機動前世紀ガンダムQ   作:さわたり

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第一話

 

 

 

 

第一話「ケイラとG-アメジスト」

 

 

 

 

飛んできたレンガをキャッチして、そしてすぐ手放して。いてて……と手を抑えた青年、ケイラ・ロンバルディはうずくまりつつ、レンガを投げた男を見上げた。

 

「お前らのせいで……俺たちの職は…………!!」

 

「そりゃあ気の毒だけど……僕が何かしたわけ!?」

 

飛んで来る石やらなにやら……デモ隊は、国連の技術拠点に入る関係者っぽいヤツならお構いないらしい。そそくさと金網に隠れつつ、ケイラは臆さず続ける。

 

「おまえらのむちゃくちゃな宇宙開発が、やっすい金で使える移民だの、外国の工場だの……!!」

 

「それを僕に言ってどうすんのよ!」

 

「おまえもその連中だろうが!」

 

「僕は違、うおお!!!」

 

飛んで来る物品がガラス片などになって来た。今度は壁に隠れ、ため息をつきつつしかし応える。

 

「どーした、逃げないのか?」

 

「逃げてほしいわけ?」

 

「そりゃ、いい気味だしな!」

 

「……あ、っそ」

 

投げつけられた卵を、手を伸ばしてキャッチする。……まあ、失敗してべたべたの手になりながらも、うざったそうに手を振り立ち上がる。

ひ弱そうな男であるのは相変わらずだが、その視線は鋭いものにかわっていた。

 

「なんで、このデモをやっているの?」

 

「はぁ!? そりゃてめえらの開発のせいで、俺らの生活がめちゃくちゃに……!!」

 

「それは原因だけど理由じゃないでしょ」

 

「なっ……インテリ様が分かってる気どりかよ」

 

「ムカつくのは別にまあ分かるけどさ……僕だって現状がいいとは思ってないし」

 

ちょくちょく石や怒号が飛んで来るが、しかし塀の上に立ち声色を変えた青年を前に、空気が少し変わっている。特にリーダーでもないが、声が大きくて粗っぽくてたまたま前に立っていた男が、その受け答えを任される形に。

 

「目的は、怒りの発散? 誰に怒るべきとか置いといて、ただの技術者に八つ当たりしに来たの?」

 

「ンだと……!! 違う、お前らに俺たちの存在を忘れさせないためだ!! 俺たちみたいな一般人を、クソほど困らせてるんだってのを、見せつけに来たんだ! そのためには声を上げにゃならん!」

 

「じゃあそのために必要なことは僕に卵を投げること? 違うでしょ」

 

「上から目線で好きかって言いやがって! そうでもしなきゃお前らは俺たちを無視して踏みつけるだろ……!」

 

「それがあなた自身の考えで、あなた自身の言葉なら、それはいいけどね。何も考えないで、空回りするほど虚しいことはないよ」

 

ケイラが視線を伏せてそう言うと、男が血管を浮き上がらせて怒号を上げる。……次に取り出したのは、ナイフだった。さすがに周りもおいおいという空気になり、ケイラに届く前に取り押さえられ……汗をかきながら、ケイラは伸ばしかけた手を、戻す。

上着にしまわれた、拳銃に伸ばしていた、手を。

 

「余裕のあるインテリ様と一緒にすんじゃねえ! 俺たちは、俺たちはこうでもしないと……!」

 

「それで、暴力に訴えて……その結果がそれ、って。すこしでも、考えたら分かった事でしょ……! 怒りは分かるけど、それ任せになんも考えずに暴れたって、そうなるだけでしょうが!」

 

ケイラに嘲笑の色はない。むしろ、男を叱ってやってるような、そんな声色。周りがなんだか驚いた様子になっているのを見て、恥ずかしげに塀を降りた。

 

「…………デモ隊の皆さんは主張はよくわかってる、つもり。別に、僕だっていい所のお坊ちゃんじゃないし。だから、まあお偉いさんに意見具申はするし、犠牲になるものがないやり方を探してる。だから、そのつもりでね」

 

「宇宙開発をやめろ、とは言わんのかね?」

 

少し遠くから、声が聞こえた。先ほどの男のような、頭に血の登ったものではない、穏やかだが意思のある声。ケイラも、すこし襟を正して。

 

「言わない、少なくとも僕は。食料や、居住地……そして雇用を生み出すために、新天地は必要だよ」

 

