【聖龍伝説:第二章】英雄達の日々   作:セイントドラゴン・レジェンド

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 新章突入いたします。一ページ目はギャグテイストが強いです。更にアッコちゃんのキャラが崩壊しています。


現れた冒険家

[賑やかな修司宅]

 

 ある穏やかな春晴れの日。

 この日、修司の家には聖龍隊の面々が集まり、久々の穏やかな日を過ごしていた。皆、春の陽気な気候に和んでいた。

 そして筒抜けになっている一階と三階に艶やかなバイオリンの音色が響いていた。

 リビングのドアを全開して、部屋の中でバイオリンを奏でていたのは海王みちるだった。

 そしてリビングではうさぎや衛、ちびうさ等のセーラー戦士達。みちると同居している天王はるか、冥王せつな、そして土萠ほたる達の姿が見受けられる。

 一緒に聴き惚れている面々では、ハニーに聖羅、そして青児。

 余りにも綺麗な旋律に驚きながらも聞き惚れているさくらや知世。そして小狼と苺鈴。

 りりかやデューイの横で、星夜に寄り添いながらミミナも一緒に穏やかな面立ちで聴いていた。

 イサミやソウシも静かにその音色を堪能していた。トシだけはウトウトと半ば眠い様子。

 

 一方修司は自室にて事務処理を施していた。

 机に向かい、書類と向き合っている。

 しかし突然立ち上がると、そのまま部屋を出た。

 そして一階のリビングのドアの側で身を隠して待った。

 

 一方リビングで演奏してたみちるのバイオリンの音が響き終わり、聴いていた面々は軽く拍手をみちるに送った。

「いやぁ、みちるさんのバイオリンはホントに綺麗だよね」

 うさぎがみちるのバイオリンを褒める。

「え、えぇ……ホントに凄く綺麗……」

 さくらも目を輝かせて絶賛した。

「ほんと。さすが天才バイオニリストと謳われているだけの事は有るわ」

「素敵です、みちるさん」

 ハニーと聖羅もみちるの演奏を誉めたたえた。

「フッ、君の美貌の方が素敵だよ」

 聖羅を見つめ、口説き始めたはるか。この時、何故か何処からともなくカメラのシャッター音が鳴っていたが、誰も気付いていなかった。

 と、そんな葉月聖羅に口説いている天王はるかを睨みつけながら海王みちるが冷たく告げる。

「はるか……寄りにも寄って私の前で女性を口説く訳?」

 みちるの表情は微笑みながらも怒りに満ちていた。

「そ、そう怒るなよ、みちる……」

 衛が恐る恐るみちるに言う。

「は、ハハハ。みちるさん、笑顔で怒るとせっかくの美貌が台無しですよ……」

 イサミが苦笑いしながら申した。

「そうですよ、みちるさん。そんなに怒ったらそれこそ貴女の美貌がダメになっちゃいますよ」

 ソウシも気障な素振りで話した。

 

「……お楽しみのところ悪いけど、皆さんちょっと良いかい」

 声のする方に目を向けると、リビングのドア手前に修司が立っていた。

「あ、修司さん」「どうした? 書類の整理終わったのか?」

 小狼と青児が修司に言うと、修司は無愛想な面立ちで答えた。

「ああ、今し方終わったよ。……タク、書類とか全部ウッズに任せたいんだが、アイツにも他に仕事あるしなぁ」

 修司の発言に、亜美とハニーが申した。

「でも修司くん。貴方はあくまで市長何だし、少しは事務処理の仕事も進んでやらないと」

「そうよ、修司くん。面倒な事は全部ウッズさんに任せてばっかじゃいけないわ。街の修繕活動だって書類とかの類が有るのは普通なんだし」

「ま、まぁ。そうだけどよ……」

「そうよ修司。面倒な事は他人任せだなんて虫が良過ぎるわよ」

「え?」

 突然修司の後ろから声がした。

 

 振り向くと其処にはアッコとウッズが皿に乗せたシュークリームを人数分台車に乗せて持って来てくれていた。

「あ、アッコ……」

「みんな、ウッズさんから皆にシュークリームのおやつよ。一緒に食べましょう」

「オッ、やった」「えっ、シュークリーム!?」

 アッコの呼び声に星夜が反応すると、トシもシュークリームと言う言葉に反応し、飛び起きた。

 そしてアッコとウッズは台車をテーブルのすぐ横まで移動させ、乗せて来たシュークリームの乗った皿を並べ始めた。

「……そう言えば修司。貴方何故、ドアの真横で隠れるように立っていた訳?」

「え? み、見てたのか……」

 修司は頬を掻きながら呟いた。そして気まずそうに言う。

「い、嫌な……態々演奏中に部屋に入るのもどうかと思って……」

 修司の台詞にソウシと星夜が応えた。

「何を言ってるんですか、自分の家だって言うのに」

「別に入って来ても大丈夫だと思うぜ」

「……」

 修司は神妙な面立ちで無言になった。

「ふふ、まぁそれはさておき、修司も一緒に食べよう」

「あ、ああ」

 アッコに言われ、修司も皆の所に歩み寄った。そして唐突に皆に訊ねる。

「……ところでお前等、気付いていないのか?」

「ん? 」「何にだ?」

 衛と青児が修司に訊き返す。

「……さっき、この部屋の中で妙な音がしたのを」

 修司は眉を吊り上げながら発言した。

「み、妙な音……?」

 小狼が不思議そうな面立ちで言うと修司が答えた。

「ああ。まるで、そう……カメラのシャッター音の様な……な!」

 すると突然、修司は懐からナイフを取り出して素早く投げた。

 ナイフは壁に、少し高めの位置に突き刺さった。

 その場の皆が修司の行動に驚いていると、更に驚く事が。

 なんと壁に突き刺さったナイフのスグ真下から変身怪獣が現れたのだ。

「へ、変身怪獣!?」「な、何でアナタ、其処に居るの?」

「は、ははは……い、いや、別に……」

 まことと亜美の質問に、変身怪獣は苦笑しながら返事する。

 

 そして現れた変身怪獣に、修司が詰め寄った。

「おい変身怪獣。お前何か隠してないか?」

 神妙な面持ちで睨みつけて話す修司に、変身怪獣はオドオドしながら答えた。

「い、いや……な、何も持ってないよ。ホラ」

 すると変身怪獣は自分の両手を前に出し、皆に何も持ってないのを確認させた。だが

「……オイ変身怪獣。ちょっと」

 そう言うと修司は彼の肩を掴み、少し前に引っ張り出すと変身怪獣の体を反転させ、皆に彼の背中を見せた。

「どうだ。何か有ったか?」

 修司が皆に向かって話すと、皆変身怪獣の背中を見て仰天した。

「ちょ、ちょっとオイ、変身怪獣」「お、お前、背中が」

 衛と青児が驚いた表情で口にした。

 

