もののけおののけ犬憑き吠える   作:放仮ごdz

3 / 3
どうも、放仮ごです。エヴレムはまた今度……最近書きたいものが書けないスランプ気味です。

今回は味方勢力登場。楽しんでいただけたら幸いです。


雨の日泥んこ大乱闘

「貴女方を呼んだのは他でもありません」

 

 

 早朝、とある町のとある建物。会議室の様なそこに、四人の人物がいた。上座に座る黒いドレス姿で赤目に肩までかけた黒髪の大和撫子。紅いジャケットを羽織ったその右腕は肩口から失われていて袖が虚しく揺れていた。

 

 その隣に侍るのは、ところどころに眼の装飾が入った燕尾服を身に纏った天を突く2本の角が生えた腰まで届く長い白髪のスタイルのいい女性。緊張感がなく欠伸をしていた。

 

 その反対側に座るのは、セーラー服を着た長い黒髪を組み紐で先端を括った茜色の瞳の快活そうな少女と、金髪で狐の面を被って顔を隠した巫女服ミニスカートの女の子。真面目なのか真剣に聞き入っている。

 

 

「ある町で発生したアヤカシが、自然消滅する事例が一夜にして二件、確認されました。“夜見人(ヨルミビト)”として見過ごせません、至急確認してきてください。原因がアヤカシであるならば討伐、そうでないのならば保護をお願いします」

 

「もしも手に負えなかったら妾達が出向くでの。死ぬでないぞ、わっぱども」

 

「承ったよ!リーダー!」

 

「コン!私達にお任せください!」

 

 

 元気よく答えた組み紐と狐面の少女のコンビは、狐面の少女が指で印を結ぶとぼふん!と音を立てて煙と共に姿を消した。

 

 

「大丈夫かのう?アヤカシ共は甘くはないぞ?彩夢(アヤメ)

 

(ハク)も心配性ですね。あの二人は将来有望な者たちです。私と違って」

 

(きず)が疼くか?」

 

「はい。この疵を与えたアヤカシを屠るまで、癒えることはないでしょう」

 

 

 そう呟く隻腕の少女の眼には、憎悪の炎が宿っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 私の住んでいるのは某県の地方都市。森や田んぼ、海に囲まれた二つの街から構成されており、中央の大きな川で分かれている発展した港町「西本町」と開発途中の田舎町「東本町」である。その山側である東本町の田んぼの傍、いわゆる郊外に私の住んでいる一軒家は存在していた。

 

 

「?」

 

 

 登校するために家を出て、首を傾げる。通学路である道路が、雨は降ってなかったはずなのに泥に塗れていた。田んぼの傍にあるとはいえ、あまりに不自然だ。首を傾げながらもそこから去ろうとする。背後で、ズズズッとなにか湿ったものが動く嫌な音がした。

 

 

『しゃがめ!』

 

 

 アカちゃんの警告の声に、特に考えることなく頭を抱えてしゃがむ。その頭上を何かが飛んで行ってブロック塀に叩きつけられて爆ぜる。見れば、それは泥の塊だった。高熱を帯びているのかシューシューと蒸気を上げている。

 

 

「たをかえせえ~……」

 

「え?」

 

 

 立ち上がり、振り返ると、そこには異形がいた。まだ人間ぽかった小豆洗いや豆腐小僧が可愛く見えるほど、異形。もはや人ですらないとすぐにわかるそれは、泥に包まれた人型をしていた。頭部の泥の隙間から覗く赤い単眼がこちらを睨み、口らしき穴を開いてパクパク開閉してなにか言ってる。昨日の今日なんだけど!?

 

 

『田んぼの怨念から生まれるヒトゴロシ、泥田坊だな。モテモテだな、忽那!』

 

「なんで私ばっかり遭遇するのかなあ!」

 

『ああ、オレを呼び覚ましたことで“犬神の呪い”が発動している。お前に平穏は二度と訪れないだろうさ』

 

「……」

 

「お、出番か。安心しろ、俺以外に殺させな…きゃいん!?」

 

 

 嬉々と自分のせいですとか言っているアカちゃんに、私は無言で犬の顔の影絵の印を結び、日光に照らした影から実体化させる。不敵な笑みで振り返ってきたその顔面に、右ストレートを叩き込んだ。完全な不意打ちで決まったそれに困惑するアカちゃん。

 

 

「こんの、馬鹿犬!」

 

「な、なにしやがる!?アイツ(泥田坊)をどうにかするためにオレを出したんじゃないのか!?」

 

「うるさい殴らせろ!呪いを解け!解きなさい!」

 

「お前の先祖に呪いにされてから末代まで祟ってやるって決めたんだ!ここで殺してもいいんだぞ!」

 

「おすわり!」

 

「お前ずるいぞおおおお!?」

 

「うっさいばーか!」

 

 

 動けないアカちゃんをタコ殴りにする。なんなら私達が小豆洗いに遭遇したのもその呪いのせいってことだよなあ!?この恨みはらさでおくべきか!

