最強のエースパイロット…の陰でしれっとスコアを伸ばすとある一般隊長のお話 作:Yura0628
『いつの間に後ろに!?でも奇襲しなかったのは判断を間違えましたね!』
「…どうだろうな?」
一閃。
『なっ……』
振り下ろされるロングソードを躱し懐に飛び込んだ俺は、飛燕の左肘から先を切断、そのまま地面へ向けて思い切り蹴り飛ばし、体制を整えようと飛燕の動きが直線的になったところへ粒子砲を放つ。
先ほどまでとは違い、確実に機体を捉える射線。
必死にシールドで防ぐ飛燕だが、humanoid形態での高い大気圏飛行能力を実現する各部大型スラスターが仇となり、被弾する。
『グッ…まだ…!!』
「ほら、どうした。その程度か?」
俺に追い縋る飛燕。機動性による優位が失われた今、パワー勝負に持ち込まなければ勝てないと踏んだのだろう。
判断自体は正しい、だが自身の余裕の無さを自覚出来てない。
「感情を昂らせてもいいが、直接自分の動きに反映するな。冷静な部分と感情に支配される部分を切り分けろ」
『言われなくても…!!』
「いや、出来てない…だからこうなる」
前方スラスター全開、反転……突如直上へ宙返りした俺に反応出来ない飛燕のバックパックを急降下と共に切り裂き、距離を取った後ミサイルを放つ。
放たれたミサイルは、推力不足により満足な回避機動が取れなくなった飛燕に全弾命中し右下腿部、左肩部大型スラスターを破壊した。
(これで大気圏内飛行はほぼ不可能、さて…)
放たれる電磁加速砲弾を冷静に躱し、俺は落下していく飛燕を眺める。
《4:32》
「終わらせるか」
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私は、焦りと、怒りと、
まるで当たらない弾、幾ら斬り掛かっても躱されるロングソード、どれだけ追い縋ろうと、向こうに追い付かれる意思がない限り決して捉えられない機動。
(怖い)
本当にNamedに満たない存在だとは思えなかった。対面した時の印象や覇気はNamedに及ばなかったが、今こうして戦ってみると、そんなことがどうでも良くなるほど力の差を感じる。
けれど、弄ばれているという事実が私を突き動かす。
私は負け無しだった。今まで戦って来た教官や同級生、そして現役兵含む全てのパイロットと戦い、勝利して来たのだ。
だからこそNamedを教官に付けることを希望し、それが叶えられないことが分かると、湧き上がる激情を偶々居合わせたNamedから生き延びたというパイロットにぶつけ、抑えようとした。
どうせ運良く生き延びただけのパイロットだ、私の敵じゃない。せいぜいストレス発散に付き合ってもらおう…
「言われなくても…!!」
『いや、出来てない…だからこうなる』
衝撃と、損傷を示すアラートが鳴り響く。
なんで!なんで!!
なんでNamedでもない貴方が私を弄べるの?なんで私は…
(勝てないの……?)
《missile warning》
ディスプレイいっぱいに映るミサイル群。反射で機体を動かすが、思うように回避ができず被弾、慣れない衝撃が私を襲う。
(うっ…)
戦闘不能にこそなってない。けれどそれは相手がわざと致命打を放ってないだけ。
本当に落とすつもりならとっくにやられている。命のやり取りとは程遠い戦闘でここまで精神を揺さぶられている事実に、心の中のナニカが粉々に砕け散っていくのを感じる。
信じて疑わなかった。自分は強いと。ここからNamedの教えを乞い、さらに強くなって実戦に出たら、一騎当千の活躍ができると。
(でも、
私は狭い世界では1番だったかもしれない。でも世界は私が思うほど狭くはないのだ。
『これが今のお前の実力だ。シノノメ』
今私の目の前でビームソードを振りかぶっているパイロットも、決して無敵じゃない。時に苦しみ、時に傷つき、それでも前に進むからここまでの強さを手に入れた。
そしてそれは、Namedのパイロット達も同じだろう…
再度の衝撃。同時にメインディスプレイが真っ暗になり、私は頭部センサーが破壊されたことを察する。
この機体にはサブカメラは搭載されていない。要らないものとして取り外したから。
戦闘不能。
『こちらスカイクラウド、〈サクラ〉の頭部センサー破壊を確認。戦闘不能と判断し、〈ヒバナ〉の勝利を宣言する。』
終わっちゃった…
落下していく機体の中で、私は自分の
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腕部高速衝撃砲で飛燕の頭部センサーを破壊した俺は、黒煙を噴きながら落下していく機体の下へ回り込み相対速度を同調、慣性制御システムが生きてるか保証が無いためゆっくりと抱え、高度約20mで静止した。
通信機からは、『ごめんね…ごめんね…』と弱々しいシノノメの声が聞こえ、ゴリゴリと俺のメンタルを削る。
(なんかよく分かんないけど罪悪感が)
どうしようこれと思った矢先、スカイクラウドから通信が入る。
『スカイクラウドよりヒバナ、まもなく回収機がそちらへ向かう。貴官は先にハンガーへ戻ってくれ』
「了解」
地面へ機体を横たわらせると、相変わらず同じことを呟いているシノノメへ
「まぁなんだ、実戦の世界ではともかく、候補生にしてはお前は上澄も上澄みだろう。自信を壊した自覚はあるが、心まで折ったつもりは無い。諦めるなよ」
とだけ言い残し、俺は機体を空中に浮かせcruise形態へ変形、ハンガー区画へ飛び去った。