それぞれの想いが入り交じる時、貴方はどんな選択を取るだろうか。我を貫くか、躊躇い引くか。貴方が納得するのであれば何も言わない。でも、どの選択を取ろうと一度は後悔することに変わりは無いだろう。
「こうやって会うのも久しぶりだな。」
前原圭一は男性らしくなった顔つきで、あの頃と変わらない笑顔で仲間を見た。
「そうだね。でも前会ってまだ半年しか経ってないんだよ?」
竜宮レナが柔らかい笑みを浮かべた。その笑みの包容力はあの頃からグレードアップした、仲間はそう思った。
「本来は毎日顔を合わせてたからね、久しぶりと感じるのも無理はないよね。私も久々って感じするよ。」
園崎魅音はうんうん、と腰に手を当て頷く。醸し出される姉御感は今日も現在だ。
「魅音さん、圭一さんから部長を受け継いで私も恥じない部長であるよう頑張っていますのよ。今日はそれを証明してみせますわ!」
北条沙都子は握りこぶしをつくり胸の前に持っていく。沙都子はどことなく魅音や圭一を彷彿とさせる頼れる年上という印象を受ける姿になっていた。
「僕も副部長として頑張っています。今までの読めない部員じゃないのですよ。」
古手梨花はあの頃の不思議ちゃんぽい雰囲気から何処か大人びた印象を受ける。そのせいか、ふわふわ、というより芯のある子に見受けられるほど成長していた。
今日は半年ぶりの初期メンバーでの部活だ。一週間後には綿流し祭があるが、折角なら五凶爆闘だけじゃなくいつもの部活もしたいよね、となり今日の集まりがあるのだ。
「さて沙都子部長、今日は何をするの?」
「わ、私?」
「現役部長は沙都子だろ?」
前部長二人に決断を振られ、沙都子は目を見開く。魅音と圭一は期待の眼差しを送る。沙都子は少し照れながら「こほん」と咳払いをした。
「本日はトランプですわ!真っ向勝負、新品のトランプで神経衰弱!」
びしり、と沙都子が言い放ち「よしきた!」と圭一が、「負けないよ!」とレナ、「昔のようにいかないって訳だね」と魅音、「僕は少しのキズも覚えてるのですよ。」と梨花が言った。新品と言っても未使用ではないらしい。あくまで新しいだけだった。
場所は変わり興宮のアパート。独りの部屋でくぁ、と欠伸をした。
「やばい、課題しないと。」
そう独りごちりベッドから身体を起こす。学校用の鞄を開けようとしたその時ぷるぷるぷる、と電話が鳴った。
「なんですかぁもう、やっとやる気になったってのに…」
全くもう、とぶつくさと文句を言う。長い髪を揺らし元いたベッドの方へと向かい、受話器を取った。
『もしもし、詩音さん。』
「あ、監督。こんにちは。」
電話の相手が監督…入江京介だと分かり詩音は機嫌が少し治った。そのためかついさっきまで不機嫌そうだった声が少し優しくなる。
「どうかしましたか?監督からこちらへ電話をかけるなんて珍しいですね。」
『詩音さん、今から診療所へは来れますか?』
「え?…あぁはい、仮に葛西がだめでも今の時間帯なら明るいうちに行けますが。」
『それでは診療所でお待ちしています。話はそこでしましょう。』
「あ…はい。」
ぷつり、と電話が切れる。なんの用か。詩音は簡単に口にだせなかった。だって。
「…生きていますように。」
最悪の可能性も、捨てきれなかったから。
「今年も来たよ、五凶爆闘!」
魅音が空に拳を突き出し部活メンバーの活気を上げる。
「今年も派手にかましてやるぜ!」
「やってやりますわよー!」
圭一はやる気に燃え、沙都子はぴょんぴょんと飛び跳ねていた。
「圭一、魅ぃ、沙都子、少しいいですか?」
梨花が小さく手を挙げて三人に尋ねた。
「今回からは『食事の綺麗さ』も勝敗の要素に入れたいのです。」
梨花そう言い切ったとき、三人の顔は引きつっていた。心当たりがありすぎる。そんな三人をレナは苦笑して見ていた。
梨花が言ったように今日の五凶爆闘の早食いは食事の綺麗さも求められるようになった。そのため去年よりみんな、速度は落ちたがその代わり味わって食べるようになったため店の人は嬉しそうにしていた。圧倒的有利だったのは魅音。幼い頃から叩き込まれたであろう作法は美しい。あとはどれだけの時間をかけて飲み込むかの勝負だ。他のメンバーも負けないようにと頑張っていた。ちなみに綺麗か否かの審査員はメンバーたち。相手を見ながら綺麗にかつ早く食べるという…攻略しがいがある。
「おー、やってますね。」
次の店に行こうとした時、後ろから声をかけられる。
「およ、詩音。」
