TS転生者はヤンデレなんかになったりしない   作:しが

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アブノーマル性癖に目覚めてきたTS転生者の話

 

夏の午後。

窓から吹き込む風が、かすかにカーテンを揺らしていた。

 

勇斗の部屋は、いつものように整然としていて、

けれどほんの少し、彼の匂いが充満していた。

 

遥は、勇斗の布団にくるまりながら、静かに目を閉じた。

 

深く息を吸い込む。

 

ほんのりと香る柔軟剤の匂い。

その奥に、勇斗特有の、言葉ではうまく説明できないあたたかい香りが混じっている。

 

それは、遥の身体をふわりと包み込み、

安心と幸福を、心の芯まで満たしていく。

 

「……はぁ……」

 

小さな吐息が、無意識に漏れた。

 

こんなにも誰かの匂いを、愛しく思うなんて。

 

こんなにも誰かの存在を、

全身で感じたくてたまらないなんて。

 

前世では──

たぶん、そんな感覚、味わったことすらなかったはずだ。

 

別に匂いフェチでもなかった。

特定の香水や洗剤の香りに、異様に反応したことなんてない。

 

ただ──

 

今、この瞬間だけは違った。

 

勇斗の匂いだけが、

遥のすべてを満たしてくれる。

 

好きな人の香りに包まれている。

 

それだけで、こんなにも。

 

胸がきゅうっと締め付けられるくらい、

幸せで、

嬉しくて、

満たされて──

 

遥は、そっと布団に顔を埋めた。

 

もっと。

もっと深く、勇斗の匂いを吸い込みたかった。

 

勇斗に、触れたかった。

 

勇斗の一部になりたかった。

 

そんな、どうしようもない衝動に駆られながら。

 

布団に包まれているだけなのに、

遥の心は、まるで夢の中を漂っているような心地になった。

 

ふわふわと、現実感が薄れていく。

 

でも、それが怖くなかった。

 

むしろ、このまま溶けてしまってもいいと思えるくらい、

今の遥は満たされていた。

 

「……勇斗……」

 

無意識に、恋人の名前を呟く。

 

勇斗は、まだ帰ってこない。

 

友達と少しだけ出かけると言っていた。

ほんの数時間のことだ。

 

なのに、遥には、もう何日も離れているような気がした。

 

寂しかった。

 

早く、戻ってきてほしかった。

 

でも、同時に、

今はこの匂いだけでも、充分に満たされているとも思った。

 

矛盾してる。

自分でも、そう思う。

 

それでも、遥は、どうしようもなかった。

 

好きすぎる。

 

こんなにも、誰かを求めたことなんて、なかった。

 

勇斗がいないと、寂しくて。

勇斗がいれば、それだけで幸せで。

 

今だって、勇斗の気配だけを頼りに、

遥はこんなにも幸福感に酔いしれている。

 

布団の中で、ぎゅっと腕を抱きしめた。

 

勇斗を抱きしめるように。

 

勇斗に抱きしめられるように。

 

夢の中でいいから、

今すぐ彼に触れたかった。

 

「……だいすき」

 

また、小さく声が漏れる。

 

誰にも聞こえない。

この部屋に、遥ひとりだけ。

 

でも、遥は、勇斗に向かって心の中で何度も何度も呟いた。

 

好きだよ。

大好きだよ。

どれだけ時間が経っても、

どれだけ世界が変わっても、

わたしは、勇斗のことを、ずっと──。

 

遥は、ぎゅっと目を閉じた。

 

そして、勇斗の匂いに包まれたまま、

静かに、意識を溶かしていった。

 

まるで夢の中に落ちていくみたいに。

 

そんな、甘くて、柔らかくて、

何よりも幸福な時間が、ゆっくりと流れていた。

 

ふわふわと意識が漂っていた遥は、ふと目を開けた。

カーテンの隙間から射し込む陽光に、ぼんやりと瞬きをする。

 

勇斗は、まだ帰ってきていない。

 

部屋には、彼の気配だけが静かに残っていた。

 