「そうか、意見をどうも」

 

「あなたたちは、やめろと?」

 

「ああ、そうだ」

 

綺麗な金の髪を揺らし、男が歩み出た。その胸には、『ASAF』と書かれたワッペンが目立つ。『反宇宙進出軍(Anti Space Advance Forces)』の者であることを示す証拠だ。ケイラは目を見開き、何というべきか……と言葉を探る。

男は、穏やかにも手を差し出す。

 

「アステル・ハーロック。君の仕事を奪ってしまったらすまないね」

 

「ケイラ・ロンバルディ。どうせMS(モビルスーツ)開発は地上でもやるから食うには困らないさ」

 

「MS……そうか、君、重機の技術者か」

 

「…………。まあね。それで、あなたの意見を聞いておこうか。あなたは、どう考える?」

 

ケイラ・ロンバルディは『知性』を愛する男だ。

思考し、思考に基づいて行動し、行動に基づいて思考する。己で考えることを重んじる男。その期待に沿うだけの者かと、値踏みする。……失礼な行いだが、まあそもそも自分に石を投げて来た連中の、仲間である。

 

「MSも、軌道エレベータも、人類が扱えるような技術ではない。正確には扱えるかもしれないが、時期尚早が過ぎる。あまりに多くの時間や資源を食いつぶす」

 

「そっか、ありがとう。一応僕は言った通り、今やらなければどんどんと苦しくなっていく、と思っている。でも、今のやり方が最善ではないとも思っている」

 

「ありがとう、よい意見交換ができた」

 

「……渉外担当だったりするんですか? 物腰が丁寧だけど」

 

「うーん、まあ、そういうことで」

 

そう言って去っていく、アステル。なかなか良識のある者だとか考えつつ、ケイラも振り返り、拠点の方へと足を向けた。

 

 

 

 

揺れる車内で、ケイラは月を見た。

 

技術者としての人生を選んだのも、星空へのあこがれであろう。宇宙開発用重機は、MS(モビルスーツ)と呼ばれ、様々な活動に転用されている。

 

まあ、いま輸送しているこのMSが、戦闘用であることはあまり気持ちのいい話ではないのだが。

 

『ケイラちゃん、また重い顔してるぜ?』

 

「エジェオさん……いやすみません」

 

画面越しのヒゲの男が、彼を気遣う。パイロットのエジェオ・アルファーノは、いま輸送中の機体のテストパイロットを務める男。

機体の開発者であるケイラとは、それなりにやりとりをしてきている。それに、20代のケイラを気遣えるのは、10以上違う「おっさん」だからこそ、というのもある。ともかく、彼の優しさにケイラは助けられても居るのだ。

 

「その、不安というか。……いや、何でもないです」

 

『そうかい。まあ、深くは聞かねえけどさ』

 

こういう時、エジェオは大人らしい対応で流してくれる。

 

思考停止の末の、暴力。抵抗するには、また暴力しかない。上着の中の、訓練場でしか撃ったことのない銃に視線をやる。

こんなものを、使わずに済めばいいが……。

 

『兵器を作ってんの、やっぱ気が滅入るか?』

 

「え……、その、」

 

『いや、大丈夫だ。俺に気を使うだろうから、あまり言わせるつもりはねえよ』

 

「だったらわざわざ話題に出さなくていいのに……」

 

『あー、確かに?』

 

冗談めかして笑うが、きっとエジェオも、今言っておかねばと思っての事だろう。気の遣える大人だが、まあ不器用でもある。

 

「ASAFは、一枚岩じゃない。当然ですけど。部隊や地域によっては、少年兵を使っているし。……一騎当千の兵器が、子供たちを戦いから遠ざけることができるなら…………僕はそれがいいと思います」

 

『……優しいな、あんたは』

 

「いや、そんなことは……ないです。子供を戦わせたくないのも、自分の選択に責任を持てない人に戦わせるのって、それは、考えることを奪う事……だと思うから、ですし」

 

『優しいことじゃないのよ、やっぱさ。……ま、でも考えすぎてどつぼにハマんなよ』

 

「……ありがとうございます」

 

その話を終えると、エジェオは呼ばれたようで通信終了。携帯電話をしまうと、ケイラは再び空を見てため息。

 

見上げていた空を、影が覆った。

 

