もののけおののけ犬憑き吠える   作:放仮ごdz

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どうも、放仮ごです。とりあえず書けるだけ書いてみる方針にしました。エヴレムとかは明日から再開予定。楽しんでいただけたら幸いです。


知らない豆腐は食べちゃダメ

 戦国時代。とある国にて。敵軍に追い込まれた愛犬家の武将がいた。弱小国の主として全力を尽くしていた男だった。しかし敵は小国を落とすにはあまりある天下の大軍勢。民草を殺され、兵士を殺され、もはやあとがない。武将は正気を失い、とんでもない行動に出た。愛情込めて共に過ごしてきた愛犬を生贄に、敵軍の将を呪殺しようとしたのだ。

 

 愛情は反転して呪いに変わる。愛犬は首から上だけを出して地面に埋められた。そしてギリギリ届かぬところに最期の餌が置かれる。そうして飢えて死に瀕しているその首を斬り落とすと、首だけで動いて餌に食いついて、力尽きる。こうしてできた犬の生首を用いる呪術が犬神の術である。しかし、敵国の将を呪い殺したはいいものの、裏切られた愛犬は愛憎のまま主まで祟り殺した。しかし、その子供は遠方に避難されていたため、誓ったのだ。末代まで祟ってやる、と。

 

 

 

 

 その呪いに堕ちた犬の名を「(アカツキ)」といった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「肝試し中にいなくなって、私も行方が分からなくて……はい、はい。よろしくお願いします……」

 

 

 スマホで警察に連絡して、一息つく。まさかバケモノに喰われました、なんて言えるわけないので、友人とは途中で逸れて行方不明……ということにした。罪悪感で死にそう。

 

 

『そのまま死んでしまえ』

 

「なんてこと言うのアカちゃん」

 

『誰が赤子だ!?てめえなめてるよなあ!?呪い殺してやるからなあ!』

 

「はいはい」

 

 

 あのあと、時間切れなのかおすわりしたまま私の影に戻ってしまったイヌガミさん……もとい、本人曰く「暁」という名前なのでアカちゃんは、電灯に照らされる私の影を自らの形にしてギャンギャン吠えてくる。どうも外に出るには私がなんかする必要があるらしく、本人は自由に出れないらしい。外に出て居られるのは多分10分ぐらいだろうか。

 

 

『くそっ、呪詛返しの制限が無ければこんな餓鬼……』

 

「私はもう高校生なんだけど」

 

『オレから見れば子供だ。小豆洗い程度に何もできなかったくせに』

 

「……あれってなんなの?」

 

 

 かわいくないアカちゃんに気になってたことを尋ねる。確かに誰もいない林から変な音がするって噂を聞いて肝試しに行ったが居たのは人食いのバケモノだ、あんなのがいるなんて知ってたら肝試しなんか来なかった。

 

 

『あれは人ならざるモノ「アヤカシ」だ。お前らの言葉で言うと妖怪、だな』

 

「妖怪…?あれが?」

 

『アヤカシは三つの種別に分けられる。小豆洗いの様な人を喰うことを生業としている「ヒトグライ」ただ人を殺すことだけを目的としている「ヒトゴロシ」そして私の様な人に憑りついて事を成す「ヒトツキ」だ」

 

「アカちゃんも、アヤカシなの?」

 

『アカちゃんはやめろ。…私が人に見えるか?アヤカシは主に黄昏時から夜明けまで活発化する怪異だ。こんな夜中に出歩かなければそもそも出会わない連中さ。運がなかったな』

 

「じゃあ早く家に帰らないと……」

 

『生憎と家屋に出るやつもいるから完全に安全ってわけじゃないがな』

 

「だめじゃん!」

 

『噂をすれば影だぞ』

 

「え?」

 

 

 アカちゃんの影が指さす先、暗闇に何かがいた。それは、子供だった。紺色の法被を着ていて、編み笠を被っていて顔が見えない。それでも暗闇でも目立つ色白の肌が、とてとてと歩いて路地裏に入っていくそれが人ではないと告げていた。

 

 

「今のって…!?」

 

『アヤカシだな。よかったな、眼を付けられてないらしいぞ。知らんぷりして帰ればあとは俺に呪い殺される時を待つだけで……おい、なんのつもりだ』

 

「だって、アヤカシって人を害するんでしょ!?助けなきゃ!」

 

『馬鹿か!自分から目を付けられに行ってどうする!?』

 

 

 それでも、アヤカシを知っているのは私だけなんだ。友人たちの末路を思い出す。あんな死に方、絶対にダメだ。寿命でも事故でもない死に方を、私は認めない!

