「嗚呼、巫山戯るなよ
城砦の跡地にて、巫女が憤怒を吼える。
金色の長髪。黎明を見定める金色の瞳。黄金律の肉体を惜しげもなく晒しながら、創世の巫女は終曲へと至る脚本にて紛れた異端なる者に毒を吐いた。
ネフシュタンの少女。サクリスト:Nを纏いし謎の存在。
あのライブにて狙い通りネフシュタンの鎧の奪取を図らんと惨劇を起こした彼女であったが、結果は全くの徒労に終わった。
完全励起を果たした筈のネフシュタンの鎧が行方を晦ましたのだ。
己の計画から外れたその異常事態。いかにネフシュタンの鎧がデュランダルやソロモンの杖、そして今も秘密裏に造り上げている
惨劇から数ヶ月後、駒の一つである雪音クリスの歌によるソロモンの杖の励起にはまだ時間がかかる中で、片翼を失ったばかりの風鳴翼の心の傷を少しでも広げようと戯れに己自身に備わった権能でノイズを召喚し放逐した。
『
「狂っている。狂っているとも。抉られ貫かれ嬲られ、蛇に侵されながら歩みを止めぬ貴様は紛うことなく私と同じ狂人だ」
現れたのは、狂気の処刑人。
かつて己の手の内から零れ落ちた完全聖遺物ネフシュタンの鎧。それを纏いノイズに対して憎悪を吼える凶剣の存在こそ紛れもないイレギュラー。
彼女の数千年に及ぶ悲願の果て、成就に最も近づいた此度の輪廻にて想定もしていなかった狂気が蓋から溢れた。
あれから、一年と半年。
ソロモンの杖は完全に励起し、カ・ディンギルはほぼ完成。駒である雪音クリスも従順。
残るピースはデュランダル──そして、己を
「……これで漸く“完成”だ。全く要らぬ手間を掛けさせる」
フィーネの目の前に、鎧があった。
蛇を思わせるその紋様。白銀の甲──ネフシュタンの鎧が、其処にはあった。
「238の欠片と奴の溢した数十の肉片。そして欠損した四肢の幾つか……我が事ながら狂気の沙汰だな──生きた少女の一部から、聖遺物を造りあげるなど」
よく見ればその鎧は継ぎ接ぎの如く亀裂が走っている。
まるで壊れた人形を縫い合わせた様なその存在こそ、ネフシュタンの少女が戦場で溢した
千切れた腕や脚を更にバラし、繋ぐ。
溢れた眼球を潰して、混ぜる。
飛び出た骨を、へし折れた歯を、溢れた内臓を、欠けた装甲を──全てを束ねて造り上げた渾身の一作。
模造品なれど、
数千年もの時を生きた巫女である彼女だからこそ作成することができたその狂気の産物を愛おしげに見ながら、それでも脳裏には
「“融合症例”とでも呼ぶべきか。全くもって未知だが、故にお前の存在は論外でもあり私にとって不可欠でもある」
ネフシュタンの少女の異常性。それは身に纏う鎧との親和性に他ならない。
完全励起を果たした聖遺物であれば装者の様な適合者でなくとも常人にも扱う事は可能ではあるが、あれはそれらと根本的な部分で異なっていた。
無論。フィーネの作り出したシンフォギアシステムとも異なる。
「もはやあれは、
二課も、風鳴翼も気づいていない。先史文明から叡智を深めた己だからこそ到達することができた真理。
「人の形をした聖遺物。
化け物と化した無垢なる少女。
だからこそ彼女の細胞と肉片すらも擬似聖遺物完成の一助となった。
更には精神性もそれに引き摺られる様にして人外のそれに変容しているのだろう、とフィーネは予測を立てながらも
「まぁ、お前がどう
もう直ぐだ。
もう直ぐ己の願いは叶う。
数千年の輪廻にて蓄えた知恵を惜しみなく吐き出し、バラルの呪詛により不和に喘ぐ
「待っていて、
神を愛し、神に愛された巫女フィーネは、己が願いの成就を夢見る。
█
いぇーい。アイリスちゃん大活や〜く(ダブルピース)
野宿先の河川敷を後にして、私はルンルン気分で雑草をもしゃもしゃと食べる。
金なし宿なし衣服もボロ布と呪いの鎧のみと生活基盤が壊滅しちゃった昨今である。
家出してから1年と半年。二課の捜査網に引っかからない様に都市の外れで私はホームレス生活とノイズ鏖殺の二重生活を満喫していた。
限界を超えた飢餓と渇きは感じるけど何故かそれが原因では死にはしない。と言うか病気の一つもないし最近だと排泄と睡眠の機能も無くなってる感じなんだよね私の身体。すっごい便利。