なんとなく、手持ち無沙汰で視線を彷徨わせると──

ベッドの脇に置かれた小さな洗濯カゴが目に入った。

 

そこには、勇斗の制服のワイシャツが無造作に放り込まれている。

 

遥は思わず、眉をひそめた。

 

「……洗濯、出し忘れてるじゃん……」

 

小さな声で文句を言いながら、ベッドから降りる。

カゴの前にしゃがみ込み、ワイシャツを手に取った。

 

くしゃっとした布地。

勇斗が今日一日、身にまとっていた証拠。

 

ふわり、と。

 

またあの、勇斗特有のあたたかい匂いが鼻をくすぐった。

 

遥は、一瞬だけ躊躇った。

だけど、すぐに。

 

──えいっ。

 

小さく息を吸って、勇斗のワイシャツを、頭からすぽりとかぶった。

 

「……うわぁ」

 

思わず声が漏れる。

 

布地に包まれた瞬間、

遥は、全身を彼の匂いに覆われた。

 

柔らかく、温かく、そしてどうしようもなく甘い。

 

──まるで、勇斗に抱きしめられているみたい。

 

遥は、くらくらと眩暈がする感覚に襲われた。

 

「……やば……」

 

ワイシャツの袖が遥の手首を隠し、

裾は膝下まで届くほどに大きかった。

 

勇斗の体温はもちろんもうない。

でも、纏うだけで、勇斗にぎゅっと包まれている錯覚に陥る。

 

遥は、その場にぺたりと座り込んでしまった。

 

膝を抱えるようにして、ワイシャツを体に巻きつける。

 

「……勇斗……」

 

名前を、ぽつりと零す。

 

それだけで、心臓がきゅっと鳴った。

 

なんで、こんなにも。

 

勇斗のことが、好きなんだろう。

 

ただ彼の匂いに包まれているだけで、

涙が出そうになるくらい、幸せで。

 

同時に、どうしようもないくらい、寂しくなる。

 

遥は、ワイシャツの胸元をぎゅっと握った。

 

もっと、近くにいたい。

 

もっと、触れたい。

 

もっと、もっと、勇斗に包まれていたい。

 

そんな欲望が、胸の奥から溢れて止まらなかった。

 

──こんなの、知らない。

 

前世のオレには、こんな感情、なかった。

 

誰かを求めるなんて。

誰かに触れてほしいなんて。

誰かの香りに、心を奪われるなんて。

 

こんなふうに。

 

遥は、そっとワイシャツの袖口を鼻先に押し当てた。

 

柔らかな布地から、微かに残る体温を感じるような気がした。

 

「あったかい……」

 

囁くような声。

 

勇斗のことを考えるだけで、

胸が苦しくなる。

 

寂しいのに、幸せで。

 

孤独なのに、満たされていて。

 

遥は、ワイシャツに顔を埋めたまま、深く深く息を吸い込んだ。

 

もう、勇斗のことしか考えられない。

 

彼の香り、彼の温もり、彼の笑顔、彼の声。

 

すべてが、遥を満たし、遥を焦がした。

 

──早く、帰ってきてよ。

 

遥は、心の中で小さく叫んだ。

 

ずっと一緒にいたい。

どこにも行かないで。

わたしだけを見ていて。

 

そんな、わがままで、独占欲まみれの想いが、胸を満たしていく。

 

ワイシャツに包まれたまま、遥は小さく丸くなった。

 

勇斗の香りに陶酔しながら、

夢見心地のまま、うとうとと意識が遠のいていく。

 

このまま、勇斗が帰ってきて、

そのままぎゅっと抱きしめてくれたら──。

 

そんな、あり得ないほど甘い夢を、遥は静かに見ていた。

 

そして、勇斗の帰る気配もまだないまま、

夏の午後は、ゆっくりと、けれど確実に深まっていった。

 

──

 

目が覚めたとき、遥はぼんやりとした意識のまま、天井を見つめていた。

 

