ナタ「先生、何時になったらアイルー君と結婚するんですか?」   作:飛沫

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え!?オメガ装備の限界突破するのに零式の素材が必要なんですか!?またオメガ零式に挑戦しなきゃなんですか!?やだーーー!


先生、オシャレする

「先生、一体何を……?」

 

「ん。ゼレドロン達、この装備だと威嚇すらせず大人しく捕まったままだから、警戒心は何処にいったのかと思ってな。こうやって持ち上げてみているんだが……。相変わらず抵抗らしい抵抗もしないから、今までどうやって生き延びてきたのだろうと疑問に思ってな」

 

 うーむ、と唸りながらハンターが抱えているのはゼレドロンだ。両脇から手を差し込み、まるでクエスト終了時のアイルーをブラブラするように持ち上げている。そしてゼレドロンの方は、人間に捕まって本来なら生命の危険に瀕しているはずなのだが、ハンターの言葉通り何もせずにされるがままの状態だ。何時もの威嚇にもなっていない口を開ける、という事もしない。理由はおそらく、ハンターの装備だろう。「折角作ったから」とゼレドロフェイクとゼレドロリュックを着込んで、ハンターはゼレドロンと対峙しているのだ。そのせいか、ゼレドロンは目の前の相手を『なんか他のやつとちょっと違うが、多分コイツも仲間』と認識しているのかもしれない。

 

「コレを着込めば楽にゼレドロンが捕獲出来るな。チケットと素材は残っていたから、アズズの里用にいくつか作って渡すのもいいかもしれない」

 

「先生。ゼレドロンは、村の人でも簡単に捕獲出来る生物なので不要かと」

 

(というか、さっき先生がこの格好で里の中を駆け回っていた時、皆が凄い目つきで見てたし。二度見どころか三度見する人もいたし)

 

 心の声は伝えずに、それっぽい理由でやんわりと止めておくように誘導する。先程も言った通り、ゼレドロフェイクとゼレドロリュックは、ゼレドロンにそっくりだ。なので今のハンターの見た目は『ゼレドロンを頭部を被り、ゼレドロンの身体を模したリュックを背負った人(仮)』で、親しい者でもない限りは好奇の視線を向けるし、近寄りたくもないだろう。実際、話しかけられたマキは「あっと……その……」と非常に言葉に詰まっていた。関わり合いになりたくないのは、モンスターも同じなのかもしれない。油湧き谷にはププロポルやアジャラカン、グラビモスのように、そこを住処にしているのかモンスターもいれば、リオレウスやリオレイア、ゲリョスのようにぷらっとやってくるモンスターもそこそこいる。だが、ハンターが油湧き谷に降りてからは、モンスターの咆哮は時折聞こえるものの、姿を見ることはなかった。何時もならフィールド内をセクレトで駆け回っていれば、此方の戦闘意思の有無に関わらず襲い掛かってくる事が多いというのに。いや、先程一体だけ歴戦王ヌ・エグドラらしきモンスターが遠巻きに様子を伺っていたか。

 

『え、アレ何? 傍に寄っていいものなの? それともお触り禁止だったり?』

 

 モンスターが困惑する事を、今日ナタは知る。このフィールドのヌシという強さ故に、背中を向けて逃げ出すという行為はなかったものの、壁にくっついてハンターの挙動を凝視している姿は、何だか人間っぽくてちょっと面白かった。ああやって対象を観察している様をみる限り、あのヌ・エグドラは好奇心がありつつ、頭もいいのだろう。だからこそ、歴戦の個体として生き延びているのかもしれない。

 そんな事を考え終えてから視線をハンターに向けると、ゼレドロンを充分観察して満足したのか「ほら、もう捕まるんじゃないぞ」と言いながらゼレドロンを降ろしていた。肝心のゼレドロンは、相変わらず警戒心の欠片もない顔でハンターの足元で蹲るが。これで終わりかと思いきや、ハンターはナタの方を振り向くと。

 

「ナタ、俺はこのまま歴戦王ヌ・エグドラのクエストを受けてくる。ベースキャンプに戻ってもいいし、簡易キャンプで待ってもらってもいいぞ」

 

「え、そ、その格好でですか?」

 

「ああ、思ったよりもずっと有用そうなスキルだからな。片手剣で通用するか試してみたい」

 

 ナタはヌ・エグドラに、少し同情した。あの歴戦王はハンターを観察して熟考を重ねた結果、音も立てずにそっとその場を後にしたのだ。それはつまり『よく分からないから、見なかったことにするのが一番』という判断を下したということ。だというのに、見なかったことにしたい者が「ヤッホー!」とやってくるのだ。心情は計り知れない。

 

「あの、それならせめて重ね着を」

 

 ギョッとするであろうヌ・エグドラの事を想い、ナタは提案してみるが、ハンターはゼレドロンの顔のまま首を傾げる。

 

「え、まあ確かにクセのある格好だが、頭部と胴部と揃えているから別に変ではないだろう」

 

 ハンターの中では「上下揃えているから、ある意味で纏まっているから問題ない」という感覚のようだ。確かにそうだが、そうじゃない。

 結局、ナタが次に言葉をかける前に「行ってくる。するのは一戦だけだから、直ぐに戻る」とハンターはセクレトに跨ると、アイルーを前に抱えてエリア17へ向かってしまった。

 気の毒なヌ・エグドラを思い浮かべながら、ナタは呟く。

 

「とりあえず戻って、アルマとジェマに先生の重ね着について相談してみよう」

 

*  *  *

 

「先生の外見について、相談があるんですけれど」

 

