【聖龍伝説:第二章】英雄達の日々 作:セイントドラゴン・レジェンド
他のアニメキャラはもちろん、ピュアホワイトも登場します。
[chapter:1年に一度の出逢いの日]
7月初頭
この日、修司の家は少しばかり騒然となっていた。
ジュニアを始め、変身怪獣や他の聖龍隊士たちは、ある行事の準備に追われていたからであった。
「フフッ、楽しみよね」「うん。もうすぐ楽しい楽しい……」
ほたるとちびうさは楽しそうにテーブルで折り紙を使って作業を行っていた。
「もうすぐ年に一度の♪」
「うんっ、1年に1度しか逢えない二人が逢う事を許されるあの……」
イサミにさくらも無邪気に行事の準備を進めていた。
「ねぇ? 変身怪獣はどうしたの? 姿が見えないんだけど」
「色々と手伝ってほしいのに、どっか行っちゃってるわ」
まこととレイが姿の見えない変身怪獣について話しているとジュニアが答える様に二人に告げた。
「ああ、変身怪獣なら今、叔父さんや衛さんそれに青児さん達と一緒に山の方に竹を取りに行っているよ。アレには竹は欠かせないからね」
更に其処へアッコもやって来た。
「いやぁ良いわねぇ。広い広い修司の家で七夕パーティーを開けるなんて♪」
そう、この日みんなはもうじき訪れる七夕にパーティーを開こうと準備していたのだ。
と、その時。アッコが有る事に気付いた。
「あ、ねぇ、みんな。修司はどうしちゃった訳? 見かけないんだけど……」
すると、そのアッコの疑問にせつなが答えた。
「ああ、どうも今、自室にてウッズさんと大事な話が有るらしくて二人だけで話し合っているみたいですが……」
その頃、修司は自室にて机に座り、いかにも神妙な面立ちでウッズと対談していた。
「……ウッズ。いよいよだぞ」
「……はい、いよいよ何ですね」
神妙な顔つきで険しい眼つきの修司と向き合うウッズの顔も真剣な顔つきになっていた。
「……ウッズ、俺は正直どうしたら良いのか……どう運命を変えれば良いのか、まったく見当がつかないんだよ」
「し、修司様……」
険しいながらも悲痛な表情を浮かべる修司に、ウッズは悲愴な顔を見せる。
「俺は、運命を変えたい……そう願って、この世界にやって来た。だが、正直今まで、自分の力だけで仲間の運命を変えられた試しがない。……そして、今回の運命も、俺に変えられるだろうか。仲間を救う事は出来るのだろうか……」
修司が思い詰めていると、ウッズが切り出した。
「し、修司様。い、今までも聖龍隊の皆さまで協力して運命を変えて来れた様に今回も皆様に上手く事情を話して、り、りりかさんを……」
すると修司が反論した。
「いや、それは控えて置きたい。むやみやたらに物語の人物達を交わらせるのも返って危険な状況下に陥ってしまう可能性もある。何より、仲間達がこの事実を知って、どんなに傷付くか……可能な限り穏便に事を済ませたいんだよ、俺は」
「修司様……」
二人が沈鬱な空気の中会話している、その時。部屋にアッコが突然入って来た。
「ねぇ修司。ちょっと良い?」
「あっ、アッコさん」
「な、何だアッコ? いきなり入って来やがって……」
突然入って来たアッコに、ウッズも修司も軽く動揺した。
「? どうしたの二人とも? 何だか意味深な顔付きになっているけど」
「え? あ、そ、それはですね……」
アッコの突然の質問に動揺するウッズ。すると修司がすかさずアッコに訊ねた。
「お、おいアッコ。お前こそ急に何だ? 何か俺かウッズに用事か?」
するとアッコは平然と言った。
「ああ、みんなから聞いたんだけど何だかりりかちゃんや星夜君は七夕の日、此処に来ないみたいだけど。一体どうしたのかなぁって」
修司はこれに対して答えた。
「あ、ああ。実は、その日はりりかの誕生日なんだよ。だからりりか達は、その日は家に来ないでりりかの家で誕生日パーティーを開くつもりらしいんだよ」
修司が両手を自身の顔の前で組みながらアッコに云うと、アッコは笑顔を浮かべて発した。
「まぁ、そうだったんだ! それじゃあ、その日はりりかちゃん達は家で誕生会開く予定ならまた後日改めて修司の家で誕生日を祝ってあげましょうよ」
「あ、ああ……な、なぁアッコ」
「あっ、それじゃ、私はまだ七夕の準備をしているから修司も早く下に来てみんなと手伝ってよね。そんじゃっ」
修司がアッコに話しかけようとしたが、アッコはすぐさま一階に戻って行ってしまった。
「あ……あぁ……」
修司は下を向きながら沈鬱になった。
「し、修司様……」
そんな修司を心配そうに見つめるウッズ。
修司はそんなウッズに対して告げた。
「……見ただろウッズ。あんな明るいアッコやその他の皆に、この先起こる悲劇を伝えてみろ。パニックになるかもしれないし、奴等自身りりかの優しさや慈愛の精神に感極まって複雑な心境になるのは目に見えている。今回は何とか、俺とお前だけで対処して行きたいんだよ」
「修司様」
そして修司は険しい顔付きと眼つきで呟いた。
「……何とかりりかを……いいや、ナースエンジェルの死の運命を変えねば。いや、絶対に変えてみせる!」
[運命の7月7日]
そして7月7日、七夕の日。
この日、修司の家には皆で七夕パーティーが催されていた。
「ホイお前等。ウッズが作って置いてくれた七夕ゼリーだ。皆の分が有るから一人一個ずつだぞ」
変身怪獣とウェルズが、二人でみんなの分のゼリーを運んで来た。
ゼリーの下層は白いカルピスゼリーでできており上の部分はブルーハワイで色づけされた青いゼリーの中には黄色い星や赤い星の寒天が入っている見た目的にも美味しそうなゼリーだった。
「う、うわぁ……」「き、綺麗ですぅ」
ゼリーを一目見て、苺鈴に知世は感激する。
「綺麗ですね」「ホントねぇ」
「ウグ、それに、メッチャうめえぜ」
感激するソウシにイサミを尻目に、横でトシはまっしぐらにゼリーを頬張った。
「……ん? ねぇ、みんな。修司くんとウッズさんはどうしたの? それにりりかちゃんや星夜君も見えないわ」
如月ハニーが姿の見えない修司やウッズ、そしてりりかや星夜に気付いた。
それに対してアッコがハニーに答えた。
「あぁ、ハニーさん。どうもりりかちゃんは今日が誕生日らしくて今夜は自宅で星夜くんや他の友達を呼んで誕生パーティーを開くんですって。良いわよねぇ七夕の日が誕生日だなんて……」
アッコは思わず目を輝かせる。
「ふふ、乙女ねぇアッコちゃん」
目を輝かせるアッコを見て、まことは微笑んだ。
「アレ? それじゃあ修司くんとウッズさんは何処に行っちゃったの?」
「ああ、何か解らんがウッズと修司は急にどっかに行っちまったぜ。場所を訊ねても何にも答えずによ」
うさぎの発言に答える様に変身怪獣が言った。
「修司ったら。一体何処に行っちゃったのかしら……」
皆の集いに居なくなっている修司に対して顔をムスッとさせてしまうアッコ。
一方、その頃の修司とウッズは車にて森谷家の近くまで来ていた。
「……修司様。何か策とか有るんですか?」
修司に訊ねてみるウッズに対して、修司は答えた。
