【聖龍伝説:第二章】英雄達の日々   作:セイントドラゴン・レジェンド

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 今回は遂に大作直前のストーリー! 二つの犯罪組織が動き出す!


動き出す闇

[天狗と豹の標的]

 

 ある日の事、修司の自室には一人の女性が来ていた。修司はその女性と互いに神妙な面持ちで向き合い、話し合った。

 と、その時。部屋の室内電話が鳴り響き、修司は受話器を取る。

「おう、俺だ。どうした?」

「あ、修司様。イサミさん達が御出でになりました」

「そうか、俺の部屋に来させろ」

「はい」

 電話先のウッズにそう言って、修司は受話器を置いた。

「うふ、かなり総長としての威厳が身に付いて来たわね」

「……まぁな」

 目の前に座る女性が微笑みながら修司に話しかけると、修司は口元を微かに笑わせて言葉を返した。

 そして修司と女性が居る、修司の自室に四人の男女がやって来た。

「こんにちわ、修司さん今日は何ですか?」

 最初に部屋に入り、修司に元気よく声を掛けたのは花丘イサミであった。

「オッス」「こんにちは」「こんにちはーーッ」

 イサミに続き月影トシ、雪見ソウシ、そして最後にはトシの弟の月影ケイが入室してきた。

「おう、お前達。丁度良い所に」

「修司さん、今日は何の用ですか? ……お客さんが居るみたいですが」

 修司に呼ばれてやって来たイサミ達の前には椅子に座った背中越しの女性が一人いた。

「ん? その人……」「あ、あれ? 何処かで……」「……?」

 背中越しで有ったがイサミ達はその女性の後ろ姿に微かな見覚えを感じていた。修司はそんな四人に告げる。

「まぁ、もう隠す事も無いだろうし……何より、今の黒天狗党や豹の爪(パンサークロー)に関する情報を持って来てくれたんだ。本人も、もうお前達に打ち明けても良いと思っているしな」

 修司がそう言うと、イサミ達に背を向けていた女性は姿勢を反転させ、イサミ達に顔を見せた。

「! あ!」「な、なんで……!」「何で、此処に……!?」

 イサミ・ソウシ・トシはその女性の顔を見て仰天した。何故ならその女性は三人ととても面識のある女性で有ったからだ。三人は驚き女性の名を同時に叫んだ。

『は……はるか先生!!』

「ふふ、どうも。イサミちゃん、トシ君、そしてソウシ君にケイちゃん」

 名を呼ばれた女性は笑顔でイサミ達に手を振って返事をした。

 修司と話をしていた女性の名は高木はるか、イサミ達の通う大江戸小学校の教師でイサミ達のクラスの担任だ。

「ど、どうして先生が、此処に……?」

 なにゆえ自分達の教師が町の市長である修司の自室に居るのか訳が分からず、軽く混乱してしまうイサミ達は目を丸くしながら高木はるかに訊ねた。すると彼女は笑顔でイサミ達に話し出す。

「ゴメンなさい、イサミちゃん。私達はどうしてもアナタ達に伝えたい事が有るわけで、それで今日こそはあなた達に全てを伝えようと思って此処に来た訳なの」

「そ、それってどういう……」

 話の見えない状況に陥るイサミに、修司が神妙な面持ちで口を開いた。

「実はなイサミ。この高木はるかは以前より、俺たち聖龍隊とは協力関係に有ったんだよ。何より俺がはるかと接触する前から彼女はお前達がしんせん組を名乗って黒天狗党と戦っているのを知っていたんだよ」

『え!!?』

 今まで誰にも気づかれずに、しんせん組として活動できていると思っていたイサミ達は驚愕した。そんな動揺するイサミ達に修司は告げた。

「まぁ驚くな。彼女達、瑠美乃一族は今まで陰ながら俺達をサポートして来てくれていたんだ。そして今回は、何やら黒天狗党内の動きが活発化して来たらしく、それで色々と調べてきた事を俺等に伝えに来てくれたって訳だよ」

「る、るみの一族?」

 聞き慣れないフレーズを聞いたイサミ達は更に困惑した。

「あぁ、そうだな。まずは順を追って説明するとな、実はこの高木はるかは……」

 修司はイサミ達に彼女の経緯と素性を打ち明ける。

 

 高木はるか、彼女は普段イサミ達の担任で有る学校教師をしているが、その実態は古くから人の想いを増幅させる鉱物ルミノタイトを悪しき者から護る為、江戸時代から明治初期まで黒天狗党と戦い続けてきた忍の一族であり、大江戸町に教師として赴任してきたのも黒天狗党からルミノタイトを護るためであるという事を。更に今まで陰ながらイサミ達新撰組を始め、聖龍隊の補助をしていたのだという事を。

 修司に続いて高木はるか本人もイサミ達に語り始めた。自分がイサミ達を護る為、彼女達を襲おうとする黒天狗党と真っ向から戦っていた事を。そして修業時代には同じく修行を共にしていたイサミの父、花丘魁(はなおかかい)博士と面識が有り、はるかは魁博士の事を親しみを込めて兄と慕っていた事を。

 そして実は黒天狗党の面々は全て芹沢ジャパンの重役たちばかりで、それらを取り仕切っている芹沢ジャパンの会長、芹沢鴨之丞(せりざわかものすけ)こそが黒天狗党本人であると告げたのだ。

 

「そ、そんな……芹沢の御爺様が……」

 自分達と親しくしている鴨之丞が、自分達と対峙している黒天狗本人であると知り愕然となるイサミ。しかし悲痛な心境のイサミ達に修司は容赦なく語る。

「それだけじゃない。実はお前達の通っている学校の教頭やOBの大半が黒天狗党の党員である事が判明した」

「え!」「き、教頭先生まで、黒天狗の一員?」

 告げられたトシにソウシは仰天し、修司は続けて話す。

「ああ、実は警察の方でも豹の爪の指示で動いていた黒天狗党員であるカラス天狗達を捕らえて調べているんだが、これが全員大江戸小学校の卒業生だったんだよなぁ」

 そして驚き続けるイサミ達に修司とはるかは神妙な面持ちで語り出した。

「そ、それにねイサミちゃん……落ち着いて聞いてね」

「……え?」

「実はなイサミ、お前の父親の、そう花丘魁の所在が判明したんだが……」

「え! ぱ、パパの居場所が解ったの!? 何処に居るの、パパは?」

 行方知らずの父親の所在が判明した事実に驚き動揺するイサミは修司に問い質す。

「お、落ち着いてイサミちゃん。実はその事以外でもあなた達に伝えたい事が有るの。今は気持ちを落ち着かせて、ね」

 はるかは動揺するイサミを宥めさせた。

 そんなイサミに修司は平然と告げる。

「今、お前の父親が居るのは……芹沢ジャパン、その本社の地下深くに有る研究施設。そして傍らで博士に研究をさせているのは……豹の爪(パンサークロー)の連中だ」

「! そ、そんな……! それじゃ、パパは今、奴等に……」

「ああ、囚われの身だ。何とか救出したいが、迂闊に手を出せば豹の爪の事だ、魁博士に何をするか解ったもんじゃない」

「…………」

 父親の身に危険が迫る、そう考えただけでイサミは恐怖で顔が引き攣っていた。其処に高木はるかが焦った口振りで言い放つ。

「そ、それだけじゃないの! 実は今、黒天狗党は躍起になってルミノタイトの鉱石を探しているんだけど、アイツ等遂に見つけてしまったみたいなの!」

「な、なに!? はるか、その鉱石は今何処に!?」

 驚いた修司ははるかに訊ねると彼女は思い詰めた顔立ちで答えた。

「そ、それがね……アニメタウン郊外だってのは天狗党は既に知り得たみたいだけど、詳しい場所までは把握してないわ。今のところはね」

「そ、そうか……ん? (待てよ、確か原作では、鉱石は大江戸町に有る筈なんだが……)」

 はるかの話を聞いた修司はふと気付いた。本来の話、その筋書きでは巨大なルミノタイトの鉱石は大江戸町の地下深くに有る筈であったのだが、何ゆえ郊外なのか不思議に想った。

 

 と、その時。高木はるかの携帯が鳴り響いた。

「あ、電話だわ」

 はるかはポケットから携帯を取り出し電話に出た。

「はいもしもし、高木はるかですが……あ、アナタ達! それでどう? 天狗党と豹の爪の動きは掴めた? …………え? わ、解ったわ。折入ってまた連絡するわね、それじゃ」

 はるかは通話を切り修司達の方に目を向けた。

「どうしたはるか。誰からだったんだ?」

 訊いてみると、はるかは真剣な顔つきで修司達に答えた。

「はい、今二つの組織、天狗党と豹の爪の内部調査をしていた仲間の忍から連絡が来たんだけど、奴等がルミノタイトの詳しい位置を見出したらしいわ!」

「そ、それは何処なんだ!」「そ、それが……」

 修司が慌てた口調で訊ねると、高木はるかは深刻そうな面構えで述べた。

 

 

『……な、なにーーッ!?』

 高木はるかからルミノタイトの場所を聞いた修司とイサミ達は仰天した。

「ほ、本当なのかよ、はるか……」

 動揺しながらも、はるかに訊き返す修司に彼女は思い詰めた表情で言葉を返す。

「そうよ。巨大なルミノタイトの埋まった地点は………………聖チャペル学園の真下よ!」

 

 

 

 

[友情に揺らぐ二人の乙女]

 

 その日の夕暮。修司達は高木はるかから黒天狗党と豹の爪が一気に聖チャペル学園に攻め込み、地下に埋まるルミノタイトの回収と対峙するハニー姉妹の抹殺を同時に行おうと目論んでいるとの事だった。

 

 修司は聖龍使いになって急ぎ聖チャペル学園へと向かった。

 と、その道中。

「……む、あの女子(おなご)は……やヤッ! ハニーではないか!」

 日も静まりかけ、辺りが暗くなり始めていた時、眼前に如月ハニーの姿を捉えた。聖龍使いは駆け足でハニーに駆け寄り声を掛けた。

「ハニー、どうしたのじゃ!」「え? せ、聖龍使い!」

 声を掛けられたハニーは聖龍使いに気付き、悲痛な顔を向ける。

「どうしたのじゃ、こんな所に一人で……」

「聖龍使い、それが……夏子が何処か行ってしまって……」

「なつこ……ああ、主の親友である秋夏子(あきなつこ)であるか。しかし何故(なにゆえ)こんな時間に……確か学園の規則で、既に門限の刻なのでは……」

 聖龍使いの問いに、ハニーは悲痛な表情で語り出した。

「実は聖龍使い、私……夏子に自分がキューティーハニーだって、話してしまったの」

「!! な、何故(なにゆえ)!?」

「……実はさっき、貴方からの招集で学園から抜け出そうとした時に夏子に見つかって……彼女はまた私が勝手に学園を抜け出す事を強く咎めたモンだから、私つい夏子に自分がキューティーハニーに変身して豹の爪(パンサークロー)や色んな魔獣と今まで戦ってきた事を話してしまって。それで夏子、ショックで学園を抜け出してしまったの……」

「……そうであったか」

 悲痛な面持ちで語るハニーの話を聖龍使いはジッと聞き入れた。

「私、どうしたら……このまま、夏子との仲が悪くなったら……夏子との距離が離れてしまったら、どうしよう……」

 この時聖龍使いは、目の前で自身の悲痛な想いを語るハニーに、かつてのミラーガールこと加賀美あつこの姿を反映していた。

 自分の親友である浪花モコに正体を、自身の秘密を知られてしまい、そのたった一つの出来事で今まで築かれていた間柄と絆が崩壊し、仲違いしてしまう現状に聖龍使いである修司は英雄の持っている宿命と人との繋がりの脆さを改めて知ったのだった。

 英雄は常に自分の素性を敵はもちろん家族や親友にも知られない様に戦い続けている。それ故に互いの関係にヒビが入り双方の仲が悪化してしまう現実が有る。聖龍使いは……小田原修司はその現実を再び目の当たりにしたのだ。

 

 そんな心境の仲、聖龍使いは悲痛な想いに駆られる眼前の如月ハニーに、静かに語りかけた。

「……大丈夫じゃよ、ハニー」「……え?」

 聖龍使いの言葉に軽く驚いてしまうハニー。聖龍使いはそんなハニーの顔を見詰めながら優しく語った。

「大丈夫じゃよ。主と夏子殿の仲はそんな簡単に壊れるほど、脆い訳は無いじゃろが。大丈夫、きっと夏子殿も解ってくれる筈じゃよ」

「せ、聖龍使い……」

 優しくも、力強い口調で自分を励ましてくれる聖龍使いの言葉に、ハニーは心の中で言い知れぬ感動を覚えていた。

「聖龍使い、でも……」

 それでもまだ心細い心境のハニーに、聖龍使いは更に言い放った。

「安心せい、何なら拙者も後で夏子殿に話をしてみるわい。きっと夏子殿も事情を知ればワシ等の事を理解してくれるじゃろうて」

「聖龍使い……!」

 心に響く力強い聖龍使いの言動に、ハニーは次第に力強い想いが心の底から湧きあがってきた。

「……まぁ、夏子殿の事は今は置いといて、拙者等は一刻も早く豹の爪と黒天狗党の行いを阻止せねば」

「……そうね。今はジッとして何かいられないわね。早く向かいましょう」

「うむ」

 ハニーは悲痛な面持ちから一変、意を決したような力強い眼差しを放つ表情で聖龍使いに返事した。

 

「……ところでハニーよ、実を言うと……夏子殿が学園を離れているのは、返って好都合かもしれん」

「え!? な、なんで……?」

 突然の聖龍使いの発言に驚くハニーに、聖龍使いは重たい口調で告げた。

「実を言うとな、豹の爪と黒天狗党の攻撃目標は…………主と夏子殿の滞在する学園なのじゃ」

「……えぇ!?」

 

 

 

 ところ変わって、此処は聖チャペル学園から少し離れたとある公園。

 加賀美あつこことミラーガールは公園を抜けて学園に向かおうとしていた。

「い、急がなきゃ! 学園が危ない……!」

 以前にも足を運ばせた事が有る、ハニーと聖羅の滞在する学園が狙われていると知ったミラーガールは急ぎ学園に向かっていた。

 その時、公園内を駆け抜けている際、彼女の目に一人の女性の姿が入った。

「ん? あれは……あ、夏子さんだ」

 それは以前、聖チャペルの学園祭でハニー共々自分を歓迎してくれた事のある如月ハニーの親友、秋夏子だった。

 夏子は首に愛用のカメラを掛けた状態で、公園のブランコに一人悲痛な面持ちで座っていた。

「ど、どうしたんだろう……」

 悲しげな表情を浮かべ塞ぎ込んでいる夏子を見たミラーガールは彼女に気が行ってしまい、思わず声を掛けてしまった。

「あ、あの……」「え……あ、貴女は……!」

 声を掛けられた夏子は顔を振り向き、ミラーガールと顔を合わせた。

「ど、どうしましたか? こんな所で、一人で……」

 ミラーガールは以前にも加賀美あつことして顔を合わせているものの、今の自分はミラーガールで有る為わざと初見で有るかのように振る舞った。

そんなミラーガールに夏子は少し動揺しながら険しい顔付きで言葉を返した。

「ミラーガール……貴女……!」

「え……! ど、どうしたんですか……?」

 普段とは違う様子の夏子に一瞬怯みながらもミラーガールは夏子に訊ねた。すると彼女はミラーガールを睨みつけていた目線を下に向け、気落ちした様子でミラーガールに言葉を返す。

「……ごめんなさい、つい」

「ど、どうしたんですか? 一体……」

 悲痛な面持ちに表情を戻した夏子にミラーガールは訊いてみると彼女は重苦しい口調でミラーガールと話し出した。

「……貴女、ミラーガールよね。どうしてこんな所に?」

「え? え、えぇっと……ちょ、ちょっと急な任務で……あ、貴女はどうして此処に? どうされたんですか……?」

「……貴女、キューティーハニーの事、知っているわよね」

「え!? は、はい。一応は、同じ聖龍隊ですし……」

「……そうよね」

 突然黙り込んでしまう夏子に、ミラーガールは問い掛ける。

「どうしたんです? そんなに暗くなって……何か有りましたか?」

 すると夏子は意を決したように、ミラーガールに告げた。

「……さっき、親友から聞いたんだけどね……その親友が貴女と同じ聖龍隊の一人、キューティーハニーだって告げられたの」

「え! は、ハニーさんが自分から?」

「……やっぱり、その様子だと貴女は既に知っていたようね。如月ハニーがキューティーハニーだって」

「あ! あ……」

 驚くミラーガールの言動を見た夏子はミラーガールがキューティーハニーと如月ハニーが同一人物である事を既に知っていた事実に気付いた。

 そして気付かれてしまったミラーガールは困惑しながらも夏子に再度訊ねてみた。

「え、えぇっと……ハニーさんが自分から貴女に告白したんですか?」 

 訊き返された夏子は重い口振りで答える。

「実は……親友である彼女が、黙って学園を抜け出そうとしたから私注意したのよ。彼女、ハニーはいつも黙って学園を抜け出しては先生達に叱られて……私は彼女の為に注意してあげたんだけど、その時彼女の口から自分はキューティーハニーだって打ち明けられて……それで……」

「そ、そうだったんですか……」

 思い詰める様子で語る夏子に、ミラーガールは居た堪れない心境になった。

 ミラーガール自身も、以前親友の浪花モコに自分の正体を知られてしまい、それ故にモコとの仲が悪化してしまった経緯が有った為、目の前の秋夏子の状況を他人事の様には思えなかったのだ。

