲にちょっと……いえ、凄く妬いていて……それで遂、修司や聖龍隊の事……」
「え……」
「私! 辛かったの……! いつも一緒に居てくれる……一緒に居てくれてたアッコが離れて行くのが! アッコ、いつも修司の事ばかり気に掛けていたから……わ、私、何だか修司にアッコを、大事な親友を盗られたような。……そんな気持ちで、いつも一杯だった」
「も、モコ……!」モコの告白に驚いてしまうアッコ。
更に続けてモコは涙ながらにアッコに打ち明ける。
「アッコ……いつも修司の事ばかり気にして、私の事は放っておく様になっちゃって……私、辛かった、寂しかった……いつも隣に居てくれてたアッコが隣に居なくなって、逆に修司の隣に居るようになっちゃって……私、修司にアッコとの友情を奪われたみたいに感じていたの……。それで遂、修司や彼が組織しているって言う聖龍隊の事を、アッコへの鬱憤(うっぷん)と一緒に吐き出す様に悪く言っちゃって……」
「も、モコ……!」
「アッコ……ホントにゴメン! アッコや修司、聖龍隊のみんなの事を得体の知れないなんて言ってしまって……! サイテーーなのは私の方よ……アッコの事だけじゃない。アッコの信じる、愛している人達までも悪く言ってしまって……サイテーーな女よ、私は……」
アッコは驚愕した。親友のモコが修司の事をそんな風に思っていたなんて。そして自分との友情が修司に奪われてしまうと思い込んでいた事実に、アッコは衝撃を受けた。
そしてアッコは涙を流して謝罪と自身の本音を口にするモコに対し、慈愛に満ちた優しい微笑みで囁きかけた。
「……モコ、もう泣かないで」
「ウ……あ、アッコ……」
そう云うと同時にアッコはベットの上に置かれているモコの手の甲にそっと自分の手を差し置いて、更に優しく語りかけた。
「モコ、もう良いのよ。私もモコの気持ちに気付いてあげられなかったんだし、お互い様よ。でもねモコ、そんなに心配しなくても良かったのよ。どんな事が有ろうと私たちの友情に変わりはない筈よ。そう、例え私が修司を心から慕っていようと、私がどんな存在にも変身できようと……私とモコの友情には変わりないわ。だからねモコ、そんなに不安に感じなくても良いわ、安心して。どんな事になろうとも、私とモコはずっと、掛け替えのない親友よ」
「あ、アッコ……!」
アッコの言葉に感極まり表情を固めてしまうモコ。アッコは笑顔でモコに訊ねた。
「モコ。私たち、これからもずっと友達よ。……それとも、ひみつを持ってる私とは、もう友達には成れないかな?」
アッコの発言にモコは驚き動揺しながらも、しっかりと受け答えた。
「あ、アッコ……あ、当り前よ! アッコは、アッコはずっとずっと……私の大切な親友よ!」
「モコ……うっ」
モコの答えにアッコも思わず涙を流し出してしまった。
そして二人の少女は互いの友情を再確認し、再び仲を取り戻した。
少女達は互いのおでこを接触させながら、双方の泣き顔を向け合った。
そして少女達は誰もいない病室で二人っきりで涙を涸れるまで流し続けたという。
[聖女と二次元界]
アッコとモコが病室で二人きりで話をしている、その時。
修司は顔や腕にテープなどの傷の処置をしている状態で一人、アッコの病室前に立っていた。そしてアッコとモコの会話を黙って聞き入れていた。
そんな修司に、彼の後ろから一人の男性が歩み寄って来た。
「……修司」
「ん……ああ、加納か。済まないな、わざわざ呼び出したりして……でも別にお前の能力は必要無くなっちまったみたいだ」
「……そうだね。僕も二人の会話を聞いていたけど、アッコちゃんは良い友達が側に居てくれてたみたいだね。僕の出番は無かったけど、記憶を消すよりは結果的に良かった」
実は、修司はモコが一人きりになった時に加納の【記憶を消す能力】でモコが見てしまったアッコの変身シーンを彼女の記憶から消そうと、遠路遥々クイーン・アースから加納望を呼び寄せていた。
「だけど良かったよ。アッコちゃんが無事で。……何より友達のモコちゃんとの仲も戻ってくれたし万々歳じゃないか。なぁ修司」
「……そうだな。一応は良かったよ、本当に」
そう加納に告げると、修司はそそくさとその場から立ち去ろうとした。
「ちょ、ちょっと修司。アッコちゃんに何か言わなくても良いのかい?」
立ち去ろうとする修司に加納が告げると、修司は無表情で振り返り平然と加納に言い返した。
「別に……アッコは今モコと話しているし、折角の女友達同士の会話だ。男のいや、第三者の俺がノコノコと病室に入っちまったら悪いだろ? しばらく二人っきりで話させてやろうぜ」
そう言い残し修司はその場から去って行ってしまった。
と、修司が病院内を歩いていると、彼にあのキーオが話しかけて来た。
「修司……」
「……キーオか。大丈夫だ、アッコはもちろん、モコもアッコの事を理解してくれたよ」
神妙な顔つきで話しかけてくるキーオに対し、修司も神妙な顔つきで言い返した。
キーオは更に修司に神妙な顔つきで話し出した。
「……修司、お前は聞いたか? さっきアッコがデパートの中で倒れている時に、セーラー戦士を始めとした聖龍隊の連中が次々に倒れてしまった事を……。それに、他の聖龍隊の連中は気付いてないが俺はハッキリとこの目で見た。…………俺やみんなの体が透けて行くのを……」
「…………」キーオの話を修司は黙って聞いた。
「……それにな修司。実はさっきラジオで耳にした情報何だが、あのデパートでサイン会を開いていた、あのスリーライツの三人もデパートが火災に遭って避難した後に急に倒れてしまったとラジオで云ってた。そう、恐らくはアッコが倒れたのと同時刻だろう。最早アッコの存在に対する影響は二次元界全体に広がっている」
「……うむ」
「……修司、俺は最早お前には何も言わない。だけど良く覚えて置いてくれ。お前のこの世界での責任、そして行おうとしている事の重要さを……。そして何より……あの聖女、加賀美あつこの二次元界での存在の大きさを」
そう修司に言うと、キーオは彼の前から立ち去った。
三次元人、小田原修司はキーオの発言に対し何を思ったか。
そして彼が護ろうとしている二次元人達と加賀美あつこにはどんな関係が有るのか。
物語は激動の一途を辿って行く事となる。