最強のエースパイロット…の陰でしれっとスコアを伸ばすとある一般隊長のお話 作:Yura0628
《メインシステム起動》
《機体各部異常無し 動力炉稼働率100%》
紫電改とは違い、旧式動力炉の甲高い起動音がコックピットに鳴り響く。
(OSは少し古いが許容範囲内…システムオールグリーン)
ビルの揺れが機体に伝わり、格納庫の屋根からパネルやクレーンなどが落下し始めた。急がないと。
《スラスター全機起動 発進準備完了》
「ふぅ…よし」
声と共にスラスターを点火した俺は、天井を突き破り街の上空に躍り出た。
地上に居た時には分からなかったが、日野のあちこちからは火の手が上がり、依然として軌道上から砲撃が行われている。さらに上空では防衛部隊のHFと武装勢力のHFが交戦中…上空に飛び出したのは迂闊だったか。
「だがまだバレてない…シノノメ」
「はい」
「ここからビルとビルの合間を縫って移動する。俺の技量じゃ周囲を警戒しながら高速かつ繊細な移動は少ししんどい、警戒を頼む」
「了解しました」
「よし、じゃあ行くぞ!」
スラスターを切った俺はhumanoid形態のまま急降下、道路に接する寸前でcruise形態に変形後、再度スラスターを点火し道路に停めてある車両を吹き飛ばしつつ飛行を開始した。
「全周囲に敵影無し」
「分かった」
先程逃げてきた大通り上空を高速で駆け、ナビゲージョンに表示される交差点で急制動、cruise形態のまま垂直に進路変更を行う。
(しばらくは長い直線が続く、だが…)
この先数十kmは楽な道のりだ。だがその先の生産区画となると話は別。
高さ500mで統一された生産ビルが建ち並ぶ区画は人の出入りが少なく長い直線が無い。出入りするのは精々食料品運搬車両の運転手か定期点検の人間だけだろう。ドローンや無人機も出入りするにはするがその通り道は小さすぎて通過は不可能。
日野の領域から出て迂回する事も考えたが、非武装の機体でそんな真似すれば撃墜は必至。仕方なく生産区画を通過することにしたのだ。
「このまま商業区画を突っ切るぞ。さっさと生産区画に到達したい」
「了解です」
スラスター全開。ソニックブームを街中で発生させるなど迷惑を通り越して害悪の域だが、今回ばかりは見逃してもらおう。
そのまま俺は車両やビルの窓を吹き飛ばしつつ生産区画へ一直線に向かうのだった。
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『ヒュドラ1よりHQ、エリアG5の敵勢力掃討完了』
『HQ了解、飯山基地の制圧がやや滞っている。そちらの援護に向かえ』
『了解』
『こちらスリンガー2。隊長機が撃墜された。スリンガー隊の指揮を引き継ぐ』
『了解した。では貴部隊は敵部隊との交戦を停止。軌道降下中の味方を援護しろ。防衛砲台を破壊するんだ』
『分かった』
無線通信で静かな、されど威圧を感じる声が飛び交っていた。僕は味方の筈の声に思わずビクッと体を震わせ、バランスを崩しそうになる機体を必死に制御する。
僕〈キミル〉はあくまでアビスの下っ端でしか無いのに、何でこんな実戦の場に駆り出されてるんだ!?
何て心で叫んでも、指示された事だから従わないといけない…HFの操縦だって殆どしたことないけど、敵を落さないいけない。
『トウカ隊各機、敵機捕捉。攻撃開始』
『『『了解』』』
(また来た!?もうやめてよ!!)
無数に放たれる飛来する砲弾やミサイルを覚束ない操縦でどうにか躱し、ヤケクソでビーム砲を撃ち返す。
『回避』
『チッ』
だけどもちろん当たらないし、散開した敵部隊はビームソードを引き抜いて一直線に向かってきた。
「く、くるなぁ!!」
反射的にビームソードを抜き放ち1機からの攻撃を受け止めた。けど別の敵機が背後から斬りかかって…!
『落ちろ』
「ウッ!!」
爆発がディスプレイを覆い尽くし、大きな衝撃が襲う。
だけど、いつまで経っても痛みが来ない。
(生きてる…?)
『オイ、しっかりしろ』
一瞬自分が落とされたと思った僕だったが、どうやら目の前に居る味方が敵機を倒してくれたらしい。
さらに全体が灰緑で染め上げられた機体は、こちらを振り向くと通信を繋げて来た。
「あ、あの…ありがとうございます!」
『礼なら働きで返せ。さっきから碌に動いていないな?今度は俺が落とすぞ』
「いやっ、そんな事は…!」
『言い訳無用だ。あばよ』
「………」
助けてくれたから良い人かと思ったらとんでも無かった…もう帰りたい…だけど成果を上げないと殺される…
自分ではっきり分かる。敵機を落とすのは無理だと。だったら何か別の方法で役に立たないと。
『HQより各部隊!日野中心部から飯山基地方向へ逃走する機体を捕捉!機体は紫電、そして搭乗者は恐らく…!』
その時だ。HQから通信が入ったのは。
今回の作戦目標は惑星更科の機能破壊並びに、
数人のメンバーがこの日野に居るのは把握されていて、日野攻撃隊の役割にはこのメンバーの殺害も含まれてる。
そして今入った通信…もしこの敵機を足止め出来れば、僕は役立たずじゃ…!
「絶対逃さない」
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「教官、後方より敵HF多数接近!」
「クソバレたか!!軌道上からは丸見えだもんな!」
「どうします!?」
「軌道上から移動目標に砲撃を当てるのは困難だ。だったらHFで落とすしかない。だったら生産区画で撒ける」
「確かに…」
「だがまずは、生産区画まで逃げ切らないとな!」
生産区画まではルートでは37km、直線では29km…なら!
「ちょ、教官!?」
「このまま最高出力で突っ走る!」
「でも!」
「大丈夫だ、こっちは既に速度が乗ってる!追いつかれる事はない!」
あとは直線機動で敵弾が当たらない事を祈るしかねぇ!
「嘘…
シノノメの呟きが耳に入るが、今の俺に気にしてる余裕はない。フレーム強度が紫電改より圧倒的に劣る紫電が空中分解しないよう、適切に機体を操作しなければならないからだ。
まぁこれでもビルの合間を極超音速で駆け抜けるよりマシだが。
《警告 機体各部過負荷 空中分解の危険性あり》
「後少し持ってくれ…!」
後少しで生産区画、間に合え!
『追いついた!』
だがようやく生産区画に到達しようという時、目の前の生産ビルに砲撃が着弾。
進路を塞がれた俺は急上昇を強いられ、敵機に囲まれる事となった。