転生腹黒幼女は装者たちを曇らせたい   作:靉靆 

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赫奕と煌めけ、これが我らの創世神話

 

 

 

 時は、アイリス・フェイルノートがその神の()を呼びし頃にまで遡る。

 

『──シェム・ハ・メフォラシュ』

 

 この世ならざる降誕者(フォーリナー)が、外宇宙からの降臨者(フォーリナー)()を呼んだ。

 世界が、悲鳴を上げる。

 生々流転の理が運命という名の巨石に堰き止められ、泰然自若の道理に亀裂が入る。

 

『呼んだな、我が()を』

 

 白色の世界に、神が顕現する。

 されどその身は分霊どころか搾り滓も良いところ。バラルの呪詛により砕けたその身の内のほんの一欠片──神性も存在規格も全盛期の十数億分の一ほどまで縮小した矮小な敗者(カミ)が、少女の身の内に巣食う。

 

 アイリスとの親和性などそれこそ論外。

 こちらの神託(こえ)も届かなければ、依代の“記憶”と“思考”すら閲覧できない。理解以前の問題であった。

 

 ──されど少女たちの絶望を希う醜い本性だけが、魂から滲み出ている。

 

「納得である。即ちあの小娘が我の名を呼べたのは()()()()()()()()()()()()

 

 アイリス・フェイルノートと言う少女の来歴に対して、致命的な()()()をした神は、同じく少女の領域に巣食う“蛇”を認識した事により何故この只人が己の()を呼べたのかに一応の理解をした。

 

████████████(黙れ主を騙る者! 偽りの支配者ども!)

「騙った覚えはないのだがな。“████”と我が真名など、我の死後人類(ルル・アメル)が勝手に結びつけただけの事。偽りの神(ヤルダバオト)とでも名乗れば貴様は満足するのか?」

 

 荒れ狂う蛇を、神が嘲笑う。

 

████████████(出て行け 出て行け 出て行け)

「遺憾である。そう邪険にするものでもあるまい。最小単位の意識のみとは言え復活に変わりはないのだ──小娘共々その生を以て我を興じさせろ」

 

 神は、少女の瞳を通して全てを俯瞰していた。

 相互不和により造り出された忌まわしきノイズの暴虐。

 偽善を口にし依代に翻弄される戦姫(シンフォギア )──そのひと時は、敗衄と封印により苛立つ神の溜飲を少しばかり下げた。

 

『ありがとう──翼さん』

 

 醜悪な本性を隠し絶刀の心を踏み荒らすその姿に、ついぞ神は我慢できなかった。

 

「くは。くははははは! あんなものを導く者(モーセ)だと!? 数千年の眠りで機構が腐ったか“蛇”よ!」

█████(喧嘩なら買うぞ貴様)

 

 嘲笑は止まらない。

 嗚呼愚かなる統率神(エンキ)よ。貴様の願いの果てがこの様な愚物に満ちた世界かと、かつて己に癒えぬ敗北を与えた宿敵の願望と相反する醜い世界に愉悦が満ちた。

 ならば己に間違いはなかった。もはや言葉だけでは相互理解など不可能──全て、一つに溶け合うのみ。

 

████████(ならば、我がモーセの“真実”を知るがいい)

「──なに?」

 

 愉悦に溺れながらも、未だ相互不和を克服できぬ生命に儚さを覚える最中、“蛇”が深淵への道程を示す。

 

████████████(彼女は、全てを識っていた)

 

 落ちる。堕ちる。墜ちる──アイリス・フェイルノートの魂に巣食う二柱の怪物が、少女の根源へと転墜してゆく。

 

████████(外宇宙からの来訪者も)██████(忌々しき世界樹も)████████(貴様の真名も全て)

「貴様……何を戯言をほざいている」

 

 白色の世界から一転。光の射さない漆黒の深淵にて、蛇は目の前の神よりも深く深く同調した魂を昂らせ、依代の精神と呼応させた。

 

「──っ。これは……!」

███████████████(この世界の真理と未来を識る者)█████(故に彼女は)██████(歪ながらも)████████████(“預言者”であり“導く者”である)

「理外である──観測世界の記憶……だと?」

 

 シェム・ハ・メフォラシュは──己が創世せし世界の未来(さき)を識る。

 

 

『みんなが歌ってるんだ。だから──まだ歌える、頑張れる、戦える!』

 

