【聖龍伝説:第二章】英雄達の日々 作:セイントドラゴン・レジェンド
[大江戸港での苦想]
ミラーナイトとの闘いから数日後。
この日修司は大江戸港にてしんせん組と黒天狗党からの刺客であるニイハオ姉妹(シスターズ)が戦っているとの連絡を受け現場に向かった。
しかし、この時変身怪獣とジュニアは別件で側には居らずアッコも家の用事で遅れてくるとの事で、修司は単身で向かった。
現場に着いてみるとイサミ達とニイハオ姉妹が激突しているのが目に入った。
スグに修司は物陰で聖龍使いになり皆の前に飛び出した。
イサミ達はニイハオ姉妹の援軍に駆け付けたカラス天狗の集団とも激突。
聖龍使いは自分同様、格闘術に長けた長女ジャスミンと次女のタピオカと組み合った。
元々修司は格闘術は得意であったのだが聖龍使いになると身体能力が飛躍的に向上する為、次第にジャスミンとタピオカを押しつつ有った。
だがその時。三人が組み合っているのを物陰から見ていた三女のライチが自分の姉二人が聖龍使いに苦戦してるのを悟り少しでも姉の力になれば良いと、得意の鈴を用いた幻術を聖龍使いに使用して戦いを有利にしようと試みた。
だが、これが最悪の結果を招いてしまうのであった。
「……う、ううぅ……」
突然、聖龍使いが頭を抱え込みながら苦悶し始めた。
「え……な、何が起きたって言うの?」
「ちょ、ちょっとライチ! アナタ何したの!?」
ジャスミンが動揺する中、タピオカがライチを問い詰める。
「わ、私知らないわよっ。た、ただお姉ちゃん達が苦戦していたから、いつもの様に幻術使っただけで……」
何が起こっているのか理解できず、思わず涙目になりながら答えるライチ。
この時、聖龍使いが見ていた幻術。それは幻ではなく、昔の自分の記憶であった。
(やーーいやーい、バケモノ!)(こっち来んなよ、バケモノ)
(学校に来ないでくれる? アンタ、キモイんだからさ)
(醜い奴は学校に来んじゃねえよ)
(何なら死んでくんない? その方が人の為になるよ)
自分に浴びせられる罵声。中には笑いながら平然と罵って来る言葉もあった。
「……はぁ……ハァ……」
次第に聖龍使いの目は、まるで憎悪に駆られたかの如く血走っていく。
そして。
(こっち来んなって言ってるだろうがっ、バケモノ!)
(目の届くところに居るんじゃねえよ、キチガイ!)
罵声を浴びせながら自分に石ころを投げつけてくる学校の生徒。
幻とは言え、かつての自分が体験した記憶を見た聖龍使いは遂に自我を失ってしまう。
「うあぁーーーーーー!!!!」
突然天に向かって雄叫びを上げる聖龍使い。彼を見て三姉妹は驚いてしまい、そんな姉妹に聖龍使いは狂乱状態で突っ込んで行った。
「きゃああっ」「な、何なのよ!」「ええぇ!」
三姉妹は驚愕しながらも、ジャスミンは斬りかかって来る聖龍使いの刀をヌンチャクで防御しながら応戦した。
しかし聖龍使いは未だに狂乱状態で、まともな精神では無くなってた。彼が見ていた幻は、何と三姉妹がかつて自分を小馬鹿にし愚弄し罵って来た生徒達に見えてしまっていた。
「うわあああぁぁぁ!!!」
聖龍使いは更に刀を力ずくで振り回し、三姉妹を攻撃した。
「な、何? 何がどうなっている訳?」
ジャスミンは聖龍使いの状態を見て、困惑していた。
その時、ジャスミンが持っていたヌンチャクで聖龍使いの刀を受け止めようと構えたら、聖龍剣はヌンチャクの鎖の部分を切断してしまった。
「う、うそ……」
ヌンチャクが使えなくなり困惑するジャスミン。
「うおおぉ!」
すると聖龍使いは徐にジャスミンの首を左手で掴み、そのまま彼女を投げ回した。
「姉さん!」「お姉ちゃんっ」
「うわあっ!」
タピオカとライチが叫ぶ中、ジャスミンは投げ飛ばされ木箱の山に突っ込んだ。
「お、お姉ちゃん……」
ライチは涙目になって怯えてしまう。
「こ、コイツっ」
長女のジャスミンを投げ飛ばされ逆上した次女のタピオカ。彼女は単身、聖龍使いに攻撃を仕掛けたが聖龍使いに頭を強く握り掴まれてしまった。
「ぐああっ……」
異常なまでの握力で頭を掴まれたタピオカは、余りの激痛に苦悶に満ちた声を上げた。
「お、お姉ちゃん……」
ライチは恐怖で身を震わせていた。
「うああああ!!」
すると突然タピオカを掴んでいた聖龍使いは彼女を地面に引き摺りながら走り出した。
「ぐうぅっ……」
体を地面に引き摺られ、その痛みによって苦悶するタピオカ。更に聖龍使いは彼女を壁に叩き付け、更に彼女の顔面を壁に擦り付けながら壁伝いに移動し始めた。
「ぐぎゃああぁ……!」
顔面を壁に擦り付けられ悶絶するタピオカ。次第に彼女の顔から出血が始まり、壁一面彼女の血で真っ赤に染まっていった。
「お、お姉ちゃーーん!」
顔から大量の血を出している姉を見て、ライチは泣き叫んだ。
「うがああぁぁぁ!」
最後に聖龍使いはタピオカを掴んだままジャンプをし、彼女を地面に叩き付けた。タピオカは声を上げる間も無く地面に減り込み、そのまま気絶した。
「あ、ああぁ……」
ライチは恐怖で声も出せずに居た。
「……!」「ウッ…」
聖龍使いの血走った眼で睨まれ、ライチは凍りついた。
(ど、どうしよう……ハッ、そうだ。確か私の幻術で聖龍使いはオカシクなっちゃったんだ。だ、だったらまた幻術で元に戻せるかも……)
ライチは咄嗟に自分が幻術に用いている鈴を取り出し、再度聖龍使いに使用しようとした。
だが、ライチが鈴の紐を手に持った瞬間。聖龍使いはライチ目掛けて聖龍剣を斬り付けて来た。
「うわっ」
ライチは咄嗟に剣戟をかわしたが右腕が少しばかり斬られてしまい更には幻術で使う鈴を落としてしまった。
「し、しまった。鈴が……」
ライチが落としてしまった鈴に手を伸ばそうとした、その時。聖龍使いはライチに歩み寄り、その際彼女が落としてしまった鈴を踏み潰してしまった。
「そ、そんな……!」
幻術を使うのも解くのも鈴を使わなければいけないライチは、鈴を失ってしまい顔を蒼褪めさせながら困惑してしまう。
「うううぅ……」
低い唸り声を発しながら彼女に歩み寄る聖龍使い。
ライチは成す術が無く、地べたに座り込んでしまう。
その時。
「や、止めなさい。い、妹だけには……ライチだけには手を出さないで!」