 何と変身怪獣の背中にインスタントカメラがめり込んでいた。

「やっぱりな」

 修司が呆れ顔で変身怪獣を睨みながら言った。

「は、はは……分かっちゃったか」

 苦笑しながら発言する変身怪獣に、修司が問い詰める。

「軟体生命体のお前ならこれぐらい造作も無い事だろうがっ。な~に隠し撮りしてやがるんだ、アァん?」

 修司は思いっきり変身怪獣を睨みつけて詰め寄る。

「まさか、女共を撮っていたんじゃないだろうな?」

 睨みながら問い詰める修司に変身怪獣は答えた。

「い、いや……お、女と言うかその……」

 話すのを躊躇う変身怪獣に修司は更に睨みを利かせて睨みつけた。

「ひ、ヒィィ……! あ、あのだな……じ、実は女は女でも、は、はるかを撮ったんだよ!」

 この変身怪獣の発言に天王はるかとの同居人のせつなが言った。

「は、はるかを撮って、どうする積りなの?」

「フッ、いくら僕が美しいからって隠し撮りはしないでくれよ。言ってくれるならいくらでも撮らせてあげるよ」

 カリスマオーラを放ちながら、はるかが言うと変身怪獣は透かさず言い返した。

「違う違う。俺はカリスマには興味ねえよ。男装の麗人には気がねえから……そもそもこれはそういった意味で撮ったんじゃない」

「それじゃ、何のためにはるかの写真を?」

 みちるの言葉に対し、変身怪獣は堂々と胸を張って返答した。

「うむ、題して……『天才レーサー天王はるか 女だらけのハーレムを作って美女たちに囲まれる!』っていうフレーズで週刊誌に売りつけようかと」

「何さらすんじゃっ!」「ウギャッ」

 変身怪獣の返答を聞き、彼にエルボードロップを繰り出す修司。

「テメエな、仲間の写真を週刊誌に売りつけようとはどういう神経しとんじゃボケェ!」

 顔を狂気じみさせながら怒鳴り散らす修司。更に修司はその顔のまま変身怪獣に言い続けた。

「そもそも、女だらけって男もいるぞ!」

「いやいや、それは大丈夫。カメラのアングルを調整してちゃんと女だけ写しているからよ」

 修司に続いてアッコも変身怪獣に問い詰める。

「ちょっと! はるかさんだけでなく、他の女の子まで写真に収めている訳でしょ」

 アッコが変身怪獣に向かって言うと、彼は答えた。

「ああ。ちょうどはるかが聖羅を口説いている場面だったからほとんどはるかと聖羅のツーショットだよ。あと背景にちょっとだけ他の女達が入り込んじまっているけどな」

「ちょっと! 何私とのツーショット撮っちゃっている訳!?」

 変身怪獣の返答に、思わず言い放つ聖羅。

「あっ、大丈夫だよ。週刊誌の方に頼んで目線を入れてもらうからよ……はるか以外は」

「何でボクだけ目線なしなんだ!」

「何を言うんだはるか。この写真はお前が主役なんだぜ」

「それ以前に! 週刊誌なんかに売りつけるんじゃねえ、このバカタレがぁ!!」

 更に怒鳴り続ける修司に対し、変身怪獣は言い返した。

「仕方ねえだろ。オレだって色々と金欠なんだよ。少しは金を稼がねえと」

「フザケテンジェネエゾ、テメエ! 金ならちゃんと少しばかりやってるだろうが!」

「いやな……全部パチンコで摩っちゃって……」

「お前ナーー! な~にギャンブルで大事な金を摩っちゃっていやがるんだ! そもそも聖龍隊の一員である者が賭博何かに手を出すんじゃねえ!」

 

 すると修司は掴んでいた変身怪獣の首を放すと、徐に腕を組み言った。

「……仕方がねえ。ギャンブル禁止も聖龍隊の法度に加えて置くか」

「ってオイオイ。そんなのも加えちゃう訳か?」

「ってゆーか、まだ法度とか言っちゃっている訳なの?」

 青児と衛が仰天しながら修司にツッコミを入れる。

 

 すると修司は真顔のドヤ顔で言い放った。

「……何なら、市長としての権限で街中のパチンコ店や競馬場……賭博という賭博、全部廃止にしようかな」

「って何オッカナイ顔で言っちゃっている訳!?」

「職権乱用にも度が過ぎるぞ! 」

 相も変わらず修司にツッコミを入れる青児と衛組。

 そして修司は変身怪獣に更に言い続けた。

「そもそも、前々から言おうと思っていたんだが、お前はもう少し真面目になれ。聖龍隊の女共はもちろん、街中でも人間に化けて一般の女に対してもナンパするし……」

 これに対し変身怪獣も反論した。

「オレから言わせてもらえば、お前は少し真面目過ぎる。ホント何人? いつの時代の人間? と思うくらい堅物だし」

 すると修司は反論した。

「何を言うんじゃお前は。大体、交際って言うのは互いに相手を良ぉく理解し合ってから順序良く……」

「ヒッ、お、お前、其処まで堅物だった訳か!?」

 修司の発言に驚く変身怪獣。

 その時、うさぎがニヤけながら修司に言った。

「それじゃ、例えば修司くんはどんな子と付き合ってみたい? てゆーかどんな子が好みなの?」

「えっ、そりゃ……て何を言わせようとするんじゃ!」

 思わず顔を赤くさせながら修司が怒鳴ると、今度は変身怪獣がこれまたニヤケながら言った。

「ヒヒ、どうせアッコだろうよ」「何言うとんじゃワレ(怒)」

 修司はブチギレながら変身怪獣を睨みつけた。

 

「何照れてるんだが」

「ホント。修司さんの事、一番に思っているじゃないですか、アッコさんは」

 レイとさくらが鋭い眼つきの修司に告げる。

「……」

 修司は顎をしゃくらせながらムスッとした。

「ホントだよなぁ。……あ~あ、俺にも彼女が欲しいぜ」

 突然、変身怪獣が暗欝な雰囲気で呟く。

「……仕方ねえだろ。獣人に惚れる女なんて中々いねえだろ」

 変身怪獣の言動に対し、修司が冷めた顔で言う。

「こうなったら……こん中から選んじゃおっかな☆」

 変身怪獣は皆の方を見ながら言った。

「オイっ、止めろよ変身怪獣!」

「テメエ、俺等の女に手を出そうと済んじゃねえぞ!」

 衛、青児が変身怪獣に向かい言い放つ。

「そうだぞ変身怪獣。何かしてみろ、俺が再生不能な状態まで切刻んでやるからよ」

 修司が横目で変身怪獣を睨みつけると、変身怪獣が言い返した。

「大丈夫大丈夫。お前の女には手を付けねえから」

 ウインクしながら、ちゃらけた態度で修司に言う変身怪獣。

 これに対し修司は言い返した。

「いや、お前の事だ。こん中の女なら誰でも容赦なく手を付けそうだ」

「いやいやいや、オレだって良識ぐらいはあるさ。幼い子に彼氏付き、カリスマ組は目を付けていないし、何より胸に山の無い女って色気ないし」

「バカ! それを言うな」

 修司は思わず変身怪獣の口を両手で押さえ、ふとアッコの方に目を向けてみると。

 