身体はくしゃくしゃになった勇斗のワイシャツに包まれ、

腕にはタオルケット、

足元はぐしゃぐしゃになった掛け布団。

 

──幸せすぎて死ぬかと思った。

 

そんな間抜けな感想を抱きながら、

遥は布団の中でもぞもぞと身じろぎした。

 

スマホの画面を覗き込むと、三十分ほど時間が経っていたらしい。

 

「……はぁ」

 

深いため息が漏れた。

 

冷静になった今、思う。

 

──これ、ヤバいよな。

 

いや、普通に考えて。

 

人ん家で、人のワイシャツ着て、タオルケットにくるまって、掛け布団に埋もれて、

匂いに酔ってトリップして──

 

「……変態じゃん、わたし」

 

遥は、顔を手で覆った。

 

布団の中で、ぬくぬくとした空気に包まれたまま、

自己嫌悪と羞恥にのたうち回った。

 

いやいや、彼氏だぞ?

彼氏の匂いを堪能するくらい、別に変じゃ──

 

「……いや、変だわ」

 

声に出して否定した。

 

彼氏だろうがなんだろうが、

匂いだけでここまでラリってるのは正真正銘の変態だ。

 

「……うわぁ」

 

布団の中で、ごろごろと悶えた。

 

恥ずかしすぎて、死にたい。

 

それでも、

遥はそっとタオルケットを引き寄せて、

勇斗の匂いをもう一度深く吸い込んだ。

 

──だって、しょうがないじゃん。

 

好きなんだもん。

 

好きすぎるんだもん。

 

この香りだけで、

胸がきゅうって締め付けられるくらい、

安心できて、満たされて、幸せになれるんだもん。

 

「……もう少しだけ」

 

誰に言い訳するでもなく、遥はそっと呟いた。

 

もう少しだけ、この夢みたいな時間に浸っていたかった。

 

──その時だった。

 

スマホのバイブレーションが、ブルブルと震えた。

 

びくり、と遥は跳ね起きた。

 

画面を見ると、「勇斗」の文字。

 

「っ──!」

 

焦った。

 

慌ててスマホを手に取り、通話ボタンを押す。

 

耳に当てる。

 

「……も、もしも──」

 

裏返った。

 

「──もしもぉッ!!」

 

最悪だった。

 

声が思いきり裏返って、しかも変なイントネーションになってしまった。

 

一瞬の沈黙。

 

通話越しの向こうから、くすくすと笑う声が聞こえた。

 

『……どうした、遥。声、変だぞ?』

 

勇斗の、楽しそうな声。

 

遥は、耳まで真っ赤になった。

 

「ち、ちがっ、ちがうの、これは……っ」

 

慌てて言い訳しようとするが、

何をどう言っても、すでに手遅れだった。

 

『ま、いいけどさ。もうすぐ帰るから。

 なんかいるもんある? アイスとか』

 

「……な、なんにもいらない……っ」

 

耳まで火照りながら、遥は震える声で答えた。

 

バレてない。

バレてない、はず。

バレてない……よね?

 

そんな自問自答を繰り返しながら、

遥は布団の中で必死に平静を装った。

 

『そっか。じゃ、すぐ帰るな』

 

「うん……」

 

勇斗の声は、変わらず優しかった。

 

そんな声を聞くだけで、また胸がぎゅうっと苦しくなる。

 

好きだ。

 

好きすぎて、どうしようもない。

 

通話が切れると、遥はもう一度、布団の中に潜った。

 

そして、顔を真っ赤にしながら、

ぐしゃぐしゃになったワイシャツを胸に押し当て、

ただひたすら悶えた。

 

──バカ、バカ、バカ!!

