最強悪役令嬢の『もふもふ』は加減を知らない!婚約破棄ついでに魔獣を手懐けたら、いつの間にか魔国から『難攻不落のヤバい国』認定されてました!?~癒やしとは力なのです!~   作:ケロ王

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第6話 伝説の魔獣でした!

 後ろから付いてくるキャトラに怯えつつも、サラは私に駆け寄ってきた。

 

「お嬢様、大丈夫ですか?」

「もちろん、こっちはキャトラ。猫カフェに協力してくれることになったから、よろしく」

「よろしく頼むニャー!」

「ほ、ホワイトタイガーが喋った?!」

「そんなバカな……」

 

 ホワイトタイガーが喋ったことが珍しいのか、キャトラが自己紹介すると全員が腰を抜かしそうな勢いで驚いていた。一方、私たちのやり取りを聞いていたキャトラが急に怒り出す。

 

「ホワイトタイガーじゃないニャー。コキュートスタイガーなんだニャー」

「こ、コキュートスタイガー?! あの、伝説の魔獣……?」

「サラ、知ってるの?」

「ええ、ホワイトタイガーの上位種にアイシクルタイガーというのがいるんです。コキュートスタイガーはアイシクルタイガーの上位種。記録には残っていますが、確認されたことはない伝説上の魔獣といわれています」

 

 サラの説明に驚く私に対して、キャトラはドヤ顔で私の方を見る。

 

「そうニャー。俺は強いニャー。俺とまともにやり合えるのは、ブラックドラゴンとかフェンリルとかキュウビとかくらいニャー」

「えっ、それって全部……伝説上の存在じゃないですか!」

「サラ、詳しいね」

「ええ、こう見えて元冒険者ですからね」

「そうだったんだ……」

 

 まさかサラが冒険者だったとは驚きだった。でも、冒険者だと考えれば、王宮での大立ち回りも、馬車に慣れているのも、魔物に詳しいのも納得である。それにしては若い気もするけど、流石に年齢を聞くのは失礼だろう。

 

「そういうわけだから、お前も泣いて喜ぶニャー」

「しかし、まさか人間が伝説級の魔獣を手懐けられるなんて……」

「人間ごときに従ったりしないニャー」

「えっ? でも私は人間ですよ」

「お前は特別ニャー。俺に勝ったのもあるけど、お前に屈服させられると、従わなきゃいけないと思わされるニャー。不思議ニャー!」

 

 キャトラの話を理解できたわけじゃないけど、どうやら私は人間よりも魔獣に近い存在なのかもしれない。あるいは『深淵の愛し子』であることが関係しているのかも。そんなことを考えていると、ゲームの中でエリザベスがたくさんの魔獣を王都を襲わせていた場面があったのを思い出した。

 

「なるほど……。もしかしたら、私には魔獣を従わせられる力があるのかもしれないわね。それって、モフモフを仲間にし放題じゃない?!」

 

 予期しない遭遇によって見出された私の力、それは猫カフェにとっても、私の癒しにとっても大きな力となりそうな予感に、思わず顔がほころぶ。

 

「ニヤニヤしててキモいニャー!」

「うっさい! 自己紹介終わったら行きますよ!」

 

 こうして、私たちはキャトラを連れて領都へと向かう。その後は、モフモフとの遭遇どころか、目にすることすらなく領都までたどり着いてしまった。

 

「結局キャトラだけかぁ……」

「こんな大物はともかく、普段ならもっと魔獣が襲ってくるはずなんですけどね」

 

 険しい山道を進んだ結果がキャトラ一匹だったことに、がっくりと膝を落とす。それを慰めるように、平穏だったことをサラが強調してくれた。

 

「俺一匹だけなんて言っちゃダメニャー! 俺は、そこらの魔獣千匹分にはなるニャー!」

「そうだね。ゴメン……」

「……調子狂うニャー」

 

 キャトラにまで慰められる始末。でも、ショックが大きいのは変わらない。

 

「しかたないニャー。俺がいると、たいていの魔物とか動物は逃げ出すニャー」

「えっ?!」

「ああ確かに。強力な個体がいると、魔物の生息範囲が変わるんですよ。その周辺からは魔物がいなくなって、強い魔物がいないはずの場所に現れたりして問題になることもあります」

 

 キャトラとサラの言葉の内容をじっくりと考える。要するに、キャトラがいたから、周りの魔物も動物も逃げてしまって、見なくなった、ということらしい。

 

「そういうことか……。まぁ、しかたないか」

「俺を見て言うんじゃないニャー! 不可抗力だニャー!」

 

 無意識のうちにキャトラを責めるような目で見ていたらしい。慌てた様子で自分のせいじゃないと主張していた。

 

「ともかく、領都にある屋敷に移動しましょう。そこで、開拓のための人員の確保をいたします」

「そうだね。あ、護衛の皆さんは先触れをお願いできますか?」

「「「わかりました」」」

 

 護衛を先に行かせて、通達と交通整理をお願いする。馬車だけならいいのだけど、突然キャトラが領都に入ろうとしたら、大混乱に陥るだろう。

 

 護衛たちの先触れのおかげで、領都では特に混乱もなく屋敷へとたどり着くことができた。危険はないと説明はしていたけど、巨大なトラの姿には恐怖を感じるらしく、領都の人たちは遠巻きに私たちを見ていた。

 

 屋敷の前では領主代行のグレイが出迎えてくれた。市民と違って遠巻きにするわけにもいかず、震えながらも私に挨拶をしてくれた。

 

「お、お嬢様。長旅、お、おつかれ、さまです!」

「ありがとう。あっちにいるキャトラにも寝床と餌を用意してあげてね」

「は、はいっ!」

「あ、お嬢様。こちらに向かわれていたルイス王太子殿下とユメリア男爵令嬢が、途中で魔物に襲われて、王都に戻られたそうです!」

「どういうこと?!」

 

 二人は、私が婚約破棄をするつもりなのを知っているはず。なんで辺境伯領へ向かってくるのか意味がわからなかった。

 

「えーと、お二人はお嬢様に会う約束をしているとのことで、こちらに向かわれておりました」

「約束? 知らないけど」

「あ、そうだったのですね」

 

 ストーカーかよ……。してもいない約束を捏造して、私を追ってくるなんて頭おかしい。いや、脳内お花畑の二人ならありえない話でもないか。

 

「それで……。その魔物というのがヒュドラでして、山岳地帯の奥の方に出現する魔物が街道に現れたみたいです。当面の間、安全が確認されるまで街道は封鎖になるそうで、王都では冒険者や騎士団が討伐に向かうそうです」

「へぇ、大変なことになってますね。山道を通って正解だったということですか……」

 

 ヒュドラとは頭を複数持つ巨大な蛇の魔物である。とはいえ、街道の悲惨な状況を聞いても、私にとっては他人事のようなものだった。

 

「お嬢様。その街道の魔物、キャトラが原因だと思われます」

「そうなの?」

「はい、ヒュドラはむしろ山道の方で遭遇する魔物で、キャトラを恐れたヒュドラが反対側の街道の方へ出てしまったのではないかと」

 

 間接的ではあるものの、キャトラが二人を追い返してくれたようなもの。不謹慎ではあるが、その話を聞いて私は少しだけキャトラに優しくしようと思ったのだった。

 

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