世捨て人龍の配信生活~迷宮の底で人型龍になったけれど生活を充実させたいので配信者します~   作:嘉神かろ

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第171話 嫌な痕跡だこと

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 また一週間ほどが経って、八十二階層までやってきた。途中にエジプトだか小アジアだからしき砂漠だったりサバナだったりの階層があったから、低階層とあまり変わらないペースだったかな。森よりは自分の匂い辿りやすいし。

 このまま森以外の階層が続いてくれたら、なんていう願いは当然無視されるのがお約束。七十階層あたりからまた森ばかりになった。

 

 幸いなのはこれまでの探索、特に砂漠階層の移動でファウロスに体力がついていたことと、一桁階層の時のように道らしい道があることだね。それにギリシャのリスナーも増えてきてるっぽくて、制限の緩和が進んでる。これなら、もうしばらくは同じ攻略速度を保てると思う。

 

「魔物近づいてきてるね。処理はまだかかりそう?」

「いえ、もう終わります」

 

 ふむ。じゃあこのまま待機してようか。四体くらいだしすぐ倒せはするけど、わざわざ護衛対象から離れてリスクを増やす必要も無い。ただでさえ今は素材の処理に集中してるわけだし。巻き込むような戦闘をするなら兎も角ね。

 

『これでようやく二つ目か』

『魔物ってここもあれか、獣人のパチもんみたいなヤツ』

『あと何個だ?』

『サテュロスな』

 

 そうなんだよねぇ、まだ二つ。八十二階層まで来て、それだけしか集まっていない。たぶん全部で二百階層と少しだろうから、三分の一は過ぎてるのに。

 

「薬の材料は、酒を除いてあと四つかな。迷宮で集めないといけないのはだけど」

「そうですね。あとは手持ちにあるか、町で買えるものです」

 

 聞いてる感じ、もう一つ二つは浅い階層で見つかると思ったんだけども。

 しかし、そんなに緊張しなくてもいいって伝えてあげた方がいいかしらね?

 まあいいか。とりあえずコメントに返しておこう。

 

「そうサテュロス。もう見えてるよ。んーっと、今回のは牡鹿と、馬? いや、ロバかな」

 

 龍の目を懲らすと、下半身が獣で同じ獣の耳や角を持った男達が見える。女型は見当たらないか。ディオニューソス関連なら確実にいるだろうし、もっと上の階層かな。

 

「よし、できました」

「おっけ。それじゃあ行こうか」

 

 サテュロス達には気付かれてないか。でも進行方向だね。下手に道があると接敵はしやすくなるなぁ。脇道に逸れてもいいけど、迷う可能性が高まるのはいただけない。

 でもまあ、このまま道沿いに行こうか。正直なところ、ファウロスを連れて戦闘するのってちょっと面倒くさくはある。とはいえ、次の階層への階段は道沿いにあるっぽいし、道の方がちょっと明るいし、面倒くさいってだけだから。

 

「どうするかね。ここから魔法で狙撃しちゃうか、ちゃんと画面に映るところで戦うか」

 

『見たいは見たい』

『あいつら人間っぽい顔してるのがなあ・・・』

『でもまあ、どっちでもいいかな』

『圧勝なの分かってますし』

『狙撃でいんでね? ファウロスさんの安全第一』

 

 ふむ、コメント欄だけ見たら狙撃で良しが多数派か。じゃあ、いっか。

 

「じゃあ狙撃しちゃうね」

 

 はい、雷どーん。

 

「殲滅完了っと」

 

『瞬☆殺★』

『これ何も言われなかったら分からないね』

 

 まあ、けっこう遠くだし。音くらいは聞こえるんじゃないかな?

 配信にどれくらい乗ってるか分からないけど。人間の感覚ももう忘れちゃったしなぁ。

 

 とにかく進もうか。まだまだ集めないといけない材料もある。せめて攻略はしてしまわないとね。

 

 そんなこんなで八十九階層。相変わらずの森。なんだけど、どうも道が広くなってる。手入れも行き届いているように見える。これはきっと意味があるのだろう。次か、そのまた次の守護者に関わる部分で。

 ディオニューソスの迷宮で守護者に関わりそうな人間の痕跡かー。やだなぁ。一人で潜ってるときならまだ良いんだけど。

 

「迷宮の中に村があることってあるんですか?」

「あるよ。実際の人間が住んでるわけではなくて迷宮の生み出した人間のような姿の魔法生物がいるだけなんだけど」

 

『あったなー。中東の方とかで』

『中国でもなかったっけ?』

『懐かしい。小さいころじいちゃんと見た記憶ある』

『グハッ(時の流れにダメージを受ける音)』

 

 そっか。数十年だもんね。短命の種族ならもう二代くらいは変わってるか。そう思うとあまり無いパターンだね、村そのものがボスみたいなの。環境型の守護者って言えば良いのかな?

 

「守護者階層はその村そのものをどうにかしないといけないんだろうけど、殲滅なのか、何かを解決するのかは色々パターンがあるね」

「なるほど……」

 

 ずいぶん深く考え込んでるね。しっかり画面に捉えておいてあげようか。何を考えてるかは、知らないでおくけれど。

 まあ、娘を助けるために自分なりに出来ることをしようとしているのは分かるね。

 

「お?」

 

 空間の途切れる感覚だ。見つけた。

 

「次の階層の入り口だ。直接守れないやつの可能性もあるから、油断はしないでね」

「は、はい……!」

 

 あまり面倒くさくないのだといいけど。力で吹き飛ばせるやつ求む。

 

 

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