 アッコの顔は暗く、そして怒りに満ちていた。

「あ……」

 その顔を見た修司は思わず自分の顔から血の気が引いて来ているのを感じた。

『ヒッ!』

 そして同じくアッコの顔を見た、その他の面々もアッコの形相に恐れをなした。

 

「……ちょっと変身怪獣」「あっ、な、何……か……!」

 変身怪獣は恐怖で言葉が上手く出なかった。

「ちょっと……」

 するとアッコは変身怪獣の首根っこを掴み、そのまま引き摺りながら変身怪獣を部屋の外に連れ出そうとした。

「ちょ、ちょっと待て……待ってくださいアッコ様……わ、ワワワ……! だ、誰か助けてくれ、頼む!」

 変身怪獣はリビングの部屋のドア枠に、ギリギリ手を掛け必死に足掻いた。

「た、頼むっ……だ、誰か……! あ……アアアアァァァァ……!!」

 そしてドア枠から手が引き離され、その直後に変身怪獣の断末魔が響いた。

『…………』

 その場の皆は蒼褪めた表情で、言葉を失くしながらもタダ見ているしかできなかった。

 

 そしてアッコが両手を叩きながら戻ってきた。

「……ふぅ~、スッキリした」

 満面の笑みで帰って来たアッコの顔を見て、修司も皆も苦笑するしかなかった。

 

 

 

[掛かってきた電話]

 

 そして改めて皆でシュークリームを食べながら休息をとった。

「ウグウグ……いや~、いつもご馳走さまっす、ウッズさん」

「いえいえ。別に大した事では」

 食べながら星夜がウッズに礼を述べる。

 

 すると其処に、体を這いずりながら変身怪獣が入って来た。

「……お……おま、えら……」

 戻って来た彼の体は原形を留めていなかった。

「「う、うわ……」「ヒデエな、変身怪獣」

 惨たらしい姿を見て、衛と青児が冷汗を掻きながら述べる。

「ひでえよ……こ、ここまでヤルか、普通??」

 擦れ声の泣き声で変身怪獣が呟く様に喋る。

「……命が有るだけでも、マシじゃ無い」

 アッコは変身怪獣を見下しながら睨みつけて告げた。

「な、なんかアッコちゃん。最初会った時から随分性格変わっちゃってない?」

「そうね。これもやっぱり、彼氏の修司くんに感化されちゃったのかしら……」

 互いの顔を見ながら小声で会話するうさぎと美奈子。

「……」

 修司は冷めた顔のまま、何も言えなかった。

「……はぁ~、それにしても…どうしたら胸が大きくなれるのかしら」

「ブーーッ……」

 突然のアッコの発言に思わず吹いてしまう修司。

「なっ、なに急に言い出しやがるんだ、お前は……!?」

 修司は驚愕の表情でアッコに訊ねる。

「だって……やっぱり気になるんだもの」

 上目使いで修司に言い返すアッコ。

「あ、あの、みんな……みんなは、どうしたら胸が大きく」

 アッコが皆に訊ねようとすると修司が笛を思いっきり吹いた。

「アッコーー! オマ、お前。な、な~に男共の前でそんな事が言えるんだよっ。場を、場を考えなさいっっ」

 修司はテンパリながらアッコに言い放つ。

「そういや……こん中では誰がバスト大きいんだろうな」

 思わず衛が呟くと、修司が再び笛を吹き鳴らして制止する。

「まーーもるくん、まーーもるくん。君も何を言っちゃっているんだい? 見ろ、男子はもちろん、女子にも顔を赤くしている奴が居るだろ。お願いだからそんな破廉恥な言葉言わないで!」

 修司は笛を吹き、涙目になりながらテンパッた言動をした。

 

 これを見た一部の女子たちは。

「……何だか、修司さん以前にも増して感情豊かになってない?」

「あ、うん。確かにそうね」

「最初の頃は結構根暗な所が目立っていたけどね」

 修司の言動に対して、微笑みながら話し合うイサミ・りりか・苺鈴。

 

 

 その時、電話の受信音が辺りに鳴り響いた。

「ん? オイ修司、電話だぞ」「ああ、そうだな。ウッズ」

 変身怪獣に指摘されて、修司はスグにウッズを呼んだ。

「はいはい。今お持ちしました」

 そう言いながらウッズは手に電話機を持ち上げる様にして運んできた。これを見ていた面々は内心思った。

(やっぱり修司って、金持ちなんだなぁ……)

 

 そして修司はウッズの持って来た電話に手を掛けた。

「はい、もしもし。市長の小田原だが」

 すると電話の向こうから初老の男性の声が受話器から零れ出てきた。

「もしもし市長。大変です」「どうした署長、また何か?」

 電話の相手は警察の署長だった。

「げ、現在ハイウェイにて移動していた現金輸送車が謎の集団の襲撃を受けていまして……! し、至急、聖龍隊の派遣を…!」

 署長は慌てた口振で話した。

「アンタなぁ。少しは警察だけで対処しようとは思わない訳? 本来そういった事件はアンタ等の役目でしょうが。他力本願も度が過ぎるとアレだよ」

 この修司の発言に、仲間たちは内心思った。

(いつもウッズさん任せで仕事しているのに、言えた口か?)

 そして、これを聞いた署長も思わず反論する。

「何を言ってるんですか! アンタこそ毎度毎度まだ子供の英雄に戦わせたり、聖龍使いの様な高齢の御年寄に無茶ばっかさせている癖に偉そうな事言うんじゃないやい!!」

「ウ……そ、そりゃ、そうだけど……」

 署長に言われ、思わず口を噤む修司。

「プッ、い、言われてやんの……」

「あ、ああ。それに高齢って電話の相手がその年寄りくさい男なのにな……」

 笑いを堪えながら青児と衛が呟く。

「それじゃ、後はお願いしますよ! 私等だけじゃ対処しきれないんですからね。この街の危険な状勢には……」

 署長は最後に気欝な口調で修司に言うと、電話を切った。

「ふぅ~、それじゃ、皆さま行きますか」

 修司は受話器を置くと皆に言った。

「そんじゃ行くか。オレも今ちょうどシュークリーム早食いで食ったところだし」

 修司に続いて変身怪獣も口の周りにクリームを付けながら告げた。

 

「……ところで、青児、衛」「な、何だ?」「ん?」

「……悪かったな。11のガキが年寄りくさくてよ」

 恐ろしい眼光で睨みつけながら二人に喋る修司。

『ヒィッ』

 二人が驚いた瞬間、修司は手早く、二人がまだ手を付けていなかった彼等のシュークリームを掻っ攫い、口いっぱいに頬張った。

 

「ああっ!」「お、俺等のシュークリーム!」

「食べるのが遅いのがいけないんだぜ。あむ……」

 修司はシュークリームを頬張りながら涙目の二人に語る。

「お、お前なっっ」

「俺たちゃ先にコーヒーに手を付けていたんだから仕方がねえだろっ」

 

