ナタ「先生、何時になったらアイルー君と結婚するんですか?」 作:飛沫
その日、ハンターはアイルーと共に素材集めに勤しんでいた。緋の森で不死虫集めをしてから水中に潜り、グラスウィードやナガレツボボヤを採集。その際優雅に水中を泳ぐラギアクルスや、ウズ・トゥナを見つけ、遠くから並泳をしてみたり。油沸き谷で、黄金オイルやアンティマターの採集に勤しんだり。隔ての砂原では、ヘダテアロエや沙胡椒の実をかじり、竜都の跡形では超熟リュウトホウズキを摘み食いしていた。勿論、彼が全信頼を置いているアイルーも一緒だ。
二人してキャッキャウフフとあちこちのエリアを駆け回り、時には同伴していないナタが羨むような仲睦まじい姿をアルマやエリックに見せつけ生暖かい視線を送られる。時折セクレトも乱入し、ゴチャゴチャになりながらひたすら素材を集めた。そして最後のエリア、氷霧の断崖にやってくる。
ここも素材の宝庫だ、古代人が使っていたと思われる飾りツボは交換でフワフワ卵に変えられるし、アイシスメタルも装備品などで意外と使われる。風鋏竜の抜け殻も、貴重な秘薬の調合に必須なマンドラゴラと交換可能だ。
「よし、行くぞアイルー」
「うん、相棒!」
互いに声を掛け合うと、自分も仲間に入れろとセクレトも鳴く。「そうだな、セクレトも一緒だな」とセクレトを撫でてやれば、満足気に目を細めた後は二人を乗せて勢いよく走り出す。
「もう……なんというか……あの輪の中には入れそうにありませんね。ナタは頑張って食いつこうとしていますが」
比較的大人しいセクレトに跨ったまま、飛び出して行ったハンターを見てアルマが苦笑する。同時に「随分と変わったな」とも思う。ファビウス卿の前で顔合わせした時は、しっかりした意思を持った寡黙な男性という印象を持ち、実際にその通りだった。ナタとの会話も、気にかけていながらもどう接していいのか考えあぐねているような、ある意味でハラハラするような雰囲気だった。それが今、見知らぬ子供から話しかけられると未だにつっかえたりするものの、以前のようなあからさまな動揺などはなくなって、スムーズに会話が出来るようになってきた。良い傾向だと思う、たまに奇行に走る事があるが。
そういえば、ハンターはいつから奇行が目立つようになったか、とふとアルマは考える。ゾシアを討伐するまでは、大人しい不器用な男性そのものだった。原種帰りしたアルシュベルド討伐時も、ごく普通だったと思う。タマミツネ時も……多分問題なかった。では、その後は?
「……あ」
そこでアルマはふと思い出す。油沸き谷でモンスターの
惨殺死体が大量に発見された事があり、それを調査していたら豪鬼と名乗る男性に出会い、何故か拳で語ることになった結果、ボコボコにされた時があった。その後、無事に実力を認めてもらい、事なきを得たのだが。
「ひょっとして……あの時の殴り合いで……?」
思い返せば、あの時は外見や言葉遣いも豪鬼そのものになっていて「どうしよう……」とクエスト中ずっとハラハラしていた。その後豪鬼に納得をしてもらい、ハンターの格好と言葉遣いも元に戻ったから、一時の気の迷いだと安心していたのだが、意外と根深かったのかもしれない。
「……いえ、人のせいにするのはよくありません」
駄目だ駄目だ、とアルマは首を横に降って思いついた仮説を打ち消す。そうだ、元からハンターは少し変わった思考をしていて、この環境に慣れてきて地が少しづつ出ているのだ。……多分。
「あれ」
その時、ようやくアルマは自分がこのエリアに一人でいることに気づく。どうやら想像していた以上に、思案にくれていたようだ。慌ててハンターの後を追いかけるアルマ。幸いにも振り積もった雪のお陰で、足跡を辿ることが出来る。何れは追いつくことができるだろう。
「……いた。どうしたんですか? そんな所で立ち止まって」
少しして、アルマはセクレトから降りて立ち尽くしているハンターとアイルーの姿を発見した。鉱石を採掘してるのかとも思ったが、ピッケルを持っていない。どうしたのかとセクレトから降りて隣に立てば、ハンターが見ていたのはある生き物の死骸だった。
「ラフマー?」
岩に寄りかかるようにして事切れていたのは、大きな角が目印のラフマー。周りには黒い鱗粉が漂っているので、おそらく犯人はゴア・マガラだろう。
「可哀想に……」
無惨な姿のラフマーを見て、アルマがボソリと声を漏らす。鱗粉が飛散していなかったり、死体に腐敗が進んでいない様子からみて、死んでからそれほど時間は経っていないのだろう。
ゴア・マガラは、断壁のヌシであるジン・ダハドに匹敵するかもしれない程の強敵だ。流石に小型の、しかも草食種であるラフマーでは太刀打ち出来ないかったのだろう。せめて安らかに眠れるように、と黙祷を捧げてからハンターへ視線を移せば、沈痛な面持ちで未だその場から動かずにラフマーの死体を見つめていた。彼も同情しているのかと思いきや、こぼれだした言葉は。
「仇はとるぞ……戦友……」
アルマには理解不能はものだった。
* * *
(アレ……先生、どうしたんだろう。いつになく真剣な顔をして)
ベースキャンプのテントの前でナタが肉焼きの練習をしていると、ハンターが戻ってきたが空気が違った。何時もなら、アイルーとにこやかに会話をしながらテントの中に潜るのだが、黙り込んだまま口を一文字に結んでテントの中に入っていく。その表情は不機嫌……否。
(なんか先生、怒ってる?)