 そう今の夏子は、親友の秘密を知ってしまい酷く動揺し困惑している、かつての自分の親友、浪花モコと同じ状態だった。

 そしてミラーガールは塞ぎ込んでいる秋夏子に意を決して問いかけた。

「……それで。貴女はどう思うんですか?」

「……え?」

「貴女は、どう思うんですか? 今まで仲良くしていた親友が自分にウソをつき続けていた事実にどう思い、どう感じますか?」

「…………」

 ミラーガールの問い掛けに黙り込んでしまう夏子に、更にミラーガールは問い質した。

「……そんなに信用できないんですか? いえ、信用できなくなったんですか? 貴女の大事なお友達の事を、如月ハニーさんの事を……」

「そ、それは……!」

 困惑する秋夏子に拍車を掛けるかの如く、ミラーガールは言い放った。

「ハニーさんはハニーさん。ただ時おり、愛の戦士に変身して戦うだけで、後は貴女の大切な親友である如月ハニーさんには違いないですよ」

「み、ミラーガール……」

「な、夏子さんはハニーさんの事、信用できなくなったんですか? 仲の良い、お友達だったのに……」

 悲痛な声で問い掛けるミラーガールの言葉に対し、夏子は顔色を一変させて返事した。

「そ、そんな事無い! ハニーは、彼女は私の大切な親友よ! た、例え……例え、彼女が普通の人では無いキューティーハニーで有ろうと、大事な親友には変わりないわ!!」

 この夏子の言葉を聞いたミラーガールは表情を一変させ、安堵の色を見せた。

「……良かった。私は、貴女のその言葉が聞きたかった」

「! ミラーガール……」

 夏子が目を向けると、ミラーガールは安堵の表情そして慈愛に満ちた鏡の様な瞳で夏子を見詰めながら語り続けた。

「最初は、誰だって困惑しちゃいますよね。自分の親友が英雄に変身できる人だって事を……でも、それでも変わらない心を、友達を想う心まで変わってくれなくて、ほんと良かったです」

「ミラーガール、貴女……」

 そしてミラーガールは夏子に向かって満面の笑みを放ちながら述べた。

「ハニーさんは幸せですね。こんなに素敵な友達が居てくれて。フフ」

 優しい言葉遣いで語り、そして微笑むミラーガールの言葉を聞き、夏子は意を決した。

「ミラーガール…………そうよ、そうだわ! ハニーが単にキューティーハニーだっただけじゃない! 別に悲観する必要なんて無かったのよ! ありがとうミラーガール、私つい驚き過ぎて大事な事忘れてたわ。貴女の御蔭で思い出せた!」

「夏子さん……! それじゃ、また何時もと変わらずハニーさんと仲良くしてくれますか?」

「もちろんよ! ハニーが誰であれ、私の無二の親友には変わりないわ」

 夏子の発した無二の親友という言葉に、ミラーガールは人知れず感極まっていた。それは自分の秘密を知ってしまっても尚自分と向き合ってくれる浪花モコも同じく無二の親友であったからだ。

 

 そして秋夏子は決心したかの如く立ち上がると、すぐさま駆け出した。

「あ、夏子さん」

 ミラーガールが呼びかけると夏子は笑顔でミラーガールに言い残した。

「ありがとうミラーガール! 私、学園に戻ってハニーに一言言ってくる。例え貴女が何者であろうと親友には違いないって! ありがとう!」

 だが夏子のこの発言を聞いたミラーガールは動揺した。

「えっ……ちょ、ちょっと待って。確か修司の話だと豹の爪(パンサークロー)や黒天狗党が狙っているのは聖チャペル学園の筈……あ、待って! 夏子さん」

 しかし夏子は既に学園に足を急がせ、姿が見えなくなっていた。

「た、大変! 早く追わなきゃ……! あのまま学園に行ったら夏子さんが危ない!」

 学園に先走る秋夏子を追って、ミラーガールも急ぎ聖チャペル学園に足を急がせた。

 

 

 

 

[護れ! 命を]

 

 その頃、聖龍使いは道中で合流した如月ハニーと共に聖チャペル学園に到着していた。

 しかし時すでに遅く、学園内には大勢の豹の爪の手下が居り、如月ハニーはキューティーハニーに変身して聖龍使いと共に多勢の手下達と交戦した。

 

「くッ……此処まで連中が学園に入り込んでいたとは……!」

 敵陣の渦中に飛び込んだ聖龍使いは、聖龍剣で斬り込んでいたのだが多勢に無勢の状況に少し困惑していた。

「み、みんな……大丈夫かしら?」

 キューティーハニーは、こんな状況下で学園の皆が無事でいるのか不安で一杯であった。

「テメエ等ッ! 今日こそ聖龍使いとキューティーハニーをブチノめせッ!!」

 戦闘員である男達に指示を促すリーダー格の男が告げると、敵勢は一気に二人に向かってマシンガンを連射した。

「させん! ていやッ」

 聖龍使いは刀を一振りすると強力な斬撃が男達に向かっていく。

「ぐはっ」「ぎゃっ!」

 斬撃を喰らった男達は断末魔を叫び、そして倒れると泡となって消滅した。

 しかし手下達は次々に湧いて来て、再び聖龍使いとキューティーハニーを取り囲んだ。

「うっ、キリが無いわね」「う、うむ……」

 悪戦苦闘の真っ只中、聖龍使いとキューティーハニーは自分等を取り囲む豹の爪と睨み合いをしていた、その時。

「プラント・クラッシャー!」「水手裏剣!」

「ぐわあ!」「ぎゃあぁ!」

 突如、巨大な植物が地を這う様に出現し、更に直径三十センチ程の手裏剣状の水が二枚、それぞれ後方から迫り男達に直撃した。

 巨大な草は男達を呑み込むように攻撃し、手裏剣は水でできているとは思えないほどの切れ味で男達を斬りつけて行った。

「い、今のは……!?」「むむ……ッ!」

 突然豹の爪(パンサークロー)の男達を攻撃した技を放った人物達の方に目を向けるハニーと聖龍使い。すると其処には二人が見慣れている二人が直立していた。

「いやぁ、遅れてゴメン」

「す、済みません。まだ戦うのに躊躇ってしまって……」

 その二人を見て聖龍使いとキューティーハニーは、その二人の名を叫んだ。

「キッド!」「あ、アプリコットちゃん!」

 目の前に立っていたのはジュピターキッドと、以前より能力が覚醒して正真正銘の妖精の如く背中に虹色の羽が生えた容姿に変化したアプリコットの姿であった。

 だがその時、聖龍使いがアプリコットの名を口にしたキューティーハニーに横から告げた。

「おっと、キューティーハニーよ。今の彼女の名はアプリコットでは無い。ワシが直々に考えた名で【ウォーター・フェアリー】と今の妖精の姿では通っている」

「え? うぉ、ウォーター・フェアリー?」 

「そうじゃ水の妖精という意味じゃよ。元から水を司っている妖精の王女であるアプリコットには御似合いじゃろ」

「ま、まぁ……(ま、まんまじゃん……)」

 内心思わず呆れてしまうキューティーハニーであった。

 

 しかし、この時建物の陰から聖龍隊の戦闘を覗き見ていた人物が一人いた。

「……こ、これって」

 それは先ほど、ミラーガールの言葉に後押しされて学園に戻って来ていた秋夏子本人だった。

 夏子は親友である如月ハニーことキューティーハニーに一言自分の想いを伝えようと機会を見ていたのだが、聖龍使いとの激しい豹の爪との共闘に加え、戦闘に加わったジュピターキッドに初見で有るウォーターフェアリーを目の当りにして、すっかり動転して声を掛ける機会を逃していた。

 と、その時。

「おい! お前は誰だ!?」「え!? た、大変……!」

 突然、夏子の背後から声が聞こえ、振り返ってみると其処には豹の爪の手下が一人、夏子を睨みつけていた。手下と目が合った夏子は慌てて走り出し、その場から逃走した。

「ムッ、今のは……!」

 その際の夏子の慌てた口調を聞き取った聖龍使いはスグに駆けだした。

「あ、聖龍使い!」「ど、何処に?」

 駆け出す聖龍使いに声を掛けるキューティーハニーとウォーターフェアリー。

 聖龍使いは二人の声に反応する事無く、そのまま駆け出して行ってしまった。

「い、一体……」

 キッドが呆然としているその時、別方向から声がした。

「み、みんなーーッ」「え?」「あ、アッコさん!」

 キューティーハニーとフェアリーが声のした方に目を向けるとミラーガールが走って来ていた。

 ミラーガールは少し息を切らしながらもハニー達に訊ねた。

「は、はぁ……い、今此処に、夏子さん来ませんでしたか?」

「え、夏子? ミラーガール、夏子が学園に戻って来ているの?」

 ハニーに訊き返され、ミラーガールは答えた。

「は、はい。さっき此処に来る途中に会ったんですけど、夏子さん、ハニーさんに話したいって言ってそのまま学園に行っちゃって……」

「た、大変! 豹の爪が学園内に大勢いるのに、夏子一人だけにしていたら危ないわ!」

 ミラーガールの発言を聞いて急に慌てるハニーに、キッドが告げた。

「と、とにかく今は聖龍使いの後を追ってこの事を伝えよう。夏子さんだって下手に動き回る事は無いだろうし」

「そ、そうね。まずは聖龍使いの指示を聞いてから行動しましょう」

 キッドに続き、フェアリーも口を開くとキューティーハニーが皆に言った。

「まず聖龍使いと合流して、それから夏子を捜索しましょう」「ええ!」

 ハニーの発言にミラーガールは元気よく返事すると、皆すぐに駆け足で聖龍使いを追って行った。

 

 

 

 そしてその頃、豹の爪の手下に見つかって逃げていた夏子は息を切らして壁に手を当てて立ち止まっていた。

「はぁ、はぁ……何とか逃げ切れたかしら?」

 息を切らしながらも、先ほど目の合った手下が自分に追いついて来てないか辺りを見回す夏子。

 だがその時。「見つけたぞッ!」「え? きゃっ」夏子の眼前には先ほどの手下が呼び寄せた大勢の男達が夏子を取り囲んでいた。

「へっへ、もう逃げられねえぞ」「!! ……」

 手下達はマシンガンを構え銃口を夏子に向ける。当の夏子本人は驚きの余り身動きが取れずにいた。

(も、もうダメだ……!)

 追い詰められた夏子は、半ば諦めかけていたその時。

「地裂斬!!」『うわあぁ!』

 掛け声と共に地面を這う様に斬撃がマシンガンを構える男達を襲った。

「え? 今のは……!?」

 突然の事態で困惑する夏子、すると彼女の目の前に聖龍使いが姿を現した。

「夏子殿、大丈夫でござるか!?」「せ! 聖龍使い……!」

 目の前に現れた聖龍使いに驚く夏子、すると今度は聖龍使いに続いてミラーガール、キューティーハニー、ジュピターキッド、ウォーターフェアリーが駆け付けて来た。

「な、夏子さん! 大丈夫ですかッ?」「み、ミラーガール……」

「夏子!」「ちょッ!? は、ハニー??」

 ハニーは思い余って夏子に飛び掛かる様に抱き付いた。そしてハニーは困惑する夏子に震える声で告げる。

「……良かった。夏子が無事でいてくれて……!」

「! は、ハニー……!!」

 先ほどハニーの口から事実を聞かされた事で思わず彼女の前から逃げる様に走り去ってしまった自分に、ハニーは心の底から心配してくれていた事に夏子は歓喜した。

「夏子さん」「だ、大丈夫ですか?」

 キッドとフェアリーも夏子に声を掛ける。すると皆に聖龍使いが告げた。

「お主等! 今は目の前の敵を倒す事に専念せいッ! ともかくミラーガールは秋夏子を連れてこの場から離れるのじゃ!!」

「わ、解った……」

 聖龍使いに怒鳴られ身を縮ませる皆、そして小さく返事するミラーガールは夏子を連れて行こうとする。

「さ、夏子さん。此処は危ないから早く」「え。で、でもハニーが……」

 困惑している夏子に、ハニーが優しく話しかけた。

「夏子。今はお互い色々と話したい事は有るけど、貴女は一先ず此処から離れて。私、貴女に何か遭ったら不安で」

「ハニー……解った。でもハニーも気を付けてね」「ええ、ありがとう」

 そして夏子はハニーに告げるとミラーガール共々、其処から離れようとした。

 だが「おい女! 逃がさねえぞッ」その場を離れようとするミラーガールと夏子の眼前に別の手勢が飛び出てきた。

「きゃっ」「あぁ!」

 男達に行く手を阻まれた夏子とミラーガールが唖然としているその時、二人を見兼ねたキューティーハニーが咄嗟に二人と手下達の間に飛び込んだ。

「あ!」「きゅ、キューティーハニー!」

 突然のキューティーハニーの行動に驚くキッドとフェアリー。 

「は、ハニーさん!」「ハニー!!」

 そして手下達と自分達の間に入って来たハニーに同じく驚くミラーガールと夏子。

 ハニーは手下達を睨みつけながら言い放った。

「アナタ達! これ以上、学園はもちろん、ここの生徒達……そう、私の親友には指一本触れさせないわッ!」

「は、ハニー……! 貴女……」

 親友のハニーの言葉に感激を受ける夏子。

「く、クソッ」

 しかし手下達はそれでも銃口をハニー達に向け引き金を引こうとした。

「喰らえッ、キューティーハニー!」

 男達の銃口が火を噴こうとした、その瞬間。

「ハニーーーー!!」

 親友であるハニーを護りたい。そんな想いで胸が一杯だった夏子は思い余って彼女と手下達の間に入って、ハニーを庇う様に彼女の体を覆う様に自分の体を盾にした。

「な、夏子!」

 目の前に飛び出し、自分を庇う様に身を盾にする夏子を見て愕然となるキューティーハニー。

「夏子さん!」

 ミラーガールも夏子の行動に衝撃を受けると同時に唖然となる。

 そして手下達は一気に引き金を引いた。銃口が火を噴き、無数の弾丸がキューティーハニーを庇う夏子目掛けて発射された。

「な、夏子さん!」「ああ!」

 思わず叫ぶフェアリーにキッド。そして周りの者達は全員、夏子の体に無数の弾丸が浴びせられると思った、その瞬間。

「うおおおぉぉぉ!!!」

 夏子に無数の弾丸が当たる直前、夏子とハニーの前に聖龍使いが立ち塞がり、聖龍使いは顔を腕で防御しながら手下達の放った無数の弾丸を浴びた。

「え!」「せ、聖龍使い!」「きゃあッ!」

 弾丸の雨を浴びる聖龍使いを見て愕然となる夏子、ハニー、そして彼を想うミラーガール。

 そして手下達の銃撃が止み、辺りに静寂が漂う中、弾丸を浴びた聖龍使いは静かに顔の前で組んでいた両腕を下ろすと鋭い眼光で豹の爪の手下達を睨みつけた。

『ヒぃッ』睨まれた手下達は聖龍使いの眼光に一瞬怯んだ。

 その瞬間、聖龍使いは刀を高く振り上げて、そして一気に振り下ろすと強烈な斬撃が発生し手下達の体に向かって放たれた。

「ぎゃああッ!」「ぐおぉッ!」

 手下達の体は真っ二つに斬り裂かれ消滅した。

 そして聖龍使いは徐に後ろを振り向き、真後ろのハニーと夏子に声を掛けた。

「キューティーハニー、夏子殿。無事で有ったか……」

 苦痛な声で問い掛けられた二人は静かに答えた。

「せ、聖龍使い……」「だ、大丈夫だけど……あ、貴方は……」

 震える唇で訊ねてくる夏子の言葉に聖龍使いは平然と答えた。

「な、なに、これくらい大したことでは無い……」

 必死さの垣間見える聖龍使いの言動、そして眼差しを見たハニーと夏子は居た堪れない心境であった。

 その時「聖龍使い!」突拍子にミラーガールが聖龍使いに駆け寄ってきた。

「ミラーガール」

「また無茶して! 頭とか心臓に弾が当っていたらどうする訳!?」

「なに、急所である頭は自力で防ぎ、心の臓の部分は甲冑が護ってくれたから平気じゃわい」

「で、でも、何か遭ったら……」

 不安に満ちた声で話しかけてくるミラーガールに、聖龍使いはこう返した。

「安心せい、ワシがこんな事で死ぬような弱輩者で無い事は、主が一番知っているじゃろ」

 ミラーガールに告げた聖龍使いは告げ終わるとすぐさま駆け出した。

「あ、聖龍使い!」「ど、何処に?」

 ウォーターフェアリーとキッドが訊ねると、聖龍使いは皆に顔を向けて言い放った。

「ワシはこれから学園の校舎内に入り、まだ人が居るかどうか確認してくる! 主達は別の個所や校舎の外に人が居ないかどうか確認しておくれ!」

 そう言い放つと聖龍使いは単身校舎内に走り去ってしまった。

「…………」

 走り去ってしまった聖龍使いを心配そうに見つめるミラーガールに、キューティーハニーが肩を軽く叩いて声を掛けた。

「ミラーガール、彼は大丈夫よ。今は、私達がやれる事をやりましょう」

「キューティーハニー……えぇ、解りました。私達も学園内に人が居るか確認しましょう。もしかしたら豹の爪に捕われているかもしれませんしね」

 そしてミラーガール達は一斉に散り散りになり、学園内に人が残っていないか確認し始めた。

「……ねぇ、ハニー」「ん? なに、夏子」

 ハニーと一緒に駆け出した夏子は、ふとハニーに訊いてみた。

「あのさ、ミラーガールって、もしかして聖龍使いの事……」

「ん? ……ああ、そうよ。彼女、彼にゾッコンなのよ」

「あらま。御爺ちゃんに恋してるなんて、ちょっと変わった子ね」

「え゛ッ!? ま、まぁ……」

 夏子の発言に思わず口元を歪ませて苦笑いするハニー。この時夏子は聖龍使いの言動から、一般的な見方で聖龍使いが高齢者だと思い込んでいた。

 