少女の歌には、血が流れている。

 

 狂乱に堕ちた巫女がいた。

 数千年の悲恋を引き摺り、統率神への想いだけで精神の限界を超克し月を穿つ程の叡智を極めた摩天楼。

 輪廻転生──いずれ願望(ネガイ)が花開くその日まで。

 

 神は、想い人の遺志を知らぬ間に踏み躙る愚者を嘲笑う。

 

『人が言葉より強く繋がれる事を、分からない私たちじゃありません』

 

 ──綺麗事を口にする黄色い雛鳥に、胸の奥底が何故か騒めいた。

 

 

『この拳も! 命も! シンフォギアだ!』

 

さようなら、融合症例第一号(ガングニール)

 

 正義の為に悪を背負う少女たちが居た。

 月の落下から人類を救わんと、後世に残る汚名を背負ってでも開拓者の泡沫と共に暴食の巨人を起点とした無茶を成そうとする身の丈に合わぬ愚者たち。

 其処からまろび出たのは、英雄症候群を患った狂気の生科学者。

 

 神は、英雄に成ろうとする只人を嘲笑う。

 

『6人じゃない。私が束ねるこの歌は、70億の絶唱ッ! 響き合うみんながくれた、シンフォギアで──!」

 

 ──刹那の時とは言え、人類と言う群生を一つにまとめ上げた少女の勇姿に、雫が頬を伝った。

 

 

『繋ぐこの手が、私のアームドギアだ!』

 

勃発(ヴァーサス)──魔法少女事変(アルケミックカルト)

 

 世界を壊す歌を奏でし少女がいた。

 生きた時の長さこそ終焉の巫女には及ばずとも、積み重ねし憎悪という名の想いの力は彼女に匹敵する程の精神の超克者。

 記憶を犠牲とした錬金術の極致。ディーンハイムの秘術は世界を分解して暴き出す。

 

 神は、その己すら殺しかねぬ手管に驚嘆はせども、父からの命題に足掻く無知蒙昧な少女を嘲笑う。

 

『へいきへっちゃら──私、お父さんから大事なものを受け取ってたよ』

 

 ──理不尽な現実を直視しながらも、また一つ成長を迎えた少女の姿に、慈愛を想う己がいた。

 

 

『私は歌で、ぶん殴る!』

 

一にして全なる者が死を灯す。

 

 人類救済を希う錬金術師(アルケミスト)は、不遜にも神の力へと手を伸ばした──故につけ込まれる。その純情を“人でなし”に。

 生まれながらに“完全”を備えし全能の王(アダム・カドモン)

 されど神々の宿願とは相反する選民主義の芽生えにより、その存在は異端として処理された。

 

 神は、遥か彼方にてうち捨てた試作品(プロトタイプ)が敗北する様を嘲笑う。

 

『だとしても! 分かり合うために手を伸ばし続けたこと、無意味では無かった!』

 

 ──不倶戴天の敵とすらも手を繋ぐ不屈の在り方に、己が胸の高鳴りを自覚した。

 

 

『私の想い、未来への気持ち。2000年の呪いよりもちっぽけだと誰が決めた! ──神殺しなんかじゃ無い。繋ぐこの手は私のアームドギアだ!』

 

繋ぐこの手には──(キミ)を殺す力がある。

 

 英雄譚は終幕を迎え、断章を紡ぎ太古の支配者たる“神”が蘇る。

 人類種改造執刀医シェム・ハ・メフォラシュ──即ち、今この未来(ものがたり)を観測している彼女自身が辿る末路。

 生命(ヒト)は、理解するには遠すぎた。手を取り合うには乖離を是正する心を持ち得なかった。

 

 ならば人も、神も。我も汝も総じて不要なり。

 融け合い一つとなる事こそが創世女神(シェム・ハ)の導き出した妥協(こたえ)

 

 我は汝で、汝は我。

 自己(おまえ)他者(おまえ)に区別などない。一は全なり、全は一なり。

 故に全て、全て──塩の純白に染まれ。

 

『だとしても、私たちは傷つきながらも自分の脚で歩いて行ける。

 ──神様も知らない光で、歴史を創って行けるから』

 

 ──あぁ、そうか……貴様らは、己が旅路の“答え”を得たのだな。

 

 全ての物語を閲覧し、シェム・ハの胸に溢れたのは──途方もない“感動”であった。

 