珍しい事もあるものだと、ナタは不思議がる。基本ハンターは、怒りの表情を見せることはない。戸惑ったり、困ったりする事はあっても、声を荒げるような姿は一度も見たことがなかった。
それはクエスト時でも言える。ずっと欲しい素材やお守りが出なくても肩を落とすだけで八つ当たりや悪態などをつくことはない。三回力尽きて、クエストが失敗しても「あのモンスター強かったな」の一言で済ませる程度だ。そんなハンターが怒りを滲ませているのだ、一体何がおきたのか?
「アルマ」
一足遅れてテントに戻ってきたアルマの名を呼べば「ナタ、どうしたの?」と首を傾げながら傍にきてくれた。
「先生、なんか様子が変だったけれど……何かあったの?」
「あぁ……戦友の仇を討つといって」
「え!? 誰か死んじゃったの!?」
アルマの仰天発言に、ナタはぐるん、と音がしそうな程強く首を回して周辺を見回す。ロッソ・グリフィン・カイは……いた。よく一緒にクエストに向かうハンター達は健在のようだ。
(いや、でもアレサさんやミナさんはここにはいない。あんまり想像したくないけれど……ひょっとして!?)
立ち上がって確認しようとすると、アルマが「ナタ、大丈夫だから落ち着いて」と座るように促してくる。どうしてアルマはこんなにも普段通りでいられるのだろうか、一大事だというのに。
「大丈夫って……もしかして誰か怪我をしただけなの? でも、それで先生あんなに怒るとは」
「ああ、いえ。散々ハンターに言われ続けたので私も移ってしまいましたが……。ラフマーという小型モンスターのことなの、戦友って」
「ラフマー?」
言われて姿を思い起こそうとするが……浮かんでこない。小型モンスターと言われて出てくるのはケラトノスだけだ。
「どんなモンスター?」
「ほら、大きな角をもった細身の」
「……あー」
言われて、何となく分かった。シルド周辺にもいる草食種のことか。確か角に麻痺属性があって、突進されたりすると動けなくなることがある。しかし戦友とは?
「ええと……ハンター曰く『断壁の細道でゴア・マガラとやり合っていた時はよく世話になった。だから是非とも弔い合戦をしてやりたい』だそうで」
「そう……なんだ」
やっぱりよく分からない。だが、ハンターがしたいというのなら特に止める気は起こらなかった。自分がとやかく言った所で、その気がなければ考慮してくれない事は、先日ゼレドロンの重ね着でよく理解できたから。因みに今日は頭部をデスギアにした重ね着だ。服装に違和感はないが、暗がりでは会いたくない程度には怖い。
少しして、テントからハンターが出てきた。歴戦王相手に着る火力モリモリの装備、彼は本気だ。
「先生、行くんですか」
「あぁ、ラフマーには何度もピンチを救ってもらった。恩返しになるかは分からないが、敵はとってやりたい」
だが……と、ハンターは俯く。
「正直に言えば、ソロでの断壁でのゴア・マガラ戦はかなりキツイ。相棒のアイルーがいても勝てるかどうか……」
「オイオイ、ハンター。まさか一人で行く気か?」
その時、背後から声がした。三人で振り返るとロッソ・グリフィン・カイが、サムズアップをしながらハンターを囲む。
「水くさい。俺達がいるんだ、声をかけてくれよ」
「だが、今回のゴア・マガラ戦は俺の勝手な意思で」
「ラフマーには、何度か救ってもらった事があります。敵をとりたい気持ちは一緒です」
「そんな……いいのか?」
「俺達、ゴグマジオス戦で共闘した仲だろ? 遠慮すんなって」
「皆……助かる……!」
(……なんだこれ……)
ハンター同士は熱く盛り上がるものの、どうもついていけない。ナタとアルマは、何とも言えない表情で見守っていた。その後。
「来ます! 避けてぇぇぇぇ!!」
狭いエリアで男四人、ワチャワチャしながらも無事にゴア・マガラを捕獲することが出来た。因みに今回のゴア・マガラが、ラフマーを倒した当モンスターかは不明である。
グリフィンさん
ゴグマジオス戦で一緒に組んでから、仲良くなったサポハン。同じガード仲間として親近感がある。近い内にロッソさん、アレサちゃん、ミナちゃんとガード仲間同盟を作る予定。
カイ君
オメガ零式戦で仲良くなったサポハン。強化をかけてくれるので頭が上がらない。ヤバイ攻撃が来る時の台詞が必死過ぎて、ハンターさんはあの台詞が来るとパワーガードをするクセがついた。