最強のエースパイロット…の陰でしれっとスコアを伸ばすとある一般隊長のお話 作:Yura0628
ここから俺の物語は始まった…のかもしれない
みずへび座第7星系外縁部:Area56暗礁宙域
────様々な大きさの小惑星が不規則な軌道で移動している暗礁宙域の中を、数隻の駆逐艦と巡洋艦で構成された艦隊が航行している。
その中の一隻、ふるたか型強襲揚陸巡洋艦、2番艦かこ
その艦の格納庫で俺、〔ソウヤ·イワモト〕は巨大な人型、16式両用戦闘機[ヤブサメ改]のコックピットにて出撃を待っていた。
俺の乗るヤブサメ改は、「機」という単位がつくものの中でHVF《Humanoid Variable Fighter》に分類され、全高15mを超える巨大なロボットだ。そのため今の俺は機体との神経接続により視点がかなり高く、格納庫内の様子が一望できるのだが、その格納庫は混沌という言葉が相応しいほどの大混乱だった。とは言っても、物資の固定や危険物の収容などを行っている〈かこ〉所属の乗組員は怒号こそあげているが動揺した様子はなく、実際に恐慌状態に陥ってるのは外部から大量にこの艦に搭乗してきている者達しかいない。
ではどうして格納庫がそれほど大騒ぎになっているのかと言うと、俺の所属する艦隊、「ヒビヤ艦隊」はとある理由から王国、正確には[ロイヤル連合王国]から攻撃を受け、ショートワープを繰り返して命からがらこの暗礁宙域に逃げ込んだのが、それでも敵の追跡を受けているに等しい空間航跡を消せず、再び敵の攻撃を受けることが予想されていたからだ。
そして案の定、敵出現を知らせる警告が艦内に発せられる
そんな中俺は(艦隊は暗礁宙域内を航行中だ。そこらの巡察艦隊程度では追跡はできても捕縛までは無理だろうな。)などと呑気なことを思っていた、思っていたのだが…
『本艦隊後方56000km、王国艦隊ワープアウト。
…どうやら敵はその暗礁宙域ごと吹き飛ばせる艦隊を繰り出してきたらしい。それに対して、こちらは巡洋艦2隻に、中破含む駆逐艦が4隻しか居らず、戦力差は圧倒的である。
本来こんな状況になったら降伏し、捕虜として捕らえられるのが一番生き延びる確率が高いのだが、このヒビヤ艦隊がその選択肢を取ることはないだろう。
なぜなら今ヒビヤ艦隊が輸送しているものが俺が所属する国、「大和連邦」が誇る最強のパイロット、〔ハクト・サカイ〕の愛機だからだ。(ちなみに格納庫で騒いでいる整備士達はこの機体について来たやつら)彼の愛機である純白のHF[ハクタカ]は連邦の軍事技術の粋を集めて作られた最新鋭機にして、彼専用のワンオフ機であるため、絶対に王国に渡すわけにはいかない。
もし仮に王国の手にハクタカが渡った場合、連邦の軍事機密が大量に流出する上、ハクト・サカイの戦闘データが奪われてしまう、もしそうなれば、彼を中心とした連邦の快進撃は停止せざるを得なくなるだろう。
ならどうしてそんな大事なものをこんな小規模艦隊で輸送しているか、疑問に思ったんじゃないか?「大規模な輸送船団で輸送すればいいのに」とも、「それが出来ずともその〔ハクト・サカイ〕を乗せた上で輸送すれば襲われてもどうにかなるんじゃないか?」ともな
その疑問はもっともだが、今はのんびりと答えている暇はないらしい
『敵
通信による指示の後、艦外の光学カメラから共有された映像にロイヤル王国航宙軍の主力戦艦であるNelson級攻撃戦艦がこちらに砲塔を向け、エネルギーを充填している様子が映し出される。
あんなものをまともに食らえば駆逐艦はおろか、巡洋艦である〈かこ〉もひとたまりもないだろうが、大混乱に陥っている格納庫とは対照的に、艦隊通信では至って冷静な指示が飛び交う。そして各艦の防御態勢が整ったその瞬間、極限まで圧縮された幾筋ものビームがヒビヤ艦隊に向かって放たれた。
放たれた紅いビームは射線軸上にある小惑星を総て蒸発させながら向かってくる。しかし莫大なエネルギーを含むそれは、ヒビヤ艦隊にダメージを与えることは叶わずに、宇宙空間に霧散していった。
(さすがヒビヤ艦隊だ、各艦のリアシールドを融合させ円錐状に展開して戦艦の砲撃を往なした)
続けて放たれる砲撃も悉く弾かれ、このままなら耐え切れると思うかもしれない。
しかし、この戦法は直線的な攻撃であるビームや電磁加速砲には有効だが、不規則な軌道で向かってくる艦載機やミサイルに対しては有効性は低くなってしまう。それに、俺の見立てではそろそろ…
『敵艦隊より艦載機の発艦を確認、ツルギ隊、ハクバ隊は前方カタパルトより発進せよ』
(お出ましか…!)
