【聖龍伝説:第二章】英雄達の日々 作:セイントドラゴン・レジェンド
とても意味深な発言も有るので要朗読。
[悲しむ少女との出会い]
「……修司? 今回は私が行かなくても大丈夫だった?」
アッコは通信機で修司と会話をしていた。
「ああ、大丈夫じゃったわ。今回は手強い上に数も多かったのじゃがメタルバードとジュピターキッドとの連携が上手く云ってのぉ。最後はナースエンジェルが連中を消滅させてくれたから大事無かったわ」
修司は聖龍使いに変身していて、年配口調でアッコと会話していた。
「ま、それなら良かったんだけど……それにしても未だにダークジョーカーの怪物が出現するなんて厄介ね」
アッコは溜息交じりで修司に呟いた。
「まぁ、仕方が無いわい。ブロスは倒されたが、未だにア奴の影響が残っておる。故にダークジョーカーの怪物が未だに出現する有様じゃ」
思い詰めた口調でアッコに言い返す聖龍使い。
「そうねぇ。何か手立てとか無いのかしら?」
アッコが発言すると通信機を通して今度はナースエンジェル本人がアッコに話しかけて来た。
「あ、アッコさん、アッコさんでしょ?」
「あ、ナースエンジェル。どうだった? 無事に戦闘は終わったの?」
アッコは心配そうにナースエンジェルに問いかける。
「ええ、大丈夫です。聖龍使い達が協力してくれたお陰で何とかダークジョーカーを倒せましたし、平気です」
ナースエンジェルは笑いながらアッコに返答した。
「そう、それなら良いんだけど……ゴメンね、私ちょうど友達と約束していて、そっちに行けなくて……」
アッコは申し訳無さそうにナースエンジェルに言った。
するとナースエンジェルは物静かに答えた。
「……良いですよ。お友達の事は大事にしてあげないと……」
「?」
何やら思い詰めた感じのする言動をしたナースエンジェルに気付いたアッコ。
「な、ナースエンジェル……?」
「……あっ、す、すいません。何でもないです。そ、それじゃ」
アッコが徐に名を呼ぶと、ナースエンジェルは軽く動揺しながら通信を切った。
「あ……ど、どうしちゃったんだろう、りりかちゃん……?」
動揺した様子で通信を切ったナースエンジェルを不審に思いながらもアッコは通信を切り再び歩き出した。
一方、ナースエンジェルの方は。
「……ふぅ~」
「どうしたのじゃナースエンジェル、溜息なんぞ衝きおって」
徐に溜息をついたナースエンジェルに訊ねる聖龍使い。
すると彼女は思い詰めた表情で聖龍使いに述べた。
「い、いえ……ちょ、ちょっと……」「?」
思い詰めるナースエンジェルを見て聖龍使いは彼女を気にし始めた。
「……どうしたのじゃ。何か有ったのか?」
聖龍使いはナースエンジェルに訊ねてみた。すると彼女は重い口を開いた。
「……じ、実は……私の親友が一人、今落ち込んでいるので、少し彼女の事が気になってしまって……」
「そ、そうか……」
思い詰めた表情のナースエンジェルに、聖龍使いは何も言えなかった。
その頃アッコは一人、道路脇の歩道を歩いていた。
と、その時。アッコの視界に一人の少女が入った。
「あ、あれ? あの子、いったい……」
少女の目には活力が無く、まるで死んだような瞳をしていた。
少女はフラフラと心此処に有らず状態で歩いていたのだが、横断歩道を無意識のまま赤信号で渡ろうとしてしまい其処にトラックが走行してきた。
「あっ、危ない!」
アッコは咄嗟に少女に駆け寄り、少女の腕を引っ張った。
腕を掴まれ引っ張られた少女は歩道で呆然と座り込んでしまう。
「あ、あなた大丈夫?」
アッコは少女に話しかける。少女は愕然とした顔立ちでアッコの顔を見つめた。
「ハッ……あ、あ……は、はい。どうも、すいません」
少女は呆然としながらもアッコの質問に答える。
「だ、大丈夫? 何処か怪我してないかな……?」