「お、お姉ちゃん!」
先ほど聖龍使いに投げ飛ばされたジャスミンが聖龍使いに声を掛けた。聖龍使いは血走った眼でジャスミンを睨みつける。
「ら、ライチ! アナタは早く逃げて! せ、聖龍使いは私が取り押えて置くから」
「で、でも……」
姉の発言に言い返せないライチ。そんな妹に叱咤するかの如く、ジャスミンが強い口調で言い放つ。
「早く! お姉ちゃんの言う事が聞けないの!!」「うっ!」
姉に強く言われて、ライチは体を引きずる様にその場から立ち去ろうとした。
そんなライチに気付いた聖龍使いは逃げ出そうとする彼女を背後から斬り付けようと襲いかかる。
だが姉のジャスミンが間に入って聖龍使いの攻撃から妹ライチを護った。
「お、お姉ちゃん」「早く行きなさいっ」
姉に言われるがままにライチはその場を去った。そしてジャスミンは血走った聖龍使いの目を睨みがえしながら言った。
「さぁ。私と差しで勝負よ、聖龍使い…!」
二人はそのまま激しい取っ組み合いを繰り広げる。
[意外な手助け]
その頃、イサミ達新撰組はカラス天狗の集団と立ち向かっていた。
当初カラス天狗の多さに一時は苦戦していたが、戦いの途中イサミ達を助けてくれた男が現れた。
男は颯爽と、そして俊敏にカラス天狗達を倒して行った。
しかしイサミ達は驚いた。何故、この男が自分達を助けてくれたのか疑問で頭がいっぱいだったからだ。
「……あ、ありがとう。助けてくれて」
「いえいえ。これぐらい、造作もない事ですよ」
イサミ達を助けてくれたのは、以前イサミ達とも一戦繰り広げた事のある、あの豹の爪(パンサークロー)の幹部、プリンスゼラだった。
「で、でも何で、またアンタなんかが……」
「ぼ、僕達に加勢してくれたんですか?」
トシにソウシも助勢してくれたゼラの行動を疑問に思った。するとゼラは口元を笑わせながら三人に答える。
「ふっ、いやね。今回は君達に、そう聖龍隊に伝えて置きたい事も有ったから、そのついでにカラス達も倒してあげただけですよ」
「わ、私達に伝えたい事って……」
四人が向き合い、ゼラがイサミ達に伝え話そうとした、その時。
「た、助けて……助けて、誰か~!」
「え? 今の声……」「た、確か……」
イサミとソウシが声に気付き、声の方角に目を向けると其処にはライチが泣きながら駆け寄って来るのが目に入った。
「あ、アイツは」「ら、ライチちゃん?」
トシとイサミ、そしてソウシは泣きじゃくるライチに駆け寄った。
「ら、ライチちゃん、どうしたの?」
イサミがライチに訊ねてみると、彼女は涙を流しながらイサミ達に言った。
「うぐ……お、お姉ちゃんが、お姉ちゃん達が聖龍使いに……聖龍使いに、殺されちゃうよ……!」
「な、何ですって!?」
ライチの発言にイサミ達は驚愕した。
そしてライチに事の始まりから全ての詳細を聞きながら三人とゼラは聖龍使いの所に向かって行った。
その道中。
「お、遅れてゴメン! みんな大丈夫?」
ミラーガールが遅れて現場に到着。
「み、ミラーガール!」「た、大変なんだ。聖龍使いが……」
ミラーガールの顔を見たイサミとトシが彼女に語ろうとした。
「え、聖龍使いに何か……ん? な、何でゼラが此処に居る訳?」
ミラーガールはイサミ達と一緒に居るゼラに視線を向けた。するとゼラはミラーガールに笑いながら答えた。
「ふふ。ミラーガールよ、今はまず聖龍使いの所に向かいましょう。話はそれから致します」
「は、はぁ……」
そしてミラーガールも加わり、一行は聖龍使いの所に向かって行った。
ミラーガール、イサミ達、そしてゼラにライチは聖龍使いとジャスミンが闘いを繰り広げている場に足を運ぶ。
其処で彼等が見た光景は。
次女のタピオカが顔から出血し、更に地面に顔が減り込んでいる惨状。そして長女のジャスミンは顔中ボコボコに殴られ痣だらけになりながら聖龍使いに額を掴まれていた真っ最中だった。
「きゃああっ」
目の前の惨状に驚き悲鳴を上げるイサミ。
「せ、聖龍使い……」
ミラーガールも目の前で行われている現状に顔から血の気が引いていった。
「お、お姉ちゃん!」
ライチがジャスミンに向けて呼び掛けるも、彼女の声を聞き聖龍使いがライチ達の方を睨みつける。
その際、聖龍使いの血走った眼を見たイサミ達とミラーガールは背筋に悪寒を感じた。
「うっ……」
ゼラも聖龍使いの目を見た瞬間、思わず声を出して顔を蒼ざめさせた。以前、聖龍使いに半死半生の目に遭わされた時の恐怖が脳裏に刻まれていたからだ。
「うわああぁぁ!」
聖龍使いは掴んでいたジャスミンを投げ捨て、イサミ達に向かって行った。
「くっ」
イサミは前進し、聖龍使いの刀撃を龍の剣で防いだ。
その時。
「……や、止めろ。止めてくれっ」
突然聖龍使いが悲痛な眼差しでイサミを見つめながら言い放った。
「え」
その目を見たイサミは困惑してしまった。
更に聖龍使いは混乱状態で叫ぶ。
「言うな……この俺に、そんな事言うなァァ!!」
叫びながら聖龍使いは更に剣を振り回して暴れ始めた。
「こ、これは……!?」
ソウシが動揺していると、ライチが目に涙を浮かべて喋った。
「せ、聖龍使いは、どんな幻を見ているか解らないけど幻覚を見始めてからオカシクなっちゃったんだ……」
「な、何だって!」
ライチの発言にトシは驚いた。
「ら、ライチちゃん。聖龍使いを元に戻せる方法はない訳?」
ミラーガールがライチに訊ねてみたが、彼女は複雑な面立ちで答えた。
「そ、それが、幻術に使う鈴が壊れちゃったから、もう私の手には……」
「そ、そんな……!」
驚愕するミラーガール。
そんな最中でも、イサミは聖龍使いと何とか渡り合っていた。そしてイサミは内心考えていた。
(もしも聖龍使いが混乱しているのがライチちゃんの幻だったとすると一刻も早く目を覚まさせないとイケないわ。だ、だけど、どうすれば……)
そんなイサミと闘っている聖龍使い、彼がこの時見ていた幻いや回想は。
(お願いだから一緒に居ないで! アンタの所為で私まで学校でバカにされているのよ)
(ん? あぁ、話なら母さんに聞いてもらいなさい)
(……お願いだから、母さんには構わないで、お願い……もう話するのも嫌なのよ……!)
