世捨て人龍の配信生活~迷宮の底で人型龍になったけれど生活を充実させたいので配信者します~   作:嘉神かろ

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第145話 皇帝さん布告するってよ

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 今コメントした人は確か、中国の人だったね。

 えーっと、配信中一覧開いてっと、これか。一番上に出てるね。ここのアルゴリズム解析してる人曰く、表示順には同時接続者数(同接)も関係する可能性が高い。あとは初配信だと少しだけ上に出てきやすいらしいけど、まあ、同接の方だろうね。

 

 兎も角開いてみようか。たしか私の配信画面にも映せたはず。……ああ、これだ。

 

「――代皇帝、黄鳳龍(ウォン ファンロン)である」

 

 ふむ。

 

「皇帝、だね」

 

『意外とイケオジ』

『めっちゃ黄色いな』

『これが皇帝さんか。ハロさんみたいな眼してるな』

『部屋豪華。さすが皇帝』

 

 子供たちみたいに黒髪なのかと思ったけど、違うね。黄土色っぽい。着ているのも黄色い衣だし、黄色いって感想はよく分かる。

 眼は金色で、縦長の黒い瞳が収まっていた。なるほど、これは確かに私っぽい。

 

 外見年齢は三十代前半くらいかな。虎憲(フーシェン)や他の皇子たちより明らかに貫禄がある。良い歳の重ね方だね。

 

 身長は、ソファに腰かけているからよく分からないけど、高そうだ。袖のあたりに覗いている腕は筋肉質。纏う空気からしても、武人であることは間違いない。

 

 なるほどね、これが中国の皇帝。面白いね。本当に面白い。興味深いって意味の方で。

 種族を断定できるようなものは映ってないけど、私たちには分かる。これは確定だ。

 

「龍、か。迷宮の守護者と私たち以外で初めて見たよ」

 

 虎憲たちのように、龍に近しい何かではない。正真正銘の龍だ。虎憲の言うところの、真なる龍だ。

 

 コメント欄が驚愕の声で埋まる。私の顔は今配信画面に映っていないけど、もし映っていたなら、この文字列の濁流にこういう時ばかり笑うだとかレアなやつだとかってコメントが混じってただろうね。

 

 その笑みを向けた相手は、この状況、配信についての説明を終えて一拍を置く。どうやら本題に入るらしい。

 

「我がために生きる民たちよ、其方らの血肉により、我が中つ国は永劫の時を刻もうとしている」

 

 厳かな、威厳に満ちた声だ。

 

「この栄華の礎となれること、歓喜に震えて止まぬ者たちばかりであろう」

 

 ふふ、なかなか龍らしい男だ。龍らしく、傲慢だ。嫌いじゃない。

 頬杖をついて、ますます笑みを深めてしまう。

 

「だが、この栄華に、其方たちの弛まぬ努力が築いた国に、災いの影を落とす者がいる」

 

 一度静かに閉じられた目がカッと開かれ、鋭い眼光が力強い声と共に届く。

 

 射殺さんばかりの視線は真っすぐ私を貫いていて、向こうからはこちらが見えていない筈なのに、目が合っているような錯覚すら覚えてしまう。

 

「我が地に災いは許されぬ。民たちよ、災いに触れてはならぬ。穢れを受けてはならぬ。その影は其方らに不幸を運ぶ」

 

 災いの影を落とす者とは、私のことだろう。つまり皇帝は、私に関わるなと言っているのだ。

 

「我が民たちよ、白き災いを見たならば、我が兵に告げよ。腕に自信のあるのならば自ら討つも良い。災い払いし者、その助力となった者には褒美をとらせよう」

 

 しれっと私が災いそのものに格上げされてるし。

 まあそれは良いとして、これは要するに、私が指名手配されちゃったわけか。

 

「我が民よ、力なき民よ、案ずるな。この災い、必ずや払って見せよう。それこそが皇帝たる我が責務である」

 

 あ、配信終わった。

 完全に私を悪者にする為だけの配信だったね。

 

 つまるところ、皇帝から私への明確な宣戦布告だ。

 

『【悲報】ハロさん指名手配』

『悲報 か?』

『あっち最後までコメント欄動かなかったなー』

『まあ、どんまい? どっちにとは言わなくても良かろう』

 

 ははは、さすが我がリスナー。まったく動じてない。

 実際、気にすることじゃないかなとは思ってるけど。この国の兵士やその辺の腕自慢くらいじゃあね。襲われる頻度もそこまでないだろうし。

 

『で、ハロさん的に皇帝はどう? 良い遊び相手になりそう?』

 

 ふむ、遊び相手になりそうか、か。

 

「うん。あれは強いね。弱体化してる今なら、かなり楽しめそう」

 

 なんなら普通に負ける可能性が高い。

 

『うわ、マジか』

『まあ龍だしな』

 

 そう、龍だし。

 

 あれは虎憲たちが力で抑えつけられる訳だねー。戦ってみないと分からない部分はあるけど、純粋な力だけで見るなら、半分くらいの力しか使えない私よりずっと上。それでもあっさり負けることは無いだろうけどね。踏んだ場数と技量の差があるから。

 

「まあ、無視して観光するから関係ないよ」

 

 本気で遊べる機会ではあるんだけど、そこら辺はもう是が非でも得にいくようなものじゃないんだよね。こんな力を制限された煩わしい状態じゃなくて、正真正銘の全力全開で戦える相手が日本には数人いるし。

 

 というわけで、皇帝が直接襲い掛かって来ない限りは放置!

 虎憲君は大変だろうけど、頑張ってくれたまえ。迷宮攻略しながら場数踏んだらいつかはどうにかなるかもよ。

 

 その過程でスタンピードが起きたら、いくらかの領地は滅びちゃうかもだけど。

 

「さて、今日の配信はこれくらいにしておこうかな。次の町が近づいたら、また配信つけるよ」

 

『ほーい。お疲れ様』

『おつハロです』

『中国勢は配信くるの難しくなりそうだな 残念 おつハロ』

『色々あったね今日、おつハロー』

 

 はい、終了っと。

 そういえばここ数日寝てなかったなぁ。そろそろ寝ておこうか。

 

「夜墨、ちょっと寝る」

「ああ。人間の集落が見えたら起こそう」

「頼んだ。おやすみ」

 

 次の町では美味しいものたくさん食べれたら良いなぁ。

 

 

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