【聖龍伝説:第二章】英雄達の日々   作:セイントドラゴン・レジェンド

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 今回から新たなオリキャラ投入です。■オリキャラに版権キャラ達が叩きのめされたり暴言を吐かれたりしますが、どうか怒らないでください。


出現! 大自然の申し子

[chapter:野山切り拓く者たち]

 

 ワイルドがアニメタウンに来てから数日後。

 アニメタウンより少し離れた郊外の山に豹の爪(パンサークロー)と黒天狗党が違法に野山の木々を伐採しているという情報が入って来た。

 

 現場は既に木々が多数伐採され、重工機が点在されている工事現場になっていた。

 更に、其処は草木一本も残らず刈られており、荒れ果てた大地で覆われていた。

 

 連絡を受け、最初に急行したのはセーラー戦士達だったが、伐採している現場のスグ傍にはある少年が偶然にも居合せていた。

 

 

 

「こ、これは……どうしてこんな……!」

 豹の爪とカラス天狗達の伐採現場のすぐ近くで、ジュニアは傷付いて息も絶え絶えの小鳥を見つけた。

「ひ、ひどい……」

 ジュニアが小鳥をそっと手で包み込むように持ち上げると小鳥の傍らに親と思われる大人の鳥が既に息絶えた状態で横たわっていた。

 更に目の前には、無意味に森林を伐採していく豹の爪や黒天狗党の姿が目に入った。

「あ、あいつ等。何で、酷い事を……!」

 ジュニアは内心、怒りに震えていた。

「……アイツ等の様な連中の所為で、所為で、母さんは……!」

 ジュニアは思わず、腰に付けていた鞭を。ワイルドから譲り受けた《大地の鞭》を手に取った。

「……ゆ、許せない…!!」

 そしてジュニアは持っていた鞭を力いっぱい地面に叩き付けるのだった。

 

 

 

 そしてそれからしばらくして。

 伐採現場である雑木林の手前の荒れ地にセーラー戦士達が駆けつけて来た。

「え、ええっと。此処で良いんだよね?」

 セーラームーンが皆に訊ねる。

「ええ。確かに此処で違法な森林伐採が行われているって通信が……」

 マーズはセーラームーンの顔を見ながら答えた。

「だ、だけどこれは……」「え、ええ。これは、いったい」

 マーキュリーとジュピターは驚愕していた。

 それは他のセーラー戦士達も同じであった。

 目の前には多数の重機の残骸。そして傷だらけで倒れている豹の爪の団員達にカラス天狗達。

「ひ、酷い……」「だ、誰かこんな真似を……」

 ちびムーンとプルートが顔を蒼ざめさせて呟いていると彼女達に一人の男が歩み寄って来た。

「……た、助けて…助けて、くれ……」

 セーラー戦士達にふら付きながら歩み寄って来たのは、ボロボロになり悲痛な声で助けを求めるカラス天狗だった。

「だ、大丈夫!?」「お、おい? どうした? 何が有った?」

 傷だらけのカラス天狗は戦士達の前まで歩み寄って来ると力尽きた様にその場に倒れ込んだ。そしてマーキュリーとタキシード仮面が近寄って話しかけるがカラス天狗は気を失ってしまう。

「だ、誰がこんな真似を……」

 ネプチューンは口を押さえながら呟いた。

「ま、まさか修司、いや、聖龍使いが……!」

 ウラヌスのこの言葉に、マーズとヴィーナスが続けて言い切った。

「いえ、これは彼の所業じゃないわ」

「そうね。言い方悪いけど、彼の場合は一撃で相手の急所を斬り付けちゃうから、このカラス天狗の様にボロボロに痛めつけられるだけなんて事は無いわ」

「そ、それじゃ、誰がこんな真似を……」

 サターンが呟くように言い放った、その時。

 

 

「なんだ? 今ごろ来たのかい、君達」

「え?」

 何処からか聞こえて来た声に、セーラームーンが反応。

 そして皆、辺りを見回していると、ジュピターが上を指差して叫んだ。

「あっ、アレ!」

 そして皆もジュピターが指差す上方に視線を向けてみると木の上に一人の少年が直立不動で立っていた。

「君達セーラー戦士達が遅れてやってくるとはね。まぁだが、もう此処いらに居た連中は皆叩きのめしたから君等の出番は無いよ」

「あ、貴方は……!」「だ、誰なの……!?」

 セーラームーンとマーズに指摘され、少年は木の上から飛び降りて来た。

 

 彼女達の目の前に飛び降りて来た少年は全身緑色の、野性的な雰囲気を感じさせる服装。緑の帽子を被っていた。

 顔にはタキシード仮面のアイマスクに形状が似ている緑のマスクを装着していて両手には緑色の生地が厚い手袋をはめていた。

 そして少年の手には緑色の無数の棘が有る鞭が右手に握られ、左手で鞭の先の方を持ち上げていた。

 

「あ、貴方は……誰なの?」

 セーラームーンが訊ねると、少年は答えた。

「僕かい? そうだね……まぁ《大自然の申し子》と、いや、敢えてこう名乗ろう。……僕の名は《ジュピター・キッド》!」

「じ、ジュピター・キッド!!?」

 キッドの言動に驚くタキシード仮面。

 そして驚愕しているセーラー戦士達にキッドは吐き捨てた。

「君等が此処に来る前に、コイツ等は既に痛めつけて置いたから、もう大丈夫だよ。コイツ等の始末も、僕がちゃんとやっておくから」

 気絶したカラス天狗を睨みながら、キッドは吐き捨てた。

「や、やっておくって……」「な、何をするつもりなの!?」

 マーキュリーが動揺し、ジュピターが訊ねるとキッドは驚愕の言葉を放った。

「……そう。コイツ等をだね、土の中に埋めて樹木の養分にしてやるんだよ。自分達が伐採した木々の代わりに自分達が新しい樹木の養分になってもらえば丁度良いじゃないか」

 この発言にセーラームーンは驚愕し、キッドに言い放った。

「な、何て事を言うのっ! た、確かにこの人達は無意味に木々を伐っちゃったかもしれないけど、だからって、だからって埋めちゃう事ないじゃない!」

 するとキッドはセーラームーンに向かって言い放ち返す。

「何を言う! 森には多くの命が住み着いているんだぞ。多くの命が森の中で生まれ、癒され、そして穏やかに死んでいく。そんな森を奪い、破壊する連中など許す訳にはいかない!!」

 言い放つキッドに、セーラー戦士たちは言い返した。

「何を言うの。いくら悪人だからって、これ以上の仕打ちはやりすぎよ!」

 マーズがキッドを見ながら言い募る。

「そうよ。これ以上の攻撃は、もはや無意味よ」

 マーキュリーも悲痛な面持ちでキッドに言う。

「……確かに。これ以上、彼等を痛めつけるのは返って非道な行いだ。僕達から見ても君の行動は間違っている」

「あらっ? まさかウラヌスがそんな事を言うなんて……雨でも降るんじゃないかしら?」

 キッドを睨みながら言い放つウラヌスの発言にネプチューンは横目で彼女を見つめながら笑顔で言った。

「……そうかい。そんなに僕の邪魔をしたいのかい? 仕方が無い。僕の邪魔をするんだったら、君達も容赦ないよ」

 キッドは言い放ちながら、セーラー戦士等を睨みつけた。

「フッ、私達がセーラー戦士だと知っているようだがそれなら分かっているだろうね。我々の強さを……そして私達に本気で向かってくるという意味を」

 タキシード仮面もキッドを見つめながら言い放つ。

 するとキッドは戦士達を睨み返しながら返事する。

「……ああ、分かっているよ。君達が天星の、星の魔力を司っている戦士だと。そして君達が実は【地の理】に弱い事も……ねっ」

 自信溢れる目で睨み付けながら言い寄ってくるキッド、彼を見てマーキュリーは感付いた。

「みんな気を付けて。彼は本気で私達を攻撃していくつもりよ」

「大丈夫よ、みんなが居れば!」

「そうそう。いつもは聖龍使いやミラーガールに助けてもらいっ放しだから、せめて今回だけは私たちだけで終わらせちゃいましょう」

 強気でキッドに言い返すマーズとヴィーナス。

 

 この時、ちびムーンは内心思っていた。

(あ、アレは……確かこの前、ワイルドの御爺ちゃんがジュニア君に手渡していた鞭とそっくり)

 ちびムーンはキッドの所持していた緑色の棘付きの鞭が以前ワイルドが孫のジュニアに渡していた《大地の鞭》と酷似している事に気付いていた。

 

「……それじゃ、手加減抜きで行かせてもらうよ! セーラー戦士達!!」

「行くわよ、みんな!!」

 セーラームーンの掛け声を合図に、キッドとセーラー戦士達は真っ向から衝突し合った。

 

 

 

[流星の戦士達]

 

 一方、修司の自宅地下に有るメインフロアでは。

「アレ? ウェルズ、ジュニア見なかったかい?」

 ウッズは息子のジュニアの姿が見えない事に気付きウェルズに訊ねてみた。

「ああ、確かジュニアの奴今日は郊外の森の方に行ってくるって言ってたぞ」

「そ、そうですか……」

 ウェルズの返事を聞き、ウッズは何処か心配そうな顔を浮かべる。

「……心配するなよ兄貴。ジュニアがしっかり者だって事は親である兄貴が一番分かっているだろ。そんなに心配しなくても大丈夫だよ」

「あ、ああ……」

 不安な面立ちになるウッズに、弟のウェルズは兄のウッズを励ましてやった。

「……まぁ、息子を心配する気持ちは分かるがもう少し距離を置いて接してやったらどうだ? あの子だって何時かは親元を離れて独り立ちしなきゃいけないんだしよ」

「あ、ああ。そうだけど……」

 未だ苦悩の表情をするウッズ。

 

 その時、修司が学校から帰って来た。

「ただいまーー」「あっ、修司様。お帰りなさいませ」

 帰ってきた修司に挨拶を交わすウッズ。

 更にアッコも一緒に下校し一度自分の家に荷物を置いてスグ修司の家まで付いて来たのだった。

「お邪魔しまーーす」「あ、アッコさんも。いらっしゃい」

 挨拶をしたアッコに、ウッズは笑顔で返事する。

「いやー、参った参った。放課後の掃除当番は疲れるわ」

 修司は少々くたびれた感じで言い捨てた。

「修司、たかが掃除ぐらいで文句言わないの」

 愚痴を言う修司に喋りかけるアッコ。そんなアッコの言葉を聞きながらも修司はウッズに言った。

「あーーはいはい。それにしても今日は暑いなぁ」

「え? 暑いの? 結構過ごしやすい気温だと思うんだけど……」

「俺は暑がりなんだよ」

 修司はアッコと会話しながら、手で顔を煽いだ。

「……ところでウッズ、今日は何か事件とか無かったか?」

「あっ、はい。実は先ほど豹の爪(パンサークロー)と黒天狗党が一緒になって郊外の山林の木々を違法に伐採していると情報を掴みまして。聖龍隊の方々に連絡を取ったのですが、それぞれ色々な事情で手が放せず今のところはセーラー戦士の皆様方だけが向かっている現状で有ります」

 ウッズから聞き取った修司は喉の部分を右手で掻きながら考え更けた。

「まぁ、あいつ等なら人間相手になら多分大丈夫だろうが、念には念だ。俺もスグ現場に向かうとするわ」

「あっ、それなら私も行くわ。私も修司程じゃないけど、みんなの事が心配だし」

 このアッコの発言に、修司はスグに言い返した。

「な、何を言うんだアッコ。俺は別に心配なんかしてないぞ。ただ、アイツ等がヘマやらないかって……それで気になってだな……」

「はいはい。そう云う事にしておくわ」

 戸惑う修司の発言に、アッコは笑顔で返答した。

「あっ、ところで修司様、それにアッコさん。実は現場である郊外の山にジュニアが、ジュニアが居るみたいなんですよ。まさかとは思うのですがもし見かけたらスグに帰る様に言って置いてくれませんかね」

 ウッズは何処か不安そうな顔で修司とアッコにお願いする。

「あ、ああ。分かった、見かけたらスグに戻る様にジュニアに言っておくよ」

「私も。見かけたらお父さんが心配してるよって話しておきますね」

「あ、はい。お願いしますね」

 そして修司とアッコは現場に向かって行った。

 その道中、アッコは修司に訊ねていた。

「修司、何だかウッズさん、やけにジュニア君の事気にしていたわね」

「あ、ああ。そうだな」

 アッコの問い掛けに、修司は複雑な面立ちで答えた。

「そう云えば……前にみんなで話し合った事が有ったんだけどジュニア君の御母さん、つまりウッズさんの奥さんってどうしてるの?」

 アッコの問い掛けに対し、修司は険しい顔付きのまま何とも言えない暗欝な表情で答えた。

「……アッコ。人にはそれぞれの過去や事情ってものが有るんだ。それを知ってもらう事でその人の心が救われる事も有れば逆に誰にも知られない事でその人の心情を穏やかなままで居させてあげられる事も有るんだよ」

「……」

 修司の顔と発言に対し、アッコは何も言い返せなかった。

 更に修司は続けて話す。

「……世の中にはな。誰にも触れられず、そっとしておいて貰った方が幸せな人間だって存在しているんだよ」

 この時の修司の顔は、何処か寂しさと虚しさが漂う顔付きであった。

 

 

 

 

 一方その頃、郊外の山、現場である山の中。

 セーラー戦士たちは突如目の前に現れたジュピター・キッドと戦闘を繰り広げていた。

 だが。

「きゃああ」「うぐっっ」「ああぁっ」

 ヴィーナス・タキシード・サターンの悲鳴が辺りに響く。

 そして三人はボロボロにされ、地面に倒れ込んでしまった。

 既に他のセーラー戦士達も三人と同様、キッドの攻撃でボロボロにされもはや思う様に体も動けなくなっていた。

 

「……つ、強い……!」「ま、まさか、これ程までに、強いなんて……!」

 マーキュリーとマーズが擦れた声で呟いた。

 そんな傷だらけのセーラー戦士達を見つめながら、キッドは吐き捨てた。

「ふぅ、これがあのセーラー戦士なのかい? いくら相性的にコッチが有利だからって少しは骨のある戦いを見せてくれると期待してたのに……」

 キッドは戦士達を小馬鹿にするかの如く、ボロボロの彼女達に言い捨てた。

「くっ、せ、セーラームーン……君は、まだ力が、残って、い、いるかい……」

 苦痛に有りながらも、ウラヌスはセーラームーンに問いかけた。

「ご、ゴメン……も、もう腕も上がらない……」

 だがセーラームーンの余力も、既に体中の痛みも重なり残っていなかった。

「……僕だって君達を傷つけたくは無かったんだ。だけど君達が罪深き人間を庇うから仕方なく攻撃したんだよ。まぁ、僕も非情な男じゃ無い。これ以上は君達には何もしないで置いてあげるよ」