 

自分を責めながらも、

それでもどうしようもなく、

心は勇斗のことでいっぱいだった。

 

スマホをそっとベッドに置くと、遥は大きく息を吐いた。

 

──まずい。

 

このままじゃまずい。

 

勇斗が帰ってくるまで、あと数十分。

 

今のこの状態を見られたら、絶対に死ぬ。

 

いや、物理的には生きてても、精神的に死ぬ。確実に。

 

「……よしっ」

 

遥は、意を決して立ち上がった。

 

まず、ぐしゃぐしゃになったベッドを整える。

布団をきっちりと畳み、タオルケットをたたみ直し、枕の位置をきっちり直す。

 

勇斗の匂いがまだ布団に残っている気がして、

つい深呼吸してしまいそうになる衝動を、必死で押し殺した。

 

次に、ワイシャツ。

 

勇斗の匂いをこれでもかと堪能した罪悪感に駆られながら、

そっと脱ぎ、そっと畳み──

 

「……だめだ、もうこれは証拠隠滅しかない」

 

覚悟を決め、ワイシャツを洗濯カゴにぶち込んだ。

さらに、洗濯機を開け、ワイシャツを中へ放り込む。

 

柔軟剤の香りと共に、勇斗の匂いがふわりと漂ってきて、

思わずクラッとしかけたが──

 

「……我慢我慢……!」

 

遥は自分に言い聞かせる。

 

最後に、自分の服装。

 

ワイシャツを脱いだまま、だらしなくなっていた私服を整え、

髪を手櫛で整え、鏡を見てほっと一息。

 

見た目は、完璧。

 

これで、あの変態がここにいた事実は完全に抹消された。

 

誰がどう見たって、普通の留守番してた彼女である。

 

やり遂げた──。

 

達成感に満たされ、遥はベッドの端に腰掛けた。

 

「ふぅ……」

 

と、その時だった。

 

玄関のドアが、カチャリと音を立てた。

 

「……っ!」

 

背筋がビクリと跳ねた。

 

そして。

 

「ただいまー」

 

聞き慣れた、あたたかい声。

 

──勇斗が、帰ってきた。

 

「お、おかえり……!」

 

声が少しだけ裏返ったのをごまかすように、咳払いする。

 

勇斗は、買い物袋を手にぶら下げながら、にこにこと部屋に入ってきた。

 

その瞬間──

 

ふわり。

 

部屋に、勇斗の香りが広がった。

 

遥の鼻腔を、肺を、心臓を、優しく、でも圧倒的に満たす。

 

「……っ」

 

思わず、身体が震えた。

 

さっきまで、布団に染み付いていたかすかな香りで

あれだけトリップしかけた。

 

なのに、今、目の前にいる本物の勇斗は──

 

遥のすべての感覚を、圧倒的な多幸感で塗り潰してきた。

 

「どした? ぼーっとして」

 

勇斗が、にこりと笑いかける。

 

その笑顔。

 

その声。

 

その香り。

 

全部が、遥の脳を、心を、身体を、ぐしゃぐしゃにした。

 

──やばい。

 

さっきよりも、明らかにやばい。

 

頭の中が、真っ白になる。

 

視界が、ぼやける。

 

心臓が、暴れ回る。

 

勇斗が一歩近づくたびに、

遥は全身がぶわっと熱くなるのを感じた。

 

「なぁ、遥? 本当に何もいらなかった?」

 

勇斗が、心配そうに覗き込んでくる。

 

その距離、わずか数十センチ。

 

「……っ、う、うん……だいじょうぶ……」

 

かろうじて、そう答えるのが精一杯だった。

 

──あぁ、だめだ。

 

このままだと、絶対、顔がとろける。

 

よだれでも垂らしそうな勢いだ。

 

遥は、必死に自分を律しようとした。

 

「そっか。じゃあ、アイスだけ買ってきたから、あとで一緒に食べようぜ」

 

「うん……!」

 

勇斗は、何も知らない顔で笑った。

 

無邪気で、優しくて、

遥を何度も何度も救ってくれた、その笑顔で。

 

そんな勇斗を前に、

遥は胸の奥で静かに宣言した。

 

──この人を、絶対に手放さない。

 

絶対に、誰にも渡さない。

 

この気持ちは、前世のオレにも、今のわたしにも、

きっと変えられない、たったひとつの真実だった。

 

──

 

アイスを、勇斗が差し出してくれた。

 