「い、いや……。正直、どうしたら良いのか、俺にも解らねえんだ。だ、だけど何とかしねえと」
「は、はい……ところで、何で聖龍剣を持って来ているんですか?」
「ん? ああ、念のために……な」
二人が会話している、その時であった。修司は遠くの方で歩き動く二つの影を見た。
「あっ、い、今影が二つ見えた様な……行ってみるぞウッズ!」
「えっ? は、はい……」
二人は二つの影を追いかけて行った。
修司が見た二つの影。それは加納望と桑野みゆきであった。
「おんや? あの二人……どうしたんだ?」
「さ、さぁ……?」
草むらの中から二人の様子を窺う修司とウッズ。
そして桑野みゆきが神妙な面持ちで加納と会話し始めた。
「あ、あの……か、加納先輩!」
「……何だい、桑野さん」
「あ、あの……い、妹さんから、ミミナちゃんから聞きました。先輩には将来を約束し合った婚約者(フィアンセ)が居るんですってね」
「ああ、その通りだよ」
「あ、あの……い、今まで私、先輩に婚約者が居るなんて知らなかったとはいえ色々としつこい事ばかりしてしまって……本当にスイマセンでした!」
「桑野さん」
突然頭を下げたみゆきに驚く加納。そして彼女は更に加納に率直な思いを伝えた。
「そ、そして加納先輩。どうか、その素敵な人と……どうか幸せになってください」
みゆきはそう言いきると、満面の笑みを加納に向けた。
「桑野さん……ああ、約束するよ」
加納も笑顔でみゆきに言い返した。
すると、みゆきは頬を少しばかり赤くさせながら加納に訊いた。
「と、ところで先輩。先輩の婚約者って、そ、その……綺麗、ですか……」
すると加納は笑顔で返した。
「ん? あぁ、とても素敵な女性だよ。優しさや慈愛に満ちた……美しい人だ」
「そ、そうですか……良かった。先輩の婚約者がとても素敵な方で」
加納の言葉を聞き、みゆきは笑顔で喜んだ。更に
「……先輩」「……なんだい」
「その……幸せな人生を私は願っております。先輩の幸せが、私の願いであり、幸せなんです!」
「桑野さん……」
目を輝かせて強い口調で言い切るみゆきの言葉に思わず感極まる加納であった。
「……あ、そ、それじゃ私は一足先に戻っていますわ。先輩も早く森谷さんの誕生会に来ないと、星夜達にパーティの御馳走全部食べられちゃいますわよ」
「あ、ああ」
そう言い残し、桑野みゆきは一足先に森谷家へと戻っていった。
「……」
神妙な面持ちでみゆきを見送る加納。其処に
「おい、加納」
「! し、修司くん! それに、ウッズさんも……!」
突然背後から修司が声を掛けて来たのであった。彼の横にはウッズも立っていた。
「おい加納。お前、俺に言っておかなきゃならない事が有るんじゃねえのか」
修司は鋭い眼つきで加納を睨みながら、彼に告げた。
「な、何の事だい」
加納は修司の眼つきに怯み、冷や汗を掻きながらも答えた。
「隠してんじゃねえよ。もう俺は知っているんだぞ。りりかの事を……よ」
修司のこの発言に一瞬ビクッと動揺する加納。
「な、何の事なんだい。訳が分からないよ」
「しらばっくれてんじゃねえよ!!」
修司の怒鳴り声に驚愕する加納。そんな彼に、修司は言い寄った。
「……俺は分かってんだぞ。りりかが……りりかの命の中に、お前達が探し求めていた【命の花】が有るって事をよ。そしてりりかは命の花を復活させるために、自らの命を断とうとしている事実を……な!」
「!!」「し、修司様!」
険しい顔付きで睨みつけながら事実を言った修司に驚愕する加納に彼に対して単刀直入に発言する修司の言動に驚くウッズ。
そんな最中。
[武人の意見]
「……はぁ、はぁ。お、おーいっ加納ー」
「カノン! り、りりかはどうした。何処に行ったんだ彼女は!」
星夜とデューイが加納の元に駆けつけて来た。二人の傍らには神妙な顔立ちのミミナの姿も確認できた。
「せ、星夜君。それにデューイに、ミミナまで……」
「…………」
駆け付けて来た3人を見て驚愕する加納と思わず無言になってしまう修司。
そして星夜とデューイは加納に問い詰めた。
「お、おい加納! り、りりかの姿が見えないんだ! 何処に行ったか答えろ!!」
「カノン! ナースエンジェルは、森谷りりかは今何処に居るんだ。答えろ!」
二人に問い詰められる加納に、ミミナが暗い顔立ちで言った。
「あ、あの……か、カノン様。もう、正直に話した方が……ミミナ、もう黙っているなんて、耐えられない……!」
悲痛な表情を浮かべるミミナに、修司は敢えて訊ねた。
「おいミミナ」「……え?」
「お前、知っている……いや、知っていたんだろ? それなら何で俺に一言も言わなかったんだ?」
「え……え……」
修司の発言に動揺してしまうミミナに、修司は更に言った。
「お前は、変身怪獣程じゃねえけどテレパス能力を持っている。しかも人の心や思想ではなくその人間の命の中までも覗き見る事のできる特殊なテレパス能力を……そうだったな」
「あ、はい……」
目を丸くするミミナ。
「そして、お前は前々から気付いていた。りりかの、彼女の命の中に探し求めていた命の花が封印されているのを!」
「!」
「ほ、ホントなのかっ? ミミナ!」
「み、ミミナ! 修司の言っている事は……ほ、ホントなのかい?」
修司の言葉に驚愕するミミナ。そして愕然としてしまう星夜にデューイ。
そして修司は突如、加納の胸ぐらを掴み彼に言い寄る。
「おい、加納! 確かお前にはテレポート能力が有った筈だな。今すぐ俺をりりかの元にテレポートさせるんだ。早く!」
睨みを利かせながら言い寄る修司に加納は訊ねた。
「き、君は……君は、りりか君の所に行って、ど、どうする気なんだ?」
すると修司は加納を睨みながら平然と答えた。
「決まってんだろ。りりかが自分の命を絶つ前に、アイツを止めるんだよ!」
この発言に、星夜とデューイは驚いた。
「な、なに! い、今何て……!」
「お、おい修司。り、りりかが命を絶つって、い、いったい……」
二人が動揺している最中、修司は更に加納に言い寄った。
「おい、加納! さっさとしねえか! ……また俺に斬られたいか」
修司は目を鋭くさせて加納を睨みつけた。
そんな修司に脅えながら加納は言い返した。
「し、修司くん。これは変えられない運命(さだめ)なんだよ。り、りりか君の命の花を解放させなければダークジョーカーは生まれ続け黒のワクチンによる悲劇も食い止められないんだ。これは……誰にも止められない事なんだよ……!」
加納の発言に、修司は更に激しい権幕で怒鳴り散らした。
「フザケテんじぇねえ! 何でりりかが死ななきゃならねえんだよ! 俺は認めねえぞそんなの!!」
今にも火が噴き出しそうなほど顔を真っ赤にしながら修司は加納に怒鳴り続ける。
「だ、だが、これがりりか君の……ナースエンジェルの使命で有るんだよ。命の花を復活させて、多くの命を救うのが白衣の天女・ナースエンジェルの使命なんだ」
「フザケテンじゃねえぞ! お前はりりかがどうなっても良いと言うのか!! それで良かったと本気で思えるのかよ!!!」