 すると修司は二人に対して真顔で言い放った。

「あのな、衛、青児。この世はな、非情なんだよ。ヤルかヤラれるか、奪うか奪われるかの世の中なんだよ。自然界にもあるだろ、弱肉強食という無情の掟がよ」

 真顔で、しかも生気のない目で呟くように言い放つ修司に、青児も衛も何も言えなかった。

 

「そ、それにしても……」「修司くん、偉く耳が良いわよね」

「そうよね。私もみんなほど修司くんとは付き合いが長くないけど短い内にホント微かな話し声さえも聞き取っちゃうわよね」

 レイ・亜美・みちるの発言に対し、またも修司が真顔で、今度は目を細めながら言い放った。

「俺が地獄耳なのは生まれ付きなんだぜ。お前等も、ちゃんと覚えて置くんだぜ」

 そう言うと修司はリビングから出て、現場に急行した。

 そんな修司は内心思っていた。

(……俺だって地獄耳立てたくないんだよ。でも人の発言や言動にどうしても敏感になっちまうんだ。人が何を言っているのか、気にしちまうんだよ……)

 

 修司は昔、周りから傷付く様な言動を言われてばかりであった為どうしても他人の言動に耳が行ってしまうのである。

 

 

 

[飛んでいく武人と現れた冒険家]

 

 その頃現場であるハイウェイこと高速道路のド真中では現金輸送車が集団で襲われていた。

襲っている者は顔にマスクを被った豹の爪(パンサークロー)と何故かその中には黒天狗党のカラス天狗達も混ざっていた。

「よいしょっと、おいカラス共! チンタラやってないでサッサと運び出しやがれ!!」

 豹の爪の下っ端がカラス天狗達に向かって命令口調で叫ぶ。

「わ、分かりましたよ……」

 カラス天狗達は怯えながら現金輸送車から札束が入った袋を運び出して行った。

 

 その時。そんな行為をしていた彼等を見ていた人物が居た。

「何じゃ? 何をヤッとるんじゃ、この若者共」

 そしてその人物は、豹の爪の下っ端とカラス天狗達の前に姿を現した。

「お前さん達、何をやっているんじゃ?」

「アァン? 何だこのジジイ。邪魔だな、殺っちまうか」

「ちょ、ちょっと! 殺すのはいくら何でも……」

 殺気立つ豹の爪の下っ端に対し、制止しようとするカラス天狗だったが。

「ウッセエ! テメエ等は黙って俺等に従っていれば良いんだよ!」

 制止するカラス天狗に向かって罵声を浴びせる下っ端。

「何じゃ? このワシと一戦オッ始めようと言うのかい? ヤレヤレ、何とも血の気の多い連中じゃな」

 老人はそう言うと、腰に付けていた茶色いロープ状の物を手に取った。

「……ふぅ~、そんじゃ、若いもん共に御灸を据えてやるとしますか」

 

 

 

 その頃、聖龍使いは。

「このお~ぞらに 翼をひろ~げ……♪」

「ウッセエよ! 頼むから黙っていてくれ。あ、足が攣りそうだ……」

 メタルバードの両足にぶら下がりながら、空を飛んで飛行移動していた。

「なんか可哀そう。メタルバード」

「そうよね。ただでさえ修司くん重いのに其処に聖龍使いの甲冑まで加わっているんだものね」

 メタルバードの苦悶に満ちた表情を見ながら一緒に滑空していたセーラームーンとマーズが呟いた。

 この時一緒に飛行していたのは、飛行可能なセーラー戦士達とさくら。そしてオウムに変身したミラーガール。

「いや~しかし、ホンにセーラー戦士やさくらが羨ましいでござる。自力で空を飛べるとは……其も一度は経験してみたいでござる」

「お前な~……風の力使ったりして空飛べない訳?」

「無茶でござる。そんなに簡単に飛べるのであればライト兄弟は苦労してないでござる」

「って、何で其処にライト兄弟が出てくる訳!? そりゃ、あの兄弟はそうかもしんねえけど、お前は自然の力が使えるだろうが!」

 聖龍使いとメタルバードが言い合っている時、ふとさくらが聖龍使いに訊ねた。

「で、でも聖龍使い。確かこの前、貴方空を飛んでいたんじゃ」

「あっ、アレはじゃな。正確には飛んでいたのではなく、ただの跳躍つまりジャンプしていただけなのじゃよ」

「ほっ、ほえぇっ。で、でも簡単に10階建ての建物の上まで飛んで行ってたけど、あれも跳ねていただけなの!?」

「そうじゃが。まぁ、聖龍使いの甲冑を着ている時は、ある程度の身体能力も飛躍しておるしな」

 聖龍使いの発言に驚くさくら。其処にオウムになったミラーガールも会話に加わった。

「確か、修司って元から身体能力凄いのよね。学校の体力テストでも走り幅跳びで6m40も跳べたし……」

「え!? ほ、ホントですか?」

 再び驚いてしまうさくらにミラーガールは答える。

「うん。確か握力も凄かったわよ。この前学校帰りに親友達と自販機で缶ジュース買ったんだけど修司ったらその時まるでアルミ缶みたく意図も簡単にスチール缶を握りつぶせたし」

「す、スチール缶を握りつぶしたぁ? 」「す、凄いわね……」

 ミラーガールの発言に仰天するジュピターとマーキュリー。

「お、おい、ミラーガール……お、お前何とか修司をいや聖龍使いを鳥か何かに化けさせる事できないのか?」

 苦悶しながらも、ミラーガールの語りかけるメタルバード。それに対しミラーガールは答える。

「そうね。今度鏡の国の女王様に訊いてみる。もしかしたらセイント・コンパクトにそんな機能有るかもしれないし」

「あっ、そうじゃ。それならミラーガール。拙者は鷹が良いでござる、タカが」

「な、なんでタカ何だよ、タカに!」

 聖龍使いの発言に訊ねるメタルバード。

「ん? だってタカって強いし雄大だし、鳥の中じゃカッコいい方じゃないか」

 

 

 そんな会話をしながら現場に向かっていく面々。

 一方、空を飛べない面々は高速道路の途中までウェルズの運転するジープで向かっていたのだが騒ぎで生じた渋滞により車が前に進めず、自力で向かうしかなかった。

「まったく、何で高速道路の真ん中で現金輸送車を襲うんだが」

「青児さん、文句言わずに行きましょう」

「でも、こんな真昼間から、それも高速道の真ん中で輸送車を襲うって……まさか」

 青児・キューティーハニー・ミスティーハニー等は停止している車の隙間を駆け抜けながら現場に向かう。

「はぁ、はぁ……さ、さすがに此処まで走り込むと息が上がるわ」

「ほ、ホントだな……」

「はぁ……も、もうダメ……」

 現場まで走って行くイサミ達は、少しばかりヘバッてしまってた。

「へへ。おっ先ーー」「先に行ってるよ」

 ヘバッているイサミ達を、横から星夜とデューイが超能力で駆け抜けていく。

「あっ」「ずるいぞっ、お前等」

 イサミとトシの声も届かず、先に行ってしまう星夜とデューイ。

 

 

 

