「……あれ?」
ふと、目が覚める。
酷く気分が良い。
まるで、二度寝した後のような解放感。今日はなんだか良い日になりそうだ、と考えて思わず首を捻ってしまう。
「と言うか、ここは一体……?」
上半身を起こす。
床に手を付ければ、ピチャリと水音が鼓膜を揺らす。
周囲をグルリと見回せば、そこは何とも幻想的な場所だった。
百合を見下ろしているのは満天の星空。全てが全て、キラキラと輝いており、薄暗い世界において照明の役割を果たしている。
そして、何処まで行っても終わりの見えない水平線。視線の先に何も存在しておらず、いっそ清々しさを覚えてしまう。
地面は透明質で、何故か水によって満たされている。
「私に何をしろと?」
気付いたら見知らぬ場所に迷い込んでしまっていた、で有ればまだ分からなくもないが、そもそもの話。
どうやってここにやって来たのかさえ覚えていない。
地面に手を付け、今度こそ立ち上がろうとする。
瞬間、足裏に感じていた確かな感触は消え失せ、水面へと変わり始める。
「え? ……きゃっ!」
慣れ親しんだ感覚から一転。
予想外の展開に、頭の理解も、体の対応も間に合わない。
溺れかけてしまい、両手をバタバタと激しく動かしてしまう、と言う恥ずかしい一面を見せながらも順調に順応していく。
「しかし、ここは本当に一体何処なのかしら?」
直前までの記憶は不明瞭。
自分の髪色は黒色だが、白色だった様な気もしなくもない。耳も丸っこいが、尖っていたような気もする。
果たして、ここに来る前までの自分は何者だったのか。
色々と工夫する事によって、プカプカと水面に浮く百合。
水面に揺られる感覚は、何だか心地よい。
そう、まるで母親があやしてくれるかのような。
――また、眠ってしまおう。
再び目を閉じて、何時起きるのかも分からない睡眠に興じようとした。その時、百合を見下ろす満天の星空の内の1つが、突如として光輝く。
他の星々など知った事か! とばかりに、一際強く。
居眠り所では無い。
「眩しいから、出来れば輝きを弱めて欲しいのだけれど」
届かない、と理解しつつもクレームを口にする百合。驚くべき事に、クレームに対応してくれた。更に光量を強める形で。
「ねえ、嫌がらせのつもりかしら? 私は、眠りたいのに」
光量は更に強くなる。
百合はかつてない程の苛立ちを覚える。
「たかだか星の癖に、この私の邪魔をするなんて良い度胸ね」
居眠りは止めだ。
あの、調子に乗っている星をギャフンと言わせてやろう。
届かないと理解していながら、百合は星に向かって手を伸ばす。
それがどうかしたのか? と。
だって、気に入らないのだ。
絶対に掴み取ってやる。
伸ばして、伸ばして、伸ばして、そして彼女の手は……。