 

 そして聖龍使いは単身、学園の校舎内に入り込み、中に人が居ないか見て回った。しかし不思議な事に校舎の中には生徒はもちろん教師達の姿も無かったのだ。

「むむ、可笑しいぞ。団兵衛(だんべえ)校長やアルフォンヌ理事長、それにミハル教員の姿も無い。一体……」

 と、聖龍使いが考え込んでいるその時。「……ん、この音は?」ふと耳に入って来た微かな時計の様な音に気付いた聖龍使いは徐にその音に近づいて行った。

 そして音のする個所を覗きこんでみると其処には四角い黒い物体が在った。

「ん、これは……」

 暗闇の中、目を凝らして見てみると、赤い電光表示でタイマーが次第に0にカウントされて行ってた。

「これは…………ば、爆弾!!?」

 聖龍使いが黒い物体を爆弾と認識した、その時だった。

 タイマーが遂に0になり、その瞬間、黒い爆弾は爆発し聖龍使いは爆風に呑み込まれてしまう。

 更にその爆弾と連動していたのか、はたまた同時刻にタイマーがセットされていたのか、学園の各箇所から爆炎が噴き出し、物の見事に聖チャペル学園は火の海に包まれた。

「きゃああっ」「な、何なの!?」「こ、これは!」

 共に行動していたフェアリーにミラーガール、そしてキッドは突然の爆発に驚いた。

「そ、そんな!」「が、学園が……」

 一方、別の場所で学園の皆を捜索していたキューティーハニーと秋夏子は、爆発し炎上する校舎を見て愕然としていた。

「み、みんなは……みんなはどうなっちゃったの!?」

「せ、先生、みんな……」

 学園の皆の事を案じ、一気に不安な心境に陥り、動揺し出す夏子に蒼褪めて行くハニー。

 そして先ほど、突然の爆発に驚いたミラーガール達は中に入って行ったままの聖龍使いの安否を気にしていた。

「き、キッド。聖龍使いは……!」「ま、まさか……」

 フェアリーが安否を気にして訊ねるが、キッドの心中も不安で一杯であった。

「そ、そんな…………聖龍使い!!」

 ミラーガールは燃え盛る校舎に向かって精一杯、聖龍使いの名を叫んだ。しかし聖龍使いはもちろん、中から人の声はせず、ただただ炎が激しく燃え盛るだけであった。

 

 

 

 

[駆け付ける聖龍隊士と謀反を起こした天狗]

 

 ちょうどその頃、他の聖龍隊士達も聖チャペル学園に着いていた。

 彼等は突然の爆発、そして炎に呑み込まれる学園を見て愕然としていた。

「そ、そんな……!」「チャペル学園が……」

 駆け付けたセーラー戦士、マーキュリーとマーズが燃え盛る学園を見て唖然となる。

「ね、姉さんは? 姉さんや学園のみんなは!?」

「みんな……無事なのか?」

 先に向かっている姉の如月ハニーを心配するミスティーハニー、学園の人達はもちろん聖龍使いや恋人のハニー達の身を案ずる早見青児。

「は、ハニーさん達の学園が……」「ひでェ、火の海じゃねえか」

 炎に包まれる学園を見て嘆き悲しむナースエンジェルに宇崎星夜、デューイ。

「が、学園の人達はどうしちゃったのかな……?」

「だ、大丈夫だ。きっとみんな無事だ…………多分」

 不安に駆られる木之本桜に小狼が悲痛な声で掛ける。

「ひ、酷い……」

「る、ルミノタイトを手に入れる為だけに、こんな……!」

「黒天狗党の奴等……! 此処まで落ちぶれやがったのか……!!」

 炎上する学園を見て悲観するイサミに愕然となるソウシ、そして怒りに満ちるトシ達。

 

 と、皆が燃え盛る学園を見て悲観していた、正にその時。

「あ! 聖龍隊だ! 皆の者ーー、聖龍隊が駆けつけて来たぞーーッ!」

 豹の爪の手下の一人が駆けつけて来た聖龍隊を見て、すぐさま大声で他の仲間達を呼んだ。

「あッ」「見つかったぞ!」

 タキシード仮面とメタルバードが声を上げるが、聖龍隊は駆け付けて来た豹の爪の手下達と黒天狗党の手下であるカラス天狗達に取り囲まれてしまった。

「お、お前等!」「なんで……何でこんな酷い事が出来るんだ!」

 豹の爪と共闘しているカラス天狗達に向かって言い放つトシとソウシ。しかしカラス天狗達は何も言い返さず、今にも聖龍隊に襲い掛かろうとしていた。

 更にその時、カラス天狗達の後方から一人の天狗の男が歩み寄って来た。

「お前達、相手は聖龍隊だ、手を抜くでないぞッ!」

「あ! お前は!」

 その天狗の面の男を見てトシが声を上げる。

 そしてイサミ達三人が一斉に、その天狗の名を叫んだ。

『からくり天狗!』

 そう、それは黒天狗党の四天王の一人である、からくり天狗本人だった。

 からくり天狗はイサミ達聖龍隊に向かって言い放った。

「はっは、久しぶりだなしんせん組よ、そして聖龍隊! 今日こそは叩きのめしてくれようぞッ」

 そう豪語するからくり天狗にイサミは強い口調で訊ねた。

「か、からくり天狗! アナタ、何でこんな事を!? いくら学園に埋まっているルミノタイトを手に入れる為とはいえ、何も爆破させる事は無いでしょ!!」

 しかし、からくり天狗は言い放つイサミに向かって嘲笑う様に言い返した。

「わっはっはっは! それもこれも、全てはお前たち同様、我々に敵対しているキューティーハニーを倒す為の策よ! まぁ、本当なら其処に居るミスティーハニーも一緒に爆発に巻き込みたかったのだが……まぁ良しとするか。今から叩きのめせば良いだけだしな」

「な、何よ! 私はもちろん、姉さんが……! キューティーハニーがそう簡単に死ぬわけ無いわ!!」

 からくり天狗の暴言に怒鳴り口調で反論するミスティーハニー。

「か、からくり天狗! 何で此処までの事を……!? 豹の爪はともかく、お前たち黒天狗党はこんな非道な行いまではしなかった筈だ! まさか完全にパンサーゾラの言いなりに成り下がっちまったのかよ!?」

 メタルバードが、からくり天狗に訊ねてみると、からくり天狗は怪しく小笑いしながら答えた。

「ふっふっふ、言いなりに成ったのではない。ワシはただ、黒天狗党には愛想が尽きただけじゃ。それ故、今は豹の爪に手を貸してやっているだけじゃよ」

『え!?』からくり天狗の発言に驚愕する一同。

 イサミは疑問に思いながら、からくり天狗に訊ねた。

「か、からくり天狗。それはどう言う事なの?」

 するとからくり天狗は不敵な笑い声を発しながら答えた。

「簡単じゃよ。あの黒天狗の目的が実に不愉快で下らないモノじゃったから見切りを付けただけじゃ」

「え? く、黒天狗の目的って、確か世界征服だったんじゃ……」

 疑問に思ったトシが訊き返すと、からくり天狗は

「そうじゃ! 本当は我等、黒天狗党の目的は世界制覇であった筈! しかしシスタージルが明かしてくれた黒天狗の……いや、芹沢鴨之丞(せりざわかものすけ)の真の目的を知って幻滅したのじゃ!! あの男は、今までワシ等を騙し続けていたのじゃからな!!」

「! そ、そんな……!

 怒声を放つからくり天狗の言い分を聞いてイサミは衝撃を受けた。高木はるかから既に聞いていたのだが、心の何処かで自分を本当の孫の様に慕ってくれた芹沢鴨之丞が黒天狗本人だと信じ切れていなかったのだが、からくり天狗の一言で完全に確信してしまったからだ。

「ちょ、ちょっと待てよ! 黒天狗の本当の目的って何なんだよ? 世界征服で無いなら一体……」

 トシが訊き返すが、からくり天狗はトシの質問に答えはせず、そのまま配下のカラス天狗達に命令を下した。

「喧しい! お前等が知る必要などは無い! 何故なら全員此処で朽ち果てるのだからなッ! お前等、聖龍隊を全員叩きのめせ!!」

『ハハァッ!』

 からくり天狗が命じた瞬間、カラス天狗達は一斉に聖龍隊に襲い掛かって来た。

「きゃああっ」「ほええぇ! いっぱい来たよぉ」

 迫りくるカラス天狗の軍勢に怯むナースエンジェルとさくら。しかしメタルバードが皆に指示を告げる。

「ビビるなッ! 此処で退いたら聖龍隊の名折れだ! 全員、戦闘配置!!」

 しかしカラス天狗達に続いて豹の爪の手下達も同時に攻めて来た。

「くッ、豹の爪の連中まで……!」

「だ、だが……倒さない限り、学園の中を探索する事も出来ない……! 今はコイツ等を倒すしか無い!」

 口元を歪ませるミスティーハニーの発言に対し、同じ表情をする青児が返した。

 そして聖龍隊はカラス天狗と豹の爪の手下、両勢力と衝突するのであった。だが早見青児は心の中で思っていた。

(ハニー、無事で居てくれ……!)

 

 一方その頃。学園の校舎外では。

「……な、何ざますかーーッ! 何で、何で学園が爆発炎上しているざますカーーッ!?」

 炎上する聖チャペル学園を見て叫喚するミハル教員。その傍らにはハニーや夏子、更にはハニーの妹の葉月聖羅とも馴染みのあるハニーの親衛隊である、さえこ、みゆき、あゆみの三人、そしてアルフォンヌ理事長の姿が有った。

「な、何で学園が燃え上がっているザマスか? ちょ、ちょっと離れていた間に……」

 真赤に燃え上がる学園を見て呆然と体の力が抜けて行くアルフォンヌ理事長。

「そ、そんな……」「な、何で学園が……」

「み、ミハル先生に言われて始業式の準備を途中で放り出して、そのままにしていただけなのに……」

 炎に包まれた学園を見て愕然となるさえこ、みゆき、あゆみの三人の女子達。

 実はミハル教員が、何かと学園を抜け出すハニーや、その親友で同じ問題児としてミハルが目を付けていた秋夏子に対し、ミハルは教員たちに二人に罰当番をやらせようと策略を企てていた為、始業式の準備を先送りしていたのであった。故に教師も生徒も、全員爆発には巻き込まれずにいた。

 更にその時、炎上する学園を目の当りにして呆然としているミハル教員たちに二人の老人達が歩み寄ってきた。

「お、おい、みんな! こ、こりゃ一体、どういう事じゃ!?」

「え? ……アッ、学園長!」

「まぁ団兵衛、一体今まで何処に行っていたのよッ?」

 振り返ってみると其処には聖チャペル学園の校長である団兵衛が立っていた。団兵衛の姿を見たミハルは叫喚し、姉のアルフォンヌ理事長は怒鳴りながら団兵衛に訊ねた。すると団兵衛は姉の威圧に怯みながらも答えた。

「い、いや……今日の始業式の準備は、全てミハル先生が全て任せて欲しいって言ったから、ワシは久々に旧友と一緒にこの辺の山々をハイキングしていたんじゃよ……」

「え? きゅ、旧友って……もしかして、その後の方が?」

「ああそうじゃよ。紹介しよう」

 姉に訊かれた校長は旧友である老人を前に出させて、皆に紹介した。

「紹介しよう。ワシの旧知の友で武術にも長けている大江戸町滞在の花丘観柳斉(はなおか かんりゅうさい)じゃ」

「い、いや……こんばんわ皆さん。何やら大変な時に来てしまったらしいですなぁ」

「は、はぁ。い、いえ、此方こそ……」

 校長に紹介された観柳斉は丁寧にお辞儀をし、それに続いてアルフォンヌも頭を下げる。

 そして団兵衛校長は燃え盛る学園について訊いた。

「そ、それにしても……な、何で我が学園が炎に包まれているんじゃ?」

「そ、それが校長……私達も今来たところで……」

「む! 何で今来たところ何じゃ? 確か今日の始業式の準備は全て、ミハル先生、貴女が自分に任せて欲しいと自ら言い出したんじゃ無かったんじゃないのか?」

「ウッ! そ、それは……」

 ミハルは一気に動転してしまった。

 と、その時。

「……む、皆さん、それに団兵衛殿。お取り込み中のところ済まんが、何やら向こうで大掛かりな作業をしている連中が居りますぞ」

「へっ? あ、本当じゃ」「な、何なんでしょう?」

 観柳斉に言われ目を向けてみると、確かに複数の男達が何やら作業をしているのが目に入った。

「な、何をしているんでしょうか?」

「行ってみましょうよ先生」「そうよ」

「もしかして、学園の爆発と何か関係が有るかもしれないわ」

「うむ、行ってみるかの」

「そうじゃな。確かに何かを知っていても可笑しくないしな」

 不思議に思っているミハルに言ってみるさえこ達の言葉を聞き、団兵衛達は男達に気付かれない様、静かに近寄って行った。

 

 彼等が近寄ってみると、其処では豹の爪の手下達と黒天狗党の手下であるカラス天狗達が必死に散乱する瓦礫を退かして学園の真下を掘り続けていた。

「あ、あいつ等、一体何をしているんじゃ?」

 団兵衛が不思議に思っていると観柳斉が口を開いた。

「あ、あいつ等はカラス天狗じゃ! 最近ワシの町で暴れ回っている犯罪者集団じゃ」

「な、何ですって!?」

 観柳斉の言葉に驚くミハル教師。

「そ、それに一緒に居るのは豹の爪の連中よ」

「一体何でまた学園の真下の土を掘っているのかしら?」

 彼等の行動に疑問を感じるみゆきとあゆみ。

 そんな時、一人の豹の爪の手下が声を上げる。

「おーーい、出たぞーー! これじゃないかーー」

「え?」「な、なんですの?」

 アルフォンヌ達が動揺していると、続々と手下やカラス天狗達が集まり、皆今度は手作業で土を掘り始めた。

 すると地面の中から、緑色に輝く岩が現れた。

「えっ、何なの、アレ?」「な、何ですの? あの石は……!?」

 ミハル達が驚いていると、カラス天狗達は見た事のない様な重工機を使って、その岩を半ば強引に引き抜こうとした。

 そしてロープで引っ張られた岩は地面から完全に抜けると、その全貌は巨大な緑色に輝く鉱石であった。

「な、何? あの緑色の岩は!?」

「シェーーッ、あんなモノが学園に埋まっていたザマすか!?」

「お、おい二人とも。静かに……気付かれてしまうぞ」

 思わず声を上げてしまうミハルとアルフォンヌに団兵衛が告げるが。

「ん!? あ、お前等! 此処で何をしている!?」

 一人の豹の爪の手下に見つかってしまった。

「し、しまった!」「い、急いで逃げるのじゃ!」

 団兵衛と観柳斉が皆に言い放つが、時すでに遅く、周りを豹の爪の手下やカラス天狗達に囲まれ、逃げ場を失ってしまう。

『きゃああっ!』

 恐ろしくなり悲鳴を上げるさえこ達、親衛隊の三人。

「あ、アナタ達! 生徒には指一本触れさせないわよッ!」

 生徒を護ろうと手下達に立ち塞がるミハル教員。だが手下達はマシンガンを向けながらミハル達に言い放つ。

「黙れ! 所詮、女と爺だけのお前達じゃ何もできん! ハチの巣に成りたくなければ一緒に来い!」

「ぐむむ……! み、皆さん。今は取敢えず、こいつ等の言う通りにしましょう。下手に逆らえばそれこそ全員穴だらけじゃ」

「ヘッ! 物解りの良い爺さんだな」

 観柳斉の発言を聞いて、団兵衛達も大人しく手下達の言うとおりにした。

 

 

 

 

[囚われの知人達]

 

 一方その頃、ミラーガール達は燃える校舎を見渡してミハル教師や団兵衛校長、更にはハニーと夏子の親友である親衛隊のさえこ達の姿を懸命に捜索していた。

「み、みんな、みんな! お願い、無事でいて……!」

 自分の親友や教師達の身を案じて、不安に駆られるハニーは悲痛な面持ちで必死に駆けずり回っていた。

「ハニー……」

 そんな悲観に満ちた表情の親友を見て、更に悲心に駆られる夏子。

「く、くそ……ッ、聖龍使いの姿も見えないし、一体どうしたんだ……!」

「ま、まさか、この爆発に巻き込まれて……」

 瓦礫の山に成った学園を隈なく見て回ったキッドとフェアリーも、次第に不安な気持ちに駆り立てられる。

「せ、聖龍使い、聖龍使い……! お願いよ、姿を見せて……!」

 涙目になりながらも聖龍使いの姿を探し続けるミラーガール。

 

 と、その時であった。

「……ん? アレは……あ! み、みんな大変だ!」

「え、どうしたのキッド?」「あ、アレを見て!」

「え……あ、大変、みんなが!」

 慌て始めるキッドに告げられ、ウォーターフェアリー達が目を向けてみると、何と聖龍隊の皆と豹の爪の手下・カラス天狗達が戦闘をしていたのであった。

「あ、大変! みんなが戦っている!」

「い、急いで応戦しましょう!」

 ミラーガールとキューティーハニーの発言と共に、キッドとフェアリーも駆け足で聖龍隊の所に向かって行った。

「あ、待ってよ~~ッ!」

 突然走り去ってしまうハニーやミラーガール達に置いてけぼりを喰らわせられそうになる夏子も、彼女達の後を追う。

 