変なもの食べてもお腹を壊さないから最低でも何か溜まれば良いやって感じで今日も雑草やらを食べる。もしゃもしゃ。
「ようやく、2年」
そして──そう、あの“惨劇”から2年の時が経っていた。
春の風が頬を撫でる。桜の季節。
そろそろ始まる原作開始の時を今か今かと待ち侘びる。
色々と楽しい原作開始前の時期を過ごしたな、と今にしてみれば良い思い出となった過去を振り返る。
うん、ノイズを殺して翼さんに意味深なセリフを吐いて去って行くムーブがめちゃくちゃ楽しい。
毎回毎回縛りプレイで傷だらけになる私を見て
『お願い、もう……もうやめて』
一筋の涙と共に、手に持つ剣をカタカタと震わせ私を見る翼さんの姿。
“原作”であれ程までに防人としての在り方を説き、後輩たちを引っ張っていた先人としての姿とのギャップに口角が上がって仕方ない。
『どうして自分を傷つけるの!? 貴女は一体何を……!』
防人語が外れて可愛いね翼さん。もっと片翼だけに見せてた姿を私に見せて。
血を流すたびに涙を流す貴女が愛おしい。
生への諦めを溢すたびに悲痛な顔をする貴女の優しさが愛おしい。
ノイズに殺意をぶつける度に特段気にして無い私の背景を察する貴女の慈悲深さが愛おしい。
悲しんで。苦しんで。
シンフォギアと言う物語に惚れ込み、
この世界で初めて見た美しい
貴女が私にとっての
大丈夫。大丈夫だよ風鳴翼──貴女ならきっとこんな試練は乗り越えられる筈だ。
天羽奏との別離を受け入れて、立花響と共に
「ただ、最近マンネリ気味だからなぁ」
ノイズを殺す。自分を傷つける。翼さんを曇らせる。
すっごく心震わせる一幕なれども、流石に一年半も同じ事を続けるのも少々“飽き”がきていた。
だからこそ、この原作が始まる2043年の時を迎えられたのが嬉しい。
「ピンクの巨人型ノイズ……聖詠を歌ってヘリから飛び降りる翼さん……うん。昨晩のノイズの襲撃が原作で翼さんが単独で相手してた
未だ薄れることの無い胸の内の英雄譚を遡りながら、現在の時系列を再確認する。
もう直ぐ夕暮れ、もう直ぐ始まる。
英雄が、主人公が、この世界の中心が──覚醒を迎えるその刻が。
「
魔鎧を纏う。蛇が身体の内を這いずり廻る。
『████──モ█セ ███を此█に』
何かが、聴こえた。
なんだろう。分からない。頭の中が霧で覆われたみたいに不明瞭だ──まぁ良いか。
最近ネフシュタンの鎧と身体の融合進んで変なのが聞こえるんだよね。原作にこんなのなかったし分かんないや。なんだろこれ。
「どうか、もっと美しい
ネフシュタンの鎧が可能とする超高速飛行で、首都圏へ向かう。
ノイズの襲来を報せるサイレンが、鋭く冴えた耳に届いた。
亜音速で向かうのは、ノイズの跋扈する工業地帯。
雑音が群れる不快な光景を眼下に収めながら、私は二課に悟られない様に鎧の出力を極限まで下げ、半ば休眠状態にする。
何処だ。何処だ。何処だ。
されども人外の超感覚を用いて彼女を探す。この世界の主人公、立花響を。
『──生きるのを諦めないで!』
聴こえた。
彼女の声だ。麗しく生への渇望を吼える少女の声。
視線を向ける。全てを俯瞰しながら愉悦に浸り世界時計の針が動くこの瞬間を切に待ち侘びる。
幼子を背に傷だらけになりながらもノイズを睥睨する少女。立花響が、其処にいた。
「──歌え」
お願いだ立花響。この世界の時を進めてくれ。
貴女が紡ぐ英雄譚、その始まりを──覚醒の鼓動を轟かせてくれ!
『
紡がれる歌と共に私にとっての聖典が、真の意味で始まった。
⚫︎アイリス・フェイルノート
装者の中でも翼さん推しなカス幼女。
今日は原作鑑賞モードでとりあえずビッキーの覚醒シーンに介入せずキャッキャしながら観戦していた。
⚫︎フィーネ
バラルの呪詛破壊チャートをプレイしてたらバグが出てきてブチギレた巫女。気合いと根性と幼女の肉片でネフシュタン(偽)を完成。
⚫︎雪音クリス
知らない所で原材料が幼女の肉片とか言う特級呪物を纏うことが確定した不憫っ子。
⚫︎ネフシュタンの鎧(偽)
再生能力は本家以下。出力は一応シンフォギア以上の劣化模造品。
材料は幼女の腕とか脚とか