最強のエースパイロット…の陰でしれっとスコアを伸ばすとある一般隊長のお話   作:Yura0628

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還れた者、そして還れなかった者

『ソウルキーパーよりオオタチ1。貴機は間も無くこちらのコントロール下に入る。武装システムをオフラインに』

 

「了解」

 

ソウルキーパーの指示に従い、俺はディスプレイを操作して各武装をオフラインに切り替え、機体制御を着艦システムに委ねる。

 

『システム接続完了、着艦まで20秒』

 

後に続くソウルキーパーのカウントと共に、〈かこ〉の後部ハッチが近づいてくる。

 

ふと視線を動かすと、〈かこ〉の装甲には戦闘による痛々しい損傷が残っているのが見え、ワープ航行に支障が出かねない程の傷は無人機が仮修復を行っているのが確認できた。

 

(お前も頑張ったんだな…)

 

 

愛機(紫電改)ほどでは無いが、それなりに長い間自らと共に任務に赴き、その度に迎え入れてくれる存在だ。愛着が湧かないわけがない。

 

「…お互いお疲れ様…だな」

 

『ん、何か言ったか?』

 

「いや、何も」

 

『?まぁ良い。よし、着艦させるぞ』

 

僅かな衝撃。機体が着艦口内に設置されている着艦制動装置に触れ、アームが両脚部を固定、そのまま艦中央の格納庫まで移動させて行く。

 

後ろから部下達の機体も続いて着艦してレーンを移動してくる。

 

『隊長…ようやく終わりましたね…』

 

「そうだな…母艦に帰ってくると、やっぱり落ち着くな」

 

『終わった実感が湧いて脱力しています…』

 

『Named2機と戦っていた時は気が張り詰めっぱなしだったからね、ようやく休める』

 

オオタチ2の言葉にオオタチ6も同意している、生真面目なオオタチ2(ツルギ2)と若干いい加減なオオタチ6(ハクバ1)は相性あまり良くなかったはずなんだが…死線を共に潜ると関係も変わるか。

 

『オオタチ6、貴官は整備課より呼び出しが掛かっている。なんでも再整備時に武装をそこらに放り出してそのままだったらしいな。連中、かなりお怒りだぞ』

 

 

『……了解』

 

『……隊長、やはり俺あの人嫌いかもしれません』

 

「やれやれ…」

 

まぁこんな気の抜けた話が出来るのも、生きて帰ってこれたからこそ、か。

 

その後も労いの言葉を掛け合いながら、やがて格納庫に辿り着き機体を降りると俺たちを歓声が包み込んだ。

 

艦のクルーのほとんどが、格納庫に集合して出迎えてくれたらしい。

 

「さすが()()()()()()だ!」

 

「艦隊を救ってくれてありがとうな!」

 

「お互い生きてて何よりだぜ!」

 

 

俺達を労う声、俺達を讃える声、俺達に感謝する声。

 

それぞれ意味は違えど、俺達の感情を揺さぶるには十分だった。

 

まずオオタチ6が大声で泣き出しクルー達に向かって走る。

 

続いてオオタチ4(ツルギ9)オオタチ8(ハクバ5)

 

オオタチ4(ツルギ7)も無表情を装ってはいるが、目元に若干の光の反射があったのを俺は見逃さなかった。

 

「隊長…たまにはここまで称賛されるのも…悪くはないですね」

 

「あぁ、そうだな…たまには、な」

 

「…確かに毎回だと、さすがに大袈裟だとなるかもしれませんね」

 

「ははっ、違いない」

 

オオタチ2に返答しつつ俺は、ガラ空きになった格納庫の奥へと目をやる。

 

(アイツらも、この賛辞を受けたかったんだろうか)

 

脳裏をよぎる彼らの笑顔…出来るだけ多くコミュニケーションを取ろうと心掛けてはいたものの、俗に言う雑談というものを最後にしたのが数ヶ月前という奴もいた。

 

いつも飄々としてる奴もいた。

 

物静かなくせに好きなことの話になると、途端におしゃべりになる奴もいた。

 

不真面目に、見えて裏で自機の整備を、自分でしてる奴もいた。

 

必死に俺の、動きを、真似しよう、としてた、奴も…

 

「隊長…」

 

「すまん…気にしないでくれ」

 

気づけば、俺の頬を液体が伝い、床に染みを作っていた。

 

その後しばらくそちらを見つめていると、俺の視線がそちらに向いていることに気づいた1人のクルーが、格納庫の奥へ、《敬礼》をした。

 

その動きは周囲に伝播して行き、喧騒が収まっていくのと同時に敬礼する人間はどんどん増え、最終的にその場にいたクルーの全員が《還れなかった者達》へ向け、その働きに感謝と労いの意味を込めて、敬礼を。

 

俺はしばらく動けずにいたが、突如響いた声に意識を引き戻される。

 

「……オオタチ隊各員、任務ご苦労だった」

 

そう言ってハッチから現れたのは、ヒビヤ艦隊司令官〈ダイチ・ヒビヤ〉。

 

司令の後には艦隊司令部の人間が続き、その中にはソウルキーパー〈ハルト・イイズナ〉の姿もあった。

 

ヒビヤ司令は俺の前までくると、俺よりも階級が上でありながら先に敬礼をしてきた。

 

慌てて敬礼を返すと、ヒビヤ司令はゆっくりとした口調で俺に話しかけてくる。

 

「ヒビヤ艦隊司令官として、貴官らの奮戦に最大級の感謝を表する。貴官らが居なければ、我々はあの暗礁宙域でハクタカ諸共宇宙の塵になっていただろう。本当に、ありがとう」

 

「……自分たちは自らの任務を果たしたまでです。ですが…過ぎた謙遜は相手の存在をその程度だと言うのと同義でもあるので、受け取ります、その感謝を」

 

後半部分は絶対にいらないが、思わず口から出てしまった。

 

「ふっ、それで良い。口に出さなければ100点だった」

 

「元からこのような性分でして…」

 

「ハッハッハ、…そうか。貴官らしいな」

 

「はっ?」

 

「いや、こちらの話だよ。さて、貴官らに伝えることが幾つかある。今から30分後、艦長室に来たまえ。他の人員も、それまでには通常の状態に戻っておくように」

 

「「「はっ!」」」

 

その後もしばらく格納庫に留まった後、俺たちは解散した。

 

 

だが俺が格納庫から出ようとした時、ふとそんな俺たちの様子を見ていたヒビヤ司令に目がいった。

 

穏やかな笑みを浮かべて俺たちが談笑するのを眺めていた司令だったが、俺が目を向けた時、ヒビヤ司令はどこか感情を堪えるような顔で、()()()()()()()()()()()()()

 

(…!)

 

数秒そのまま微動だにしなかったヒビヤ司令は敬礼を解くと、外していた帽子を被り直し、足早に格納庫を去っていく。

 

 

声を掛けようか迷ったが、俺は首を振りそのまま自室へと向かう。

 

 

艦隊司令官である人物が涙を流している姿など、誰にも見られたくないだろうから。

 

 

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