「戦績はどうです?衰えちゃいました?」
「衰えてなんかないやい!」
詩音が魅音を揶揄うように言う。そして魅音はそれに反抗するように言い返した。
「やっぱり沙都子たちが強いんだよ。育ち盛りだかよく食べる。」
「それ今育ち盛りの圭一くんが言う?」
レナが圭一の言葉に軽くツッコミを入れる。そしてその言葉を聞いて沙都子と梨花が胸を張った。
「詩音もやる?」
「んーそうですね。せっかくですしやりましょうか。」
「あれ、それって…」
「詩ぃは何点も差がある状態でのスタートになるのですよ。」
「くくく、ハンデをつけたまでです。楽しませてあげますよ。」
詩音はにやりと笑みを浮かべた。その笑みを見て圭一もにやりと笑った。
「点差を後悔させるくらい完膚なきまでに叩き潰してやるよ!」
「ふぅん?言いましたね?」
二人の間にばちりばちりと火花が飛び散る。周りのみんながけらけらと笑った。
「それでは僕は時間なので行ってきますのです。」
「お、もうそんな時間か。」
「頑張ってくださいませ、梨花!」
「今年も頑張ってね!」
「応援してるよ。」
「しっかり見ておきますからね。」
屋台を制覇し、ひと息ついていたとき、梨花がゆっくりと立ち上がり言う。圭一と沙都子を筆頭に応援の言葉を送った。
「ありがとうなのです。」
梨花はそう言いにぱ〜と笑った。そしてメンバーたちに背を向け演舞の会場へと足を早めた。
「もう少ししたらレナたちも行こっか。」
「そうだな。」
レナの声掛けにみんなは頷く。毎年恒例の演舞が、始まる。
「今年も良かったぜ!梨花ちゃん!」
「ありがとうなのです。」
圭一が興奮したように梨花へ感想を伝える。毎年何処かははっきりとは言えないがグレードアップしている。だから今年は去年と違う、そう思えるのだ。
「みんな揃ったことだし、綿貰いに行こっか。」
魅音が声をかけるとみんなは頷き綿を配っている場所に向かって歩き始めた。
「ひゃっ!」
突然高い声がして、みんなは思わず声のした方へと視線を向ける。
「レナ!」
圭一が声の主の名前を言い、手を広げる。ぽすり、とレナはその腕の中に吸い込まれた。
「だ、大丈夫か?」
「う、うん。ありがとぉ、圭一くん…」
互いに顔を赤らめすぐさま距離をとる。
「圭一とレナ、仲良しなのです。」
「すぐさま転けかけたレナさんを助けるために腕を伸ばしたのは紳士でしたわねぇ。」
「へっ?!やっ、やっぱり転けたの見えてた?」
「はいもうそりゃあしっかりと。」
そう、レナが高い声を上げた時に圭一以外は後ろにいた。だからはっきり見えていた。小石につまづいたレナを。沙都子は食い気味に圭一を揶揄う。そういうのに興味が出てくるお年頃故か。
「やー、すぐ助けちゃうなんて流石だね、圭ちゃん!」
「お、お前まで揶揄うかよ、魅音!」
「純粋に褒めてるんだって!」
あははは、と魅音は圭一の背中をばしばし叩き褒めた。圭一は照れくさそうに「いい加減みんなして揶揄うのをやめてくれ!」と言う。そこでみんなで大笑いした。部活メンバーの幸せの笑いが、その場一帯に響いた。
「いやー騒いだ騒いだ!」
「楽しかったですねぇ。」
圭一は伸びをして、詩音は上機嫌そうな口調でそう言った。圭一は何が楽しかったかを熱弁していて、詩音は相槌を打ちながらくるりと後ろを向いた。レナと魅音、さっきまで元気よく騒いでいたというのに、今は悩んだような表情をして黙っていて、どこか様子がおかしいのだ。レナは多分さっき圭一とあったから。と言っても彼女はここまで引っ張る性格だっただろうか?と引っかかる部分もあった。魅音は…まぁ大方レナと圭一がいい雰囲気だったからしょげているのだろう。
「あと何ヶ月会えないんでしょうか。」
ね、と詩音は後ろにいたレナと魅音に問いかけた。二人ともその言葉にはっとして、その事を誤魔化すようにあぁ、と言う。
「詩ぃちゃんはほんとに…それくらいになっちゃうよね。」
「そうだね。私たちでさえ家が近くても家を出る時間がばらばらだから会うことないしね。」
「また寂しくなるなぁ。」
段々と分岐するあの場所へと近づいていく。またしばらくのお別れ。そんな寂しさが四人の心に広がっていく。
「それじゃ、元気でね。」
「あぁ!」
「またね、魅ぃちゃん、詩ぃちゃん!」
「学校、頑張ってくださいね。」
互いに別れの言葉を告げ、別れる。会おうと思えば会えるが、タイミングが合わない。疎遠になる不安を抱えながら各々足を進めたのだった。