 このキッドの発言に、セーラームーンが反論した。

「で、でも君は……私達が倒れている間に豹の爪の団員や、カラス天狗達を、う、埋める積りなんでしょ。そ、そんな事は……あっ、や、やらせない……!」

 セーラームーンはボロボロの体を起き上がらせようと必死になるが体は言う事を聞いてはくれなかった。

 そんなセーラームーンに吐き捨てるかのごとく、キッドは彼女や他の戦士達に言い捨てた。

「ふっ、そんな体で何ができる。君たちは黙って其処で寝ているが良いさ。君等が休んでいる間に、連中はこの僕が樹木の栄養になれる様に埋めて置いてあげるからさ。な~に、命が死ねば肉体は土に還り、草木に命が譲り受けるだけ。自然な事だからそんなに悲観的になる事は無いよ」

 そして吐き捨てながら、キッドはその場を立ち去ろうとした。

「ま、待って……! ぐっ」

 キッドを制止しようと彼に言葉を掛けようとするセーラームーンであったがもはや言葉も自由に出せなくなっていた。

 

 その時。

『待ちたまえ!!』

 キッドが立ち去ろうとすると、突如キッドに叫びかける声が、それも複数の人の声が同時に辺りに響いた。

「誰だ!」

 キッドが声を上げると、スグ側の木々の上に三人の人影が見えた。

「だ、誰なんだ!?」

 キッドが声を発すると、三人はキッドの前に降り立った。

「き、君たちは……!」

 驚くキッドに向かって、三人は言い放った。

『夜の暗闇貫いて、自由の大気駆け抜ける! 三つの聖なる流れ星!!』

「セーラースターファイター!」

「セーラースターメイカー!」

「セーラースターヒーラー!」

『ステージ・オン!』

「き、君たちは!」「す、スターライツ……!」

 三人を見てウラヌスとセーラームーンは声を上げた。

「大丈夫かい、御団子!」「皆さん、御気を確かに」

 傷付いている彼女達にファイターとメイカーが歩み寄り声を掛けた。

「なんだい。また別の天星の戦士か……何しに来たんだい?」

 キッドは駆け付けたスターライツを見て吐き捨てた。

 するとライツ達はキッドを睨みつけながら言い放った。

「君か、お団子を……セーラームーンを傷付けたのは!」

「アナタですか。セーラー戦士達を此処まで痛めつけた輩は」

「酷い事するわね。いくら何でも此処までボロボロにする事ないじゃん」

 ファイター・メイカー・ヒーラーの発言を聞いてキッドは彼女達に吐き捨てる。

「僕だって好きで攻撃した訳じゃない。彼女達が僕の行動に勝手に難癖付けて勝手に刃向かって来たから此方も全力で相手をしただけだ。僕の邪魔をしなければ何もしなかったよ」

 キッドの悪気も感じられない発言に、ライツの怒りは頂点に登った。

「お、お前!」「微塵の反省もしてないみたいですね、君は!」

「ファイター、メイカー。こいつギタンギタンにやっつけちゃおうよ!」

 そしてナイツの三人はキッドに向かって攻撃態勢を取った。

 そんな三人を見て、キッドは口元を小笑いさせながら言い放った。

「やれやれ、仕方のない三人組だ。まぁ良い、所詮は星の力を司る者たち。簡単に対処できる」

 

 この時キッドは内心、思っていた。

(……何より、この母なる大地に足を着けている以上、僕の方が断然有利なのは同じ事)

 そしてライツ、キッド等は戦闘に入った。

 

 

 

[駆け付ける武人と聖女と鋼鳥]

 

 ライツ・キッドが戦闘に入ってから時が経過して。

 聖龍使いとミラーガール、そして二人と合流してメタルバードも共に現場に向かっていた。

「大丈夫かしら、みんな……」

 ミラーガールは先に出向いたセーラー戦士達を心配していた。

「まあ大丈夫でござろう。相手は普通の人間ばかりの豹の爪(パンサークロー)や黒天狗党の面々。まっ、たまに女怪人が一人や二人は居るだけじゃからのう。セーラー戦士達だけでも充分平気じゃろ」

「まぁ、そうだけど。でもやっぱり女の子だけで戦わせるのは不安だし、早く行ってやろうぜ」

 ミラーガールの言葉に返事する聖龍使いと彼の発言に続いて述べるメタルバード。

 

 そして一行は現場に着いたのだが其処には傷だらけで動く事すらままならない団員やカラス天狗達が倒れていた。

「こ、これはいったい……!」

 ミラーガールは目の前の惨状に驚き、思わず両手で口を塞いでしまった。

「ま、まさか……セーラー戦士達が、うさぎ達がやったんじゃないだろうな!?」

 メタルバードは驚きながら発言すると、聖龍使いが言い放った。

「そんな事は考えられぬ。何より、この連中に付いている傷跡。これはセーラー戦士達が所持している武器や使える技で付いた傷では無い。なにか、ロープ状の、そう鞭の様な物で裂かれた傷跡じゃよ。しかしセーラー戦士達には鞭状の技や道具は無かった筈じゃ」

 

 聖龍使い達が現場を見渡している、その時。

「ぐわああぁぁぁ!」

 少し向こうから何者かの叫び声が聞こえて来た。

「な、何!?」

「む、向こう側から聞こえて来たぜ!」

「行ってみるぞ、諸君」

 驚くミラーガールとメタルバード。

 二人を引き連れて、聖龍使い等三人は声のした方に向かって行った。

 

「ぐわあっっ」「ふぁ、ファイター、うぐっ!」

「ふ、二人とも……ぎゃああっ」

 ファイター・メイカー・ヒーラーの三人は、他のセーラー戦士同様キッドに成す術もなく叩きのめされてしまっていた。

「ふぁ、ファイター……」「め、メイカーまで……」

「ヒーラー達の攻撃も、効かないなんて……!」

 ボロボロにされた三人を見てムーン・マーキュリー・ヴィーナスは悲観的な表情で呟いた。

「ぐは……っ」

 そして傷だらけになったファイターに、キッドは歩み寄った。

「まったく、君達も最初のセーラー戦士達とほとんど同じだね。相性が悪いからって、もう少し手ごたえが有っても良いのにさ。……もう分かっただろ? いくら君達が強くても森を破壊した連中を庇う輩なら僕は容赦なく君達を痛めつけられるって」

 キッドに見降ろされながら、地面に倒れ込んだファイターはキッドに言い放つ。

「だ、黙れ……! こ、このやろ……!!」

 余りの苦痛にファイターは通常の星野光(せいやこう)の口調でキッドに言い放ってしまった。

 するとキッドはファイターを見下ろしながら発言した。

「ふっ、余りにも惨めに、そして無残に痛めつけられていつもの星野光の口調に戻ってしまったのかい? ファイター君」

「な、何だと……!」

 ファイターは驚いた。

 何故キッドがアイドルの時の、地球人の時の自分の名前を知っているのか理解できず、軽く動揺してしまっていた。

「そ、それにしても……な、何故、私達の攻撃が全て、は、弾かれたり、き、効かなかったんだ……!」

 悲痛な声で呟くタキシード仮面。キッドは彼に対し悠然と説く。

「はっは。それは簡単な事だよタキシード仮面。君達の必殺技や武器、そして自身の力の源は星の魔力だろ。だけど僕は大地の力を司っている《大地の申し子》。故に君たち星の魔力に対して抗力のある【地の理】を司っているから、簡単に攻撃を対処できるんだよ」

「そ、そんな……!」

 不敵に笑みを浮かべて言い放つキッドの発言に、マーズは驚愕した。

 更にキッドは述べ続ける。

「君たち……そう、確かまだ、セーラー戦士達が五人しか居なかった時だって今の僕と同じ【地の理】を持っているDDガールズに対し、かなり苦戦してたじゃないか。それと同じ事だよ」

『!!』

 この発言に内部系セーラー戦士にタキシード仮面は驚愕してしまった。

 何故なら、この事実を知っているのは仲間になり話を聞かせたちびうさと外部系セーラー戦士達。そして聖龍隊の面々だけだったからだ。

「な、何故……! アナタは、それを知っているの?」

 体の苦痛に耐えながら、ネプチューンがキッドに訊ねる。

 だがキッドはその問いに答える事は無かった。

「別に君達に教える必要はないだろ? ……それじゃ君たち。さようなら」

 キッドはそう言い残して、その場から去ろうとした。

「ま、待つんだ……! ぐ……」

 メイカーが制止しようとするが、体が動く事は無かった。

 

 その時であった!

「待ちたまえ! 緑の少年よ!」

「ん?」

「こ、この声は!」

 キッドは自分を呼び止める声に反応しセーラームーンは声を聞き、少しばかり安堵の表情を浮かべた。

「大丈~夫でござるか! 同志諸君!!」

「おい少年っ。美少女達を痛めつけたまま立ち去ろうとはフテエ野郎だな!」

「君! セーラー戦士達を、仲間達を良くも痛めつけてくれたわね!!」

 キッド、それに傷付き動けなくなったセーラー戦士達の目の前に聖龍使いにミラーガール、それにメタルバード等が到着した。

「せ、聖龍使い」「み、ミラーガールにメタルバードも……」

 マーキュリーとジュピターは彼等を見て安堵の表情を浮かべた。

「き、来てくれたのか。彼等は……」

「そ、そうよウラヌス。彼等は仲間が、仲間と認めた者が痛めつけられてたら必ず来る人達だって、もう知っているでしょ」

 駆け付けて来た三人を見て呟くウラヌスに囁くように話しかけるネプチューンであった。

 

(あ、アレ? あ、あの少年、何処かで……ハッ! そ、そうだ。確か、あの少年の服装をした男性を私、この前に夢で……あの日見た夢で見ている!)

 ミラーガールは内心、キッドを見て驚いていた。

 彼女は以前、キッドの服装をした20前後の男性をしかも亡骸として横たわっている光景を夢の中で見た事が有ったからだ。

「せ、聖龍使い……クッ」

 キッドは聖龍使いを見て、まるで何かを躊躇うかのように顔を俯かせてしまった。

「お、お前たち大丈夫か! ひ、ヒデエ傷だなオイ……」

 傷だらけになるセーラー戦士達を見て、メタルバードは驚いてしまった。

 そしてふと、呟いた。

「……あ~あ、腹とか肩とかじゃなくもう少しズレていれば良い個所が見れると云うのに」

「何を言うとるんじゃ、こんな時に!」「デっっ」

 色目でセーラー戦士達を見て呟いたメタルバードに聖龍使いは彼の頭に拳骨を喰らわした。

「……さ、さてと。ま、まずはみんなの傷を治してあげないと……《ミラー・ヒーリング・フラッシュ》!」

 ミラーガールがミラーシールドを円を書くように天に高々と振り上げると温もりを感じさせる光が辺りに降り注いだ。

 そしてボロボロの傷だらけになったセーラー戦士達の体は物の見事に綺麗さっぱり回復させる。

「……ふぅ~、ありがとうミラーガール」「わぁ、助かった~」

 痛みが消えマーズはミラーガールに礼を述べ、ヴィーナスは思わず溜息交じりの発言をした。

「毎回思うけど、ミラーガールの回復技って私達はもちろんナースエンジェルの回復技より効力が凄くない?」

「そうねぇ。体の傷だけでなく、技を使う為の魔力まで回復させてくれるわよね」

 怪我が治り微笑みながら語り合うジュピターとマーキュリー。

「……毎回思うのですが、そもそも彼女の力の根源って何なんでしょうね?」

「確かにね。どうしたら彼女はあそこまで力を使えるんでしょうか?」

「うむ……彼女が所持しているセイント・コンパクトには此処までの力が有るんだろうか」

「…………」

 プルートが頬に手を当て思い更けネプチューンとウラヌスが互いの顔を見ながら考え込んだ。

 そんな三人を見て、サターンは思わず無言になった。

 

 そして回復した面々を確認して聖龍使いは声を上げた。

「良し諸君! 回復したようで何よりじゃ! スターライツの諸君も助太刀した故に痛めつけられてしまった様じゃな。どうじゃ? このままワシ等と共に、この小童(こわっぱ)に御灸を据えてやるかい?」

「あ、ああ。そうね、その方が良いかもしれないわね」

 聖龍使いの提案に、複雑な顔立ちで答えるファイター。

「ええ。悔しいですが、彼には私達の力に対処できる【地の理】を持っている様ですしね」

「ぐっ……た、たかが【地の理】を持っているだけであそこまでデカイ面されるなんて耐えられない!」

「な、なぬ? メイカー殿、それにヒーラー氏。あの少年は【地の理】を持っているのでござるか!?」

 メイカーとヒーラーが告げた【地の理】に反応する聖龍使い。

 そんな聖龍使いにタキシード仮面が歩み寄り、聖龍使いに告げた。

「そ、それに聖龍使い。あの少年、何故か俺達が以前DDガールズに苦戦した事まで知っているみたいだ」

「なぬ?」

 驚く聖龍使いに、更にマーズとヴィーナスが言い寄った。

「聖龍使い。あの子は自分をジュピターキッドと名乗っていて私達が来る前に既に豹の爪(パンサークロー)の団員達やカラス天狗達を痛めつけていたみたいなの」

「そ、それにあの子。倒した人達を全員山の中に埋めて樹木の養分にするなんて言うから私達彼を止めようとしてやられちゃったのよ」

「な、何と……!」

 驚愕する聖龍使いに更に追い打ちを掛けるかの如く最後にファイターが近寄り話し掛けて来た。

「そ、それにね聖龍使い。彼、私の素性までも知っているみたいなのよ」

「ん!?」

 驚きっぱなしの聖龍使いを尻目に、キッドが目の前の聖龍隊に向かって言い放った。

「もう良いかい君たち? 怪我が治ったのなら速急に此処を立ち去るかしてくれないかい? 僕はこの辺に転がっている屑共を処理しなきゃいけないんだからさ」

 キッドの発言に対し、セーラームーンが言い放った。

「何を言うのよ! どうせ傷付いた人達を埋めちゃう積りなんでしょ!!」

 更に続けてマーズも悲愴な面立ちでキッドに言った。

「これ以上彼等への仕打ちは酷過ぎる!」

 そして最後にミラーガールがキッドに向かって叫んだ。

「ジュピターキッド! 貴方が森を愛している事は分かるわ。故に愛する森を伐られ、悲しむ貴方の気持ちは理解できる。だけど、これ以上の行為はやりすぎよ! この人達、豹の爪やカラス天狗達は私達が罰しておくから!」

