ナタ「先生、何時になったらアイルー君と結婚するんですか?」 作:飛沫
英雄の証とどっちがキツイんですかね?
取れる素材目当てに、定期的にハンターはゴグマジオスの討伐に参加する。その際、ハンターは何処となくソワソワした様子で出かけていく。そして帰ってくると。
「……俺は……役立たず。やっぱり俺では駄目か……」
背中を丸め、どことなく哀愁を漂わせながらテントへと戻っていく。長い尻尾をぴょこぴょこ揺らしながら、心配そうな顔でアイルーがついていくも、ハンターの表情に明るさが戻ることはない。とは言え、日を跨げば何時もの調子になるんだが。
(別にクエストを失敗している訳じゃないんだけれどなぁ……)
戻ってくれば手に入れた素材を差し出して、ジェマとデンセツと呼んでいる竜人族の鍛冶師にアーティア武器について何やら相談をしているから、素材がないというわけでもないのだろう。というか、赤熱核が手にはいらなかった時の落ち込みとはまた違うように見える。
(アイルーなら、何か知ってるかな?)
アレコレ推測するよりも、一番近くにある相手に訊ねるほうが手っ取り早いと判断したナタは、テントの外で何やら分厚い本を一生懸命にめくっているアイルーに声をかける。
「アイルー、少しいい?」
「んー? どうしたの?」
頭にスージャネコフロッグを乗せたまま、可愛らしく小首をかしげるアイルー。その仕草に愛らしさを覚えながら、ナタはゴグマジオス戦後のハンターの様子を問うてみるが。
「ごめん。ボクもね、分からないんだ」
「アイルーも分からないの? クエストいつも一緒なのに?」
「あのね、ゴグマジオスのクエストはハンター八人でやるから、ボクが隣でお手伝いする事がないんだ。途中、戻ってきたハンターに回復役とか粉塵の素材を渡す程度で」
「八人?」
四人じゃなくて? というかクエストは最大四人だというのにどうやって行うのか。二チームに分けるのだろうか?
疑問を素直に口にすれば、アイルーが簡単に教えてくれた。何でも普通のハンター四人に加えて、ファビウスとナディアを入れた別の四人がサポートハンターとして手伝うらしい。いや、それでもイマイチ想像が出来ないが。
「ボクもね、相棒がしょんぼりしているから『ボクの肉球ギュッギュッてしていいよ』って慰めるんだけれど、その日はやっぱり元気がないんだ。でも、一緒に寝ればまた何時もの相棒に戻ってくれるから」
「そっかあ(肉球ギュッギュッ……見たいなぁ)」
二人のやりとりが見られない事を、若干悔しがりつつ。
それでも、ハンターの様子を訊ねるのはロッソやグリフィンの方が適切だとは理解出来た。なので、早速大集会所内をフラフラしていたロッソへ声をかける。
「ロッソさん、今いいですか?」
「お、どうしたナタ。ヘビィボウガンを使いたくなったか」
「いえ、その。先生のことなんですけれど」
「鳥の隊のハンターがどうかしたのか?」
「なんかゴグマジオスのクエストを終えた後、『俺は役立たず』とか『やはり俺では駄目だ』とか言いながら戻ってくるので、何があったのかと」
「……あー」
ロッソは一瞬悟ったような顔つきになると、ナタの肩をポンと叩いて「あっちで話そう」と、夜になると歌姫が歌う事がある広場を指差した。頷いて後ろに着けば適当に置かれている椅子に座ってくれと言われるので大人しく従う。
「ちょっとカイやオリヴィアも呼んでくるから、待っててくれ」
集会所の入口へ駆け出していくロッソを眺めながら、ナタはぼんやりと戻ってくるのを待つ。少しして、ロッソが戻ってきた。名前が挙がっていたカイとオリヴィアの他に、グリフィン・アレサ・夜霧・ミナを引き連れて。しかも何故か全員、気まずそうな顔で。
「どうしたんですか? そんなに大勢で」
ほぼ全てのサポートハンター、それも何処か申し訳なさそうにしている姿を見て、ナタが不思議そうな顔で問えばカイがこめかみの辺りを人差し指で掻きながら口を開く。
「イヤ、ナタ君の話を聞いて……鳥の隊のハンターがしょげているのは確実にボク達のせいだと分かったから」
