最強のエースパイロット…の陰でしれっとスコアを伸ばすとある一般隊長のお話   作:Yura0628

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Named未満

 

 

 

 

「貴方達が本当に私たちの教官に相応しいか、私が確かめてあげます」

 

 

(どうしてこうなった)

 

目の前で腕を組みこちらを睨む少女を前に、俺は半ば現実逃避で先程までのことを思い出していた。

 

 

*******************************

 

部屋を出た俺達はまず警備ドローンの排除対象にならないよう飯山教導基地における教官を示すとバッジを胸につけた。

 

その後カドナ中尉の運転するLAVに乗り込み、基地内の各施設を繋ぐ高架式道路を、広大な敷地にそびえる各施設棟の説明を受けながら宿舎棟へと向かい、各部屋の案内を受けた。

 

ここで今日は休んでも良かったんだが、カドナ中尉が「どうせなら兵器区域も案内しましょう」と言ったため、初日の内に基地の大まかな概要は全て把握しておいた方が良いだろうと判断した俺達は、そのまま兵器区域へと移動、最初に入った巨大なハンガーで…「彼女」と邂逅することになる。

 

 

「あら?カドナ中尉?」

 

「…〈シノノメ〉中尉」

 

ツインテールに結われた桜色の髪、桜色の瞳を持つ少女は、一瞬こちらに視線をやると再び口を開く。

 

「1週間ぶりかしら、基地が広すぎるのも考えものよね、何か聞こうと思っても中々会えないから…それでカドナ中尉、「あの話」はまだ通らないの?」

 

「当たり前でしょう…自分にN()a()m()e()d()()()()()()()()など不可能です、どれだけNamedが強力かつ貴重な戦力だと思ってるんだ」

 

「でもアタシはこの学年の主席よ、自分好みの教導を希望できる。違ったかしら?」

 

「だからと言ってNamedを…」

 

とここで、宙を泳いだカドナ中尉の視線がこちらを捉えた。

 

(なんか嫌な予感)

 

「……Namedは無理でも、Named相手に生き残ったパイロットの教導なら、受けることが出来るかもしれません」

 

「へぇ?それは誰?Named相手に生き残ったなら私も名前くらい知ってるはずだけど」

 

「…今あなたの前にいるこの方々ですよ」

 

カドナ中尉がそう告げた瞬間、場の空気が一変した。

 

桜髪の少女の鋭い視線が俺達を射抜き、とんでもない威圧を放ってくる。

 

「(怖っわ…)あー、初めましてだな。俺達は元大和連邦航宙軍第628戦術戦闘飛行隊ツルギ、だ。俺は隊長を務めていたソウヤ・イワモト。階級は大尉」

 

 

「〈ヒビキ・シノノメ〉です。申し訳ないですが、アタシは貴隊のことを初めて知りました。先程カドナ中尉がNamed相手に生き残ったと言っていましたが、本当ですか?」

 

「本当だ。俺達は数週間前にロイヤル王国のNamedと戦い生き残った。最も、多大な犠牲はあったがな…」

 

「なるほど、一応Named相手に生き残ったと」

 

やけに「一応」の部分を強調しながらシノノメは頷き、とんでもないことを言い出した。

 

「なら…私と模擬戦してもらえませんか?」

 

「……は?」

 

「貴方達が本当に私の教官に相応しいか、確かめてあげます」

 

 

 

 

******************************

 

さて現実逃避はこのくらいにして…

 

 

 

 

「シノノメ中尉…!いい加減に「私が要求したのはNamedの教官、それから1段階下がるのだからせめて実力を確かめさせて」…分かりました…」

 

 

おいそこで引き下がるなよ。元はと言えばお前が俺達を売ったからだろうが。

 

 

「それで?もちろん受けて貰えますよね?」

 

「……いいだろう、まずは誰とやる?」

 

 

後ろで部下達が首を振ってる気配がする…おいやめろ、ツルギ隊としての誇りは無いのか。

 

そんな部下達の様子に呆れたのか、ため息を吐きつつシノノメは俺を指差した、

 

 

「はぁ…貴方の部下さん達が情けなくて嫌悪感すら覚えるので、イワモト大尉、お願いします」

 

「……わかった」

 

 

まぁそうなるよな、取り敢えず部下達(ヘタレども)は後で〆るとして、模擬戦の条件とか決めないと…

 

「じゃあ模擬戦のルールはどうする?決着方法諸々シノノメが決めて良いぞ」

 

「っ!舐められたものですね…意図的な撃墜以外ならなんでもあり、とかどうでしょう。兵器出力は実戦で」

 

「は!?いや待て待て待て、模擬戦の意味分かってるか?」

 

 

なんだってコイツはこんな突拍子もないことばかり言うんだ!?

 

 

「もちろん分かってますよ、だから意図的な撃墜は無しにするんじゃないですか」

 

(ダメだコイツ話が通じねぇ)

 

それに俺をビビらせようとする意図が見え見えなんだが…乗るわけねぇだろ…

 

「と言うかNamed相手に生き残った人が、今更実弾にびびるわけないですよね?もしかして怖気付いてます?」

 

……前言撤回、絶対泣かす。でもまだ問題はある。

 

 

 

「分かった…だが実弾使用を許されるのか?お前はまだ学生だろう?」

 

「私が許可しよう」

 

だがここで割り込んできたのは、モリタ司令。

 

 

 

「モリタ司令、良いのですか?」

 

「そもそもここは学園であると同時に演習場でもある。実弾使用は問題ない。それに意図的な撃墜は無しなのだろう?ならば構いはせんよ」

 

「了解」

 

言外に生徒に落とされる教官を呼んだつもりはないと言われ、俺は拳を握る。

 

 

「では30分後に演習場で会いましょう、せいぜい逃げ出さないことです」

 

 

それだけ言うとシノノメはハンガーの奥の方へ走って行く。やがてシノノメの姿が見えなくなると、モリタ司令が口を開いた。

 

「……すまないね、実は先程のトラブルは彼女絡みでもあったんだが、見てわかる通り彼女はかなり傲慢になってしまっている」

 

「この基地に彼女に勝てる存在が居ないからですか」

 

「そうだ、近頃は外部から演習に来たパイロットに喧嘩を吹っ掛けまくるようにすらなってな…なまじ学生かつ腕があるだけ処分も下しづらい。正直に言うと今回君達を呼んだのには彼女の存在もあったんだ」

 

「…言っときますけど、勝てるかどうか保証はありませんよ」

 

「分かっている、だが負けるつもりなどないだろう?」

 

やっぱりバレてるか、別に構わないが。

 

「勿論ですよ、では機体の準備があるので」

 

「うむ、()()()()

 

そのまま俺はカドナ中尉に自分の機体の場所を聞き、駐機されている場所へ移動する。

 

 

「隊長…なんですかアイツ…」

 

「はっ、決まってるだろ。ただの井の中の蛙だ」

 

 

そして俺が見上げた先、鋭角なシルエットに変わった紫電改二(愛機)が、灰色の装甲に光を反射し佇んでいた。

 

 

 

 

 

 

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