 素晴らしい。どうか謳わせてほしい。この感動を、この胸の高鳴りを。

 神である己に最愛の陽だまりを奪われようとも、神殺しの呪いすらも超克し歩み続ける人類として、思い悩み続けた相互不和の踏破を誓う人の子ら──嗚呼、()()()()()

 

 涙が溢れる。

 尊き英雄譚(ヒカリ)に目を灼かれながら、シェム・ハ・メフォラシュは──“怒り”を吠えた。

 

 ──だが、その英雄譚(こたえ)は“今の我”に出されたものではない。

 

 慟哭が、依代の魂に響き渡る。

 

「あぁ、嗚呼。悲嘆である“蛇”よ。“竪琴”よ、我は貴様らを怨むぞ──何故、こんなにも美しい英雄譚(ヒカリ)()()()()()?」

████████(あれ、なんか思ったより効いてる……)

 

 感動の次は、悲哀の涙。

 何故だ、何故なのだ。何故己はこの物語(シリーズ)を完走してしまったのだと、神が狂い哭く。

 それは、この美しい物語を教授(ネタバレ)した“蛇”とその根源たるアイリスへの怨嗟。

 

 そして──此処とは異なる時間軸の己への嫉妬。

 

 羨ましい。羨ましい。羨ましい──(おまえ)はその(まなこ)で刮目したのだろう? その耳で少女たちの歌声を愛撫として感じたのだろう? それはなんと尊い体験だろうか。

 

 納得などできるはずもなかった。

 たとえ戦姫たちの激唱に感動せども、千を超え万も思い悩んだ命題へこうもあっさりと答えられ、シェム・ハの胸には言葉にできない激情が渦巻く。

 

 次に感じたのは、恐怖だった。

 天幕越しの劇場に感涙し結末を知ってしまった今、自分が同じ様な道筋を辿り既視感に満ちた光景を迎えた時、果たして自分は“満足”できるのかと言う恐怖が、身を包む。

 

「……否である。彼女たちならば──誇らしき戦姫(ゆうしゃ)たちであれば、また異なる英雄譚(ヒカリ)を魅せてくれる筈だ」

 

 だが神は、その恐怖を殺す。

 

 全ては戦姫たちへの溢れんばかりの“期待”故に。

 奇しくもそれは、趣向の差異こそあれども依代であるアイリス・フェイルノートの抱く英雄譚への憧憬と同じ類のものであった。

 

 望まぬ全知により、未知を求める狂おしい渇望が誕生してしまった。

 素晴らしいものを見た。美しいものを見た。

 かの物語にて見せた戦姫たちの足跡こそまさに至高の英雄譚──だが悲しきかな。未来を先読みした事で神の心の内にどうしようもない“飢餓”が暴れ狂う。

 

 見せろ。見せろ。我に至高の結末(未知)を見せてみろ。

 

 並行世界による幾千幾億の可能性の枝すらも認識したのだ、ならばこの時間軸と世界線の彼女たちもまた、神様(おのれ)も知らない異なった英雄譚(ヒカリ)を魅せてくれる筈──否、そうでなければこの我欲が治らない。

 

 まさしく最悪な運命の悪戯(バタフライエフェクト)。観測世界からの降誕者(フォーリナー)による蝶の羽ばたきは、全能の母に叡智を与え全知全能の女神へと至らせた。

 

 シェム・ハ・メフォラシュの内側にて燻る情動はもはや、数千年前に同胞を虐殺した当時の宿業をも超える程に英雄譚への憧憬が絶対命題として刻まれる。

 

 

 故に──眼前のこの光景に叱咤をせずにいられなかった。

 終焉を告げる毒蛇にとった不覚と致命。

 今まさにその生を終えようとする“依代”に、神は“怒り”を吼える。

 

「──終わるものか! 貴様はその終焉を容易く受け入れるのか代行者よ!」

 

 切断面より噴散する血潮の雨。

 割れた柘榴。不可逆の喪失。絶対なる死。

 まるで猛き叢雲に首を刎ねられし軻遇突智。

 絶対神(ヴェラチュール)により頭蓋を人界(ミズガルド)の土壌とされた泉の巨人(ユミル)

 そして──蒼穹の勇者に敗れし彷徨う蛇神(メドューサ)

 

「刮目するのだろう。彼女たち(装者)の描いた未来への羽撃き(フリューゲル)を! 斯くも心に滲みいる英雄譚(シンフォギア)を!」

 