己の胸ぐらを掴みながら怒鳴って来る修司に、加納は怯えながらも言い続ける。
「こ、これは……りりか君自身が決めた事でも有るんだ。彼女は、み、みんなを、世界中の人を護るために、自ら犠牲に……」
「フザケルナぁ!!」『!!』
天をも貫くほどの修司の怒声に、その場に居た皆が驚いた。
そして、修司は険しい顔付きで加納を睨みつけながら言い放った。
「……確かに。命の花が無ければ黒のワクチンもこの世から消滅しない。ダークジョーカーのバケモノ共も居なくなりはしない。それは分かるぞ。……だがな! だからって森谷りりかが死ななければいけない理由には無らねえぞ!!」
「…………」
「天秤にかけて重い方を、りりかは選んだ。この星の何十億と言う命と自分の命。二つを天秤にかけ、アイツは自身を犠牲にして多くの俺たちの命を護るために自らの命を断とうとしている。……そんな慈愛に満ちた奴の行動なんて、俺には心底どうでも良いんだよ」
「! な、何を言うんだ……!?」
驚き動揺する加納に修司は更に言い放った。
「俺はな加納! 何十億の命より、目の前のたった一人の命を護れない様じゃ気に入らねえんだよ!! 何より仲間が自分の命を断とうとしているなんて総長として俺は認められねえんだよ!!」
「だ、だが……」
言い返そうとする加納だっだが。
「自分の命を犠牲にして他人を救うなんて甘ったれた美談は森谷りりかには似合う訳がねえだろが! 女が自らの命を捨てる等、そんな行為認められる訳がねえだろぅ!! 例え命の花が無くっても地球が危険な時になったら俺たち聖龍隊が総力を上げてこの星を護る! バケモノ共が現れた時だって、この俺が代わりに戦い抜いてやる! ナースエンジェルの使命とか運命とか知った事か! あんなに……あんなに周りから好かれている森谷りりかが死ぬ理由なんて……この世の何処にも無えんだよ!!!」
最早、殺気に満ちて来た修司の目を見て加納は何も言い返す事ができなかった。
「死ぬ必要のねえ人間が死ぬなど、この俺は認めん! 何よりりりかは、いやナースエンジェルは我が聖龍隊の一員だ! 勝手に死ぬ事など、総長の俺が許さん!!」
『…………』
修司の言動に加納だけでなく、周りの者達までも驚き無言になる。
「仲間が……俺の認めた仲間が勝手に死ぬのは……絶対に認められねえ!!」
険しい顔付き・鋭い眼光・そして天をも裂く様な怒声を上げながら修司は加納に言い続けた。
「仲間の一人も護れねえようじゃ……聖龍総長は名乗れねえんだよ!!」
[聖女の思い]
一方その頃。
修司の家に集まっていた聖龍隊の面々は自分達だけで七夕パーティを済ませパーティが終わった後それぞれ家路に着いていた。
そして加賀美あつこも一人、夜道を歩いて自宅に帰っている最中であった。
「……ふぅ~、みんなとのパーティも楽しかったけど。それにしても修司はいったい何処に行っちゃったのかしら。折角今日のパーティーに備えてママと七夕ケーキ焼いて持って来たっていうのに。ブツブツ……」
アッコが愚痴を零しながら夜道を歩いていると、突如周りの景色が変わった。
「あ、アレッ? ど、どうしたのかしら……? 此処は、いったい……」
見回してみると、其処は何処かの森の中。
アッコは状況を呑み込めない間々、森の中を進んで行った。
進んで行くと、森を抜けた先は広大な野原。
「こ、此処は……いったい何処なの?」
アッコが動揺している最中、アッコは野原の真ん中で跪いている一人の少女に気付いた。
「ん? こんな所に人が……あれ? あの子……り、りりかちゃん?」
野原で跪いているりりかを確認してアッコは驚いた。
そしてりりかの方もアッコの存在に気付いた。
「あ、アッコさん……」
りりかはアッコの顔を見つめた。
「り、りりかちゃん。あなた、何故こんな所に一人で?」
「あ、アッコさんこそ。どうやって此処まで……こ、此処は天峰山だって言うのに」
「え? て、天峰山(てんぽうざん)!? た、確か岩手に有る山じゃないの? な、何で此処まで私来ちゃっている訳……ってゆーか、何でりりかちゃんこそ此処に居る訳??」
訳が分からず動揺しまくるアッコを宥めながら、りりかが語り出した。
自分の命の中に命の花が封印されている事を。
そして命の花を解放し、開花させる為には自らの命を絶たなければ成らない事を。りりかはアッコに伝えた。
これにはさすがのアッコも驚き、言葉を失った。
前々からりりかや星夜、デューイやミミナから命の花がどの様なものか知っていたからだ。
なので命の花が無ければ、この星やクイーン・アースがどの様な顛末を迎えるのか解っていた。
「そ、そんな……り、りりかちゃんの中に命の花が……」
アッコの顔からは次第に血の気が引いていった。
「……アッコさん。今までありがとう。私、みんなと過した日々は、とても楽しかったです。……私、みんなと出会えて、本当に幸せでした」
「! り、りりかちゃん……!」
潤んだ瞳で話すりりかの言動を聞いて、アッコは更に驚愕した。
「わ、私が居なくなっても、どうか、お元気で……」
この時のりりかは少しばかり涙目になっていた。
「り、りりかちゃん……!」
「安心して、アッコさん。私が居なくなるだけですから……私が居なくなる事で世界がそしてクイーン・アースは今まで通り存在する事ができるんです。何より私……みんなが、聖龍隊のみんなや周りの人達が本当に心の底から大好きなんです。皆が今まで通り、幸せに生きて行く為には私自身が自ら命の花を解放させて死ぬ以外、選択肢は無いんです」
「そ、そんな……!」
りりかの切実な想いを聞き、アッコは悲観した。
そして、りりかは自分の胸に両手を添えてアッコに言った。
「アッコさん、聖龍隊のみんなと、どうか仲良く……そして修司さんと、どうか末永く。修司さん、中々本音を言えない人だけど心の中ではアッコさんの事、本気で慕っていますから」
そして突如、りりかの胸の中心が光り出した。
「え!? こ、これは……」
驚くアッコにりりかは告げた。
「これが、命の花の輝きです。そして、この光を解放すれば命の花は再び地上に開花し、そして私自身の命も消滅します」
「! そんな! ま、待ってりりかちゃん」
「……さようなら、アッコさん」
りりかが呟くと光は一層激しく輝きだしだ。
「や、止めてーーっ!」
アッコは叫ぶと同時に思わずりりかの左頬を平手打ちしてしまった。
平手打ちをされたりりかは呆然となり、同時に胸の光も消えた。
「あ、アッコさん……」
呆然となりながらもりりかはアッコを見つめた。
「だ、ダメよ! そんな……そんな、自分の命を簡単に消すなんて事、言わないでよ!!」
「アッコさん……」
アッコの悲痛な叫びに、りりかは何も言い返せなかった。
そんな彼女にアッコは更に言い放った。
「た、確かに命の花が無ければクイーン・アースも地球もそれに多くの命が助からないのは知っているわ! だ、だけど、りりかちゃんが死んじゃったら、星夜君達はどうなるの? りりかちゃんのお友達は、家族は、どんな思いをするか、分かっているの!?」