 

 

「だって、私の家族は、弁護士だったお父さんを逆恨みした被害者遺族に殺された!あんな死に方は、許されていいことじゃないんだ!」

 

 

 走る、走る。路地裏を曲がり、アヤカシの子供が消えた方に向かうと、何故か手にした御盆に乗せた豆腐をホームレスに差し出している光景があって、目が点になる。

 

 

「もしよろしければお豆腐どうぞ!」

 

「いいのかい?ありがとねえ……お豆腐屋さんの子供かい…?」

 

「へ?もしかして、いいアヤカシ…?」

 

『馬鹿か。あれは豆腐小僧。ヒトゴロシ、だ』

 

「ぐっ、がああああああああ!?」

 

 

 豆腐小僧…声からして女の子?とアカちゃんに呼ばれたアヤカシからもらった豆腐を口にしたホームレスが苦し気な悲鳴を上げる。すると泡を吹いて倒れたその身体が見る見るうちにカビに覆い尽くされていく。カビは毒だ。あの状態は……もう、助からない。油断した……なんで、私は、子供の外見に騙されたんだ!

 

 

「あ、お姉さん。お姉さんもお豆腐いりませんか?……なんて」

 

「いらないよ…!」

 

 

 こちらに気付き笑顔で差し出された豆腐の乗ったお盆を咄嗟に払いのける。豆腐小僧は「ちぇっ」と舌打ちしてとてとてと走り出す。逃がすか!

 

 

「子供だからって、容赦しないんだから!」

 

「鬼さんこちら、豆腐をどうぞ!」

 

「っ!」

 

 

 豆腐小僧の持ったお盆がラケットの様に振るわれると、そこから豆腐が打ち出されて私の口目掛けて飛んでくる。咄嗟に口をつぐむも、顔にベチャッと豆腐がぶつかって砕け散る。豆腐の角にぶつける、みたいな言葉があった気がするけど不快なだけで痛くない。……もしかして、小豆洗いみたいに攻撃力がない?

 

 

「逃がすかあ!」

 

「うわあ!ならこれはどうだ!豆腐の壁!」

 

「そんなので止まるかあ!」

 

 

 今度は両手でお盆を振り下ろして、豆腐を積み重ねた壁で路地裏を塞いできたので、体当たりで突き破る。

 

 

「あんなの見たら普通逃げるよね!なんで追いかけてくるの!?」

 

「お前が、許せないから、だよ!」

 

「お前みたいな狂人に構っている暇はないんだよ!大人のみんなー!いたいけな子供をいじめる悪い人がいまーす!助けてー!」

 

 

 今度はそう手をメガホンの様にして叫ぶ豆腐小僧。こんな夜中にこんな住宅街で、それはさすがにまずい…!?

 

 

「うぁあ……」

 

「おおぉおい…」

 

「待って、あいつは悪い子供で……っ!?」

 

 

 すると、路地裏から現れた大人の男二人に羽交い絞めにされてしまい、咄嗟に弁明しようとするも無意味だった。それは、どちらもホームレスの格好をしていてカビにまみれていて。よく見れば、片方はさっきのホームレスだった。

 

 

「っ、人を操れるの…!?」

 

「わたしの豆腐を食べてくれた人は優しくしてくれるんだよ!」

 

『豆腐の菌で脳を侵食して死体を操ってるっぽいな。面倒だ』

 

「この、放して!」

 

 

 逃げる豆腐小僧。羽交い絞めにされて動けない私。脳裏に、小豆洗いに襲われた時の光景を思い出す。影に映り込んだ、犬の影。あれは、影絵だった。咄嗟に犬の顔の影絵の印を結び、街灯の光に照らす。

 

 

「お願い!私を殺されたくなかったら、助けて!アカty……アカツキさん!」

 