 だがキッドは考えを改めず、聖龍隊を睨むように見つめながら言い放った。

「うるさい! 君に、君に僕の気持ちが分かるものか!! まだ懲りずに僕の邪魔をするんであれば後から来た君たち三人もセーラー戦士同様、痛めつけるまでだ!!」

 

 そしてキッドは威嚇するかのように地面に鞭を二回叩き付け、聖龍隊に向かって身構えた。

 

 

 

[大自然の脅威]

 

 そして身構えながらキッドは彼等に向かって言い放った。

「どんな相手であっても、倒さなければ生き抜く事は出来ない。それが自然の、無情の掟なんだよ」

 キッドは持っていた鞭を軽く振ると鞭の長さが短くなり、鞭は硬度のある棒状の物質に変化した。

「なぬ? 鞭がまるで棘の様な棒に変化しおった!?」

 聖龍使いが驚いていると、キッドは形状の変わった鞭を高く振り上げた。

「き、気を付けて三人とも! あの子の攻撃が来るわよ!!」

 セーラームーンが聖龍使いにメタルバード、そしてミラーガールに向かって告げた。

 そしてキッドは振り上げた棒状の鞭を地面に深く突き刺し、唱えた。

「プラント・パニック!」

 すると聖龍隊士たちの周りから、緑色の丸太の様に太い植物が生えてきた。

 しかも巨大で、その表面には特大のイバラ状の刺が無数に有った。

「な、何じゃ!? こ、このドでかい植物は?」

「気を付けるんだ! 彼はこの植物を自在に操れるんだ」

 驚く聖龍使いに告げるウラヌス

「うわ、うわっっ」「こ、こなくそっ」

 慌てふためくミラーガールの横でメタルバードは両腕を刃物に変化させ生えてきた植物を伐っていった。

 

「……うふふ、そうれっ。思いっきり暴れろ!」

 キッドは棒状に変化させた鞭を再度元の形状に戻し戻った鞭を力いっぱい地面に叩き付け音を出した。

 すると植物たちは体をくねらせ、戦士達に向かって攻撃し出したのであった。

「きゃあぁ」「ぐっ!」「ああぁ!」

「せ、セーラー戦士!」

 巨大な植物は戦士達に向かって鞭の様に引っ叩いていった。それを見たミラーガールは思わず声を上げてしまう。

「ぐっ、草木を操れるのでござるか。ならば!」

 徐に聖龍使いは聖龍剣を取り出し剣を自らの前方に直立に身構えると剣に向かって集中した。

 そして「火炎斬(かえんざん)!」聖龍剣の刀身は火に包まれた。

「はああ!」

 炎の刀で聖龍使いは周りの植物を次々に伐り倒して行く。

 しかし、いくら聖龍使いやメタルバード。剣を武器にしているウラヌスや、更には剣術にしては非力なミラーガールもミラー・ソードを取り出し、必死に植物を伐り倒して行ってもその都度、地面から新たに植物が次々に生えてきてしまう。

「クソっ、キリが無いぜ」「ど、どうしよう……」

 メタルバードとミラーガールが戸惑っている時、聖龍使いはキッドを睨みつけながら彼に問い掛ける。

「き、キッド! キッド殿! な、何ゆえ其処まで、木々を伐採した物を許せないのでござるか? わ、訳だけも話してくださらぬか!」

 この聖龍使いの言葉に、キッドは煩悶に満ちた表情で呟いた。

「うるさい……ウルサイ! お前達、お前達人間に言ったって僕達一族の気持ちなど分かるものか!! ハアアァ!」

 キッドは再び鞭を地面に叩き付けると植物は更に活気に成り戦士達の体を更に強めに攻撃していった。

「ぐはっ……こ、このままでは、私達、負けてしまうぞ……!」

 苦痛に喘ぐ中、タキシード仮面が呟いた。

「くっ、こうなったら、直接あの小僧に攻撃するしか……!」

 メタルバードが標的をキッドに見定めた、その時!

「ふっふ。そうはいかないよ」

 不敵に笑みを浮かべたキッドは自分の足元の地面を鞭で軽く叩いた。

 するとキッドの周りに無数の草木が生えてきて、キッドの周りを覆う様に囲った。

 

「ってオイ! あ、あのガキ。まさかあの草木で防御する気じゃないだろうな!? 舐めやがって! あんなモン俺様が切刻んでやる!」

「ま、待つんだメタルバード!」

 単身キッドに突っ込んで行くメタルバードを何故か制止するタキシード。

 するとキッドの周りに生えている草木に鋸の形状をしている葉がちらほら生え、それがメタルバードに向かって飛んできた。

「うわっ」

 飛んできた葉に思わず怯んでしまうメタルバード。

「め、メタルバード!」

「あ、あの葉っぱ。植物とは思えないほど硬い上に、本物の鋸並の切れ味も備わっているのよ……!」

 単身ノコギリの葉の攻撃を浴びるメタルバードを目の当りにし、ちびムーンとプルートが声を上げる。

 

 だがメタルバードは怯んでしまっただけで、肉体に傷が付く事は無かった。

「くっ……凄い葉の数だな。だがオレの体は鋼だ、全然痛くも痒くもないぜ!」

 そして改めてメタルバードはキッドに向かって行った。

「……フッ、もう遅い!」

 キッドが言い放つと、メタルバードの足元からも植物が出現しメタルバードを捕えてしまう。

「うわあっ!」「め、メタルバード!」

 ミラーガールが思わず植物に捕われたメタルバードを見て声を出した。

 そしてメタルバードは植物に足元を掬われそのまま足に巻き付いてきた植物に高々と振り上げられ地面に思いっきり叩き付けられてしまった。

「め、メタルバード、きゃあっ」

 セーラームーンが思わず地面に叩き付けられたメタルバードに歩み寄ろうとしたが植物からの攻撃が激しく迂闊に動く事すら困難であった。

「こ、このままじゃ、さっきと同じ結果になってしまうわ……!」

「た、確かに……し、しかし聖龍使いやミラーガールが居るのであれば……聞いた話によれば、あの二人は今までも多くの事件を解決し更に多数の奇跡を起こして多くの英雄達の危機を救って来たと耳にしています」

「だ、だけど! その二人にメタルバードも加わっても、状況は大して変わらないじゃない!」

 先ほどと同じ結果になるのを恐れるファイターに聖龍使いとミラーガールの実績を語るメイカー。そして二人やメタルバードが居ても大して変わらないと言い張るヒーラー。

 

 と、その時。突然植物の攻撃が止み、植物の動きそのものも止まった。

「な、なに? 急に動きが……!」「ど、どうしちゃったんだろう?」

 マーズとジュピターは首を傾げた。

「あ、アレアレ? も、もう終わったの、かな?」

「ま、まさか、そんな……」

 目を点にして呟くセーラームーンにマーキュリーが語る。

「こ、これは……」「ど、どうしちゃった訳なの?」

 同じく状況を呑み込めないでいる聖龍使いとミラーガール。

 そんな二人に地面に叩き付けられたメタルバードが歩み寄る。

「な、何が起こったんだ?」

 するとキッドは突然言い放つ。

「いやいや。普通にセーラー戦士だけならこれで十分だけど聖龍使いやミラーガール達まで来られたんなら此方も少し戦い方を変えなきゃいけないんでね」

「た、戦い方を変える?」

 思わず呟くミラーガールに、キッドは悠然と語り始めた。

「な~に。状況に応じて草花が変化していくのは自然な事。草木が外敵の動物に食べられらない様に自らの体内に有毒物質を生み出したり自らの体にこの鞭の様なイバラ状のトゲを生やしたり……植物はその場の環境に適応しようとする強い生命力が有る。まぁ、君たちには理解できないかもしれないけどね……植物に宿る強い生命力を、命の輝きを……ね」

 

 キッドが語り終わったその時。

 停止した巨大な植物から無数の花が咲いていった。

「う、うわあ……」「け、結構きれいね……」

 咲き誇る花の何とも言えない妖しくも艶やかな紫色に思わず見惚れてしまうミラーガールとジュピター。

 その時、花から紫に輝く光の粉が放出され、辺りは紫色の輝きに包まれていった。

「な、何なのかしら? この光の粉は……」「見てて悪くは無いわね」

 光の粉に包まれる情景に動揺するマーズ、そして呟くヴィーナス。

「い、いったい、何なのかしら。この粉は……」

「そうね。油断しない方が良いわ」

 辺りに降り注ぐ紫の光輝く粉に警戒するマーキュリーとネプチューン。

 

 と、そんな時。

「き、きれいだね。さ、サター……」「ち、ちびムー……」

 光の粉に見惚れていたちびムーンとサターンが突然倒れた。

「ち、ちびムーン!」「リトルレディー、サターン」

 倒れた二人にセーラームーンとプルートが歩み寄った。

 倒れた二人は苦しそうな表情を浮かべ、時折り咳き込んだ。

「な、なに? 何が起こっているの……ゴホッ、ゴホ」

「じ、ジュピタ……ウグッ、ゴフッ」

 ちびムーンとサターンに続いてジュピターとマーキュリーも咳き込み、思わず蹲ってしまう。

「な、何だ? 何が起こっている、ゴホ、ゴホッゴホッ」

「な、何だ? い、息が、息が苦しい……」

「ふぁ、ファイター、メイカー……ゴホッ」

 何とスターライツまでもが苦しみ出し、その場に蹲ってしまった。

「な、何だこれは…ホゴッホゴッ」「な、何? 何だか、息が苦しい……」

「め、メタルバード、ミラーガール…ゴッホ、ゴボッ」

 メタルバードにミラーガール、そして聖龍使いまでもが呼吸が苦しくなり遂にはその場に居たキッド以外の人物は全て地べたに横になるか、顔を下に向けて蹲るかして動けなくなってしまった。

「こ、これは、いったい…ゴホ」

 話そうとしても息が苦しく、言葉が思う様に出せないミラーガール。

 その時、聖龍使いが苦しみながらも皆に聞こえる様に言い放った。

「み、皆の集! こ、これは……この紫の光の粉は……ど、毒花粉じゃ! も、もう吸い込んではいかぬ、ゴフっ」

「ど、毒花粉だって……!」「な、何て真似を……」

 呟くタキシードとウラヌスであったが最早二人を始めその場の皆が動く事すらできなくなっていた。

 

 そんな彼等の傍らまで、キッドは歩み寄って来た。

「…………」キッドを見つめる聖龍使い。

 そして他の面々もキッドを睨むように見つめていた。

「……何だい? 僕に言いたい事が有りそうな面構えだね」

 不敵に笑みを浮かべながらキッドは弱りきった面々を見つめ返した。

 そして皆の顔を見て、キッドは唐突に語り始めた。

「ああ、なるほどね。何故僕だけが君等と同じ毒花粉の中に居るのに平気でいられるかって疑問に思っている訳か。それはね、実に簡単な事だよ。僕には植物系の有毒物質に対する抵抗力が備わっているからね。故に君等と違って、こんなちっぽけな量の毒花粉ぐらい平気なんだよ」

 不敵な笑顔で語るキッドに、その場の面々は静かではあったが次第に彼に対して怒りを感じるようになってた。

 

 弱りきった聖龍隊の面々。

 この時聖龍使いはテレパス能力のあるメタルバードに意識を集中して彼の意識に直接語りだした。

(め、メタルバード! お、お前まだ飛べるか? 何とか空中に舞って、強風を起こして毒花粉を吹き飛ばしてくれ…!)

 この問いかけにメタルバードは弱弱しく答えた。

(す、済まねえ。も、もうオレの体内に大量に毒花粉が入り込んじまって、か、体が思うように動かねえんだ…!!)

(な、何と…! も、最早、打つ手なし。成す術無しなのか…!!)

 

 

 聖龍使いが意気消沈し、半ば諦めかけていた時、彼はふと昔の事を思い出した。

 

 そう、彼がまだ三次元界に居た時の頃。

 彼は幼い頃、体格の良い今の元気な自分とは裏腹に当時の彼は小児喘息者であり、かなり病弱だった。

 そんな病弱であった彼が布団に潜り込み喘息特有の呼吸困難に近くなる程の激しい咳をしていると、見かねた母親が駆け寄ってきて咳き込む彼の背中を優しくさすってあげたのだ。

 この時、当時の聖龍使い、いや小田原修司は人知れず感極まり、そっと一粒の涙を流した。

 そして修司にとって、この時の思い出だけが母親の温もりを感じられた唯一の記憶なので有った。

 

(……フッ、何を昔の記憶を思い出していやがる。もう終わった事、過ぎた事だと云うのに……バカだな、俺って奴は……)

 

 そして聖龍使いは次第に意識が薄れていった。

 

 

 

 

[集結! 聖龍隊]

 

