更新遅れてゴメンナサイ……本編はもう少し待ってください……。
カス幼女アイリスちゃんのIFストーリー。
内容はタイトルの通り。
分岐点:幼女の生誕時。
主な相違点:幼女の精神性の変化。及び両親が錬金術師なためパヴァリア構成員からのスタート
【IF】Another Story─天霆の轟く地平に、闇はなく─
──ある日、気がついた時から不快だった。
全ての始まりはこの世に生誕した祝福の刻。
母の腕に抱かれ、父の呼び声に眼を覚ます。
その瞬間、この世界の真理を彼女は垣間見た。
戦姫絶唱シンフォギア。
狂い哭く少女たちの斯くも心に滲みいる英雄譚。
彼女らが迎え討つのはどれもが狂瀾怒濤の怪物たち。
人類を殺戮する雑音、人道を外れた錬金術師の組織。護国の外道。狂乱の巫女。英雄願望の狂信者と暴食の巨人。奇跡の殺戮者。不完全を唾棄する
少女たちの地獄の様な道程と、この世界の災厄を認識した瞬間に“彼女”が感じたのは──途方もない“怒り”だった。
──巫山戯るなよ、なんだそれは?
赦せるものか、貴様らの存在を。
赫怒の雷火が胸中を満たし、その最中に一欠片の憐憫を抱きながら彼女──“アイリス・フェイルノート”の宿業は此処に定まった。
戦姫たちの抱く愛、友情、信念、決意。
素晴らしい。描いた人間讃歌に敬意を表し感涙すら流そう。護らねばならない善の輝き、尊ばねばならない人間の可能性。
それらの為なら命を懸ける事すら誇らしい。
故に、故に彼女は赦せないのだ。
正しい者が身を削らねば安定を保てない天秤。
邪悪が嗤い、愚連隊以下の畜生どもが幅を利かせる強弱の歪んだピラミッド。
脆い世界の条理と善を挫く理不尽が、何よりも度し難く憎いのだ。
「良いだろう、やってやる」
齢五歳、矮小な幼子でありながらも自分の両脚で大地を踏み締め、言葉を流麗に発せられるまでに成長したその刻、彼女は不滅の焔が如き決意を言葉にする。
「善なる輝きを貶すと言うのなら、愛しく尊い只人としての刹那を穢す醜穢が跋扈すると言うのなら」
意思もなく悪戯に人類を殺戮する雑音、憎悪を基盤とした世界の崩壊、身勝手な英雄願望、下劣畜生な探求、己が根源すら忘却した彷徨者の妄執。
誰が見ても不条理。身勝手極まりない“悪”の行進により無辜の民の安寧は容易く砕け貶されてしまう。平穏な刹那を送るべき装者たちを見れば一目瞭然だろう、善とは痛く、哀しいものだ。
何故だ? 何なのだその不条理は? 巫山戯るなよ。
死ねよ貴様ら、塵屑だろうが。
苦悶の喘ぎを漏らしながら地獄の底まで堕ちろよ。
物語として目立つ悪役のみならず、相互不和により蔓延する紛争と組織の腐敗もまた目も当てられぬ汚濁。バルベルデの惨状などその最たるものだ。
誰が見ても下劣。しかし世界はその存在を黙認している。
天罰は降らず、神は瞑目しこの地を離れた。
唯一残る邪神の大願すら、人類より希望の
故に、嗚呼、故に。
「“裁断者”が必要とされるならば──良いだろう、私がやってやる」
罪には、罰を。
悪には、裁きを。
奪われた希望には、それに相応しい闇と嘆きと絶望を。
正義の味方? 否。そんな彼女たち戦姫の様な光に満ちた在り方など己の様な破綻者には分不相応。
即ち、目指すはその逆。
「邪悪を滅ぼす死の光──“悪の敵”だ」
天霆の轟く地平に、闇はなく。
あらゆる
自覚した宿痾と赫怒。
“人類救済と災厄の是正”──彼女の
数多の錬金術師が在籍する秘密結社ではあるが、その組織内情は悲惨の一言。
“伯爵”サンジェルマンを含めた幾人かの幹部とその他錬金術師以外はそれこそ論外。