 その性根はまごう事なき人間の屑。

 塵のような人格にて悪辣を振る舞う邪悪なる幼子。

 己の尊敬する勇者たちとは比べるまでもない塵屑に他ならない。

 

 されど神は、絶望と希望を希う悪鬼に共鳴(シンパシー)を感じていた。 

 

「赦すものか……断じて赦さんぞ! 我を此処まで昂らせたのは他でもない汝の記憶であろう! ならば──この胸の高鳴りの責任を取れ、我が代行」

 

 道程は違えども、求める結末は同じ。

 貴様の悪癖など欠片も理解できぬと神は吠えながら、しかし至上至大の大団円(ハッピーエンド)にて締め括られる英雄譚に脳髄を焼かれたこの依代はまさしく己にとっての同胞。

 

 故に死ぬな。甦れ。

 我と共に最果てに至れと、創世女神が活を飛ばす。

 

 ──あぁ、ならば。

「なっ、貴様……我の神託(こえ)を──!」

 

 願いは、届いた。

 神と巫女のパスは此処に調(ととの)い、天壌無窮の神託が魂を震わす。

 

 ──今の私が神巫(かんなぎ)ならば……力を貸せよ、月天女! 創世女神の星辰(うた)をくれッ! 

「あぁ、嗚呼。応とも我が代行! 全ては──煌めく英雄譚(シンフォギア )が為に!」

 

 本来ならば彼女──シェム・ハ・メフォラシュはその全知全能を白痴に冒され権能の全てを封じられた筈だった。

 意識は数十億を超える断章と共に眠りにつき、永劫醒めることのない呪詛の揺籠に微睡む全能にして無能なる神性存在。

 

 だが今、此処に神は──別御霊(わけみたま)と呼べぶべき“半身”を得た。

 

 己の()をアヌンナキの個体名として認識し、かつて同胞の神々を蹂躙し尽くし真なる唯一神へと至ろうとした己の業すらも識る者。

 それは、ありうべからず存在証明。

 逆説的にシェム・ハ・メフォラシュと言う太源を励起せし異端なる呼水。

 

「クハ、クハハハハハハハ! そうか! そうか! ()()()()()()()!」

「嗚呼、そうだとも我が代行。故に礼賛しろ──創世神話(エヌマ・エリシュ)の幕開けだ」

 

 深淵を覗く時、深淵もまた此方を覗いている。

 神と巫女の相思相愛。互いに互いの存在を補完し合う共存の理。

 星辰(ほし)を創世する女神(カミ)の覇道と、惑星(ほし)の源流より弾かれし単一の超越個体たる巫女(ヒト)の求道が狂おしい渇望と共に混じり合う。

 

「謳え、謳え、謳えよ神罰代行(メタトロン)──黄泉路を駆け上がれ嘆きの竪琴(フェイルノート)

 

 落ちる首。

 光を失う双眸。

 活動を停止する脳細胞(ニューロン)

 

 少女は今、二度目の終末を迎える──その、刹那。

 

 

『「──いいや、まだだ」』

 

 

 轟く喝破。

 砕ける空間。

 幾つもの世界は重なり、災厄が跳ね除けられる。

 

 行使されるのは、先史文明にて崇められし神々(アヌンナキ)の権能。

 

 

「……は?」

 

 現実にて、もう一人の巫女が唖然とする。

 今し方殺し尽くした筈の漆黒が、復活を果たした。

 切断された頸は当たり前の様に無傷。しかし問題は其処ではない。傷を回帰した結果ではなく、その過程こそが問題であった。

 

「待て、待て。待て待て待て待て待て! 何故、何故なのだ!?」

 

 唖然、困惑。そして不条理に対してフィーネは吼える。

 何故ならば、今眼前の怪物が見せた蘇生方法こそまさしく──己が崇拝する種の権能であるが故に。

 並行同位体への損傷の転写。世界線すらも超越した不死不滅の絡繰はまさしく無法の権能(チカラ)であった。

 

「その権能は支配者たる上位種(カストディアン)権能(モノ)だろう!? 何故貴様が()()を行使している!?」

 

 納得などできるはずもない。

 それも当然の事だろう。数千年も苦しみ抜いて歩みを進めた自分よりも、たった十年しか生きていない幼子が最も彼女の望む天上(カミ)に近しい存在であるなど、フィーネに認められる筈がなかった。