 そんな最中、渋滞で身動きの取れない車から一人の少女が顔を出した。

「あ~あ、せっかく春奈ちゃんや愛ちゃんと遠出しようと思っていた矢先に渋滞だなんて」

「仕方が無いわよ結ちゃん」

「文句言っても渋滞が解消される訳じゃないんだから」

 車の中に同席していた他の二人の少女が顔を出した少女に告げる。

「そうだよね……あ~あ、私も聖龍隊の人達みたいに現実でも戦ってみたいなぁ」

「無理言わないの結ちゃん」

「そうそう、私たちは結局、電脳世界でしか戦えないんだし」

「ふぅ、そうだよね。そんじゃ、後は聖龍隊の皆さまに期待するとしますか……」

 

 別の車では、ある男と女が車内で会話していた。

「へぇ~、あれが今をときめく聖龍隊の隊士か……カワイコちゃんばっかで、僕ちゃんもうモッコリしちゃうなぁ」

「こらリョウっ、あの子達は町の治安を護る為に頑張っているのに色目使うんじゃないよっ」

 同じく渋滞で身動きの取れないワゴン車から身を乗り出して聖龍隊を見物していた男に、同乗者の女性が怒鳴る。

「はいはい、そんなに怒らないでくれよ香。それにしても街の治安を護るのに、あんな若い子たちを戦わせるなんてな……」

「り、リョウ……」

 何処か虚しさが漂う表情をする男の顔を見て、女性は憂悶な表情で男の顔を見つめてた。

 

 

 一方、先に現場に着いたのは外部系セーラー戦士達。

 

「あ! こ、これは……!」「きゃっ、な、何なの、これは?」

 目の前の状況にウラヌスとネプチューンは驚いた。

 

 何と豹の爪の団員やカラス天狗達がボロボロの状態で痛めつけられていた。

「こ、これって……他のみんなが既に来て、やっつけてくれたのかな?」

「し、しかしそれなら、連絡ぐらい来ている筈ですが……」

 サターンとプルートが話していると停止している現金輸送車の屋根の上に、一人の老人が立っていた。

 

 老人は四人を見つめると言い放った。

「何じゃ? また別の連中か?」

 四人は車の上の老人に気が付いた。

「え?」「だ、誰!?」

 ネプチューンが訊ねると、男は四人の前に飛び降りて来た。

 

 老人の前身は茶色いボロボロの探検服を着こんでおり、頭には服の色と同じ帽子。

 背中には探検服同様、ボロボロになったリュックサックを背負っており、口の周りにはフサフサの白い髭が生えていた。

「まさか、お嬢ちゃん達もコイツ等の仲間じゃないだろうね」

 老人は四人に向かって訊ねた。それに対しネプチューンが答える。

「ち、違いますわ。私たちは襲撃事件を聞き付け、此処に駆けつけて来たんですのよ」

「あ、貴方こそ何者なんだ?」

 ウラヌスが問い詰めると、老人は高笑いしながら名乗り始めた。

「わっはっは。ワシの名か。ワシの名はワイルド。世界を股に掛ける冒険家じゃ。通称《危険を愛する男》じゃ。わっはっは」

 高笑いしながら自己紹介をする老人、いやワイルドを目の当りにしていると

 ワイルドの後ろに倒れていた豹の爪の団員がゆっくりと起き上がった。

「……くっ、こ、このクソジジィが」

 団員は徐にワイルドに機関銃を向けた。

「あっ、危ない!」

 サターンが声を上げた、次の瞬間。ワイルドは腰に付けていた鞭を右手に取り、その鞭を団員に向けて振り放った。そして物の見事に団員が所持していた機関銃を奪い取ったのだ。

「……お前さん。こんな物をブっ放してお嬢ちゃん方に当たってしまったらどうする積りなんじゃ」

 そう言い終わり、機関銃を自身の足元に置き捨てるとワイルドは再度鞭を団員に向けて放ち、鞭は団員の顔に直撃、団員は気絶してしまった。

「たく、アニメタウンに来て早々こんな事に出くわしてしまうとは……危険な目に遭うのもワイルドの名前たる証なのかのぉ。わっはっは」

『…………』

 外部系の四人は思わず無言になってしまってた。

 

 その時。

「おーーい、皆の集、無事かーー」「ひぃ~~、も、もう足が限界……」

 空を滑空しながら聖龍使いとメタルバード。そして他のセーラー戦士達とさくら、ミラーガールがその場に到着した。

「みんな、大丈夫?」「ラミパス」

 セーラームーンが声を掛け、ミラーガールが元の姿に戻る。

「あっ、みんな」「……メタルバード、何だかしんどそう」

 皆の姿を確認したプルートに苦悶に満ちた表情のメタルバードを見て悲観するサターン。

 

 そんな時である。

「グルルル……誰だ? 我等が豹の爪の活動資金収集を邪魔する輩は……」

 何と皆の目の前に、ピューマの女怪人が姿を現した。

「ん? 何じゃ? また別の……それも猫の女が現れおったわ」

 ワイルドの発言に、ピューマ怪人は怒り口調で言い返した。

「猫では無い! 私はパンサーゾラ様の指示の下、本日活動資金調達を命じられたピューマー様である! お前か! 私の部下や雑魚のカラス共を痛めつけてくれたのは!?」

 するとワイルドはハッキリと言い返した。

「そうじゃが。お前さんも車の運転手を痛めつけて現金を奪おうとした輩の一派か?」

 訊ねられたピューマーはワイルドに答えた。

「そうだ! コイツ等に命じて輸送車を襲わせていたと言うのに何処ぞの解らぬお前なんかに妨害されるとは……! 嬲殺してくれるわ!」

 そう叫ぶと怪人はワイルドに向かっていった

「何じゃ? このメスもワシに向かってくるのかえ? だったら容赦せんぞ」

 そしてワイルドは再び鞭を手にすると、力いっぱい振り放った。

「ぎゃああ!!」

 鞭は怪人の体に直撃し、怪人は悲鳴を上げた。

「な、何者なのじゃ……あの老人は」

 聖龍使いが驚いていると、怪人は眼つきを更に鋭くさせワイルドを睨みつけた。

「こ、このジジィが! 調子に乗ってんじゃないわ!!」

 怪人はワイルドに向かっていった。

「何じゃ? まだヤロウって言うのかい。そんなら容赦せんぞ」

 そしてワイルドは、鞭を縦横無尽に振り放ち、怪人の体をボロボロにしていった。

「グワーーッ」

 怪人は普通な叫びを上げながら痛めつけられていく。

「す、凄い……」「あ、ああ……何もんだ? あの爺さんは」

 ミラーガールとメタルバードが驚愕する中、怪人の怒りはピークに達した。

「ぐむむ……! お、己、何処ぞの解らぬジジィに……シャーーッ」

 怪人は動物の泣き声に近い奇声を上げ、ワイルドに向かっていった。

「ふむ……仕方ないのぉ。正直女子(おなご)に対して横暴な真似はしたくないのじゃが……しょうがない」

 ワイルドは突進してくる怪人の攻撃を横に避けると瞬時に鞭を怪人の首めがけて放った。

「ウッ」

 鞭は怪人の首にしっかりと巻き付けられワイルドは怪人の突進力を利用し、そのまま怪人をアスファルトの道路に叩き付けた。

「グワッっ」

 怪人は道路にめり込み、激痛で動けなくなってしまう。

「良し、今じゃ……おりゃーー!」

 聖龍使いは倒れている怪人に止めの一刀を振り下ろした。

「ギッ、ギャアアアアァァ……!」

 聖龍剣を突き刺され、怪人は断末魔を上げながら消滅した。

 