統制局長アダム・ヴァイスハウプトが組織の統治を放任してきたこともありその内情は凄惨。探究のためなら表の世界に害を加え、人の命を弄ぶ連中の多いこと──己が両親を含め、もはや大部分の膿を切り落とさねばならぬ程にパヴァリアは“悪の組織”と呼ぶに相応しい集団であった。
裁断者として君臨した暁には絶対の粛清と組織の改革を胸に、アイリスがまず起こした行動は“アダム・ヴァイスハウプト”との接触。
「精々この知識を利用するとしよう」
未だこの身は五歳の幼子。
結社本部の書斎にて知識を詰め込めども、圧倒的に個としての力が不足していた。
「──預言だと? 本気で言っているのかい、君は?」
出会った好機。まさしく待ち望んだ偶然をものにするため、アイリスは原作知識の要不要を選り分け“預言者”として振る舞う。
邂逅当初に向けられた懐疑の目線も直ぐに霧散した。
原初の母、シェム・ハ・メフォラシュの情報はまさしく値千金。
アダム・ヴァイスハウプトの頭のおかしな幼子を見る様なその視線は直ぐ様是正され、彼女の“先見”を真実だと認識し、重宝することに決定した。
「褒美を上げよう、君に。何が欲しいかな、一体?」
上機嫌な“人でなし”を心中にて侮蔑しながら、少女は望みを口にする。
「──いずれ得る最盛期の
膝をつき天上を見上げる今は雌伏のとき。
首輪を千切る未来は確約された。
目の前の
斯くして少女は再誕する。
錬金術による再構築は近い将来の成熟した全盛期の肉体を先取りする事すら可能とし、齢五歳の少女は成長した女性としての姿形を得た。
すらりと長い肢体。幼さを残しながらも凛々しさを携えた美貌。黄金錬成の習得を志す内に銀から黄金へと染まった長髪。
そして身に纏う
サンジェルマン達の纏う
北欧神話にて、かの戦乙女が携えし剣を手に、アイリス・フェイルノートは結社を把握する為の行動を開始する。
必要なのは、武功。
組織の敵を討ち滅ぼし、不倶戴天の王冠をその手に舞い戻る事こそが先ずは肝要──そして、その相手は決まっていた。
「なんなのだ……貴様はッ!?」
「アイリス・フェイルノート──お前の
終焉の巫女、フィーネ。
何度もパヴァリアに辛酸を与え続けた先史文明期の巫女の首級は武功と呼ぶに相応しい。
しかも相手は
されど物理的に殺し尽くす事はほぼ不可能。リィンカーネーションの理という不死不滅の絡繰は彼女を永遠の刹那足らしめる刻印がある限り、巫女は世界に残影を刻み続ける。
「故に私は、お前の心を殺し尽くそう」
「がっ……ァッ!?」
ならば対策は簡単だと言わんばかりに、制圧した巫女の頭を鷲掴みにし頭蓋に五指を食い込ませる。
「恨むといい、お前にはその資格がある。これから私の成す事は、人の道を外れた外道に他ならないのだから」
「なに、を……!?」
狂乱に堕ちた終焉の巫女。
たとえ爛熟した果実の様な腐り落ちた
その強靭なる意思と途方もない歩みに敬意は払おう──だが殺す。
その数千年の刻を経ても消えぬ不屈の篝火を鉄の炉ごと砕いてやると言わんばかりに、アイリスは
更には
深海よりも深く、宇宙よりも深淵なる脳の神秘を暴くアイリスの権能が──
「ぃ、いや……そんな、うそ──
狼狽が虚空に轟く。
愛の為に生きた数千年──その足跡を否定されたに等しい“現実”に、巫女は慟哭をあげた。
「事実だ。受け入れろ
そんな巫女の狼狽を冷徹な瞳で睥睨し、裁断者は粛々とその罪業を突きつける。
まるで罪人に犯した罪の重さを厳格に告げる
「理解したか? ならば結構。もはや貴様は、神に仕える巫女でもなければ愛に殉じる浪漫主義者でもない──ただ、愛した者の亡骸を穢し続けた
「う、ぁ……ぁ──いやああああぁぁぁぁッ!」