さらに大きく見上げ、そこに居るのは巨大な機械であると気づく。大半が逃げ出す中で、車両搭載の火器で応戦をする者もいるが……しかし簡単に破壊され、次は逃げ惑うばかり……。

ケイラも逃走を始めるが、しかしその機体……『ラプトロン』二機のの目的を察し、その脚が止まる。

 

瞬間、バルカンが地上に放たれる。

 

「目撃者を殺す気か!? やっぱり……強奪か!」

 

大半が降りるよりも先に、車両が踏みつぶされ……。抜け出したケイラは、立ち止まることをやめた。猫背の不気味なMSたちは、車両のコンテナを破壊し、その姿をあらわにしようとしている。

ケイラは、コンテナに向かった。

 

「エジェオさん合流前にこんなことになるなんて……何処から掴んだ? いや、そんなことはいい、とにかく、やらなきゃ…………!」

 

寝かせられた紫のMS、胸部のハッチを開いて、大急ぎで乗り込み……。開発には大いに関わっている機体だ、その扱いは知っているし、壊れるんじゃないかってぐらい、シミュレーターは使った。

 

行けるはずだ。止めない思考は、その答えをはじき出した。

 

「ケイラ・ロンバルディ、G-アメジスト、迎撃する!」

 

機体、改め『G-アメジスト』は、コンテナをぶち壊し、紫と水色、そして黒のその巨体を起こした。ラプトロンのパイロットたちが怯む中、青くその目を光らせた。

 

「……これは、どうします、隊長」

 

「倒すしかあるまい。壊してもいくらでも利用価値があるはずだ!」

 

放たれたのは片手のマシンガン。G-アメジストの装甲ならまああまり意味はないが、喰らい続けて嬉しいものではない。G-アメジストは、巨大な盾を構える。

 

「全く効いていません……!!」

 

「なら!!」

 

ラプトロンの一機が、腰部の剣を抜き構える。ヒートソードミドルは、熱で引き裂く強力な武器。国連の量産機などであれば、応戦は十分にできる。

……しかし、G-アメジストの盾には一切通じない。

 

「無駄だよ……Gシールド・クォーツ…………アメジストの強み……!」

 

「っは、ああ、まずい……!」

 

はじき上げられ、吹き飛んだヒートソード。マシンガンの銃口を盾で逸らしつつアメジストは腰部から紫の筒を取り出す。それは桃色の光の剣を構築し、振りぬいた一撃が、ラプトロンの身体を腰部と胸部で引き裂いた。

 

「無力化! 行ける!」

 

「う、うおおおおお!!!」

 

やみくもに斬りかかったヒートソードは防がれ、だがはじかれてなるかと両手持ちで重量をかけ……そして、その隙を狙いもう一機が斬りかかった。

 

「だったら……!」

 

「遠距離兵装か!?」

 

ラプトロンの盾を用いたとっさの防御で、『ライフルアメジスト』から放たれた銃撃は貫通しない。しかし姿勢を崩したようで、気兼ねなく鍔迫り合いに集中できる。

盾で押し返し、今度は至近距離でライフル射撃。頭部を吹き飛ばし、すぐさま両腕を光剣こと、サーベルアメジストで斬り飛ばした。

 

「た……立て直さないと!」

 

ラプトロンが、きびすを返し駆け出す。逃走を選び、そもそも遠距離というのもあってライフルは届きづらい位置……正確に言えば、ケイラには狙撃しきるだけの自信はなかった。AIの補正はあれど……。

 

「だったら……!」

 

だが、それで逃がす道理はない。前面のレバーを操作してやると、G-アメジストは倒れこむように姿勢を変え、同時にホバー開始。

背部のウィングが動きシールドを背負い、パーツが展開し……概ね航空機のような形状に。訝しむ間もなく加速し、ラプトロンの背部へと激突した。

 

「な、可変機だと言うのかァ!?」

 

「食らえッ!!」

 

そして、至近距離で銃撃。盾も正面からの二撃目は防げず、腰部を破壊され脚がちぎれ。立てなくなり、戦闘は終了した。

 

「……っは、あぁ…………やった、やったんだ…………」

 

勝利して、今回はコックピットは壊さず、追いついた機動隊に拘束されるパイロットたちを見て。ケイラは高揚もなく、「嫌だな」と、単にそう考えた。

 

 

 

 

「こりゃ見事だな」

 