妹や父、そして母から浴びせられる苦痛に感じる言葉。
かつて自分に浴びせられた罵声を思い出し、行き場の無い憎悪に駆られた聖龍使いは再度イサミに斬りかかった。
「きゃああ!」
自分の眼前まで聖龍使いの刀が近づいて来て、もうダメかとイサミが思っていた矢先。
聖龍使いの動きがピタリと止まった。
よく見るとミラーガールが聖龍使いの両脇に腕を通して力の限り彼を制止していた。
「み、ミラーガール……」
冷汗を掻きながらイサミは怯えた声で言った。
するとミラーガールは聖龍使いに優しく声を掛ける。
「も、もう止めて、聖龍使い……もう怖がらなくて良いから、怯える事なんて無いから。だから、ねっ…」
目に涙を浮かべて聖龍使いに語りかけるミラーガール。
そんな彼女の言葉を聞き、聖龍使いは次第に正気を取り戻して行く。
「み、ミラーガール……」
聖龍使いの目からは血が引いていき、普段の目に戻っていった。
[現在の黒天狗党と豹の爪(パンサークロー)]
ミラーガールの治癒能力で聖龍使いから受けた傷を回復させてもらったニイハオ姉妹。
彼女達はミラーガールに頭を下げて礼を述べた。
そして聖龍使いは一人、地面に座り込み塞いでいた。
「……ほ、ホントにありがとう。ミラーガール」
「御蔭で私たち助かったし、怪我まで治してもらって……」
「ご、ゴメンなさい。まさか聖龍使いがあんなに暴走するとは思わなくて……」
ミラーガールに申し訳なさそうに礼を述べるジャスミン、タピオカ、ライチ。するとミラーガールは三人に笑顔で言い返した。
「うぅん、別に大丈夫よ。そんなに頭を下げないで」
ミラーガールに続きイサミも三人に告げた。
「そうよ三人とも。聖龍使いにかかった幻術も解けたんだし、もう済んだ事よ」
更にトシも続けて三人に言った。
「まぁ、聖龍使いもどんな幻を見たか解らないけど、みんな無事だったんだし良かったじゃないかよ」
「うぅ……」
しかしライチは、自分の行為で姉達を余計に危険な目に遭わせてしまった事を悔いていた。
其処にソウシが三人に告げる。
「ま、まぁまぁ。どちらにしても三人とも無事で何よりだよ。云うのもなんだけど、聖龍使いって本気出したら君たちタダじゃ済まなかったよ。彼、本気で相手を斬り付けちゃうほど強いんだから。ねっ、ゼラさん」
「あっ、ああ……」
ソウシに指摘され、苦笑してしまうゼラ。
と、その時。上空から声が聞こえて来た。
「おーーい、おーーい」「あっ、この声は」
空から舞い降りて来たのはメタルバードにミラーガール達は気付く。
「お、お前達大丈夫か。カラス天狗達と戦っているって聞いたけどよ」
メタルバードの質問にイサミが答えた。
「ああ、それなら大丈夫です。ゼラさんが助けてくれましたし」
「ん? ゼラ? ……あ! ぜ、ゼラ! テメエ何で此処に居やがるんだ!!」
ゼラを睨みつけるメタルバード。更にメタルバードは気付いた。
「ん? ミラーガール。 何でお前の側にニイハオ姉妹が居るんだ? それに、何で聖龍使いはあんなに塞ぎ込んじまっているんだ?」
「あ、ああ。メタルバード……実は…」
ミラーガールは先ほどまでの状況をメタルバードに話した。
「……そうか。聖龍使いの奴がね」
メタルバードは腕を組み、ミラーガールの話を聞きいれる。
「うん。何とか止まってくれたから良かったものの……」
ミラーガールも神妙な顔立ちで話す。彼女に続きイサミもメタルバードに話した。
「で、でもメタルバード。今回は聖龍使いは本当に苦しんでいたから暴れ回っちゃった訳なのよ。現に、普段は絶対に聖龍使いが攻撃しない筈の仲間である私を攻撃しようとしたんだから」
イサミに続きトシにソウシもメタルバードに述べた。
「そ、そうだよ! 今回はライチの幻術で聖龍使いがオカシクなっちゃっただけで、彼は悪くないんだよ」
「ええ。今回はトシと同意見です。彼は実際に幻術にかかってしまい、それで苦しんでしまっただけなんですよ」
皆の話を聞いているメタルバードにニイハオ姉妹も告げ始めた。
「そ、そうです。今回は完全に妹、いいえ、私達が原因なんです」
「実際、幻術が掛かる前までは何とも無かったわよ」
「ぜ、全部私が悪いんです。ご、ゴメンなさい……」
ライチは涙目でメタルバードに謝罪する。
そんなライチにメタルバードは笑顔で話し返した。
「……大丈夫だよお嬢ちゃん、そんな顔しないでくれよ。女の子がそんなに泣いちゃ、折角のカワイイ顔が台無しにだぜ」
メタルバードはウインクしながらライチを元気づけた。
彼に続きミラーガールもライチに言う。
「そうよライチちゃん。もう終わった事なんだから、ね」
「う、うん……」
ライチは軽く頷いた。
と、皆が会話している所に聖龍使いが歩み寄って来た。
「あっ、聖龍使い」
『!』「……」
ミラーガールが声を掛ける中、怯え驚く姉妹たちと聖龍使いを無言で見つめるゼラ。彼等に対して聖龍使いは述べた。
「……ふぅ……ふぅ……み、ミラーガール、イサミにトシ、ソウシ。心配掛けて済まなかったな。イサミは大事ないか、何処か怪我はしてないか?」
「だ、大丈夫です」
やや疲れ気味な感じで皆に告げる聖龍使い。彼は次にゼラに対して申した。
「と、ところでゼラよ。主は何でイサミ達を助けたのじゃ、あ、いや何故此処に居るのじゃ?」
するとゼラは神妙な面持ちで聖龍使いに返答した。
「……ふぅ、実はあなた達に伝えたい事が有りまして。それで聖龍隊の隊士であるこの子達の所に駆けつけて来たんですよ。ちょうど黒天狗党の動きは丸分かり何でね」
「え? く、黒天狗党の動きが分かるって……?」
ゼラの発言に驚き、ゼラに訊ねるイサミ。
そしてゼラは聖龍隊の面々に語り始めた。
『ええぇ!!』
ゼラの話を聞き、驚くイサミ達にメタルバード、そしてミラーガール。
「ま、まさかそんな……!」
「そうです。今現在豹の爪(パンサークロー)は完全に黒天狗党を支配下に置いている現状なのです」
驚くイサミ達にゼラが話したのは何とあの豹の爪が黒天狗党を乗っ取り、完全に支配下に置いていると言う事実だった。
「我が母、パンサーゾラの御意思によりシスタージルが筆頭に立ち黒天狗党の首相、大天狗は今や豹の爪に従っている現状なのです」
これを聞いたイサミ達は俄かに信じられないでいた。
そしてトシがニイハオ姉妹たちに訊ねてみる。
「な、なぁニイハオ姉妹。お前達って、あの豹の爪に支配されちまっているのか?」
するとニイハオ姉妹は暗い面持ちで答えた。
「……えぇ。今や黒天狗党は、完全に豹の爪の連中に従っているしかできないでいるの」
「前とは違い、血生臭い犯罪にも加担されていく日々……」
「命令に従わなければ、逆に殺されてしまうし……もう、どうしようもできないの」
悲痛な想いで告げる姉妹たちに、聖龍使いは吐き捨てた。
「何を言うんじゃ。結局、今のお前達と何ら変わりないではないか」
「! な、なんですって!」
聖龍使いの発言にムッとし言い返すジャスミン。すると聖龍使いは更に続けて言った。
「ワシから見れば、小さい大きい関わらず悪事を行って来た者は全て同類じゃよ。例えお前等が自分達は酷い事をしてないと言い切っても、豹の爪と同類には変わりないわい」
平然と説教する聖龍使いの言葉にジャスミン達は何も言い返せなかった。そう、所詮同じ犯罪者という意味では自分達も豹の爪と同じ側の人間には違いなかった。
