最強のエースパイロット…の陰でしれっとスコアを伸ばすとある一般隊長のお話 作:Yura0628
「さて、俺も始めさせてもらうぞ!」
そう言うが早いか、のんびり部下をビームライフルで狙っている1機のtempestをすれ違いざまに両断、続けて切り掛かってきた1機を蹴り飛ばして手に持たせた粒子砲で破壊し、自身へ向けられたの射線軸から離れた。
俺が離れたほんの数秒後に、さっきまで居た場所をビームが通り過ぎ、俺はスラスターを吹かせたまま撃ってきた機体を捉える。
(敵の王国製MIビームライフルの再充填時間は1.56秒、俺がやつに辿り着くまで約1.4秒…いけるっ!)
限りなく短い思考と判断の後、俺は全力でその敵へ突撃、砲口に集まるエネルギーを認識しつつもスピードは緩めない。ここで緩めたら死ぬことがわかっているからな。
『なっ!?突っ込んで「遅せぇよ!」』
砲口に充填されたエネルギーが放たれる直前、スラスターを全力で前方に吹かせると共に、俺は敵機体の懐に飛び込み腕部内臓の高速衝撃砲をゼロ距離で叩き込んで黙らせる。
だが、そこで足を止めたのが良くなかった。
『隊長、後方注意!』
「っ!?あっぶねぇ!!」
いつの間にか接近していた1機のtempestが脚部ブレードで切りかかってきたのだ。
慌てて俺は距離を取り、その敵機をツルギ2が粒子砲で仕留める。
「すまん!助かった!」
『構いませんが、気を付けて下さいね!』
「あぁ!各機、しっかり連携をとって戦えよ!さもないと俺みたいになるぞ!」
『分かってますよ!』
『隊長みたいなヘマはしませんって!』
(お前らなぁ…)
まったくヒドイ言われようだ。だが、俺の指示を聞いて、俺達が
「俺も負けてられないなっと…よし、ツルギ2、俺達も行くぞ」
『了解』
ツルギ2とそう通信を交わし、スラスターを吹かせてもっとも近い敵機に向かう。
俺はシールドを構えて突撃し、ツルギ2はcruise形態へと変形し迂回して接近、俺に気を取られていた敵機はツルギ2に気づけず粒子砲に貫かれて爆散した。
次に俺達は、先程俺が放った粒子砲に被弾し中破したtempestに目を付けた。
機体のバックパックとスタビライザー、さらには右脚を失い、こちら狙うのもままならないだろうが必死にビームライフルを放ってくる。
もちろん俺達が当たることはないし、中破状態まで追い込まれたこの機体の脅威度は、実際あまり高くない。だが、まだ交戦の意思が残っている以上見逃すことはできない。
(悪いな)
心の中で相手のパイロットに謝ると、ツルギ2に火線が向いている隙に背後に回り込みせめてもの情けでコックピットを一撃で貫く。そのままビームソードを横凪に振るうと周囲に目を向けた。
(敵が立て直し始めたな…)
突然の急襲に動揺し碌な抵抗も出来ていなかった敵tempest部隊だが、時間が経つにつれて立て直し始めたようだ。
事実、先程までは俺達に翻弄されるばかりだったものがお互いの死角を埋め合い、一撃離脱を行う部下達にカウンターを行うようになっていた。それによってツルギ隊に被撃墜こそないものの、損傷した機体がいくつか出てしまっている。
さらに俺の機体にある頭部のブレードアンテナを見て、指揮官機を優先して落とそうとしてくるtempestがこちらを囲う動きを見せているため、俺自身も危機にあると言っていいだろう。しかし、彼らは本来の目的であったハクバ隊のことを
刹那、小惑星に隠れながら俺に接近していた1機のtempestが一条の光に包まれて消滅する。
「遅いぞ〔タクマ〕、いや、
『そりゃ悪かったね、君らが敵部隊の中をうろちょろするせいで狙えなかったなんて、申し訳なくてとても言えないな。そもそも───』
「…相変わらずだなお前は」
コイツは俺達に救われた自覚があるのか?開口一番嫌味を言ってくるとは思わなかった。
(なまじ腕があるだけ…まったく)
『───だからね。それで?ここから僕らはどうすれば良い?』
「急に真剣な声音になるんじゃない」
驚くだろうが。
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ロイヤル連合王国航宙軍:第673戦術戦闘飛行隊
俺が隊長を務めるこの部隊は、敵部隊に翻弄されて壊滅しつつあった。
『クソっ、なんだコイツ!』
『この敵機共…決して
『ダメだ!イジェクト、イジェクt』
(…また1機やられたか!)