戦闘データを眺めつつ、エジェオはケイラにそう告げる。しかし華麗な初陣と対称に、ケイラの面持ちは暗い。

 

「……Gシリーズは、カルセドニーとシトリンが鹵獲されてしまったとか。カルセドニーは訓練時の破損を修理中だし、シトリンは未完成……即座に戦力にされることはないでしょうけど」

 

「ま、それはケイラちゃんのせいではないでしょ」

 

「そうですけども」

 

渡された缶コーヒーを飲みつつ、ため息。

 

「ま、元からシミュレーションだとケイラのほうが強かったしな!」

 

「アメジストに限れば、ですよ」

 

「可変機構のせいで癖が強いんだよ。Gシリーズは、いっこの強力な武装を前提にした試作ってんで……まあジャスパーのバズーカとか、カーネリアンの剣は分かるけど…………盾って、ねえ?」

 

「まあ、変な機体だとは思います。宇宙での活動、に重きを置いた機体ではあるので」

 

ケイラはすこし困り気味に笑った。戦いが好きではないが、しかし機械や技術は好きなのだ。

 

「大佐、お前さんをアメジストに乗せたいみたいだぜ。少なくとも輸送の間は」

 

「冗談言わないでくださいよ……」

 

「マジだって。まあ、士気があんまりだったら、効果的じゃないからっつって乗せないことはあるかもだな。嫌ならアピールしていこうぜ。正規の軍人でもないんだし、強くは言えねえって」

 

「そうします」

 

ため息。しかし、『乗りたくない』は事実にせよ、『乗ることを拒むか』までは、ケイラは語ることはない。

 

「ま、今はそういう世知辛いことは置いておこうや。スペイン行く前にまずはフランス! いいじゃねえか、イタリアとはまた違う、上品でキレーな子がいるぜ?」

 

「でもイタリアじゃないんですよ? いきなりナンパしてついてきますかねぇ」

 

「ケイラはイケメン、俺はイケオジ。いけるいける!」

 

「あはは……まあ、マルセイユに止まったら考えましょ」

 

イタリアの男、ケイラとエジェオ。二人とも異性愛者というのもあって、コミニュケーションとして女性に話しかけることは多い。

……まあ、とはいえ外国でまでそのノリで居続けるか、と言われるとそれも違うが。飄々としたエジェオなりに、国民性でケイラをほぐそうとした結果なのだろう。まあ、せっかく気を使ってもらっているし、それにすこし楽しみな部分もなくはない。ケイラは笑顔で応える。

 

「マルセイユで一泊……ジャスパーとかクリスタルの輸送車とは、スペインで合流……ね」

 

「そうですね。正直あんまり時間はないんで、お茶に誘うなら夕方ぐらいです」

 

「こりゃ厳しいかもな」

 

「……それに、真面目な話をすると、ASAFのO粒子ジャミング装置も強くなってます。対策しないと」

 

国連量産機(エメリー)も護衛として積んでんだもんなー……ま、マジな話気は抜けねえよな」

 

お茶らけていても軍人、真剣な目をすると、やはり頼りがいのある男性だ。

 

「エジェオ隊長」

 

「お、どした」

 

部下も抱えている。指揮官側に回る気はあまりない、ということで小規模な部隊の隊長を務めるぐらいがせいぜいではあるが……。

しかし、そう言った部下たちにも信頼を置かれるあたり、面倒見のいいひとである。

 

 

 

 

嬉しくないことに、対策は杞憂にはならなかった。

 

「カトレア隊長、ここで狙撃してはいかがでしょう」

 

「……あ~、わるくはねえな。ただマ、捕虜にした方が良いらしいじゃねえの。こいつでぶっ放したら狩られ尽くす気もするし……物理手段で行こうぜ」

 

隊長と呼ばれた女性は、パーマのかかった長い前髪の奥から、ぎらついた眼光をのぞかせた。

 

「じゃ、やっか」

 

レーダー類が簡単にジャミングされるとはいえ、20m弱もあるMSが迫れば気付くというもの。停留中の移動車両は、今度こそ死人を出してはならないと避難を始める。

しかし、潜んでいた歩兵たちが次々と乗員たちを拘束していく。人質であれ捕虜であれ、とにかくマズい状況。

 

そんな中、二人に指令が降りる。

 

「やっぱり僕が行けと……!」

 

「どうする、バックレるか?」

 