「せ、聖龍使い。何もそこまで言う事無いじゃない!」
「そ、そうですよ」
「た、確かに犯罪者って意味では同じかもしれないけど豹の爪の連中と比べたら、コイツ等の行いなんて可愛いもんじゃないっスか」
イサミにソウシ、トシが聖龍使いに弁明した。
「そうよ聖龍使い。彼女達まで一緒にしないで上げて」
ミラーガールも聖龍使いに訴える。
「ところでゼラよ。主は何故、ワシ等にその事を伝えたのじゃ? また何か企んでおるのか……!」
聖龍使いはゼラを睨みつけながら聖龍剣に手を掛けた。
するとゼラは口元に笑みを浮かべながら話し返した。
「……聖龍使い、実は私は既に豹の爪を脱退しているのですよ」
「な、なぬ!?」『えぇ!?』
ゼラの発言に驚く聖龍使いにミラーガール・メタルバード。
更に続けてゼラは事情を述べ始める。
「私はですね、以前ミラーガール、貴女が起こした奇跡に只ならぬ衝撃を感じたのですよ」
「え? し、衝撃…?」
唖然としてしまうミラーガールにゼラは続けて話した。
「ええ。貴女が死んでしまったミスティーハニーに変身して更にキューティーハニーの力も増幅させた【愛の奇跡】。それだけでなく死んでしまったミスティーハニーまでも蘇生させる事が出来てしまう……貴女が見せてくれた愛の力に、私は衝撃を覚えてしまったのです」
「は、はぁ……」
思わず呆然としてしまうミラーガールにゼラは話し続ける。
「そしてそんな愛の力……人の欲望から産まれた私にも感じられたのなら、この私にも愛というものを得られる筈。私はそう悟り、豹の爪を一人抜け出して来たのですよ」
ゼラの釈明を延々と聞いていた聖龍隊。
そんな中、イサミ達がヒソヒソ話で会話し始めた。
「ね、ねぇ。確かにミスティーハニーに変身してパワーアップしたキューティーハニーと一緒にゼラを倒したのはミラーガールだけど……」
「あ、ああ……ミスティーハニーを生き返らせたって言うのは正確にはさくらのタイム(時)のカードを発動させてミスティーハニーが死ぬ前まで時を戻したのが事実なのに……」
「ま、まぁ。ゼラ本人が気絶していた間だったからね。ゼラから見たらミスティーハニーが生き返った風に見えちゃったんだろうね……」
イサミ、トシ、ソウシたち三人が小声で会話している中、聖龍使いがゼラに告げた。
「……ゼラよ。主の話、誠の事なのでござるな」
「……と、言いますと」
「……主がまた、拙者等を騙し、ワシ等を陥れようとしているのかと云う事じゃよ」
聖龍使いのこの発言に、ミラーガールは言い切った。
「ちょ、ちょっと聖龍使い! 何を言うのよ」
すると聖龍使いはミラーガールを見つめ言った。
「何を言うのじゃミラーガール。このゼラが今までどれだけハニー姉妹を傷付け、そしてワシ等に牙を向いて来たのか知っておろう! 正直、簡単には信用できぬわ!!」
聖龍使いの主張に怯むミラーガールに、聖龍使いは更に続けて言った。
「そういった意味では、ニイハオ姉妹も同じじゃ。今の黒天狗党が豹の爪に支配されとると言いながら未だにワシ等に刃向かい悪事を続けておる。所詮この女子(おなご)共も豹の爪同様、斬り殺しても斬り足りぬ存在じゃよ!!」
怒声で言い放つ聖龍使いの話を聞き、ミラーガールは聖龍使いに思わず強く言った。
「何言っているのよ! ゼラさんはちゃんと改心してくれているし、ニイハオ姉妹だって豹の爪に支配されている黒天狗党は嫌だって言っているんだし、彼女達だってもう天狗党には居たくないって思っている筈よ。ねえっ、ジャスミンさん、タピオカさん、ライチちゃん」
「え、えぇ……」
ミラーガールに問われて、思わず首を頷けるジャスミン達。
しかし聖龍使いは彼女達やゼラに対して更に吐き捨てる。
「簡単に信じるでない! この者らがどれだけ人々を傷付け嘆かせて来たのか解っているじゃろうが!! ゼラはハニー姉妹の心を苦しめ弄び、ニイハオ姉妹は黒天狗党の命令とは言え自らイサミ達を襲い傷付けて来たではないか!! ワシはなミラーガール! 仲間を傷付け、そして苦しめた連中は徹底的に痛めつけ、罰を受けさせなければ納得がいかんのじゃ!! 何なら二度と悪事が行えぬようゼラの目玉は繰り抜きニイハオ姉妹の三人は人を傷つけられぬよう、両手を切断するのであればワシはもうコ奴等には何も言うまい」
聖龍使いの鬼畜同然の発言に、ゼラは無言で聞き入れ、三姉妹は恐怖で蒼褪めていた。
「キャ、キャアァ!」
ライチが恐怖の余り、怯え叫ぶ。
「や、止めてください!」
タピオカも涙目になりながら聖龍使いに訴える。
「や、止めて聖龍使い。私も妹達も、もう黒天狗党を抜けるから。ほ、ホントよ」
ジャスミンも必死に聖龍使いに訴え始めたが聖龍使いは冷たい目で三人を睨みつけながら三人に言い切る。
「……信用できぬな、主等が本当に天狗党を抜ける等と……何なら、天狗党を本当に抜けるという証で、主等姉妹の両腕を拙者に差し出せ。なぁに、両腕を突き出せば、後は拙者が自ら斬り落としてくれようぞ」
『い、いやあぁぁ!!』
抱きしめ合いながら絶叫するタピオカとライチ。長女のジャスミンは再度聖龍使いに申した。
「お、お願い……! ホントに、本当に天狗党を抜け出すから……! わ、私自身も今の黒天狗党には幻滅していたから、この機会にちゃんと彼等とは縁を切りますから……だ、だから、お願い」
恐怖で怯えながらも、必死で聖龍使いに申し告げるジャスミン。
だが聖龍使いはそれでも三姉妹を、そしてゼラに対して不信の念を抱いていた。
「……先ほどから申しておろう。本当にお前達が天狗党を抜け出すのであれば、その証に両腕を差し出せと。……それとも、腕ではなく命を差し出してくれるのか?」
上目使いで睨み続ける聖龍使いの冷眼の如き漆黒の瞳を見たジャスミン達はより一層恐怖で背筋が震えあがった。
「い、いや……ゆ、許して下さい……」
遂に強がっていたジャスミンまでもが涙目になり恐怖で怯えながら震えた唇で聖龍使いに赦しを乞う。
だが聖龍使いは刀を抜きとり、ジャスミン達に刀の切っ先を向けて言い放つ。
「……両腕を差し出せ、はようせい!」
『!!』
聖龍使いに責め立てられ、恐怖で顔面蒼白になりつつあるニイハオ姉妹たち。
と、その時。
「いい加減にしてよ!!」「! み、ミラーガール……」
ニイハオ姉妹に責め立てる聖龍使いに、ミラーガールは言い放った。そして彼女は悲痛な眼差しで聖龍使いに言う。
「……聖龍使い。ゼラを、そしてニイハオ姉妹たちを信じてあげてよ。お願い…」
「み、ミラーガール……」
悲しい声で自分に言って来たミラーガールに、聖龍使いは動揺した。
更にミラーガールは続けて聖龍使いに話す。
「ゼラさんはやっと自分のしてきた事の過ちを理解してくれたのよ。それに自分にも《真実の愛》を得られるのかもしれないって感じられただけでも物凄い進歩じゃない。その事だけでも立派な事よ」
「………………」
ミラーガールの釈明を無言で聞き入れるゼラ。更に彼女はニイハオ姉妹たちの事も弁明し始めた。
「さ、三人だって黒天狗党を抜け出すっていうんだから信じてあげましょうよ! 三姉妹とも、まだこんなに若いんだし、いくらでもやり直せる筈よ!」
「………………」
ミラーガールの発言を黙って聞く聖龍使い。
(ま、まだ若いって……)(み、ミラーガールだって若い方なのに……)
(僕等と同じ年だって事を忘れていませんかね?)