アッコが心配していると、少女は突然アッコの顔を見ていると泣き出してしまった。
「う、ううぅ……」
「! ど、どうしたの!? 何処か痛いの?」
突然泣き出す少女を見てアッコは動揺した。すると少女は悲痛な声立ちでアッコに告げた。
「な、何でもないです。ご、ゴメンなさい……」
少女は涙を流しながらアッコに謝罪する。アッコは少女を宥めながら彼女に話しかける。
「わ、私は大丈夫よ。それよりも、貴女こそ大丈夫なの? 急に泣き出して、何か辛い事が有ったの?」
アッコは少女に訊ねる。
「……うぅ」
だが少女は悲痛な面持ちで涙を流すばかりであった。
アッコは余計に彼女の事が心配になり、気を使ってしまった。
「そ、そうだ。すぐ其処の公園で少し落ち着こう、ね」
こうしてアッコは気落ちしている少女を連れて、公園に入っていった。
[失恋した少女]
近くの公園にて、アッコは少女をベンチに座らせていた。
更にアッコは自費で公園内の自販機から缶ジュースを2本購入し、1本を少女に手渡した。
「……大丈夫、少し落ち着いた? ほら、これ飲んで」
「あ、ありがとうございます……」
少女はアッコから缶ジュースを受け取り、タブを外して中のジュースを一口ほど飲んだ。
「ど、どうかしたの? さっきはまるで生気が無かったみたいだったけど……」
アッコは心配そうに少女に訊ねた。しかし少女は口をモゾモゾさせて、中々答えようとはしない。
「……」
アッコは少女の悲しげな顔を見つめ、そして少女の隣に座り込んだ。
「も、もう少し此処で落ち着こう、ねっ」
少女に語りかけながらアッコは少女の隣でジュースを飲む。二人はそのまま、数分ほど一緒にベンチに無言で座り続けた。
そしてアッコは再度、少女に問い掛ける。
「……ど、どうしたの? 何か辛い事でも遭ったの?」
「……」
少女は相も変わらず何も話そうとはしなかった。
だが少女は唐突に口を開いてアッコにポツリと呟いた。
「……貴女って、不思議な人ね」「え?」
「私みたいに、初対面で名前も知らない人に、此処まで関わってくれるなんて……」
少女はアッコに視線を背けながら涙目で語った。
そんな少女の言葉にアッコは優しく、笑顔で答えた。
「……ん、だって、あなた凄く辛そうだったし、あのまま見過ごしていたらトラックに惹かれて大変な事になっちゃっていたじゃないの」
笑顔で話すアッコに少女は更に呟く。
「で、でも、何も此処までしなくても良いんですよ。私なんか放っておいても……」
徐に下を向く少女に、アッコは更に話した。
「何を言っているのよ。初対面だろうと顔見知りで有ろうと、元気が無い人を見過ごせないわよ。何より、放っておくなんて事、少なくとも私はできないわ」
「……」
熱弁するアッコの顔を少女は無言で見つめる。そんな少女にアッコは訊ねる。
「そ、それで、何が有ったの?」「……」
「……あ、そ、そうだ。自己紹介がまだだったわね。私は加賀美あつこって言うの。貴女のお名前は?」
アッコの問い掛けに少女は低い声で言った。
「……く、桑野みゆきです」
「み、みゆきちゃんね。初めまして。で、何が有ったの? 何でさっきはあれ程意気消沈していたの?」
アッコがみゆきに訊ねると、彼女は実に悲愴な顔付きで話した。
「あ、余り……ホントに個人的な問題なんですけど……」
みゆきは答えるのをまだ躊躇っていた。そんな彼女にアッコは拍車をかけて喋らすのを促せた。
「い、良いのよ。何でも話してみて。私に解決できるかどうかはともかく、話だけはいくらでも聞いてあげる事は出来るから」
アッコが言うと、みゆきは重い口を開いてアッコに訳を話した。
「じ、実は私……好きな人がいたんです」
みゆきの発言にアッコは驚いた。
「え! そ、そうなの……」
更に、みゆきは続けて語った。