 そして騒ぎが収まり、倒れていた豹の爪の団員やカラス天狗達は駆けつけたナースエンジェルの治癒能力で介抱されそのまま駆け付けた護送車の中に入れられていった。

「いやぁ、忝(かたじけな)いのぉ、ご老体。拙者等はほとんど何もしてないでござるよ」

 聖龍使いはワイルドに頭を下げて礼を述べる。

「いやいや。成り行きでやってしまっただけじゃよ。そんなに頭を下げなさるな、ご武人よ」

 ワイルドも頭を下げる聖龍使いに返す。

「そ、それにしても……まさか、あの豹の爪の連中を一掃してしまうなんて……」

 遅れて駆け付けたキューティーハニーはワイルドの所業に驚きの色を隠せなかった。

「わははっ、こんな危ないもんをブっ放すしか能の無い小童(こわっぱ)共を躾けるなんて、造作も無い事じゃよ」

 ワイルドは高笑いしながらキューティーハニーに返答した。

「そ、それに、女怪人の方まで軽く投げ飛ばしてしまうなんて信じられない……そ、それも鞭一本だけでなんて」

 ミスティーハニーも姉と同様、驚きの面立ちで告げた。

「わっは、あんなメスの猛獣など、ライオンの群れを手懐けるより楽勝だったわ」

 胸を張りながら、ワイルドは答えた。

 

 

 一方、イサミ達は今回の一件に疑問を持っていた。

「……何で黒天狗党の一味であるカラス天狗達まで豹の爪(パンサークロー)に協力していたんだろう」

 イサミは顔を傾げながら呟いた。

「そうだよな。黒天狗党と豹の爪が一緒に居るだけでも不思議なのに……」

 トシもいつも以上に頭を使って、考えていた。

「確か以前彼等は加賀美さんの家に襲撃した時は双方とも真っ向から衝突していたのに……」

 ソウシも今回の一件に首を傾げ、悩み更けていた。

「ふぅ、結局僕達、今回は何もできなかったね」「ああ、そうだな」

 デューイと星夜は何もする事が無かった事に、少し残念がった。

「もう、星夜もデューイも……無事に済んだんだから良かったじゃないのよ」

 ナースエンジェルは残念がる二人に対して告げた。

「それにしても、お爺さんはいったい誰なの?」

 ちびムーンが首を傾げながらワイルドに質問した。

「ほっほぅ、これはカワユイお嬢ちゃんじゃのぉ。ワシの名はワイルド! 世界を股に掛ける冒険家じゃよ! ほぉほっほ」

 ワイルドは笑いながらちびムーンの質問に答えた。

「そ、それじゃ、ワイルドさんは何でこの街に来たんですか?」

 マーキュリーが訊ねるとワイルドは平然とした顔で、胸を張って答えた。

「うむっ。ワシがこの街に来たのには二つ理由が有るのじゃ」

「ふ、二つ?」

 マーズが不思議そうな表情をすると、ワイルドはそれに続いて答えた。

 

「うむ。一つはこの町に居るワシの息子達と孫に会いに来た事じゃよ」

「え? む、息子さんにお孫さんがこの町に住んでいるんですか?」

 ジュピターが驚くと、ワイルドは更に続けて言った。

「ああ、そうじゃよ。息子達はこの町で暮らしながら町の為に働いていると伝え聞いておる。確か長男の息子、つまり孫も一緒に住んでいると耳にした」

「そ、そうなんですか……あ、それともう一つの理由って、一体……?」

「ああ、それはじゃな……」

 プルートが訊ね、ワイルドが答えようとした、その時。

 

 

「はっ、はっ……お、おーーい、お前達……」「あっ、ウェルズさん」

 息を切らしながら、ウェルズが皆の所に辿りつきミラーガールが最初に気付いた。

「ど、どうなった? げ、現金輸送車の強奪は、阻止できたのか……」

 呼吸を荒くしてウェルズが訊ねると、聖龍使いが答えた。

「うむ。この御老人が今回の功労者じゃよ。彼が居たからこそ、今回は即急に事が終わったんじゃ」

「え、この御老人って……え? ま、まさか……!?」

 聖龍使いに言われ、ワイルドの顔を見たウェルズは驚愕した。

「ん? どうしたんだ? ウエルズの奴……」

 メタルバードが不思議がっていると次の瞬間、ウェルズは驚愕の言葉を発した。

「お、親父……!?」「んん?」

 ウェルズのその言葉に聖龍使いが驚いていると、今度はワイルドが驚愕の発言をした。

「おっ、ウェルズじゃないか。久しぶりじゃのう」

 このワイルドの反応に驚いたミスティーハニーは、ワイルドに訊ねた。

「わ、ワイルドさん? も、もしかして、息子さんって……」

 するとワイルドは平然と答えた。

「うむ。このウェルズが息子の一人じゃ。あとウッズという長男もおります。二人は双子でしてねぇ、ウッズの方にはジュニアという子供が一人居るのですが……皆さん、ワシの息子とお知り合いだったんですか?」

『え……ええええぇぇぇ!!』

 思わずその場に居た聖龍隊員達は仰天した。

 

 

 

[ワイルドの持って来た鞭]

 

 そして皆は、ワイルドを連れて聖龍隊のメインフロアに戻ってきた。

 

「お、お父さん! 何時の間にこの町にやって来たんですか?」

 突然町に来た父に対し、驚きの色を隠せないウッズは、父のワイルドに訊ねた。

「へっへ。つい最近じゃよ。ちょっと高速道路の脇を通っていたら、ちょうどあの事件に出くわしてな。ちょっと若者共に御灸を据えてやったんじゃよ」

 鼻を人差し指で擦りながら、ワイルドは自慢げに語った。

「まったく。いつも親父は突然なんだから」

 突然の父親の来訪にウェルズが愚痴っぽく告げた。

 

「し、しかし……まさかあの爺さん、ウッズさんとウェルズさんの父親だったとは……」

 青児が驚きに満ちた表情で呟いた。

「そ、そう言えば……あのワイルドさん。ウッズさん達と顔がそっくり」

「確かに。生き写しみたいに顔の輪郭がそっくりですわ……」

 苺鈴と知世がワイルドの顔を見ながら述べた。

「そうね。顔が少し老けているのと、口の周りにフサフサの白い髭が有る以外は親子そっくり」

 聖羅も自分の顎を摘まみながら呟いた。

「まぁ、俺たち小人族って言うのは、結構顔が似ているからな。特に輪郭がよ」

 ウェルズが呟くと、ワイルドはウッズに訊ねた。

「そう言えばウッズ。ジュニアは元気か? あれ以来元気に過ごしているのか気になっておるんじゃが」

(ん? 元気になった?)