「ウインディ(風)!」

 掛け声と共に、辺りに強風が吹き荒れた。

「な、何だ! この風は…!?」

 突然の強風に驚くキッド。

「か、風……」

 意識が薄れかかったウラヌスが呟いた。

 それに続き、セーラームーン達が擦れた声で語りだした。

「ね、ねぇ。う、ウインディ……って」

「え、ええ。それに、今の声は」

「ま、間違いないわよ」

 マーキュリーとマーズは駆け声を聞き、安堵の表情を浮かべる。

「こ、この声は……あっ!」

 メタルバードは声のした方に視線を向けると驚き、内心歓喜に満ちた。

「こ、この声の主は……さ、さくらか!」

 聖龍使いが叫ぶと、ミラーガールが声の方角に視線を向けた。

 そして視線を向けたミラーガールは喜びに満ちた面立ちになり、感極まって思わず叫んだ。

「さ、さくらちゃん! それにハニーさんにミスティーハニー! ナースエンジェルに星夜くん、デューイ。い、イサミちゃん達も!」

 弱りきり、倒れていた面々の眼前には、残りの聖龍隊士たちが勢揃いしていた。

「み、みんな!」「大丈夫!?」

 倒れている面々に、小狼と苺鈴が駆け寄ってきた。

「み、みんな苦しそうだな」

「ああ。さっき、さくらが吹き飛ばした紫の粉による影響かもね」

 苦しむ皆を見て、星夜とデューイは話しだす。

「待っててみんな。《エンジェルエイドボムビーム》!」

 ナースエンジェルが苦しむ皆に向けてナースバトンから回復系の光線を放出した。

 そして全員が何とか動けるまでに体力が回復した。

「ま、まさか…! 黒天狗党が森林を伐採しているだけでも驚きなのに、まさかカラス天狗達が此処まで痛めつけられているなんて…!!」

「い、いくら何でも、これは酷過ぎるぜ…」

「あ、ああ。み、みんな虫の息だ…」

 イサミ達はカラス天狗達がボロボロに痛めつけられ、そこ等中に横たわっている現状にただただ驚くしかなかった。

「ま、まさか、豹の爪(パンサークロー)の連中までもが…!」

「屈強な団員達が、まさか此処までされてしまうなんて……」

「だ、だが同じ聖龍隊の面々まで痛めつけられちゃ、黙っちゃいられないぜ!」

 目の前の現状やキッドを目の当りにしてキューティーハニー・ミスティーハニーそして青児はキッドを見つめた。

「み、皆の集……な、何故此処に……?」

 聖龍使いが訊ねると、さくらの後ろからケルベロスが出て来て聖龍使いに告げた。

「せ、聖龍使い。間に合って良かったわぁ。ウッズはんから言伝(ことづて)されてな、ワテら急いで駆け付けて来たんやで」

 ケルベロスに続き、デューイと青児が聖龍使いに訊ねてきた。

「せ、聖龍使い。あの少年は、ジュピターキッドって誰なんだ?」

「お、俺達、通信機を通して大体の事情は耳にしているが、な、何なんだ? あのピーターパンみたいな小僧は?」

 

 目の前で自由に会話している聖龍隊の面々を見て、キッドは多少不機嫌な態度で発言した。

「ちょっと君たち! 何を勝手に出て来て、勝手にお喋りしているんだい? 怪我を治してあげたのなら、さっさとセーラー戦士達と聖龍使い達を連れて引き上げてくれないか? 僕はこれから横たわっている連中を始末しなきゃいけなんだしさ」

 ふてぶてしく発言するキッドに隊員達は完全に堪忍袋の緒が切れた。

「いい加減にしやがれ! このクソガキが!!」

 タキシード仮面が普段の大人しい性格からは想像のできない暴言口調で叫んだ。

「調子に乗ってんのも大概(たいがい)にしろ!」

 青児もキッドを睨みつけながら怒鳴った。

「俺たち聖龍隊を此処までキレさせやがって……! 覚悟しろ! ジュピターキッド!!」

 メタルバードもキッドに向かって怒声で言い放った。

 最後に聖龍使いがキッドに向かって歌舞伎口調で言い放った。

「ジュピターキッド。お主の横暴も此処までじゃ! あっ、聖龍隊。あ、いざ、あっ、戦闘じゃ~!」

 

 そして戦闘態勢に入る聖龍隊の面々を見てキッドは不敵な雰囲気を漂わせながら左手の拳の親指を自分に向けながら言い放った。

「ふっ、まぁ良いさ。そんなに戦いたいのなら、君たちの力を見せてくれ! 君等の力が自然の力を上回るのか、それとも……」

 と唐突にキッドは自分の周りの地面を鞭で叩いて、豪快な響音をまるで威嚇するかの如く鳴り響かせ、鞭を両手で持ち構えて更に続けて言い放った。

「強大かつ命溢れる自然の力の前に平伏すのか!!」

 

 キッドと向かい合った聖龍使いは、他の隊員達に言い放った。

「皆の集ーー! まずは周りの巨大な植物を伐り取れーー! また毒花粉など出されてしまったら事じゃあぁ!!」

 

 聖龍使いの発言を合図に、キューティーハニー、ミスティーハニー、デューイにウラヌス、メタルバード、更にはさくらもソード(剣)で植物を伐り倒した。

 聖龍使いも火炎斬で当りの植物を豪快に伐り倒して行った。

 そして全ての植物を伐り倒すと、マーズはキッドを睨みつけながら言い放った。

「ジュピターキッド! 良くも好き勝手にやっちゃってくれちゃったわね! 今までの分よ、喰らいなさい!!」

 マーズはキッドに向かって炎の玉を放った。

 

 

 

[大自然の猛攻]

 

「……ふっ」

 キッドは不敵に微笑むと、鞭を地面に軽く叩き付けた。

 すると丸太の様な巨大な草が、まるで壁の様にキッドの前方に覆う様に生えて来てマーズの放った火の玉は、その草の壁に直撃しキッドを護ったのだ

「な、なに?」

 マーズは自分の攻撃が防がれた事に驚いた。

 しかも更に驚く事に火の玉が当った部分は黒く焦げているだけで、ほとんど燃えていなかった。

「な、なんで燃えないの? あ、あの植物……」

 マーズが驚いていると、キッドは小馬鹿にするような口調で語った。

「何だい? 君たちってホントに無知なんだね」

「な、何だと!」

 キッドの発言に怒り口調で返事をするタキシード仮面。

 

 そんな彼等に対し、キッドは更に上の目口調で言い放った。

「良いかい、植物=燃えやすいって概念が、そもそも無知な考えなんだよ。……確かに植物は火に弱く、燃えてしまうのは確かな事だ。だけど、今ボクの目の前に生えている、この植物には通常より多くの水分を含ませている。故に炎の熱にも強く、ただ表面が焦げるだけで燃える事は無いんだよ」

 不敵に語るキッドは、そう言い終わると再び鞭を地面に叩き付けた。

 すると聖龍隊の周りに、新たに棘だらけの無数の巨大な植物が地面から生えてきた。

「きゃああっ」「う、うわっ。ま、また生えて来やがった!」

 突如足元から生えてきた植物に驚き動揺する苺鈴と星夜。

「同じ事を! また伐っていけば良いだけの事!」

「はああぁ!」「はあぁ…!」

 デューイ、ウラヌス、そしてミスティーハニーは果敢にも植物を伐り倒そうと植物に己の武器である剣を振り回した。だが

「な、何だこれは!?」「ど、どうした事だ?」

「け、剣が抜けない……!」

 何と剣が植物に少し伐り込んでしまった所で抜けなくなってしまい困惑してしまう面々。

 しかも植物の伐り口からは粘り気のある液が染み出し剣を完全に包み込むように纏わり付き、抜けなくさせていた。

 

「はっは~。君達が剣戟を最も使うのは既に知っていたからね。植物の樹液を粘り気のある樹液にさせておいたんだよ。悪いけど、しばらくその剣は使えないよ。例え抜けたとしても、切れ味の保証はできないね」

 悠々と不敵に語るキッドに、剣を使えなくさせられたデューイ・ウラヌス・ミスティーハニーは口元を吊り上げて悔しがった。

 

「さぁ、次は此方から行くよ! それっ」

 キッドが鞭を地面に叩き付けると、植物に生えていた棘が真直ぐな針の形状に変化しそれが聖龍隊目掛けて飛んできたのであった。

「キャアアアッッ」「ヒイイィィッッ」

 セーラームーンとヴィーナスは涙目になりながら攻撃を避け続けた。

「うわあっ」「ひいっ」「きゃ、きゃあっ」

 トシ、ソウシ、イサミも飛んでくる針を避けるだけで精一杯であった。

「わははっ。次はこれでどうだ!」

 キッドが再度鞭を叩き付けると今度は一本の巨大な細長い葉っぱの様な植物が生えてきた。

「な、何これ?」植物を見て呟くマーキュリー。

 

 その植物は根元の両脇にはゼンマイの様な丸まった細い葉が生えており、真ん中の葉だけが異様に巨大で有った。

 更にその巨大な葉の、葉身の部分は縦に細長く一面に赤い毛の様なものがビッシリ生えていた。

 

「な、何なんだ? この植物は?」「……」

 タキシード仮面とプルートが植物を見つめていると突然植物がゆっくりと動き出し目の前のプルート目掛けて巨大な葉身が覆い被さる様に倒れてきた。

「きゃあっ」「危ねえ!」

 プルートが悲鳴を上げるとメタルバードが彼女を押し出して葉身に覆い被されてしまった。

「め、メタルバード!」「あ!」

 タキシードとプルートがメタルバードの方を見ると葉身の一面に生えている赤い毛の様なものがメタルバードの体を押さえこみ葉身も巻き取る様にメタルバードを包み込んだ。

「め、メタルバード!」「大丈夫? メタルバード」

 植物に歩み寄る青児とキューティーハニーに向かってメタルバードは笑顔で返事した。

「あ、大丈夫大丈夫。それよりもプルート、お前は大丈夫だったか?」

「え、ええ……」メタルバードの問い掛けに答えるプルート。

「それなら良いんだ。女を護りきるのが男の役目。それは人で有ろうと、人外で有ろうと同じ事だろ?」

 そう言いながら笑っているメタルバードの顔を見て周りの者は少し穏やかな気持ちになった。

 

 だが、その時。

「へへ……ん? 何だ、何だかちょっと体が熱いよ。ってゆーか体の表面が燃えるように熱い……!アチ、アヂィィッッ!!」

突然メタルバードは悲痛な叫びを上げ、暴れまわった。

「め、メタルバード!」

「なに? 彼にいったい何が起こっているの!?」

 苦悶な表情で叫び悶えるメタルバードを見て動揺するタキシードとプルート。

 その時、聖龍使いがメタルバードに告げた。

「ハッ、まさか…! お、おいメタルバードよっ。お、お前さんに巻き付いている赤い毛や葉っぱから何やら液体みたいなのが染み出しておらぬかぁ!!」

「な、なに? え、え~と……」

 聖龍使いに指摘され、メタルバードは自身の体に纏わり付く毛や葉を確認した。

「……あ! 確かに、結構粘り気のある液体が染み出してきている!」

 メタルバードの発言に、聖龍使いは目の色を変えて言い放った。

「な、何と! 皆の集、その植物から離れるのじゃ! それは超巨大な食虫植物でござる!! 液体に触れただけで体の肉がドロドロに溶けてしまうぞぉ!!!」

『え、ええええぇぇ!!!』

 聖龍使いの発言を聞き、驚く面々。

 

 そしてこれを聞いたメタルバードは一層混乱に陥る。

「うわ、うわっっ! た、頼む! 誰か早く助けてくれよぉ! オレまだ死にたくないよぉ、まだ青児や衛みたいに彼女作ってないんだよぉ! せめて、せめて死ぬ前に幸せなカップル人生味あわせてくれよぉ!!」

 涙目で叫び続けるメタルバードに聖龍使いは言い放った。

「ああ、恐らくメタルバードは大丈夫でござるよ。いくら強力な酸を出す事ができる食虫植物で有っても鋼を溶かす事まではないから大丈夫でござろう……多分」

「オイこらっ! 今テメエなんて言いやがった! ぼそりと多分って、な~に不安あおる様な台詞を吐きやがるんだ!!」

 泣き叫びながらも聖龍使いに鋭いツッコミを入れるメタルバード。

 そんな時。

「ウオオオッ!」

 メタルバードを捕えていた巨大な食虫植物の根元を獅子形態に変化したケルベロスが自身の鋭い前足の爪で切り裂いた。

「うわっっ」

 植物に囚われていたメタルバードは、そのまま植物と一緒に地面に倒れ込んだ。

「大丈夫か、メタルバード」

 ケルベロスはメタルバードに歩み寄る。

「あ、ああ。大丈夫だ……ありがとよケルベロス。しかし、いつ見てもお前のその姿は驚くよ。いつもの猫みたいな大阪弁の生き物が、まさかライオンに変身しちまうとはよ……」

「悪かったな。でも御蔭で助かっただろ」

「ああ。あんがとな、ケロ」

 メタルバードはケルベロスに笑顔で礼を言うと彼の側に聖龍使いとミラーガールが駆け寄ってきた。

「め、メタルバード…!」「大丈夫でござったか」

「このヤロー! テメエな~に俺は鋼だから大丈夫だろうって……! 見てみやがれ! 酸の所為で少しばかり体が変色しちまっているじゃないか!!」

 涙目で訴えるメタルバード。そんな時。

 

 

「……た、助けてくれ」擦れた様な、弱弱しい声が聞こえてきた。

 皆が声のした方向に視線をやると其処には傷だらけで弱りきったカラス天狗が一人、地べたを這いでいた。

「あっ!」「か、カラス天狗だ!」

 ボロボロのカラス天狗を見て声を上げるイサミとトシ。

 そんな動く事すら儘成らないカラス天狗にキッドは歩み寄る。

「……」「ぐっ……た、助けて……」

 必死に助けを求めるカラス天狗をキッドは見降ろし、そして吐き捨てた。

「……フンッ、自業自得だね。君はこのまま腐り果てて、土に戻った方が自然の為だ。さっさと息を引き取って冷たくなりなよ」

『!!』

 このキッドの無慈悲な発言に、その場の皆は驚愕した。

 

「ほらっ! さっさとくたばりな!!」

 キッドはカラス天狗に吐き捨てながら、彼の体に力いっぱい鞭を叩き付けた。

「ぎゃああ! うぎゃあぁ! ぐはあぁ!」

 キッドに鞭で叩かれる毎に悲痛な叫び声を上げるカラス天狗。

 そんな無情な彼の行為を見て聖龍隊の面々は怒りではなく、かえって顔から血の気が引いていた。

「森を破壊し、命を奪って来たお前等は此処で罪滅ぼしに森の栄養分となるのが一番良いんだよ!」

 キッドの執拗な攻めてに、カラス天狗は苦痛に喘ぎながらも言い返した。

「ぎゃあっっ……ち、違うんです。わ、私達は無理やり……無理やり遣らされていたんです。ぱ、パンサークローが……し、シスタージルが私達に無理やり行えと命令して……! い、言う事を聞かなければ、こ、殺すぞと……! そ、それで仕方なく……」

「な、何だって!」「そ、そんな!」

「ぱ、豹の爪(パンサークロー)が黒天狗党に命令しているって事!?」

「そんなぁ!」

「じゃ、じゃあ、この前の現金輸送の事件も、まさか豹の爪が命令して!?」

「豹の爪が黒天狗党を乗っ取ったって事なのか?」

 カラス天狗の発言を聞き、驚きを隠せない青児にハニーにミスティー。更に俄かには信じられないイサミ達。

 