敵のタンチョウ部隊を奇襲、殲滅する筈だった俺たちが、たった8機のヤブサメに介入されただけで逆に殲滅されている。これもひとえに、この任務が余裕で終わるだろうという慢心のせいだ。
正直に言おう、俺たちが総司令部から敵の情報を伝えられた時に最初に抱いた感情は、同情と嘲り、そしてわずかな
こちらは地方統合艦隊クラス、敵はせいぜい巡洋艦と駆逐艦が数隻づつ。勝敗など最初から決まっていたも同然。だが、その程度の艦隊になぜ俺達を使うのか、巡察部隊ではダメなのか、そう疑問を持った隊員も当然多かった。そして新たに出された命令────
〘敵艦隊を拿捕せよ〙
当然だが、敵を拿捕することはいくら戦力差があると言っても、撃破することより数倍難しい。それを敢えて命令してきたと言うことは、捕捉した敵艦隊になにかあるということ。
そして何より司令部からの命令が出た後艦隊に乗り込んできた彼らの存在…
なぜ〈Named部隊〉である彼らがこの程度の任務に出張って来たのだろうか?
そしてその疑問はある意味解消されたと思っていい。俺達が侮っていた敵艦隊は、最精鋭レベルの練度を有していたからだ。
まず艦隊各艦のシールドを融合させて巡洋艦以下数隻で戦艦の砲撃を弾くなど聞いたことがないし、小惑星を利用した回避操艦も見事だ。事実、俺達の艦隊は拿捕しなければならないということも相まって、攻めあぐねてしまっている。
そして敵艦載機部隊…こちらは理解すら出来ない。大和連邦が誇るエース、〘白虎〙の機動とは全く異なる、しかし異次元の機動。
一度見た白虎の機動はまさしく一騎当千という言葉がふさわしかった。ビームを放たれてから躱し、鍔迫り合いになろうものなら巧みな剣裁きで達磨にされてしまう。
だが、まだ理解はできた。白虎の機動は人並み外れた反応速度と空間認識能力、そして圧倒的な技量と才能に裏打ちされたものだと。
対してだ。今俺達が対峙している敵機はどうだ?決して圧倒的な技量を持っているわけではないのになぜ撃墜できない?なぜ機数で劣っているのにお互いをカバー出来る?なぜ彼らの連携には一切のブレがない?
訳がわからない。こちらが複数で囲っていたはずなのに気がついたら囲まれている。
(…また1機消えたか。タンチョウ部隊が合流してきたのか?敵艦隊に向かった部隊はどうなった?生き残っている機体は何機だ…っ!来たか!)
頭にブレードアンテナがあり、敵隊長機と思われるヤブサメが小惑星を巧みに使い接近してきた。だが、ところどころ直線的になる動きもあり、動きの予想が出来ないわけじゃない。だと言うのに…
(なぜ当たらん!)