 そして聖龍隊の方は、必死に手下達とカラス天狗達に応戦し続け、何とか大半の敵勢を倒す事が出来ていた。

「ぐむむ……! このままでは……お前達! 後は任せた! ワシはお手製の兵器を持ってくるが故、コイツ等の足止めは任せたぞ」

 状況が不利に成りつつあると踏んだからくり天狗はカラス天狗達にその場を任せて一人で何処かに走り去ってしまった。

「あ、待て!」

 立ち去るからくり天狗を追おうとソウシも走り出そうとするが、目の前にカラス天狗達が立ち塞がった。

「あ、あいつ、何か仕出かすつもりなのか……?」

「さ、さぁな。それよりも今はコイツ等を何とかしねえと……」

 去って行ったからくり天狗を気につつも、眼前の敵勢に対する処置を考えるタキシード仮面と青児。

 その時、聖龍隊を取り囲んでいた手下やカラス天狗達に巨大な蔓が襲いかかる。

「うわあっ!」「な、何だこれは?」

 突然自分達を襲う植物に驚き動転するカラス天狗に手下達。

「え?」「こ、これは……!」

 そして聖龍隊の皆が驚いていると、技を発動させたキッドやフェアリー、そしてミラーガールやキューティーハニーに秋夏子が駆けつけてきた。

「みんなーー」「大丈夫ですかーー!?」

「き、キッド! それにアプリ!」「良かった、無事だったのね」

 二人を見て安堵するタキシードにセーラームーン。

「み、みんなーー、大丈夫ーー?」「み、ミラーガール!」

「青児さん! ミスティ!」「ハニー!」「良かった……! 姉さんが無事で……」

 ハニーの顔を見るや、安堵の表情を零す青児にミスティーハニー。

「ハァ……はぁ。ま、まさか聖龍隊の人達も駆け付けて来てたとは……」

 息を切らしながら呟く夏子。そんな彼女を見たメタルバードが口を開いた。

「おや? おいミラーガール、確かその女は……」

「ああ、彼女は秋夏子さん。キューティーハニーこと如月ハニーさんの親友で、今さっき豹の爪の襲撃から助けた所なの」

「み、ミラーガール! ちょっと、夏子の前でそんな事……!」

 ミラーガールの発言に動揺するミスティーハニー、だがそんな彼女にキューティーハニーが告げる。

「ああ、ミスティー。実は夏子にはもう、私が如月ハニーだって事は告げているのよ。だからもう隠す必要は無いのよ」

「え? そ、そうなの、姉さん?」

「ん? 姉さん?」

 だが夏子はミスティーハニーがキューティーハニーを「姉さん」と呼んだ事に疑問視した。

 そんな夏子に、ミラーガールが告げてしまう。

「ああ夏子さん。実はあの二人、姉妹何ですよ。ホントの事言っちゃうと、実は彼女、葉月聖羅さん何ですよ」

「せ、聖羅!? あ、あの何時も無愛想で冷静ぶっている、あの葉月聖羅? 何? 彼女、ハニーとは姉妹だった訳?」

「はい、双子の姉妹何ですよ」

 淡々と説明するミラーガールであったが、そんな彼女に早見青児が訊ねる。

「お、おいミラーガール! 夏子に本当の事言っても良いのかよ?」

 するとミラーガールは真顔で言い返した。

「でも青児さん。夏子さんはもうキューティーハニーの正体を知っているんですし、今更ミスティーハニーの正体を知っても問題無いと思いますよ」

「…………」

「それに夏子さんは信頼できる人ですし、言っても大丈夫ですよ、きっと」

 平然と汚れ無き言葉遣いで語るミラーガールの話を聞いて、早見青児は何も言い返す事は出来なかった。

 

 と、その時である。ジュピターキッドの放った植物攻撃で倒れた敵の落とした無線機から、突然声がした。

「お前達、お前達……ルミノタイトの鉱石を発見した、今すぐ現場に来て作業の手伝いをしろ」

「な、何っ?」

 無線機から流れた台詞に、メタルバートや聖龍隊の皆が驚き動揺した。

「い、今ルミノタイトって……」「は、発見したって、言ってたな」

「ま、まさか奴等、ルミノタイトの鉱石を学園の下から掘り出して見つけたんじゃ……」

 無線機からの話を聞いたイサミ・トシ・ソウシは驚きに満ちた表情で口を開く。

「ん? ねぇみんな。ルミノタイトって、何?」

 初めて聞くルミノタイトの名称に訊ねてみる秋夏子。そんな彼女にメタルバードが告げる。

「い、いや……い、今は取りあえず現場に向かってみよう。まずはアイツ等がルミノタイトを持ち逃げしないようにするのが先決だ」

 メタルバードに続いてネプチューンも口を開く。

「そうね。彼等がルミノタイトを持ち去ってしまえば状況は悪化するかもしれないし、急いだ方が良いわね」

「ええ、みんな行きましょう」「は、はい!」

 ネプチューンに続いて口を開いたプルートに答えるかのように、ミラーガールは返事をした。

 

 そして聖龍隊は豹の爪(パンサークロー)の手下達と黒天狗党のカラス天狗達、双方の共同作業の現場に向かって行った。

 

 現場では、既に手下達とカラス天狗等の手によって巨大なルミノタイトの鉱石を運び出そうとしている最中であった。

「あ、アイツ等……!」「る、ルミノタイトを遂に……」

「そ、それにしても……なんて大きなルミノタイトなんだろう」

 運び出されるルミノタイトの鉱石を目の当りにして驚くトシにソウシ、そしてイサミ。

「あッ、アレ見て。校長先生達だわ!」「ホントだわ! さえこ達も一緒に居るわ」

 先ほど捕えられた学園の皆を確認した夏子とハニーは唖然とした。

「ど、どうするメタルバード」

「う、うん。下手に突っ込んだら人質の連中が危ねえし……」

 ミラーガールに訊かれたメタルバードは困惑していた。

 その時だった。「お前達!」一人の女の怪人が作業場に現れた。

「あ! あの怪人……!」

「間違いない、豹の爪の怪人だ……!」

 女怪人を見てミスティーハニーと青児が呟く。そして女怪人は作業をしている手下やカラス天狗達に言い放った。

「お前達! 遂に我等、豹の爪と黒天狗党、双方の長年の野望が花開く時が来た! 今宵、掘り出したこのルミノタイトを使い我等は世界を手にする!!」

「な、何だと……!」

 女怪人の発言に、メタルバードも、彼の傍らに居た他の聖龍隊や秋夏子も驚愕した。

 更に、女怪人は続けて言い放つ。

「まずは、このアニメタウンを占拠する! その為にルミノタイトを持ち帰り、すぐに活用できるようにするのが先決じゃ! すぐに本拠地である芹沢コーポレーションに運ぶのじゃ!!」

『ははぁ!』

 女怪人の命令に威勢良く返事する手下達にカラス天狗達を見て、イサミが口を開く。

「あ……あのカラス天狗達が、素直に女怪人に頭を下げている……」

 イサミに続いてソウシとトシも呟く。

「や、やっぱり……さっき、からくり天狗が言っていたように、彼を始めとした一部の天狗党の連中は、黒天狗を見限ってしまったみたいだ」

「あ、あの黒天狗党が、今じゃ真っ二つに割れちまっているって事か……」

 女怪人やカラス天狗達の様子を見て、悲痛な面持ちになるイサミ達しんせん組。

 ミラーガールはそんな中、メタルバードにある提案を促した。

「ね、ねぇ。メタルバード」「ん? なんだミラーガール?」

「私にちょっと提案が有るんだけど……」「何だ?」

「う、うん。実は……――――」

 ミラーガールはメタルバードや皆に、自分の思案した作戦を伝えた。

「……お、おい、ミラーガール。それはちょっと、お前が危ないんじゃないのか……?」

 提案を聞いたメタルバードは神妙な面持ちで訊き返した、するとミラーガールは平然と答えた。

「でも他に良い作戦思い付かないでしょ? 手勢が少なくなった時にみんなで攻めてくれれば人質にされた人達も助けられる確率が高まるし」

「だ、だが、それなら俺が代わりに……」

「メタルバードはダメよ。私より戦闘が上手いんだから、みんなと一緒に助けに行ってくれなきゃ……」

「で、でも……」

「私なら大丈夫よ。それじゃみんな、後は宜しくね」

「あ、ミラーガール……!」

 キューティーハニーが声をかける中、メタルバードに説明し終わったミラーガールは左手のリストバンドのコンパクトを触れて呪文を唱えた。

「テクマクマヤコン」

 そしてミラーガールの姿は光に包まれ、彼女の姿は変わって行った。

 

 

 

[立ちはだかる黒]

 

 そして豹の爪の手下達と黒天狗党のカラス天狗達、そして女怪人がルミノタイトの運搬作業をしている最中。

「豹の爪(パンサークロー)! そして黒天狗党! 聖チャペル学園の人達を放しなさい!」

「ウン? 何奴じゃ!?」

 女怪人が振り向くと、其処には赤いコスチュームに身を纏った一人の女性が立っていた。

「お、お前は!」

 その女性の顔を見た女怪人、そして手下やカラス天狗達に、囚われている学園の皆は目を見開いて表情を一変させる中、女性は大声で名乗りながら叫び語った。

「愛と正義の戦士! キューティーハニー! あなたの人生、変わるわよ」

『きゅ、キューティーハニー!!!』

「きゅ、キューティーハニー!?」

 手下達にカラス天狗達、そして女怪人は目の前に現れたキューティーハニーに度肝を抜いた。

「きゅ、キューティーハニーじゃ!」「ま、まぁ!」

 キューティーハニーの姿を見て歓喜する団兵衛校長にミハル教師。

「や、やったザマす! キューティーハニーが来てくれたのなら、もう大丈夫ザマス!」

「よ、良かった……!」

 ホッと胸を撫で下ろすアルフォンヌ理事長にさえこ達三人。

 そして目の前に現れたキューティーハニーは、フルーレを女怪人達に向けると言い放った。

「豹の爪! そして黒天狗党! 何の罪も無い聖チャペルの人達を開放なさいッ!」

 だが女怪人はハニーを睨みつけながら、手下達やカラス天狗達に命じた。

「ぐ……ッ、お前達! 何をしている、さっさとキューティーハニーを倒すのじゃ!」

 命じられた手下とカラス天狗の手勢は一斉にキューティーハニーに駆け寄る。するとハニーは自分に向かってくる手勢を確認すると一目散にその場から駆け去って行ったのだった。

「あ! ど、何処に行くのよっ、キューティーハニー!」

 目の前に捉えられた自分達が居るにも拘らず、一目散に逃げ出すハニーにさえこ達は大声を掛けるが、ハニーはそのまま行ってしまい、手下達とカラス天狗達は一部を残して全員走り去るキューティーハニーを追って行った。

「な、なんでキューティーハニーは、私達を置いて……」

 落胆してしまう人質達。しかしこの時、陰からその光景を見ていた者達が居た。

「……よし、残っている連中はホンの僅かだ」「今がチャンスだ」

 そして手勢が少なくなったその場に、見ていた者達が姿を現した。

「おい、女!」「ん……! お、お前達は!?」

 女怪人が振り向くと、其処にはメタルバードを筆頭とした聖龍隊の姿があった。

「お、お前達、何故此処に? さ、さっきキューティーハニーは一足先に逃げ出したぞ…………な、なぬッ!?」

 女怪人が聖龍隊の面々を見回していると、ある事に気が付いて驚愕した。何故なら。

「さあ豹の爪! 大人しく人質達を解放しなさいッ!」

「痛い目見たくなければ、速急によ……!」

 何と聖龍隊と一緒に、先ほど逃げて行ったキューティーハニーと妹のミスティーハニーが二人とも居たからだ。

「きゅ、キューティーハニー!? ば、バカな……! さっき目の前から逃げ去ったというのに、何故……!?」

 逃げ出した筈のキューティーハニーが再び目の前に現れた事に驚きを隠せない怪人。

「な、なんでじゃ? なんでさっき走って行ったキューティーハニーがまた居るんじゃ?」

「さ、さあ……私にも理解出来ませんわ……?」

 再び目の前に姿を現すキューティーハニーを見て状況を理解できないでいる団兵衛にミハル。

 そして少し離れた所で、隠れながら様子を窺っていた秋夏子は心の中で驚いていた。

(ま、まさか……ミラーガールがキューティーハニーに変身して、自ら囮役に成るなんて……! そ、それにしても……ミラーガールって、他のヒロインにも変身できたんだ)

 実は最初に敵達の前に姿を現したキューティーハニーは、ミラーガールがコンパクトで姿を変えていたのだった。ミラーガールは人質に成っている人達を安全に解放する為、まず手下達の数を減らす策としてキューティーハニーに変身して手勢の多くを惹きつけていたのだ。

 

「え……ええい! こ、こうなったら、お前達だけでも良いから聖龍隊を片付けろ!」

『は、ははぁ!』

 困惑し切った怪人は、その場に残っている手下やカラス天狗達に命じた。

 手下達も困惑しながらも、命じられると一斉に聖龍隊に襲い掛かった。

「オッ、やる気か……! テメエ等! オレ達も戦闘開始だァッ!」

 メタルバードの号令の下、聖龍隊も少数のカラス天狗と豹の爪の手下達と一戦を始めた。

 

 一方、キューティーハニーに変身して自ら囮に成ったミラーガールは、そのままハニーの姿で自分を追ってきたカラス天狗や豹の爪の手下達と対峙していた。

「くぅ……やっぱ変身して、少しばかり能力も真似できるとはいえ……結構、数が多すぎたかな……」

 ミラーガールの周りには大勢のカラス天狗や手下達が取り囲んでおり、逃げることは不可能であった。

「ど、どうしようかしら……」

 困り果てていると、突然カラス天狗が数人掛かりでハニーに変身しているミラーガールに飛び掛かって来た。

「きゃああっ!」

 思わずミラーガールが悲鳴を上げた、その瞬間であった。

「ぐぎゃッ」「イでっ」「ぐっ」

 突然、自分に飛びかかって来た数人のカラス天狗達が、その場に倒れたのだった。

「な、なぬっ?」「こ、これは……!?」

 目の前で突然倒れたカラス天狗達を見て、他のカラス天狗や手下達は驚き動揺した。

「え? こ、これは……?」

 そしてカラス天狗達よりも驚いたのが他でも無いミラーガールである。彼女達が驚いている、その時。

「……やぁ君達、随分と賑やかだね。寄ってたかって一人の女性相手に複数で襲い掛かるなんて」

「ん! だ、誰だお前!?」「え……!? き、君は……!?」

 突然現れたその人物に手下達は驚き、ミラーガールは軽く困惑した。

 

 

 そして場は戻り、聖龍隊と女怪人の戦いは――――既に聖龍隊は雑魚であるカラス天狗や手下達を全て倒し切り、残るは女怪人一人だけだった。

「くぅ……!」

「観念しろッ! もうお前の周りには、部下は一人も居ないぞ! 大人しく降参しやがれ!」

 メタルバードは追い詰めた怪人を睨みながら言い放つ。

「さぁ、、もう大丈夫ですよ」「あ、ありがとうございます」

 一方で人質にされた学園の人達は皆、マーキュリーやナースエンジェルの手によって無事に解放されていた。

 そして女怪人を追い詰めたキューティーハニーはフルーレを振り翳して一気に怪人に攻撃を加えようと走り出した。

「ハァっ!」「ぐっ……! (や、ヤラレル……!)

