虚実の方舟:Re   作:Oh my PC

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OPERATION:GOD SLAYER(神殺し作戦)

 

 ──テキサス州・フォートワース統合航空基地

 

 未明の滑走路に、爆撃機の巨体が並ぶ。

 

『こちらウォーハンマー2-3、滑走路への進入をリクエストする』

 

『フォートワースHQより、進入を許可。着陸後は滑走路で待機せよ』

 

『Roger』

 

 先頭のB-52Hがタキシングを開始し、ターボファンエンジンの轟音が夜を貫く。その後方にはB-1Bランサー、そして漆黒のステルス爆撃機B-2スピリットが静かに待機していた。

 

 その瞬間、作戦中枢の通信端末が短く鳴った。

 

 ペンタゴンからの通達は、ただ一言。

 

FIRE(鉄屑に戻せ)

 

 発令を受けた司令部の空気が変わる。

 

『こちらフォートワースHQ、ラインウェイクリア。全爆撃機、離陸を許可する』

 

『了解、ウォーハンマー1より順次離陸開始』

 

 巨大な機体が順に離陸してゆく。轟音と振動を残し、次々と大空に消える。テキサスの空は、やがて銀翼で覆い尽くされた。

 

 

 

 

 ──メキシコ湾・第20任務部隊 USSカーニー艦上

 

『方位2-6-0、発射座標確認。VLSオールグリーン、BGM-109発射、撃て!』

 

『Roger! 発射!!』

 

 その刹那、洋上に十個の眩しい光が煌めき、甲板が揺れる。

 アーレイ・バーク級駆逐艦のVLSが唸りを上げ、十発のBGM-109が空に舞う。閃光と噴進炎を残し、巡航ミサイルは一路、内陸へと突き進んでいく。

 

 その速度、880km/h。

 地形認識と衛星誘導によって刻一刻と修正される軌道は、誤差を許さない。

 

 880km/hという速度で飛行するトマホークは、ビナーへの攻撃準備を行なっていた爆撃機群を追い越していく。

 自機を追い越したトマホークを確認した爆撃機群の乗員は、作戦の第二フェーズに移行する為に動き始める。

 

『こちらウォーハンマー2-3、巡航ミサイルの通過を確認。着弾まで30秒』

 

『着弾まで──5、4、3、2、1……Impact(着弾)!』

 

 爆風が確認される前に、B-52Hの計器が反応した。

 

『なッ──標的への命中確認できず! 全弾、迎撃されています!!』

 

 衝撃が走る。

 衛星からのリアルタイム映像が映し出すのは、空中で焼き払われる巡航ミサイル。

 超高温の光線が空を裂き、正確無比に標的へ向かうミサイルを叩き落としていた。

 

「……よし、予定通りだ」

 

 フォートワース司令部、総司令官が低く呟いた。

 

地球規模攻撃軍団(AFGSC)、攻撃始め!!」

 

『こちらウォーハンマー1より全機へ、攻撃開始。繰り返す、攻撃開始』

 

 ビナーの熱線は、強力であるが故に連射は不可能。

 撃てばオーバーヒートし、クールダウンが必要なのだ。

 そして、観察の結果ビナーは脅威度の高い目標を優先的に熱線で迎撃する傾向にあることが分かった。

 だからトマホークのみを初撃で放ち、熱線を使わせた。

 

 つまり、熱線が使えない今ビナーが持つ迎撃能力はミサイルのみとなる。

 

『こちらウォーハンマー2-3了解。要撃管制システムスタート、INS、TERCOM共に異常なし。ALCM発射!!』

 

 B-52Hの爆弾倉が開かれ、格納されていた二十発のAGM-86Cが投下される。投下されたAGM-86Cは、空中で点火され、激しい白煙とブーストを噴き出しながらビナーの方角へと飛行していく。

 次いで、B-1BとB-2がAGM-154空対地ミサイルを発射し、AGM-86Cに続いてビナーに向け滑空してゆく。

 

『こちらウォーハンマー2-1、投下完了。ターゲットまで60秒』

 

 空を駆けるミサイル群は数百。

 その姿は、まるで流星群だったが──それは、自然の奇跡ではなく、人類の牙だった。

 

『こちらウォーハンマー1、爆撃機隊のミサイルの全弾投下を確認。どうぞ』

 

『こちらフォートワースHQよりウォーハンマー1へ、基地へ帰投せよ』

 

『Roger! ウォーハンマー1より全機へ、基地へ帰投せよ(RTB)!』

 

 その通信を皮切りに、爆撃機群が旋回し帰投していく。

 熱線のクールダウンが始まった今、畳み掛けるチャンスはこれだけだ。

 命中の確認無しに、次の攻撃が始まった。

 

『こちらナイトアイ1-1、標的の射程圏に突入。交戦許可、Weapons Free!』

 

『こちらアルファリーダー、了解』

 

『こちらブラボーリーダー、了解』

 

『こちらチャーリーリーダー、了解』

 

 F/A-18C、F-35B、F-16C混成飛行隊のコールサインが一斉に無線を飛ばす。次に行われるのは戦闘航空団による飽和攻撃だ。

 

『こちらアルファ3、Weapons free!!』

 

『Engage! Engage!』

 