ミラーガールの発言に内心それぞれ思うイサミ達。そんなミラーガールは三姉妹に語り始めた。
「あ、あの……ジャスミンさんにタピオカさん、それにライチちゃん」
「は、はい」「な、なにか……」「な、なぁに……」
「貴女達は本当に仲の良い姉妹なのね。少し羨ましいわ」
『え』
「あなた達なら黒天狗党を抜け出しても、きっと上手く……いいえ、今まで以上に素晴らしい人生を生きていける筈よ」
『……』
「だからさ、もう折角の格闘術も悪い事には使わないで。そういった力って云うのは《人を傷つける為》ではなく《人を護ってこそ》本当に価値のある力になるんだから。お願いします」
「か、価値ある、力……」
『……』
ミラーガールの釈明に目を丸くするジャスミンに、無言になるタピオカ・ライチ。
更にミラーガールは、次はゼラに向けて言い放った。
「ゼラさん。貴方が豹の爪を抜け出し、更には人を愛する心を得ようとしてくれた事は私自身、凄く嬉しいし、感激いたしました」
「ミラーガール……」
「人を傷つき、人を欺いてばかりいた貴方にも、しっかりと感じ取ってくれた愛という想い。その感じられた愛を探す為に、豹の爪という自分の殻を打ち破り広い世界に視野を広げて飛び出して行ってくれた。それだけでも凄い成長ですよ……!」
目を輝かせて話すミラーガールに、ゼラは何も言い返せなかった。
更にミラーガールはゼラに話し続ける。
「……確かに、人は同じ人を欺いたり裏切ったり、そして傷付け殺し合ってしまうのも現実にはあります。でも、だからって自分の中に有る愛や信頼という人としての温もりまでも否定しないで欲しいんです! ゼラさん、貴方自身にも必ず、貴方が得られる筈の愛や信頼が必ず何処かに有る筈ですよ。その為にも、これから先も自分を変えていってください。私、応援してます!」
「ミラーガール……貴女は……!」
そんな四人にミラーガールは更に続けて言った。
「いいえ。人間、歳なんて関係ないわ。本気で変わりたい、本当に自分を変えたいと心から願えば必ず人は今まで以上の自分に変わっていける筈よ。私はそう信じているわ!」
【心から変わりたいと願えば必ず人は変われる】
ミラーガールのこの言葉を、話を聞いたゼラにニイハオ姉妹。更にメタルバートや聖龍使いも聞き入っていた。
[騎士からの忠告]
そしてニイハオ姉妹は去り際に聖龍隊と話をした。
「……今まで、いろいろとゴメンね。イサミ、トシ、ソウシ」
フッ切れた感じの笑顔で語るジャスミン。
「私達、この後すぐ香港行きの飛行機で天狗党はもちろん豹の爪にも気づかれない様、日本を出るよ」
タピオカも爽快な感じでイサミ達に言った。
「い、イサミ……あ、あのな……こ、今度また会えたらそん時こそ決着付けるから! ま、負けないからねっ」
「ええ。その時こそ、天狗党なんて関係無しに正々堂々と闘いましょう」
ライチとイサミは笑顔で互いに握手を交わした。
「……ミラーガール」「え、ゼラ?」
突如ゼラがミラーガールに話しかけて来た。
「ミラーガール、貴女が先ほど私や姉妹等に語ってくれた話。何か心に熱いものを感じさせてくれました。私がこんな気持ちを感じるのは生れて初めてです。……やはり貴女は、奇跡の乙女ミラーガール、なのですね」
「ぜ、ゼラさん……」
以前には見られなかった何処か優しさを感じられる笑顔を浮かべゼラの心境の変化にミラーガールは感動する。
「そ、それじゃ私達はもう行きます」
「さ、さようならミラーガール。本当にありがとう!」
「イサミーー、今度逢うときには私もっともっと強くなっているからねーー!」
去り際に皆に言い放つジャスミン・タピオカ・ライチ達。
「ライチちゃーーん、私だって今以上に強くなるんだから競争よっ」
「今度は俺だって今以上に最強になってやるからな!」
「美人のお姉さん方、今度会った時は今以上に楽しくお喋りしましょう」
イサミ達も手を振ってニイハオ姉妹を見送った。
「……ふぅ~、これでニイハオ姉妹もゼラも敵になる事はまず無くなったし、何より今現在の豹の爪と黒天狗党の関係性も把握できたし万々歳な結果だったな聖龍使い」
「う、うむ……そうじゃな」
溜息をつきながら一安心するメタルバードに対し、何処か沈鬱な雰囲気を漂わせる聖龍使い。
その時だった。
「ムッ。何者!?」
突然メタルバードが発言した。
「な、何メタルバード?」「な、何か……?」
ミラーガールとイサミ達がメタルバードの駆け寄るとメタルバードは真剣な顔立ちで皆に告げた。
「お前等……どうも、この近くにオレら以外のよそ者が居るみたいだぜ」
「え!?」「! そ、そんな……!?」
ミラーガールにイサミ達が驚く中、聖龍使いがメタルバードに訊ねた。
「メタルバードよ。主が感じた、その余所者の気配はいったい何処から感じるのでござるか?」
訊ねられたメタルバードは険しい顔付きに鋭い眼つきを放ちながら気配のする方角に攻撃を放った。
「うむ……其処だ!」
メタルバードは翼から半透明の風の刃を生み出し放たれた刃はそのままドラム缶の山に直撃しドラム缶を切断した。
「う、うわっ」「す、凄い……」
鉄のドラム缶ですら真っ二つに綺麗に切断できた風の刃の切味に驚愕するトシにソウシ。
そしてメタルバードは自分が放った風の刃で切れたドラム缶の山に向かって言い放った。
「オイお前! 誰だか知らねえが居るのは分かっているんだ、姿を見せやがれ!」
指差し、胸を張って言い放つメタルバード。
彼の言葉を聞き、気配の主が姿を現した。
「よく分かったな!」
声の主はドラム缶の山とは別方向の、しかも海の中から這い出て来た。
「ズコーーッ!」
技を放った方角とは別の場所であったが為に思わずズッコけるメタルバード。
気配の主。それは以前、聖龍使いと闘ったあのミラーナイトだった。
「み、ミラーナイト!」「あ、あなた何故此処に!?」
彼を見て驚く聖龍使いとミラーガール。
「ふぅ、気付かれないようにと思って海の中に潜んでいたけど、まさかメタルバードに感づかれるとはな。だ、だけど、さすがに長時間海ん中に居るのは酷だぜ……は、ハックシュッ」
思わず身震いをして、くしゃみをしたミラーナイトに聖龍使いは訊ねた。
「ミラーナイトよ。主は何故、此処に居るのじゃ? なにが目的で此処に……」
するとナイトは口元に笑みを浮かべて聖龍使いに吐き捨てた。
「フッ、それはお前さんが、また暴れないか気になってね。余り余計な行動をされて、返ってこの世界の運命を狂わせない様見張っているんだよ」
「せ、世界の運命?」
ナイトの発言に首を傾げるミラーガール。
そんなナイトに聖龍使いは問う。
「……主は、いったい何者なのじゃ?」
するとナイトは呟くように聖龍使いに告げた。
「……今はまだ明かす事はできない。しかし、後々にはちゃんと明かそうとは思っているがね」
不敵に笑みを浮かべながら告げるミラーナイトに、今度はゼラがナイトに話しかけた。
