最強のエースパイロット…の陰でしれっとスコアを伸ばすとある一般隊長のお話   作:Yura0628

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あれから数分の飛行を経てハンガー区画へ戻って来た俺は、自分に割り当てられた駐機ポイントに着陸した。

 

コックピットハッチを開け、機体の外に出ると何やらこちらを見てくる人間が多い気がする。

 

(なんだ?)

 

疑問に思った俺は機体から降り、1人の整備員に状況を尋ねる。

 

「なぁ、なんで皆してこっち見てくるんだ?」

 

「ん?そりゃアンタがこの基地トップのシノノメ中尉を叩きのめしたからからに決まってんだろ」

 

「……広まるの早いな」

 

「そりゃ()()()()されてたからな」

 

「…は!?」

 

おい待て初耳なんだが。え、てことは俺そんな大人数の前でシノノメ叩きのめしたってことか…?彼女の親衛隊的なのに殺されない?高飛車ではあるけど人気ありそうだしアイツ。

 

(ダメだ。思考がどんどんネガティブな方向に向かっている)

 

俺は別段間違ったことはしてない…ハズだ。なら謂れのない非難を受けることもない。それに何か言われても、モリタ司令の指示だってことにすればどうにかなるだろう…

 

「まぁなんだ、これから大変だろうが頑張ってくれ」

 

なんて思った矢先、何やら意味深な事を言いつつ肩を叩いて離れていく整備員。

 

(………………)

 

周囲の目は以前こちらに向いており、凄まじく居心地が悪い中俺は心の内で呟く。

 

(やっぱり模擬戦、受けなければ良かったかな…)

 

と。

 

 

 

******************************

 

 

 

 

数分後、モリタ司令が再び俺を呼んでいるとの事で俺はハンガー区画管制棟のブリーフィングルームに赴いた。

 

中にはモリタ司令、カドナ中尉に、大佐の階級章をつけた大柄な兵士。そして目元を赤くしたシノノメが居り、俺は対面の椅子に座るよう促される。

 

俺が椅子に腰掛けると、モリタ司令が口を開いた。

 

「先ずは先の模擬戦見事だった。流石はNamedから生き延びただけはある」

 

「はっ、お褒めに預かり光栄です」

 

「これで貴官等を諸手を上げて歓迎することができるよ」

 

一瞬視線をシノノメに向けるモリタ司令。シノノメはバツが悪そうに俯くだけで、口元は引き結ばれたままだ。

 

そんなシノノメの様子に司令は苦笑しながら続ける。

 

「元々後日説明しようと思っていたんだが、早速1()()()()()()()()()()()()からな。この場でもう詳細な事を伝えようと思う、ナガタ大佐」

 

「はっ」

 

短い返事と共に大柄な兵士が立ち上がりこちらへ敬礼してくる。俺も応じると、兵士は先程まで険しい顔をしていた表情を緩め口を開いた。

 

「俺は飯山教導基地、パイロット科教育部長〈ロウ・ナガタ〉だ。このバカ(シノノメ)の我儘に付き合ってくれて感謝する。さて、元々の予定では貴官等の新隊員選出方法は先ず書類による審査、後に実機に乗った上での審査を経て決定し、その後教導。と言ったものだったんだが…」

 

そこでナガタ大佐は言葉を切るとシノノメ、そしてカドナ中尉を睨み、言葉を続ける。

 

「ある兵士の独断によりスケジュールに影響が出かねない事になったんでな。幸いシノノメ中尉の腕に関して我々が懸念している点はない。が、選出予定人数の3()()分の働きを1人でできるかと言ったら到底無理だ。よってツルギ隊から1名シノノメの教導を、そして残りの隊員で新隊員2人を選出してもらいたい。構わんか?」

 

「こちらとしては特に。ただシノノメ中尉は…」

 

「…だそうだが?シノノメ。いつまで俯いている?」

 

ナガタ大佐の言葉に俺はシノノメへ視線を向け…息を呑んだ。

 

「………」

 

顔を上げたシノノメの目の中に、()()()()が見えたからだ。

 

だがその炎は俺が瞬きすると消えてしまったため、見間違えかと思ったが彼女から放たれる殺気に似て非なる気配を感じ取り俺は確信する。

 

今この少女の心では炎が燃え盛っている。初めての敗北に屈せず、(初めての障害)への対抗心を燃やしていると。

 

「聞くまでもなかったか。だが言葉にしなければ伝わらんぞ?」

 

口元にニヤリとした笑みを浮かべたナガタ大佐が更に焚き付ける。

 

そしてシノノメの視線が、俺へと向いた。

 

「………イワモト大尉。いえ…()()。私に、教導を願います」

 

「…任せろ」

 

俺の言葉に、一瞬だけシノノメの顔へ喜色が浮かぶ。だがすぐに元通りの表情になると、俺から視線を外し前を向いた。

 

「ひとまずこちらからの話は以上だ。これにて失礼する」

 

用は済んだとばかりにナガタ大佐が部屋から退出。カドナ中尉とシノノメも後に続く。

 

残ったモリタ司令は、ふぅとため息を吐くと椅子へ思い切りもたれかかった。

 

「まさかここまで上手くいくとは思わなかったぞ、イワモト大尉」

 

「自分もです。正直あのようなタイプは負けを認められずプライドのために愚かな行動を取るか、心が折れてパイロットの道を諦めるかのどちらかになる確率が高かったと思います。ですが…」

 

「シノノメ中尉は負けを認めた上で自力で立ち上がった…か。あの中継映像を見ていた限りだと心が折れたように見えたんだが、ほんの一瞬のことだったらしい」

 

そうだ。俺に敗北した瞬間、あの瞬間の時だけは確かにシノノメの心は折れていた。これまで積み上げてきた自信を真正面から、それもNemedですらない俺に打ち砕かれたんだ。ある意味当然だろう。

 

だけどシノノメは立ち上がった。どうも俺はアイツの新たな一面を発現させてしまったらしい。

 

アイツは、()()()()()()()()()()()という一面をな。

 

「最も、優秀なパイロットが増えるのだから私から言うことは何もない。君は苦労するだろうがね?」

 

「事あるごとに張り合われるのは勘弁ですね…」

 

「はっはっはっ、君なら出来るさ。何せ君は、そして君達ツルギ隊は、〈クサナギ計画〉を乗り越えた数少ないパイロットなのだから」

 

「……それはあんまり関係ないと思いますが」

 

「だがあれに比べれば自分に対抗心を持つ相手など容易いものだろう?」

 

「いずれシノノメにも〈クサナギ〉を受けてもらう事になるので、その後が大変な気が…」

 

「まぁ細かいことは良い。とにかく…頼んだぞ」

 

「はっ」

 

 

 

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