虚しく月へと吼える慟哭。
巫女の存在意義は此処に散った。
バラルの呪詛の真実を識った彼女にとって、今まで積み重ねてきた数千年が想い人の願いを凌辱し続けていた外道であるという真実が残酷な程に胸を穿ち、もう二度と目覚めたくないと自己嫌悪の地獄に堕ちるほど、心を壊す。
「わたしは……わたしは……、──っ」
「赦せ、などと乞いはしない。責苦と誹りは地獄で受けよう。怨みながら、絶望しながら死ぬと良い。二度と
粛清と慈愛の一閃。
雷火と黄金錬成の核融合を纏った死の光が、フィーネの存在を細胞の一片すら残さず消滅させた。
雷霆の栄華を飾る武勲は此処に完遂された。
終焉の巫女の討伐。人類史にて暗躍するパヴァリアの先達たる彼女は、結社にとっても理外の存在であったが故に、ただ殺すのみならずその精神を粉々になるまで打ち壊した彼女の手管にアダムは感心し、歓喜し、彼女に自分に次ぐ結社の高位たる“幹部”の座を与えた。
「見事だったよ、今回の成果は。願いを聞こう、僕にできる事であれば」
答えは、決まっていた。
次の目標は軍事政権国家バルベルデ共和国。
独裁政治による自国民への圧政。愚連隊以下の軍人がよりにもよって自国の民を嬲り、犯し、奪うモラルの欠如した下劣な有様。
更にはパヴァリア光明結社が
国家や政治の腐敗──この世界で最も色濃く
「ふむ。良いだろう、それで。上手く回りそうだしね、未来を識る君が支配すれば」
爪牙を研ぎ続ける獅子の裡に気付かぬまま、アダムは楽観的な態度であっさりとそれを承諾する。
其処からはまさに怒涛の快進撃。
パヴァリア光明結社からの異端技術提供が急に途絶え焦燥に駆られる軍上層部。
その致命的な隙を彼女は逃さない。
反政府組織に合流し、圧倒的なまでの
築かれる悪の上層の屍の山。
是正される悪法。
救い出される無辜の民。
被支配階級による政権転覆は破竹の勢いにより成され、革命軍の首魁であるアイリス・フェイルノートは僅か一年にも満たない時にてその全てを完遂した。
そして──国を一新させ頂点に座する乙女が、今まで虐げられてきた国民の前にその姿を現した。
新たなる主導者、その存在に対する国民やかつて国から逃げ国境を彷徨ってきた難民。そして政府軍によって捕らえられた少年兵たちの胸中は期待と畏れが半々。
先も分からぬ未来を慮り絶望に沈む人々が見たのは──
「私はお前たちの為に生き、お前たちの為に死のう。この身の全ては
その言の葉には一片の嘘も偽りもなく、故に人々の心をこれでもかと打った。
無辜の民の安寧を希う裁断者の厳粛なる誓いは、喝采と共に迎えられる。
だからこそ──彼女の
偽りなどないとも、
しかし致命的に
よって此処に、数多くの光の信奉者を出しながら政権転覆はつつがなく幕を閉じた。
「“勝つ”のは私だ」
賽は投げられた。もはや英雄譚は止まりはしない。
雌伏の時は終わりを迎え、もう一つの革命を起こさんと鋼の英雄は剣を抜く。
──助けてくれた。
そして英雄の戴冠に、少女は焦がれる。
──こんなあたしを……こんなあたしたちなんかを……っ。
誰よりも強く、誰よりも雄々しい英雄。
涙が溢れて止まらない。礼賛を吠えたくて仕方がない。
焦熱に灼かれた大好きな母と父。冷たい鉄柵に閉じ込められた孤独と辛苦。
涙も、絶望も、全てを焼き尽くしてくれた
そんな
闇を祓う不屈の光。悪を穿つ正義の拳。
視線に宿る猛き不滅の焔はあらゆる邪悪を赦さない。
「あたしも、あんな風に──!」
光を携えた
勝利を手にする絶対の断罪者に、雪音クリスは憧れた。
そんな誰かを救う
斯くして、もう一つの革命は決行される。