Nelson級の砲撃がひと段落したからか、敵艦隊は航空母艦を中心に大量の艦載機を発進させてきた。
そして、艦隊司令部より発進の指示が出た機体が自動で格納庫から発進口に移動させられる間、俺たちパイロットに敵艦載機の情報が渡される。
(敵部隊の編成は…
そんなことを思いつつこれから始まる迎撃戦のプランを部隊に共有し、俺は[ヤブサメ改]のメインシステムを起動した。
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ソウヤによってスリープ状態から起こされた鋼鉄の巨人は、眠気を吹き飛ばすかのように反応炉を活性化させ、機体の足元から順に各スラスター、駆動部、スライド量子装甲、センサー、内蔵武装等を確認する。
そして全てのチェックが終了して出撃準備完了をパイロットに示すと共に、自身のバイザーに蒼い光を灯す。
『こちらツルギ1、発進準備完了』
『管制室了解、発進シークエンスを開始』
自分のパイロットと管制官のやりとりを聴きながら、鋼鉄の巨人は自らの足を固定するカタパルトにエネルギーが充填されるのを認識する。
『…エネルギー充填完了、射出タイミングをソウヤ・イワモトに譲渡する』
『了解((行くぞ相棒…!))』
『ヤブサメ改、ソウヤ・イワモト、出るっ!』
そのパイロットの言葉と共に、鋼鉄の巨人は電磁カタパルトによって時速1200kmまで加速され宇宙空間へと飛び出した─────
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─────愛機と共に宇宙空間へと飛び出した俺は、慣性制御で弱められたGを感じながら機体をcruise形態に変形させ、先に出ていた部下達と合流を目指す。
そして部隊と合流すると真っ先にツルギ2から通信が入り、状況を伝えてきた。
『隊長、敵部隊は3隊に分裂し、内2隊は我々、もう1隊はハクバ隊に向かったようです』
「分かった。司令部、分裂した3部隊の編成を送ってくれ」
本格的な艦載戦闘部隊を擁するのは〈かこ〉のみなので、敵の大規模艦載部隊をツルギ隊とハクバ隊だけで抑えなければならない。そのためには、全機が効率的に敵と交戦する必要があることを認識しての通信だ。
『了解、お前達に向かっている2部隊はspitfireとswordfishで構成されている。ハクバ隊に向かったのはtempestだけだ。これがまずいことは、お前にも分かるな?』
「…あぁ」
ハクバ隊を構成する98式支援攻撃機タンチョウは、後方支援能力と隠密能力に秀でているが近距離戦闘になると脆弱で、本来は別の機体群(この場合は俺達)がカバーする必要がある。
今回は機数でこちらが圧倒的に不利なため、俺達が正面から敵を受け止めているところにその隠密能力を活かして回り込んだ後、側面から支援攻撃を行う予定だった。が、敵が従来の縦方向ではなく横方向に分裂した上、捕捉されてしまった。さらにハクバ隊に向かったのは機動力と近接戦闘能力に優れるHVF、tempestだ。
タンチョウの長距離砲撃で幾分か数は減らせるだろうが、奴らの攻撃可能範囲に入ったら最後。数機でも残せば24機しかいないハクバ隊は全滅するだろう。
かと言って、こちらがspitfireとswordfishを放置してハクバ隊に向えば今度は艦隊が危険に晒される。
ならどうするべきか
(現状こちらの戦力はヤブサメ改が26機、タンチョウが24機、艦隊はNelson級からの攻撃を受け続けていて長距離支援はほぼ不可能か。せめてハクバ隊の前衛を務められる部隊がいればtempestを抑えられるんだがこの数では…分断もやむを得ないか)
僅かな思考の後、俺は部下達に命令を出す。
