世捨て人龍の配信生活~迷宮の底で人型龍になったけれど生活を充実させたいので配信者します~   作:嘉神かろ

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第49話 妖艶なる狐

 早朝。

 古の都を眼下に見下ろしながら、ウィンテさんに指定された場所へ降り立つ。

 

 そこは京の街を一望出来る空近き場所。

 京都タワーの屋上だ。

 

「ふぁ……」

 

 小さくなった夜墨を首に巻きつかせながら周囲を確認するけど、まだ来ていないみたい。

 遠慮なく欠伸をして、のんびり待つことに決める。

 

 遠からず来るでしょ、って思ってたら、思わぬ襲撃を受けた。

 

「ハロ、さーん!」

「げふっ!?」

 

 覚えのある声と同時に腹部に凄い衝撃を感じる。

 気が付けば、黒い白衣に身を包んだ黒髪赤眼の美少女がいた。

 

 いや、年齢的には美女って言った方が良いのかもしれないけど、雰囲気が可愛らしいから。

 

「おはよう、ウィンテさん。一応初めましてかな?」

「はい、おはようございます!」

 

 お腹に抱き着いたまま目をキラキラさせる彼女に少し困った笑みを返し、やんわりと腕を解かせる。

 尻尾があったらあの竜人みたいにぶんぶん振ってるんだろうって思えるくらいには喜色満面だ。

 

「それで、どういう仕掛け?」

 

 先に来ていたみたいだけど、全く気が付かなかった。

 夜墨にも軽く視線を向けて確認してみたけど、同じくだ。

 

 私たちの目を誤魔化すほどの隠形能力なんて、彼女は持ち合わせていなかったはずだけど。

 

「ふふふふ。彼女の幻術です!」

 

 ウィンテさんが手で示した先に目を向けると、景色が歪んで、金色に輝く九つの尾を持った女性が姿を現した。

 尾と同じ金色(きんいろ)の長髪を靡かせる彼女の肌は雪のように白く、切れ長の目が理知的な光を放っている。

 その金色(こんじき)の瞳は、私達の事を観察しているようだった。

 

「白面金毛九尾の狐、ね」

「詳しいねんな」

 

 不思議な雰囲気の子だ。

 平均より少し低い背で特別スタイルが良い訳でもないのに、妖艶さすら感じる。

 

土御門(つちみかど)令奈(れいな)気狐(きこ)の位を持つ妖狐の祖や」

「八雲ハロ。龍の祖で人龍」

 

 よろしくするかは、まあ保留。

 しかし、情報量が多いね。

 

 土御門姓で九尾の狐か。

 玉藻前(たまものまえ)との繋がりが気になるね。

 

 それに、気狐。

 狐の位を表すものの一つだけど、上から空狐、天狐と来ての三番目だ。

 その下は野弧のみ。

 

 にも拘らず私たち龍の目を誤魔化せる。

 末恐ろしい。

 

「幻術は、妖狐の最も得意とする所やから」

 

 あら、顔に出ちゃったか。

 反省反省。

 

「戦闘は?」

「あまり得意やない。貴女(あんた)に比べたらやけど」

「そ」

 

 この時点で十分及第点を超えている。

 いいね。

 

 ウィンテさんに視線を向ける。

 自慢げなような不満げなような複雑な表情をしていた彼女だけど、私の視線の意味にはちゃんと気づいてくれたらしい。

 

「令奈は私の従妹で、同じ大学の後輩なんです!」

 

 従妹か。

 あまり似ていないけど、種族変化で見た目も多少変わるから元々なのかは分からない。

 

「うちの家の本家の子なんですけど、跡を継ぐのが決まってて、その上起業までしてるんですよ!」

 

 なんか、語りたいのを我慢してる感がする。

 気のせいかもしれないけど、自慢げに話しているし、あながち間違ってない気がするなぁ。

 ウィンテさん、私の事を話すときもこうだし。

 

「つまり、人を動かすのは」

「得意やな」

 

 ふむ。

 いいね。

 凄くいい。

 

 かなり嬉しい誤算だよ。

 

「話は聞いてる?」

「大体は」

 

 ふむ。

 

「じゃあ、追加のことだけ。伊勢神宮の所に出来た迷宮がヤバい。深い層の魔物を狩る必要がある」

「姫理、公爵の人、借りれる?」

 

 ウィンテさん、姫理って言うんだ。

 そういえば前に姫って呼び方に顔を曇らせていたけど、なるほどね。

 

「うん、ワンストーンさんにお願いしておくね。それはそれとして令奈、ウィンテって呼んでって言ったでしょ?」

「姫理って名前、可愛いのに」

 

 名前で揶揄われるとか、あったんだろうね。

 

 まあ、これで近畿地方は大丈夫かな。

 一応他にも手は打つつもりだけど。彼女の補助位にしかならなそう。

 

 ん-、二人にも直接聞いておいた方がいいかな?

 

「ねえ、どこまでカバーできる?」

 

 二人の勢力でどのくらいの範囲の迷宮に対処できるかで、私の打つもう一手をどうするかが決まる。

 面倒だし、時間もあまり無いから、極力最低限にしたいんだよね。

 

「京都全域と滋賀、大阪、奈良の北半分、それから三重辺りまでやね。伊勢神宮んとこのを考えたら、それ以上はしんどいわ」

「私は、石川福井と長野の上の方を少し、それと新潟の下半分ですかね? 眷属増やしを頑張れば上半分もいけそうではありますけど」

 

 ふむ、思った以上に広い。

 流石と言うべきかな。

 

 よしよし、私の仕事が減った。

 ウィンテさんの反応を思うと今後の不安が増すけど、そのマイナスを補って余りあるね。

 

「よし、それじゃあ、よろしくね」

「ええ、よろしゅう」

「じゃあね」

 

 二人に手を振って空を目指す。

 ウィンテさんがもう行くんですかってショックを受けていたけど、気にしない。

 

 このまま北の方の人たちにも伝えないといけないから。

 あとは、中部と東北、北海道。

 関東は人間たちに任せる。

 

 東北と北海道には強い始祖がいるって分かってるから良い。

 中部はまた探さないとなぁ。

 

 やばい迷宮は無い筈だから人間に任せるでも良いんだけど。

 

「うん、やっぱりちょっと急ごうか」

 

 ここまでやったんだ。どうせなら、より良い結果を目指したい。

 

 このあとは、とりあえず中部だね。

 あー、皆さっきの二人みたいに話が早いと良いんだけどなぁ。

 

 

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