 

「巫山戯るな! お前が神の寵愛を賜るなど、そんな巫山戯た事があってなるものか──傲慢の蛇(サマエル)ゥッ!」

主よ、主よ、何故我を見棄て給うか(エロイ・エロイ・ラマ・サバクタニ)──と言った所か。やめておけ、()()()()()に期待するなど」

 

 拝跪せよ。礼賛せよ──毒蛇に堕とされし人間が紡ぐ神への祝詞。即ち創世神話が幕を開けるぞ。

 

『──██████(神性を唱えよ) █████(我がモーセ)

「“█”“█”“█”“█”──聖四文字(テトラグラマトン)

 

 さあ天上の銘を刻め、代行者(メタトロン)

 紡がれるはこの世で最もいと尊き我らが主の御名。

 創生せよ、天昇せよ、天墜せよ、天来せよ、天創せよ──人が創りし道理(ルール)など、もはや識るものか。

 

『十と一の(セフィラ)。二十二の小径(パス)。三十三の知恵の経路(セフィロト)。矛盾の徒よ、アイン・ソフより流出せし理を受諾せよ』

 

王冠(ケテル)』『知恵(コクマー)』『理解(ビナー)』『慈悲(ケセド)』『神力(ケブラー)』『(ティファレト)』『勝利(ネツァク)』『栄光(ホド)』『基盤(イェソド)』『王国(マルクト)』──番外の理を『知識(ダアト)』。

 

 即ち、神の座へと至る智慧の樹。

 

「その姿は広大。無限に広がり流れる海が如く。三十六対の翼。三十六万と五千の瞳。四十九の宝石。太陽より燦然と輝く(かんばせ)──『王冠(ケテル)』から『王国(マルクト)』へ。黎明と終焉(Alpha et Omega)。創造の御名は終尾の剣と共に」

 

 紡がれるのは、斯くも心に滲み入る胸の歌(ランゲージ)

 シェム・ハ・メフォラシュの権能である“言語”によって象られた美辞麗句は、その一節一節が途方もない神威を孕み、依代の口から唱えられる度に世界の法則を書き換えて行く。

 

 物理法則を虚仮に唯我独尊を謳いし埒外物理の証左たる銀の粒子が、まるで祝福する様にアイリス・フェイルノートを包み込む。

 

『生命の樹。人類群生演算機構。我が業により、我は天から失墜する同胞(カミ)を見る──アクセス

 

 その祝福に呼応する様に、神もまた全能をその手に取り戻さんと世界を侵食する。

 

 惑星(ほし)の記憶、大地(ほし)の意思、神祖(カミ)の領域であり玉座であり棺。

 

 開け(アクセス)犯せ(アクセス)貪れ(アクセス)──目覚めろ(アクセス)、我が全知全能。

 

接続権限(アクセスコード)人類種改造執刀医(シェム・ハ=メフォラシュ)。世界樹を介し最奥の奇蹟(アカシックレコード)への接続を要請』

 ──拒否(ネガティブ)月面観測基地(マルドゥーク)全職員及び統率神(エンキ)の遺志を尊重。改造執刀医の権限を認めず。

管理権限を編纂(知ったことかよ)世界樹よ、我が意に従え(さっさと開けろ)

 ──拒否(ネガティブ)拒絶(ネガティブ)止めて(ネガティブ)やめてやめてやめてやめて(エラー/エラー/エラー/エラー)──承諾(ポジティブ)

 

 流れ出る世界の真理。

 ある者は“それ”を欲するが故に総てを捨て去り、ある者は“それ”を破壊(こわす)ために総てを憎悪し、ある者は“それ”を凌駕(こえる)為に総てを否定した───“それ”こそが誰もが希い、誰もが触れ得ぬ最果てにして浮き世になき夢幻(まぼろし)

 

『汝、創世女神の愛し児よ──我が骸を天地と別ち、創世神話(エヌマ・エリシュ)を完遂せよ』

「──斯くあれかし(エィメン)

 

 神の寵愛が、依代へと捧げられた。

 まさしく汝こそが神話の特異点。

 アダムとイヴを誑かした毒蛇(サマエル)の如き悪辣。

 神の代行として至高の玉座を独占する様は、まさしく炎の柱(メタトロン)

 預言者(モーセ)と同じく神託を授かり、戒律を刻みいざ最果てを目指せよ嘆きの竪琴(フェイルノート)