「……いいえ!」

 

ケイラはG-アメジスト、エジェオは量産機エメリー。指令を下したカイネル大佐張本人は、歩兵たちを殴り倒し車両の影でG-アメジスト起動の瞬間を見守っていた。

 

「にしたって、ASAF過激派だけの犯行なのかしらこれ」

 

倒した連中は、所属を示すものを何ら持っていない。探りを入れたいところだが、見つかったらそれはそれで面倒。隠れつつ、その手に奪い取ったスタンガンを握る。

 

「ケイラ・ロンバルディ、G-アメジスト、迎撃します!」

 

「エジェオ・アルファーノ、エメリー、迎撃する」

 

そして対峙する、敵機。暗闇に立ったのは、白と水色、そして全身のパイプが目立つMSだった。……ケイラには、見覚えがある。

 

「G-クリスタル……!? なんで!? 情報が遅れてたけど、奪われてた、のか?」

 

「横にいるのはエメリーか……フランスの輸送隊からまるまる奪われたって事か」

 

エジェオがマシンガンを構えると同時に、相手もマシンガンを構え。撃ちあいになるより先に、エジェオは姿勢を低くさせ、一気に駆け出す。

 

「おっと、来やがったぜイタリア野郎!」

 

パイロットのことは知らないが、エメリーは各国に合わせたペイントがされている。赤と緑の意匠を眺めつつ、G-クリスタルは背中からサーベルを抜いた。

 

「まずい……!!」

 

割り込んだG-アメジストが斬撃を防ぎ、反撃のサーベル。光剣どうしが激しくぶつかり、G-クリスタルは距離を取った。

 

「めんどくせえな……!!」

 

G-クリスタルの肩にはフレキシブルなビームガンが取り付けられている。放たれる連写をシールドで受け止めつつ、G-アメジスト、接近。カトレアは頭をかいて、そしてコックピット上部からスコープを展開した。

G-クリスタル、あくまで距離を取る。

 

「……まさか!」

 

「ぶっ飛びなァ!」

 

放たれた光弾が、すさまじい轟音とエネルギーの奔流を巻き起こす。Gライフル・クォーツ。G-クリスタルの目玉となる武装だ。

ケイラは咄嗟にかわすが、掠ってもいないのに周辺にいるだけで塗装が変色している。

 

「おい、どうなってんだマジで……!」

 

横目に見つつも、エジェオは優勢。放たれたマシンガンを押しのけて、腕部の武装を突き立て……その武器は『ショックナイフ』。電撃により、機体の内部をショートさせる装置だ。

動きが鈍れば、あとはマシンガンやナイフで脚部を破壊すれば、戦闘は終了。向き直り、G-アメジストの援護に、マシンガンを放った。

 

「……っと、まあまあ怖いぜ」

 

シールドで防ぎつつ、G-アメジストのサーベルをサーベルで受け止め……とっさにその動きをする強敵は、そこから抜け出すだけの技量もある。大きくしゃがみつつ、G-アメジストを盾に潜り抜け。そのままサーベルを盾で流し、ライフルを構える。

 

「認めるよ、ニ対一ってのもあるが……捕虜とか一旦置いといて、『ぶっ殺す』って思わねえとあたしが死ぬ。強いぜ、あんたら……!」

 

「エジェオさん危ない!!」

 

「うおおおお!?」

 

結果を言えばエジェオのとっさの回避でコックピットがやられることはなかったが、肩の上あたりから丸くえぐり取るようにぶっ飛び、完全に戦闘機能を停止。改めて、喰らってはいけない一撃であることがわかる。

G-クリスタルは二撃目を構えつつ、ブースターで浮遊しつつ距離を取る。ラプトロンならともかく、エメリーであのやられ方。G-アメジストでも無事とはいかない。

 

「喰らえ!!」

 

「……くそッ!」

 

だが、それは装甲で受け止めるならの話。G-アメジストは、出来得る限りの技術をぶっこんだ盾の試験機。すさまじいO粒子の奔流を受け止めきると、着地を狙い、サーベルを突き立てた!