「……それがどうしたって言うんだ? 君達が森を壊した事実には変わりないじゃないか。言い訳せず、さっさとくたばれよ!!」

 キッドは再びカラス天狗に鞭を浴びせた。

「ぎゃああぁ! うぎゃあ! ひぐぅ! も、もう止めてウグッ。ご、ゴメンなさい、がアァっ!」

 涙を流しながら謝罪するカラス天狗に対し、キッドの手は止まる事は無かった。

「良い訳を聞いて欲しいんなら、あの世で閻魔さまにでも聞いてもらいなっ!」

 キッドの攻撃は休まる事は無く、それどころか一層攻撃は激しさを増していった。

 

 そんなキッドの横暴を見て、ウラヌスは思わずキッドに向かって叫んだ。

「止めるんだキッド! もう充分だろ! それ以上傷付ける意味なんて無い! 即刻攻撃の手を止めるんだ!! 頼む!!」

「……う、ウラヌス」

 悲痛な面持ちで言い放つウラヌスを見て、ネプチューンも居た堪れない心情であった。

 そんなウラヌスに対し、キッドは嘲笑いながら吐き捨てた。

「……ふふ……フハ~ハッハ、わはは……ま、まさか君がそんな事を言うとは驚きだよ。かつては使命を果たす為なら、どんな非道な行いも平然と遣って退けた天王星を司るセーラーウラヌス様の言葉とは思えないなぁ!! わははは…っ」

「!」『!!』

 

 キッドの発言に、ウラヌスは静かに怒りを、いや悔しさを感じていた。

 彼の言うとおり最初彼女は戦士としての使命のみを考え、その為にはどんな手段も取ってきた。

 故に当初はうさぎ達と、セーラームーン率いる内部系セーラー戦士と衝突し合った。

 そんな彼女も、次第にどんな存在であろうと助けてあげたいと願ううさぎやアッコ、聖龍隊の面々と触れ合っていき次第に自分の心を、考えを改めていった。

 だが、今自分の目の前でカラス天狗に執拗なまでの攻めをしているキッドから言われて改めてキッドの横暴を見てみるとキッドが昔の、どんな手段も平然と行えていた自分の姿と重なって見えた。

 ウラヌスはかつての自分の行為に悔しさを、そして怒りを感じていた。

「……う、ウラヌス」

 ネプチューンは悲痛な面立ちで自分自身のかつての行いを悔むウラヌスを悲愴な瞳で見つめる。

 

 だが、他の面々はそれ以外の事でも驚いていた。

 何故なら、先ほどのキッドの発言にも有った通りキッドは何故かDDガールズとの戦闘の事までも知っていた事に驚愕していた。

 

 その時。

「……い、いい加減にしろよ、このヤロー!!」

 キッドの横暴にブチギレたトシが持っていた《龍の目》を野球ボールの大きさの状態で力いっぱいキッドに投げつけた。

「くっ……!」

 キッドは咄嗟に鞭を地面に叩き、草の壁を作ったが僅かな隙間から龍の目が通り抜け、キッドの顔に当りそうになった。

 しかしキッドは顔に当たるギリギリの所で避けた。

 だが、龍の目はキッドが顔に装着していたアイマスクに僅かにかすりキッドのアイマスクは地面に落ちてしまい、彼は徐に顔を下に向けた。

 

「チッ、もう少しで顔面に当りかけていたって言うのに……!」

 トシは悔しそうな顔立ちで舌打ちをした。

「で、でもトシ。これでキッドの奴の素顔が分かるよ」

「ま、まぁ。素顔が分かっただけで勝てる訳じゃないけどね……」

 悔しがるトシに言い寄るソウシとイサミ。

「か、彼はどんな顔をしているのかしら?」

「な、何で私達のかつての経緯を知っていたのかな?」

 マーキュリーとジュピターがキッドの素顔を見ようと、皆と同様彼に視線をやった。

「キッドよ。主はいったい何者……」

 そしてキッドは静かに顔を上げ、皆の方を向いた。

「……! な、なぬ!!」「う、うそ!?」

 キッドの素顔を見た聖龍使いは驚愕し、ミラーガールは思わず口を塞いでしまった。

「そ、そんな!」「こ、こんな事って……!!」

 タキシードに青児も素顔を確認して、驚きの余り顔が蒼褪めていった。

 

 他の隊士達もキッドの素顔を見て、体に衝撃が走った。

 

 

 

[無情な申し子]

 

「…………」

 キッドは何も言わず、ただ無言で聖龍隊の面々を見つめていた。

 彼の目は何処か悲愴な雰囲気を感じだしている、暗く悲しみに満ちた瞳だった。

 そして聖龍使いは動揺しながらキッドに語りだした。

「……う、ウソだろ。ま、まさか、お前が……」

 言葉を途切れさせながらも、聖龍使いはキッドに向かって叫ぶ。

「……ジュニア!!」

 そう、ジュピターキッドの正体。それは修司の弟分で、聖龍隊のみんなとも親しい間柄であった少年。

 親の居ない木野まことや如月ハニー、葉月聖羅にとって本当の父親の様な存在であるウッズの一人息子。

 ジュニア・J・プラント当人だった。

 

 皆、キッドの、いやジュニアの顔を確認して顔色を変えているとジュニアは無言のまま足元に落ちたアイマスクを拾い自分の顔に装着し直す。

「そ、そんな……!」

「う、ウソでしょ? じゅ、ジュニア君が、キッド!?」

 顔を蒼ざめながら悲観した面立ちで呟くヴィーナスとジュピター。

「そ、そんなぁ……!」

「ま、まさか! キッドがジュニア君!?」

 悲痛な面立ちで悲観するさくらに、俄かには信じられないでいるナースエンジェル。

「う、ウソでしょ、そんな!」

「ま、まさかキッドが……!」

「し、信じられない……」

 イサミやトシ、ソウシ達も目の前の現状を素直に受け入れられなかった。

「……し、知っている筈だわ。あの子はずっと、聖龍隊のみんなの側に居たんだもの。何より、私達がセーラームーン達と衝突し合っていた現状も彼自身目撃しているんだもの」

 動揺しながら述べていくネプチューンであったがウラヌスの方は先ほどまで自分に対して暴言を吐いていたキッドが普段は心優しいジュニアで有った事を知り、驚きの余り呆然としてしまった。

 そしてちびムーンとサターンは、普段自分達に優しく接してくれている自分達にとっては歳の近い兄の様な存在であったジュニアがキッドで有った事を知り、言葉を失くしていた。

 

「……じゅ、ジュニア君。きみ、な、何故……」

 ミラーガールが顔を蒼ざめながら訊ねた。するとキッドは悠然に勇み立つ。

「……ふぅ、もうばれちゃったか。まぁ良い。それとミラーガール。今の僕はジュニアじゃ無い。今のみんな同様、別の存在になっているんだから。そう、大自然を、地の理を司る《大自然の申し子》……ジュピター・キッドに!」

 何処か虚しそうな表情を浮かべながら皆に言い放つジュニア、いやジュピターキッド。

 そしてキッドは再びマスクを付けた状態で、皆の方を向いた。

「……それじゃ。互いに正体も分かった所だし、君たちはどうするんだい? また僕の邪魔をし続けて、再度僕に痛めつけられたいのかい?」

 再び不敵な笑みを浮かべて平然と語るキッド。しかし皆、キッドの正体を知り彼に対して怒りの感情が向けられなかった。

 

 いつも笑顔でお喋りしてくるジュニア。

 優しく接してくれるジュニア。

 子供とは思えないほど、父親似で頭の良いジュニア。

 いつも自分達に笑顔を見せてくれたジュニアが、自分達に対して平然と戦い合える事実に聖龍隊の面々は動揺し、まともに口を開く事すらできなかった。

 

「……み、みんな。いったい、どうしたんだろう?」

「さ、さぁ。しかし皆さん、あの子、ジュニア君という少年と知り合いだったみたいですね」

「な、なに? この重たい空気は……」

 ジュニアと初対面で有ったスターライツの三人はその場の重たい空気を感じながら緊張を感じていた。

 

 

 その時。

「グワアァァ!」『!』

 突如、辺りに響き渡る奇声に皆驚いた。

 そしてキッドを睨みつけながら声の主が姿を見せた。

「グオオオォォ! お前か、我等の鉱石採掘の責務を妨害したのは!!」

 姿を見せたのはまるで山女の様な重装備に身を包み、両手に斧を所持している女怪人でだった。

「我が名はアクシー! 誇り高き豹の爪(パンサークロー)の一員である! 今回は野山の木々を伐採し其処から貴重な鉱物サンプルを掘り起こそうとしていたのに、まさかこんなピーターパンもどきな小僧に手下やカラス共や全員やられてしまうとは……! 覚悟しろよっ!」

 キッドを睨みつけながら怒鳴り散らす女怪人に、キッドは顔色を暗くして言い返した。

「……お前か、お前なのか? 森を切り拓けと命じたのは? コイツ等に森を伐採しろと、自然を破壊しろと命じたのは……お前なのか!」

 キッドはさっきまで自分が痛めつけ今では完全に気絶してしまっているカラス天狗を見つめながら怪人に言い放った。

 すると怪人はふてぶてしくキッドに言い放つ。

「それがどうした? それが何だって言うんだ?確かに我が団員や雑魚のカラス共に命じて森を伐らせていたのは全て私からの命令で有ったが、それが何だと言うのだ少年よ」

 悪びれる様子も無く平然と言い放つ怪人に対して、キッドは怒りを覚えた。

「こいつぅ!!」

 キッドは怪人に向かって行ってしまう。

 

 この時、聖龍使いはメタルバードに耳元で囁くように、ある伝言をしていた。

「め、メタルバードよ、ちょっと」「ん? 何だ?」

「み、耳を貸してくれ………………」

「………………なるほど、分かったよ。俺も何でジュニアがあんなに成っちまっているのか気になっていたしよ。ジュニアの気持ちをみんなだって知りたい筈だろうし、同時にテレパスで何とかしてみるよ」

 そしてメタルバードはキッドに気付かれないまま、姿を消した。

 

「オリャアアァ!!」

 一方の怪人はキッドに向かって行きながら、彼に対し斧を振り回し続けて猛攻を仕掛ける。

 そんな攻撃をキッドは颯爽と交わし続けながら怪人の顔面に鞭を入れていった。

「ウグッ、ウギャッ」

 顔面に鞭を当てられた怪人は声を上げ、キッドに向けて更に鋭い眼光を飛ばした。

 そうしていく内に、キッドは徐に怪人に言い放った。

「さぁ、もう終わらせようか。正直、アンタ以外にもこの辺に転がっている連中を埋めなきゃいけないんでね。速急に終わらせてあげるよ」

 不敵に見つめながら言うキッドの言葉に、怪人は感情的になってしまう。

「く、口の減らないクソガキだな! 私はかの名高き豹の爪の一員であるぞ! その減らず口、首ごと斬りとってくれるわ!!」

 興奮する怪人の様子を見て、キッドは自身の左手から緑色の小さな光を出した。

「え? あ、あれは……」

 それを目視したミラーガールが思わず呟いた。

「はああぁぁ!」

 しかし怪人はキッドに向かって一直線に猛進する。この時キッドは左手から放出された光から一粒の種らしき物に変えた。

「ヤドリギ!」

 キッドは唱えながら、その種を怪人目掛けて投げつけた。

「ウッ……ゴクッ」

 種は怪人の口に放り投げられ、怪人は思わず種を飲み込んでしまう。

 驚き動揺した怪人は一旦立ち止まり、自身の体に何か変化は起きてないか確認した。

 

 そして何も起きてない事を確認すると、怪人は再度キッドを睨みつけて言い放った。

「な、何だい驚かせおって……何もない、ただのこけおどしか。フザケおって!!」

 そして怪人はキッドの眼前まで迫っていった。だがキッドは避けようとはしなかった。

「あ、危ない!」

 思わずキッドに向かって叫ぶさくら。

 いくら無情とは言え、いつも明るく接してくれるキッドことジュニアを慕っての反応だった。

 

「……アアン? ど、どうした事だ?」

 怪人の持っていた斧がキッドの額に当る寸前、怪人の動きが止まった。これに対し怪人は動揺する。

「ど、どうした事だ? か、体、いや、足が動かん……!」

 慌てふためく怪人に向かって、キッドが不敵に微笑みながら告げる。

「……フッ、種が芽生えたようだね。これでもう君はお終いだよ」

「アアン? ……! こ、これは……!!」

 女怪人は自分の足元を見て驚愕した。

「わ……ワ、ワアアアアァァァァァァ!!」

 怪人は顔を蒼ざめて絶叫する。

 何と、自分の足がまるで木の根っこの様に変化しており、しっかりと地面に根を張っていて動かす事ができなかったのだから。

「ひ、ひいぃっっ」

 怪人の変化した足を見て、思わず顔から血の気が引き声を上げてしまう星夜。

 そして他の聖龍隊員達も顔を蒼ざめさせて呆然と立ち尽くしてしまう。

「あ、足が! 足が、足がぁぁぁぁ!!」

 怪人は動揺しまくり、ただただ恐怖で混乱していた。

「……フフフ、良かったね。土に埋まることなく大地の一部に、樹木の一つになれて」

「な、なにっ!?」

 キッドの発言に驚く女怪人。更にキッドは悠然と怪人に語り続ける。

「さっきアナタが呑み込んだあの種。あれは大地の力を凝縮した植物の種でね。呑み込んだ相手の体を瞬時に同化させその相手の体を完全に樹木の苗床として支配する事ができるんだよ」

 これを聞き、怪人は更に恐怖で混乱し動揺した。

「や、止めろ……! わ、私は木などになりたくはない……!」

「もう遅いよ。呑みこんだ上に足から根っこが生えてしまったら僕でさえも制御する事はできない。特に地面に根っこを降ろしてしまったら根は地面から養分を吸い取り更に成長速度が上がるんだよ。ほら、もう君の下半身は木になっているよ」

 キッドが指差すと、怪人の胸のあたりまで樹木化が進行していた。

「い、嫌だーー!! 誰か、誰か助けてくれーー!! 成りたくない、私は木に何かなりたくない!」

 だが怪人の体はみるみるうちに木に変化していく。

「い、嫌だ!! 誰か、助けて……誰か……だ、れ……か……」

 そして怪人の体は完全に一本の木に変わり果ててしまった。

 その木の表面には薄らとだったが、怪人の断末魔の表情が残っていた。

 