「……」
遂には涙を流しながらりりかに語るアッコを目の当りにして、りりか本人も次第に目に涙を溜めて行った。
「りりかちゃん。貴女は確かに他人を思いやる優しい子よ。それ故に、自分を犠牲にしてまでも誰かを護りたいと願ってしまうのは分かる。……だけどねりりかちゃん! 貴女が世界中の命を大事に思う様に私だって、私や修司や聖龍隊のみんな、そして星夜くんやデューイだって貴女を大事に思っているのよ!! それぐらい貴女だって分かっているでしょ!!」
「あ……あぁ」
「世界を、誰かを大事に思う前に、自分自身も大事にして! お願いよ、りりかちゃん!!」
アッコがりりかに向かって泣き叫んだ、その瞬間。
突如、アッコのポケットが光り出した。
「え?」「な、なに!?」
アッコがポケットを弄ると中に入っていたセイント・コンパクトが光り輝いていた。
「こ、コンパクトが……!」
「な、何故コンパクトが急に……! 呪文も何も言ってないのに……!!」
二人が驚いているとコンパクトは更に光を放ち二人はもちろん辺りを光が呑み込んで行った。
[命と祈り]
そして光が収まると、二人は腕で自分の目を覆う様に眩しさから避けていた。
「い、今のは、いったい……」
「な、何だったの? 今の光は……」
二人が腕を下ろし、そっと目を開いて辺りを見回してみると、辺りは一変していた。
「な、何これ!?」
アッコは辺りに広がる光景に驚愕した。
「そ、そんな! これは……!」
りりかは思わず自分の目を疑った。
二人の居た野原に無数の、今まで見た事も無い様な花が咲き乱れていた。
「き、きれい……で、でも、この花って、一体何なの?」
目の前に咲き乱れる花を見て感動しながらも不思議に思うアッコ。
そしてりりかは花を見て驚きながら言い放った。
「こ、これは……命の花!」「え! こ、これが……!」
突然辺りに咲き乱れる無数の命の花を目の当りにして、二人は呆然としながらも驚愕した。
そしてアッコはふと気付く。命の花が目の前に無数に咲き乱れているのに目の前のりりかはピンピンしていた。
アッコは驚き、思わず彼女の両肩を掴みながら彼女に言い寄った。
「ね、ねぇりりかちゃん! あなた大丈夫!? い、命の花がいっぱい咲いちゃっているけど貴女は大丈夫な訳!? ねぇ大丈夫なの!? ねぇりりかちゃん!!」
「だ、大丈夫です! 大丈夫ですから、アッコさん落ち着いて!」
両肩を掴みながら、りりかを思いっきり揺らしまくるアッコ。
りりかは目を回しながらも混乱するアッコを宥めてあげた。
そしてアッコが落ち着きを取り戻すと、二人は改めて周りを見渡した。
確かに周りに咲き乱れる花は間違いなく森谷りりかの命に封印されていた命の花。
しかし当の本人のりりかは存命で有り何故命の花が開花しているのか二人は理解できなかった。
「な、何で私、生きているの? 命の花は開花していると言うのに……」
「さ、さぁ……」
呆然と立ち尽くす二人であった。
と、その時。再びアッコの手に持っていたセイント・コンパクトが光り出した。
「え?」「こ、今度は何?」
するとコンパクトの光の中から一人の少女が姿を現した。
「えっ、こ、これは……」「う、ウソっ?」
アッコとりりかは驚いた。
目の前に現れた少女がナースエンジェルだったからだ。しかもその顔は丸っきり森谷りりかと酷似していた。
「あ、あなたは……」「貴女は、貴女はいったい誰?」
りりかとアッコは思わず目の前に現れた少女に訊ねた。
すると少女は二人の問いに穏やかな笑みを浮かべながら答えた。
「……私の名は、ホワイト。【ナースエンジェルピュアホワイト】」
「な、ナースエンジェル…」「ピュア、ホワイト……」
目の前に現れたピュアホワイトに驚きを隠せないアッコとりりか。驚く二人は徐にホワイトに訊ねてみた。
「あ、あの……ピュアホワイト」
「貴女は、一体誰なんですか?」
するとホワイトは穏やかな笑みを見せながら二人に答えた。
「私は、かつてこの星でダークジョーカーと戦いそして自らの命に【命の花】を封印した最初のナースエンジェルです。そして、森谷りりかの前世の魂でも有ります」
「えっ?」
「あ、貴女は、りりかちゃんの前世!? そ、そして最初の、初代のナースエンジェル……!」
ホワイトの発言に、更に驚く二人。
そんな二人に対してホワイトは更に続けて述べた。
「私は、アッコちゃんの持っているセイント・コンパクト。そしてアッコちゃんの強い思いや祈りに引き寄せられて、此処に来ました」
「え? わ、私の、祈り……」
「そうです。アッコちゃん、貴女が所持しているコンパクトの【思いを増幅させる力】と貴女自身の「りりかちゃんを死なせたくない」という祈りが共鳴した事により森谷りりかの命の中から命の花だけが解放されりりかちゃんは今でも存命できているのです」
このホワイトの発言にアッコは歓喜した。
「! そ、それじゃ……りりかちゃんは、りりかちゃんは生きていられるのですね……死ななくても良いんですね。そうなんですよね、ホワイト!」
「……えぇ。貴女の一途な想いが文字通りの奇跡を起こしたんです。この世界に存在し続ける命全てを思う様に森谷りりかの命も大事に思っている貴女だからこそ起こせた奇跡なのよ」
穏やかな表情でアッコに告げるホワイト。
そしてホワイトの言葉を聞き、アッコは嬉しさの余りその場に跪き泣きだしてしまった。
「よ、良かった……りりかちゃんは、りりかちゃんは、死ななくて良いのね。良かったぁ……」
アッコはボロボロと涙を流しながら泣き崩れた。
「あ、アッコさん……」
りりか本人も泣き崩れるアッコを見て、つられて涙を流し始めた。
「りりかちゃん……!」
突然アッコはりりかに抱き付いた。
「! あ、アッコさん……」
「良かった……本当に良かったわ……ウウゥ……」
アッコはりりかを力強く抱き締めると、再び大粒の涙を流し出した。
「アッコさん」
アッコの優しい温もりを感じ、りりかは心の底から歓喜した。
そんな二人を優しい瞳で見つめながらピュアホワイトは二人に告げた。
「己を犠牲にしてまでも他人を救いたい命。そんな命も他の命同様に救いたいと云う祈り。あなた達の慈愛に満ちた心は、これからも多くの命や思いを救って行くことでしょう。……そして、ゆくゆくはこの世界全てを護っていく力強い心に成長していく事を、私は願っています」
ホワイトは二人にそう告げ終わると、次第に消えて行った。
「ほ、ホワイトさん!」
「ぴ、ピュアホワイト……!」
アッコとりりかが消えて行くホワイトに声を掛けた。
すると最後にホワイトは言い残した。
「私は信じています。あなた達や聖龍隊の人達の思いや絆が、この世界を救いそして、あの『自分には破壊や殺戮しか才が無い』と思い込んでいる少年の心を必ず変えられると……」
そしてナースエンジェルピュアホワイトは二人の前から姿を消した。
「……ピュアホワイト」
りりかは消えたホワイトを見つめたまま神妙な顔立ちをしていた。