 

 

「た、たをかえせ……?」

 

 

 なんか泥田坊が困惑している。オロオロしていたが、意を決したのか両手を突き出して突進してきた。

 

 

「お、おい来るぞ!わぷっ!?」

 

 

 怒りのままに動けないアカちゃんの首根っこを引っ掴んで無理矢理私の胸に押し付け、憑依させる。ぴーんと髭が伸びて爪が鋭くなり、五感が研ぎ澄まされるのがわかった。

 

 

「たをかえせー!?」

 

「知るっかあああああああ!」

 

 

 そのままアッパーカット。泥田坊の上半身が消し飛び、残された下半身は倒れ込んで泥となって崩れ落ちた。……すっきりした!

 

 

『いやあの……なんでオレから主導権奪えてるのこわぁ……』

 

 

 憑依が解けたのか髭と爪が元に戻るのを感じる。……まあ、ご先祖様のせいらしいから文句しか言えないけどさ……これが毎日続くのかあ。鬱だ……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 疲れ果てたものの遅刻せずに済んだ私を教室で出迎えたのは、世間話が大好きなクラスメイトだった。

 

 

「あ、忽那!聞いた!?二人が昨夜から行方不明なんだって!」

 

「忽那、仲良かったよね!何か知らない?」

 

「わ、私は何も……ははは……」

 

 

 クラスメイトに聞かれても苦笑いするしかない。まさかアヤカシに喰われたなんて言えるはずがない。影が笑みを浮かべていてアカちゃんが嗤っているのがわかる。私が困ってると嬉しそうにするのやめない?

 

 でも誰にも話せない。話せるわけがない。私一人で抱えているしかない。なんなら巻き込むかもしれないから関わらない方がいいかもしれない。授業を受けている間も、生きた心地がしなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 放課後、帰路につく。雲に覆われた空から雨が降り注ぎ、傘を差して電灯が点いた道路を歩く。電灯でブロック塀に映し出された影が動いた。

 

 

『だいぶ参っている様だな?いい気味だ』

 

「……他のアヤカシに私が殺されていいの?呪い解いてよ……」

 

『生憎だが、オレは呪いそのもので解いたりはできない。残念だったな?』

 

「やっぱ殴る……」

 

「お前それで実体化させるのやめろ?」

 

 

 電灯で犬の影絵を実体化させると、土砂降りで濡れた犬の様になってるアカちゃんに思わず笑う。笑わないとやってられない。そんな私を見て、ばつが悪そうに頭をかくアカちゃん。……根っこの部分優しいよね、このアヤカシは。

 

 

「ん…?」

 

 

 アカちゃんを傘に入れてやって一緒に歩いていると。電灯に照らされてないところに、暗くてよく見えないが人混みがあるのが見えた。道路が完全に塞がれている。東本町では珍しい光景だ。どうしよう、そこを塞がれると遠回りしかないんだけど。家すぐそこなのに。

 

 

「……覚えているか。今朝、泥田坊を吹っ飛ばしたのはここだ」

 

「そうだったっけ?朝と夜だと印象変わるから覚えてないや。……なんで今それを言ったの?」

 

「一つ問題だ。泥は、水に濡れるとどうなる?」

 

「そりゃ、べちゃべちゃになって広がって……まさか」

 

「そのまさかだ。構えた方がいいぞ。守り切れるかわからん」

 

「ひっ」

 

 

 その人混みが動いて、電灯に照らされたそれを見て短い悲鳴を上げた。それは、形がちぐはぐだったがすべて泥で構成された単眼の人型。すべて泥田坊だった。あの時残した下半身が雨で広がって復活、増量したの…!?

 

 

「「「「「たをかえせぇえええぇぇええええっ!!!」」」」」

 

「行くぞ!ワッオッッオッッッオオォオオオオンッッッ!!!!」

 

 

 お得意の咆哮が放たれる。今のところ、アヤカシを倒し続けてきた必殺を誇る伝家の宝刀だ。しかし、前列を陣取っていた泥田坊が消し飛んだだけで、その次の列の泥田坊が雪崩れ込んでくる。アカちゃんは爪を振るって次々と泥田坊を吹き飛ばしていたが、そのうち押さえきれなくなり私の首根っこを掴むと跳躍、泥の津波の様なそれを避けてブロック塀の上に降り立った。見れば、泥の津波から次々と人型が生えてくる。倒したのが補充、いや、さらに増えている。これって…!?