「へ? どういうことです?」
「そうか、ナタはクエストを見たことがないから分からんか。いやな、ゴグマジオスは少し特殊な戦いをするんだがな、第三形態? とでも言えばいいのか……。最後の戦いは奴にある程度のダメージを与えて、時折来る大技のダメージを軽減させなきゃなんだ。で、軽減させてもその場に突っ立っていると力尽きるほどの威力でな。ガードできる武器……特にランスの背後に身を置くことによってやり過ごす事が可能なんだが……」
目を泳がせながら言い淀むグリフィンの後を継ぐように、オリヴィアが言葉を綴る。
「サポートハンターの中にファビウス卿もいてな。ファビウス卿から『私の後ろに!』と声をかけられると、思わずそちらの方に走ってしまうんだ。……すぐ隣に鳥の隊のハンターがいても」
「そういうことですか」
「私たちも、頭の中では分かっているんだ。ハンターのランスもファビウス卿のランスも、別段違いは無いと。ただ、やっぱりファビウス卿に声をかけられると……安心感が、な」
「うん、分かるー。なんか、纏うオーラが圧倒的過ぎるんだよね。まぁ、それは私たちにも言えることなんだけれどさ」
「……確かに」
皆が言うことに共感しかない。ハンターが弱いとか、頼りないとかではない。ただただ、長年ランスを握っていた経験や生き様が歳とともに貫禄となっていて、絶大な信頼を向けてしまうのだ。自分だってアルマたちに救助され、彼の元に通された時は右も左もまだよく分かっていない状態だったのに「この人のついていけば、きっと何とかしてもらえる」という謎の安堵感を覚えたからだ。ハンターも後数十年したらあのように……否、多分歳を取るだけでは、あの雰囲気を纏うことは難しい気がする。寡黙でアイルーとイチャイチャしているだけでは、たどり着けないかもしれない。
「それなら」
「ん?」
「大技を凌ぐ時に先生が一言かければ、皆さんも先生の元へ行きたくなるとかあります?」
ナタの提案にサポートハンター全員が「あっ!」という表情になる。
「すげぇ! 名案だ! 確かに鳥の隊のハンターは無言でガード体勢に入っているからな。『こっちに来てくれ』の呼びかけだけでも大分意識が変わるぞ。たまにファビウス卿と距離があって全力疾走する時があるし」
「そうと決まれば、早速話を……あ、いた。すみませーん!」
カイが携帯食料を受け取っているハンターを呼べば、不思議そうな顔をしてハンターが、やってくる。
「どうしたんだ? 勢ぞろいで」
「ねぇハンター! 今皆で話していたんだけれど、ゴグマジオス戦の大技の時、何か一言言ってみたらどう?」
「急にどうした?」
「俺たちいっつもファビウス卿の一声で走っていくからさ。ハンターも何か言ってくれれば、そっちに向かうかもと思ってな」
「ん、一言……」
顎に手を添えて考え始めるハンター。少しして思いついたのか、口を開いて出てきたのは。
「俺は俺の責務を全うする!! ここにいる者は誰も死なせな」
「先生それ以上いけない!」
「え、ナタどうした」
「何か凄く死亡フラグ立ちそうなんでやめてください」
「そうか。なら……俺は不死身のランサ」
「ハンター、それはとんでもないバフがかかって人間止めそうだからよした方がいい」
「むぅ……。皆は死なないさ。俺が守るもの」
「んー、個人的な感想になるかもだけど、もっと静かなシチュエーションで聞きたいというか。月を背景にしてさ」
「難しいな」
その後、皆でああでもないこうでもないと思案に思案を重ねた結果。
「俺の後ろ、空いてますよ!」に決まった。なおその後、高台のサポート無しのゴグマジオス戦のクエストが解禁され、ファビウス卿が不参加なるこのクエではガード武器が輝くことになり、ハンターは満面の笑みでランスを担いで行くようになった。因みに勝率は低い。
ゴグマジオス君
油湧き谷で食っちゃ寝の生活してたら、狩猟されたモンスター。ちょっと可哀想だが、寝起きであれだけ暴れまわれるのだから残当。相当食い溜めしていたからか、体力オバケ。