 怪人は半ば諦めかけた、その時。

「ぐっ!!」「……む……ムム? お、お前……!」

 目を瞑ってしまった怪人が、そぉっと目を開けてみると、目の前には黒いローブ姿に首を掴まれ苦悶の表情を浮かべるキューティーハニーが映り込んだ。

「あぁ!」「は、ハニーさん!」

 突然首を掴まれ、苦しむキューティーハニーを見て、花丘イサミと雪見ソウシが声を上げる。

「む! あ、あの子等は……!!」

 しかしこの時、イサミ達は人質の中に彼女の祖父である花丘観柳斉が居た事に気付いておらず、観柳斉は孫娘やその友達であるソウシの声を聞いて半ば驚いた。

「あ、アイツは!」「間違いない! あの黒ローブだ!」

 ハニーの首を掴む黒ローブを見て唖然となるマーズとデューイ。皆が突然目の前に姿を現し、そしてハニーの首を掴み上げる黒ローブを見て騒然としている中、ローブに向かって怪人が言葉を発した。

「や……闇人(やみびと)! お前、いつの間に此処へ……!?」

 怪人の発したローブの名、闇人の名を聞いた聖龍隊は驚いた。

「な、なに!?」「あの黒ローブ、どうやら闇人って名前の様だ」

 名前を聞いて愕然となる早見青児にタキシード仮面。

 皆が闇人という名前に驚いていると、闇人のハニーの首を掴み上げている手から黒いオーラが浮き出て来た。

「あ、あいつ! 何かする気だよッ」

「きゅ、キューティーハニー!」

 セーラージュピターとナースエンジェルが声を上げ、その場に居た皆が驚いた、その瞬間。

「え!?」「あ、そ、そんな……!?」

 突然、闇人に掴まれたキューティーハニーの体が光り輝き、光が納まるとハニーの姿は青と白の服装、そして金髪のロングヘアーの、普段の如月ハニーの姿に戻ってしまった。これを見た聖龍隊の皆は驚愕する。

「あ! あ、あれは……!?」「ま、まさか……如月さん!?」

 キューティーハニーが突然、如月ハニーの姿に変わった光景を目の当たりにし驚き唖然とする団兵衛校長とアルフォンヌ理事長。

「な! なんで如月さんがキューティーハニーに!?」

「は、ハニーさんが……まさか、キューティーハニー……!?」

 普段の姿に戻ってしまったキューティーハニーを見て、偉く動揺してしまうミハル教員にさえこ達ハニーの親衛隊三人。

 

 そして闇人は掴んでいたハニーの首を放し、ハニーを解放した。

「ぐはっ……はぁ……」

 掴まれていた為、呼吸が苦しかったハニーは、やっとの事で自由に呼吸が出来て安堵の表情を浮かべた。

 そんなハニーに、妹であるミスティーハニーが駆け寄ってきた。

「ね、姉さん!」「み、ミスティー……」

 駆け寄るミスティーに苦痛な表情を向けるハニー、そんな姉の顔を見たミスティーハニーは咄嗟にフルーレの切っ先を、先ほどまでハニーの首を掴み上げていた闇人に向けて、怒りに満ちた声で闇人を睨みながら彼に言い放った。

「あ……アナタッ! よくも……!」

 しかし闇人はミスティーの睨みにも怯む事無く、それどころかミスティーハニーの言動に無反応な態度を見せ、自分の横で呆然としている女怪人を見詰めて一言発した。

「……オイ」「! な、なんだ!?」

 声を掛けられた怪人は異常なまでに驚いた。そんな女怪人の肩を闇人は掴むと彼女に一言告げた。

「お前は弱すぎる……少し力をやろう」

 闇人がそう言った瞬間、怪人を掴んでいた手からどす黒いオーラが現れ、怪人の体を呑み込む様に包み込んで行った。

「な、何じゃ!? うわあっ……」

 自分の体を闇のような靄に包み込まれ、軽く困惑してしまう怪人。

「え!?」「あ、あれは一体……!?」

 闇に包まれて行く怪人を見て動揺し出すネプチューンとウラヌス。

 そして怪人の体を覆う闇が消えて行くと、なんと現れた怪人の全貌が一変していた。

「ええ!?」「あ、あの姿……!」

 容姿の変わった怪人を見て愕然としてしまうちびムーンとサターン。

 女怪人の全貌は、肌の色が墨色に近い程の黒くゴツゴツした皮膚質、瞳は金色の鋭い眼光、そして髪は白髪となり両手の爪はまるで刃の如く鋭い形状に変貌していた。

 

 そんな一瞬で変貌した女怪人を見て、聖龍隊はもちろん囚われていた人質達も目を丸くして驚愕した。

 そんな最中、闇人は一変した女怪人に話しかけた。

「どうだ? 今の気分は」

 訊ねられた女怪人は先ほどと違い、重苦しい口調で答える。

「ウム……悪くない。何より、体の奥底から力が漲(みなぎ)って来る……」

 女怪人の言葉を聞いた闇人は更に語る。

「そうか、それは何よりだ……そうだな、せっかく容姿が変わったんだ。敢えて言うなら……――」

「……む?」

「ふむ、そうだ……豹の爪(パンサークロー)の幹部であるお前に、黒き闇の力で生まれ変わった事を祝福し、ブラック・クロー(黒き爪)と名乗ったらどうだ?」

「黒き、爪……うむ、悪くない名だ。礼を言うぞ、闇人」

「礼など良い、まずは目の前の英雄達を消し去る事だ。俺もしばし眺めているから、全力でこいつ等を倒すんだぞ」

「ああ……解った」

 闇人と話し終わると、女怪人は名を改めてブラッククローとして聖龍隊の前に立ちはだかった。

「ウっ……!」

「気を付けましょう、あの闇人に何かをされて、何かが変わったみたいよ、あの怪人」

 ブラック・クローに人睨みされ一瞬怯んでしまったヴィーナスに、彼女の横で注意を皆に促すプルート。

 

 そしてブラック・クローは闇人の見ている中、聖龍隊に突っ込んで行った。

 

 

 

 

[受け入れてくれる人々と追い詰める闇]

 

「ぐわあッ!」「きゃああッ!」

 突如現れた闇人、その手から放出された黒いオーラに包まれた女怪人は、その風貌を一変させ、新たにブラック・クローと名乗り聖龍隊と交戦し合っていた。

「ぐぅ……」「い、意外とキッツイわね……」

 しかし闇人に姿を変えられたブラック・クローは凄まじい程のパワーを秘めており、聖龍隊の面々は多少押されぎみであった。

「つ、強すぎる……!」「さ、さっきとは桁違いだ……!」

 怪人ブラック・クローの猛攻を見て愕然となる、さくらと青児。

 そんな中、ブラッククローは追撃を止めはしなかった。サターンやウラヌスの攻撃を自身の鋭い爪で受け止めつつ、すかさず反撃をした。

「きゃあっ」「ぐ……ッ」

 更にミスティーハニーやデューイの剣戟までも見事に交わしつつ、二人の腹部に強烈な拳による強打と爪による斬り裂き攻撃を放つ。

「きゃっ!」「ぐふっ……!」

「こ、この……ッ、喰らいやがれッ!」

 仲間達を容赦なく攻撃して行くブラック・クローに痺れを切らした月影トシが龍の目を蹴り飛ばし、龍の目は一直線にブラックに向かって放たれた。

 だがブラック・クローは、トシが蹴り飛ばした龍の目を何なく片腕で受け止めてしまう。

「そ、そんな!」

 愕然となるトシであったが、そんなトシ目掛けてブラック・クロ―は受け止めた龍の目を投げ返した。

「う、うわっ……ぐはっ」「と、トシ!」

 ブラックの投げ返した龍の目はトシの顔面に直撃してしまい、それを見たイサミが倒れ込むトシに向かって名を叫んだ。

「こ、コイツ、手強い……!」

「あ、ああ……さっきまでは感じられなかったが、今では異様なまでのドス黒いオーラがあの怪人からは感じられるぜ」

 苦悶に満ちる面持ちで語り合うタキシード仮面とメタルバード。

 

 そんな苦戦し続ける聖龍隊の面々をジッと無言で眺め続ける黒いローブ姿の謎の人物、闇人。

 その空虚なる眼差しでブラック・クローに痛めつけられて行く聖龍隊の面々を見詰める闇人を唖然とした心境で見詰めている団兵衛校長たち人質にされていた人々。

「あ、あの闇人……一体、何者なのじゃ?」

「み、見ているだけで、胸が苦しくなってきますわ……」

 闇人に目を向ける団兵衛とミハルは、闇人から醸し出される異様な雰囲気を感じていた。

 その時、先ほど闇人に掴まれた上に、何故か変身を解除されてしまった如月ハニーは膝をついていたのだが、目の前でブラック・クローに痛め付けられている仲間達を見て徐に立ち上がった。

「あ、ハニーさん!」「だ、大丈夫、ですか……?」

 困惑しながらもハニーに声を掛けるみゆきとあゆみ、ハニーは自分を心配して駆け寄ってくれた二人の顔を一目見ると、如何にも申し訳無さそうな悲痛な表情を浮かべた。

「……は、ハニー、さん?」

「ど、どうしたんですか? まだ体が痛みますか?」

 心配して訊く二人に、ハニーは心痛な口振りで答えた。

「…………ごめんなさい」「え?」「な、何を急に……?」

 突然謝罪するハニーに軽く驚く二人、そしてハニーは二人に語り出した。

「ごめんなさい……今まで、みんなの事を騙していて……」

 ハニーは皆に対して申し訳ない心情で、みゆきとあゆみ二人の顔を直視できずにいた。

 そんな折、三人の所にアルフォンヌ理事長が歩み寄ってきた。

「……ハニーさん」「り、理事長……!」「あ……」

 歩み寄り、静かにハニーの名を呼ぶ理事長に動揺するみゆきとあゆみ。そしてアルフォンヌ理事長に名を呼ばれたハニーはゆっくり顔を上げて理事長と目を合わせる。

 ハニーと目が合ったアルフォンヌは、優しい眼差しでハニーを見詰めながら語り出した。

「ハニーさん……貴女がどんな事情で、今までキューティーハニーに変身してきたかは解らないわ。でも心優しい貴女の事ですもの……何か深い理由が在るんでしょうね」

「あ、アルフォンヌ理事長……」

 アルフォンヌ理事長の言葉に衝撃を受けるハニー、更に今度は弟の団兵衛校長が歩み寄って来てハニーに話しかける。

「ハニーくん」「こ、校長先生……!」

 校長に話しかけられ驚くハニーに、団兵衛校長は普段と変わらない笑みを見せながら告げた。

「ハニーくん、君が愛の戦士キューティーハニーじゃったとは、流石のワシも驚いたわい……辛かったのう」

「……え?」

 校長の「辛かった」の一言に一瞬呆気に取られるハニーに、団兵衛校長は続けて語った。

「今までありがとのう、ワシ等を始めとした沢山の人々の為に戦い続けてくれて……! 辛い想いも一杯して来たというのに……ホンに、ありがとのう! ハニーくん!」

「こ、校長先生……!」

 団兵衛の言葉に嬉しさという衝撃を受け、ハニーは思わず涙目になり口を押さえた。そして団兵衛に続いてミハル教師もハニーに話しかける。

「如月さん……! まさか貴女がキューティーハニーだったとは……それで今まで、いつの間にか姿が消えていたのね」

「み、ミハル先生……」

「ごめんなさい、事情を知らなかったとはいえ今まで貴女にキツく当ってしまって……まさか、あの豹の爪(パンサークロー)や突如出現する魔獣達と人知れず戦っていただなんて……貴女の事情も知らずに、ほんとごめんなさい」

 ミハルに続き今度はさえこ、みゆき、あゆみの三人もハニーに言葉を掛けた。

「ハニー先輩」「大変、だったんですね……」

「あ、あなた達……」

「先輩、その……ありがとう、私達の為、みんなの為に、今までホントに……」

「せ、先生……みゆき、あゆみ……それに、さえこ……」

 皆からの言葉に、ハニーの心中は喜びで一杯になった。

 

 そんな時、ハニーがミハル教師や団兵衛校長等と話をしている最中、ブラック・クローに攻撃されたミスティーハニーが吹っ飛んできた。

「きゃあッ!」「み、ミスティー!」

 飛んできたミスティーに、ハニーが近寄り声をかけた。

「ミスティー、大丈夫?」

「ぐぅ……あ、あのブラック、かなり強くなっているわ……!」

 ハニーに訊かれたミスティーは苦悶の表情で姉の問いに答えた。

 更にハニーや団兵衛達が目を向けてみると、既にブラック・クローによって大半の聖龍隊が倒されてしまっていた。

「ああ!」「そ、そんな……!」

「聖龍隊が、英雄達が……」

 眼前に傷だらけで倒れている英雄達を見て顔面蒼白になるさえこ達。

「きゃあっ!」

 更に戦い続けていた花丘イサミ達、しんせん組の三人もブラック・クローの猛攻に苦戦を強いられていた。

「い、イサミちゃん……!」「くそ……ッ、歯が立たねえ……」

 イサミ同様、ブラックに痛め付けられて弱弱しくなる雪見ソウシに月影トシの二人。

 そんな弱気に成って行く三人に、突然人質の中から一人の老人が飛び出して三人に向かって大声で叫んだ。

「い、イサミ!」「え? お、お爺ちゃん!?」

「え!?」「な、なにっ?」

 名前を呼ばれたイサミに続いてトシとソウシも声のした方に目を向けると、其処にはイサミの祖父である花丘観柳斉の姿が在った。

「お、お爺ちゃん……何故、此処に……!?」

「そ、それはワシの台詞じゃ!」

 互いに双方の存在に驚き合うイサミと観柳斉、孫娘と祖父。そんな観柳斉に団兵衛が話しかけてきた。

「か、観柳斉殿? あ、あのお嬢さんとは、お知り合いですか?」

「う、うむ。知ってるも何も、ワシの孫娘のイサミじゃよ」

「な、なんと! お孫さんでしたか!」

 観柳斉の発言に団兵衛も目を丸くして飛び上がるぐらい驚いた。

「い、イサミ……お前、なんでまた……」

「お、お爺ちゃん……」

 祖父に言い寄られ動揺するイサミであったが、観柳斉は次にイサミと一緒に居た二人の男児を指差して震える口調で言った。

「そ、それに良く見てみれば……た、確か君達はイサミのクラスメイトの月影トシ君に雪見ソウシ君ではないか……!」

「イ゛ッ……!」「や、ヤベぇ……」

 イサミの家族である花丘観柳斉に見られ、更には自分達の本名や素性も言われてしまった三人は深く動揺してしまった。

 

 だが、そんな状況の中でもブラック・クローは攻撃の手を緩める事無く、まだ戦闘可能な状態のメタルバードと交戦していた。

「ギャハハハハ」「くッ、調子乗りやがって……!」

 奇声にも似た高笑いをしながら攻撃をするブラックを睨みながらメタルバードは口元を歪ませる。

 そんなメタルバードに対しブラックは半ば興奮状態で言い放ちながら攻撃を繰り出してくる。

「ギャハハハ! 力が、力が抑えられんワーーッ!!」

 次第に自我を失いつつ、ブラック・クローはメタルバードを攻撃して行った。

 その様子を一人、少し離れた場所で眺めていた闇人。

「……うふふふ、良い感じに気が触れてきたな、ブラック。お前も直に闇に堕ちて行く事だろう……そう、この世界の末路の如く」

 不敵に小笑いしながら闇人が呟いている、その時。

「はあぁッ!」「!」

 突如、剣状に変化させた水を手に持ち、振り翳したウォーター・フェアリーが闇人目掛けて飛び掛かってきた。闇人は咄嗟にフェアリーの攻撃を回避し、近くに在った高所に飛び上がった。

「はぁ……降りて来なさい!」

 高所に飛び上がり、自分達を見降ろす闇人に向かってフェアリーが豪語すると、闇人は不敵に笑いながら言い返す。

「ケッケッケ、妖精族の姫君が、良くもまァそんな乱暴な喋り方になってしまいましたなァ……」

「あ、アナタ……! 何故、それを……」

 闇人が自分の経歴を知っていた事に深く動揺してしまうフェアリー。

 その時「ぐわっ!」「め、メタルバード!」

 遂にメタルバードもブラック・クローの攻撃に背中越しで倒れ込んでしまった。

「い、イテテテ……」苦痛に喘ぐメタルバード。

 その時、高所で眺めていた闇人にブラックが訊ねる。

「オイ、闇人。聖龍隊のほとんどがボロボロだ、次はどうしてやろうか?」

 訊かれた闇人はブラックに顔を向けて答え語った。

「そうだな…………メタルバードは体を鋼のコーティングで被われているから倒すのに苦労するし、そんなら……人質の連中でも殺すカ?」

 この闇人の言葉に、その場の皆が驚愕した。

「お、お前! 今、なんて……!」

 闇人の発言に興奮した早見青児が、闇人を睨みつけながら言うと、闇人は青児に向かって平然と言い返した。

「……なんでそんなに怒っちゃう訳? 別に弱い奴が死んだって、誰も困らないじゃん」

「なッ……!!」

 闇人の言動に言葉を失う早見青児に、周りの者達。

 そして闇人は続けて青児に言い放った。

「……そう言えば、君のパパも同じだったね。弱いからこそ無残に殺されちゃって……ホントに弱いって、哀しいよネ」

「こ……ッ、この野郎!!」

 この発言に青児の怒りが頂点に昇り、咄嗟に所持していた拳銃を構えて銃口を闇人に向けた。そして引き金を引き、銃口から一発の弾丸が射発され闇人の頭に直撃、弾は闇人の頭を貫通した。

「あ……!」

 その光景を見た如月ハニーは愕然となり、彼女と同じく周りの者達も驚いた。

 しかし闇人は体を後に少し逸らしながらも、何もなかったのように平然と直立の体勢に姿勢を元に戻した。

「な、なに!?」

 弾が頭に直撃し、更に貫通したのにも関わらず何事も無かったかのように体勢を戻した闇人を見て、早見青児は唖然とした。

 そんな早見青児に向かって、闇人は呟いた。

「こんな風に………………君の父親もジルに殺されたんだろうね」

「!!」

 闇人の言葉に愕然となる青児、そんな青児の顔を見て闇人は続けて言葉を吐いた。

「へっへ、憎悪で簡単に人は人を殺しちゃう……恐いよねぇ~~」

「………………」

 闇人に指摘され、顔面蒼白で下を向いてしまう青児。

「せ……青児さん……」

 そんな気落ちする青児を見て居た堪れない心境になるハニー。

 

 

 

 

[駆け付けた幽霊族と躍起溢れる敵勢力]

 

 そんな辺りの空気が張り詰めて行く状況の中、ブラック・クローは聖龍隊を追い詰める様にジワジワと静かに歩み寄って来る。

「………………」

 無言でボロボロの体でブラックを睨み付けるメタルバード、だが彼はもちろん聖龍隊の皆が既に傷だらけの状態であったが為に誰もブラック・クローと張り合う事が出来ずにいた。