「真逆手を咬まれるとはね、飼い犬に。教えてくれないか? 何が不満だったか」
辺りを黄金の色彩で包まれた
ソロモンの杖による機能拡張、バビロニアの宝物庫へと通づる道に不意打ちで閉じ込められた彼は、眼前の不完全に対して苛立ちを抱きながら問いかけた。
「なに、元より是正の対象ではあったがこの因果が確定したのは最初の邂逅が全てだともヴァイスハウプト──貴様がイザークとの出会いを経て“人間”を理解していれば結末もまた違ったろうが、もはや栓なきことだ」
「ははっ。預言かね、またお得意の。気取るつもりかい? 正義の味方を。血に穢れた君が」
「笑止。私を全くもって理解できてない様で何よりだ“人でなし”よ」
売り言葉に買い言葉。
英雄は怪物の悪辣を既に看破し、怪物は英雄のあり方に狂気を感じ取り瞠目する。
己を打倒せんと相対する理由は正義故か──バルベルデの紛争を短期間で終息させた彼女の功績を鑑みた考察はしかし、一笑にふされて終わる。
「私は一度たりとも己を正義の味方と考えた事はないし、なろうとも思わん。無論、この様な殺戮者にそんな資格など元よりあるはずもない」
然り、己の根源など生誕の時より見つめて自覚した。
流した血の数も、浴びた血の数も。全ては大願の為の犠牲。されど己が赦されるなどと彼女は微塵も思っていない。
己も違わず奴らと同じ塵屑であるが故に。
「もはや全ては熟慮済み。己が破綻など穴が空くほどに見つめ直したとも──故に、私は止まらん」
過ちは永劫地獄で贖おう。故に己が責務から逃げてなるものか。
貫け最後まで。止まるなこの血に濡れた王道を。覇者の王冠を呪いのように頭蓋に食い込ませ、宿業を背負い己が成すべき“救世”を──“神への叛逆”を成すのだ。
「この身の全ては無辜の民の安寧と災厄の是正が為、ならばこそ私は邪悪を滅ぼす死の光に──“悪の敵”になりたいのだ!」
「狂ってるよ、君は。骨の髄まで」
紡がれた力強い宣誓に、アダム・ヴァイスハウプトは冷徹な瞳を以て応える。
知ったことかよ破綻者が、もはや貴様は用済みだ。
狂った幻想と共に散って行けと、
「死ねよ雷霆。滅びると良い、大願を果たせぬまま」
隆起する肉体。変貌する身体。
これまでの無下にできぬ功績から、目の前の英雄を容易ならざる困難と認めたが故の“変身”。
自身の美形を保っていた膨大な
黒鉄の如き漆黒に染まった肉体と、屹立する黒山羊の角を戴いたその姿はまるで悪魔の如き異形。
プライドと羞恥を心の奥底に隠し、文字通り正真正銘の“人でなし”へと彼は堕ちる。
「ならば此方も、全霊を以て貴様を踏破しよう──
対するは無謬の
焦熱の雷火と浄滅の篝火は数億度に至る煉獄の業火。
たとえファウストローブのバリアコーティングが機能しようともその身を焼き尽くす灼熱を肌に感じるというのに、英雄の鉄面皮は苦しみに歪まず凛々しい面持ちを保っていた。
英雄と怪物。
剣士と悪魔。
業火と却火。
人智を超越した二人が相対し──戦いの幕は、切って落とされた。
「オオオォォォッ!!」
「シィッ──!」
鋼よりも硬く、巨岩すらも砕く悪魔の
核融合反応による焦熱を纏った刃に対抗する様に、アダムも英雄と同じく無限の却火を手札として切った。
「教えたと思っている! 誰が
一瞬の内に距離を取り、膨大な魔力によって無理矢理実行される化学の超兵器。
あらゆる
超高温と超高圧の哲学的結婚は急速な原子の繋がりを可能として、極大の爆破を顕現させる。
それは、未だ人類の科学では実用の目処すら立たぬ超兵器。
星間飛行すら可能とする程の叡智を究めた神に造られし原初の人は、理論や立証を虚仮に純然たる結果のみ引き起こす。