「で、でも遂最近まで私と同じ学校のせ、先輩だったんですけど、突然居なくなってしまって……」
「そ、その人は、いったい、どうしちゃったの?」
アッコが訊ねると、みゆきは更に続けて述べた。
「ど、どうも、外国の方に留学しに行ってしまったらしくて。か、代わりに学校には入れ代わる様に、その方の妹さんがご登校してくるようになったんですけど……」
「……」
語り続けるみゆきの表情が次第に悲しみに染まっていくのを感じ取ったアッコ。
そして、みゆきはアッコに続けて話した。
「そ、それでつい先日。その妹さんに先輩はどうしたのと……今は何をしているのと問い詰めたんです。す、すると……」
「……」
「い、妹さんが言うには、その人には既に婚約者がいて、その人の下に今は滞在しているみたいなんです……」
「え!?」
悲愴かつ蒼褪めた表情で衝撃の発言を聞いたアッコは驚いた。
「そ、そうだったの。好きだった先輩さんには、既に心に決めた人がいたって訳か……。そ、それで落ち込んでいた訳なのね」
「は、はい。ううぅ……」
訳を話し終えたみゆきは再び涙を流し始めてしまった。
「わっ、わっ。な、泣かないでよ、ほらっ」
再度泣き出すみゆきを見てアッコは慌て驚く。
「そ、それで……貴女はその人と、先輩さんとはどんな関係だったの? も、もしかして婚約者が居るにも拘らず、貴女と交際していた訳じゃないわよね?」
アッコが訊ねると、みゆきは涙目で返答した。
「い、いいえ。私はただ、先輩のお姿を見ていただけで先輩の笑顔を見ているだけで満足していたんです……。実際には交際どころか、私自身、告白もしていなかったんです……」
「そ、そうなの……」
アッコは涙目で悲しむみゆきの顔を見つめながら話を聞いた。
「わ、私……実際は先輩の事が好きだったのに、ただ側で見ているしかできなくて……。
こ、告白する勇気も無いまま、ただ好きな先輩の親衛隊を結成したりして先輩にエールを送ったりしていただけで、何もできずに……」
神妙な面持ちで語り続けるみゆき。
アッコは涙を流し続けるみゆきに訊ねてみた。
「ね、ねぇ、みゆきちゃん……」
「うっ……は、はい……」
みゆきは涙目でアッコを見つめた。そんな彼女にアッコは更に続けて訊く。
「み、みゆきちゃんは……みゆきちゃん自身はどう思っているの? 好きな人には、自分じゃない別の女性と既に恋仲だったって事を、どう思っている?」
アッコの質問に、みゆきは顔を下に俯かせて、しばし考え込んだ。
そして彼女はアッコの問いに答えた。
「も、もちろん……せ、先輩が御決めになった女性(ひと)なら本気で愛していらっしゃる方なら、私が否定する事はできませんわ……。何より、私が先輩の幸せに口出しする権限なんて、無いんですもの……」
物悲しい表情を浮かべながら、みゆきはアッコに自分の考えを述べた。
アッコはそんなみゆきに悲しげな口調で告げた。
「……そうよね。みゆきちゃんの言うとおりだわ。ホントにその人の事を愛しているなら
まずはその人の幸せを第一に考えてあげないといけないわよね。偉いわ、みゆきちゃん……」
みゆきの寂しげな表情を見つめながら、アッコは言った。
だが次のみゆきの発言にアッコは驚愕した。
「で、でも、告白なんてしなくて良かったかもしれません。したって婚約者が既に居たんじゃ、フラれるのなんて目に見えていますし……」
「! な、何を言っているのよ!」「えっ?」
アッコの反応に動揺するみゆき。
そしてアッコは続けてみゆきに向かって話した。
「た、確かに、好きな人には既に好意に思っている人が居て告白してもその想いが叶わない事だって恋には有るわ! で、でもね、みゆきちゃん。その人への想いが正真正銘の、自分自身の想いで有るなら、叶う叶わない関係無い。その人にしっかり伝えるべきよ! ううん、絶対伝えるべき!!」