「く、くそ……! 成す術無し、か……」

 痛めつけられ地べたに這い蹲るタキシード仮面は苦悶の表情を浮かべる。

 そんな苦悶の表情に満ちる聖龍隊の面々を黙視していた闇人は静かに、そして重い口調でブラック・クローに命じた。

「ブラック・クロー、もうその辺にしてやれ……一気に止めを刺し、楽にしてやるが良い、そう……武士の情けの如く……」

「……へへ、相承知」

 闇人の発言に不敵な笑みで返事を交わしたブラック・クローは聖龍隊を見下す様に見詰めながら、まずはサターンの手前まで歩み寄り彼女に止めを刺そうとする。

「や、止めろ……ッ!」

 メタルバードの制止も空しくブラック・クローは止めを刺そうとした、その時。

「リモコン下駄!」「グワッ」

 止めを刺そうとしたブラック・クローに突如、何処からともなく木製の下駄が飛んできた。

「!」「い、今のは……ッ!」

 闇人、そしてメタルバードは聞こえてきた掛け声と飛んできた下駄に驚いた。そして彼等の目の前に黄と黒の横縞チャンチャンコを羽織った一人の少年が現れた。

「お、お前は!」「あ、あ……!」

 闇人はその少年を見て愕然とし、メタルバードは驚きの余り言葉を失った。その少年は闇人と彼の指令を実行しているブラック・クローを眼前に、二人に告げた。

「君達かい、最近僕たち妖怪の皆にも手を出している黒い魔獣の一派は。まぁ、その女の人は其処の黒い服に姿を変えられたみたいだけどね」

 女怪人ブラック・クロー、そして闇人を目の前にして尚、平然と語り出す少年を見て、聖龍隊も人質にされていた団兵衛や観柳斉も無言で立ち尽くしてしまっていた。

 しかしメタルバードだけは、その少年に向かって大声で叫ぶ。

「き…………鬼太郎! お、お前か!?」

「ああ、メタルバード、久しぶりだね……元気にしてたかい?」

 少年はメタルバードの方を振り向き笑顔で言葉を返した。

 黄と黒の横縞チャンチャンコ、そして赤い結び目の下駄を履いたその少年の名は。

 

 

【ゲゲゲの鬼太郎】幽霊族の末裔にして、以前にも修司やバーンズと顔を合わせた事のある少年だった。

 

 鬼太郎は平然とした態度で下駄の音を響かせながら一歩一歩足を前に進ませる。

『……………………』

 一方、突如目の前に姿を現した鬼太郎に驚き言葉を失くす聖龍隊や人質の面々。何よりバーンズと違い鬼太郎を初めて見た聖龍隊は初見で有った為、なおさら驚いた。

 と、その時「みんなーー!」「あ! あの声は……!」

 聖龍隊の皆が声のする方に目を向けると、其処には手を振りながら駆けて来るミラーガールの姿が在った。

「ミラーガール!」「無事だったのね!」

 小狼(しゃおらん)と苺鈴(めいりん)はミラーガールの姿を目で捉えると安堵の表情を浮かべた。そしてミラーガールは多少息を切らしながら、皆に笑顔を向けて言葉を告げる。

「だ、大丈夫だった、みんな……」

「だ、大丈夫よ、でも……」

「み、ミラーガール、あの子は……?」

 少し荒い呼吸のミラーガールに唖然としながら訊ねるマーズとマーキュリーに対し、ミラーガールは平然と答えた。

「え、ああ……あの子はゲゲゲの鬼太郎っていう子らしいわ。さっき私がキューティーハニーに変身して囮になった時、囲まれて逃げられなくなっていた所に助けてくれたのよ」

「げ、ゲゲゲの、鬼太郎……?」

 初めて聞く鬼太郎という名前に軽く動揺してしまうセーラーウラヌス。そんな言葉を失くしている聖龍隊を横目に、鬼太郎はブラック・クローと闇人に顔を向けながら、そのまま闇人に言い放った。

「君なのかい? 最近は僕等の住んでいるゲゲゲの森や妖怪横丁にまで出没して悪さしている、黒い服の人ってのは」

「な、なにッ?」

 鬼太郎の発言を聞いたメタルバードは、驚いて鬼太郎に訊き返した。

「お、おい鬼太郎! この闇人って野郎は、お前達の済んでいる横丁にまで姿を現しているってのかよッ!?」

 驚き訊ねるメタルバードに、鬼太郎は真顔で答えた。

「ああ、メタルバード……闇人っていうんだね? この黒い服を身に纏っている人は……」

「あ、ああ……さっき、そのブラック・クローがそう呼んでいたんだよ」

「そうかい……あの闇人は度々、妖怪横丁や多くの妖怪の前に姿を現しては色々としてくれてたみたいでね……僕も危うい目に何度となく遭わされて来たんだ」

「なに……!」

 鬼太郎から事情を聞いたメタルバードは再び視線を鬼太郎から闇人と、彼に力を強化されたブラック・クローに向けて睨み付けた。

 闇人は自身を睨みつけてくる鬼太郎とメタルバードをしばし見詰めると、視線をブラック・クローに向けて軽く頷いた。そしてブラックもそれに合わせる様に自身も首を頷かせ、メタルバードと鬼太郎を睨み返した。

 そしてブラック・クローは二人に向かって再び攻撃を仕掛けてきた。

「来るぞッ」「ああ……!」

 メタルバードと鬼太郎は互いに口を揃えて会話をし、迫りくるブラック・クローに態勢を備えた。

 

 

 

 その頃、掘り起こされたルミノタイトの巨大な鉱石は他のカラス天狗や下っ端達の手によって確実に芹沢ジャパンの地下施設に運ばれて行った。

 更にカラス天狗達は大江戸町のみに非ず、既にアニメタウン中に地下を掘り進んでいたのであった。これが厄介な事態に繋がってしまった。

 彼等が掘り続けた通路はなんと、修司やウッズが密かに造り上げていた地下通路にまで到達してしまい、カラス天狗や下っ端達は初めて見るアニメタウンの巨大な地下通路に驚愕してしまってた。

「こ、これは……!」

「な、何なんだ? この巨大な通路は……!?」

 カラス天狗や下っ端達が地下通路を見渡している、まさにその時であった。

「お、おい……! お前等は一体……!?」

「ん? 誰だ、お前は!?」

 下っ端やカラス天狗達が目を向けると、其処には懐中電灯を片手に持って自分達に訊ねて来たウッズの双子の弟ウェルズが立っていた。

「て、テメエ! お前こそ誰だよッ」

「それはこっちの台詞だ! お前らこそ一体……」

 下っ端達とウエルズはしばし睨み合い続けた。

 

 

 

 一方、芹沢ジャパンの地下深くの施設には運び込まれたルミノタイトの鉱石を見て、黒天狗党の幹部達やシスタージルによって世界中から集められた豹の爪の精鋭たち、通称「新パンサー軍団」が感極まっていた。

「おお、これが!」

「これが、ルミノタイト……! 我等、黒天狗党長年の野望を叶える夢の鉱石……!」

 ルミノタイトの巨大さと輝きを目の当りにして、目を輝かせて喜ぶカラス天狗達や四天王のゴールデン天狗。

「ぐワワワ……これがルミノタイト、か」

「信じられぬが、この鉱石は人の想いを力に変える事が出来る未知の物質らしいぞ」

「つ、つまり……! 人の想いというと欲望もということかッ!? そ、そうなら我々豹の爪にも多大なる利用価値があるな……!!」

 皆が不思議な輝きを放つ巨大なルミノタイトの鉱石に目を奪われているその時、ルミノタイトや、それに目を奪われている者達を見下ろす様に高い所からシスタージルが姿を現し、下の者達に大声を掛ける。

「お前達! 聞けぃ!!」

「じ、ジル様!」「ジル様だ……!」

 ジルの声に反応する、彼女に集められた精鋭である新パンサー軍団の面々。

「じ、ジルだ……!」「な、何だ急に……!?」

 そして同じくジルの声に反応するカラス天狗達と、ジルの声に驚いた者達は各々に頭上のジルを見上げた。

 ジルは自分を見上げる者達を見下ろしながら、皆皆に言い放った。

「お前達! 遂に我等の手中にルミノタイトが納まった! 後は未だに非協力的な姿勢を取り続ける花丘魁(はなおかかい)博士にルミノタイトの研究を進ませれば、我々豹の爪と黒天狗党……双方の長年の夢である世界制覇は達成できる! 者共、これからが本腰じゃッ!!」

『オオォウゥ!』

 ジルの呼びかけに威勢よく返事をするカラス天狗や下っ端達、そんな彼らにジルは続けて言い放つ。

「しかし! 我々には、まだ行く手を阻もうとする輩共がおる!! それは誰か! 申してみろ!!」

 するとカラス天狗達、手下達、新パンサー軍団にゴールデン天狗は声を揃えてジルの問い掛けに大声で答えた。

『キューティーハニー! ミスティーハニーのハニー姉妹!!』

「まだ居るぞ!」

 ジルの問いに続けて皆が揃って答える。

『しんせん組!!』

 そして最後にジルは問うた。

「そいつ等の共通点はッ!!?」『聖龍隊!!!!』

 その場の皆が全員一致で聖龍隊のフレーズを叫び上げたのを確認したシスタージルは、口元を不敵に微笑ませて続けて言い放つ。

「その通り聖龍隊だ! 例えルミノタイトが手中に納まったとしても、連中が居る限り我等の野望は達しえない!! 何れは筆頭である聖龍使いを始めとした、全ての聖龍隊を抹殺しなくてはならない! その為には情を捨て、手段を選ばずにはおれないのだ!! 解ったかァッ!!」

『ハハァ! 偉大なるシスタージル様! そしてパンサーゾラに栄光あれッ!!』

 もはや豹の爪の手下達や新パンサー軍団だけでなく、黒天狗党のカラス天狗達やゴールデン天狗までもがシスタージルやパンサーゾラに忠誠を誓っていた。

 

 だが、少し離れた高所からその情景を眺めていた二人が居た。

「まったく……! 寄りに依ってゴールデン天狗やからくり天狗までもが豹の爪(パンサークロー)に寝返るとは……ッ!」

「もう四天王で豹の爪に賛同してないのは、僕と君の二人だけだ……ルリ子」

 その二人は、黒天狗党の四天王の二人で芹沢重工社長の田能久健こと銀天狗と、黒天狗こと芹沢鴨之丞の孫娘である芹沢ルリ子こと鎧天狗の二人であった。

 健は銀色の天狗面に白いスーツ、ルリ子は全身を武者鎧の身形で古風な口調で語り合っていた。

「クソっ、このまま豹の爪の言いなりに成って行ってしまうのか、我々は……!」

「ルリ子、レディーたるもの、そんな横暴な言葉遣いは止めなさい」

「ルリ子と呼ぶなと言っているだろうがッ! 毎回毎回……! 何より落ち着いていられる場合かッ! このままでは黒天狗党が……」

 自分達の黒天狗党の先行きに不安を感じるルリ子こと鎧天狗に、銀天狗は落ち着いた様子で言葉を返した。

「そんなに怒ったら小皺が増えてしまうよ、ハハ……い、いや、そんなに睨まないでくれたまえよ……それよりも、どうして今まで私たち同様に黒天狗様に忠誠を誓っていたゴールデン天狗とからくり天狗の二人がジルやゾラに寝返ってしまったのだろうか……?」

 何故、同じ四天王であったゴールデン天狗とからくり天狗が自分達を見限り、豹の爪(パンサークロー)に寝返ってしまったのか疑問に思う銀天狗は、鎧天狗に語った。

「……聞いた話だとルリ子……ゴールデン天狗達はシスタージルから黒天狗様の事つまり君の御爺様の事で何かを聞かされたらしく、それから二人とも様子が一変してしまったらしい」

「え!? お、御爺様の事を聞いて……!?」

 話を聞いた鎧天狗は驚愕し、酷く困惑してしまった。しかし銀天狗は、そんな鎧天狗に訊ねてみる。

「ルリ子、どうも二人が聞いた話というのがな……どうやら黒天狗様の、芹沢鴨之丞様の出生について聴かされたらしいんだが、君は何か知っているのかい? 黒天狗様の過去について……」

 すると芹沢ルリ子こと銀天狗は、思い詰めた素振りで答えた。

「それが…………私も、良くは知らないの……」

「え? し、知らないって……!?」

 黒天狗こと芹沢鴨之丞の孫娘であるルリ子が放った「知らない」の一言に驚きを見せる銀天狗に、鎧天狗は困惑しながらも続けて述べた。

「わ、私も聞いたことはないのよ、御爺様の出生について……御爺様自身も余り話してくれないし、私自身聞いてみても詳しくは教えてくれないの……」

「そ、そうなのか? し、しかし、実の孫にも語ってくれないのか、黒天狗様は……?」

 動揺してしまう銀天狗に、鎧天狗は訳を述べた。

「銀天狗、私は…………私は、御爺様の、黒天狗様の実の孫娘では無いの」

「な、何だって!? それは本当なのか? ルリ子……」

「ええ、本当よ……私の親は表立ってはいないけど、実は御爺様とは血の繋がってはいない養子なの。だから私は御爺様の、芹沢鴨之丞の実の孫では無いのよ」

 鎧天狗の身形をしているルリ子の話を聞いて愕然となってしまう銀天狗。

 

 

 

 

[静寂の武士]

 

 場所は戻り、豹の爪と黒天狗党の仕掛けた爆弾で崩壊炎上した聖チャペル学園では、突如姿を現した闇人によって更に力が強大化したブラック・クローに聖龍隊が追い詰められていたその時、駆け付けて来てくれたゲゲゲの鬼太郎の突然の救済によって一時はどうにか場を凌いでいた。

 

 しかし鬼太郎とメタルバードの共闘であるにも拘らず、ブラック・クローを完全に倒しきることが出来ず、次第に状況が押されて行った。

「はぁ、はぁ…………な、なんなんだ? あの怪人……めっちゃ強くなっていやがるじゃねえか……」

「はぁ……あ、あの闇人に何かされた妖怪も、異常なほどに強くなっていた事があるけど……もしかしたら、あの闇人には何か対象のものを強化する力があるのかも……」

 炎上していた学園が、次第に火の手が収まりつつある状況下で、激しい戦闘で体力が消耗し始めたメタルバードと鬼太郎は既に息が上がっており、次第にブラック・クローに追い詰められていた。

「そ、そんな……!」

「め、メタルバードでも歯が立たないなんて……!」

 聖龍隊では聖龍使いの次に強いと称されているメタルバードが追い詰められている状況を目の当りにして愕然となってしまうヴィーナスとマーズ。

「め、メタルバード……鬼太郎君……」

 ブラック・クローと激戦を繰り広げ、疲れ果てる二人を見て悲痛な想いに駆られるミラーガール。

 そんな面々をブラック・クローを強化させた張本人、闇人はブラック・クローの少し後ろからジッと眺め続けていた。

「ヒッヒッヒ……(まさかゲゲゲの鬼太郎まで来ちまうとは計算外だったなぁ……ま、所詮妖怪も二次元人も等しく同じ、人の思想概念から生まれた存在だ……同種族だし一緒にブッ潰しちまうカ)」

 そして闇人が微かに笑みを浮かべている最中、ブラック・クローは瀬戸際状態のメタルバードと鬼太郎を更に追い詰めていく。

「くっそ……万事休すか……!」

「ッ…………」

 追い詰められ、苦悶の表情を浮かべるメタルバードと鬼太郎の二人組。二人を見守っていた周りの者達も、追い詰められた二人を見て絶望していた。

「そんな……」

「メタルバードですら勝てないなんて……」

 疲れが見え始めたメタルバードを見て、驚きが隠せない苺鈴と小狼。

「き、キッド……! 何とかできないの……!?」

「そ、そう言われても……」

 ウォーター・フェアリーに言われるジュピター・キッドであったが、彼自身にもどうしようもできない状況であった。

 そんな中、ブラック・クローはメタルバードと鬼太郎に、一気に止めを刺すべく前に駆け出した。

「キエェェーーッ!」「あ!」「く、くそ……ッ!」

 奇声を発声しながら迫りくるブラック・クローに、鬼太郎とメタルバードは困惑した。

「め、メタルバード! 鬼太郎くん!」

 ブラック・クローに攻められて行く二人を見て叫ぶミラーガール。誰もが追い詰められた心境に、酷く困惑し始めていた。

 