起爆装置を必要とせず、重水素と三重水素の核融合一段階から発生された
「
究極に近づくほど表現する言葉が陳腐になる様に、アダムの放つ一撃はまさしく至高としか言い表せない王道の焔。
絶望的なまでに巨大な大熱量。
人類の業すら棄却した純粋水爆が一人の少女に向けて放たれた。
「
されど英雄もまた、むざむざと業火に灼かれる愚か者に非ず。
出力を極限まで引き上げた黄金錬成。アダムの様な膨大な魔力による無理矢理な芸当などできない彼女は、その寿命を代価に錬金術の究極を行使する。
創生。収束。圧縮──収束、収束、圧縮。
極限まで圧縮された核融合エネルギーはまさしく人型の擬似太陽。
バリアコーティングを突き抜け生身の肌を焼き焦がすが、もはや頓着などしない。
己が総身を一振りの剣、或いは一機の爆撃機に見立てアイリスは純粋水爆の大火球を正面から突破する。
「化け物だな、つくづく貴様は!」
ならば次の手だ。貴様を葬り己は己自身を捨てた神と訣別しよう。
愛憎入り混じる人への妄執に近しい狂気を抱きながらアダムは、更なる核の炎の真価をその手に宿す。
「制圧するとしよう! 点ではなく面で!」
掲げられた剛腕。核融合のエネルギー炉が更なる臨界点を突破し、アダムの頭上に新たなる黎明が創生される。
先ほどの純粋水爆に比べて単一の威力は低下せども、動員されたエネルギーの総量は遥か膨大。
重点に置かれた
まるで蟲の産卵。産めよ増えよと極小の焔火が凶暴性を伴い増殖し続け、文字通り無数の火花となり熱した大気に圧を纏わせ
「潰れるがいい、無謬の業火に──
まるで重力を無視した雨霰。アイリス・フェイルノートの位置する対象座標へと焦点を絞り込まれた無数の爆熱が彼女を包み込む様に上下左右前後あらゆる面から殺傷の焔となり雪崩れ込む。
「ぐ、が……ァ──っ!」
さしもの英雄も即座の反撃は不可能、否。というより人の形を保ち生存している事自体が奇跡と言っていい殺意の暴虐に晒されていた。
自身の身を焦熱にて焦がす核融合の焔と雷火を逆に面制圧の爆縮燃焼から守るバリアとして起動させるが、それも長くは続くまい。
しかし地獄の責苦と感じ紛う程の激痛がその身を侵し、常人であれば即座に発狂死するであろう絶痛絶苦に晒されながらも英雄は不撓不屈の闘志。即ち気合いと根性にて煉獄の齎す業火に耐えていた。
「まだだァッ!」
燦然と煌めく人の可能性。
光の宿痾に苛まれし狂人の見せた意思は、太陽に灼き焦がされようとも折れず挫けず。
どんな苦難も踏破する魔法の言葉を口に彼女は四方八方より飛来する爆熱の雨霰を受けながら敵の許へと歩み始めた。
「悍ましいよ、全く君は。滅びろ、滅びろ、滅びろ! 光に狂った宿痾の奴隷がァッ!」
最早手加減など微塵もありはしない、究極の王道。即ち絶し不変なる焔で跡形もなく焼き尽くさんとアダムは己の器の耐久値すら度外視に次なる必殺を装填する。
現実世界では到底使用できない禁忌、神を弑する為の切り札であり星の命脈すら絶つ絶技を、無限の宝物庫にてアダムは行使した。
「
それは、太陽すらも超えた大質量の恒星が生じさせる終の煌めき。
言葉にするのも馬鹿らしく、数字に起こす気力さえ尽きてしまう浄化の熱──星の枠組みを超え宇宙規模の災厄とでも呼ぶべき一撃が、ただ一個人へと振るわれる異常事態。
故に、アイリス・フェイルノートの敗北は此処に確定した。
相手は宇宙にて煌めく星の終焉。
矮小な人の身ではどうやっても辿り着けぬ極致であり、更に言えば彼女とアダムの能力の関係性はまさに下位互換と上位互換。
元より数百倍以上の開きを許した