「ほら、これ。遥の好きなやつ」

 

「ありがと……」

 

か細く答えながら、遥は小さなカップアイスを受け取った。

 

けれども──

 

アイスの冷たさなんかじゃ、まったくこの胸の熱は冷めなかった。

 

スプーンで一口すくって食べてみる。

口の中に広がる甘く冷たい味。

 

それでも。

 

目の前にいる勇斗の存在は、

遥の体温を容赦なく上げ続けた。

 

無邪気にアイスを頬張って、

「うまっ」と笑う勇斗。

 

その柔らかい表情。

無防備な仕草。

ふわりと漂うあたたかい香り。

 

──ああ、もう。

 

「……もういいやぁ」

 

遥は小さく呟くと、

空になったアイスのカップを机に置き、

スプーンも放り出した。

 

そのまま、勇斗に飛びついた。

 

「わ、ちょ、は──」

 

驚く勇斗を無理やり抱きしめる。

 

ぐい、と力を込め、勇斗の胸に顔を埋めた。

 

「……ん……」

 

嗅ぎ慣れた、でも堪らなく恋しい匂いが鼻を満たす。

 

さっきまで布団で堪能していたそれより、

何倍も、何十倍も濃密な本物の香り。

 

勇斗の体温が、呼吸が、

遥の肌に、心に、直接染み込んでくる。

 

たまらなかった。

 

「お、おい、遥……?」

 

戸惑う勇斗の声が、かすれた。

 

遥は顔を上げると、

そのまま勇斗の手首を掴み、ベッドへ引きずる。

 

「わっ──おま──」

 

ずるずると引っ張られ、あっという間にベッドに押し倒される勇斗。

 

遥は、彼の上に乗るような形で覆いかぶさった。

 

「……ごめんね」

 

小さく、囁く。

 

「でも、もう、限界だから」

 

勇斗が、ぽかんと遥を見上げていた。

 

けれど、すぐにその瞳に、

いつもの優しさとは違う、熱のようなものが宿った。

 

遥は、そっと勇斗の頬に手を添えた。

 

「……ねえ、勇斗」

 

「……な、なに……」

 

「わたしを、堪能して?」

 

小さく、甘えるように囁く。

 

勇斗の喉が、ごくりと鳴った。

 

そして──

 

次の瞬間には、勇斗の手が、

遥の背中に回されていた。

 

「……ずるいよ、遥」

 

「うん、ずるいの。わたし」

 

「……仕方ねぇな……」

 

微かに笑いながら、勇斗は遥を引き寄せた。

 

二人の身体が、ぴたりと重なる。

 

熱を持った肌と肌が触れ合い、

お互いの呼吸が絡まり合う。

 

勇斗の指先が、遥の髪を撫で、

肩をなぞり、背中を辿る。

 

遥は、勇斗の胸に顔を埋めたまま、

全身で彼を感じていた。

 

「……好きだよ、遥」

 

耳元で囁かれる声に、

胸がぎゅうっと締め付けられる。

 

「わたしも、好き……」

 

かすれる声で、必死に応える。

 

触れ合うだけじゃ足りない。

 

抱きしめるだけじゃ満たされない。

 

だから、もっと。

もっと深く、勇斗と繋がりたかった。

 

そして──

 

その夜。

 

二人は、ただひたすらに、

お互いを求め合った。

 

何度も、何度も。

 

肌を重ね、名前を呼び合い、

指先で、唇で、心で。

 

遥にとっても、勇斗にとっても、

それは初めてじゃない、けれど何よりも甘くて、

何よりも深い一夜だった。

 

翌朝、シーツはぐちゃぐちゃ。

身体中、あちこちが痛くて。

だけど、遥は、心から思った。

 

──幸せだなぁ。

 

勇斗の胸の中、そう呟きながら、

微睡みの中へと沈んでいった。

 

なおこの後匂いフェチを隠さなくなった遥は彼シャツを躊躇いなく披露することになったためそのたびに理性がヤバくなるのでした。

 

まる。

 

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