 聖龍隊の面々は顔から血の気が引いていき、背筋に寒気を感じながら恐怖で身が縮まっていた。

「……あ、ああ……」

 ミラーガールも顔を真っ蒼にして肩を震わせていた。

 他の面々も、まるでホラー映画のワンシーンの様な光景に恐怖を感じ完全に戦意を、心を揺らがせていた。

 

 そしてキッドは再び聖龍隊の方を向いた。

「ヒッ……」

 自分達に顔を向けてきたキッドを見て、思わず声を出して怯むソウシ。

 そんな聖龍隊に、キッドは平然と言い放った。

「……どうだい? これでもまだ僕と戦うのかい? 一応言っておくが、僕が本気になったら、この怪人以上に凄い形で君達を攻撃できるよ」

 聖龍隊は言葉を失くしたままキッドをジッと見つめるしかできなかった。

 

 その時。

「ウワッ。な、なんだ? か、体が動かせない……!」

 突如キッドの体が変わった体勢に変わり、キッドは動けなくなった。

「え?」「こ、今度は何!?」

 ネプチューンとウラヌスが驚いているとキッドの背後から変身を解いた変身怪獣がキッドの体を押え込みながら姿を現した。

「へ、変身怪獣!」

 変身怪獣の姿を見てミラーガールは声を上げた。

「へ、変身怪獣! まさか……」

 キッドも驚きながら変身怪獣を見つめる。

 

「へへ。そのまさかだぜジュニア! さっき聖龍使いに言われて一回変身を解除そして透明になってお前に気付かれない様背後に回っていたのさ!」

 驚くキッドに話しながら、変身怪獣は更に続けて述べた。

 

「お前の兄貴で聖龍使いからの言伝だ! なんでお前がこんな事をするのか誰かに操られていないか確認するためにもお前の心を読ませてもらうぞ! 他のみんなにも何故お前が平然とこんな言動ができるのか理解したいだろうし、お前の考えは俺のテレパスを通してみんなにも伝達するからな!!」

「や、止めろ!!」

 抵抗するキッドの体を押さえながら、変身怪獣はキッドの、ジュニアの心情を見通した。

 

 

 そして変身怪獣が見たキッドの心理は変身怪獣のテレパスを通して聖龍隊の皆の頭にも伝えられた。

 

 

 

[壊されて]

 

 変身怪獣が、そして聖龍隊の皆の頭に流れたキッドことジュニアの心理。

 

 まず流れたのは、木の中をそのまま繰り抜いた様な造りの部屋。

 壁には様々な木の実や葉っぱ、更には手作り感溢れる多種多様な道具の数々が掛けられていた。

 そしてキッド、いや、その時のジュニアは一人木製のテーブルで一人お絵かきをしていた。

 軟らかく、そして色のついた小石で一人チョークの要領で緑の葉っぱにお絵かきをしていたジュニア。

 丸い窓から見える外の様子は、途方も無い量の豪雨が降り続いていた。

 外から激しく聞こえてくる強烈な雨音。

 

 そんなとき、いきなりドアを蹴破るいきおいで一人の男が入ってきた。

「あっ、叔父ちゃん」

 ジュニアはその男の顔を見て叔父ちゃんと言った。

 そう、入って来た男はジュニアの叔父でウッズの弟、聖龍隊とも面識のあるウェルズだった。

「じゅ、ジュニア!」「どうちたの叔父ちゃん? 体びちょ濡れだよ」

 ジュニアから見たウェルズの体は全身ずぶ濡れになっていた。

「ジュニア! 大変だ、義姉さんが……あ、いや、お母さんが……!」

「ん? お母しゃんがどうかしたの?」

 肩から息をしながら話すウェルズに、ジュニアは顔を傾げながら訊ねる。

「お、お母さんが……お母さんが大変なんだ!!」「……え?」

 突然のウェルズの発言に対し、まだ幼いジュニアは理解できなかった。

 

 

 そしてジュニアはウェルズに手を引っ張られ、豪雨の中を走っていった。

 すると目の前には人だかりができており、皆体を泥まみれにしながら色々と作業していた。

 

 その時、ジュニアの耳に大人達の声が入ってきた。

「そっちはどうだ!」「ダメだ、こっちには居ない」

「おーーい、手を貸してくれ! こっちに一人埋まってる!」

「誰かこっちにも手を貸してくれ! 二人、死体が出てきた……!」

「あなた……あなたーー!!」

「頼む、頼むから目を開けておくれよ……!」

 時には必死に、時には嘆きながら、時には涙を流しながら声を上げる人々の声がジュニアの耳に入って来る。

 

 そして手を引っ張られジュニアが着いた場所には、大量の土砂が山の様に溢れていた。

「そっちの被害は?」

「民家が何件が埋まってしまってます。まだ中に人が居る模様で……」

 目の前で神妙な顔立ちで語り合う大人達をジュニアが直視していると、大量の土砂の方から二人の男性が人を一人、布を被せた状態で担架で運んできた。

「……すいません。ウェルズさんですよね?」「は、はい……」

 二人の内の一人がウェルズに話しかけてきた。

「すいません、もう、既に…」「!!」

 男性の発言に、ウエルズは目を見開いて驚いた。

 そして運ばれてきた人の被さっている布をそっとめくった。

「……ね、義姉さん」

 この時、幼いジュニアからの視線で確認できたのは蒼ざめていくウェルズの表情だけだった。

 

 その時、豪雨の中から一人の人物が駆けつけてきた。

「ウェルズ! ジュニア!」「あ、兄貴!」「……」

 ジュニアの後方から駆け付けたのはウェルズの双子の兄でジュニアの実父、ウッズだった。

「あ、兄貴……ね、義姉さんが……」

 悲愴な顔つきでウッズに告げるウェルズ。

 そしてウェルズに導かれてウッズも運ばれてきた人に被さる布をめくり覗き見た。

「……あ、ああ……あ、アン……」

 ウッズはそのまま目に涙を浮かべ、膝から崩れ落ちてしまった。

 地べたに突然座り込む父を見てジュニアは何が何だか理解できず、父のウッズに話しかけた。

「……ね、ねぇ。お、お父しゃん? どうちたの……お母しゃんは、どうしたの?」

「じゅ、ジュニア……!」

 降り注ぐ豪雨に匹敵するほどの涙を目から溢れさせながらウッズは咄嗟に幼いジュニアを抱きしめた。

「お、お父しゃん?」

 突然抱き付かれ驚くジュニア。そのままウッズは数十秒ほどジュニアの体を力強く抱きしめた。

 

 父のウッズが自分から離れ、屋根付きのテントの様な所にジュニアは座ってた。

 ジュニアの前には、父や叔父が覗いていた布に包まれた人が床に寝かせられていた。

 それとは別に、周りには同じように布に包まれた人がいっぱい寝かせられていた。

 ジュニアは徐に父と叔父が覗いていたモノに歩み寄り、布をめくろうとした、その時。

「ジュニア!」「!」

 突然ジュニアを怒鳴ったのは、叔父のウェルズ。

「お、叔父しゃん……!?」

 ジュニアは何故、自分が怒鳴られてしまったのか理解できず恐る恐る叔父の方に顔を向けた。

 するとウェルズは興奮しながらも何処か悲しい雰囲気を感じさせる表情でジュニアを見つめた。

 そして突然ジュニアの両肩を掴み、ジュニアの目をジッと見つめた。

「……」「……うっ、ううぅ…」

 思わず無言で叔父と向き合っていると叔父のウェルズはジュニアの顔を見ながら突然泣きだした。

「お叔父しゃん……」

 そしてウェルズはジュニアを抱き寄せ、彼の耳元で囁くように言い放った。

「見ちゃいけない……! お前は見ちゃいけないよ、ジュニア……!!」

 涙を流しながら自分に言い聞かせるウェルズの言葉に、ジュニアは重く悲しい空気を感じた。

 

 

 そして後日。

 まだ空がほんのり灰色の薄暗い曇り空の日。

 この日大人達は村はずれの地面に穴を掘り、そして次々に布に包まれた人の様なものが大人達の手によって穴に入れられ、その上から土を被せられていった。

 ウッズやウェルズが見守る中、一つの布に包まれたものが穴に入れられようとした。

 左右に三人ずつ、計六人でロープを使ってゆっくりと布に包まれたものを深い穴の中に下ろしていった。

 この時、ジュニアはまだ何が起こっているのか理解できず、父や叔父の隣で包まれたものが穴に入れられていくのを見ていた。

 そしてジュニアは気付いた。自分や父、そして叔父の側にも母の姿が無かった事に。

 この時ジュニアは完全に自分の周りで何が起こっているのか気付いた。

 そして父や叔父、自分の目の前で穴に入れられていく布に被せられたものが何なのか気付いた。

「うわーー~~ッ!!」

 全てを悟ったジュニアは大泣きしながら布を穴に下ろして行く大人達に駆け寄った。

「じ、ジュニア!」「あぁ……!」

 突如声を上げて大泣きしながら走り出すジュニアを見て動揺するウェルズとウッズ。

 そしてジュニアは布を下ろして行く大人達に駆け寄り、作業している男性の体を叩きながら叫んだ。

 

「やめでぇぇ! お母しゃんを、お母しゃんを埋めないで! お母しゃんを埋めないでよ~~……!!」

 

 号泣し、泣き叫びながら作業する大人の体を殴るジュニア。

 しかし叩かれている男は何もしようとはしない

 いや、敢えて何もしなかったのかもしれない。

 ジュニアの心情を、悲しみを悟って。

 

「止めなさい、ジュニア!」「ジュニア……!」

 男性を殴り続けるジュニアを、ウッズとウェルズが駆けつけ取り押さえた。

「ジュニア……」

 目に涙を浮かべてジュニアに話しかけようとするウッズ。

「お母しゃんが、お母しゃんが埋められぢゃうよ……!」

 涙を流し、ぼやける視界の中、ジュニアは必死に父や叔父に訴える。

「ジュニア……」「……ぐッ」

 ジュニアの顔を見つめながらウッズは涙を流し、ウェルズはジュニアを直視できず泣きながら顔を背けた。

 そして穴は埋められ、土が盛り上がっている所に十字架型の木製の墓標が立てられた。

 大人達は一人一人、十字架の前に一輪の花を順番に供えていった。

 そしてジュニアの番になると、ジュニアは父と一緒に作った花の輪を十字架に掛けた。

「……お母しゃん」

 そっと呟くと同時に、ジュニアの目からは再び涙が溢れてきた。

 

 この時、周りの大人達がジュニアに聞こえない様に会話し合ってた。

 しかしジュニアの耳にはしっかりと聞こえてきた。大人達の会話が。

 

「……可哀そうだな、ジュニア君」「まだ4才なのにね」

「まさか、村一番の美人だったジュニア君のお母さんがねえ……」

「そ、それにしても、何で土砂崩れが起こってしまったんだ?」

「人間だよ。アイツ等が無意味に森を伐採していったから、山の傾斜が緩くなって簡単に土砂崩れが起こりやすくなってしまったんだ」

「チクショウ……! 人間め、俺達の住処を奪うだけでなく、平穏な生活そのものまで奪う積りか……!!」

「木が、森が、そしてワシ等の生活が、全部壊されてしまう……!」

「今回の土砂崩れで死んだ連中は、結局、人間に殺されたようなもんじゃないか……!」

 

 この時、ジュニアの脳裏に浮かんできた、彼の真意は。

 

(……人間が、人間がお母しゃんを奪ったの?)

(人間が、森を、みんなを、そして、お母しゃんを……)

(人間が、お母しゃんを……コワシタ……)

 

 

 

 

[苦悩を受け止める]

 

『………………』

「……じ、ジュニア。お、お前…」

 ジュニアの心を、彼の回想を垣間見た聖龍隊に変身怪獣。

 彼の驚愕の過去を知り、聖龍隊は愕然としてしまう。

 そんな聖龍隊の中には思わず両手で口を押さえ悲観し中には悲痛な面立ちで涙を流す者の姿までもいた。

 

「じゅ、ジュニア……」

 事実を知り、思わずジュニアことキッドを押さえ込んでいた変身怪獣は顔を蒼褪めさせキッドの体を放し、ふらりと数歩後退した。

 そしてキッドは顔を下に向かせ、肩を震わせていた。

「……じ、ジュニア」

 恐る恐るキッドに話しかける変身怪獣。その時。

「…………ッ!」

 突然キッドは血走った眼つきで変身怪獣を睨み付けた。

「!」

 キッドの鋭い睨みに変身怪獣は一瞬怯んでしまう。

「うわあぁ!」

 突如声を上げながら、キッドは所持している鞭を変身怪獣の首に巻き付けた。

「ウグッ」

 突然首に鞭を巻き付けられ驚く変身怪獣。

 そのままキッドは鞭を引っ張り、そして自身も回転しながら変身怪獣を振り回した。

「へ、変身怪獣!」

 首に鞭を巻き付けられ振り回される変身怪獣を見てタキシード仮面が声を掛けるも。

「……うおりゃあああ!!」

 キッドは変身怪獣を振り回しながら、変身怪獣をタキシード仮面目掛けて投げ飛ばした。

「へ、変身怪獣……ぐおぅっ」

 振り回され、投げ飛ばされた変身怪獣はタキシード仮面に腹に直撃した。

「ああ!」「た、タキシード仮面!」

 変身怪獣と衝突し地面に倒れ込むタキシードに涙目で歩み寄るセーラームーンとマーズ。

「うわああああぁぁ!!」

 キッドは半ば狂乱した状態で鞭を地面に叩き付けた。

 すると地面からは無数の植物が、しかも槍の様に硬く鋭い植物の茎が無数に辺りから生えてきた。

「うわっっ」「きゃああ!」

 足元から生えてきた槍状の植物は星夜やナースエンジェル。

 そして他の聖龍隊の面々の体を確実に傷付けていった。

「じゅ、ジュニア君止めて!」

 ミラーガールがキッドに声を掛けるものの、キッドは完全に興奮状態で意味も無く地面に向かって鞭を振り続けていった。

「だ、誰か! 誰かキッドを、ジュニアを止めてくれ!」

 デューイが周りの皆に声を掛けるが、ほとんど戦意が無い、蒼褪めた表情を浮かべていた。

「ど、どうしたんだよみんな!」

 デューイが皆に訊ねてみると、まずさくらが悲痛な面立ちで答えた。

「だ、だって……じ、ジュニア君の、お母さんは……」

 続いてマーズも、同じ悲痛な表情で。

「そ、そうよ。ジュニア君は、ジュニア君のお母さんは……」

 更にハニー姉妹が二人続けて話した。

「そうよ……ジュニア君のお母さんは、もう」

「ま、まさか、ジュニア君のお母さんが、ウッズさんの奥さんが、家族が……!」

 皆、キッドことジュニアの過去を知り悲観した。

 