「
──
確かに下位互換では超上位互換である
ならば、その煩わしい互換性を棄却して更なる極光をその身に宿すのみ。
蓄え続けた錬金術の叡智。黄金錬成により可能となった温核融合論、及びそれに連なる科学的推挙──寿命の殆どを対価にしてまで得てきた全てをアイリスは捨て去り、新たな
「“鍛冶司る
一点突破。収束性の極致へと至りし
黄金錬成を棄却し、傾倒するはその身に纏いし
「──は?」
唖然が、虚空に響き渡る。
極超新星爆発。太陽の数十倍の質量が終に煌めく終焉爆熱にて
「──捉えたぞ、
「哲学兵装か、
御名答、さっさと死ね。
煌めく殲滅光を纏いし絶死の白刃がアダムの肌を容易く切り裂き、英雄の本領である接近戦に漸く持ち込んだ。
「──
「笑止! たかが肉体組織が死滅する程度で止まると思ったかァッ!」
それも、ただの
あらゆる科学的論証を
幾度も死地を潜り抜け覚醒を果たした英雄の光刃は概念破壊の性質を激烈に帯びており、
対万象、対秩序、対概念。異常な程に攻撃へと振り切れた極光はあらゆる障壁を斬り伏せ、焼き払い進み続ける勇者の証左。
「化け物……化け物が! 生きていい筈がないだろう!? お前の様な“世界の敵”が!」
「然り、己の悍ましさなど百も承知だ──故に、貴様ら災厄を道連れにもの皆全て尽く滅ぼしてやろう。
最早勝敗は此処に定まった。
覚醒を果たした
「まだ、まだ僕は──!」
抗うアダム。覆った形勢にて刹那であろうとも生ある時間を伸ばし逃げようと足掻いた最中──彼にとっての奇跡が、起こった。
「──っ!」
「──なに?」
理由は不明。原因など分かるはずもない。何故なら自分は何もしていないのだから。
──奇跡、奇跡だ! 微笑んだというのか!?
歓喜が胸に浮かぶ。絶体絶命を奇跡により免れた現実に狂笑が止まらない。
英雄は死んだ。
謎の原理により頸を断たれ、悪魔の
「ま だ だ ッ !」
──
「……は?」
唖然と共に、アダムの頸が刎ね飛ばされた。
敵を殺した瞬間という最も致命的な隙を突かれた原初の人は、呆気なく英雄の刃により絶死を賜られる。
「ばけ、ものが……」
振り絞った一言。目の前の
決着。
勝者、鋼の英雄アイリス・フェイルノート。
敗者、原初の人アダム・ヴァイスハウプト。
人類史に刻まれることのない壮絶な神話の闘争は此処に終結し、アイリス・フェイルノートは黄金の宝物庫にて絶対粛清の理を刃に刻み君臨する。
断たれた頸を、そっと撫でた。
アダムへの攻撃を優先したが故に完全な
風穴を開けられた腹の傷も外面こそマシに見えども、
されどその鉄面皮に一切の苦痛の色は浮かばず、寧ろ
「──いるのだな? 神の力を手に入れた
先ほどの奇怪現象。唐突に裁断された己の首。それ即ち神の力である並行同位体への損傷の転写。
その原因にある程度の察しがついた英雄は、神との迎合を果たしたであろう
まずは己の世界の災厄の是正が先、眼前の邪悪を排斥せず何処か遠くの厄災に思い耽るなど笑わせるなと、何処までも自分に厳しい在り方を崩さず
「良かろう、委細順調。全ては煌めく
誓いが果たされるその瞬間まで。
不死鳥の如く羽ばたき続け、英雄譚を奏で続ける。
全ては──“勝利”をその手に掴むため。
基本世界のカス幼女「フィーネに首切られちゃった……とりあえず適当な
英雄幼女「是非もなし、まだ見ぬ
⚫︎アイリス・フェイルノート(Another)
並行世界に於けるアイリス・フェイルノート。
おっぱいのついた金髪長身赫目イケメン(10歳)
厳粛なる裁断者であり鋼の英雄。光の為、未来の為に
カスな方のアイリスとの分岐点は10年前の生誕時と家庭環境。