「……ありがとうございます。ピュアホワイト。この地球で、最初に戦った……白衣の天女……」
アッコは消えてしまったホワイトに対し、慈愛の精神で感謝の言葉を呟いた。
そして穏やかな夜風に吹かれ、辺り一面に咲き誇る命の花は靡(なび)いていた。
[悲痛なる思い]
アッコとりりかの目の前からピュアホワイトが姿を消したその頃。森谷家近くでは未だに加納望と小田原修司が言い争っていた。
しかも言い争いには星夜とデューイも加わっていた。
「おい加納! どう言う事なんだ……! りりかが……りりかの奴が死んじまうなんて……!」
「答えろカノン! りりかが、森谷りりかが死ぬってどういう事だ!」
目に薄ら涙を浮かべながら加納に言い詰める星夜とデューイ。
そして加納は修司に胸ぐらを掴まれながら自分に言い寄る3人に反論していた。
「み、みんなの気持ちは僕だって凄く分かる! 君たち同様、僕だって辛いんだ! だ、だけどクイーン・アースと地球の全ての命を救うにはどうしても命の花が必要なんだよ。その為には……残念だけど、りりか君が命を絶たなければ、どうしようも……」
加納の発言に星夜が反論した。
「フザケルナよ! いったいりりかが何をしたって言うんだ。りりかは、ナースエンジェルは今まで、たくさんの命を、人を救って来たんだぞ! それなのに死んじまうなんて!!」
「……」
黙り込む加納に、今度は修司が言い寄った。
「加納……お前はダークジョーカーに居た時と、さして変わりないな」
「!」「え!?」
修司の発言に驚き動揺する加納とミミナ。
更に修司は加納に言い寄る。
「お前の愛するヘレナを救う為……クイーン・アースの命を救う為……そして地球の命を救う為にりりかを、森谷りりかを見殺しにする気なのかよ……結局、自分達が良ければ、助かればそれで良いと思えるなんて……あのブロスや俺たちが倒して来た悪党共と、大して変わらねえじゃねえかよ!!」
「!! ……」
眉間にしわを寄せて険しい顔で怒鳴る修司を眼前に、加納は目を丸くして驚いた。
「……りりかは、俺と違って家族からも、周りの友からも愛されて来た存在なんだぞ! そんなりりかの犠牲の上に立ってまで、俺は生きていたくねえんだ!! 他人の犠牲の上に立ってのうのうと生きようとする悪党には俺は成り下がりたくねえんだよ!」
修司に続き、星夜も加納に言い寄った。
「加納……俺だって、修司さんと同じ気持ちだ。りりかの居ない世界なんて、俺にとっては無価値だ! 世界よりも、命の花よりも、俺にとってはりりかの方が一番大事だ!」
これを聞き加納はすぐさま言い返した。
「何を言うんだ! りりか君が護った世界だぞ、彼女が命を犠牲にしてまでも護った世界が価値がないと」
「ウッセエ! そんなの関係ねえよ! スグにりりかの所に俺たちを連れていけ……。でなければ、今此処でお前をブッ倒してまでも無理やりでもお前に連れて行かせるぞ……!!」
そして修司は加納の胸ぐらを掴みながら睨みつけた。
「加納……正直に言うぞ。お前やりりかの『他人を救う為に自らの命を犠牲にする』って考えは……完全な『エゴ』だ! 確かに、この世全ての人が、万物の命全てが助かるなんてムシの良い話はねえよ! それぐらい俺にだって理解できる! だけどな、命を護る為に己の命を捨て去るなんて都合の良い与太話は、俺は気に入らねえよ! 何より、命の花が復活してダークジョーカーが絶えたとしても 結局はその花を悪用する敵が私利私欲に溺れている人間に変わるだけで何の意味も持たねえんだよ! そして俺は、そんな自己犠牲を犯すお前やりりかを、絶対に許さねえ!! 自分の命を大事に思わねえ奴が他人の命を思いやる資格もねえんだよ!」
「…………」
「己の命をも大事にしない女が白衣の天女を名乗っていたなんて茶番は、片腹痛いわぁ!!」
修司は叫び終わると同時に腰に備え付けていた聖龍剣を手に取り、加納の首横に切っ先を向けた。
「か、カノン様!」「修司様!」
側で見ていたミミナとウッズが声を上げる。
「おい加納。痛い目みたくなけりゃ、さっさと俺たちをりりかの所に連れていけ! 森谷りりかは確実に、この世界には必要な存在なんだよ!!」
殺気に満ちた瞳で修司は加納を睨みつけながら言い放った。
その時であった。加納は一瞬の隙を付いて己の右手で修司の頭を掴んだ。
「!?」突然自分の頭を掴まれ、驚く修司。
「か、カノン様?」「な、何する気だ、加納!」
ミミナと星夜が驚いている最中、加納の右手が光り出した。
(す、済まない修司くん。でも……僕には、僕がみんなにしてあげられる事は、これだけなんだ…!)
加納は自身の〔記憶を消す能力〕でまずは修司の森谷りりかに関する記憶を消そうと試みた。
だが「……何の真似だ、加納」「え」
修司は自分の頭を掴んでいた加納の右手首を左手で握り掴み、そして強靱な握力で加納の右手首を痛めつけた。
「ぐぅっ…!」
激痛の余り苦悶の表情をして声を出す加納。
「か、カノン様!」「し、修司!」
苦痛に悶える加納を見て驚くミミナとデューイ。
そして修司は悶える加納の首根っこを左手で掴むと、力の限り彼の首を握り締めた。
「ぐうぅぅ……!」
首を握り締められた加納は息苦しさと言うよりも物凄い握力で握られた際の激痛でもがき苦しんだ。
そして修司は加納の首を握ったまま右手に持っていた聖龍剣の切っ先を再び加納の首に向けた。
「もう一度言うゾ。いい加減、俺たちをりりかの所に連れていけ。さもなくば、お前の喉仏をこのまま握りつぶしてやる事も可能なのだ。……分かったか、加納!!」
この時の修司の顔は、最初加納が見た修司の素顔。そう河原で見た修司の異形の素顔に異様なまでに酷似していた。
「や、止めてください、修司さん」「修司様、それ以上は……!」
ミミナとウッズが修司を制止しようと声を掛けるが、修司は耳にしない。
この時加納は不思議に思っていた。
「ぐ……(な、何故だ。何故、彼に能力が効かなかったんだ……!)」
そんな中、修司は加納に対して異様な顔付きで睨みつけながら言い放った。
「……護らねばならん。護り抜かねばならん……仲間の命を、未来を……そして思いを! 俺は護らねばナランノダ!! 加納望よ、主が本当に森谷りりかの命を失くしてまで生きて行こうと言うならば拙者がお前の喉仏を握り潰し、永遠に声の出ぬ外道に成り下がらせてしんぜようカ? 愛する者と、そして他の者に対して己の本音を苦しみを伝えられぬ哀れな存在にしてしんぜようカ!」
修司は更に握っている左手に力を込めた。
「ぐウウゥ……!!」
次第に顔から血の気が引いていく加納。
これを見た周りの者たちが修司を制止しようとした。
「や、止めてください修司さん! カノン様が死んじゃいます!」
涙目で訴えるミミナ。
「し、修司様! いくら何でもやりすぎです!」
修司の行動を焦りながらも止めようとするウッズ。
「し、修司止めろ! カノンが本当に死んでしまう!」
デューイも修司の体を掴み、彼の行動を制止しようとした。