 人間の森林伐採が原因で起こった土砂災害。

 それで母親を失ったジュニアの苦痛を、悲痛な思いを聖龍隊は皆感じていた。

 特に両親を幼少の頃失ったジュピター。同じく幼少の頃に母を病で亡くしているさくら。そして血の繋がりは無いものの、目の前で父を失ったハニー姉妹にとってジュニアの心情は身に沁みるほど共感できた。

 

「や、止めるんだジュニア!」

 地面から無数の槍状の植物が出現していく中、青児は咄嗟にキッドに駆け寄ろうとした。

 しかしキッドは青児を睨み付けると、青児に向かって鞭を振った。

「ぐっ…!」

 鞭は青児の横腹に入ってしまう。

「せ、青児さん…!」

 腹を押さえながら倒れる青児を見て声を出すハニー。

 もはや誰もキッドの攻撃を、暴走を止められず、ただ必死に攻撃を避け、耐えるしかない面々。

 

 そんな、半ば狂乱状態のキッドを見て、ミラーガールが聖龍使いに問い掛ける。

「ね、ねぇ。聖龍使い」

「な、なんじゃ?」

「キッド、あ、いいえ。ジュニア君の……あの子の目を見て。凄く、凄く……辛い目をしているわ」

「つ、辛い目?」

 ミラーガールの言葉に思わず驚く聖龍使い。

 彼女は涙目になりながらも更に聖龍使いに訴える。

「あの子、ジュニア君は私達人間を恨む気持ちよりも、母親を失った悲しみに酷く苦しんでいるのよ。ただ、その苦しみを、悲しみをどうすれば打ち消す事ができるのか、苦しんでしまっているのよ……」

 ミラーガールの発言を黙って聞き入れる聖龍使い。そして彼女は更に続けて述べた。

「あの子は……あの子は苦しいのよ。本当は、誰かに助けてもらいたいのよ……!!」

「!!」

 涙を流しながら語るミラーガールの瞳を見て、聖龍使いは体に衝撃が走った。

 

 そして聖龍使いはキッドの方を見た。

 聖龍使いがキッドと目が合った瞬間、彼は周りの誰もが想像しえなかった事をやってのけた。

「……武装解除」

 聖龍使いが鬼の面を左手で押さえながら唱えると鎧は消え去り普段の小田原修司の姿に戻った。

「な、なに!?」「せ、聖龍使い?」

 それを見たウラヌスとネプチューンが声を上げる。

「!」

 キッドは自分の目の前で変身を解除した修司を見て驚き、鞭を叩き付ける動作を止めた。

 すると地面から生える槍状の植物の出現は止み、辺りは静寂に包まれた。

 

 そして修司はゆっくりとキッドに歩み寄っていく。

「修司さん……!」「あ、危ないわ……」

 歩み寄っていく修司を制止しようと声を掛ける小狼と苺鈴。

 

 そして修司はキッドの顔を見つめながら言い放った。

「……どうしたジュニア。いや、今はキッドだったな。ジュピターキッド」

「……」

 通常の姿で自分の前に立つ修司を見て、キッドは少しばかり動揺していた。

 

 そんなキッドに修司は更に続けて言い放った。

「どうしたんだ? 今お前の目の前に居るのは、お前の母親を死なせてしまった人間だぞ。何もしないのか」

 修司は険しい顔立ちでキッドを睨みつけながら言った。

「し、修司くん!」「な、何を言い始めるのよ!」

 突然の修司の発言に驚くマーキュリーとジュピター。

 

 そんな中修司は更にキッドに、今度は強い口調で言い放った。

「どうした! お前の苦しみ、悲しみはそれぐらいかよ!! 大好きな母親を失った辛さは経ったこれっぽちなのか!!!」

 この修司の発言に、キッドは狂乱した。

「うわあああああぁぁぁ!!!」

 怒りに駆られたキッドは修司に向かって鞭を振った。

「し、修司!」

 思わず声を上げるミラーガール。

 

 この時修司は腰を踏ん張り全身に力を入れて、更に眼球が傷付かない様に目蓋を力いっぱいに閉じた。

 キッドは縦横無尽に鞭を振り回し、修司の体に鞭を叩き付けていった。

 修司の着ていた服は裂け、体や顔には無数の傷が付いた。

 そして修司の上半身は、彼自身の血で真赤に染まってしまう。

 

「……あ、ああぁ……」

 傷だらけの血塗れになった修司を見て、ミラーガールは顔を蒼褪め驚愕した。

 

「はぁ、はぁ……」

 キッドは息を切らし、修司の体を傷だらけにしたのを確認して攻撃を止めた。

 修司はそっと目を開いて、傷だらけの顔でキッドを睨みつけながら言い放つ。

「……もう終わりか?」「……え」

 修司の発言に動揺してしまうキッド。更に修司はキッドを見下す様に見つめながら言い放った。

「もう終わりなのか? お前の苦痛って、たったこれだけなんだな」

 この発言にキッドは再び怒った。

「ぐっ、ぐおおおぉぉ!」

 キッドは再度、修司に向けて鞭を振った。

「修司!!」

 悲痛な表情で叫ぶミラーガール。

 

 だが修司はキッドの振り放った鞭を左手首で受け止め己の左腕にそのまま鞭を巻き付けた。

「ぐっ……!」

 鞭を腕に巻き取られた為、鞭を振り回す事ができなくなったキッドは動揺した。彼は必死に何とかしようと力を込めて鞭を引っ張るも、修司は微動もせず、彼の左手首に鞭のイバラが喰い込んだ為に其処から血が滲み出て修司の左腕を一筋の血が流れていった。

 そんな修司の姿を見て言葉を失くす面々。

 

 そして修司は力いっぱい鞭を引っ張り返した。

「うわっ」

 キッドはそのまま修司に引っ張られ、宙を舞ながら修司に引き寄せられる。

「……ふんっ」「ぐっ……!」

 修司はキッドがスグ目の前までやって来るのを見計らい荒い鼻息を出しながらキッドの頭に頭突きを繰り出した。

「し、修司!?」「ひっ、す、凄い音……」

 修司の額がキッドの額とぶつかった瞬間、辺りに物凄い轟音が響き、それを聞いたミラーガールとヴィーナスは思わず声を出した。

 更に変身怪獣は内心驚いた。

(あ~あ……何をやっちまうんだ修司は……。アイツの頭突きって瓦10枚を一発で簡単に割っちまう威力なのによ……)

 

 そしてキッドは頭を押さえながら地面に尻を付けてしまう。

 そんなキッドを睨みながら、修司は辺りに響き渡る程の大声でキッドに向かって叫んだ。

「お前は俺の弟だろうがぁ! 弟だったら兄貴と正面からぶつかって来い! 苦しいんだったら、悲しいんだったら、その思い、全部俺にぶつけてみろよ!!」

「……」

 無言で修司の怒声に聞き入るキッド。修司は更に続けて叫ぶ。

「何のために俺やみんなが居るんだ! 一緒に苦しみや悲しみを共感する為だろうがぁ!! 仲間なら一人だけで苦痛を背負い込むんじゃねえ!! 何のための聖龍隊なんだぁぁ!!」

『!!』「!!」

 修司のこの発言にキッドだけでなく、その場の皆が驚きそして感極まった。

「……う、うう」

 キッドは思わず口を塞ぎ、涙を堪えようとした。

 そんなキッドに修司は険しい顔付きで言った。

「ジュニア! お前は俺の弟だろう! だったら強くなれよ! 俺と一緒に最強になれ! 弱い自分を打ち負かす程の最強の男になりやがれェ!!!」

 修司の励ましを聞き、キッドは装着していたアイマスクを外し、涙をぬぐって言い返した。

「う、うん……うん……」

 

 マスクを外したジュニアの表情は、いつもの穏やかな表情に戻っていた。

 

 

 

[駆け付けた家族]

 

「……ジュニア、ジュニア~~…!」

 遠くの方からジュニアを呼ぶ声が皆の耳に入った。

 

「ん? 今の声って……」「あっ、あれ」

 変身怪獣が呟くとナースエンジェルが指を指した。

 その先には、ウェルズの運転するシープで此方に向かってくるウッズとワイルドたち三人の姿があった。

「う、ウッズさん。ウェルズさんにワイルドさんまで!」

 近づいてくる三人を見てミスティーハニーは笑顔で喋る。

 

 そしてジープが止まった途端、ウッズは車から降り自力で駆け寄ってきた。

「ジュニアーー! ジュニアジュニアジュニアジュニア……ジュニアーー!!」

 慌てふためきながらウッズは息子の名前を何度も言い続けながら全速力で走る。

 だが途中で扱けてしまい凄い勢いのまま回転してしまい修司のすぐ後ろまで転がっていった。

「う、ウッズ……」

 回転しながら駆け付けるウッズを見て修司は呆然としてしまう。

「じゅ、ジュニア……」

 ウッズは全身泥まみれになりながらもジュニアに駆け寄った。

「お…お父さん……」

 ジュニアは涙目で自分に寄って来る父を見つめていた。

「…………!」

 ウッズはジュニアの顔をジッと見つめると、突然目を見開いてジュニアの左頬を叩いた。

『!!』

 これを見ていた面々は驚いた。

 いつも穏やかで大人しく、怒っている所なんて見せた事が無いウッズが目を見開いて息子のジュニアを引っ叩くなんて初見で有った。

「お、お父さん……」

 父に頬を叩かれ涙目で驚くジュニアを、ウッズは優しく抱きよせて呟いた。

「……まったく。心配掛けさせて……」

 泣きながら優しく息子を抱擁するウッズ。

 そして父に抱擁され呆然としながらも父の温もりを感じたジュニアは静かにそして穏やかに、目から一筋の涙を流した。

「……ジュニア」

 全身傷だらけになりながらも、修司は抱き合う親子を見て内心大いに安堵していた。

 修司以外の聖龍隊の面々も、涙を流しながら抱きあう親子を見て、深く感極まった。

 その時、ジュニアを抱きしめていたウッズが、ジュニアの胸元にある違和感を感じた。

「……ん? じゅ、ジュニア。今、胸元が何か蠢いていたような」

「ん? ああ、ようやく傷が治ったみたいだね」

 そう言うとジュニアは自分の胸元から球状に成形されたツタの塊を取り出した。

 球は淡い緑の光を放っていたが、それが収まっていくとツタが消え去っていき、球の中から小鳥の姿が現れた。

「じゅ、ジュニア君。それ……」

 ジュニアに歩み寄って来たミラーガールが訊ねると、ジュニアは静かに答える。

「ああ、森の伐採工事で傷付いていた小鳥だよ。瀕死の状態だったけど治癒効果のあるツタで球を作って、その中で回復させていたんだ」

 そしてジュニアは完治した小鳥を左手の甲に乗せて言った。

「さぁ、森へお帰り」

 そう言いながらジュニアは左手を軽く動かし、鳥を森の方へと飛ばさせた。

 小鳥は一直線に森の方へと飛んで行き、姿を消して行った。

 

 そんな優しいジュニアことキッドの一面を見て、聖龍隊は穏やかな気分を感じていた。

 と其処へウェルズとワイルドも、ウッズとジュニアに歩み寄って来た。

「ジュニア」「……お、叔父さん」

「ジュニアよ」「お、お祖父ちゃん……」

 二人の顔を見て、ジュニアは複雑な心境だった。

 しかし、そんなジュニアに叔父は笑顔で言い放った。

「……いやぁ~、まさか甥っ子が此処まで強いとは想像できなかったなぁ」

「え?」

 叔父の発言に驚くジュニア。其処に続けて祖父のワイルドも言い放つ。

「確かにのぉ。いやしかし、本当に一族の中から大自然の力を使える子供が現れるとは。こりゃめでたいのぉ」

 二人の言動に思わず呆然としてしまうジュニア。

 

 そんな彼は暗い顔立ちで言った。

「だ、だけど……ぼ、僕は、みんなを……」

 不安な表情を浮かべるジュニアに歩み寄って来た隊士達が言った。

「……ふ、大丈夫だよ、ジュニア」「せ、青児さん……」

「もう気にしなくても大丈夫よ、ジュニア君」「ま、マーズ……」

「みんな、ジュニア君が辛かった、悲しかった事は分かっているわ」

「その辛い気持ちを、悲しかった想いをどうにかしたかったんだよね」

「な、ナースエンジェル。さくら、さん……」

「もう良いのよ。これからまた、辛い気持ちになってしまったら今度は私達が、真正面から受け止めてあげるわ」

「自分の気持ちを、辛い思いは、これから私達も一緒に受け止めてあげるから……だから、もう大丈夫よ」

「き、キューティーハニー……み、ミスティーも……!」

「そうだよジュニア君。これから君は一人じゃ無いさ。私達みんなが、聖龍隊が付いている。もう後ばかり振り向く事は無いよ」

「た、タキシード仮面……!!」

「そうさ。言っちゃなんだけど、人はその気になれば己の行為を、過ちを改められる。……ぼ、僕が言うのもアレだけどさ」

「ふふっ。確かに、アナタが言うと余計説得力があるわよね」

「う、ウラヌス……! ネプチューン……!」

 ジュニアは嬉しかった。自分に依って酷く痛めつけられ、更に暴言を吐いてしまった者達までもが笑顔で自分に優しく語りかけ全てを受け入れて許してくれた。

 

 ジュニアの目からは悲しみの感情では無い、それ以外の感情で溢れる熱い涙が延々と流れ出てきた。

 

 この時、ミラーガールは傷だらけになった修司の傍らに歩み寄っていた。

 そして徐に修司に話し掛ける。

「ね、ねえ修司、大丈夫? 体中傷だらけ……」

 ミラーガールは顔も体も傷だらけになり、更に傷口から出た血によって体が真っ赤になった修司を心配そうに見つめた。

 すると修司は横目でミラーガールを見つめながら言った。

「大丈夫だ、これぐらい……」「で、でも……何で、あんな事をした、の?」

 修司の行動を不思議がったミラーガールは恐る恐る修司に訊ねた。

 すると修司は険しい顔付きのまま、無表情で断言した。

「聖龍隊の総長たる者、仲間の悲痛も、苦痛も、全てを全身全霊で受け止め、受け入れなければいけないからな」

 