思わず両手を拳状にして、みゆきに熱く語るアッコに対し
みゆき本人は目をパチパチさせながら唖然としてしまっていた。
更にみゆきは、そんな熱く語るアッコに向かい呟く。
「……アッコさんって、不思議な人ですね」「え?」
みゆきの発言に驚くアッコ。更に彼女は続けてアッコに言う。
「き、今日初めて会ったって云うのに真剣に私の話を聞いてくれるし……何より他人の悩み事なのに、まるで自分の事の様に思ってくれて……私、何だか嬉しいです……」
みゆきは下を向きながらも、少し明るめの口調でアッコに告げた。
アッコは、そんなみゆきの言葉に思わず無言になる。
更にみゆきは続けてアッコに訊ねて来た。
「あ、アッコさんは……アッコさんには、素敵な人は居ないんですか?」
「え?! わ、私? わ、私はね……」
不意打ち的に訊ねられたアッコは顔を赤くさせて照れながらも、みゆきの質問に答えた。
「わ、私にはね……い、一応は、居るか、な……」
「そ、そうですか……あ、アッコさんはその人に自分の想いを……好きだって気持ちを伝えられましたか?」
アッコは照れながら続けて答えた。
「え、ええ。私の方の気持ちは、ちゃんと伝えたつもり、なんだけど……」
「けど?」
みゆきが訊くとアッコは寂しい顔立ちで発した。
「……彼ね。いつも自分の想いを私はもちろん、周りの人にも伝えてくれないの。だから私、時々何だけど本当に彼に恋人として認めれているのか、不安になっちゃうの……」
「……」
寂しげなアッコの表情を見て、今度はみゆきが無言になってしまう。
そんなみゆきにアッコは更に続けて述べる。
「私ね、彼にはちゃんと自分の想いを、自分の口から伝えて来て欲しいの。彼は、以前から自分の家族とも上手く馴染む事ができず、いつも独りぼっちだったみたいなの。周りの人はもちろん、自分の家族すら信じる事ができないでいる……。私は彼に、少しでも人と付き合っていけるように、そして人を信じてくれる人間になって欲しいってそう願っているの……」
暗く寂しいアッコの瞳を見つめながら、みゆきはアッコに告げた。
「だ、大丈夫ですよ。アッコさんみたいな綺麗でカワイイ女の子ならきっとその人とも上手くやって行けますよ!」
「! そ、そんな……! 綺麗でカワイイなんて……」
アッコは頬を林檎の様に赤くさせて照れた。
そんなアッコに、みゆきは更に言う。
「そ、それにアッコさんって、凄く思いやりも有りますし優しいですし……女の私から見ても、凄く魅力的な女性です」
「え……そ、そうかな……」
アッコは後頭部に手を当てながら、顔を赤くさせて返事する。
「そ、そうですよ! アッコさんの様な素敵なレディーが恋人だったら、その人は凄く幸せですよ! 私はそう思います!!」
「み、みゆきちゃん……」
みゆきの強気な発言に、アッコは驚愕した。
「アッコさんの様に、誰にでも優しく思いやりが有る人なら……いいえ。側に居てくれるだけでも、凄く安心できる人ですよ」
「そ、それに…………」
更にみゆきは、アッコに意味深げな発言を告げた。
[鏡の瞳]
「あ、アッコさん……貴女の瞳……」「え?」
みゆきはアッコの瞳を見つめながら彼女に告げた。
「アッコさんの瞳って……まるで、鏡みたい」
「え? か、鏡……?」
アッコが不思議がっていると、みゆきは神妙な表情で更に続けて述べた。
「は、はい……さっき、アッコさんに助けられた時、アッコさんの顔を、瞳を見つめていたらアッコさんの瞳に私の顔が映り込んだんです。その時の私の顔、ホントに暗くてジメジメとしていて見ていてホントに自分はダメになっているんだなってそう感じて、思わず泣いてしまって……」
「……」
みゆきの発言に言葉を失くすアッコ。