「修司さん、加納が死んじまったらりりかの所に行けねえだろう!」
星夜も修司の行動を制止しようとした。
そんな状況下の中、修司は加納に告げた。
「……加納、お前はホントに大バカ野郎だ。自分だけで森谷りりかへの死に対する十字架を背負うとしやがるとは……。婚約者のヘレナが哀れ過ぎて泣けてくるぜ。それ以前に森谷りりかは死なせはしない、死ぬ必要は無い! 愛を、信頼を知っている者が……感じられる者が死ぬなど、俺は認めたくは無え!!」
そんな最中だった。
[帰還した聖女と天女]
「修司止めて!」
突然、修司を制止する声が皆の耳に聞こえて来た。
「こ、この声は……」
ウッズや皆が声のした方向に目を向けると其処には何故かミラーガールに変身したアッコが立っていた。
「あ、アッコ……!」
修司は彼女を確認すると、驚いた拍子に加納の首を掴んでいた左手を放した。
「ウグッ……ぷはっ。ハァ、ハァ……」
首を放された加納は苦しそうに呼吸を始めた。
そして皆がミラーガールに目を奪われていると、彼女の横から森谷りりかが姿を現した。
「! り、りりか!」「りりか!」
りりかの姿を確認した星夜とデューイは歓喜した。
「り、りりか!」「りりかさん…!」
同じくミミナとウッズも、りりかの生きている姿を見て喜んだ。
「え? な、何故彼女が…りりか君は、生きているんだ?」
目の前のりりかに驚き動揺する加納。
「!! り、りりか……!」
そして修司は目の前の状況を呑み込めず、呆然と立ち尽くした。
「り……りりか!」
星夜は思わずりりかに駆け寄り彼女を抱きしめた。
「せ、星夜…!?」
思わず驚いてしまうりりか。
星夜は彼女に抱き付きながら耳元で呟いた。
「良かった……! 本当に良かった……。俺……俺……りりかが居なくなったら……居なくなっちまったら……死ぬよりも辛えんだよ!!」
星夜は感極まり、思わず涙を流し出してしまった。
「せ、星夜……!」
りりかは星夜の思いを感じ取った。
そして同時に彼の自分に対する気持ちにも、ようやく悟った。
二人の少女と少年は互いの思いを組み取るかのように抱きしめ合った。
「……良かったわ。りりかちゃんが無事で……星夜君もあんなに泣いてまで……グスッ」
抱き合う二人を見て思わず星夜につられて泣いてしまうミラーガール。
そんな彼女に加納が訊ねて来た。
「み、ミラーガール……」
「あ、加納さん」
「こ、これは、いったい……どういう事なんだい? りりか君が生きているって事は……まさか、命の花は……」
「ああ、それなら大丈夫です! 実は……」
ミラーガールは天峰山での出来事を皆に伝えた。
「……と云う事なんです。その後、私はミラーガールに変身してミラー・シールドからミラー・ゲートを出して此処まで無事に帰って来られたんです。
「そ、そうだったのか……」
先ほどの出来事を知り驚愕する加納。
因みにミラーガールのミラー・シールドとは彼女が変身している時に左手首に装着しているリストバンドが変化したものである。
このリストバンドはミラーガール変身時のセイント・コンパクトで戦闘時になると五芒星の紋章が施された鏡の盾に変化する。
そして盾から様々な技を使ったり、時には攻撃力が低いものの短剣も出てくる。
そしてミラー・ゲートとは巨大な鏡の出入り口を空中に作り特定の場所に移動する事ができる移動技である。
今回は岩手の天峰山からアニメタウンまで無事に移動できたのであった。
おそらくアニメタウンは彼女にとっては見知っている場所だった為に成功できたのかもしれない。
そしてその場に居た面々がりりかの無事を喜んでいた、その時。
「あっ、居た居た。おーーい、りりかちゃん」
「りりかちゃーーん、いきなり居なくなったと思ったら此処に居たんだ」
「あっ、み、みんな……」
やって来たのは、りりかや星夜の同級生である女子達だった。
「あっ、ヤベえ! おいミラーガール!」
修司は突然ミラーガールを両手で抱え上げた。
「えっ? し、修司!?」
驚くミラーガールに修司は告げた。
「こんな場所に、こんな時にスーパーヒロインが居たんじゃ余計に話がこんがらがる! お前はこん中で変身を解除してろっ」
「う、うわっ」
修司は茂みの中にミラーガールを放り込む。
「何だ此処に居たの……ってアレ? どうしたんですの? 星夜とりりかちゃんが抱き合っている……」
目を丸くして驚いた女子は二人の親友である風見安奈(かざみあんな)。
「あ、あの……これは……」
「……」
顔を赤くさせながら何とか言葉を出そうとするりりかと星夜。
二人に向かって、今度は水原花林(みずはらかりん)が調子良く二人に喋り出した。
「あっ、そっかぁ! 星夜、やっとりりかに告白できたのね。あ~あ、やっと結ばれましたかお二人さん。長い道のりだったわねぇ」
「!」「み、水原お前!」
目を細めながら二人をからかう様に言い放つ花林の言葉に驚くりりかと動揺しまくる星夜であった。
更に二人は、すぐ側に立ち尽くしていた修司にも気が付いた。
「ん? あ、貴方は、確か……!」
「ああ! 町の市長さんの小田原修司さん! な、何で此処に!? し、しかも何故か腰に刀なんてぶら下げているし……」
花林に指摘され、思わず苦し紛れの言い訳を修司は言った。
「あ、ああ……こ、これはだね……じ、実は自分は時代劇に凝っていてね。これは良くできた借り物のレプリカなんだよ。今日はこの辺りで時代劇の稽古をしていたらこの二人の告白のシーンに出くわしてね。つい見に来ちゃったんだ」
「し、修司さん!」「なんて事をっっ!」
皆に聞こえないような小さな声で叫ぶりりかと星夜。
更にその時、茂みの中からアッコが体中葉っぱだらけにして出て来た。
「もぅ~、修司ったら、何も投げ込む事無いじゃないのよ……!」
アッコが茂みから出て来たのと同時に、今度は皆の所に先ほど加納に自分の思いを告白した桑野みゆきまでもがやって来た。
「あっ、先ぱーーい、まだ此処に居らしたんですか。みんな先輩の事を待っていたんですのよ……あ、アレ? どうしたんですの? この大所帯な状況は……」
みゆきが目を丸くして驚いていると、安奈と花林がみゆきに語り出した。
「あっ、桑野さん。大変ですよ」
「な、何が、どうしたの? 二人とも……」
「もう、やっとよ、やっと星夜ったら、りりかに告白できたのよ。今まで星夜も度胸が無かったし、りりかもりりかで星夜の気持ちだけは鈍感だったけどこれで見ていた私の胸もようやくスッキリできたわ」
「あ、あら。そうでしたの……まっ、似た者同士で御似合いのカップルかもしれませんけどね。ホホッ」
その時、高飛車な笑いをしたみゆきの目にアッコの姿が入った。
「あっ。貴女は……!」「あ、みゆきちゃん……!」
アッコもみゆきを見て目を丸くした。
「あ、アッコさん。貴女は何故、此処に居るんですか?」
アッコに訊ねるみゆきの言葉に、アッコは思い付きの言い訳を放った。
「あ、あのね、みゆきちゃん。実は……実は今日、りりかちゃんの誕生日だって聞いてね。私も彼女を祝いに来たのよ」