放ったビームはことごとく躱され、いや、そもそも放った瞬間に射線に敵機が居ないと言った方が正しいか。ともかく、ビームは1発も当たることなく漆黒の宇宙空間へと消えていった。
呆然とする暇もなく、敵機がビームソードを引き抜いて切りかかってくる。それに対応するためこちらも抜刀すると、背部センサーが警報を発した。
「何!?後ろ…」
次の瞬間、俺を凄まじい衝撃が襲いコックピットの計器が殆どオフラインになる。
(…正面から1機が突撃、背後から接近したもう1機が対象を仕留める…シンプルだがそれゆえに異様だ。どうやって俺以外の機体にも気付かれないように接近した?囮となる機体も他の敵機に狙われることを考えていないのか?)
(分からない、分からない、分からない)
自身が撃墜されたと言うのに、俺はただそれだけを考えていた。
彼らから通信が入るまでは。
『……戦闘中の各機、聞こえるか、こちら〈Nemesis〉。聞こえているなら、直ちに指定する範囲より離脱しろ。指示に従わなかった場合の安全は保証しない。10、9…』
「…なんだってんだ?今更でしゃばって来やがって。チッ、各機!交戦を中断し、Nemesisの指示に従え!」
Nemesisの指示に困惑していた部下達だが、俺の指示ならばと交戦を中断し離脱していく。
(俺は…範囲のギリギリ外か)
仮に範囲内だったとしても、動けないから意味ないんだがな。
そんなことを思っていると、Nemesisのカウントが終わり…メインカメラがダウンするほどの強烈な閃光が、敵部隊の方角で発生した──────
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『なんてこった…』
『こんなことが…隊長…』
「………クソが」
俺は視線の先を浮遊する
部下達は6機を残して全滅。ハクバ隊も残っているシグナルは4つしかない。
なぜこんなことになっているのか。それを説明するには、少し時を遡る必要がある───
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俺とツルギ2が敵隊長機と思われる角つきのtempestを落とした後、俺達はハクバ隊と協力して順調に敵の数を減らしていった。
『ツルギ3、左上方に敵機!』『分かってる!』
『クソ、抜けられた!ハクバ4、5に敵機2機向かう!』『任せろ、俺が堕とす!』
『ハクバ14、17そっちに敵機3追い込んだぞ!見えるか!?』『あぁ、捕捉したーーー破壊する』
通信で怒号が飛び交い、あちこちで破壊された敵機体の光が瞬いている。
(敵tempest部隊の約半数はすでに破壊できた。敵隊長機を撃墜できたのもあるが、何よりハクバ隊の火力支援が大きいな…ヒビヤ艦隊の方も状況は悪くない。このまま耐えきれれば…)
そんな時だ、突如敵部隊が撤収するような動きを見せ始めたのは。
「なんだ?なぜ引いて行った?」
『分かりません、艦砲射撃は相変わらず艦隊に向いているようで『各パイロットに通達!敵未確認HFに動きあり。敵機は巨大なバズーカ系武装を構えている模様。直ちに回避行動をとれ!ツルギ9以降の機は艦隊のシールド内に!何が来るかわからんぞ!』っ隊長!』
今考えれば、ただ運が良かっただけなのかもしれない。たまたま近くにあった数百メートル級の小惑星が盾になったおかげで俺の周囲にいた部下達は助かった…が、次の瞬間に起こった巨大な爆発により、展開していた他の機体は破壊されてしまった…
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(クソ、どうする!?)