 しかし、その時。「……だ、誰か……誰か、助けてくれッ」

「え!?」「い、今の声……」「だ、誰かが今、助けてって……」

 突然耳に入ってきた声に動揺し驚くハニー、ミスティー、そして夏子の三人。

 そして皆が声の聞こえた方角に目を向けてみると、其処には首を掴まれた豹の爪の手下が苦痛にもがいていた。

「あ、アレは!?」

 その情景を見た皆は驚いた、そして手下の首を片腕で軽々と掴み上げているのは一人の人物。

 ミラーガールはその人物を見て声を上げた。

「せ……聖龍使い!」

 そう其処に居たのは、豹の爪の手下を片腕で掴み上げている、全身ボロボロの聖龍使いの姿であった。

「ウウゥ……」

 聖龍使いに掴まれている手下が唸り声を上げていると、聖龍使いは鬼気迫る眼光で一睨みした。

「!!」

 聖龍使いの睨みに酷く怯み、そして恐怖を感じる手下。

 その時、聖龍使いは手下を掴み上げている左腕に力を入れ始め、手下は更に苦しみ出した。

「グぅ……!!」手下が苦しみ出した、その時。

 ボキッと鈍い音が辺りに鳴り響き、それと同時に手下がピクリとも動かなくなってしまった。

「え……!?」「い、今の……」

 背筋が凍るような鈍い音に驚くちびムーンとサターン、その時、その音を聞いたプルートが顔を蒼褪めさせて口を開いた。

「ほ……骨だわ……せ、聖龍使いが掴んでいた、あの手下の首の骨が……砕けた音よ……!」

「な……ッ、なに?」

 プルートの言葉に衝撃を受けるタキシード仮面と周りの皆。

 そして聖龍使いは自身の手で首の骨を握り砕かれ動かなくなった手下を放り投げると、今度はブラック・クローを異様なほどの異質な眼光で睨みつけた。

「ム……ッ!」「…………」

 怒りと憎悪に満ちる、その眼光で睨まれたブラック・クローは一瞬だけ動揺し、闇人は聖龍使いのその眼光を見て何かを思っていたのか、無言の状態で見据えていた。

「ひっ……!」「な、なに? あの瞳……」

 聖龍使いの、おぞましい程の眼光を初めて見たさえこ達は思わず背を縮ませた。

「な、何なの? あの目は……!? 凄く……暗くて、そして……な、なんか、惹き込まれそうな……そう、例えれば…………闇のような、瞳(め)……」

 眼光鋭い聖龍使いの漆黒の瞳を見た秋夏子は、恐怖を感じつつもその瞳から醸し出される不思議な雰囲気に見入ってしまっていた。

 そして聖龍使いは、ゆっくりと歩き出し次第にブラック・クローとの距離を縮めていった。

「…………ッ!」

 聖龍使いの漆黒の眼光で睨まれながら次第に距離を縮められていくブラック・クローは、聖龍使いから感じられる異常な威圧感に押され気味になっていた。

 と、その時。「わーはははッ! 遅れたのお、スマンスマン」

 何と皆の目の前に、先ほど聖龍隊と戦闘を繰り広げて、遂には追い詰められて一旦退いた黒天狗党の四天王の一人、からくり天狗が自製の大型重工機を操縦しながら登場した。

「あ! からくり天狗!」「こ、こんな時に!」

 重工機に乗車しながら登場したからくり天狗を見て声を上げるトシにソウシ。

 そんな派手な登場をしたからくり天狗を見ても様子を一変させることのない闇人に対し、からくり天狗を一目見たブラック・クローは声を荒上げてカラクリ天狗に言った。

「か、からくり天狗! 丁度良い所に……そ、その重工機で聖龍使いを叩きのめすのだ! は、早くしろッ!」

「ん? あの女怪人、誰じゃ? まぁ良いわ、聖龍使いの方は弱りきっているみたいじゃし、何よりしんせん組同様の邪魔ものじゃ。片付けてヤルとするか」

 姿の変わっている女怪人を見て一瞬戸惑ったからくり天狗であったが、新撰組同様に敵対している聖龍使いを攻撃する事に同意し、躊躇う事無く自身が操縦している重工機で聖龍使いに直進して行った。

「に、逃げてッ、聖龍使い!」

 ミラーガールが悲痛な声で叫ぶが、聖龍使いは動こうとはしなかった。そしてからくり天狗が操縦する重工機が聖龍使いに直撃寸前までに迫った。

「あッ!」「も、もうダメだ……!」

 皆が目を覆ってしまう惨状を想像した、まさにその時。

「……!」「な、なに!?」

 なんと聖龍使いが、自分に突進してくる重工機を両手で突き返し押し止めてしまったのであった。これには操縦していたからくり天狗は仰天してしまった。

「な、なに?」「じ、自力で重工機の動きを押し止めた?」

 自身の腕力だけで重工機を止めた聖龍使いの行動に驚き動揺する小狼(シャオラン)と早見青児。

 更に聖龍使いは重工機を押し止めた状態で、腕や体に力を込め始めた。すると重工機は次第に押し返されて行き、それを見た周りの者達に操縦していたからくり天狗は更に驚いた。

 そして聖龍使いが更に力を込めると、なんと巨大な重工機を聖龍使いは投げ飛ばしてみせたのだ。

「う、うわあぁぁ!!」

 重工機ごと投げ飛ばされたからくり天狗は悲鳴を上げる。

『えええぇぇぇええぇ!!』

「う、ウソ……!? 重工機ごと、投げちゃった……」

 重工機を投げ飛ばした聖龍使いに驚愕する皆にミラーガール。

 そして横転し、回転の動きが止まった重工機から、体を擦りながらからくり天狗が這いずり出てきた。

「い、イテテテ……」

 すると彼の眼前に聖龍使いが異様な眼光を放ちながら立ち尽くした。

「う、うわあ! く、来るな、あっち行け!」

 聖龍使いの眼光にすっかり脅え、喚き散らすからくり天狗であったが、次の瞬間。

 一筋の閃光が見えたと思いきや、なんとからくり天狗の装着していた天狗の面が縦に真っ二つに斬られてしまった。

「って……う、うわああぁ!」

 突然、天狗の面を斬られたからくり天狗は恐怖で完全に怖気づき、困惑してしまうからくり天狗の素顔を見てイサミ達が声を上げる。

「あ、アナタは!」

「せ、芹沢電工代表取締役の……!」

「東上別府高丸(とうじょうべっぷたかまる)さん!!」

 からくり天狗の正体、それはイサミ達とも何度か顔を合わせた事のある芹沢重工の代表取締役を務めている東上別府高丸だった。

 素顔を明かされたからくり天狗は怖気づいて、その場を逃げ出してしまった。

「……!」「ウッ……!」

 逃げ出したからくり天狗を尻目に、聖龍使いは再び眼光をブラック・クローに向け、視線を向けられたブラック・クローは怯んでしまった。

「(や、ヤラレル前に……!)グワーーッ!」

 恐怖の余り平常心を忘れてしまっていたブラック・クローは聖龍使いに一直線に襲い掛かった。

 しかし聖龍使いは自分に飛びかかってきたブラックの直撃を、ひらりと軽く避けると反射的に彼女の首に腕をまわして締め上げた。

「グゥ……ッ!」

 一瞬で自分の首に腕を回され、首を絞められたブラック。

 すると次に聖龍使いはブラック・クローの首を絞めたまま、空いている腕で力の限りブラックの顔面を殴り始める。

「グハッ! ギャッ!」

 余りにも強く殴りつけられ、ブラック・クローは激痛の余り普通よりも大きい声を上げてしまっていた。

『……………………』

 そして、それを見ていた聖龍隊や人質になっていた周りの者たちは、先ほどまで優勢であったブラック・クローが意図も容易く攻撃され続けていく様を見て思わず黙り込んでしまっていた。

「……う、うそ……」「あ……あの怪人が、一方的に……」

 殴られ続け顔面から真赤な血が噴き出してきたブラックを目の当りにして、次第に顔から血の気が引いていくナースエンジェルとデューイ。

 そして聖龍使いは拳で殴っていたのを、今度はエルボードロップに切り替えて引き続きブラック・クローの顔面を殴打していった。

「あ、あああ……」

「ち、血で……! 血でブラックの顔が真っ赤に成っていく……」

 思わず目を覆いたくなるほどに顔を真っ赤にされていくブラックを見て、ブラックとは真逆に顔面蒼白になっていくさくらと小狼。

「ぐっ…………クソッ!」

 一方的に顔面を攻撃され続けていたブラックは、自分の首を締め上げている聖龍使いの腕を半ば強引に引き剥がし、聖龍使いとの距離を離した。

「…………」「ハァ……ハァ……!」

 何も言わずただ睨みを利かせている聖龍使いに対し、ブラック・クローは荒い息で顔から血を噴き出しながら聖龍使いを睨み返していた。

 だが聖龍使いは有無を言わさず左腰に下げている聖龍剣を握ると、それを抜き、そのままブラック・クローに猛進する。

「ウッ……ウゥ……ウワァーー!!」

 恐怖と激痛で冷静さを失っていたブラックは、自分に刀を向けて直進してくる聖龍使いに動揺し、考えも無しに聖龍使いに駆け出してしまった。

 そして双方が互いに駆け抜け、一筋の閃光が垣間見えた瞬間、二人はしばし静止した。

 辺りに静けさが漂い始めた、次の瞬間。

「…………うっ」聖龍使いがその場で膝をついた。

『あぁ!』「せ、聖龍使い!」

 膝をついた聖龍使いを見て驚く皆にミラーガール。

 だがしかし、聖龍使いが膝をついた直後「……ぐ、グハッ!」

 突然ブラック・クローの体から血が噴き出し、ブラック・クローはその場に倒れ込んだ。

 まるで噴水の如く体から噴き出る大量の血を見て、聖龍隊も人質にされていた者達も、そして駆け付けた鬼太郎も愕然とした。

「アアァァア…………」

 そしてブラック・クローは跡形も無く消滅した。

 

 

 そしてブラック・クローを斬り倒した聖龍使いは、学園爆発によるダメージと疲労が重なり、瓦礫に寄り掛かってしまう。

「せ……聖龍使い……!」

 寄り掛かる聖龍使いの様子を見て、心配になり駆け寄るミラーガール。皆も視線で彼女を追って瓦礫に寄り掛かる聖龍使いに注目してた。

 その時、メタルバードが気付いた。

「ん……あ! ミラーガール、危ねえ!!」

 メタルバードが声を上げ、皆がメタルバードの視線の先を追って行くと、なんと闇人が自身の身の丈と同じぐらいの巨大な漆黒の弓を構え、しかも太くて長い一本の黒い矢をミラーガールに狙いを付けていたのであった。

「危ない、ミラーガール!」「え?」

 セーラーマーズに言われ、ミラーガールが顔を向けた瞬間、闇人は握っていた矢を放し、太い漆黒の矢は一直線にミラーガールに放たれた。

「きゃああ!」「ミラーガール!!」

 悲鳴を上げるミラーガールに声を上げる早見青児。

 しかし次の瞬間「そりゃッ!」放たれた巨大な弓矢をメタルバードが空中でへし折った。

「め、メタルバード……」

「ふぅ、大丈夫か? ミラーガール」

「う、うん……」

 目を丸くして驚くミラーガールに訊ねるメタルバード、ミラーガールは目を丸くしたまま答えた。

「チッ……」

 そして矢を放った闇人はスゥっと消えてしまった。

「い、今のは……」

「な、何なんですか? あの真っ黒な人は?」

 突然目の前に現れ、そして消え去った闇人を目の当りにしたアルフォンヌとミハルは呆然と立ち尽くしてしまっていた。

「い、今の黒い人は、誰なの? ね、ねぇ、ハニー……」

「それが……私達にも解らないの……」

 訊ねてくる夏子に対し、訊かれたハニーも答えられずじまいであった。

 

 

 

 

[闇を照らした想いと危機迫る地下施設]

 

 夏子を護る為、身を盾にして銃弾を浴び――更には学園に仕掛けられた爆弾の爆発に巻き込まれ、ボロボロの聖龍使いは学園の瓦礫に寄り掛かっていた。

「聖龍使い……大丈夫?」「……うむ、なんとか」

 ミラーガールの呼びかけに、か細い声で返事をする聖龍使い。そんな二人の周りに他の聖龍隊や人質にされていた学園の皆に、駆け付けてきた鬼太郎が集まっていた。

「……どうだ? 聖龍使いの容態は」

 聖龍使いの容態を見ているナースエンジェルとセーラーマーズにメタルバードが訊ねると、二人は静かに答える。

「え、ええ……甲冑が防弾の役割をしていたから大丈夫だし……」

「爆発の衝撃も上手く緩和してくれていたのか、ほとんど外傷はないわ」

「まったく……毎度の事ながら、バケモノ並みにタフな体しているよなぁ」

 思わず呆れ果ててしまうメタルバード。

 そんな時、キューティーハニーの正体を知ってしまった団兵衛校長や聖チャペルの皆がキューティーハニーこと如月ハニーに歩み寄り、彼女に話しかけてきた。

「ハニーくん」

「こ、校長先生! それに、みんなも……」

 動揺するハニー、彼女に向かって校長たちは優しく言葉を掛けた。

「大丈夫じゃったか? まぁ、変身が解けただけで外傷は無い様じゃし、大丈夫とは思うのじゃが」

「……」

 心配してくれる団兵衛校長の言葉に唖然としてしまうハニー。続いてミハル教師が微笑みながらハニーに語り出した。

「でも良かったですわ。学園は崩壊してしまいましたが……ハニーさんや夏子さん、それに此処に居るみんなが無事で本当に良かったですわ」

「先生……」

 団兵衛校長やミハル教師の優しい言葉、そして自分の正体を知っても尚、普段と変わらない笑顔を向けてくれる学園の皆を見て、ハニーは嬉しく思い感極まった。

「ハニーさん……」

 そんなハニーの幸せそうな顔を見て穏やかな心境になるミラーガールや聖龍隊の皆。

 そして聖龍使いも、そんなハニーや学園の皆を見て思わず呟いた。

「良かったのぉ、ハニー……お主には、常に笑顔を向けてくれる友が居て……羨ましい限り、だ……」

「え……?」

 思わず呟いた聖龍使いの台詞に驚くミラーガール。そんな時、聖龍使いにあの鬼太郎が歩み寄ってきた。

「……大丈夫かい? 聖龍使い」

「き、鬼太郎……何とか、のう……」

 更に鬼太郎に続き、今度は他の聖龍隊の面々が歩み寄って来て、聖龍使いに鬼太郎について訊ねてみた。

「せ、聖龍使い、彼は……?」

「ウラヌス……この者は……わ、ワシの知人で、鬼太郎というのじゃ……怪しいものではない故、安心してくれ……」

 ウラヌスに続き、ネプチューンも訊ねた。

「か、彼は何者なの?」

「鬼太郎は……以前、ワシの助けになってくれたのじゃ……人でない幽霊族という特殊な種族じゃが、ワシら人の為に日夜戦い続けている、素晴らしい存在なのじゃよ」

 聖龍使いが語り終わると、ミラーガールがその鬼太郎に話しかけた。

「き、鬼太郎……くん?」「ん、なんだい? ミラーガール」

「そ、その…………ありがとう。私だけじゃなく、メタルバードや此処に居るみんなを助けてくれて」

 礼を言われた鬼太郎は、ニッコリと微笑むとミラーガールに言葉を返した。

「……ふ、いや……僕はほとんど何もしてないよ。悪い奴らに追い詰められていた君を助けてあげただけだし、メタルバードと一緒に戦っても何もできなかったんだ。礼を言われるほどの事はできなかったよ」

「そ、そんな事は無いわ! 鬼太郎が助けに来てくれたから私は無事で居られるんだし……結果はどうあれ、貴方がメタルバードや聖龍隊のみんなを助けに来てくれたのには変わりないわよ! ホントにありがとう、鬼太郎」

「ミラーガール……」

 感謝のこもったミラーガールの言葉を聞いて笑みを浮かべる鬼太郎。そんな彼は突然呟いた。

「……なるほど、君のような女の子が側に居てくれたからこそ、聖龍使いは昔より明るくなれたんだね」

「え? そ、それって……」

 ミラーガールが思わず訊き返すと、鬼太郎は静かに語り始めた。

「僕と彼が最初に出逢った頃、彼は少しばかり暗い子だったんだ……でも今は何処かしら、少しばかり明るくなっていて……多分ミラーガール、君の影響じゃないのかな?」

「え? わ、私?」

「ああ、聖龍使いの暗くて寂しい……そして悲しみに満ちた闇の心から浮き出てくる悲痛な想いを緩和させて、彼を少しばかりだけど明るくさせたのは君の彼を想う心が有ったからじゃないのかな?」

「わ、私の……想い」

「そうだよ。君の聖龍使いへの想いやりが、彼をあんなにも強く、そして真直ぐな人間にしてあげられたんだよ。ま、以前から芯の強い子ではあったけどね……でもそこに、君という存在が加わったからこそ、あんなにも逞しく感情豊かになったんじゃないのかな?」

「き……鬼太郎くん……」

 鬼太郎の想い溢れる言葉に感激するミラーガール。

 

 一方、如月ハニーは学園の皆を前に頭を深々と下げて申した。

「ほんとごめんなさい、私の所為で学園がこんなになってしまって……」

 すると多少動揺しながらもミハル教員がハニーに言い返した。

「な、何を言っているんですかハニーさん! 貴女は私達を護る為に精一杯頑張ってくれていたのは私達、良く解っていますわッ! だからそんなに頭を下げなくてもよろしいのですのよ」

「で、でも……」

 すると今度はミハルに続き、団兵衛校長もハニーに語った。

「ハニーくん、君が精一杯戦ってくれていたのは、ワシ等キューティーハニーの正体を今まで知らなかった者たちでも充分解っておる。何より、今回の爆破でハニーくんや此処に居るみんなが無事で有った事だけでも良かった様なもんじゃよ」

「こ、校長先生……」

 学園の皆からの温かい言葉に感動する如月ハニーと彼女を気遣う学園の皆を見て、ミラーガールは穏やかな心情に浸っていた。

 一方、すぐ側では花丘イサミが祖父の花丘観柳斉にクラスメイトの月影トシや雪見ソウシ等と共に、観柳斉に言い寄られていた。

「まさかな……お前達がウチの町内で噂になっていたしんせん組であったとは……」

「お、お爺ちゃん……」

 祖父である観柳斉に新撰組の時の姿を見られてしまい、話す言葉が見つからないイサミにトシにソウシ。三人は観柳斉に見詰められながら下を俯いてしまっていた。

 その時、イサミ達の談話を見ていた聖龍使いが徐に立ち上がり、四人の所に歩み寄って行った。

「観柳斉、殿……」

「ん、聖龍使い! これは良い所に……何故ウチの孫とその親友達がしんせん組などに扮しているんじゃ! まさかとは思うが……貴方が孫達を唆して危ない目に遭わせていたんじゃ……」

 観柳斉が聖龍使いに問い詰めていると、其処にイサミが焦りながら打ち明ける。

「ち、違うわ御爺ちゃん! 私達がしんせん組に変身しているのに聖龍使いは関係ないわ! それ以前に聖龍使いは今まで私達の手助けをしてくれていたのよ……私達を護って来てくれた大事な仲間なのよ!」

