最強のエースパイロット…の陰でしれっとスコアを伸ばすとある一般隊長のお話 作:Yura0628
私が
『近接戦闘で選択を迷うな。ブレるぞ』
「分かってますし、そもそも教官ほど攻撃のバリエーション無いんですけど!」
(HF戦で蹴りを攻撃の選択肢に入れてるのは教官くらいですっ!)
『まぁそれはそうなんだが…それでも、下から切り掛かるか上から切り掛かるか。切り結んだ後に離脱するのか、それとも鍔迫り合いに移行するのか。考えることは多い』
今私は、演習場内で模擬武装を使用して教官と対戦を行っていた。だけど2週間程度で劇的に変わるはずも無く、毎回あしらわれて終わってしまう。
『それから…敵機の細部にも気を付けろ、どこから何が飛んでくるかわからんぞ』
「ぐっ!?っぅ…まだ!『だから感情的になるなっての』きゃっ!」
一度転がされた私は再度切り掛かるも、教官機の腕部からの砲撃を被弾し、怯んだところを地面に叩きつけられた。
(少しくらい腕上がってたら良いんだけどな…)
なんて…こんな甘えた考えが頭をよぎる時点で、私はまだまだなのだろう。
(でも
倒れ込んだ機体の脇に着地した紫電改二を睨みつけ、私は心の炎を滾らせるのだった。
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今日の訓練が終わり、ハンガー区画へ戻って一息ついていると教官が〈アザマ中尉〉を伴ってやってきた。
「シノノメ、突然で悪いが、明日からしばらくはレイに教導を受けてくれ」
「はい、分かりました…教官はどちらへ?」
「ん?あぁ今この基地で無人制圧兵器の実験が行われてるのは知ってるな?どっから聞きつけたのか知らんが、実験部隊の連中から俺に兵器の標的役をやって欲しいと言われてな。断っても良かったんだが、俺自身の技量向上にも繋がると思って承諾した」
「なるほどです」
確かに教官の腕なら、少し生意気だけど標的役として一番適してるかもしれない。Named程理不尽でも無く、かと言って弱すぎる事もない。
制圧兵器と名がついてる以上、多分実験部隊もNamedを撃破することは想定してないだろうし。
「隊長引っ張りだこですね」
「嬉しいけど嬉しくないんだよな…さてじゃあ、2人とも頼んだぞ」
「「了解」」
教官が部屋から出て行き、私は椅子に座りヘルメットのクリーニングを始めたアザマ中尉を見やった。
中性的で顔立ちが整っているのもあってその姿だけでも絵になるし、私と同年代の娘が見たら大はしゃぎしそうだ。
だけど何故か、私は違和感を感じざるを得なかった。何処か目の前の人物と自分の認識に齟齬があるような感覚。
(まぁ良いか)
それでも訓練に支障が無いなら気にすることじゃない。それよりも、一応初対面でこれから関わる相手なのにいきなりヘルメットのクリーニングを始めたことの方が問題な気がする…
「えーっと、初めましてアザマ中尉。ヒビキ・シノノメ中尉です。これからよろしくお願いします」
「………」
「あの…?」
「……………」
こちらから声を掛けたにも関わらず無視…不愉快だが心当たりはあった。
「あの、最初に貴方達に突っかかったのは謝罪s「俺が欲しいのは謝罪じゃない」…は?」
ようやく顔を上げて声を発したアザマ中尉の言葉に、咄嗟に返してしまう。
「俺が求めるのは、アンタが隊長の期待に応えることだけだ。そして、俺はアンタのことを正直認めてない。初対面であんなこと言いやがる奴が俺達の部隊に入るなんてな。でもこれも隊長から頼まれたことだから全力を尽くす。覚悟しとけよ」
「は、はぁ…」
「あーそれから、俺もアンタと一回戦ってみたい。準備しといてくれ」
「え!?」
それだけ言い残してアザマ中尉は部屋から出て行ってしまった。
「何なのよまったく…教官は教官で少し変だし、アザマ中尉も…ツルギ隊って言うのは変人しかいない…?」
私以外誰も居なくなった狭い部屋に、そんな私の声が響き渡った。
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『おいおい…もう少し粘ってくれよ…』
「嘘でしょ…」
先に結果から言おう。一瞬で負けた。
あの後HFに乗り込み演習場で模擬戦に挑んだ私は、最初から負けるとは思っていた。教官に完膚なきまでに叩きのめされたんだから、その部下であるアザマ中尉にも負けるのは当然のこと。
だけど、少し位は善戦出来るんじゃないかとも、心のどこかでは思っていた。
(まぁそんな訳ないんだけど)
タイマーを見やると開始してから2分も経っていない。索敵に割いた時間を考えると私は会敵して20秒程度で負けたことになる。
初弾を躱されcruise形態での急接近を許し、ビームソードのみで撃墜判定を貰ってしまった。ショックは少ないけど、やはり少し凹む。
(教官も、最初から本気を出せば今みたいになったのかな…)
『さてと…おい、シノノメ。さっさと立って構えろ」
「え?…ちょ!?」
『俺は隊長ほど甘くねぇからな…!』
私が機体を立て直した途端、再びアザマ中尉が切り掛かってきた。咄嗟にシールドで防いでも体勢的に明らかに不利だ。
「いきなり何すんのよ!」
『休憩は十分取っただろってことだよ!後敬語忘れてるぞ!』
「同階級でしょ!それにもう初対面じゃないし!」
それから数時間に渡って私とアザマ中尉は戦い、終わる頃には既に辺りは暗くなっていた。
『…こちらスカイクラウド。サクラ及び〈コノハ〉、まもなく演習場の使用可能時間が終わるぞ。そろそろ戻ってこい』
『……了解』
「はぁ…はぁ…了解…しました」
私は息も絶え絶えに返答し、ハンガー区画へ移動を始める。
(やっと終わった…)
『おい、シノノメ』
「…何ですか…?」
『……お疲れ』
………少しは認めてもらえた…かな?
やがてハンガー区画へ辿り着いた私は、機体から降りて更衣室へ向かう。冷却乾燥等各種機能がついたパイロットスーツでも、何時間も気を抜けない時間の間着続けると流石に気持ち悪さが出て来てしまう。
(ふぅ、少しスッキリ)
普通の軍服に着替え、ブリーフィングルームで機器の手入れを始める私だったが、更衣室に忘れ物したことに気付き、再び戻ると…事態は起こった。
ドアを開けると何故か消したはずの電気が付いており、中には
「え?」「へ?」
アザマ中尉だった。