最強のエースパイロット…の陰でしれっとスコアを伸ばすとある一般隊長のお話 作:Yura0628
「…………」
富嶽に撃破されハンガー区画へ帰還した俺は、ブリーフィングルームのソファに腰を下ろしていた。
「隊長、候補者のリストアップが終わりました」
そう言って部屋に入ってくるのは、黒髪に紅い瞳を持つ男。元ツルギ7〈ユウ・シノハラ〉。
「あぁ、ありがとう」
候補のリストを受け取り感謝を伝えると、ユウは隣に座り更に話しかけてくる。
「……あまりショックを受けてなさそうですね、隊長」
「んあ?あぁ、まぁな。正直性能データを見ただけで負けるだろうとは思ってたし、むしろ接近出来ただけでも上等だ」
「……そうですか」
「ま、今後しばらくはこっちにかかりきりになる。シノノメはレイに任せたし、候補者への実機による審査も厳しいかもしれん、もし俺が出来なかったらお前に任せるぞ」
「……了解」
「よし、じゃあ頑張れよ」
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「全員敬礼っ!」
俺が部屋に入ると、10人の候補生達が一斉に立ち上がり、敬礼してきた。
「…ご苦労」
こちらも敬礼を返し、彼らに着席するよう促す。全員が座ったのを確認した後、俺は口を開いた。
「……まずは始めましてだな。俺は元大和連邦航宙軍、第628戦術戦闘飛行隊の7番機を務めていたユウ・シノハラだ…今日は諸君らの実機審査を行うべくここへ来た」
そこで一旦言葉を区切り、続ける。
「…諸君らの力を見せてくれ」
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一閃。
『ワカバ3、撃墜された。戦闘区域より離脱せよ』
『クソッ!』
射撃。
『ワカバ7、粒子砲命中。被撃墜判定』
『嘘でしょ!?』
あれから数時間、俺は演習場で実機による審査を行っていた。
『
「了解」
一先ず全員と模擬戦を行ったが…結果は予想通り。例外なく俺達の要求水準に達していなかった。
だがそれでも。
『中でも見込みがあるのはワカバ4と、ワカバ9ですね』
「…同意だ」
やはりデータだけでは分からないものもある。今挙げた2人は水準にこそ達していないが、ワカバ4は俺のビームソードによる攻撃に対応してきたし、ワカバ9は俺の射撃を掻い潜り一時反撃までしてきた。
現時点で選び出すとしたら、この2人だろう。
「だが…まだ決めるには早いな」
『そうですね、
「あぁ…」
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大和連邦本星
大和連邦政府庁舎
「…臣……カラタ大臣!」
「……失礼、少しぼんやりしていた」
「しっかりしてください…」
そのように秘書と話すスーツ姿の男、大和連邦政府防衛副大臣の〈トオル・カラタ〉を、遠巻きに監視する男が居た。
「……ダガーより
『やっとか…直ちに捕縛しろって言いたいけど、まだ尻尾を掴めてないんだ。監視を継続して』
「了解」
数週間前より表に姿を表さなかったカラタ大臣が、今日再び姿を現した。事態は刻一刻と進んでいる。
人混みに紛れながら、男はそう感じるのだった。
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「カグヤ元帥。カラタが再び動き始めました。ここ数週間は水面下で行動していた様ですが、今日政府庁舎に…」
「そうか、いよいよ事態が動くな。大和連邦両軍の態勢を整えたいが…敵に察知されたく無い」
「〈S特〉を始めとした秘匿軍全部隊は既に出動準備に入っています。完了するまで残り1週間です」
「朱雀や青龍はどう動く?」
「アイツらは独自に動いてます。自分の権限では何をしているかまでは…」
ハクトの答えにカグヤはため息を吐く。
「Namedの権限が強すぎるのも考えものだな…」
「まぁ縛りすぎるとNamedの強みも失われますし、仕方ないですね」
そこまで話したところで、カグヤの通信機に連絡が入る。
「……ッと、はい。!?…それは、本当か?」
「…確かに我々は…あぁ、了解した」
カグヤは通信を切り、サカイに向き直ると先程の通信の内容を伝える。
「喜べ、惑星軍元帥の直属部隊が情報を掴んだ。連中…アビスの大和連邦支部だ」
「本当ですか!?〈S特〉でも捉え切れなかったのに…」
「諜報においては惑星軍の方が優れているからな。だが、これで本格的に連中を叩ける…!」
「すぐに準備します。恐らく残された時間はそう多くありません」
「完全に同意だ。我々が奴らを叩くのが早いか、奴らが動くのが早いか。せめて目的さえ判明すればな…」
「今は出来ることをしましょう、では失礼します」
部屋から出たサカイは、廊下を歩きつつ拳を握り締める。
「ようやくこの時が来た…アビス…今度は好きにはさせない…!」
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???星系?番星
アビスと名乗るこの組織の大和連邦支部、その司令室に彼らは居た。
「リウ副長官、第8基地から連絡。惑星更科への攻撃準備完了。いつでも作戦実行可」
「ようやくですか、ではさっさと叩いてしまってください」
指示を出す、アビス大和連邦支部副長官リウ。だが彼の言葉は別の男によって遮られる。
「待て、大和連邦惑星軍がこの支部の位置を捉えた可能性があると、私の部下から連絡が入った。今動けば確実に捕捉される」
言葉を発するのは、以前前線基地視察の際白虎に捕捉され、傷を追いつつ何とか逃走に成功し療養を行っていた、アビス大和連邦支部長官〈テオ〉。
屈強な体格をしたテオは、そのまま歩みを進めリウの前で止まった。
「これは長官殿、療養期間はもう宜しいので?」
「既に傷は完治した。現時点をもって本支部の指揮権を委譲せよ」
「分かりましたよ…ですが作戦実行の可否に関する権限は私にあります。これは指揮権があなたに移ろうと変わりませんよ?
「……良いだろう。だが作戦指揮は、この場で、お前が行え。それが条件だ」
「なら何も問題ありませんね、では私はこれで」
バカにした様な笑いを浮かべつつ、リウはお辞儀をし部屋から出ていく。
「……やむを得んか」
呟くテオの胸には、作戦の成功失敗に関わらずこの支部は落ちるという確信が渦巻いていたのだった。