「……なるほど。あなたが近頃町を騒がしている『青い騎士』ですね。豹の爪でも話題には成っていますよ。まさかこんな所でお目に掛かれるとは光栄ですね……」
話しかけられたナイトはゼラに言い返す。
「ほぉ、元は悪名高い豹の爪の幹部にして首相パンサーゾラの息子にしては珍しいお言葉だな」
そんな中、ミラーガールが二人の間に割り込むようにナイトに言い放った。
「あ、あなた! さっきから世界がどうとかって、何を訳の解らない事を言っているの? ……どっちにしろ、聖龍使いとゼラさんを悪く言わないで! 今回聖龍使いは幻術に掛かって混乱してしまただけだし、ゼラさんはちゃんと豹の爪を抜け出して改心してくれたのよ! そんな二人を酷く言わないでよ!!」
ミラーガールは聖龍使いとゼラを見下しながら発言するナイトに強い口調で言い放った。
ゼラは自分を庇ってくれるミラーガールを見て、心なしか嬉しく思う。
そんな強気になるミラーガールに聖龍使いは言った。
「……大丈夫じゃよミラーガール。ワシは別に大丈夫じゃ、ありがとの」
ミラーガールに礼を述べた聖龍使いは今度はナイトに発言した。
「ミラーナイトよ。主が何者で、何を知っているかは知らんが、ワシはワシ。己の信念のもと戦って行こうと決心しておる。故に何者にもワシは止められんし、止まろうとは思っておらんのじゃ」
聖龍使いは強い眼差しでナイトを見つめながら語ると、ナイトは言い返した。
「ああ、その様だな。お前の信念は本物みたいだし誰にも変えられるような意思じゃないのは本当みたいだな。だが俺は、お前が本当にこの世界の人々の運命を変えたいと願っているのであるならば是非その思いを見せて欲しいと思っているよ」
ナイトの発言を聖龍使いは無言で聞いていた。
その時。
「……ふ、ふは…フィッくシュッ」
ナイトは再びくしゃみをした。
「お前なぁ、いくら気付かれない為とは言え海に潜っているから体冷えんだよ」
「ま、まぁな、くしゅっ」
メタルバードに指摘されながら再度くしゃみをしてしまうナイト。
そんなミラーナイトを見て、聖龍使いは彼に言った。
「そうじゃミラーナイト。ワシが主の冷え切った体を温めてしんぜようか?」
この発言にナイトは発した。
「えっ、ホントか? そ、それはありがたいぜ……」
「良し、それでは……」
そう言うと聖龍使いはミラーナイトに歩み寄っていった。そして
「……火玉(ひだま)!」
聖龍使いが発した瞬間、彼が装着している鬼の面の口の部分から火の玉が飛び出した。
「ウギャアーー!」
ナイトは火達磨になり再び海の中に飛び込んでしまった。
『ってオーーッイ』
火達磨になったナイトを見てメタルバードにイサミ等は驚き叫んだ。
「お前っ、何もやしちゃっている訳なの!?」
「いやぁ、火ならスグに濡れた体も乾くかなって思ってね」
「って燃やしてドーースル!!」「ヒギャっ」
メタルバードのツッコミに笑いながら言い返す聖龍使いに、ミラーガールが聖龍使いの頭に拳骨で殴ってツッコんだ。
更にその時、ゼラの様子が一変した。
「ふ、ふはは……燃えている、燃えていますよ。ふは、フハハハハハハハハハハハハ……」
まるで何かに取りつかれた様にゼラは笑みを浮かべて高笑いした。
「ぜ、ゼラさん?」「だ、大丈夫……ッスか?」
「ま、まるで別人だ……」
火達磨になったミラーナイトを見て一変したゼラを目の当りにしたイサミ達は驚愕した。
「ククククク……す、すいません。何故だか解らないのですが、何だか火達磨になったミラーナイトを見たら、まるで私の中に別の人格が出現した様な感覚に陥ってしまって……」
思わず目を丸くして呆然としてしまうゼラ。
そしてミラーナイトは海から這い上がって来なかった。
「……だ、大丈夫かしら? ミラーナイト」
心配するミラーガールに聖龍使いが告げた。
「まぁ、あの者はかなりの武人。簡単にくたばる訳ないでござるから心配は無用でござるよ」
「って、自分で燃やしたくせにエラソーーに言うんじゃない!」
またまた聖龍使いの発言に、頭をチョップで軽く叩きながらツッコむミラーガール。
その後、聖龍使いとミラーガール、イサミ達三人
そしてゼラは互いに別れの挨拶を交わして解散した。
メタルバードは念のために、付近のパトロールを行ってから修司の自宅に帰って行った。
因みに、ゼラが何処に去っていったのかは不明なまま。
[不信に満ちる武人]
その夜、修司の自宅にて。
パトロールから帰って来た変身怪獣は今日起こった事も含めて今現在の豹の爪(パンサークロー)の現状とゼラの心変わりを聖チャペル学園に在住しているハニー姉妹に無線で伝えてた。
「……という事がさっき大江戸港で起こったんだよ。まぁ、幻術に掛かっちまった聖龍使いは《また》ミラーガールが止めてくれたし、あのゼラまでもイサミ達を救済してくれて。更に今の豹の爪と黒天狗党の関係性も打ち明けてくれたんだ。まっ、二つの組織については、これからも動向を気にしながら警戒していこうじゃないか」
「そう……どちらにしろ、聖龍使いがまた止まってくれたのが一番良かったわ」
「ま、まぁ……まさか、あのプライドの高いゼラがミラーガールに感動して一人豹の爪を抜け出しちゃったなんて、少し驚きね」
変身怪獣から言伝を聞き、安堵するハニーに驚愕する聖羅。
「……まっ、この先二つの組織がどんな行動を取るのか先行きは不安だが皆で協力していけば大丈夫だろう。今まで通りに……なっ」
「そうね。今までだって皆と協力し合ったからこそ辛い戦いも乗り越えられて来られたんですものね」
「確かに。ちょっと性格に問題が有るとは言え、攻撃力は随一の聖龍使いに彼の感情を上手く制御できて更に防御系・回復系では聖龍隊一のミラーガールの二人が付いてくれたからこそ辛い敵との死闘も無事に乗り越えられて来られたのは事実だしね」
「性格に問題ねぇ。そりゃ言えてるな聖羅。はっはぁ」
聖羅の発言に思わず笑う変身怪獣。
その時、変身怪獣が突然発した。
「そうだ、今修司とアッコが通信で会話しているみたいだしあの二人がどんな話をしているのか聞いちまうか」
陽気な口調で告げる変身怪獣にハニーが言い返した。
「へ、変身怪獣。それは止めときなさいよ」
更に妹の聖羅も言い返す。
「そうよ。せっかく二人だけで会話しているのを盗み聞きするなんて野暮よ変身怪獣」
だが変身怪獣は二人に反論した。
「だけどよ、二人も熟知しているだろ? 修司って皆の前だと中々本音を言わねえのにアッコと二人っきりになった途端、本音を吐く様になるって。言っちゃなんだが、アイツって何考えているのか解らねえ時が有るしよ。奴の真意を知っておかなきゃ……」
そう言うと変身怪獣は通信機のスイッチを入れて二人の会話を聴取した。
更に変身怪獣が入れたスイッチによって会話は全聖龍隊の通信機を通して全員に伝わってしまう。
