星を追う子に春の祝福を   作:ロドリゲウス666

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めでたしめでたし

 

「……あれ?」

 

 ふと、目が覚める。

 酷く気分が良い。

 

 まるで、二度寝した後のような解放感。今日はなんだか良い日になりそうだ、と考えて思わず首を捻ってしまう。

 

「と言うか、ここは一体……?」

 

 上半身を起こす。

 床に手を付ければ、ピチャリと水音が鼓膜を揺らす。

 

 周囲をグルリと見回せば、そこは何とも幻想的な場所だった。

 百合を見下ろしているのは満天の星空。全てが全て、キラキラと輝いており、薄暗い世界において照明の役割を果たしている。

 

 そして、何処まで行っても終わりの見えない水平線。視線の先に何も存在しておらず、いっそ清々しさを覚えてしまう。

 

 地面は透明質で、何故か水によって満たされている。

 

「私に何をしろと?」

 

 気付いたら見知らぬ場所に迷い込んでしまっていた、で有ればまだ分からなくもないが、そもそもの話。

 どうやってここにやって来たのかさえ覚えていない。

 

 地面に手を付け、今度こそ立ち上がろうとする。

 瞬間、足裏に感じていた確かな感触は消え失せ、水面へと変わり始める。

 

「え? ……きゃっ!」

 

 慣れ親しんだ感覚から一転。

 予想外の展開に、頭の理解も、体の対応も間に合わない。

 

 溺れかけてしまい、両手をバタバタと激しく動かしてしまう、と言う恥ずかしい一面を見せながらも順調に順応していく。

 

「しかし、ここは本当に一体何処なのかしら?」

 

 直前までの記憶は不明瞭。

 自分の髪色は黒色だが、白色だった様な気もしなくもない。耳も丸っこいが、尖っていたような気もする。

 

 果たして、ここに来る前までの自分は何者だったのか。

 色々と工夫する事によって、プカプカと水面に浮く百合。

 

 水面に揺られる感覚は、何だか心地よい。

 そう、まるで母親があやしてくれるかのような。

 

 ――また、眠ってしまおう。

 

 再び目を閉じて、何時起きるのかも分からない睡眠に興じようとした。その時、百合を見下ろす満天の星空の内の1つが、突如として光輝く。

 

 他の星々など知った事か! とばかりに、一際強く。

 居眠り所では無い。

 

「眩しいから、出来れば輝きを弱めて欲しいのだけれど」

 

 届かない、と理解しつつもクレームを口にする百合。驚くべき事に、クレームに対応してくれた。更に光量を強める形で。

 

「ねえ、嫌がらせのつもりかしら? 私は、眠りたいのに」

 

 光量は更に強くなる。

 百合はかつてない程の苛立ちを覚える。

 

「たかだか星の癖に、この私の邪魔をするなんて良い度胸ね」

 

 居眠りは止めだ。

 あの、調子に乗っている星をギャフンと言わせてやろう。

 

 届かないと理解していながら、百合は星に向かって手を伸ばす。

 それがどうかしたのか? と。

 

 だって、気に入らないのだ。

 絶対に掴み取ってやる。

 伸ばして、伸ばして、伸ばして、そして彼女の手は……。

 

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