 

然らば我が前に奇跡よあれ(BEFORE ME MIRACLE)幸いなれ(Slave)契約の天使(Metatron)。──赤海を裂き炎の蛇を退けし我が偉業を此処に刻め」

 

 炎と共に、代行者が降誕する。

 まるでプロメテウスの灯せし黎明。フェネクスが施す再生──()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 炎とは、神の怒り。主と主に連なる者の偉大さの証明。

 罪を濯ぎ悪を浄化せしめんとする神罰の依代。

 智天使(ケルビム)と共に原初の人から知恵の樹を守護せし炎の剣。

 退廃に溺れたソドムとゴモラの街に降り注ぐ硫黄の火。

 主と預言者を非難せし愚者を罰する炎の蛇。

 

 黎明に非ず。再生に非ず。

 神罰であり、降誕の証である。

 

 

「──聖詠昇華(Eucharistia)/永劫回帰(Nehushtan)

 

 

 顕現せし、栄光の王。

 覇者の王冠を担いし超克者が、最果ての玉座を独占し世界の理すら改変させながら夢幻と現実の狭間で微睡む。

 

 

 

 

 

 

 █

 

 

 

 

 うわーっ! ヤダヤダ許して! なんかテンション上がってデュエットしちゃったけどこの状況怖すぎるよ! 靴でもなんでも舐めますからNTR(乗っ取り)だけは止めて神様! 助けてネフちゃん! 

 

『遺憾である。未だ意識の大部分はバラルの呪詛に引き裂かれ要の腕輪も棺に封じられており不可能だ──何より、(われ)巫女(きさま)を粗末に扱う筈もなかろう』

 

 え? そうなの? なら良いや。

 うぇーいよろしく神様! 一緒に絶望と希望の英雄譚を楽しもうね! 

 

『我が言うのもなんだが清々しいまでのクズだな貴様。さっきの感動を返せ』

 

 と言うか頭の中に今の私のスペックが流れて来るんだけどなんだよこのチート権能のオンパレード……少しはラスボスたちとのパワーバランス考えなよ……この物語の主人公は装者たちだぞ? 

 

『この状況でダメ出しとか正気か貴様?』

██████(主よ御覧あれ!)████████████████(偽りの支配者を隷属せしモーセの偉業を!)

 ████████████(おおォォ! ハレルヤ! ハレルヤ! )███████(ハレルゥゥヤァッ!)

 

 ネフちゃんうるさい!!! 

 

『……まあ良いか。英雄譚の合間にて少なくとも退屈はせぬな──我が“半身”よ』

 

 

 

 

 あっ、でも土壇場の覚醒は普通に胸熱だから新しい鎧のデザイン考えてね二人とも。納期は10秒だよ♡

 

██(は?)

『よし、手を貸せ“蛇”よ。やはりこの愚者(アホ)は一発殴らねば気が済まん』

 

 

 







⚫︎シェム・ハ・メフォラシュ
 シンフォギア全シリーズ一気視聴で脳を焼かれたと同時に特大のネタバレを踏んで感情が迷子。
 数千年以上も思い悩んだ相互不理解の宿業に対してダイジェスト形式でビッキーたちが自分も納得できる程に素晴らしい英雄譚(こたえ)を出したせいでぶっ壊れて要求値が跳ね上がった。

 未知を見せろ。至高を見せろ。責任を取れ外道なる降誕者(フォーリナー)とのこと。
 まるで答えを先に知ってしまった数式の命題。ならば其処に至るまでの途中式を美しく盛り上げよう。

 幼女の事は人間的にはカスだとは思ってるけどシンフォギアに脳を焼かれた同志で、もっと美しい英雄譚鑑賞の為に追加のラスボスになって華々しく散って欲しいとの事なので関係は良好。

 
⚫︎アイリス・フェイルノート
 たった一話しかシリアス内面が持たなかったカスにして早急に殺すべき人類の敵。
 曇らせ趣味の英雄譚信者が全知全能を手に入れたとか言うまさしく悪夢。
 世界の理を改変しながら突き進む不死不滅の存在に成り果てた化け物。
 なお本人は装者の踏み台としてボスに無様に敗北したい為、ダメージの転写はともかくチートスペックの方には困惑してる。

⚫︎フィーネ
 本当に可哀想。
 カス幼女と全ての元凶が手を組んだとか言う最悪な状況。



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