 

 

「こいつら雨の中だと不死身な上に無尽蔵か!雨が上がるまで隠れてた方がよさそうだ!」

 

「な、なら私の家……!」

 

「しかないな!」

 

 

 ブロック塀を伝って我が家の玄関前にアカちゃんが飛び降りると、鍵を開けて中に入り込む。さ、さすがにこれなら……!?

 

 

「「「「「たをかえせぇえええぇぇええええっ!!!」」」」」

 

「嘘でしょ…!?」

 

 

 しかし、次々と窓ガラスを突き破って泥が中に入ってきて泥田坊を形作り、リビングを走って殴りかかってきて、飛びこむように私に憑依して主導権を握ったアカちゃんが爪で切り裂いて吹き飛ばす。階段を上り、自室の窓を蹴破って屋根の上に飛び出すも、既に周囲は泥田坊に埋め尽くされていた。

 

 

(アカちゃんの呪い強すぎない!?)

 

「アカちゃん言うな!年貢の納め時だな……そんなに人が憎いかヒトゴロシ!憎けりゃ他を狙え!この娘はオレの獲物だ!」

 

 

 私の体で威嚇するアカちゃんだが、髭と爪が鋭いだけじゃどうにもならないと思う。他人事の様に俯瞰して見えた。

 

 

その時だった。暗雲が吹き飛ばされ、暖かな熱風が吹き荒れた。見上げる。炎でできた狐の尻尾と耳を持つセーラー服の少女が、雨雲が吹き飛んで見える夕焼けを背にしてその手に巨大な火の玉を持って急降下してきていた。

 

 

 

 

滾滾・狐火(コンコン キツネビ)ぃ!!!」

 

「「「「「たをかえ……!?」」」」」

 

 

 そして着地する瞬間に火の玉を地面に叩きつけると、炎の津波が広がって泥田坊を飲み込み、その泥の体を乾燥させて崩壊、一掃してしまった。すごい……。

 

 

「……お前ら、なんだ?」

 

 

 お前()?すると、私達の傍に宙返りしてきた少女から、炎の耳と尻尾が分離して狐面を被った人型になる。私達と同じ…!?

 

 

「こんにちは!危ないところだったね!私、八雲朱莉(やくも あかり)!」

 

「コン!ヒトツキのイズナと申します!」

 

「多分、貴方がアヤカシを倒している人だよね?私達についてきてくれないかな!」

 

 

 日も落ちて暗いのに、その笑顔はすっごく眩しかった。




・妖怪紹介コーナー
④泥田坊
 全身が泥で出来た一つ目の老人の姿をしている田んぼの怪異。鳥山石燕の『今昔百鬼拾遺』に拠れば、子孫の為に買い込んだ田を残して急逝した北の国に住む老農夫が、農業を継ぐどころか酒びたりの日々を送った挙句折角父親が残した田を売り払ってしまった息子に怒ったのか、その田から妖しいものが現れ「田を返せ、田を返せ」と絶叫するようになった、とされる。「田を返せ」というのは「返却しろ」ではなく「耕せ」という意味。
 「ゲゲゲの鬼太郎」では二作以降全部のアニメに登場しており、いずれも「住処となる田んぼを人間に奪われた事に怒って悪さをする妖怪」として登場している。
 今作では犬神の呪いに引き寄せられたヒトゴロシに該当する泥で構成された人型のアヤカシ。東本町だった田んぼの恨みともいうべきアヤカシであり、高熱の泥を口から吐く。本質的に不死身であり、雨の日だと無尽蔵に増量する。弱点は炎熱であり、水分を消し飛ばされると砂になって散る。


味方組織?の夜見人(ヨルミビト)の構成員、八雲朱莉(やくも あかり)とイズナ登場。狐憑きです。

ブチギレ主人公。大嫌いな理不尽な死が呪いのせいだと言われたらさすがにキレる。

そして噛ませ犬に終わった泥田坊。カテゴリーはヒトゴロシ。上記の通り町の開発などで奪われた田んぼを取り返そうとする妖怪です。雨の中だと実質無敵とかいうバケモノだった。

よければ評価や感想などをいただけたら嬉しいです。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
一言
0文字 一言(任意:500文字まで)
※評価値0,10は一言の入力が必須です。参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。