「え? アッコさん、森谷さんの事知っていたんですか?」
「う、うん。実はりりかちゃんや星夜君とは前々から知り合いだったの。ま、まさかみゆきちゃんがりりかちゃん達のお友達だったなんて……」
アッコは少し惚(とぼ)けながらもみゆきに答える。
「そ、そうだったんですか……あ、それならアッコさんも来てください。まだ誕生会の御馳走は残っていますから。先輩も早くいらっしゃって」
「あ、ああ」
笑顔のみゆきの発言に加納は目を丸くして返事をした。
「あっ、それなら市長さんも来てくださいよ。此処で遇ったのも何かのご縁でしょうし」
「え、で、でも……」
「来てくださいよ、市長さん」
安奈と花林は修司の手を引っ張りながら彼に告げた。
そんな修司にウッズは言ってあげた。
「良いじゃないですか修司様。問題もようやく無事に解決できたんですし此処はお二人の気持ちをくみ取って一緒にりりかさんを祝ってあげましょうよ。……色んな意味でね」
「ウッズ……あ、ああ。解ったよ」
ウッズに指摘され、渋々二人に連れて行かれる修司。
「ほら、其処の御両人。あなた達が今日の主役なんだから早く来なさいよ」
花林はりりかと星夜に声を掛けた。
「……」
りりかがキョトンとしていると、彼女に星夜が手を差し伸べた。
「せ、星夜……」
「ほ、ほら。早く行こうぜ。修司さんも参加する以上、早く行かねえとパーティの御馳走が全部食われちまう」
星夜は視線を地面に向け、りりかと視線を合わせない間々、りりかに手を伸ばした。
りりかは彼の手を取り、二人は森谷家へと歩いていった。
「……星夜、良かったわね」
ミミナは思い焦れていた星夜が元気になってくれた事に安堵したと同時に初恋が実らなかった事に、少しばかり複雑な心境を抱いていた。
そんな彼女にウッズが手を差し伸べた。
「ミミナちゃん、私達も行きましょう」
ウッズの笑顔を見て、ミミナも彼につられて笑顔になった。
「うん!」
そして二人は手を結んだまま森谷家へと足を運んだ。
森谷家へと向かう最中、みゆきはアッコと会話していた。
「あ、アッコさん。私ようやく先輩に自分の思いを伝えられましたわ」
「わぁ、それは良かったじゃないみゆきちゃん」
「はい、今度はアッコさんが自分の願いを、そして祈りを意中の人に伝えられると良いですね」
「みゆきちゃん……うん、私頑張るわ! みゆきちゃんに負けず劣らず自分の願いを、思いを彼に叶えてもらう! 本当に人との繋がりや幸せを感じられる人にして見せるわ!」
「ふふ、頑張ってくださいね。アッコさん」
[見つめる者と見護る者達]
そうして一行が森谷家へと向かって行く光景を木の陰から一人の存在がジッと見つめていた。
その者は全身黒いローブに身を包んでおり、目を赤く、そして怪しく光らせそんな目で一行を見つめていた。
「……ククク、あの女。またしてもやってしまったか。まぁ良い。お陰で更にこの世界の歪(ひずみ)が生じた。更に世界の崩壊が進む事だろうな。くっクク……」
その者は怪しく、そして不敵に嘲笑うと夜の闇の中に姿を消して行った。
そして現世と冥界の狭間では。
「……ふぅ。あのまま彼女が、森谷りりかが世界に存在し続けてくれたら良いんだけど。でも、下手したら本当に世界の崩壊にも繋がってしまうかもしれないから心配ね」
ナースエンジェルピュアホワイトが溜息交じりで呟いていた。
そんな彼女に、ある一人の女性が声を掛けて来た。
「……ピュアホワイト。大丈夫ですよ、彼女達を信じてあげましょう」
「あ、貴女は……」
「あの子の力強い思いは私が保証するわ。あの子はもちろん、ナースエンジェルや他の英雄の子達は必ず人々の思いをそしてこの世界を救ってあげられるわ。あの子達を信じてあげましょう。……もちろん、あの三次元人の少年の事も」
「……ええ。今は信じましょう。あの子達の中に有る光り輝く思いを……そしてあの少年の鋼の、刀の如き強く決して折れぬ意志の強さを……」
二人の女性は心から祈り、そして信じた。
人々を護り抜きたいと願う英雄達を。
そしてこの世界を、この世界の人達を救いたいと願う少年の意志の強さを。
[願う意思と動揺する思い]
後日、修司の家の地下に有るプラントエリアと呼ばれる植物の栽培を行える地下施設にウッズとジュニア、そして二人の親子に交じって木野まことが手伝っていた。
「ふぅ~、何とか場を整えられましたね。ウッズさん、ジュニア君」
「ああ、そうだねまことさん」
「いやぁ、ホントに疲れちゃいましたよ。まさか岩手の天峰山にまで出向いて、咲き乱れる命の花を全て此処に移動させろなんて。修司様も難題を言ってくれますよ」
三人の眼前には天峰山から移動された無数の命の花が咲き誇っていた。
「それにしても……本当に綺麗な花ね。命の花は……」
まことは優しい色合いの命の花を見て、思わず見惚れてしまっていた。
その時であった。
「おーーい、3人とも」
「あ、叔父さん」
ウェルズが三人を呼びに来た。
「お前達、今から上でりりかの誕生会を開くから早く来い」
「あ、分かりました」
「よし、お父さんも早く行こうよ」
「あ、ああ……」
ウッズだけは内心複雑だった。今目の前に有る命の花は本来は森谷りりかの命が消えた事により復活していたものだと知っていたから。
そしてこの日は修司の家で改めて森谷りりかの誕生日パーティを開催していた。
「みんな、アッコちゃんのお母さんから特製の七夕ケーキが届けられたから食べましょう」
「ヤッホーーッ」
ハニーがアッコの母親が作った特製の巨大ケーキを運んで来た。
その時、小狼とさくらが有る事に気付いた。
「ん? そう言えば森谷の奴は何処に行っちまったんだ?」
「あ、本当だ。りりかちゃん何処に行っちゃったんだろう……」
その時、りりかは修司の部屋に足を運んでいた。
「……し、修司さん」「…………」
りりかが声を掛けても修司は返事をしようとはせず市長の椅子に座りながら彼女に背を向けていた。
りりかは恐る恐る修司に再度声を掛けた。
「し、修司さ」「何で何も言わなかった」
「え?」
話を割る様に、突如修司はりりかに話しかけた。
「何で黙ってた。何で一人で悩み込んだまま勝手に死のうとしたんだ。……もしかしたらセーラームーンや他の皆の力を協力し合えば死ぬ必要無かったのかもしれないんだぞ。今回はたまたまアッコのコンパクトの力で命の花だけがお前の命から解放されたから良かったものの下手したらお前、本当に死んでいたかもしれないんだぞ。解っているのか……!」
りりかは修司の口調から、彼が物静かながらも完全に怒っている事を感づいた。
「し、修司さん……ホントにゴメンなさい」
りりかは小さい声で修司に謝罪した。
「……何で助けを求めねえ」「……え?」
「何で何も言ってくれねえんだよ! 自分一人で全ての命と自身の命を天秤に掛ける苦渋の思いを俺たちには黙っているんだよ!! そんなに俺が信用できないのか!!」
物凄い権幕で怒る修司にりりかは怯みながらも返答した。
「ほ、本当にゴメンなさい。私、みんなには余計な心配掛けたく無くて……」