部隊は壊滅、艦隊を守っていた部下達もほとんどやられてしまった。決して未確認HFをノーマークにしていたわけではない、明らかにヤバそうな奴らだったからな。
しかし機体の警報はならず、ソウルキーパーもおそらく目視確認で警告を出したのだろう。でなければもっと早くに警告が飛んできていたはずだ。
(いや、今はそんなことを考えていても仕方ない!やれることをやるしか…)
だが、悪夢は未だ終わらない
『っ!!敵未確認HFにエンブレムを確認!照合完了、コイツは…』
「……ハハっ、嘘だろ…?」
送られてきた情報に、俺は笑うしかなかった。
『敵未確認HFは、ロイヤル航宙軍のNamed部隊、Nemesisだ…』
〈Named〉それは精鋭の代名詞であり、各国が広告塔として世界に発表しているエースパイロット達だ。有名なエースパイロットと言うものはその存在だけで敵に圧力をかけ、味方を鼓舞することができる。それこそ白虎が良い例だな、彼が戦場に出るだけで味方の士気は爆上がり、敵は恐れ慄いて逃げ出す奴なんかもでてくる有様だ。
そして彼らは例外なく、
1部隊で戦略目標を達成した…
数機の殿で数百単位の敵を抑えた…
単機で戦争の結果を左右した…
などなど、公式非公式問わず多数の目を疑うような記録が存在する。
そんな彼らが、今、俺たちに狙いを定めている。
大勢の部下を失ったことと、Namedと相対しているという事実に、俺は半ば呆然としながら連中がバズーカを投げ捨てこちらに向かってくるのを眺めていた。
『隊長!しっかりしてください!』
『ツルギ1、指示をお願いします!』
だがそんな俺を、部下達の声が正気に戻す。
(っ!!クソ、何やってんだ、俺は隊長だろ!)
俺は頭を振ると各機に通信を行う。
「各機陣形構築!ハクバ隊!合わせられるか!?」
『任せてくれ!これでも君達との付き合いは長い!』
「なら良い、後ろは頼んだ!よし各機、〈Anti-Named FormationF56〉!」
俺達のようなただのパイロットがNamedに勝つには連携をとって戦うしかないが、ただの連携じゃ意味がない。そこで俺が作成したのが〈Anti-Named Formation〉という戦闘プランだ。連携をとる複数の機が攻撃、防御、欺瞞など、それぞれ一つの動きに集中して敵Namedに対応する。1機では敵わなくても、部隊全体が1つの機体として完璧に動ければ勝機はある。
(だが問題は…)
しかし、この戦闘プランも万能ではない。相手Namedが
(いや、こんな状況も
震える手足を気持ちで抑えつけ、俺は向かってくるNemesis隊を睨む。
「よし、じゃあ行くぞ!」
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ロイヤル航宙軍:第7試験戦闘飛行隊
通称、Nemesis
その巨大な人型は自らが放った兵器が莫大なエネルギーと共に、敵機を葬り去る様を記録していた。そして記録した情報を整理しつつパイロットに提示した。
『ふむ、新型制圧弾頭の性能は悪くないな。だが小惑星の裏にいる敵機には効果がなかったか』
『仕方ありません、連中の盾になった小惑星は数百m級です。対艦兵器でもないと破壊は出来ないでしょう』
『それより、この[MRJS](機械的認識妨害システム)はかなり優秀なようです。確実に敵のセンサーは反応を示していませんでした。最後は目視で確認されてしまったようですが…』
『それでもかなりの効果は期待できる、か。どちらにしろ、大量生産はかなり先になるだろう』
そんな会話を聞きながら、人型は通信を受け取る。
『そうですね…っ隊長、司令部より敵部隊を殲滅せよとの指令です』
『来たようだな…では行こう』
そう告げて自らを操作するパイロットに従い、人型は手に持っていたバズーカを投棄、スラスターを全開にし敵へと向かう。
ある程度距離を詰めた時、人型は敵機に動きがあるのを認識した。その情報を即座にパイロットに伝え、自身は各部センサーで敵機の挙動の一切を逃さないことに集中する。
『っ隊長、敵部隊に動きが』
「…多くの味方を失い、Namedの我々と相対しても怖気ついていない…なかなか、
『そうですね、では手筈どうりに?』
『あぁ、敵部隊は私が相手をする。お前達は敵艦隊を頼むぞ』
『『Roger』』
(…さて、どこまで私を楽しませてくれる、〈草薙剣〉の諸君?)
神経接続で繋がっている人型は、主のそんな思考を読み取り、何も感じることはなくただパイロットの操作に従うのだった―――――