『豆腐なんぞに殺されるとは思えないが……まあ、いいだろう!』

 

 

 すると影から実体化するアカツキさん。私に組み付くホームレス二人を掴み上げると、そのまま壁に叩きつけてノックダウンする。それを見た豆腐小僧、慌てて逃げ出すもその前方にアカツキさんが回り込む。

 

 

「おっと、ここから先は一方通行だ。尻尾を巻いて引き返しな」

 

「尻尾あるのはお前だろ!降家豆腐(こうやどうふ)!」

 

 

 大量の豆腐の塊を御盆から生み出し、アカツキさんを押し潰す豆腐小僧。そのまま踵を返してこちらに来ようとしたので、両手を伸ばして立ちふさがる。絶対逃がさない!

 

 

「邪魔だ人間!豆腐の角に頭をぶつけて死ね!」

 

 

 ぶんっとお盆に乗った豆腐を打ち出してくる豆腐小僧。その速度は、今までの比ではなくて。柔らかい水でも高所から勢いよくぶつかれば鉄より硬くなる、って話が頭によぎる。あ、これやばい……。

 

 

「ワッオッッオッッッオオォオオオオンッッッ!!!!」

 

「ひょえ!?」

 

 

 しかしそれは、自身を押し潰した豆腐を吹き飛ばしたアカツキさんの咆哮の余波を受けて消し飛んだ。振り返る豆腐小僧。目の前に迫る、アカツキさん。その爪が豆腐小僧を切り裂くも、まるで豆腐の様に簡単に裂けて、すぐ再生していく。

 

 

「む、無駄さ!わたしは豆腐の体だ、絶対に死なない!」

 

「―――なら全部吹き飛ばすか」

 

「え」

 

 

 私に憑依して豆腐小僧の脚を掴み、上空に放り投げるアカツキさん。落ちてくる豆腐小僧目掛けて、咆哮を放つ。

 

 

「ワッオッッオッッッオオォオオオオンッッッ!!!!」

 

「ま、待てわたしはまだ人間を……ぴぎゃっ」

 

 

 情けない断末魔と共に、豆腐小僧が跡形もなく消し飛んだのを、見届けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……また、助けられなかった」

 

 

 おすわりされるのは御免なのか、私から出てきても襲ってこないアカちゃんを傍に浮かばせながら、帰路につく。情けない……あの時、油断しなければ。少なくとも一人は助けられたのに。

 

 

「誰も彼も助けようとすると、最期は狂って呪いを生んで死ぬだけだぞ。俺の主がそうだった」

 

「アカちゃん……」

 

「おい、アカツキさんだろ!?さん付けはどうしたさん付けは!」

 

 

 慰めてくれたのかな、と考えつつ。時間が来て影に戻っていったアカちゃんを伴って、私は一軒家に帰りつく。

 

 

「……ただいま」

 

 

 返事は、なかった。




・妖怪紹介コーナー
③豆腐小僧
 豆腐を持つ小僧姿の妖怪。見越し入道を父、ろくろ首を母とする説もあるが、特別な能力はないケースが多い。近年の作品ではその豆腐を食べると全身がカビだらけになってしまう能力を得た。また「豆富小僧」として主役の映画化されたことがある。今作ではカビというワードから別作品「BIOHAZARD VILLAGE【EvelineRemnants】」のエヴリンを参考にしており、豆腐の菌を操る能力を有している。再生する豆腐の肉体を持ち、御盆から質量を持つ豆腐を無尽蔵に生成したり、食べさせてカビ化させた人間の死体を操ったりできるが、本人に戦闘能力はない。


犬神ことアカツキの過去。主人公、乾忽那(いぬい こつみ)の過去でした。

本作の妖怪たちの総称「アヤカシ」。人を喰うことを生業としている「ヒトグライ」ただ人を殺すことだけを目的としている「ヒトゴロシ」そして私の様な人に憑りついて事を成す「ヒトツキ」の三つに分かれてます。

意外と強敵?だった豆腐小僧。能力は再生する豆腐の体、御盆から豆腐を生み出す、その豆腐を食べた人間をカビらせて某カビの女の子みたいに死体を操る、といったもの。強くはないです。

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