すると突然、修司は立ち上がり怯えるりりかに歩み寄った。
「し、修司さん……」
りりかは思わず部屋の壁際まで後退してしまった。
そして修司はりりかの顔をジッと見つめると懐から例の虫の紋章が彫ってあるナイフを取り出しりりかの顔のすぐ横の壁に思いっきりナイフを突き刺した。
「! し、修司さん……」りりかは恐怖で顔から血が引いていった。
そんな蒼ざめた彼女に修司は呟いた。
「良いか、二度とこんな真似は済んじゃねえぞ。そん時は俺が全力を掛けてお前の行為を止める。そしてお前の綺麗な顔を傷だらけの醜い顔にしてやるよ……」
「……」
りりかは漆黒の、そして悲痛な修司の眼差しを見つめながら言葉を失っていた。
「俺の仲間になった以上、俺の指示通りに動いてもらう。俺の指図通りに生きてもらうし、指示に無い死に急ぐ行為も絶対に認めない。……分かったか、森谷りりか」
りりかは数秒無言になっていると、突然満面の笑みを浮かべて修司に言い返した。
「……はい。解りました。だからもう大丈夫ですよ。修司さん、本当に辛い思いをさせてしまって申し訳ありませんでした」
これに対し修司は何も言い返そうとはしなかった。
その時、部屋の外から声が聞こえて来た。
「りりかちゃーーん、修司~、お茶も入ったし早く誕生パーティ始めちゃおう!」
二人を呼ぶ声はアッコであった。
「それじゃ、私一足先に行ってますね」
りりかはスグに部屋から出て行き、一階の皆の所に向かって行った。
りりかが階段を降り、2階のフロアに降りると其処には変身怪獣が立ち尽くしていた。
「あ、変身怪獣」「ヨっ」
声を掛けた変身怪獣はりりかに歩み寄り彼女に言った。
「……お前、自分が何したか解っているのか?」
「え……」
「……お前が死んだら修司だけじゃねえ。聖龍隊みんなが悲しむんだぞ。それが分かってんのか」
「! へ、変身怪獣! アナタ、知っていたの…!」
驚愕するりりかに変身怪獣は述べた。
「忘れたか? オレにはテレパス能力が有るって事をよ。お前や星夜の考えなんて丸分かり何だよ」
「………………」
「……いいか、りりか。確かにお前の命の中に、例の花が封印されていてお前が死ななければ解放できなかった事情は分かる。だけどな、何も自分一人で全てを抱え込む必要はないんだ。一人で苦悩せずオレ達にもちゃんと打ち明けて欲しかった。オレたちは、その為の仲間なんだからよ」
「へ、変身怪獣……」
優しい眼差しで見つめる変身怪獣の瞳を見つめていたりりかは、次第に目に涙を溜め始めた。
「お、おいおい。そんな泣くなよ。女の子泣かしたと合っちゃぁ男が廃るわ……そ、それよりも早く皆の所に行こうぜ、ほら、涙は拭いて……な」
「え、ええ……」
りりかは涙を拭うと変身怪獣と共に一階のリビングに降りて行った。
部屋に入ると、皆一斉にクラッカーを鳴らしてりりかを祝福した。
『りりかちゃん 誕生日おめでとう!』
聖龍隊の皆が一斉にりりかに声を掛けた。
「み、みんな…………あ、ありがとう!」
「よ、良かったな、りりか。今年は二回も誕生日を祝福してもらって」
「え、ええ」
星夜とりりかは互いに何処かギコチない笑顔で向き合った。
「アレ? あなた達、もしかして……」
目を細めながら美奈子が二人に指をさす。
「そうですよ。お二人は晴れて正式なカップルになったんですよ!」
「! ちょ、ちょっとアッコさん!」
「な、なに言っちゃってくれてるんだよ!!」
打ち明けるアッコに驚きながら発言するりりかと星夜。
その時、部屋に修司も入って来た。
「お、修司じゃねえか」「今日はちゃんとやって来たんだな」
青児と衛が修司に声を掛ける。
「おお、これはまた一段とデッカいケーキだな」
修司は高さ5メートルは有るかと云うケーキを見上げてみた。
「ふふ、ママったらさ。お友達の誕生日なら私が腕によりを掛けてスッゴイケーキを焼きあげちゃうって言って朝から作っていてくれてたのよ。私とパパ何か、朝食抜きだったわよ」
「あ、アッコさん」「ど、どうもスイマセン……」
「二人とも、謝るんだったらまず一つ。特にりりかちゃん」
「は、はい」
アッコはりりかの顔に自分の顔を近づかせ、彼女の眼前で告げた。
「……もう死のうとしないで、お願い。貴女が死んだら、貴女の友達や家族、星夜君だけが悲しむ訳じゃないのよ。私達聖龍隊のみんながりりかちゃんの死を悲しんでしまう……もちろん、私や修司だって、それは同じだから。だから約束して。誰かの命を護る前に、自分の命を大事にしてほしいの……。私だって、星夜くんほどじゃ無いかもしれないけど本気でりりかちゃんの事が怖かった……。こんなにも皆に自分の誕生日を祝ってもらえる子が、愛されている子が死んじゃうなんて……私は、本気で辛かったんだからね」
アッコは鏡の様な瞳から一筋の涙を流した。
「アッコさん……!」
アッコの瞳から流れた光り輝く涙を見たりりかは衝撃を感じた。
「……よぉし、それじゃあ、早速切り分けるとしますか」
そう云うと修司は聖龍剣を手に取り巨大なケーキをそれで斬り分けようと刀を構えた。
「ってヤメローッー修司!」
「おめえ何刀でケーキ斬っちゃおうって考えちゃっている訳?」
慌てて青児と衛が修司を制止しようとした。
「スマネエ、今、俺は……物凄く刀を振り回したい気分なんだよ」
そう云うと修司はりりかの方を目玉をギロリとさせて睨みつけた。
「ヒッ」
りりかは思わず声を出して怯えてしまった。
「だからって刀でケーキ斬り分けないで下さいよ」
「普通に切って、普通に食べましょうよ」
小狼とソウシの発言に修司は物申した。
「バカもーーん! このケーキは芸術家の加賀美恭子殿が作ってくれた普通では無いケーキなのだぞ! 普通じゃ無いケーキを普通じゃない斬り方で分けても問題は無いだろうが!!」
「問題あるわっ!」
アッコは持っていたステンレス製のトレイで修司の頭を引っ叩いた。
そして全員がケーキを食べ終わっていた頃、アッコは一足先にパーティを抜け出し以前の七夕パーティで使った竹を片付け始めていた。
「……ふぅ、ウプッ。やれやれ、ママのケーキも毎度毎度特大だし七夕の日にみゆきちゃんに呼ばれちゃってイヤってほどご馳走食べ尽くしちゃったから、もう苦しいわ……」
アッコはブツブツ言いながらも七夕を片付け始めていた。
その中には聖龍隊のみんなが書いた願い事も吊るされていた。
「ふふ。みんな、それぞれの思いを書いているのね。あ、そうだ。えぇ~っと、修司の願い事は……何処かしら、あっ、やった。これだわ、間違いない。この字は完全に修司の字だからスグに分かっちゃうわ。……で、でも……この願いって、いったい」
アッコが発見したのは紛れもなく修司の願いであった。
そして、その書かれている願い事とは。
【この二次元世界がどうかいつまでも長くそして少しでも良いので平和な時を得られます様に 小田原修司】
初夏が過ぎようとしている今この時期。
修司達は更に多くの二次元人達と関わって行きながらこの先も更なる冒険を進んで行くのであった。