 ワイルドの質問に修司が疑問に思っていると、ジュニアがワイルドに顔を見せに来た。

「あっ、お祖父ちゃん」「おおぅ、おおぅ。ジュニアか? 大きくなったのう」

 ワイルドはジュニアを見た途端、笑顔になる。

「わはは。ジュニアよ、お前の元気な顔を見られてワシは嬉しいぞ」

 ジュニアを抱きしめながら、ワイルドは満面の笑みを皆に見せつけた。

 そんな孫と祖父を見て、みんなも朗らかな気持ちになった。

 

「……ところで爺さん。アンタ、この町に来た理由が二つ有るって言ってたよな。一つはウッズ・ウェルズ・ジュニアに逢いに来たのは分かるが、後の一つは?」

 修司がワイルドに質問すると、ワイルドは堂々と説明し始めた。

 

「うむ。実はこのアニメタウンに古くから伝わる《聖龍伝説》について調べようと思っているんじゃよ」

「え? せ、聖龍伝説について……?」

 ワイルドの発言に修司は驚いた。

「うむ、ワシは冒険家でもあるが、同時にトレジャーハンターもしているんじゃよ。ワシは聖龍伝説の伝承に有る、聖龍の眠りし龍玉と龍玉を集めた者にしか装着する事ができない聖龍使いの甲冑を手に入れようと思って来たんじゃよ」

「せ、聖龍使いの甲冑……」

 修司は思わず言葉を呑んだ。

「そうじゃ。この町に有るとは聞いているが、まだ何処に有るかまでは分かってないんじゃよ。まぁ、これから地道に探して行こうかと思っておるがな」

「……」

 修司は完全に言葉を失くしてしまった。

「じ、爺さん。あの……」「ん? 何じゃ、鳥の若造」

 変身怪獣がワイルドに声を掛けた。

「じ、実はですね。ワイルドさん……」「そ、その聖龍使いの甲冑は……」

 レイと亜美もワイルドに声を掛ける。

「わ、ワイルドのお爺さん。実は聖龍使いの甲冑に龍玉はですね……」

 そしてアッコを始め、聖龍隊の面々はワイルドに事情を説明した。

 

 

 

「う、嘘じゃろ~!? ま、まさかもう既に龍玉も甲冑も……!!」

 事実を知り、仰天するワイルド。

「そ、そうなんです。ワイルドさん」

「もう聖龍使いの甲冑も龍玉も修司さんが手に入れてしまったんですよ……」

 りりかとさくらがワイルドに事情を述べる。

「ああ、彼は既に龍玉の中に眠っている聖龍にも認められ、そして無事に聖龍使いの武者鎧をも見つけ出して今では聖龍使いとして僕等と一緒に戦ってくれているんだよ」

 はるかが腕を組みながら語るとワイルドは落胆したかのように膝から崩れ落ちる様に座り込んだ。

 

「ああ~、せっかく此処まで来たのに……は、ははは……わ~はっはっは」

『???』

 突然笑い出すワイルドに、皆驚いた。

「わ~はっは。そうかそうか。もう既に龍玉も聖龍使いの甲冑も人の手か。いや~、残念残念」

 落胆したワイルドはスグに立ち直って笑顔になった。

「……お、お爺さん?」「だ、大丈夫ですか?」

 ちびうさとほたるが恐る恐る訊ねると、ワイルドは笑いながら答えた。

「わっはっは、な~に、宝探しが当り外れ大きいのはちゃんと分かっておるわい。今回はたまたま外れが来ただけの事じゃ。ごれぐらいでへこたれてしまったら冒険家なんてやってられんわ」

 これを聞いた息子のウェルズは発言した。

「まぁ、親父はいっつも前向きだからな。冒険した先でも何も収穫が無くってもヘッチャラで、いつも笑顔で帰って来たからな」

 ウェルズに続いて、今度はウッズが述べる。

「ええ。お父さんはいつも価値ある宝物より、冒険で得た思い出話の方が価値が有ると言って、いつも私達に自分の冒険話を楽しそうに話してくれましたものね」

「わはは。ワシはワイルド・J・プラント。誰よりも危険を愛する男じゃぞ。宝物だって正直、二束三文で売っぱらっちまうし正直値の張る宝より楽しめる危険を求めていきたいんじゃよ」

 ワイルドは笑いながら皆に自分の冒険への価値観を語った。

 

 すると、突然ウッズが複雑な面立ちで語り始めた。

「しかしですね……お父さん、また人に迷惑かけていませんよね?」

「め、迷惑?」

 美奈子が言葉を零すと、ウッズが続けて話す。

「はい。実は、父は良く他の国はもちろん自国でも良く警察の御世話になってしまう事が有るんですよ」

「け、警察!?」

 警察と聞き驚くうさぎ。

 

 其処にウッズとウェルズは続けて話した。

「ええ。父は良く、国の重要文化財に指定された古代の建造物にも違法に侵入して良く警察の御世話になってしまっているんですよ」

「ああ。全く、其処だけは止めて欲しいぜ」

 息子達の言葉を聞き、ワイルドは渋々言い放った。

「しかしじゃな……今の時代は悲しいほど不便じゃな。冒険したくても国の許可が下りないと建造物には入れないし例え宝物が手に入ってもその国に没収されたりと……悲しくなるわ」

 悲愴な面立ちになるワイルド。

 しかし彼はスグに笑顔になり、息子達と孫に向かって言い放った。

「ところでウッズ、ウェルズ、そしてジュニア。今回はお前達に渡しておきたい物が有るんじゃよ」

「え? 何ですか、お父さん」「なんだなんだ?」「なに、お祖父ちゃん?」

 三人が訊ねるとワイルドは背中に背負っていたリュックサックから一本の緑色をしたイバラ状の棘が付いた鞭を取り出した。

「ん? なんだい、これは?」

 修司が鞭を見て言うと、ワイルドが答える。

「うむ。これは我が一族に伝わる伝説の《大地の鞭》じゃよ」

「だ、大地の鞭……」

 衛が呟くと、ワイルドは続けて話し出した。

「我が一族には代々、何百年に一人、大自然の力を使う事ができる子が産まれてくると言い伝えが有るのじゃ。ワシは村一番の年配者として、今までこれを護って来たのじゃが……その役目を息子二人に託したいと願い、こうして持参して来たのじゃ」

 神妙な面立ちで語るワイルドに対し、ウェルズが言った。

「だけどよ親父。本当に大自然の力を司り、使う事ができる子なんて俺達の一族に生まれてくるのかよ」

 するとワイルドが真顔で答える。

「ワシだってそれは分からん。只の言い伝えかもしれんし、本当の伝承かもしれんのじゃし。だがしかし、これがワシ等の家宝であることには変わりない。これからは新しい世代であるお前等で、この鞭を護って行くのじゃ」