 アルマとハンターがクエストに出かけている間、一人ベースキャンプに戻ってきたナタは、釜の前でアレコレと試作品作製に勤しんでいるジェマに声をかけた。するとジェマも似たような事を頭の片隅に置いていたらしく「分かるー」と作業を止めて、話にのってくれた。

 

「まぁ、作った私が言うことじゃないかもしれないけれどさ、ゼレドロンのままフィールド出てくるって言われた時はファッ!? ってなったわ。普通さぁ、着るじゃん? 重ね着」

 

「はい、僕もあの格好のままクエストに出ると言い出したので、重ね着を提案したのですが『これはこれで上下揃ってチグハグじゃないから』と一蹴されてしまって」

 

「そうなんだよね。なーんかあのハンターって変な所に拘らないというか、ある程度揃っていれば平気、みたいな感覚というか。きっと顔がいいせいで、多少アレな格好しててもカバーできてたから、気に留めないんだろうね」

 

「そうなんですよね。重ね着を来ている時もチグハグな格好でも、色を統一していれば大丈夫と言っていたことがあったし」

 

 うーん、と二人で悩んでいると、こめかみを指で押さえながらアルマもやってきた。

 

「あ、お帰りー」

 

「アルマ、先生は?」

 

「……今度はアジャラカンと一戦交えると言うと、制止を振り切ってクエストに行ってしまいました」

 

「え、あの格好のまま? アジャラカン、見つかるの……というか戦えるの?」

 

「分かりません。さっきの歴戦王戦も、最初は戸惑っていたような感じで、動きが鈍かったんです。途中、声や動きのクセで何時ものハンターだと気がついてからは、普通に相手してくれていたのですが。でも、歴戦王であの反応だと、アジャラカンでは……」

 

 多分、隠れて出てこないんじゃないかなあと、ナタは思った。ジェマも苦笑いを浮かべているところを見ると、似たような事を考えているのだろう。

 

「アルマ。今ナタと一緒に、『どうやったらハンターにお似合いの重ね着を着せるか』って作戦を立ててたんだ。参加してくれない? ああいうトンチキな格好は、奇襲するにはいいかもだけれどそれ以外はちょっと……。何より他のハンターへの風評被害が出そうで」

 

「そうですよね。私もあの格好で隣に行くのは……。ハンターは『揃っていれば大丈夫』という思考なので、それを逆手にとればスムーズに話が進むかな、と」

 

「お揃い……お揃い……」

 

 暫くその場で悩む三人だったが、何かを閃いたのはジェマだった。

 

「そうだアルマ! ハンターって素材を溜め込んでるよね!」

 

「ええ。多分ボックスの中にたんまりと入っている筈ですが……それが何か?」

 

「お揃いを逆手に取るなら、アイルーの重ね着を増やしてみるの! そうすれば可能性として」

 

「あ! アイルーのお揃いに触発されて、先生もそれなりの格好をしてくれると!」

 

「その通り、試してみる価値はあると思う。アルマ、素材勝手に使ってもいい?」

 

「大丈夫ですよ。しまい込んでいますし、アイルーの重ね着なら使う素材も少ないですし」

 

 善は急げとジェマは、アルマから貰った素材を使って様々なアイルーの重ね着を作っていく。その結果。

 

「相棒、お揃いだね♪」

 

「そうだな。似合うか?」

 

「うん、すっごく格好いいよ!」

 

「なら良かった」

 

 アイルーの重ね着に合わせ、かなり見られる格好の姿になったハンターがいた。自分の姿にはあまり気にしない素振りだったが、アイルーにはそれなりの格好をさせてやりたいという良心はあったようで、ジェマが「アルマから素材が沢山あるって聞いて、腕試しがてらアイルーの装備と重ね着を作ってみた」と言えば喜んでくれ。

 またアイルーも「相棒、折角だからお揃いにしようよ」という素晴らしいおねだりをしてくれ、中身はゼレドロンだが外側は無難な今の姿になったのだ。

 

「そういえば、タルコロチャレンジの券が溜まっていたな。久しぶりにやってみるか」

 

「わぁ! それじゃあボク、応援頑張るよ。相棒も頑張って!」

 

「ああ。じゃあジェマ、本当にありがとう」

 

「うん、喜んでもらえて此方も作った甲斐があったよ。本当に!」

 

 力を込めてそう言えば、ハンターは若干不思議そうな顔をしたものの、大して気にもとめずにタルコロチャレンジ会場へと向かっていった。

 

「……とりあえず一件落着ですかね?」

 

「でもあの様子じゃ、いつか『お揃い』って事でアイルーフェイク被り出しそうな気がする。……まぁ、ゼレドロンよりは可愛らしいから全然いいけれど」

 

(うーん)

 

  ジェマの言葉を聞いて、ナタは心の声で嘆息をつく。先程のゼレドロンフェイクの時、セクレトに跨ったハンターがアイルーを自分の前に乗せる、という行動をしていたのだがあの外見のせいで、何時もよりもずっとトキメクことが出来ずにいた。やはり、顔出しは重要だ。

 

(どうか、あのままでいてくれますように)

 

 そう願わずにはいられないナタであった。




ゼレドロン君
なんか出てる作品を間違えているモンスター。ドドガマル臭がする。あんな強豪揃いの油沸き谷で、何故絶滅しないのか不思議でたまらない。ゼレドロンフェイクのハンターを、ボスクラスのゼレドロンだと思っている。

油沸き谷のモンスターの皆さん
あの格好のハンターに討伐されると「謎のゼレドロンに負けた」と他のモンスターから馬鹿にされそうな気がしたので、出てこなかった。懸命な判断。

歴戦王さん
被害者。しかし、捕獲された場所は自身の寝床だったので威厳は保たれた。びっくりするから、ちゃんとした格好で来て欲しい。
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