この世界では錬金術師としてパヴァリア光明結社の末端だった両親の許に生まれて即、自分が転生者であると言う自覚と戦姫絶唱シンフォギアの原作知識を思い出したのがこの世界のアイリス・フェイルノート。
装者たちに“憧憬”を覚えライブ時の惨劇で歪な在り方を形成したのが基本世界のアイリスだとすれば、この世界の彼女が装者たちに覚えたのは“憐憫”。そして理不尽な世界への“怒り”。
本来ならば銃後で護られるべき少女たちや無辜の人々が戦場で狂い哭く情景に歪さを感じた彼女が決意したのは、この世界に於ける災厄の是正と人類の相互不和の解消による救済。
その為にシェム・ハを断章すら微塵も残さず殺す術と人類全てがバラルの呪詛を克服する方法を模索してる。
齢5歳で原作知識を手土産にアダム・ヴァイスハウプトと接触。言葉巧みの奸計で錬金術により自分がいずれ至るであろう最盛期の肉体を再構築し、ファウストローブの
その後は即座に行動を開始しフィーネを秘密裏に打倒。彼女の愛する統率神エンキの真実を告げてリィンカーネーションの輪廻ごと成仏させ、彼女の失脚で後ろ盾を失ったF.I.Sも解体しレセプターチルドレンも保護。
その戦果を手土産にバルベルデへのパヴァリア光明結社の支援を中断させる。更には共和国内部にて反政府軍として革命を引き起こし政権を簒奪。紛争を終息させ難民や虐げられてきた国民。共和国軍によって拉致されていた少年兵達を保護。
原作開始五年前のギリギリのタイミングでフィーネを排除したため天羽奏の悲劇も結果的に回避。起動実験において暴走するネフシュタンの鎧も二課から掠取したためライブの惨劇も未然に防ぐ。
ソロモンの杖によりバビロニアの宝物庫内でアダム・ヴァイスハウプトを倉ごと排除した為、現在の目下の敵は風鳴訃堂とキャロル・マールス・ディーンハイム。
最終打倒目標はシェム・ハ・メフォラシュ。
南極大陸から既に棺を引き上げ腕輪は回収済み。
アダムを打倒し次代の統制局長として台頭し、パヴァリア光明結社の改革と粛清を開始。
サンジェルマンたちと共に結社内部の危険分子を裁断し、厳粛なる
清濁併せ呑む必要性を感じているが故に仄暗い暗部の一つや二つはあれども、悪戯に表の世界へ害を成さぬ様に組織を再構築。
新生バルベルデの首席にしてパヴァリア光明結社二代目統制局長──それが、この世界線に於けるアイリス・フェイルノート。
有する
能力は極めてシンプルな雷火の創生と操作。
しかし英雄アイリスはこの聖遺物の特性と錬金術の黄金錬成による核融合反応を戦闘時常に併用しており、自分の肉体を灼き焦がしながら敵を滅殺する
「私も違わず塵屑だとも、ディーンハイム。立花響ならば言葉を交わし理解できた貴様の業を、私は雷火と共に灼き尽くす事でしか是正できん」
「過ちは永劫地獄で償おう。故にこの責務から逃れてなるものか──停滞と妥協を唾棄する破綻者。悪の敵という名の塵屑は、愚かしい程に無敵のままだ」
「故に私は──
あくまでも装者たちの悲劇を起因に世界の歪さに怒りを抱いただけなので、屑幼女アイリスと違って装者絶対主義ではない。
クリスもF.I.S組の保護もフィーネや無意味な紛争と言った惨劇を収束させた
総統閣下殿が帝国の繁栄成就だったり聖戦の真実を知った後の思慮深さだったりと一応の規格と規範が定まってるのに対して、この光の英雄は全人類が救うべき
天頂神でなければ救世主でもない、平等に生かし平等に殺す
ガチガチに
原作のサンジェルマンさんの在り方に光の宿痾をプラスした様な存在。
怪物を殺す怪物。災厄を是正する厄災。人類を愛し人類を滅ぼす自滅機構。邪悪を滅ぼす悪の敵。