「う、うぅん……」「……」

 父親の言葉に何も言い返せないウェルズとウッズ。

 其処に、ジュニアが祖父のワイルドに訊ねる。

「そう言えばお祖父ちゃん。その大自然の力を司る子って、やっぱり若い子なの?」

 するとワイルドはジュニアの問いに真顔で答えた。

「そうじゃよ。この鞭を使い、大自然の力を使える《大自然の申し子》は若い子じゃと聞いておる」

「そ、それじゃ……僕がこの鞭を持っていて良い?」「な、なぬ?」

 ジュニアの発言に驚くワイルド。

 

 するとジュニアは祖父に告げた。

「ぼ、僕だって少しは強くなりたいと思っているんだよ。せめて、お祖父ちゃんみたいに鞭さばきが上手くなりたいし、今後少しでも役立てたいんだよ」

 ジュニアの憂悶な表情を見て、ワイルドは思った。

(……ジュニア。やはり、あの時の事がまだ)

 そしてワイルドはジュニアに言いきった。

「よしっ、それじゃジュニア。この鞭はお前にやる! それに、ワシが自らお前に鞭の扱いを伝授してやるわい」

「えっ! ほ、ホント? お祖父ちゃん」

 ジュニアは喜び、笑顔になった。

「お、お父さん」「い、良いのかよ。ジュニアに鞭さばきを伝授させて……」

 父のウッズと叔父のウェルズが不安がると、ワイルドは答える。

「なに、男の子は多少強くさせてやらないといけないじゃろ。ワシも元から、少しの間は町に滞在しようと思っていたし、その間だけでも教え込んでやるわい」

「だ、だけどジュニアに……」

 ウッズが不安がっていると、ワイルドは彼に告げた。

「……ウッズ。ジュニアがあの時の苦しみから少しは解放されるには少しでもジュニアの心が強くならなければいけない筈じゃ。心を強くする為には、まず体を強くさせてやらねば」

「うっ……」

 父親の発言にウッズは何も言い返せなかった。

 

「……ところで爺さん。アンタの鞭さばきって、どれぐらい凄いんだ? 俺が来たときは既に戦闘が終わっていたみたいだったからアンタの鞭さばきを拝見できなかったんだよ」

 突然青児がワイルドに訊ねてみた。

「ほぉ、お前さん。ワシの鞭さばきを見てみたいと申すのじゃな」

 訊ねられたワイルドは青児を見つめながら眼光を鋭くさせる。

「そうだ。正直、あの豹の爪(パンサークロー)の団員や怪人を本当に倒せたのか疑問に思っちまってな。アンタの腕前を一つ、拝見したいんだが」

 

 するとワイルドは口元を吊り上げ、微笑みながら言った。

「うふふ、良かろう。お前さん、いつも拳銃を持ち歩いておるじゃろ?」

「な、何? じ、爺さん。何であんた、俺が拳銃を持っている事に気付いたんだ?」

 驚く青児にワイルドは答えた。

「うむ。お前さんからは少しばかり火薬の臭いがしていたしな。それに、その右手の人差指に有るタコ。それは拳銃の引き金を引き過ぎた為にできたタコじゃろ。それで拳銃を持っているって分かったんじゃ」

 ワイルドの鋭い観察力に、青児も修司も、他の皆も驚愕した。

「……それでじゃ、若いの。お前さんはワシに向けて本気で銃をブっ放すんじゃ。ワシはお前さんが銃の引き金を引く前に、お前さんから銃を奪ってやるからのぉ」

「で、でも……! それじゃ、下手をしたらアンタが……」

 青児が躊躇っていると、修司が空き缶を持ち出して二人に告げた。

「それじゃ、お二人さん。俺が此処に空き缶を置くからよ。青児はこの空き缶目掛けて銃をブっ放し、爺さんは青児が引き金を引く前に青児から銃を奪い取る方法で良いんじゃね?」

「なるほど。それなら俺も容赦なく銃を握れる」

「なるほどのぉ、その手が有ったか」

 修司の提案を聞き入れ、青児とワイルドは身構えた。

 

「…………」「…………」

 二人は無言のまま、青児は空き缶を、ワイルドは青児を見つめて集中した。他の皆は集中する二人を黙って見ている。

 そして修司は、右手でコインを弾く構えをした。

「良いか二人とも。俺がコインを弾いて、コインが床に着いた瞬間に勝負が始まる。それじゃ……」

 そして修司はコインを弾き、コインが宙を舞った。

『…………』

 青児とワイルドは互いに力強い眼差しを放ち、集中力を高めていた。

 そしてコインが床につき、金属音が鳴り響いた瞬間。二人は行動(アクション)を取った。

 青児が空き缶に銃を向け、引き金を引こうとした瞬間、ワイルドの鞭が青児の持っていた拳銃に巻き付き、そのまま拳銃はワイルドの下に引っ張られ奪われてしまった。

「わはは、どうじゃ若いの。ワシの鞭さばきは……」

 笑いながら豪語するワイルドに対し、青児は清々しい顔で言った。

「いやぁ、参ったぜ爺さん」

 そしてワイルドは青児に拳銃を返し、二人は握手を交わした。

「いやぁ~、マジで凄かったな。今の勝負」「ああ。そうだな」

 変身怪獣と修司は目を丸くして驚いていた。

 

 勝負を終えたワイルドに、息子のウッズは声を掛けた。

「ところでお父さん。しばらくアニメタウンに滞在するなら家に泊ってくださいよ。まだ野宿されるのも心配ですし」

 穏やかな顔で言うウッズにワイルドは訊ねた。

「おやっ? 良いのかウッズ。ワシもこんな凄い豪邸に泊っても」

 訊ねられたウッズは笑顔で言い返した。

「当り前でしょ。せっかく久々に家族が揃ったんですし、しばらくは楽しく過ごしましょうよ。別にお泊りになっても大丈夫ですよね、修司様」

 訊ねられた修司は平然と言った。

「ああ、別に構わないぞ。ちゃんと客室用の部屋も常備しているし、何より家族の団欒だ。心行くまで堪能していけ。ワイルドの爺さんも、この家に居る間は好きにしていてくれ」

「おおっ、それはありがたいですな。それでは御言葉に甘えてしばらくこの家で寝泊まりさせてもらいますわ」

 修司の心がけにワイルドは笑顔で答えた。

 

 

 この時、一部の聖龍隊の隊士たちが呟くように会話していた。

「……家族が揃ったって、それじゃジュニア君の御母さんはどうしたのかな?」

 美奈子がレイの顔を見ながら呟いた、

「う、うん。そう言えば、ジュニア君の御母さん、そうウッズさんの奥さんについては何も聞いてないわね」

「そ、そう言えば、お母さんはどうしちゃったんだろう。ジュニアさん」

「そうだよね……」

 ちびうさとほたるも互いの顔を見ながら小声で会話した。

 

 

 そして次回、ワイルドの持って来た緑の鞭が切っ掛けで聖龍隊員達が苦戦してしまうのである。

 

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