「アッコさんの瞳に映った自分の顔を見たら、何だか余計に辛く感じてしまって……。で、でも。自分がどんなに暗く悲しい顔をしているのかも同時に解るんです。自分の顔がどうなっているのか……自分の気持ちまでも映し出す、鏡の様な……歪みの無い綺麗な、鏡の様な瞳をアッコさんは持っているんですもの。そんな素敵で美しい瞳をしているアッコさんが側に居てくれるのなら、その男の人はもちろん周りの人だってアッコさんの目を見ているだけで、自分と向き合える気がするんです……」
「じ、自分と向き合う……!」
みゆきの発言にアッコは更に驚愕した。
《自分と向き合う》
それはアッコが修司に最も行って欲しいと願っている事だった。
「……す、スイマセン! 変な事言ってしまって……!た、ただ本当にアッコさんの瞳を見ていると鏡に映った自分を見ている様な気になってしまって……。何だか私……ショックを受けている自分の暗く悲しい表情と向き合って、少しはこんな自分をどうにかしなきゃいけないってそう、思い知らされて……」
「……」
みゆきの告発をアッコは言葉を失いながらも聞き入れた。
「……私。アッコさんの瞳を見て、アッコさんの瞳に映った自分を見て、どうにか少しでも自分を変えなきゃいけないって、そう思ったんです」
「み、みゆきちゃん……」
「私、確かに先輩に別の女性が居た事はショックで仕方ありません。正直、未だに心がズキズキ痛くて仕方が有りません。でも私が愛した先輩が認めた人なら、先輩が本気で愛した人と結ばれるのなら私自身も祝福して差し上げなければ! 別に先輩に嫌われた訳じゃない、ただ先輩には別に恋している方が居らっしゃった。ただそれだけの事ですもの! それなのに、いつまでも落ち込んではイケないんですもの! アッコさんと出逢って……アッコさんの瞳を見ていて気が付きました!!」
「み、みゆきちゃん。あなた……」
いきなり強気な口調になり、熱弁するみゆきに唖然としながらも驚くアッコ。
そして二人がを始めてから数十分後。
アッコと会話した桑野みゆきはスッキリとした顔立ちでアッコに言い放った。
「アッコさん、私の話を聞いてくれて、どうもありがとう!」
そしてアッコも笑顔でみゆきに言い返した。
「良いのよそんな。それに、みゆきちゃん自身が強い子だからスグに失恋のショックからも立ち直れたんだし私はほとんど何もしてないわよ。ただ話を聞いてあげただけだし」
謙遜する言い回しのアッコに対しみゆきは言った。
「そんな事有りませんわ。アッコさんが話を聞いてくれたからこそ、私も少しは心の靄(もや)が消えたんですし、それ以上にアッコさんに出逢えたからこそ私は自分の悲痛な想いとも正面から向き合えて、ちゃんと立ち直る事ができたんですもの。私、アッコさんと出逢って本当に良かったです」
「み、みゆきちゃん……」
凛々とした表情で言うみゆきの言葉に、アッコは心から嬉しさを感じた。
更にみゆきはアッコに言い放った。
「アッコさん。私もし、今度先輩に逢えたらちゃんと自分の口から先輩に自分の想いを伝えようと思います。そして先輩に、婚約者と幸せになって下さいって伝えます!」
「み、みゆきちゃん。……うん、そうね。先輩さんにまた逢えたらちゃんと伝えるべきね。その人への気持ち、その人の……幸せを願う想いも、ねっ」
少女二人は互いに笑顔で話し合う。
その時であった。
「あっ、居た居た」「みゆき隊長!」
二人の少女がアッコとみゆきの元に駆け寄って来た。
「ん? あの二人……」
「あ……栄子(えいこ)、美子(びいこ)」
二人に気付くアッコとみゆき。
「探しましたよ、みゆき隊長」「え、栄子……」
「良かった。余りにも意気消沈していたから事故に遭っているんじゃないかって栄子と話していたんですけど、無事で良かったです」
「び、美子……!」
二人の言動に呆然とするみゆき。そんなにみゆきにアッコは訊ねた。
