世捨て人龍の配信生活~迷宮の底で人型龍になったけれど生活を充実させたいので配信者します~   作:嘉神かろ

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第123話 私としたことが

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 迷宮そのものが揺れてるのでは無いかと錯覚するような衝撃だ。

 

「ぅ……っ」

 

 同時に感じる激痛に、くぐもった声が漏れる。

 即死級の概念は全て防いだはずなのに、それに近しいものが私を襲っている。

 

 さすがは神々。

 この世界の森羅万象に生ずる者。

 

 だけど、生きてる。

 この痛みがその証だ。

 

 弾けたエネルギーの発する光が収まり、配信画面にも色が戻る。

 

「く、ぅぅ……。ふ、ふふ、残念。耐えちゃった」

 

 表情筋を殆ど動かさない、いつもの笑み。

 それを意識的に作って、伊邪那美に向ける。

 

 今の衝撃で、新しく生まれた神の大半は消し飛んだらしい。

 どうせすぐに産み直されるんだろうけども。

 

『い、きて、る?』

『なんで生きてるんだこの人、じゃなくて龍』

『いや、生きてるけど、生きてるけど!』

『ハロさん、左腕が……』

『左腕ないなっとる。。。』

 

「まあ、必要経費だよ」

 

 さすがに、無傷とはいかなかった。

 伊邪那美の魔法、それも特大のやつを、他の魔法と同じようには受けられない。

 

 だから、身体強化を左腕に集中して、殴った。

 強化と鱗で受けるつもりだった他の魔法を、その衝撃で相殺するつもりでね。

 

 結果殆どはどうにかなったけど、いくつかはまともに受けちゃったし、左腕も上腕あたりから消し飛んじゃったよ。

 

 まあ、命に比べたら安いもんだね。

 

 腕以外はすぐに治せるし。

 

 なんて、息を整えてる間にも、また神は産み落とされていく。

 瞬く間にその数を増やし、また、百を超える八百万の神々が顕現した。

 

 私の支配域は、二割を切ったか。

 

 少ない支配領域でも、なんとか防御は間にあう。

 致命的にはならない。

 

 ならばと右腕だけで槍を振るい、魔法を放ち、ブレスでなぎ払えども、やはり神の産み落とされる方が早い。

 

 いよいよ絶望的だね。

 どうしようか。

 

『て、撤退した方がいいんじゃ。。。』

『次まで生き延びるからよ、ハロさんも、生き延びてくれよ?』

『ハロさん死んだら元も子もないだろ?』

『俺も半年、いや、二ヶ月、一ヶ月くらいなら生きる自信があるぞ!』

『ハロさん死亡とか、放送事故もいいところだからさ、逃げよ』

『これは無理だって。相手が悪すぎた』

『ハロさん、もうやめて・・・』

『初コメ。普段割とアンチ気味な書き込みしてる俺だけどさ、さすがに死ぬのは見たくない』

『逃げて、、、』

『死ぬって』

 

 逃げて、無理だ、そんな言葉で、コメント欄が埋まる。

 ああ、確かにこの人、どっかのスレで中傷してたな。

 

 彼らも、別に無責任に言ってる訳じゃないし、本気で心配してくれてるんだろう。

 寝たきりの古参さん達まで、逃げろって言ってるし。

 

 実際、治すそばから傷は増えてるし、左腕は無いしで、ボロボロだ。

 その上、体力は削られてる。

 でも、こう思われるのは悔しいね。

 

 まあ、いったん引くのは正しいのかもしれないけど。

 けど、さ。

 

『まだです』

『まだやな。こんなん、まだ詰みちゃうわ』

 

 ふふ、やっぱり二人は、分かってるね。

 

「ウィンテ、令奈、そうだよ。ここからだ」

 

 考えろ、頭を使え。

 考えることを止めたら、(あし)と同じだ。

 

 攻撃を捌き、数を減らしながらも、頭を動かせ。

 

 問題なのは、力の流れを乱される事だ。

 それさえ無ければ、一気に魂力の支配域を奪える。

 

 そうなれば、纏めて処理できる。

 

 流れ、整える……。

 導く?

 

 ――ああ、なんだ。

 

「良い物あんじゃん」

 

 全方位へ雷の魔法を放ち、一瞬の間を作る。

 そして取り出したのは、一つの(ぎよく)

 

「ぐぅっかはぁっ……」

 

 私の魔法を貫いて、不可視の衝撃に腹を打たれる。

 続けて顎を掠めた何かで視界が揺れた。

 

「は、はは、また同じ手か。芸が、無いね」

 

 そして私を囲む、無数の魔法と権能。

 ご丁寧に同じ黒雷の魔法で伊邪那美が私を狙っている。

 

 これを、無視する。

 

「あーんっと」

 

 代わりに握ったまま離さなかったそれを、ビー玉より一回りほど大きな紫色の(ぎよく)を口に含み、飲み込む。

 

 若干の苦しさを覚えつつ、それが私の中に入るのを感じた。

 そして、それが、私の魂に溶け込む。

 

 まず感じたのは、左腕のむず痒さ。

 欠けていた魂力があるべき形をとって、そのまま、肉を纏う。

 

『左腕が、、、』

『すげぇ、治った。いつかの酒みたいだな』

『ハロさんクラスの肉体瞬間再生って、何飲み込んだんだ?』

 

 左腕の感触を確かめると同時に自覚する、溢れんばかりの力の脈動。

 

 倍するには及ばないまでも、それに近しい力だ。

 私のものとして完全に定着するのはこの一部だけだろうけども、それでも十分に大きい、膨大な力。

 

 その力が、私の得た新たな権能の使い方を教えてくれる。

 

「えっと、こうか」

 

 無数の魔法が、権能が、残り一割ほどになった私の領域に入った瞬間、その方向を変える。

 別の意思に導かれるようにして逸れ、そして遅れて発動された伊邪那美の魔法と衝突する。

 

 再び巻き起こる衝撃。

 私にダメージは無い。

 

 本来なら私を巻き込むはずの余波も、明後日の方向に導かれて届かない。

 

『す、すげぇ。。。』

『どういう力だ?』

『よく分からんけどすげぇ』

『いやマジで何飲み込んだんだ?』

 

 さすがに、伊邪那美の魔法は逸らせそうになかった。

 けど、十分だ。

 

「さあ、決着を付けようか、古き世に死せし神よ」

 

 

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