「な、なに? 仲間……?」

 孫娘のイサミに言われた観柳斉は発言を制止させた。そんなイサミの発言に呆然としている観柳斉に聖龍使いが告げた。

「観柳斉殿……確かに拙者は貴方のお孫さんや親友の方に危険な行為をさせていました。それは心よりお詫びを申します」

「せ、聖龍使い……」

「…………」

 観柳斉に謝罪の発言を述べる聖龍使いに、イサミは戸惑い観柳斉は黙り込んだ。そして聖龍使いは話し続ける。

「しかし観柳斉殿、貴方の孫娘であるイサミ殿やトシ、ソウシは立派な御心を持っている素晴らしい子供達です。先祖の新撰組が遺した道具を使い、常日頃から多くの弱い者たちの助けを施して来たのであります。其れがしは、そんなイサミ達三人の行いに心打たれ、それで少しでも手助けしたいと想い、彼等を聖龍隊に招き入れてしまったのです。何とぞ、彼女達を責めないで下され」

 語り続ける聖龍使いの話を聴きながら、観柳斉は聖龍使いの漆黒の瞳を見詰め、言葉を発した。

「……なるほど。貴方が言うなら、間違いない様ですな。貴方のその力強くも闇のように黒い瞳から感じられる覇気からは、少なくとも嘘偽りを語っているとは思えませんしな」

「観柳斉殿……解ってくれて何よりです。それではワシも素顔を隠す必要も無くなりましたわ……」

 そう言うと聖龍使いは顔に装着している鬼の面を外して、観柳斉に素顔を見せた。観柳斉は聖龍使いの素顔を見た途端、飛び上がるくらい驚いた。

「え…………えええぇぇ!!? ま、まさか……!? あ、あなたは市長の小田原修司……な、何故あなたが聖龍使いに……!?」

 観柳斉が驚くと、彼が発した声を聞いて周りの者達も聖龍使いの素顔に視線を向け、観柳斉同様に驚いた。

「な、な……ッ、何じゃと!?」

「お、小田原修司さんじゃありませんかっ!」

 団兵衛、アルフォンヌの姉弟が阿鼻叫喚の面持ちで声を上げる。

「う、ウッソぉ!?」

「せ、聖龍使いが市長の小田原修司!?」

「ひへえぇ……!」

 さえこ、みゆき、あゆみの三人も素顔の聖龍使いを見て驚愕した。しかし一番驚いてしまっていたのが、先ほどからハニーや他の聖龍隊と行動を共にしていた秋夏子であった。

「う……うそ……! せ、聖龍使いが、あの……小学五年の小田原修司!? て、てっきり高齢の御爺ちゃんかと思っちゃってたわ……!」

「ま、まあ……聖龍使いの時の言動があんなんだし、よく間違われる事は多いけど、れっきとした子供なのよ彼は……」

 親友の夏子の発言に多少呆然としてしまうハニーだった。

 

 

 と、その時。

「み……みんな…………あ……ッ」

「ん? あ……!」「ん、どうした……あ!」

 突然聞こえてきた掠れ声にタキシード仮面が気付き、そして早見青児も続いて声の方角に目を向けて驚いた。

 そして、其処に居た者を見てジュピター・キッドも驚き声を上げた。

「お……叔父さん!? どうしたんだよッ!?」

 キッドに続き皆も目を向けて驚いた。彼らの目に飛び込んできたのは、体中傷だらけのウェルズの姿であった。

「う、ウェルズさん!?」

「ど、どうしたんですか? その怪我……!?」

 傷だらけでゆっくり歩いてくるウェルズを見て動揺するデューイとセーラーマーズ。

 するとウェルズは糸が切れたかのごとく倒れてしまった。

「う、ウェルズ!」「叔父さん!」

 倒れるウェルズを見て彼に駆け寄るメタルバードと甥のキッド、そして後の仲間達も続いてウェルズに駆け寄る。

「あ、あの人は……」

「た、確か市長の秘書であるウッズさんでは……?」

「い、いえ違います。あの人はそのウッズさんの双子の弟さんでウェルズっていう人なんです」

「え! そ、そうなのか……!?」

「まぁ、双子だったとは……初めて知りましたわ」

 初めてウェルズを見た団兵衛とアルフォンヌは以前にも会った事のあるウッズと間違ってしまうものの、すかさずミラーガールが違う人物でかつ双子の兄弟であると指摘し、団兵衛とアルフォンヌは驚きながらも理解した。

 そして駆け寄った仲間達がウェルズに訊ねた。

「う、ウェルズさん、この怪我は一体……」

 するとウェルズは苦痛に喘ぎながら答えた。

「じ、実は、さっき……さっき、地下通路でカラス天狗や豹の爪(パンサークロー)の手下共が現れやがって……お、俺等が使っている地下通路を捜索しようとしていたから一戦繰り広げたんだが……け、結局ハデにやられちまった、はは……」

「な、なんて無茶を!」

 ウェルズの発言を聞いて悲観するハニー、だがウェルズは訴え続けた。

「だ、だが今は、それどころじゃないんだ……! や、奴ら俺を痛めつけた後、寄りにも寄ってメインフロアに進んで行きやがったんだよ……!!」

「な、何だって!?」

 驚くメタルバード、そしてウェルズは悲痛な声で皆に言い放った。

「め、メインフロアには兄貴が……そ、それに、お前等の帰りを待っているケイやミミナが……あ、危ねぇ……!」

 これを聞いた聖龍隊士たちは愕然とした。

「た、大変だ! 急がねえとミミナ達が……!」

「け、ケイ……大変だぁ!」

 親友であるミミナ、そして弟であるケイが危ないと知り困惑する星夜にトシ。

「………………!」「あ、聖龍使い!」

 突然、聖龍使いが駆け出し、一足先に地下通路に向かってしまい、ミラーガールが声を掛けるものの既に向かって行ってしまった。

「お、俺達も地下施設に急ぐぞ! ウッズやミミナ、ケイの身が危ねえ!」

 メタルバードが声を荒上げて皆に言い放ち、そして聖龍隊は急ぎ地下施設に向かった。

 

 

 

[静かなる怒り]

 

 傷だらけのウェルズを背負いながらも、聖龍隊は地下通路の中を進んでいた。

 ウェルズに言われた通り足を進ませてみると、なんと黒天狗党の豹の爪が掘り進めていたトンネルが偶然にも聖龍隊が普段使用している地下施設の通路に出てしまったらしいのだ。

 そしてウェルズは其処で戦闘に入り、怪我だらけになりながらも聖龍隊の皆に状況を報告する為、敵が掘り進めていたトンネルを辿って聖チャペル学園に駆け付けたらしい。

「い、急げ! 下手したら手遅れに……!」

「バカ! なんてこと言うのよっ!」

 急ぎ足でメインフロアに向かう聖龍隊、その先頭に居たメタルバードが零した一言に、思わず怒声を飛ばしてしまうイサミ。

 一方、慌てふためく聖龍隊を見兼ねて、先ほど人質にされていた団兵衛やアルフォンヌたち聖チャペル学園の皆に、同じく人質になっていたイサミの祖父で花丘観柳斉、そして戦闘の最中に加わったゲゲゲの鬼太郎も聖龍隊と共に後から付いて行った。

「し、しかし……まさか、アニメタウンの地下に、こんな巨大な地下通路が在ったとは……」

「は、はぁ……ほんとですなぁ……」

 巨大な地下通路の存在に驚いてしまう団兵衛と観柳斉。

「はぁ、はぁ……は、ハニーさん、貴女……まさか、いつもこの通路から学園を抜け出していたんですか?」

「は、はい……実は、そうなんです……す、すみません」

 教師であるミハルに指摘され申し訳なさそうに答える如月ハニー。

「き、君達が常にアニメタウンの各所に、すぐに現れる事が出来たのは……この地下通路を利用していたからなんだね」

「あ、ああ……この地下通路は、緊急時には一般市民が避難できる様に広く造られているから、街中に通路やフロアが繋がっているんだ」

 鬼太郎の質問に平常な状態で答えるキッド。

 

 そして一行は修司の自宅真下に在るメインフロアに辿りついたのだが、其処で目にした光景は悲惨なものであった。

「こ、これは……!」

 メインフロアは荒れており、コンピューターなどの機械はマシンガン等の銃器で破壊され、床の彼方此方には破壊された機械の欠片が点在していたり、床が抉られていたりと、徹底的に破壊活動が行われていた痕跡が遭った。

 そして其処では、先にメインフロアに辿りついていた修司こと聖龍使いが破壊されたフロア中央の巨大コンピューターに寄り掛かる傷だらけのウッズに話し続けていた。

「ウッズ! ウッズ! しっかりしろ、ウッズ!」

「……ううぅ……」

 修司に話しかけられるウッズであったが、滅法痛めつけられていたのか、話すのも億劫な状態。

「と、父さん!」「兄貴……!」

 その光景を目の当たりにした、ウッズの息子のジュピターキッドことジュニアと、弟のウェルズも寄り掛かるウッズに駆け寄った。

「父さん、しっかり!」「兄貴、大丈夫か……!?」

 動揺するキッド、そして傷だらけで足を引き摺りながらヨロヨロと駆け寄るウェルズの問い掛けに、ウッズはそっと目蓋を開けて答える。

「う……じゅ、ジュニア……ウェルズ……そ、それに…………修司様……も、申し訳ありません……メインフロアに突然、カラス天狗や豹の爪の手下達が攻め込んできて、どうしようもありませんでした……! も、申し訳ありません……ッ!」

「良いんだウッズ! それよりもお前が……!」

 呼吸が弱くなっているウッズを心配して修司が声をかけた――――と、その時。

「ん? みんな! ちょっと待て……」「ん!?」

 突然、青児が皆に掌を突き出しながら言い放った。そんな青児にタキシード仮面が歩み寄ると、青児は静かにメインフロアに置かれていたロッカーを指差した。

 タキシード仮面や周りの皆が目を向けてみると、ロッカーが少しばかり振動していた。

「お、おい、青児……!」「ああ、誰か居る……!」

 恐る恐るロッカーに近寄るタキシード仮面と早見青児、まずタキシード仮面がロッカーの戸に手を掛け、青児がロッカーに銃口を突き向けながら構えた。

 そしてタキシード仮面は一気にロッカーの扉を開けた。

 青児が銃口を向けながらロッカーの中に目を向けると。

「ん……! き、君達!」「え……あ! 君等は!」

 ロッカーの中を見て、銃を構えていた青児も、戸を開けたタキシードも驚いた。其処にはメインフロアで聖龍隊の帰りを待っていたクイーン・アースの王女であるミミナと、しんせん組の一員である月影トシの弟である幼稚園児のケイが、恐怖に満ちた表情で身を震えさせていた。

「み、ミミナ! ケイ!」

「おーーい、みんな! ミミナにケイが居たぞッ」

 二人の姿を確認したタキシードに青児は声を上げて皆に二人の存在を知らせた。

「み、ミミナ!」「ケイ、無事だったか!?」

 ミミナに慕われている宇崎星夜と、ケイの兄であるトシが急ぎ二人の下に駆け寄る。

「せ、星夜ーーっ!」「にいちゃーーッん」

 ミミナとケイは泣きながら星夜とトシに抱き付き、話し出した。

「うぐ……みんなを待っていたら、突然たくさんの人達がフロアに入り込んできて……」

「ぼ、ぼく達二人を、ウッズさんが急いでロッカーに押し込めたの……そ、それから今まで、ずっと怖くて……ウグッ」

「そ、そうだったのか……」

「二人とも、もう大丈夫だぜ。安心しな」

 泣きじゃくりながら話すミミナとケイに、トシと星夜は優しく宥めてあげた。

 

 一方、ウッズは切羽詰まった様子で修司達に事態の状況を伝えていた。

「しゅ、修司様、私は大丈夫です……そ、それよりも修司様……! で、データが……メインコンピューターに蓄えて置いたデータ―が全て、奴らに奪われてしまいました……!」

「な、なに!?」

 これを聞いた修司は深く動揺し、そんな修司にウッズは続けて語った。

「で、データの中には、今まで異次元亜空間ゲートで繋がった異世界や、未開拓の異界に関するデータはもちろん……聖龍隊の皆さまに関する個人情報や、今までの私達の活動内容が入っています……。て、手を打たなければ、い、いけま、せん……」

 そう言うとウッズは再び気絶してしまった。

「ウッズ! ウッズ! ……クッ、なんてこった……ッ!!」

 修司は苦悶の表情で立ち上がり、そのまま歩き出した。

「しゅ、修司……?」「そ、総長? どちらに……?」

 ミラーガール、ナースエンジェルが続け様に声を掛けると、修司は背中越しで二人に言い返した。

「……ミラーガール、俺はちょっと行かなきゃ為らねえ所が出来た。後は任せた」

「え……?」

「ナースエンジェル、ウッズの事、任せたぞ」

「え? ……は、はい……」

 雰囲気が一変した修司の様子に半ば呆然としてしまうミラーガールとナースエンジェル。

 そして修司は異様な雰囲気を醸し出しながら歩み出す。

「お……おい、修司……」「に……義兄さん……?」

 様子が一変した修司に動揺しながらもメタルバードとキッドが声を掛けるものの、修司は返事をせずに歩み続ける。

 そしてメインフロアと地下通路の入り口付近で立ち尽くしていた聖チャペル学園の皆皆と観柳斉の横を通り過ぎた丁度その時、修司はピタリと立ち止まり不意に後方に居る花丘イサミに話しかけた。

「おい……イサミ」

「ッ! な、なんですか? 修司さん……!?」

 不意に声を掛けられたイサミは酷く驚き、そして恐る恐る修司に訊き返す。

 すると修司は異様なまでの威圧感を背中から放ちながらイサミに言い放った。

「いやな、前もってお前に謝っておくけどよ……」「……?」

「……俺、下手したら……お前の知人である連中……そう、芹沢工業の奴らだけど……何人か…………」

 次の瞬間、修司は後方のイサミはもちろん、仲間である聖龍隊や団兵衛達の方を振り返って言い放った。

「何人か…………殺しちまうかもしれねえや……!」

『!!』

 振り返った修司は眉間にしわを寄せ、表情は恐ろしいほど強面となり、眼つきは殺意や怒りに満ちたおぞましい眼光を放ちながら皆に視線を向けた。向けられた皆は顔面蒼白となり愕然とした。

 

 そして修司は皆に言うと再び鬼の面を装着して突然駆け出して行った。

「あ、修司!!」

 ミラーガールが呼び止めようと声を掛けるが、修司の姿はすでに見えなくなっていた。

 そんな修司の一変した様子と、先ほどの言動を耳にしたメタルバードは酷く動揺しながら口を開いた。

「た、大変だ……! あの野郎、本気で殺るつもりだ……!! ウッズを痛めつけた連中を、本気で斬る気だぞッ!」

 これを聞いたイサミが顔を蒼くさせながら叫んだ。

「た、大変! 急いで聖龍使いを……修司さんを止めないと! 芹沢の御爺様も、他のカラス天狗や天狗四天王達も本気で斬り殺しちゃうよ!」

 このイサミの発言を聞いて、今度は祖父である観柳斉が声を上げる。

「な、何じゃと!? おい、イサミ! それはどういう事じゃ……!? せ、芹沢って、あの芹沢鴨之丞の事かッ? な、何故あいつが……? い、いや、そういえばさっき巨大な乗り物に乗って現れた天狗も、確か鴨之丞が会長を務めている芹沢グループの一人じゃったな!? ど、どうして鴨之丞の部下が豹の爪や黒天狗党の一員なんじゃ? あ、あいつまさか……二つの犯罪組織と何か関わりがあるのかッ! 答えるんじゃイサミ!」

 自分の旧知の仲である芹沢鴨之丞が犯罪結社と関係を持っているのかと一抹の不安を感じた観柳斉が、困惑しながらも孫のイサミに問い掛け続ける。

「お、御爺ちゃん……」

 言い迫られるイサミは何と答えようか戸惑っていた。

 

「し、修司…………うん……!」

 その時、ミラーガールは何を想ったのか突然駆け出して行き、地下通路を進んで行った。

「あ! ミラーガール……!」

 プルートが声を掛けるものの、彼女は既に通路の奥にまで駆けて行ってしまった後だった。

 

 そんなミラーガールの切羽詰まった様子を見たメタルバードは血相を変えて皆に言い放った。

「お前達! 恐らく修司は……いや、聖龍使いは今、豹の爪(パンサークロー)が本腰を構えている黒天狗党の本拠地、芹沢グループ本社に向かった筈だ! そしてミラーガールも恐らく聖龍使いの後を追ったんだろう……オレ達もすぐさま芹沢グループに急行するぞ! ウッズを傷つけられ、頭に血の上った聖龍使いの事だ……下手したらカラス天狗達だけじゃなく、今奴らに捕えられている花丘魁博士の身にも危険が及ぶ可能性が高い!」

「な、なに!? か、魁も……息子の魁が捕らわれている!?」

 メタルバードの言葉に驚愕する観柳斉。

 

 そしてメタルバードは最後に、聖龍隊の皆に指令を言い放った。

「聖龍隊! オレ達も芹沢グループに速急に向かうぞ! 良いか、これが恐らくは……豹の爪(パンサークロー)と黒天狗党との、最後の戦いになる! 気を引き締めて行くぞッ、最終決戦だ!!!」

 

 

 

 そして次回、聖龍隊と黒天狗党・豹の爪の連合軍の決戦が幕を開ける。

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