 その瞬間、飛行していた数十機の戦闘機の両翼が一斉に光を発する。

 F-16CからAGM-158が、F/A-18C/DからKEPD-350(小型巡航ミサイル)が、F-35BからAGM-88が発射され、数百の光の筋が青空に奔る。

 

『アルファ2、Complete!』

 

『チャーリー5、Finish!』

 

 ミサイルを撃ち尽くした戦闘機が、続々と帰投していく。

 全ての戦闘機が帰投し終えないまま、今度は地上部隊が動き始める。

 

『フォートワースHQより36th AD師団砲兵へ、MLRS攻撃開始を要請』

 

『こちらAD HQ、攻撃要請受諾。MLRSのロケット弾をSADARM(対装甲探知破壊弾)に切り替え』

 

 要請を受けたテキサス州兵第36歩兵師団の師団砲兵部隊が動き出す。

 テキサスの平野に配備された多連装ロケットシステム──MLRSのミサイルコンテナが旋回し、ビナーの居る方角へと向けられる。

 

『FCS異常なし、座標誤差なし。SADARM発射!!』

 

『Fire direction control OK! 全ユニット、射角入力──Fire!!』

 

 攻撃の合図の直後、六輌のMLRSから凄まじい量の白煙が噴き出し、数十発のロケット弾が発射される。

 MLRSから発射されるロケット弾──対装甲探知弾頭が空中で分離され、高速で降下する。

 

 更に、発射を終えたMLRSの上空を黒い細長い物体が轟音を立てながら通り過ぎていく。

 海軍のトマホークの第二波攻撃である。

 

『フォートワースHQよりペンタゴンへ、作戦完遂。これから効果確認を行う』

 

 

 

 

 弾幕の雨は止まらなかった。

 

 音速を超える衝撃が連続し、地表を切り裂き、砂をえぐり、大地を焦がした。何十発もの爆撃が地形を変え、ミサイルの衝撃波が空気を震わせる。まるで、戦争という概念そのものが具現化したような光景だった。

 

 数十分後──

 

 爆撃が止む。

 

 熱波、衝撃波、電磁ノイズ。

 すべてが収まったあと、再び空へと飛び立ったのは偵察機・RQ-4Bグローバルホーク。

 

『こちらライサンダー1-3、ターゲットエリアに到達──映像フィード開始。これは……』

 

 そこにあったのは、焦げた金属、焼けた大地、そして──

 かすかに脈動しながら自己再生を始める、白い巨体の残骸。

 

『ビナー、未だ機能停止せず……自己修復行動を確認!』

 

なにッ……!?(What the…!?)

 

 司令部が騒然とする中、衛星映像が異常を捉えた。

 ビナーが、砂を巻き上げながら上空へ跳躍し、空中に出現した青白いゲートに吸い込まれていく。

 

『ゲート通過を確認! ビナー、領域外へ消失──』

 

「……逃げた、だと?」

 

 総司令官は拳を握りしめた。

 破壊対象に逃げられた──つまり、これは勝利ではない。

 だが、傷を負わせたことは事実。

 

 ペンタゴンは、早急に対キヴォトス戦略の練り直しを行おうとしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぇ…ビ、ビナーちゃんが、ですか?」

 

「うん。結構ひどくやられちゃったみたいだよ」

 

 白い外殻に守られた、機械的な建造物の一室。

 そこに、三人の少女が集まり、今回発生した異常事態(・・・・)について話し合っていた。

 

「ほら、これが戦闘データ。うーん…特に第三関節から第五関節までの損傷が酷いね。自己修復機能がなければとっくに壊れてたよ」

 

「そ、そんなぁ……」

 

 その内の耳にデバイスを付けた少女が米軍とビナーの戦闘データを示した端末を示すと、口にデバイスを付けた少女がひぃん、と言いながら落ち込む。

 

「ふむ……お姉様(・・・)の復活までは、ゲートについて我々は不干渉の立場を取るつもりでしたが…事情が変わりましたね」

 

「まぁ、そうなんだけどさぁ…」

 

 もう一人の目をデバイスで覆った少女が顎に指を当てながらそう言うと、耳にデバイスを付けた少女は端末の画面に指を滑らせ、別のデータを示す。

 

「これ。あの地球とかいう惑星、相当な戦力を持ってるよ」

 

 示されていたのは、惑星の衛星軌道に浮かぶ無数の人工衛星や、ビナーに向けて攻撃を行なった誘導弾や航空機の画像。

 更に、戦闘時の隙を見て採集したデータでは、ビナーが戦闘を行っていた場所から半径数千キロ以内にも大量の生体反応があり、学園──地球では異なる概念なのだろうが、その内の一つがここまでの規模となると、全体的に見た経済力や戦力は相当なものとなるだろう。

 

「やり合うのは準備が整ってから。今の戦力じゃ、敵の力な未知数な以上、無理に出しゃばるのは得策じゃないよ」

 

「……確かに、一理ありますね。下等生物とは言え、衛星軌道に衛星を展開するとなると、相当な技術力が必要でしょうし」

 

 目をデバイスで覆った少女がそう言うと、踵を返して再び口を開いた。

 

「ではより一層、お姉様の復活を急がなければいけないようですね。でしょう? アイン、ソフ」

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