過ちは永劫地獄で償おう。あらゆる犠牲を胸に、この歩みが止まることなど決してあってはならない──姿形も朧げな
築かれる夥しい屍山と流れる血河。ならばこそ斬り伏せ蹂躙して来た彼ら彼女らの命に報いる為にも己は必ず人類の
矛盾を孕み自覚しながらも、邪悪を滅ぼす“悪の敵”として彼女は君臨する。
「敬意は払おう──だが殺す」
結末はほぼ確実に全滅エンド。
英雄譚に脳を焼かれたシェム・ハと覚醒合戦で既存世界の崩壊と新世界創世の聖戦エンドを迎えるか、最終的に相互理解に至らない人類や外宇宙の神々を破綻者が虐殺してしまうかの二者択一クソエンディング。
極小確率で光の素晴らしさと人の弱さと言った闇を知ったクリスちゃんが境界線を描くか、運命の修正力で装者になったビッキーが未来さんと一緒にスーパーコミュ力を発揮して人類の可能性を説き尽くす事ができればかろうじてグッドエンディングかトゥルーエンディングに至れるかもしれない。
〜もしもカス幼女アイリスと鋼の英雄アイリスが出会ったら〜
間違いなくどちらかが斃れるまで殺し合う。
一目見た瞬間殺意が全身を支配し、互いの来歴と本性を察した頃には英雄の剣が怪物の心臓を貫き、怪物の一閃が英雄の身体を袈裟斬りにして戦いのゴングが鳴り響いてる。
カス幼女「巫山戯るなよ? 理解してるのか貴様? あの美しい戦姫たちの
英雄幼女「貴様こそ巫山戯るなよ、
カス幼女「知ったことかよ
英雄幼女「然り。己の愚昧は百も承知だ。故に私は止まらん。求められれば施すのか? 拒絶されれば潔く身を引くのか? 嗚呼、巫山戯るなよ。要か不要かなど、どうでも良い。“勝利”とは進み続けること──決めたからこそ果てなく進むのだ。涙を笑顔に変えんが為に、
カス幼女「“誰か”って誰だよ? ああいや、その破綻すらも分かってやってるのか……自覚してる分一層タチが悪いよお前──反吐が出るな、殺す。そのまま理想に溺れて果てろよ天頂神気取りが」
英雄幼女「抜かせよ
怪物「狂い哭け──」
英雄「浄滅しろ──」
『貴様の
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文字通りの限界突破。聖遺物による雷火と核融合の極致へと至る黄金錬成が交わり、史上最高最強最純度の
本来なら幾らでも応用が利きそうな錬金技術を火力全振りにした超特化型
「邪悪を滅ぼす死の光──“悪の敵”と知るがいい」
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黄金錬成による核融合が一応の技術体系と科学的な温核融合理論に則った常識的な範疇の能力発現であるのに対して、こちらは全くの逆。
所有する聖遺物。戦乙女の帯剣により創生される“雷火”の解釈を極限まで広げ、より凶悪なものとして一種の哲学兵装として顕現させた権能は人類の行使する雷霆、即ち核分裂・放射能光発生能力。
あらゆる科学的な
更に特筆すべきは、極限まで攻撃性へと偏った極光の本質。
「故に邪悪なるもの一切よ、ただ安らかに息絶えよ」
●雪音クリス
ある意味この√でのキーパーソン。
光に盲いた哀れな尖兵となるか、只人として生きるビッキーや装者として一人孤独な翼さんと出会い人の弱さや生きることの辛さ悲しさと言った闇を知り、光も闇のどちらにも強さや優しさ、そして尊ぶべき価値があると受け入れて灰と光の境界線を描き
簡単に言えば進化先が
後者二つは良いけど前者を選んだら英雄が苦い顔しながら頭突きしてくる。
執筆後のあとがき:いぇい。シルヴァリオシリーズ最高。