「み、みゆきちゃん。貴女の知り合い?」
「は、はい。私と同じ学校の友達です……」
呆然としながらも答えるみゆき。その時、栄子と美子はアッコを見て言った。
「あら? あなた誰なの?」
「桑野隊長、この子誰なんです?」
二人の問いにみゆきは答える。
「あ、ああ。この人は加賀美あつこさん。私のお友達よ。そ、それよりもあなた達。何で此処に? それに隊長って……もう親衛隊は解散させた筈よ……」
みゆきが訊ねると栄子と美子は強く返答する。
「た、例え親衛隊が無くなっても、私達は隊長に付いていきます!」
「私達『加納望親衛隊』の存在は消えても隊長との結束までは失いたくないんです!」
「! あ、貴女達……!」
二人の言葉を聞き、みゆきは驚愕しながらも嬉しさで体に衝撃が走った。
そんなみゆきに、アッコは告げた。
「ふふ、良かったじゃないみゆきちゃん」「あ、アッコさん」
「貴女には、まだこんなにも自分を心配してくれるお友達が居るじゃない。自分を思ってくれる人が居てくれているじゃない」
「……」
「貴女は一人じゃない。自分を思ってくれる友達が側に居てくれているなら、もう大丈夫よ。友達からの思いやりが有れば失恋の傷心だってスグに癒えるわ。その内、新しい出逢いだって必ず有る筈よ。人との別れが有るなら、出逢いだってその分有るのよ。それこそ、人の一生なんだから」
「あ……アッコさん……」
笑顔で有りながら凛々しくみゆきに語るアッコの言葉を聞き、みゆきの心にアッコの言葉が深く沁み付いた。
「あ、アッコさん……」「ん?」
みゆきはアッコの顔を見つめながらアッコに言う。
「あ、アッコさんも……アッコさんの想いも、その人に通じると良いですね。その人が他人を信じられ、自分の思いを素直にアッコさんに伝えられれば良いですね」
「……」
みゆきの言葉にアッコは言葉を失くし立ち尽くす。
「……それじゃアッコさん、私の話を聞いてくれてありがとうございます。アッコさんの恋は無事に叶えられます様に」
みゆきは笑顔でアッコに告げると、そのまま栄子と美子と共に去っていった。
そして公園を出たところで、栄子が思わずみゆきに訊ねた。
「ね、ねぇ隊長。あの女の子、いったい誰なんです?」
するとみゆきは笑いながら答えた。
「誰でも良いわよ、そんなの。悲しみにくれる自分と向き合わせてくれた、単なる素晴らしい女子よ」
「ん? 自分と向き合わせてくれた??」
思わず首を傾げる美子。
(フフ、何だか素敵な人だったな、アッコさん。ホントに笑顔見ているだけで心が洗われる御方ね……アレ? でも、あの人って私とは同い年なのかしら? それとも、少しばかり年上なのかしらね……)
好意に思っていた異性には既に別の人が居り初恋が実らなかった少女。
だが少女はアッコの鏡の様な歪み無き瞳に映った自分を直視し、己と、己の心と向き合う事で失恋した悲しみを乗り越えられた。
一方、アッコの方も公園を出て自宅に直帰していた。
(あの子、みゆきちゃんって一途な子なんだなぁ。話聞いていて凄く感じられたわ。……あ、アレ? で、でも後から来た女の子……確か、加納望親衛隊、って……か、加納望って、確か……)
アッコは美子が言った加納望のフレーズに今頃気づいた。
[元気になった高飛車な少女]
翌日、私立白鳩学園…。
此処はナースエンジェルこと森谷りりかと宇崎星夜が通う学校だった。
「……あ、あの……く、桑野さん」
「ん? ああ、森谷さん」
りりかは恐る恐る、みゆきに声を掛けた。
「何ですの? 急に声何か掛けたりして来て」
みゆきは上の目線でりりかに言い返す。そんなみゆきに、りりかはオドオドしながらも訊ねた。
「あ、あの、その……だ、大丈夫かな、って。ミミナちゃんから加納先輩の事聞いて以来、落ち込んでばかりだったから……」