「はうぅぅ…」
ぶくぶくぶく、と気泡がたつ。レナは湯船に深く深ぁく浸かり、今日の出来事を思い出す。転けかけたときに彼が手を伸ばして守ってくれた。そのときに、抱きしめられて…
「はううぅ!恥ずかしいよぉ!!」
鼓動は落ち着くことを知らない。速くなるばかりだ。しかしこのような事が起こったのは今回だけでは無い。過去にも何度か。
「やっぱりレナ…圭一くんのことが…好き、なのかなぁ…?」
レナの中でずっと疑問だったことが、圭一に会うごとに確信に近づいていく。もっと、お話したい。触れたい。からかいあって、かぁいい姿いっぱい見て…。そんな事を考えれば考えるほど胸がいっぱいになる。茨城の学校で友達から聞いたことがある。恋をするとどうなるのか。それは今の自分と同じだと、直感的に思えた。
「お風呂上がりましたよー。」
「おかえり、詩音。」
風呂上がりの詩音は魅音の自室に入った。魅音のはたらきかけにより、詩音と本家…園崎お魎との関係は少しずつ良くなっていて、ほんのたまに本家に泊まることもあるほどである。
「あ、そうだ。忘れないうちに言っとこ。」
「ん?何?」
布団を敷いていた魅音の手伝いのために動きながら詩音は言った。
「今後、お姉の格好をしてる私を見ることがあるかもしれませんが、悪巧みをしてるわけでは全くありませんので、目を瞑って見なかったことにしてくれませんか?」
「へ?」
魅音の手が止まる。どうして詩音がそんなことを言うのか、色々と飲み込めなかったからだ。そんな姿を詩音は察して少し悲しそうな顔をした。
「今はまだ、言えないんです。言えるようになったら真っ先に言いますから。」
その目を見て魅音もまた何かを察した。
「…分かった。待ってるね。」
優しく見守る目で魅音は詩音を見つめた。その目に詩音はほっとし、小さく息を溢した。
「さぁて、次はお姉の番。言いたいこと言ってみな?」
「へ?!えっ…えぇと。」
魅音は口ごもる。詩音は魅音が何に対して悩んでるか知っている。魅音もそれがわかっている。でも口に出して言うのは少し気恥ずかしいのだろう。
「え、っとさ。今日レナと圭ちゃんがいい雰囲気になってたじゃない?」
「ですね。」
「少しもやっとして。そんな自分が嫌で…親友にこんな想いを向けるのが。」
「いや恋してるなら当たり前の感情でしょそれ。」
詩音は呆れたように言った。大きなため息をついて。
「確かに自己嫌悪に陥ってしまうでしょうね、親友に対して思ってしまったのなら。でも。」
詩音は魅音の心臓に手を当てる。魅音はきょとんと詩音を見つめた。そして詩音は優しい笑みを浮かべた。
「その感情は、圭ちゃんが大好きっていう魅音の嘘偽りない大切な想いの裏付けでもあるんだよ。その感情を否定したらダメ。」
「詩音…」
強ばっていた魅音の表情がほんの少し和らいだ。それを確認した詩音は「よし!」と元気づけるような声を出した。
「さてどうやってアタックしましょうか!恋敵は増えてますよ?」
「こ、恋敵って…」
「高校ではたくさんの出会いがあります。侮ってはいけませんよ!」
ううう、と魅音は耐えきれなくなったのか目の前にいた詩音の胸に顔を埋めた。詩音は愉快そうに笑いながら魅音の頭を撫でた。
「僕の記憶しているお祭りよりかなり賑わってますね。」
「そうだね。園崎家も考えが変わってきてるから。」
診療所にて、富竹が急いで刷った写真を見ながら彼は言った。
「僕も、この中に馴染めるのかな。」
「大丈夫ですよ。君にも仲間がいるじゃないですか。」
遅れて部屋に入ってきた入江が彼を励ますように優しい声で言った。しかし彼は不安そうな顔をした。
「でも…覚えてくれているか。」
「少なくとも彼女はずっと傍にいてくれますよ。」
「そう、かな。」
「はい。大丈夫ですよ、悟史くん。」
彼…悟史は写真に映る知り合いの変化に焦燥感を覚えながら見つめていた。
はじめまして、ほしうと申します。
知り合いの誘いもありこちらで執筆活動をさせて頂こうと思います。
私は主にはpixivにて活動させていただいております。ですがサイトを変えたら反応はどのように変化するのかを確かめたくここに足を踏み入れました。pixivでは全然感想を貰えないので…笑
そのためpixivが先行公開状態になっております。こちらのサイトでは少し遅れている分一つ一つが長くなっております。毎週木曜日更新です。女子3人の恋愛の行く末を見守っていただけると嬉しく思います。