「……ん? うさぎ、何だか通信機から声が聞こえて来たよ」
「え? いったい何だろう?」
月野家のうさぎ・ちびうさの所の通信機にも。
「……ん? 何だろう。通信機から会話声が」
「え? どうしたの、はるか」
「どうしましたか?」「どうしたの? はるかパパ」
外部系家族の家にも。
「……ほ、ほえ? 何処からか会話が聞こえてくる」
「さ、さくら。聖龍隊士の通信機から聞こえてくるで」
木之本家でも
「……あ、アレ? この声、修司さんとアッコさんの」
りりかが寝る準備をしている森谷家でも。
「二人とも、何だか話しているみたいね」
花丘家でも。
もちろん、他の聖龍隊士達の通信機からも修司とアッコの会話がタダ漏れしてた。
そんな状況下の中、修司とアッコは今日の出来事に付いて会話していた。
「……これから大変よね。まさか豹の爪と黒天狗党が手を組んじゃうなんて」
「まあ、正確には豹の爪が黒天狗党に無理やり命令しているから手を組んでいる訳じゃないけど……しかし、これから先連中が何をしてくるかが気掛かりなのは変わりない。あの愚図共が俺等に対してどんな行動をとってくるか、目を光らせて置かないとな……」
「あ……」
修司の言動に思わず言葉を失くしてしまうアッコ。彼女はふと、修司に訊ねてみた。
「……そう言えば、修司」「ん? 何だアッコ」
「修司ってさ。結構、人の事疑ったり怪しんだりする事が多いわよね。今日もニイハオ姉妹やゼラさんに対しても、そんな感じだったし」
薄暗い声で語るアッコに対し、修司は言い返した。
「悪かったな。以前からも言っているが、俺は余り人を信用しない男なんだよ。それが増して敵で有れば尚更だ」
修司の返事にアッコは言い返した。
「べ、別に謝る事はないわ。だ、だけど……敵だったら……敵だと信用する事ができないの? もう私達とは戦わないって言ってくれたニイハオ姉妹や改心したゼラさんの言葉も信じてあげれないの?」
すると修司は思い詰めた口調でアッコに言い返した。
「……いや、正直。俺は敵とか元敵だとかだけじゃない。周りの人間を未だに、誰も信用する事ができないでいる」
アッコは驚いた。
「! そ、それじゃ……私や、皆の事も信じていない訳なの……?」
アッコの言葉に修司は一瞬考えたが、すぐに言い返した。
「……ああ、そうだ。俺は誰に対しても、完全に心を許す事ができないでいる。故に誰も信用できないでいる。……無論、こんな自分ではイケないと頭では解っているが、どうしても周りの人間を疑ってしまう。本当にコイツは信用しても良いのか、本当に信頼できる存在なのか……常に不信の思考で頭がいっぱいなんだよ」
通信機越しからとは云え、修司が冷たい無表情な顔で暗い思考で語っているのを会話の相手であるアッコはもちろん、会話を聞いている聖龍隊士たちも察知していた。
更に修司はアッコに話し続ける。
「だがなアッコ。恐らく俺はこれからも人を疑う……人を疑って来れたからこそ、今の自分があると思っている。俺はこの先もずっとアッコや仲間達の事までも疑い続けるだろう。それが俺の本性であり、俺自身なんだからな」
「………………」
「所詮、俺は皆と違い人に対して完全に信頼する事はできない。俺には、皆と違い誰かを護る力も才もない。傷付け、破壊する才しかない。この身が朽ちるまで、己が魂が消滅するまで、その才が、意思が消える事は無い」
「………………」
「そう……恐らく俺は死ぬ時まで、いや死後も人を信じる事ができない存在なのかも知れない」
修司の悲痛な言葉に思わず無言になるアッコ。
彼女は修司の胸の内を知り、改めて修司の苦境を痛感した。少年の悲痛成る想いを感じた加賀美あつこは修司に訊ねてみた。
「……ね、ねぇ。修司」「……なんだ」
「し、修司にとって……修司が思っている《人を信じる》って、どんな気持ちなの?」
修司は数秒無言になって考え、そしてアッコに返答した。
「……俺にとっての、俺の考える信じる心。そうだな……これは俺個人の価値観だが、俺の思う《人を信じる》っていうのは……《心から安心できる環境》……かな」
「こ、心から安心できる環境……」
修司の言葉に思わず無口になるアッコ。
更に修司はアッコに断言する。
「そう、人を信じる。つまり心を許せる相手が身近に一人いるだけでも、それだけで人生は大きく変われる。だけど俺の周りには、そんな人間は居なかった。故に心の底から安心できる生活なんて経験した事なんて無い。簡単に言えば、俺の特殊な心は、俺に平穏な生活を送らせてはくれないんだよ。故に俺の心はいつも疲れきっている。生きる事その物が苦痛に感じてしまうんだよ……」
疲労に満ちた修司の発言に対し、アッコは修司に告げた。
「修司……大丈夫よ」「……何がだ?」
「修司にはもう、私やみんなが付いているから。みんな、ちゃんと修司の事を思ってくれているから……だから安心して良いのよ。修司……」
優しいアッコの発言に対し、修司は言い返す。
「……本当に良いのか」「え」
「本当に良いのか。お前や、お前達を信用してもよ。いや、この俺が簡単に人を信用する事ができると思うのか? 周りの人間だけでなく、自分の家族ですら疑い続けて来た俺が
他人の事を信用する事ができると思うのか?」
暗い口調で語る修司に対し、アッコは明るい口調で言い返した。
「……大丈夫よ。まだ修司にとっては不慣れなのかもしれないけど徐々に人を信じていく事に慣れていけば良いだけよ」
「……」
無言になる修司にアッコは説き続ける。
「修司は独りじゃない。独りじゃないからこそ、誰かを信じて生きていける日が必ず来る筈よ。そして今まで辛かった分も含めて思いっきり幸せに成れる日が訪れるから。私自身も、いつか修司に信じてもらえるよう……修司に完全に心を許してもらえる存在になってみせるわ。そう、私や皆の様に、幸せだって感じられる日が、修司にも必ず訪れる筈よ。だから修司自身も皆の様に少しずつで良いから自分を変えていかないと。もちろん、私も少しながらの手助けはする積りよ」
アッコの言葉を聞き、修司は再度アッコに訊ねた。
「……アッコ。お前は、成れるとでもいうのか?」「え?」
「お前は、その気になれば無機物・有機物何にでも変身する事が可能な女だ。そんなお前は、本当に俺と信じあえる間柄に成れるのか……」
「あ……」
「こんな俺でも想う。死ぬ前に、たった一人で良いから他を信用して死にたい。お前はそのたった一人になれるのか、なってくれるのか。感情も制御できず、ただ破壊の才しか持ち合わせていない俺の安らぎに成れるのか? 本当に、そんな存在に成る事ができるのか? ……俺に、少しでも人を信用できる心が……安らぎを感じられる心が得られると言うのか」
修司の問い掛けにアッコは考え、そして元気よく答えた。
「修司、私を誰だと思っているのよ! 私はミラーガール! どんな存在にも変身する事ができる魔鏡聖女よ! どんな人にとっても元気付けられる存在にだって、きっと成れるんだから! も、もちろん修司にとってもよ……!」
