最強のエースパイロット…の陰でしれっとスコアを伸ばすとある一般隊長のお話 作:Yura0628
シノノメの教導をレイに任せた俺は、その足で〈大和連邦軍飛宙開発実験団〉の専用区画に向かった。
区画内へ侵入し、ナビの誘導するままに移動。やがて示された目的地には数名の人影が見え、LAVを停車させ降りると、真ん中の人物が前に出てきて敬礼をし、手を差し出してきた。
「お待ちしていました。イワモト大尉。自分は飛宙開発実験団、富嶽開発部門責任者の〈ハルマ・イノ〉です。これからよろしくお願いします」
「こちらこそ、よろしく」
そのまま握手を交わすと、俺は兵器区画へと案内される。
開発段階である兵器を扱う関係上、実験団のハンガーは演習に来た機体や学園所有の機体が停まる場所とは別に設けられており、あちらとは違って常に騒音が鳴っているわけでは無い。
歩くこと数分、幾つかのシャッターに区切られた内の1つに、「それ」はいた。
-自律無人制圧兵器X-315〈富嶽〉-
事前に軽く資料を見せられた時も思ったが、なんとも言い難い外観だ。
表現するとしたら腕の生えた鳥が最も近いだろうか?
野生動物、それも猫のものを機械にしたような二本足で立ち、背部には巨大なウイングバインダー。
胴体側面には巨大な腕が張り付くように格納されており、頭部は艦船の艦首のような形状をしている。
尾部には
そして何より…
「デカいな…」
もちろん艦船ほどの大きさじゃ無い。だが目測で全高30m超、全幅は60mはあるだろうか?全長も首や尾部が下を向いているため全長はよく分からんが、確実に50mは超えている。
「戦場において、巨大さとはメリットにもデメリットにもなります。大きいほど火力と防御力は上がり、機動性は下がる。一昔前だったなら、我々は富嶽を開発することはなかったでしょう。ですが今は、〈量子装甲〉がある」
「なるほど」
ってなると、コイツには生半可な攻撃は効かない上、損傷を与えても再生されると。
ただまぁ、防御力に対してNamedには少し火力不足な気もするが…
「無論我々もこれをこのまま量産させようなどとは思っていません。既に多対1の性能は要求を満たしていますが、それは通常兵力を相手取った場合です。敵Namedと相対した場合、なす術なく撃破されるのは避けたい。なのでNamedに匹敵せずとも高い技量を持つ貴方と戦闘させ、データを取らせてもらいます」
「あぁ、その辺は事前に説明を受けた。本気でやっていいんだな」
「もちろんです。ただ動力炉の破壊は出来れば避けて欲しいですね。他の部位は替えが効くんですが、動力炉は…」
「分かった。まぁそもそも俺の武装じゃ動力炉まで攻撃届かないだろうしな。大丈夫だ」
「了解です。では………」
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その後、紫電改二に乗り込んだ俺は演習場にてオフライン状態の富嶽と相対していた。
『こちらイノです。富嶽が使用する武装は非実戦出力に抑えてありますが、クローや重量からくる運動エネルギー等は加減が出来ません。決して油断はしないでください』
「分かった…始めてくれ」
『了解、起動します』
《自律無人制圧兵器X-315 コードネーム〈富嶽〉起動》
機械音声が通信機から響いた直後、目の前の富嶽が頭を跳ね上げ、単眼を紅く光らせこちらを睨み据えた。
そして甲高いチャージ音が響いた瞬間…視界が紅く染まる。
(ッ!!!)
富嶽の胸部から放たれた大出力粒子砲を、俺は咄嗟に後ろ上方へ飛び上がり躱す。
「威力ヤバ過ぎんだろクソッタレ…!」
着弾地点には巨大なクレーターが生じており、本当に非実戦出力なのか疑いたくなる。
「まずは1ぱt…マジかよ!?」
どうにか俺は姿勢を立て直し反撃を試みるが、富嶽の肩部から無数の光条が放たれこちらへ向かってきた。必死に向かってくるものを全て躱し切ると、やや嬉しそうな声音でイノが通信を入れてくる。
『富嶽の誘導粒子砲です。威力は標準的なHFの粒子砲に劣りますが、同時発射可能数と誘導能力で富嶽の対多数戦闘能力の要となります』
「威力低いにしてもこれはやり過ぎだッ!」
対
おまけにこの数。数十は確実に向かってきてたぞ。まぁ確かに通常のHF部隊に対しては有効だろうけど!
『富嶽の武装はまだまだありますよ』
「ですよねぇ!」
息つく間もなく次の攻撃が飛んでくる。今度は…オールレンジビット!
尾部から放たれたビットは不規則な軌道を描きながら瞬く間に接近。超至近距離で粒子砲を放ってきた。更にそこへ富嶽本体からの攻撃も加わり、数百の火線がこちらを指向。流石に捌き切ることが出来なくなる。
「このッ…!!ぐっ!」
《右前腕部被弾 高速衝撃砲使用不可》
《左ウイングスラスター損傷 飛行能力低下》
《メインカメラ異常発生 サブカメラ起動》
苛烈極める攻撃に反撃など出来ず、ただただ損傷箇所が増えていく。
同時に俺の脳裏にはあの黒い機体と戦った時の記憶が無力感と共に蘇り、徐々に全身から力が抜けてしまう。
………それでも。
「……ハッ、まだ終わっちゃいねぇよ!」
一閃。
抜き放ったビームソードでビットの1機を両断し、続いて粒子の雨の中スラスターを全開に富嶽へ突貫し、肉薄する。
「遅い!!!」
富嶽は迎撃すべく格納されていた腕部を展開し、クローをもって俺を掴み取ろうとするが、俺は止まらない。
スラスターの光を靡かせながら赤熱したクローを腕部諸共切断し、ある一点を睨みつけた。
(あそこが集積センサー群…!)
あれを破壊すれば奴は機能停止にこそ陥らないが、戦闘行動は不可能になる。ここから勝つならそれしか無い!
(背部ウイングを展開した?空に逃げる気か!)
俺の気迫に押されたように、富嶽は背部ウイングスラスターを展開して空へ飛び上がる。
「空を飛べるのはお前だけじゃねぇんだよ!」
スラスター全開。俺の視界にはもう富嶽の集積センサーしか映っていなかった。
………それが仇となる。
「ガッ!?!?」
《右ウイングスラスター損傷 並びに頭部ユニット損壊》
衝撃と共に、俺の視界が真っ暗になり、そして…
『ヒバナ、頭部センサー損壊。戦闘続行不能』
スカイクラウドの声が、呆然とする俺の耳へ届いた。