 

「まずいぜこれは!」

 

「はァ!!」

 

サーベルはO粒子の塊。電荷により粒子同士で引力と斥力を発し、金属結合から自由電子を絡めとり金属を脆くする。G系の機体はある程度の対策はされているが、それでも押し当てられれば、引き裂かれてしまう。

 

「腕を……上手いねアンタ!」

 

「……接触通信か。上手いって?そりゃどうも!」

 

「乗っ取られてるから話は聞くなって言われてんだがね、それでも聞きたくなるよ、あんた、強いな」

 

「正規の軍人じゃないけどね」

 

「ほお? それでその技量ってのは驚きだが」

 

「この機体に特化してるだけだよ」

 

反撃は左腕のサーベル。G-アメジストは距離を取りそれをかわすが空いた胴に頭部バルカンが叩き込まれ。その一瞬を見逃さず、G-クリスタルの突進。至近距離の肩部ビームガンによってシールドを取り落し、掴みあう姿勢に。双方展開前のサーベルをお互いのコックピットに突き立てた。

 

「……さて、どっちが速いかな?」

 

「相討ちがオチでしょ」

 

「だよなァ……そっちは可変機だろ? そっちのが脆いのに賭けるか? でも無事脱出とはいかねえよな」

 

「どうする?」

 

カトレアは、ふっと笑って。

 

「降参だ。相手が相手だし、ロクな生活は出来なさそうだが命あっての物種だ。旦那と息子遺すわけにもいかねえし」

 

「……君たち(ASAF)は国連を悪の枢軸みたいに言うけど、君らテロリスト相手にもちゃんと人権意識を持って向き合ってるんだ。ちゃんとした手続きで裁かれるよ」

 

「あ? 何の話だ?」

 

「……何?」

 

「ASAFの過激派は、……あ? あー、ああ、そういうこと? サイアクだ……」

 

「話が見えないんだけど」

 

頭を抱えつつ、ため息をついたカトレア。よくわからないケイラは、彼女に事情を言えと促した。

 

「あたしはね、国連に潜む裏切り者にいいように使われて尻尾斬りされんの! そっちかもしれねえけどな。そっちだったらいいなあ」

 

「……僕たちがこの機体を奪った連中だと?」

 

「そうだと言われてきてんだよ。フランス軍大尉、国連起動隊所属、カトレア・ブルースカイ」

 

「カイデラ技術公社、ケイラ・ロンバルディ」

 

「よろしく。どうせ待ってりゃ国連軍は来る。そこまでのあいだお喋りでもしようや」

 

「……分かったよ、よろしく」

 

 

 

「カトレアさん。お疲れ様です」

 

「お、ケイラ青年じゃねえの。元気か?」

 

数日後。ロングコートをひらめかせつつ、スペインの拠点のラウンジで、カトレア・ブルースカイは優雅にコーヒーを楽しんでいた。

 

「結局どうにかなりましたね」

 

「どうだかね。直接あたしに命令したヤツが逮捕されただけだし。……なんか妙に正直に証言したみたいなのも気持ち悪いんだよな」

 

「命令されただけだから、カトレアさん達は無罪……当然とはいえ、上手くいきすぎてますね」

 

「溜飲下げさせて、その裏で何かごまかす。ない話じゃねえよなあ……。ま、そこ探るのはあたしの仕事じゃねえか」

 

「……。そう、ですね」

 

「複雑か?」

 

ケイラは頷いた。カトレアも、「まあ気持ちよくはねえよな」と語りつつ、彼に続きを促す。

 

「人は技術に使われちゃいけないんです。だから、宇宙開発で苦しむ人は、居ちゃいけないんだ」

 

「でもそのごたごたのせいで、内ゲバまで起きてんだもんな。サイアクだよなー」

 

「カトレアさんは、どう思います? 宇宙に、出ていいのか。」

 

「んー……分かんねえわ。息子と旦那が平穏にくらせりゃそれでいいよ」

 

コーヒーカップを「捨てといてくれ、わるいな」とケイラに託し。妙に背が高くスタイルがいいから、そういうしょっぱいことをしても似合ってしまう。

紙のコップを捨てつつ、ケイラはまた空を眺める。

 

青い空の奥に、憧れはあるけれど……。

 

「……」

 

抱えた気持ちをよそに、時間も技術も、争いも進む。自分の飲んでいた紙コップを噛んで、みっともないなと思い立って捨てて。

そして、ラウンジをあとにした。





【挿絵表示】


今回目立った三人です。

本作はTwitter(X)上で交流のある友人からキャラ・機体の提供や、世界観設定の協力のもと成り立っています。ありがとうございます!
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