「全員聞け、これからこの部隊を二つに分ける」
「ツルギ8までは俺に着いてきて、ハクバ隊の前衛を務めるぞ。ツルギ9以降は艦隊防空兵器の射程範囲に敵2部隊を誘い込みつつ迎え撃て。戦力差は圧倒的だが、絶望ばかりじゃやってけないからな、希望を言おう、この迎撃戦は味方の艦隊がたどり着くまで生き残れば俺達の勝ちだ。司令部!『味方救援艦隊到着まで、あと8分だ』…聞こえたな?あと8分生き残ればいいんだ。各員の奮闘を期待する」
『『『『了解』』』』
部下達の勇ましい返事を聞いた後、俺は司令部にも通信を入れる。すると、通信を担当する管制から珍しい言葉が飛び出した。
「司令部、ここに残してく奴らのお守りは任せた」
『了解した。…すまないな』
「?急にどうした。お前が謝るなんてらしくないぞ、〘ソウルキーパー〙」
『いや、アカデミーを卒業して1年も経っていないお前に任せる作戦じゃないと思ってな。俺達にもっと航空作戦のノウハウがあれば良かったんだが…』
「その事なら仕方ないさ。どこぞのエースに影響されて多少改善されつつあるとは言え、連邦軍は絶賛人手不足だ。それこそ10代の兵士が全体の3割近くを占めるほどにな。それを考えたら、ちゃんとアカデミーを修了した20の俺が部隊長を務めるのも、この作戦を立案し実行するのもそこまで不思議なことじゃない」
『そういうことではないんだが…まぁいい。今は敵を撃退するのが先だ。俺達もベストを尽くす。そちらは任せたぞ』
「あぁ、任された」
そう言って俺は通信を切った。
(まさか冷徹と名高いソウルキーパーがあんなことを言うなんてな…)
もちろん驚きはあるが、それよりもあそこまで言われてはと奮起する気持ちが湧き上がってくる。
そしてそれは部下達も同じのようだ。
『隊長。ツルギ2以下全機、戦闘準備完了です』
「分かった…では始めようか」
そう俺は告げると、スラスターの出力を一気に上げてハクバ隊の居る方向へ向かった。もちろん部下達も離れることなく俺に追従し、一切編隊を崩すことなく加速を続ける。
ハクバ隊は無線封鎖を行いつつ事前の配置に着こうとしているため、tempest部隊が自分達に近づいていることに気づいていない。さらに俺達が接敵するのとtempest部隊がハクバ隊に到達するのはほとんど同時刻になると予想されており、ハクバ隊と合流し情報を共有する暇は恐らく無いだろう。ならば一直線にtempest部隊に向かった方が多少はマシなはずだ。
そして速度が40km/sに達した頃、敵tempest隊をヤブサメ改のメイン射撃兵装である09式粒子砲の射程圏内に捕捉した。
(ハクバ隊までまだ距離がある。彼らから出来るだけから遠くで交戦するには、今撃つしか無い)
ここで撃つべき否か、俺は即座に判断を下し、トリガーに指を掛けて部下達へ命令する。
「目標を射程圏内に捕捉、ツルギ1より各機、射撃開始。ターゲットロック、撃て!」
次の瞬間、8つの砲口から光が迸り、tempest部隊に突き刺さった。
俺の放った粒子砲は、敵が密集していたこともあり3機を貫通して破壊、もう1機に着弾し中破相当の損傷を負わせ、部下達の放ったものも、各々が複数機を巻き込んで破壊する。
そしてそれらの破壊が行われる間に俺達は急速に距離を詰め、すでに目視距離まで接近していた。
「各機編隊を解除、自由戦闘開始!機数で不利なんだ、決して足を止めるな!」
『『『『了解!』』』』
俺の指示で編隊を解除した部下達は、突然の襲撃に混乱している敵部隊に突っ込み交戦を開始する。
もちろん俺も敵のど真ん中に突っ込み、せっかく得た運動エネルギーがもったいないとは思いつつcruise形態を解除、ビームソードを抜刀し機体に構えさせた。
「さて、俺も始めさせてもらうぞ!」