FIREしたい騎士団最年少副団長、部下を守って嘘の負傷から引退コンボを決める 〜円満退職のため、情緒がぶっ壊れて病んだり一斉退職しようとする激重部下たちをカウンセリング!〜   作:宮出礼助

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二章の前に閑話を二話挟みます。読み飛ばしてもストーリーの把握に問題はないです。


幕間
閑話 獣人街のお祭り - 1


 

 ――シリウス王国は、古くから大陸で繁栄している大国だ。強大な軍事力を持ち、国土は肥沃で、経済も発展している。

 

 そして、王国内でもっとも歴史ある王都は、特に広大な土地を誇り、人口も多い。街の中でいくつかの区画に別れており、それぞれに固有の特色もあった。

 

 例えば、商人たちが多く店を出す区画。魔物討伐等を請け負う冒険者たちの機関が集まる区画。一般市民たちの居宅が集まる区画。

 

 それに、とかく悪目立ちしがちな獣人種が寄り集まり、互いに助け合って暮らす区画。――いま、俺が先日に続き再び訪れている場所だ。

 

 そして、獣人街にあるこの広場には、休日にも関わらず、いま多くの獣人たちが集まっていた。

 

 広場の入口あたりに立つ俺は、隣のルナへと顔を向ける。

 

「……一人残らず獣人しかいないみたいだけど、これ、本当に俺が参加してもいいものだった?」

 

「別に種族に制限などありませんから。問題はないはずです」

 

 そう囁くように会話している間も、なにやら年嵩の獣人が挨拶の口上を告げている。

 

 ――俺は今日、ルナに誘われて、獣人区で年に数回開催される祭りに参加していた。

 

 この祭りは初め、王都でも少ない獣人種が、普人種中心のこの街で結束を強めるためのレクリエーションだったらしい。

 

 祭りの創立当初と比べればはるかに獣人の数は増えているはずだが、それでも王都在住の獣人種に文化として定着したため、いまだに毎年実施されるという。

 

 広場には多くの屋台から美味しそうな匂いが漂い、中央ではなにやらイベント――力比べや大食い競争なども開催されている。

 

 祭りに参加するなどいつぶりかと懐かしみながら、俺はルナとさらにその向こうにいるルナの家族――ディアナさん、コユキちゃん、ヨルくんの四人へ声を掛けた。

 

「先日から引き続いて、家族水入らずを邪魔してしまってすみません」

 

 返事をしようと口を開けたルナを遮るように、ディアナさんが「いえいえ!」と声を上げた。

 

「いいんですよ、気にされなくても! 私たちはもう何度もみんなで来てますから」

 

 ディアナさんが朗らかに笑う。白黒の小さなふたりはきゃあと歓声を上げながら俺にじゃれついている。

 

 ディアナさんの言葉には救われるものの、今回は俺の方からルナの家族と話をしたいと持ち掛けたので、やはり気を遣う。家ではなくお祭りの場になったのは予想外だったのだが、これから俺は――――ルナを、ディアナさんたちの大事な家族を、俺の都合に巻き込んでしまうことを弁明しないといけない。

 

 さて、なんと言い出したものか……。

 

 祭りを楽しむ大衆を横目に考え込む。しかし、その悩みは唐突に取り払われることになる。

 

 ディアナさんはおもむろに、周囲をウロチョロしていた子どもたちをわっしと捕まえると、俺とルナに向かって言った。

 

「――それじゃあ、私たちは私たちで回りますので。ここからはお若いふたりで」

 

「え?」

 

 揃って声を上げる俺とルナ。

 

 ディアナさんはルナの耳元に口を寄せると、ぼそりと何事かを告げる。

 

「ちょっとした協力くらいはするから、うまく堕とすのよ……!」

 

 「なんだこいつ」みたいな視線のルナを気にせず、ディアナさんは子どもと連れだって去っていく。コユキちゃんとヨルくんは各々「えーリオー」「リオさんまたね!」と手を振っている。

 

 そうして、残された俺たちは顔を見合せる。

 

「……目論見は外れたけど。せっかくだから、俺たちも見て回ろうか」

 

「――はい。ぜひ」

 

 ゆらりと揺れるルナの尻尾が、ふわりと俺の腕を撫でた。

 

 

 

 ――そうして、大衆に混じって広場を巡ることしばらく。

 

 俺たちは美味しそうな匂いに引き寄せられたり、景品付きの遊戯に興じたり、中央の出し物を見物したりと、存分に祭りを満喫した。

 

 ルナも頻繁に参加していたという割には、表情にでないものの機嫌よさげに尻尾を揺らし、楽しんでいたようだ。俺の飲み物や屋台料理が空になるたび、嬉しそうに追加を買いに走っていた。

 

 子どもじゃないのだからそこまで面倒を見なくともよいのだが、ここ最近ずっとこうなので、もはや慣れつつある。

 

 ――そう言えば、今日は祭りを楽しむ以外にも収穫があった。そう――獣人コミュニティにおけるルナの評判を知れたことだ。

 

 祭りには獣人区に暮らす者の多くが参加しているらしいが、けっこうな割合でみなルナのことを認知しているのである。しかも、ルナは王都に住む獣人の中でも一番の出世頭と認識されていて、激励や感謝の言葉を頻繁に掛けられていた。

 

 こうして弟子がみなに可愛がられ、あるいは尊敬されている様を直に見られるのは、師匠冥利に尽きた。

 

 対して、俺は獣人の中でほとんど知名度がないらしく、この場で見る限り唯一の普人種ということもあり、ルナの隣のあいつは誰だと悪目立ちしているのだが。

 

 ともあれ、俺はこの祭りへ参加したことに満足しており、来てよかったと思うのだ。……大目的であった、ルナの家族への説明が未だできていないことを除けば。

 

 もう今日は日を改めるか……? そもそも、こんな場で頭を下げるべき話をするってのもおかしな話だしな。

 

 別に俺が選んだ場所ではなかったが、次はどこかレストランでも予約して誠意を伝えるのが良いかもしれない。

 

 そんなことを考えていた時だった。

 

 ――不意に、後ろから何者かが忍び寄ってくる気配。

 

 

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