最強のエースパイロット…の陰でしれっとスコアを伸ばすとある一般隊長のお話 作:Yura0628
シノノメから模擬戦を申し込まれた俺は、演習場内に建設された出撃ハンガーで発進を待っていた。
『こちら管制員〈スカイクラウド〉だ。イワモト大尉、聞こえるか』
「あぁ、聞こえている、通信状態良好」
『了解した。貴官の当基地におけるコールサインは〈ヒバナ〉だ。確認の後、発進シークエンスに入れ』
「了解」
スカイクラウドとの通話を終えると、俺は機体のメインシステムを起動した。
《メインシステム起動》
反応炉からエネルギーが供給され、目を覚ました愛機が自らの状態をチェックし、ディスプレイに提示してくる情報に目を通す。
(各駆動部異常無し、新設スラスター及び装甲…異常無し、反応炉稼働率100%。システムオールグリーン)
「こちらヒバナ、発進準備完了」
『スカイクラウド了解。〈サクラ〉、発進準備はまだか』
『こちらサクラ、発進準備完了よ…叩き潰してあげるわ』
「吠え面かくなよ」
『では本戦の概要を説明する。制限時間は30分、使用エリアはA2からC5の凡そ1000ha。勝敗は片方が戦闘不能もしくは制限時間終了時の機体ダメージ数値によって決定する。武装出力は実戦と同レベルだが故意の撃墜は禁止。また、本日はエリアH5にて自律無人制圧兵器の実験が行われている。絶対に侵入するな』
「『了解』」
『説明は以上だ。射出タイミングは既に譲渡してある。30秒後に模擬戦を開始、発進タイミングを合わせろ』
(さて…かましますか)
俺は徐々に開くハッチを睨みながら操縦桿を握り締め、ペダルを踏み込む。
「紫電改二、ソウヤ・イワモト、出るぞ!!」
発進コールと共に高速で発進口から飛び出した俺の眼下には、大和連邦最大の演習場が広がっていた。広大な敷地面積の中には惑星戦において想定され得る全ての地形が網羅されている。
(うおっ!?)
だがそんな景色を眺める暇もなく、俺は重力に引かれ落下していく。慌てて
(さてさて…どう出る…?)
俺の視線の先、所々に桜色のペイントが施された白色メインの機体が飛行していた。
(12式大気圏内要撃戦闘機〔飛燕〕か。武装は確か…っ!?)
反射でシールドを構えた俺を襲う衝撃、そして宇宙では聞くことのない轟音。
先制された。
『見つけましたよ…イワモト大尉っ!』
「まぁ流石にバレるよな」
喜色の浮かぶシノノメの声に応えながら俺は機体の状況を確認する。
(機体の損傷軽微、シールド損壊率30%か、投棄にはまだ早いな)
『咄嗟にシールドで庇ったみたいですが、先制は貰いましたよ』
「はいはい」
『〜〜!!落とすっ!』
俺がわざと素っ気なく返すとシノノメは怒気を露わにし、再び電磁加速砲を放ってきた。ソニックブームを伴って飛んでくる砲弾を俺は地面から飛び上がる事で躱し、そのまま飛燕へ粒子砲を向け、数回トリガーを引く。
『っ!当たりませんよ!』
(当てる気なんかねぇよ)
回避起動をとったトキへ向かった粒子は悉く外れ、大気へ霧散していく。さらに周囲の空気が粒子のエネルギーを吸収し熱を持ち、途端に周辺気温が上昇した。
俺は放った粒子砲を構えつつ高度1000mにて擬似的なホバリング状態へ移行、シノノメの動きを待つ。
『なるほど…あくまで待ちの姿勢は崩さないと…では仕掛けさせてもらいますっ!』
言いながらシノノメはスラスターを全開、こちらの牽制射撃に一切怯む事なくロングソードを展開して直上から切り掛かってくる。対応して俺もビームソードを抜刀、切り結ぶ。だが機体の重量と落下の勢いに押され高度が下がってしまう。
(チッ、巧いな)
流石は主席と言った所だろうか、周囲の環境をうまく戦闘に利用している。更に
『なんで一言も発しないんですか?話す余裕も無いとか?』
嘲るような言葉に一瞬イラっとくるが、我慢我慢と言い聞かせ戦闘に集中する。
この戦闘の目的はシノノメの高飛車を矯正する事だ。下手に言い合えば目的達成が出来なくなるかもしれないしな。故に序盤は敢えて押され一言も発さずに攻撃を受け続ける。だがある程度時間が過ぎれば…
『まぁ良いです。どちらにしろ私が勝つ事に変わりありません。今まで戦ったパイロット達も最初は余裕そうにしていましたが、結局私に敗北していますし』
(確かに今まではそうだったかもな、だが毎度続くと思ったら大間違いだ)
《2:41》
一瞬目をやったディスプレイに表示された経過時間は未だ3分経っていない。先は長そうだ。
なんて事を思いつつ俺は抵抗を止め下方向へ急降下、林の上を掠めつつ飛燕から距離を取る。
『また…!逃さない!』
電磁加速砲を放ちながら追ってくる飛燕、シールドが被弾する衝撃を逃しながら俺は思考を巡らせる。
(humanoid形態での大気圏内飛行ではこちらの分が悪い。ならば…)
追いかけっこになる前に俺は機体をcruise形態に変形させ垂直上昇、十分な高度を取った上でGRSをOFFにし機首から落下を開始する。
追ってきていた飛燕はこの機動に虚を突かれたのか電磁加速砲を放つが狙いが定まらず、全弾外す。
『っ!妙な真似を…!』
(200m…100m…今!)
ロングソードを展開して振りかぶる飛燕と急速に接近した俺は、直前でhumanoid形態へ変形、スラスター全開と共にGRSを起動し急制動を行う。
(グッ…)
慣性制御装置を持ってしてもなお掛かるGに耐えつつ機体を捻り、剣閃を躱した俺は半壊したシールドを飛燕へと投げつけ、センサー位置から割り出した死角に飛び込む。シノノメからは俺がシールドの裏に隠れたよう見えるはずだ。
『絡め手しか出来ないんですか…貴方は!』
怒声と共にロングソードでシールドを切り裂く飛燕、だが俺の姿はそこには無い。
『なっ!?どこに…後ろ!?』
「そろそろ良いか」
《4:00》
制限時間は30分だが、俺が想定した戦闘時間は
………1分で終わらせてやる。