すると、みゆきは胸を張ってりりかに強気な口調で言い放った。
「……フンッ、森谷さん。貴女まだそんな大昔の事気にしていらっしゃるんですの?」
「……へ?」
みゆきの反応に思わず目を丸くして驚くりりか。
そんなりりかに対し、みゆきは更に続けて述べた。
「人間、昔の事ばかり引き摺っていてはイケないんですのよ。加納先輩が素敵な方と結ばれるのであれば、それを心から祝福して差し上げるのが私達『加納望親衛隊』の真の役目。先輩の御婚儀を祝福して差し上げなければ」
「え? し、親衛隊って……確か解散したんじゃ……」
りりかが驚いていると何処からともなく栄子と美子が現れてりりかに告げた。
「森谷さん、誰が解散したんですって?」
「私達『加納望親衛隊』は、例え三人だけになったとしても不滅ですのよ!」
「は、はぁ……」
驚くりりかに更にみゆきは言い放った。
「森谷さん。別に私は加納様に嫌われた訳では無いんですのよ。ただ先輩には別の方が居ただけで、私の想いが否定された訳じゃないんですもの。落ち込む必要なんて有りませんわ。人の一生は別れと出逢い、その繰り返し何ですのよ。私達はこれからも加納先輩を応援しつつ先輩の幸せを願い続ける親衛隊として活動していきますのよ。ホホホ、それでは」
みゆきは最後に高飛車な笑いをしながら栄子と美子等と共にその場を去った。
「……は、ハァ。いったい、何がどうなっているのかしら……?」
りりかは数分、呆然となりながらその場に立ち尽くしてしまう。
同じ時、ツバメ小学校では
アッコはコンパクトで自分の顔を、特に自分の瞳を見つめていた。
「……ふ~ん。みゆきちゃんの話だと、私の瞳って鏡みたいって云うけど……」
アッコは、みゆきに言われた事を気にしていた。その時
「おいアッコどうしたんだ? いつも以上に鏡と睨めっこしているけどよ」
アッコの行動を不思議がった修司が声を掛けて来た。
「あ、修司。ねぇ私の瞳ってどうなっている?」
「な、何だ? 藪から棒に」
「良いから答えてよ」
アッコの発言に動揺しながらも、修司は答えた。
「お、お前の瞳か……そ、そうだな……」
修司はアッコの瞳を数秒見つめると、スグにアッコと視線を背けてしまった。
「ちょ、ちょっと。ちゃんと私の眼を見ながら答えてよ。毎度毎度、スグに私とは視線を向かわせないんだから」
「……」
修司は苦虫を噛み潰したような苦々しい顔立ちのまま無言になる。
「ねぇ、私の眼って、瞳って修司から見たらどんな風に見えるの?」
すると修司は右手で喉を引っ掻きながら、渋々アッコに言った。
「い、いや……ふ、普通の眼をしているぞ。お前は……」
しかしアッコは、下を向き更には喉を爪で掻きながら発言した修司を見て気付いた。
「……それって、修司の本心じゃないでしょ」「えっ?」
思わず声を出して驚く修司に、アッコは続けて述べた。
「修司って、言いたくない事を言ったりするときって大抵自分の利き腕で喉を掻きながら発言するから解りやすいわよね」
「ウッ」
思わず指摘を受けて動揺してしまう修司。
「ねぇ。私の瞳って、修司から見て、どう見える?」
上目使いで修司に訊くアッコに対し、修司は視線を逸らしながらも答えた。
「ど、どうもしねえよ。普通の……普通の綺麗な目をしているよ、お前は」
これを聞いたアッコは普通の笑顔になり、修司に告げた。
「うん、答えてくれてありがとう修司」「……」
修司は顔を赤くさせながらも神妙な顔立ちになった。
だが、この時修司はアッコに伝えられない想いがあった。
(アッコ、お前の瞳かよ……正直、お前の瞳って直視できねえよ。お前の瞳は……俺にとっては、見ているだけで胸が苦しくなる。そう云った瞳をしているんだよ……)
思わず悲愴な顔付きになる修司。
彼には未だにアッコはもちろん他の仲間達にも云えない自身の苦痛が心の内にあった。