「…………」
「そ、そりゃ……私はセーラー戦士達やハニーさん達みたいに強くはないし美人でも無い。ナースエンジェルの様に黒のワクチンの様な特殊な病魔を治す事も出来ない。カードキャプターのさくらちゃんみたいに色んな種類のカードを、魔力を使えやしない。イサミちゃん達みたいに多様な武器すら使えない。だ、だけど、こんな私にだって皆の為……ううん、たった一人でも良いから、その一人の為に頑張って行きたいのよ!」
「……アッコ」
アッコの強気な発言に思わず驚いてしまう修司。
彼女は更に修司へ打ち明ける。
「……私、正直自分が皆の様な凄い英雄じゃないのは解っている。だけど、それでも人とは違う能力(ちから)を持っているからこそ、その能力を誰かの為に使っていきたいの。私は、最初このコンパクトの力を遊び感覚で使っていた時期も有った。でも遊び感覚やゲームの様に楽しむんじゃなく、その能力を誰かの為、困っている人の為に使った時の方が心が満たされた。誰かの助けになる様に使う事が何倍も楽し…いいえ、凄く嬉しかった。私は、これから先もこの能力で沢山の人の助けになっていきたい。そして、そんな沢山の人達の一人でもある修司自身の力にも成っていきたいのよ!」
優しさと強い意志に溢れたアッコの台詞を聞いた修司は、自然と胸が温かくなっていった。
そして彼は口元を微笑ませながらアッコに言った。
「アッコお前……自分が強くもなければ美人じゃないって事、ちゃんと自覚していたんだな。いやぁ、感心感心♪」
「って、な、何よ。さっきまで気落ちしていた癖に……!」
「はっは……」
アッコと話していた修司は自然と笑顔になっていた。
そんな修司の笑い声を聞いたアッコは、慈愛に満ちた口調で彼に告げた。
「……ほら、修司はちゃんと笑えるんだから、もう少し元気でいなさいよ。聖龍隊の総長以前に、町の市町でもあるんだからさ。私だって修司の笑顔をずっと眺めていたい程……修司の笑顔が、大好きなんだからさ」
「!!」
「それじゃ、お休み修司。また明日学校でね」
そう言ってアッコは通信を切った。
「……修司……アッコ」
通信を聞いていた変身怪獣は修司とアッコ、二人の複雑な心境を察して独り俯いてしまってた。
そして他の聖龍隊士たちも同じような状態に陥っていた。
一方、通信を終えた修司はベッドの上に寝転がり、仰向けになりながら天井を見つめ
独り思い耽っていた。
(……アッコ。お前は結構凄い事言うんだな。そして同時に知らないんだな。お前がセーラー戦士やキューティーハニー、ナースエンジェルやカードキャプターにイサミ達にとって、どんな多大な影響を持っている存在なのか……を)
修司は思い悩みながら、静かに就寝した。
[孤独と感じさせない]
翌朝、ツバメ小学校。
「おはよー」「あ、アッコ。おはよう」
アッコとモコは教室で顔合わせをして、互いに挨拶を交わした。
「あら? アッコ、今日は修司とは一緒に登校して来なかったの?」
いつも一緒に登校して来ている修司の姿が見当たらず思わずアッコに訊ねるモコ。
するとアッコは笑顔でモコに答えた。
「あ、修司はちょっと遅れて登校してくるみたい。何だか昨日は色々と、市長としての仕事が忙しくて疲れちゃったみたいなの。だから今日はギリギリまで寝ているみたい」
「そ、そう……修司も大変なのね」
二人が会話をしている、まさにその時。修司が教室に入って来た。
「……おはよう」「あ、おはよう修司」
気疲れしている修司に、モコが最初に挨拶をした。
「修司おはよう。どう、少しは元気になれた?」
アッコは満面の笑顔で修司に訊ねた。
「あ、ああ。少しはな」
修司は多少、元気のない口調で返答した。
「もうっ、全然元気じゃ無いじゃん! 男の子だったらもうちっとシャキッとしなさい!」
アッコはそう言うと修司の背中を強めに叩いた。
「ウグッ……う、うん……」
アッコに喝を入れられ、少しばかり顔色が良くなった修司。
そして二人は隣同士で有る自分達の席に着席し、会話を続けた。
「ねえ修司。私、昨日の夜に考えたんだけど」「うん?」
「私ね……ミラーガールとして人々の助けになる以前に加賀美あつことして周りの人をちゃんと幸せにしていきたいって思ったの。普段のアッコとしても誰かの力になってあげなきゃミラーガールに変身しても誰かの助けになる事は出来ないって……そう思ったの」
「…………」
「だ、だからまず……私は、修司を救ってあげたい。修司の助けになってあげたいの。
スグ側の人も助けられなきゃ英雄になって人を助けるなんてできないって、そう考えたの……」
「……そうか」
話をするアッコも、その話を聞く修司も互いに神妙な顔立ちになりながら更に会話を続けた。
「だ、だから私は……まず修司には少しでも孤独じゃないって感じて欲しいわ。だから少しお節介になるかもしれないけど私は今まで以上に修司と一緒に行動していくわ。
無論、修司の為でもあるけど、それ以前により多くの事を知る為に修司から学ぶ為にも、私は修司に着いていくわ」
「……良いのか。俺何かと一緒に居る為だけに貴重な時間を消費してよ」
暗く険しい表情で訊ねる修司に、アッコは笑顔で答えた。
「良いじゃない、私の時間なのよ。修司はもちろん、誰の時間でも無いんだから誰にも言われる筋合いはないわ。何より、私自身が修司からも色々と学ぶ為にも一緒に行動していくんじゃない」
「……」
「修司。人が誰かと一緒に居るのは、その人の為じゃない、自分自身の為でもあるのよ。その人と一緒に居る事で、その人から学ぶ事・得られる事が有るからこそ人は常に誰かと一緒に行動しながら生きているのよ。一緒に居れば、その人だけじゃない。自分はもちろん、周りの人達までもが幸せになれる。それが本当の人との繋がりなのよ。そしてそれが孤独と言う感情を消してくれる、温かい感覚なのよ」
「! ……」
アッコの発言に驚き、人知れず感動してしまう小田原修司。
そんな二人が会話をしている、その時。
「お、おはよう……ひ、ヒクシュっ」
「お、おはようキーオ。ど、どうしたの? 鼻から水が出ちゃっているけど風邪?」
女子がキーオに訊ねると、キーオは鼻声で返事をした。
「い、いやな。ちょっとな……」
更に別の女子がキーオの体の異変に気付いた。
「アラ? ね、ねぇキーオ。どうしたの、この体に張られているガーゼは?」
キーオの服から多数のガーゼが体に張られているのが垣間見えていた。
「い、いや……ちょ、ちょっと軽い火傷だよ。大した事じゃないから気にしないでくれよ」
そして席に着いたキーオは内心思っていた。
(チックショー~、あの野郎……別に火達磨にしなくても良かったんじゃないのかぁ……)
孤独に囚われている武人と、それを救ってあげたい聖女。
二人の物語は、まだまだ続く。