 悠然と、そして威風堂々と言い放つ修司の言動を見てミラーガールは改めて、修司の心の広さを知った。

 

 

 そして皆に優しく連れられながらキッドことジュニアは自宅に戻っていったという。

 修司もメインフロアにて、アッコやりりかに顔や体に付いた傷の処置をしてもらった。

 

 それから、数日後の事。

 

 

 

 

[新たなる一員]

 

 

 メインフロアに鳴り響くクラッカーの音。

 そして天井に飾られている布には大きく【参入おめでとう! ジュピターキッド】の文字が書かれていた。

 

「よっ、ジュニア。お前もこれで聖龍隊の戦闘員だ」

「おめでとう、ジュニアさん」

 変身怪獣とちびうさに言われ、少し顔を赤くしながら後頭部に手を置くジュニア。

 今日はジュニアを、ジュピターキッドを歓迎する催しが開かれていた。

「しっかし、まさかジュニアも聖龍隊の、しかも現場で活動できる奴になるとはね」

「でも充分強いじゃないか。お前やセーラー戦士を軽く一ひねりできたんだしよ」

 調子口調で笑いながら衛に言い寄る青児。

「ジューーニア君。やったねーー!」

「うさぎったら、はしゃぎ過ぎよ」「ふふ、でも気持ちは分かるわ」

 大喜びするうさぎを見て言うレイと亜美。

「……苦しみや悲しみ。そして過ちも、全て受け入れて仲間に迎える……それが聖龍隊なのかもしれないね」

「そうね。それは、私達にも言える事よね」

 ジュニアを見ながら、穏やかに語り合うはるかとみちる。

「それは僕達だって同じだよ。君等と同様、僕等も最初は敵側に回っていた存在だったんだもんね」

「私だって……いくら洗脳されていたからと言っても、優しいみんなを傷付けて来てばっかりだったもの」

 はるかとみちるに対して語りかけるデューイと聖羅。二人も当初は敵側の存在だった。

「悲しい想いも、辛い気持ちも全てを誰かと分かち合っていけば、少しは肩の荷が下りるって事だな」

「うん……悲しみだけじゃ無い。喜びだって、みんなと分かち合って行けば、きっと明るい行く末が来る筈だよ」

 あの時、修司が言った言葉を思い出しながら語り合う、小狼とさくら。

「ジュニア君、おめでとう。良かったわね、みんな許してくれて」

「は、はい。ありがとう、アッコさん」

 間近でアッコに言われ、緊張しながらも答えるジュニア。

 

 そんな時、修司が皆に聞こえる様に言い放った。

「おーーい。みんな、聞いて欲しい事が有る」

「何だ修司?」青児が訊くと、修司は真顔で言った。

「実はな俺と変身怪獣、総長と副長で話し合った結果ジュニアには【参謀】に成ってもらおうかと思う!」

『さ、参謀!?』

 みんなが驚いていると、今度は変身怪獣がみんなに言い放った。

「実はな、ジュニアって親父に似て結構知数が高いんだよ。無論、亜美やウッズには負けるけど、俺や修司とはみんな以上に付き合いが長いし信頼の意味では誰よりも有るって事でジュニアに採用されるから」

「で、でもそれって……ど、どーーゆーー事?」

 声を上げたのは良い物を、うさぎは参謀になる事の意味を余り理解しきれなかった。

 

 そんなうさぎを見て、修司は言った。

「まぁ。参謀って言うのは組織のブレーン、頭脳みたいなものだよ。お前達で言う亜美やみちるを指している所だ。一応メインフロアで俺達をバックアップしてくれるウッズもブレーンに匹敵するが、聖龍隊の現場での活動では参謀のジュニアいやジュピターキッドが参謀として活躍していく事となる。……簡単に言えば、聖龍隊では3番目に偉い存在って事だな」

 そんな修司の発言に、頭の後ろを掻きながらジュニアが言う。

「で、でも……僕なんかが良いのかな……」

 困惑するジュニアを見て、ワイルドがジュニアに言い寄った。

「何を言うとるんじゃジュニア! お前もジュピター家の一員なら立派に務めてみんかい! 折角みんながお前を受け入れてくれて更には修司さんがお前を信頼しているからこそ参謀などと言う重役にしてくれたんじゃぞ! その期待に応えてやらんかい!」

 

 それでも困惑するジュニアにアッコが話し掛ける。

「ジュニア君。私だって、最初は聖龍隊の一員として、ちゃんと務められるか不安だったわ。だけど、此処に居るみんなの協力も有って、どうにか今でも無事に居られるんだから、ジュニア君も一緒に頑張ろう」

「う、うん……」

 アッコに言われ、ジュニアは多少不安が残ったものの首を頷けた。

 そしてアッコに続き、修司も皆に言い放った。

「そうそう。一応、この三人も俺等と協力関係に入ってくれるようだぜ。なぁ、スター…あっ、いいや、今はスリーライツだったね。ニヒヒ……」

 修司は顔をニヤケさせながらスリーライツの方に言い放った。

「それにしても驚いたねぇ。まさか表じゃ男の三人組だった連中が、本当は女で、しかも異星人だったとは」

 変身怪獣が呟くと複雑な面立ちでメイカーこと大気光(たいき こう)が修司に向かって言った。

「それにしても……まさか修司君が既に私達の事を調査して正体を知っていたとは、驚きですよ」

 続いてファイターこと星野光(せいや こう)が修司に言った。

「ああ。それでジュニア君ことジュピターキッドが俺の正体を知っていた訳だ」

 最後にヒーラーこと夜天光(やてん こう)が軽く笑いながら言った。

「そ、それにしても。まさか聖龍使いが町の市長の小田原修司だったなんて……驚き過ぎて、ちょっと小腹が痛いよ」

「……悪かったな。11のガキがジジ臭い言動をする英雄でよ」

 腕を組みながら、額にしわを寄せて夜天に言う修司。

 

 そんな修司を宥めながら変身怪獣は飲み物が注がれたコップを手に取り、高く持ち上げた。

「まぁまぁ。それよりもジュピターキッドとスラーライツも揃っている事だし、記念の乾杯でもしようぜ」

 それを聞き、修司も穏やかな真顔で言った。

「そうだな。ライツなんか表の仕事で忙しい毎日だし、三人のオフの日に合わせて開いたんだからな。とっとと乾杯してケーキに手を付けるか」

 そして皆、互いにグラスを軽く当てていき、笑顔で乾杯し合った。

 

 

 そうして皆がケーキや菓子類に夢中になっている時、衛が徐にジュニアに言い寄って来た。

「な、なぁ。ジュニア」「ん! ま、衛さん」

 ジュニアは自分が手酷く痛めつけてしまった衛が話しかけてきたので、少し動揺した。

「な、何でしょうか……」

 ジュニアが衛に訊ねると、衛は笑顔でジュニアに言った。

「ジュニア。俺たちはこれで完全に仲間だ。もう昔の事はとやかく言うのは止めようぜ。なぁ」

「……」

 衛の言葉に驚くジュニア。更に他のセーラー戦士達もジュニアに言い寄って来た。

「そうだよジュニア君。もう全部終わった事だし、いつまでもクヨクヨしちゃいけないよ」

「う、うさぎさん……」

「そうよ。もう過ぎた事は忘れましょう」「あ、亜美さん」

「まぁ、正直、僕も人の事は言えた義理じゃないけど、過ちを許す事も大事な事だ」

「ええ。大事なのは、これから先をどう生きていけばいいのか。其処が肝心よ」

「はるかさん、みちるさん」

「一緒に頑張っていこうよ。ジュニアさん」

「これからも宜しくお願いします」

「ち、ちびうさちゃん、ほたるちゃん」

 みんなに笑顔で告げられ、ジュニアもみんなと同様の穏やかな笑みを浮かべた。

 

「……はぁ」

 突然ウッズが思い詰めたような表情で溜息をついた。

「ん? どうした兄貴」

 ウェルズが訊ねるとウッズは神妙な面立ちで答えた。

「い、いえ……皆さんがジュニアを許してくれたのは凄く嬉しいです。し、しかし……この先、英雄としての活動で危険な目に遭っていかなければいけないと思うと、少し複雑で……」

 不安に満ちた表情で語るウッズに、修司が告げた。

「大丈夫だよウッズ。ジュニアはもちろん、此処に居るみんなには命を大事にする様に言うからよ。そう、俺と違ってな……」

 ウッズは悲愴な眼差しで言い放つ修司に何も言い返せなかった。

 

 そう、ウッズは修司の心情を、三次元界での悲愴や苦痛に満ちた修司の過去を唯一知っている人物だったからだ。

 

 

 

「……そう言えば、今日はみんなに一つ、贈り物が有るんだ」

 突然ジュニアが皆に言った。

「え?」「お、贈り物?」

 美奈子と苺鈴が思わず返事するとジュニアは腰に付けていた大地の鞭を手に取り、それを床に叩き付けた。

 するとメインフロアの岩壁に、下方から蔦状の植物が伸びてきた。

「な、なに?」「ほえぇ!」

 驚いてしまうみちるとさくら。

 すると伸びてきた蔦から青い艶やかな花が開花し何とも言えない心地よい香りが辺りに漂った。

「うわぁ……」「き、きれい……」

 艶やかな青い花に見惚れてしまう知世とりりか。

「うん、何とも言えない良い香りだ」「そうねぇ」

 花から漂ってくる気持ちが穏やかになっていきそうな程の心地よい香りに酔い痴れるデューイとまこと。

「気に入ってくれたかな。僕からのささやかな贈り物は」

 ジュニアが皆に言うと、アッコが笑顔で返答した。

「ええ! とっても素敵な贈り物ね。ありがとう、ジュニア君」

 満面の笑顔で礼を言うアッコに、ジュニアも笑顔でアッコに自分の笑みを見せつけた。

 

 

「……ところでジュニア。お前、たった一人で14人ものセーラー戦士を叩きのめしたけど、アレはホントに凄いなぁ」

 唐突に変身怪獣がジュニアに言う。 

「ま、まぁ。あれはジュニア君が地の理を持っていたからこそ私達にとっては少し不利だっただけよ」

 動揺しながらレイが苦し紛れに述べる。

「た、確かに。地の理だけには相性的にも苦手ですもの」

 せつなも複雑な面持ちで呟いた。

 

「ふぅ~ん……おいジュニア。お前から見て、セーラー戦士達と戦ってみてどうだったの?」

 変身怪獣が突拍子にもジュニアに訊ねる。するとジュニアは困惑しながら言った。

「え、え……そ、そうだね……」

 発言を躊躇うジュニアに変身怪獣が拍車を掛けた。

「言いたい事が有るなら言っちまえよ。自分の気持ちを無理やり抑えていたら、それこそまた苦痛になっちまうだけだぜ。どんな事も受け入れてやるのが聖龍隊、そしてお前はその聖龍隊の参謀なんだから言いたい事は包み隠さず全部言っちまえよ」

「う、うん、分かった。それなら言うけど……」「ん?」

 ジュニアはしばし黙り込むと、唐突に口を開いて発言した。

 

 

 

「セーラー戦士って、案外弱いね。プッ」

 ジュニアは真顔のドヤ顔で言い放ち、最後には少し吹いてしまった。

 これを聞いた内部系・外部系そしてライツの計14人のセーラー戦士達は、己の中で何かが壊れた。

 そしてこの時、まことは持っていたガラス製のコップを握り砕いた。

『ひぃぃぃぃぃぃぃ!』

 他の面々は、この時のセーラー戦士達の異様な顔立ちに顔面蒼白となって驚愕した。

「や、止めろーーーー!! 戦闘が! 戦闘が始まるぞーー!!」

 ウェルズが恐怖で泣き叫ぶ。

 更に続いて今まで見た事のない表情をして変身していくセーラー戦士達に向かって他の隊士達が泣き叫んだ。

「止めてくれーー! 修羅場じゃねえかよーー!!」

 異様な表情で戦闘態勢を取るセーラー戦士達を見て、星夜が泣き叫ぶ。

「や、止めろ衛! タキシード仮面になって攻撃しようとするんじゃねえ!!」

 青児はキレて変身した衛に向かって制止しようと叫んだ。

「ひ、ひぃっ。あ、亜美さん、いやマーキュリー……! そ、そんな顔をする女性じゃ無かったですよね!?」

 異様な表情になって変身したマーキュリーを見てソウシが泣き叫ぶ。

「す、スターライツ! お、お願いだから静まって……!」

 りりかは異様な怒り顔になったスターライツを止めようと宥める。

「ち、ちびうさちゃん! ほたるちゃん! お、女の子がそんな顔したらダメだよぅ……」

 涙目で怯えながら、さくらはちびうさとほたるを何とか宥めようと試みる。

 

「あれ、何だい? ヤルの? ……だったら僕も容赦しないよ……ニッ」

 異様な怒りのオーラを放ちながら自分を睨みつけるセーラー戦士達に対しジュニアはドヤ顔で笑いながら言い捨てた。

「ジュニアーー! お父さん、お前をそんな子に育てた覚えはありましぇんよーー!!」

 ヤル気満々のジュニアを見て思わず泣き叫びながら悲観する父のウッズ。

「おーーい、お前達。ヤルならせめてコンピューターとかの精密機械だけは壊すんじゃねえぞ。高いんだからなソレ」

「って止めろよゴラァッ」「ブッッ」

 止める様子も見せないで語る修司に、アッコは彼の脳天にかかと落としを喰らわした。

 

 

 と、そんな状況の最中。

 突如メインフロアにアラーム音が鳴り響いき、アナウンスが聞こえてきた。

 

「緊急事態 緊急事態 アニメタウン中央区、赤塚地区に置いて謎の生命体が多数出現 繰り返す……」

「おっ、事件か。良し、スターライツもジュピターキッドも迎え入れた事だし……お~い、お前等。もう喧嘩はそれ位にして行こうぜ」

 睨み合う双方に向かって言い放つ変身怪獣。

 彼は更に修司にも言った。

「おい修司。お前も頭押さえてないで早く行こうぜ。せっかく聖龍隊も強化できた事だしよ」

「あ、ああ……い、いてぇ」

 アッコから踵落としを喰らって頭を押さえ込む修司。

 

 

 そして次回。

 彼等は皆で現場に向かうが、其処で新たな存在と出会うのであった。

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